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【 指名制 / Remake 】耽溺のグランギニョル【 提供人外 / マルチエンド式 】/1582


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1532: ナザリ [×]
2024-10-12 10:15:45



>グルース(>>1529)


あゝそれがいい。おいで、子どもはたっぷり寝にゃならん
(うきうきと弾んだ声音に対して、老体に鞭打つようにゆっくりと立ち上がる仕草は平素のものかそれともこの先に油断を誘うための撒餌か。そんな歳ではないと言う彼を臆面もなく子供扱いするのは当然悪意あっての事ではなく、重厚な着物の衣擦れと共にベッドの縁へと腰掛けて彼を誘うようにシーツをトントンと叩き。「 俺ぁね、グルース…。お前さんに会えた最初の怪物になれて光栄だよ 」攫われたその夜に異界へ宣誓した彼の気高さと、時折見せる幼さゆえの揺らぎに惹かれる怪物はきっと多いだろう。人食いばかりのこの屋敷で長生きすることはそれだけたくさんの怪物に愛でられたという事だが、短命に終わってもそれだけ熱烈に糧として求められたという事。願わくば彼の行く末をできる限り長くたっぷりと楽しみたいものだ、そんな風に心ときめくのはやはり彼の誇り高い眼差しと裏腹に震えを握り殺す人間の本能の絶妙なバランスが愛らしくて堪らないと感じるから。もし彼がベッドへと来てくれたのなら、シーツ越しに彼の腹へと手のひらを添えとん、とんと緩やかなリズムで柔く叩きながら「 むかあしむかし、あるところに―― 」静かで間延びした調子で話し始めるのは諳んじられるほどポピュラーな物語である桃太郎の最初の一節。吉祥の鳥を冠する彼がどこまで高く、長く翔べるのか――彼の物語もこの夜から始まるのだろう)





1533: キルステン [×]
2024-10-12 10:19:51



>グレン(>>1530)


(珍しい男に声を掛けられた時から尋常でない事態の予感は耳元のすぐ近くで囁いていた。ヒトは糧として喰らうべきものであり、飼い殺しにすべきものではないと考えている女王の目にはダークエルフの道楽は好ましいものに映る事はなかったけれど、シナモン色の死神から聞いた話によれば一概に彼らの関係を糾弾することも出来ず「 …で、そいつの声はどうなの 」伺った問は捕食者として最優先に興味の対象に挙がるもの。しかしその答えには件の獲物の主たる怪物による警告について言及され、呆れて物が言えないといった風情で肩を竦めるに留めたのだった。数日後、熱帯魚――具体的にはベタに似た姿をした自らの眷属ではない羽持ちの使い魔に呼び止められ、差し出された手紙に一瞬怪訝な顔をするも添えられた花から漂うダークエルフの魔力の残滓に心当たりが呼び覚まされて。手紙と花はそのまま使い魔に預け、彼の部屋の前に仁王立ちになれば高く鋭いノックを三度。もし彼が“鍵”を行使し扉が開いたのなら、悪趣味なそれに目玉を時計回りにくるりと一回転させ短く溜息を吐くだろう。そうしてピンと伸びた背筋と隙のない立居振舞からさながら女王のような示威を凪がせた強気な笑みにて彼のかんばせを見つめ「 代価も示さず一方的にオネダリなんて、ナメた真似してくれンじゃない。ねえ、ハンサムな坊や? 」成る程文句無しの美丈夫だわと素直に認め、組んでいた腕を解き自らの髪の毛先を手の甲にてさらりと弾き「 勿体ないわ。あの気の利いた花の一輪がなけりゃアンタを水責めにしてやる免罪符が手に入ったのに 」はぁっとこれ見よがしな嘆息を吐くことで冗談味を醸しながら、ビリジアンのギラギラしたネイルに彩られた食指を彼の眉間すれすれに伸ばし「 アタシはビビリは嫌いよ、特にビビリなオトコ。分かったら今すぐこのキルステンをエスコートなさい 」誰とは言わないが大変臆病な幽霊の姿が一瞬脳裏に去来したのは自分だけだろうか。しかし当然彼を話題に出すことはしない、刺々しい態度ながら悪人ではない人魚は今宵この人間に時間を使うと決めたのだから)





1534: グルース・リヨン [×]
2024-10-12 22:42:42



>ナザリ(>1532


(この短い間だけで幾度、年相応以上に童らしい扱いを受けただろうか。蔑視でも嘲弄でもないと理解していたとて、やはりそれを受け取る手はどうも余してしまう。頼み込んだ口にまた指を当て、ぱちりと泳ぐ目を瞬かせる一秒足らずの逡巡の後、招く仕草に応じて徐と立ち上がれば彼の居るベッドへと己も足を踏み出す。「ふふ、そうかい。…それなら、僕も恐悦の至りだね。」軽やかに弛めたとしても品を崩さぬ桔梗の如き笑みの下、彼の言葉に此方も心からの喜びを示してみせる。――元の世界でもいつもそうしたように、コート類を脱いで畳み、その上へ外した装飾品達を添えて。慣れた所作でそれらを枕元へと置いて簡易の寝仕度を整え、己の屋敷と遜色無いベッドへ身体を横たえる。……人を喰らう者を前にあまりに無防備なその体勢故、話の始めにはほんの僅か強張りを窺わせて。しかし物語を綴る長閑な低音、ゆったりと身に伝わる柔い振動に段々とそれは解け、主人公が冒険へと旅立つ頃には傾聴にばかり心が向く。お伽噺の頁が捲られる毎、端から少しずつ思考の糸も綻んでいき――やがて“めでたし”で話が閉じられる頃には微睡みにすっかり揺蕩い、瞼はその重さに従順と瞑られる。「……おやすみなさい、」殆ど機能していない頭から、それでも言葉を交わした彼へ告げる挨拶は、意識の揺れから年齢よりもずっと幼いもので、それを最後に夢の内へと緩やかに沈んでいく。――まだ羽根も万全と揃わぬ一鶴の飛翔。その懸命と羽撃いた先、どんな結末へと進むか今は知れぬ物語の序章は、久方ぶりの穏やかな寝息を締め括りと筆を休める。)


***


――この辺りが一つの区切りかな。うん、幾ら動揺していたとはいえ、初めはあんな不躾にお堅い態度を取ってしまってすまないね。…でも、初夜が終わる頃にはすっかり緊張が解してもらえたのだから、本当に君は会話上手だね。
それで、そう…次について話さなくてはね。前に言った通り、もう一夜続けて僕がお話を綴らせてもらうのだけれど……ご指名したい怪物様がまだ絞りきれていなくてね。良ければ少し相談に乗ってもらえると嬉しいな。
先ず気になっているのは、僕がこれから読む書の主演であるサー・ギンハ。それから会話に少し登場した悪魔の方々…このお三方の内からであれば、僕と同じ“兄”という立場にあるサー・レンブラントとお顔合わせを願いたい。あとは、そうだね……話に挙がった以外であれば、サー・レオニダスにも少々興味を惹かれている。
……手を煩わせてしまって申し訳無いね。何せ僕、気の多い性分だから、何方も魅力的に見えて仕方が無くて……ふふ。それで、どうかな。僕が挙げた怪物様方、またはそれ以外のまだ見えぬ誰かの中で、僕とお話をしてくれる者は居るかい?




1535: グレン [×]
2024-10-13 19:33:23





>キルステン( >1533


( 短く、けれどもしっかりと届くノック音が鼓膜を揺さぶったのは丁度身支度を終え、仕上げとばかりに鏡に写る姿へと緩く口角を持ち上げて確認をしていた頃合い。扉の外にいる人物はきっと先程手紙を出した相手だろう、なんて推測はこの屋敷の中で危険な目に合う事無くダークエルフに守護されているが故の危機感の無さが故の思考か 「 僕はハイネのものだよ 」 名を尋ねる事もせずに、部屋の内外を隔てる戸の鍵を口にしてから扉を押し開け 「 ──初めまして、僕はグレン。キミはキルステンでいいのかな?」 彼の姿を視界に捉えてから僅かに生まれた間は、先日のフレンドリーな死神との対話で出てきた情報から想像していたよりも上背があった為。自身と然程変わらぬ高さにあるビリジアンの瞳と真正面から視線を合わせて 「 残念ながら僕が持っている物が少ないからね。それに、対価なら選んでもらう方が良いでしょ?」 気後れするの無い返答は今迄接してきた人間や役柄が所以の引き出しの多さから。花の提案をしてくれた死神に心のうちで感謝を述べつつも、それを外に出す事はせずに彼の嘆息とは反対に笑い声を短く溢すだけに留めて 「 ふふ、勿論だよ。女王様 」 彼の言葉で一瞬脳裏を過ったのは言葉を交わした事のある人間嫌いの幽霊の姿。確かに彼は怖がりそうだ、なんて内心納得しつつ、眉間の間際へと突き付けられている方の手を取り手の甲へと軽く口付けてから室内へとエスコートを 「 嗚呼、そうだ。僕の部屋、ハイネの魔力が色濃いみたいだから居心地が悪かったらごめんね 」 ふと思い出したのは部屋を訪れた事のある人ならざる者たちに必ず言われる事。だからと言って一度取った手を離す事無く室内へと導くのは日々ダークエルフと接する中で中途半端に身に付き始めた自信と神経の図太さゆえ。そのままソファの元へと辿り着けば座る上座側へと座るように促し、座るのを見届けてから己は対面する位置へと座して。これでお茶菓子などがあればもてなしとしては上々なのだろうが、こういった時に限って日常生活を送る上で必要以上のお願い事を聞いてくれそうな蝶の使い魔は不在 「 何もなくてごめんね 」 へにゃり眉尻を下げ、相手の方へと視線を向け )





1536: ナザリ [×]
2024-10-19 11:25:05



>グルース(>>1534)


いやぁ楽しかったよ、ありがとうグルース。お前さんが謝る必要なんざどこにもないさ、人食いのうろつく屋敷で警戒するのぁ当たり前だからねえ。
お前さんはギンハの好物に当てはまるか微妙な線だが、だからこそあいつぁお前さんに興味を持つだろうねえ。しかし誉め言葉に滅法弱い単純な奴さ、例えお前さんが好物に該当しようが易々と喰ってしまおうたぁしなさそうだ。お前さん、相手を褒め殺しにするのが大層お上手だからねえ…ンふふ。
レンブラントは気紛れに新入りの部屋を訪れるだろうが、お前さんが罠に嵌らない賢い子だと分かればギンハ程は関心を抱かないかもしれないねえ。しかし会話の中でお前さんが弟や妹を心から大事にしていると知れば余興とばかりにそれをネタに揺さぶろうとするやもしれん。気をつけなきゃぁならんよ。
あの獅子頭は…そうだねえ、きっとお前さんを捕食してしまうつもりで来るだろうね。拗らせた奴だから甘言にもなかなか蕩けないだろうが、品のあるお前さんの態度は好ましく思うはずだよ。つまり、奴にとっちゃぁお前さんは涎が出るほど旨そうな獲物だということだ。
まとめりゃあ誰を選んでも愉しい夜が待っていそうだということだね。これで次にお前さんに会える俺の次に幸運な怪物を選べそうかい、何かありゃぁ遠慮なく言うんだよ。




1537: キルステン [×]
2024-10-19 11:27:27



>グレン(>>1535)


(やはり予想もつかなかったのはその解錠の文言。うげろ、とそっぽを向いて舌を出したのは心底ダークエルフの趣味嗜好が理解に遠いためで、それを強いられているお気に入りの彼には不快感などではなく気の毒だわといった類の憐憫を覚える。が、死神の話から彼も満更でもなさそうだと事前に聞いていたために自らの所感を押し付ける気はなく内側から扉が開かれる前には勝気な笑みへと表情の修正は済ませていて「 そう言う割には他のコと比べてスペシャルなものを沢山持った坊やに見えるけど。イイじゃない、手札の多いヤツは好きよ 」逃げることもたじろぐこともせず交わった視線にニヤリと口角を持ち上げる所作には彼への好感が滲んでいるだろうか。ともすれば凶器と成り得る鋭い爪も意に介した様子のない彼の動きを観察しながらされるがままに、手の甲へ触れた仄かに温かく柔らかい感触に肩を竦め「 そこにキスする意味、解ってやってんだったら大したモンだわ 」引かれるがまま立ち入った部屋は彼の言葉通り濃厚な一つの魔力に支配された空間で、ゆっくりと見回せばそこかしこに隣人の痕跡が見て取れ思わず〝 アハ! 〟とカラッとした笑いを短く零し「 胸焼けする部屋だこと 」やれやれといった風情で軽く笑いながら限りなく独り言に近い感想を落として、ソファーへとやや浅めに腰掛けては長い足を組んで。それは図らずもダークエルフが足を組む所作に似ていたが、彼のように高飛車な威圧感ではなく今から会談に臨む敏腕な経営者のようなインテリジェンスを纏った雰囲気にてじっと獲物の顔を見つめ「 結構。お茶の一つもままならないなんて、アンタ達はホント不便ね 」この屋敷で最も弱い立場にある人間に対してもてなしなど期待していたわけもなく、当然責める素振りも見せず高らかにフィンガースナップを鳴らして自身の使い魔たるベタを呼び寄せ「 何か冷たくてさっぱりする飲み物を頂戴。アンタは? 」まるでパノプティコンを反対にしたようなこの部屋では味の濃い熱々の飲料を口にする気は起きないまま、彼を横目で見遣りながら注文を促して。使い魔が準備に戻ったのなら組んだ足の膝上を組み上げた両方の手のひらで包むようにして「 ――それで。ハイネに何をあげたいって? 」死神と違って代価の話を挙げないのはそれが無粋と思っているから。ゆえに端的に話題の進行を求めるようにどこか朗らかさを着た声を紡いで)




1538: 執事長 [×]
2024-10-19 11:54:08



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1539: グルース・リヨン [×]
2024-10-20 13:01:17



>ナザリ(>1536


丁寧な回答有り難う、サー・ナザリ。褒め殺しだなんて……ふふ、僕は思った通りの事しか言わないよ。きっと狐の方や獅子の方が来る夜にもね。それから……そう。サー・レオニダスにはそんなにも魅力的なものとして僕が映るのだね。光栄と随喜に咽んでしまいそうだけれど、それはまた次の機会に。…うん、今回はサー・レンブラントにお相手を願おうかな。やっぱり自分の知っている怪物様にもお会いしてみたいからね。
僕は“家族”を引き合いに出されてしまうとどうにも脆いから、もしそうなれば揺さぶりに狼狽する醜態を見せる事にはなるかもしれないけれど……ふふ、又と無い希少な語らいの対価さ。その時は甘んじて受け入れるよ。
……相談はこんな所かな。本当は君ともまだ話していたいのだけれど、あまり君を独り占めしていてもいけないからね。一先ず君とのやり取りの後、目覚めてからの事も少しばかり綴らせてもらったから、そちらのお好きな頃合いにどうぞ、と彼の方に伝えておいておくれ。

それでは、サー・ナザリ。いつか再び、縁が触れ合えた夜に。


***


(――夢を見た。きっとそう、何もかも理想通りの叶わぬ夢を。瞼を開いて直ぐ、ぼんやりと靄の掛かる思考にそんな確信めいた一文が浮かんだのは、目覚めたその時に胸の内が仄かに軽い心地がしたから。「……もう少し、眠っていたかったな…」呼吸を一周する間に、するり記憶の網を抜けて霧散していったそれを惜しみながらも、身体を起こしてベッドを潔く去る。元の世界の頃と同じように彼是と朝の仕度を手際良く済ませていくその仕上げ、姿見の前で絡まり易い癖髪を丁寧に梳き、それを纏めようとリボンを手にする。――“お兄様の為に選んだの”。昨年の晩秋、誕生日に弟妹達が渡してくれた贈り物。掌から溢れる大振りなそれを暫し眺めた静寂の後、徐にその滑らかな表面へとキスを添えて、「……元気でいてね。」いつもであれば己の自室に我先と雪崩れ込むきょうだいへ施す毎朝の祝福を、いつもとほんの少し変えた別れの文言で、揺れる眼差しも合わせて。それから一つ短い息を吐いたのを切り替えに鏡の己と向き合い、手慣れた所作で刺繍の柄が上向きになるよう髪を結う。最後に服装の綻びを確かめ、振り返った先のテーブルへ何時とは無しに用意された食事に瞬いて、続けて眉を下げる。――其処にあるのは過不足無い一人分の食事であり、特別これといった食材の好き嫌いや身体の過剰反応等も己には在らず。しかし、「ううん…食べきれると、良いな……」人より浅い腑の容量だけは別問題。傾げた首と共に惑う小さな唸りは、一人きりの室内に溶けていく。今ばかりは食するものへと意識を置いて。席へと着き、もう一度その量と細めた瞳で見詰めあった後に意を決したようにカトラリーを取り、ゆっくりと食事を始める。――その視界から外れている机の上、昨夜鬼の彼に頼んだ本が予想以上の山を成す状況にもたじろぐ程驚く事にはなるが、それはまた後々。)




1540: レンブラント [×]
2024-10-21 12:49:02



>グルース(>>1539)


(安定して上質な命が取り込まれるこの屋敷では、自然界の猛獣達のように明日の糧を賭けて必死に獲物を取り合う必要など皆無。しかし獲物に対する好みが一致した怪物間では往々にしてそういった事態は起こり得る事であり、特に悪魔兄弟はその争いをこの理不尽で無慈悲な屋敷の中に見出した愉しい遊戯だと捉えている。つい先日までも同様のゲームに興じていたが、連敗を喫したからだろうか弟はすっかり臍を曲げてしまい兄からの次ラウンドの誘いも突っ撥ねる始末。微笑ましいような呆れてしまうような、或いはそのどちらも胸中に提げて一人訪れたのはまさに悪魔兄弟の〝次のターゲット〟となるやもしれない彼の部屋。適度な間を空けた穏やかな調子のノックの後「 今晩わァ 」とフランクながらも軽薄さはない落ち着いた調子で挨拶を。そのまま続けて「 君、最近入ったばっかりの子やろ?なんや困っとう事あらへんかな思て来てみたんやけど… 」さて、扉の向こうの雛鳥はもう追従するべき怪物に邂逅した後だろうか。鬼に先を越されたと勘付くのはもう少し先の話だろうが、やはりこの瞬間には期待や野心の入り混じった独特の高揚感を禁じ得ない。しかしそんな手前勝手な楽しみはおくびにも出さず、あくまで今夜は彼を害するつもりはないと明朗に意思表示をして「 俺なあ、悪魔のレンブラントゆうねん。怖かったらココ開けんでもええから、名前だけでも教えてくれへんやろか 」種族と名を明かすのも疚しい事などないと示すため。悪魔などと剣呑な単語は人間相手に警戒心を煽る可能性が高いことは重々承知で、だからこそ自らの立ち居振る舞い次第でゲイン効果も期待できるというもの。両脚の踵同士をぴったりとくっつけて爪先を10度ほど開き、そこから片足を柔く引いて背筋を伸ばし紳士的な佇まいを崩さないまま、長い爪に彩られた指先を胸の前で淡く絡めるようにして反応を待とう)




1541: グルース・リヨン [×]
2024-10-22 21:48:47



>レンブラント(>1540


(すっと伸ばした姿勢で椅子に座して向かい合うは、与えられた本の一冊目。新たな冒険へと旅立つ心地で頁を捲り文字を追う、その表情は誰知れず少年らしく好奇の輝きを以て仄かに弛んでいる。――暫しして。ふいと集中を切らして顔を上げ、近場に置かれたメモ用紙を一枚ダイヤの形へ折って栞とし、それを挟んで表紙を閉じた丁度に響いたノック音。「……おや、どちら様かな。」直後の挨拶は随分落ち着いた、しかし知らぬ声と訛り。椅子を発って落とした独り言に答えるようなタイミングで上げられた名乗りに、思わず足を止めてまだ遠い扉を見つめる。……驚きに声を零さずに済んだのは、鬼からその存在を仄めかされて構えを備えられていた事が一つ。それから、「……レンブラント?」何処かで聞いた画家と同じ名に気を取られた事が二つ目の理由。それは美術館だったか、それとも王宮の収集品か――一瞬ばかり思考を馳せて、だが直ぐに目の前の声の主へとそれを戻す。「ああ、お気遣い有り難う。」反応の遅れた声は些か緊張の固さを持ちながらも、配慮に対する丁寧な礼を。「でも、大丈夫さ。…今其処を開けるから、少々待っていておくれ。」そこに続けて和らぎが意識された音を彼へ届け、その害意の見えぬ文言を一先ず信じて半端になっていた歩を再度進める。十秒足らずと着いた扉をゆっくりと開いた先、最初に視界に入ったのは初夜の彼より幾分か馴染み深い装い、それに長い爪を持つ青白い手。視界を上げれば鋭い琥珀の瞳、さらり滑らかな紫の髪、そして――その髪から生える黒い角。更に翼に尾と、誰もが想像する“それ”の特徴を持ち得る彼へ、微かに顎を引く警戒の態度を取ってしまったのは無意識の事。「今晩は。そしてようこそ、明け星の御遣いたる方。僕はグルース・ロシニョール・アンリ・ドゥ・リヨン。君の好きに呼んでおくれ。」“悪魔”の項を聖書と絡めた己の言葉へ変換し、此方も胸元へ手を添え求められていた名の全容と共に会釈を。「…さて、うん。困り事という程ではないけれど、君のご厚意に少しばかり甘えてもいいかい?」起こした視線で琥珀の瞳を凛と油断無く見据えて、しかし声音も微笑みも悠然と柔らかなものを保ち、先の扉越しの言葉を引用した確認を一度問うた後、「今の僕は丁度、一人の静謐よりも、誰かの響きと寄り添いたい気分でね。……だから、君が来てくれた事がとても喜ばしいよ。」ふっと笑う小さな吐息と共に告げた用向きは態々訪ねた彼の面を立てる建前――それと、この胸へ澱み始めている寂寥の本音が一匙。「中へどうぞ、サー・レンブラント。大したお持て成しは叶わないけれど、どうか寛いでいっておくれ。」瞳を揺らしかけたそれを瞬きの内に伏して足を退き、扉を押さえたまま室内を掌で差して彼を招く。)




1542: レンブラント [×]
2024-10-23 16:59:54



>グルース(>>1541)


――もうちょい大きい子ぉかな思たけど。しっかりしてるなあ
(扉の向こうからの応答ひとつひとつに違和感を覚えるほど落ち着いた態度にはどこか上品な余裕さえ感じられる。新入りと数えられる類の存在であるには違いない筈なのに、少なくとも未だ謁見の叶わぬ声だけの印象ではもう何ヵ月もこの屋敷で暮らしているのかと錯覚し兼ねない。開いた扉、彼が顎を引くのとはまた別の意味合いでこちらも思ったより低い位置にあったペリドットの双眸を見つめるために顎を引いて心底感心したような調子で素直な感想を。「 生憎、仕える主人はおらへんのよ。君みたいな可愛らし子ぉのワガママ叶えるンは大歓迎やけどなあ 」口角はずっと上げたまま、洒落た彼の言葉へ返すように夢とも現ともつかない悪魔らしい誘い文句を。そして縷々紡がれた流麗な響きの名には白く柔らかな翼のはためきを感じるような心地で「 綺麗な音ばっかしでどないして呼ばしてもらおか悩んでまうなあ。君の一族はみんな翼持っとるん? 」華美な服装、洗練された佇まい、年齢の割に丁寧な話言葉、決め手はやんごとなき身分を証明するカメオ。正統な血脈を受け継ぐ者たちはその名に一貫性を持つ事も多い、そんな慣習を知っていた悪魔は世間話のような調子でひたひたと彼のプロファイルに忍び寄ろうと試みて「 悪魔招き入れた上に寛いでぇ、て。君、ホンマ大したモンやわ 」いくら害意はないと表明されたとはいえ相手は見るからに得体の知れない怪物。襲われてしまえば一貫の終わりだろうにそれを気にする素振りも見せないのは、彼が穢れを知らぬ高貴な性善説の中で大切に育まれたからなのだろうかと推察を巡らせながら扉を押さえてくれている彼の肩をトンと労うように叩いて「 おおきに 」と告げ、最初に目に入ったのはデフォルトで備え付けられていないであろう大量の書籍と、そこから仄かに立ち上る鬼の残り香に目を細め「 読書の邪魔してもうたかな、堪忍 」気にする素振りはなくそう告げて、窓枠へと歩み寄ってはガラス越しに月を見上げ「 ずっと夜なんはもう慣れた? 」肩越しに彼へと振り返り変わらず口角は緩やかに上げたまま問い掛けて)




1543: 執事長 [×]
2024-10-23 19:24:50



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1544: グルース・リヨン [×]
2024-10-24 18:52:53



>レンブラント(>1542


おや、それは失礼。…ふふ、君の賛辞と照らせる我が儘を探すのは大変そうだ。
(彼の感想を和ませた瞳で受け取った後、誘う言葉はジョークにて柔らかに躱す。思惑を知ってか知らずか、話題と掛けられた声には一つ首肯を返して、「そう。このリヨンの血統を継ぐ者は皆代々、空を翔けるものの名を戴く慣わしなんだ。歴代の公爵とそのきょうだい達も、末孫である僕も。そして、僕の弟妹達も。一人として例外無く、ね。」自らの胸元に右手を添え、名に纏わる家の子細を淀み無く朗々と告げた次。その指を首元のブローチへと滑らせて、「これは家を分ける折、王家の紋章であるグリフォンの翼を名と賜った初代に由来する――つまり、王族と血脈が繋がる一族である事の、栄誉ある命名なのさ。」王冠、鷲、二輪のアイリス――己が一族を象徴するそれらが彫られたカメオの表面を親指で撫で、そのまま続けるのは家の歴史、その始まり。驕りや優越は見当たらない、宛ら書の音読でもする教師の如く、ゆったりはっきりとしつつも何処か淡白な語り口でそう名付けの由を教えた最後、「……もっとも。僕の弟妹達はまだ、名に見合わぬ愛らしい雛鳥だけれどね。」瞼の裏へ浮かべたその幼い雛達の顔に、ふっと軽やかな笑いを吹いて締め括る。「……僕に君を拒む理由は無いからね。」室内へと踏み入った背を見届ける際、肩を叩く掌への応答に選んだのは、“何が起きても受け入れる”という意思表明。凛と覚悟を通した芯の内に、何もかも綿に包むような甘さをこっそりと含ませたそれを瞬きに切り、「いいや、本には丁度飽いてしまった所だったさ。」謝意に対して茶目っ気を滲ませた仕草で肩を竦める。それから「……そうだね。この静かな藍が続く世はとても好ましいけれど――」扉を閉ざし窓辺の彼と穏やかな視線を交わらせ、問いへと答えを静かに紡ぎながら、その傍に悠々と優雅な足取りで歩み寄り、悪魔の隣へ踵を揃える。その目の前の窓から煌々光を注ぐ眩い月を見上げれば、「起きた時に誰の声も音も聞こえない事に慣れるには、もう少し時間が必要かな。…家に居る間は、愛しい雛鳥達に囲まれて過ごす事が多かったから。」その月よりもずっとずっと遠くを見詰める瞳を細めて、話す声には微かな寂寥の吐息が混ざる。更に重ねた答えの中に並べた“囲まれる”という言葉には、雛鳥――弟妹が一人や二人などではなく、もっと多数である事が示されている。「…サー・レンブラント。」しかしそれ以上の感傷からは目を逸らして、向けた半身のまま彼と顔を合わせ、「君にも兄弟や家族と呼べる者は居るのかい?」話にその存在を零したついで、悪魔の彼にもそれに並ぶものは在るのかと、興味に色付いた眼差しと音で問い掛けの微笑みを返す。)




1545: グレン [×]
2024-10-25 01:15:01





>キルステン( >1537


“ それ ” を気に入るかは人によるし……それに、手札を見せちゃったら交渉に不利になる事もあるでしょ?
( 持ち上がった口角を見るにどうやら特段悪い印象を与えてしまった様子も無く、寧ろ好感を抱いてくれたのではなんて考えさえ浮上する。ゆるりと口角を持ち上げ首を傾けて見せるのは同意を求めるため、というよりかは少しでも余裕があるかのように振る舞うための虚勢にも似たそれだが果たして彼にはどのように捉えられるだろうか。「 ふふ、お褒めに預かり光栄ですレディ 」 演技をする上で糧になるからと詰め込まれた所作やその意味の数々は未だに確りとインプットされているが、今はそれを深く語る必要性も無いだろうと戯れに似た少々おちゃらけたような声色で言葉を紡ぎ出すと同時、軽いウインクをお披露目するだけに留めて。部屋に充満しているであろうハイネの魔力に対する感想が思いの外さっぱりとしていたのは彼の気質によるものだろうか。そうで無いにしろ腰を据えて話を聞いてくれるらしい姿勢に小さく安堵の息をこぼした後ソファへと座す姿にぱちりと瞬きをしたのは、その所作があまりにもダークエルフのそれと似通っていたから。けれども纏う雰囲気は異なるもので、直ぐに普段通りの笑顔の仮面を被り対面する位置へと腰を下ろし。「 そう言ってくれると助かるよ 」 眉尻を下げた情けのない表情はそのままに、笑みを浮かべる事で安心した様子が伝わるであろうか。注文を促されるがままにさして悩む素振りも無く 「 じゃあ、僕は冷たいコーヒーを貰えるかな? 」 きっと主人からの伺いがあったからであろうが承諾してくれたのだろう反応を残し準備に戻る姿に “ ありがとう ” と小さく感謝の言葉を落として。率直に今夜の本題へと切り込んでくる彼の言葉に視線を戻し 「 手紙にも書いたけど、カフスボタンを贈りたくって。手作りで、僕の瞳と同じ色の石を使ったやつ 」 視界に入れば己の事が僅かにでも頭に過れば良い、そんな欲に塗れた贈り物は他の怪物の力を借りなければ一気に難易度が高くなる事なんて長くは無い屋敷での生活で痛感している。一呼吸置いて対価に関する事を付け加えるのは話しておかなければフェアで無いという意識からくるもので 「 ただ、僕自身を切り売りするのは許してくれないご主人様がいるし、キルステンに対する見返りが少ない事も理解してる 」 視線は一度も逸らす事無く、一直線に相手の瞳を見据え 「 貰ってばっかりは嫌だから。俺のとこに居なくても俺を思い出してくれる物を、ハイネの側に置ける物を贈りたいんだ 」 今迄の流暢な喋りからは一転。辿々しさを残したそれは本心からのもので )





1546: レンブラント [×]
2024-10-25 12:10:26



>グルース(>>1544)


(一冊の歴史書を紐解くように流暢に紡がれた内容は大変煌びやかなもので、人間が聞けばきっと多数の人間が憧れたり羨ましがったり、或いは嫉みを向けるのだろう。だが当の本人はそれを鼻にかけるでも笠に着るでもなく只生まれながらに背負った事実として受け入れているような恬淡さえ感じさせる。雛鳥に思いを馳せたその綻んだ表情を横目に見つめ「 授かった名誉の重さをちゃぁんと理解しとる程、重苦しさを感じるもんやろ。そっから解き放たれてもなお誇り高く涼しげに羽ばたく君は根っからの貴族やね 」未だ成鳥へと育ち切らない華奢な彼の背にもきっと既に立派な翼が生えている、そう感じれば並び立つ彼へ斜めに向き直り指先をぴしりと揃えた手のひらを胸に当て敬意を示すように微かに顎を引いて浅い礼を。そうしてその手を天井に向ければ、ポンという空気が軽く弾けるような音と共に屋敷の図書館から悪魔の手中へと転送されてきたのは人間界の野鳥図鑑で「 君は鶴と夜鳴鶯。ちびちゃんらはどんな雛鳥? 」成人男性を体現するような大きく骨張った手、その親指と残り四本で図鑑を挟むようにして器用に支え開きながらページを捲ってと促すように半歩身体の距離を寄せて「 ああ…そりゃ確かに寂しいわなあ。までも、君だけやのうてちびちゃんらまで攫われてきてしまうよりマシなんちゃう? 」まだ僅かしか言葉を交わしていない中でも彼が深い愛情を弟妹たちへ抱いている事は容易に伺い知る事ができる。そんな雛鳥たちと離れ離れになったのはさぞ寂しかろう――ああ、可哀想で可愛らしい。善意なる励ましの形を借りながら含ませるのは黒薔薇の犠牲者に選ばれる可能性は彼のためだけにあるものではないという事実。この先雛鳥までもが黒い悪意の茨に絡め捕られない保証なぞどこにもないのだと――そこで少し顔を上げて周囲を見渡し、丁度窓の向こうに飛翔していたカラスの使い魔をちょいちょいと呼び寄せては少しだけ窓を開けて「 毎日この子に〝おはよう〟言うたって 」魔の言語ではなく人にも解せるそれで命令を与えれば使い魔は僅かに狼狽したようにちらと悪魔と彼の顔を交互に見て、最後にはカァと鳴いて了承を示し飛び去って。その姿を眺めながら「 窓は開けとかんでもええよ。あの子ら神出鬼没やから 」悪魔が特命を取り下げない限り、彼がここ数夜で味わった目覚めた時の静寂と孤独はきっと二度と訪れないだろう。そんな計らいの後、問い掛けられた内容にふっと笑って「 おるよ。丁度こンお屋敷に弟が一人。カナニトっちゅう可愛らし子やけど、今は色々あって拗ねとる。ろくに口も利いてくれんわ 」兄弟想いの彼と共通点を作るように、自らもさも愛おしげに弟について朗々と語る。拗ねた理由が獲物を弄ぶゲームに端を発するだなんて勿論間違っても口に出したりはせず、最後には困ったように自嘲気味の笑みさえ浮かべて「 兄ちゃんってムズいよなあ。仲良う出来るコツあったら教えて欲しいわ 」あくまでも、弟が大切で仲良くしたいけれど弟側が臍を曲げてしまって困っているのだと。そんな論調を保ったまま、眉尻をハの字に垂れさせて控えめに笑って)




1547: キルステン [×]
2024-10-25 12:13:57



>グレン(>>1545)


小賢しいコト考えてんのね。手札が多かろうが少なかろうが、相手に刺さるカードの有無で呆気なく決まっちゃうじゃない
(ハッと笑い飛ばすような言葉たちもこれまた責めるような論調ではなく、あくまでも人魚の平常運転。圧倒的に持たざる者側の立場を強いられる獲物たちが自らの思い通りに事を進めるために謀略を巡らせるのは当然の事、そのうえ異界の屋敷でそのように賢く立ち回れる胆力のある獲物は嫌いではなくむしろその逆。すぐに用意された飲み物はどちらもよく磨かれたコリンズグラスの中に注がれており、彼の前に置かれたアイスコーヒーの淵には切れ込みを入れた六角形の不思議な白い果実のようなものが差し込まれていて「 それ、見慣れないでしょ。苦いのがダメなら好きなだけ絞りなさい。ブラックが良けりゃ只の飾りとして目で楽しんで 」人間界に存在しないその果実は奇しくもガムシロップとミルクのような役割を果たすらしく、躊躇いなく彼に勧めたことから人体に害を及ぼすものではないらしい。言い終えた人魚はブルーキュラソーのような透き通った青い液体をストローで一口吸ってからコースターの上にグラスを置いて。真っすぐな彼の視線を受け止めるようにこちらも一切目を逸らさず、飼い主への返礼と言いながらそれをしっかりと自己顕示の布石にせんとする強欲さに「 ジョネルの言ってた通りね。アンタ達お似合いだわ 」納得するように数度頷きながら素直な感想を、そうしてふと勝気な笑みを浮かべて「 アタシはアンタの飼い主の事そこまで好きじゃないの。だから応援はしないケド、このキルステンを呼び出したアンタの勇気に免じて今回は甘ったれた我儘に手を貸してあげる 」変わらず棘のある物言いだが今回の件に関して助力を惜しまないという決意は彼に伝わっているだろうか。ふと思い出したようにぴっと人差し指を立て「 お代は今度飼い主に請求するわ。素寒貧に無い袖振らせるほど冷血じゃないの 」支払いであれこれ揉めるなんてスマートじゃない。半分ほど残っているグラスの中身をストローで一息に吸い込んで空っぽにして「 じゃ、行くわよ 」すくっと立ち上がり行先も告げずスタスタと扉へ向かう、その道中に「 可愛いペットが自分の為に用意してくれたプレゼントがアタシの魔力で作ったものだと知ったらアイツはどう思う?……アタシは面倒事に巻き込まれるのは御免よ。だからアンタが自分で石を見つけなきゃ 」親しくはないが同じ黒薔薇屋敷の虜囚同士、全く理解がないわけでもない。他の怪物の魔力が香る贈り物なんて身に着けるどころか粉々に砕きかねない、もしそんな事になったらあまりにもこの子が可哀想じゃない。そんなリスクをわざわざ背負わせる必要なんてないわ、そう考えを巡らせながら躊躇いなくガチャリと扉を開いて廊下に一歩踏み出し「 いらっしゃい。アタシは愚図もキライよ 」ニッと笑って彼の顔を一瞥すれば、ピンヒールの跫音を吸収する赤い絨毯の上をスタスタと淀みなく進んで)




1548: グルース・リヨン [×]
2024-10-26 22:59:55



>レンブラント(>1546


(血統に相応しき振る舞いに向けられるものは羨望、嫉視、はたまた“出来て当然”という悪意無き威圧――そのどれでもない敬意を示した彼を見る瞳は大きく見開かれる。「……そんな事、初めて言われたね。」何度も瞬きながら発した声も些か呆けて、その言葉が偽り無いものである事を物語る。それから柔く崩れた頬が素直で幼い喜びを滲ませた後、再びすっと澄んだ微笑みを整えて、「……ならば。その言葉に恥じぬ羽ばたきを、この先も。」凛と優雅に、片足を引いた仰々しい程の一礼にてその敬意へ誓ってみせる。軽やかな音に顔を上げれば、そこには一冊の図鑑。己よりも優に一回りは大きい手の上に開かれたその本を現した意味を知れば、ふっと驚きを嬉々と弛め、「ふふ。それじゃあ、上の子から順にお教えしようか。」此方からも半歩彼に身を寄せ図鑑を覗き、それに手を伸ばす。「一番上の雛鳥……次男はエグレット、まだ九つだけれど、向上心と求心力に優れている子だ。長女がシーニュ、彼女は手先が器用で、物作りが得意な淑女。三男がピジョン…彼はとても細やかな感性を持っていて、美しい詩を綴ってくれる。」ぱらぱらと捲っていく頁から抜き出すのは、まず年長の弟妹――カリスマたる白鷺、技術家の白鳥、詩人の鳩。ただ記される画を指すだけではなくて、一人一人讃える言葉を添えるのは、家族をついつい甘やかす“世話焼き”の性分故に。「それから次女と三女のアルエットとシュエット…彼女達は双子でね、歌もお喋りも息ぴったりなんだ。そして最後の四男がイロンデル。…この子は最近やっと歩けるようになったばかりだね。」続いては年少――阿吽の雲雀と梟、それにまだ殻付きの燕。頁に描かれる一羽一羽、示したその指で絵の頭をなぞる仕草と共に注ぐ視線は、とびきり愛おしげに甘い。「……これで全員。どの子も皆眩い黄金の翼を纏う、僕の大事な子さ。」ふっと彼へ戻した瞳はまた穏やかに凪ぎ、紋章たるグリフォンと弟妹の持つ色彩に絡めた言葉を締め括りに、頁から手を下ろす。――慰めるような彼の声。しかしその内容が示す事を正しく汲み取ったその瞬間はっと息を呑み、微かに強張る顔で彼を見詰めた後に、「それは、……そうだね。僕はあの子達に、怖い思いも痛い思いもしてほしくはないから。それに……」もしや、彼ら彼女らも。過った思考に視線を逸らし伏せ、応答する音は平然を取り繕って絞られる。しかし、「同じ場所に居るのに、守れない方が、余程――」大切なものが其処に在るのに、指も届かず奪われる。そんな状況を子細に想像した――或いは“思い出した”ように、続く言葉を閉め切った唇は戦慄いて、頬は蝋の如く青褪めて。短い爪が食い込む程両手の拳を握りながら、爪先に落とした目の内に揺れた怯えの雫を振り切らんと顔を上げた直後、視界に入ったのは一羽の烏。同時に聞こえた指示にその使い魔と見合わせたような同じ動きで彼を見上げて、「……素敵な心配りを有り難う、サー・レンブラント。君は随分優しい方だね。」此方へ向けられたものが先の寂寥への答えだと知って、表情も声も暖められて綻んで。「おや、それは大変だ。僕で良ければ相談に、と進み出たい所だけれど……僕自身は、弟妹達との仲違いにとんと縁が無くて。サー・エグレットが僕と競いたがる事は多かったけれどね。」見付けた共通点に面持ちは何処か華やいで、その物言いは喧嘩した弟妹の仲裁に入るような寄り添いを持って、けれども少々戸惑う色も垂らす眉に滲ませる。「……ああでも、一度彼に“何でも出来てズルい”なんて拗ねられた事があったね。その時はいつもより沢山褒めて、頭を撫でてあげたな。あの子が出来る事を一つ一つ一緒に数えて、君は凄い子だって……随分前の話だから、あんまり参考にならないかな。」沈黙を落とした数秒の次、探った記憶の箱から取り出したエピソードの一欠片を例には出したものの、今よりも幼少のその話が、すっかり成人を過ぎているだろう悪魔の兄弟に当て嵌められるとも思えず、言葉を終えた微笑みには苦みが増す。「…ふふ。それにしても、優しい君にそんなに大事に想われているその子の顔、僕も見てみたいな。」それからまた柔い吐息を零して紡ぐは、困っている様子の彼を励ます糸と、“弟”という存在に抱く慈しみの糸。その二つをゆったりと織り込んだ興味を口にして、「君さえ良ければ、今度ご機嫌を窺ってきてはくれないかい?」まるで、仲直りを促す兄のように。目の前の兄弟がまた話せる切っ掛けに、自身の話題を差し出す形で案を掲げ、己は緩やかに首を傾げて見遣った彼の返答を窺う。)




1549: グレン [×]
2024-10-27 09:53:06





>キルステン( >1547


でも、持っている物が分からなければ一先ず話は聞いて貰えるでしょう?
( 下手をすれば悪意を持っていると捉えられかねない語調だが、詰められているように感じる事が無いのは彼の性質故であろうか。同意を示すように小さく首肯を一つしてから、緩い笑みと共に “ 違うかな? ” とでも言いたげに首を傾けて見せて。そんな事をしている間に用意されたグラスの縁に添えられた見た事の無い果実のような物をマジマジと見詰めていれば耳に届く言葉から察するに、ミルクとガムシロップのような物らしい事が容易に想像出来。特段苦味に弱い訳では無いが、初めて見る物に興味があるのも事実。ほんの少しだけ絞り入れてからストローでくるくると軽くかき混ぜてから一口飲み込めば、人工的な甘みよりやや柔らかな甘味に口元を緩めて。先程までの真剣な表情から一転、目元を細めた笑みを浮かべて 「 ふふ、そう言って貰えると嬉しいな 」 お似合い、それが喜ばしく感じるかはきっと人によるのだろうが少なからずこの自己肯定感の低い男からしてみれば、褒め言葉以外の何者でも無く。少なからず今夜の願いに関しては助力をしてくれるらしい様子に安堵の息を漏らし 「 うん、ハイネ相手なら僕から払えるものもあるから、そうしてくれると助かるよ 」 きっとあのダークエルフの事、又借りの対価を求められる事もあるだろうが然程難しい事は要求して来ないであろうとの考えだが果たして。立ち上がる姿をぽかんとした表情を浮かべたまま見詰めるのは予想だにしていなかったから。けれども扉までの道中の言葉にくすりと小さな笑い声を漏らして 「 きっと物凄い顔をするだろうなぁ 」 稀に垣間見せる独占欲から予想するに、渡さずとも己が持っているだけで不機嫌になるだろう事が目に浮かぶ。グラスを満たす珈琲を半分程まで飲み切ってから立ち上がり、片付けを始めようとする使い魔たちに思い出したように 「 戻ってきたら飲むから、置いておいてくれると嬉しいな 」 なんて声を掛けてから部屋を出ていく彼の後をついて廊下へと。屋敷へと拐かされてから部屋を出たのはハイネの温室へと行ったあの一度きり。見渡しても見覚えのあるどころか景色に大差無く思えるのは不可思議な力によるものか。先を歩く彼との間をなるべく開けないようにしながらも物珍し気に辺りへと視線を巡らせながら歩を進めて )





1550: レンブラント [×]
2024-10-27 13:00:45



>グルース(>>1548)


君に追い風が吹きますように
(綿菓子を軟らかな糸に変えたような髪をそっと撫で、鶴の高潔な誓いに悪魔から返すのは期待も心配もなくただ祈りだけ。髪に触れていた手を彼の肩へと緩やかに滑らせ「 ちょっと疲れたな思たら俺の肩に留まりい。休む場所もない大海原を孤独に行かせる気はあらへんよ 」トン、と労うようにまだ華奢な肩へ手を添え黒薔薇の鳥籠に囚われた彼の止り木へとちゃっかり立候補。正直なところ、順繰りと紹介されてゆく雛鳥たち一羽一羽よりも今触れられる距離に在る至極甘やかな声と表情で囀る彼にのみ興味の矛先は向けられているが「 ふ、みんな可愛らしなあ。お小遣いあげたいわ 」可愛いと感じるのは自慢げに弟妹たちを語る彼も等しく対象に数えられ、裕福な生まれゆえ金銭の施しなど必要ないと理解していながら駄洒落のつもりで微笑ましく自身も最後の頁の鳥――燕の絵をそっと指先でなぞり。さて小手調べのつもりだったが雛鳥を引き合いに出すことで無欠に見える彼が容易に心乱される事を瞬時に学習すれば「 ……君の翼が届かん場所もある。俺らが万能ちゃうンと一緒や 」未来に起きてしまう事を恐れているのか、はたまた過去に起きた変えられない事象を回顧し唇を震わせたのか。異界の月の下、自らを喰らうかもしれない異形を目の前にして悠然と礼をした彼からは今一つ想像出来ていなかった弱さの片鱗を垣間見れた事に悪魔の内心は色めきだつも表情も声色も神妙なそれのまま「 素敵な君のきょうだいや、いつ黒薔薇に目ぇつけられるか分からん。もちろん茨が及ばん事もある、けどもし…そうならんかったら、 」図鑑を傍に置き、空いた両腕にて緩慢な動作で小さな彼を抱擁する。兄が弟を慰めるように、或いは悪魔が甘言で人間を誑かすように、すべての災厄から彼を守る盾のように、或いは退路を断ち自らの手中に収めんとする壁のように。とん、とんと彼の背をさすりながら静かで優しい声にて「 気に掛けるわ。怖い思いも痛い思いも、出来る限りせんで済むように 」闇の中にこそ安らぎを見出させる悪魔はそう告げた後ゆるりと腕を解いて、くるり踵を返せば窓に背を預けるように体勢を変えて腕を組み「 はァー……ほんまよう出来た兄ちゃんやね、君。それ素直に聞ける白鷺くんも凄いけど 」そもそも人間と悪魔では目下の者の慈しみ方が異なるのだろうが、語られた過去はまさしく目上の者の模範たるに近いものなのだろう。感心したようにしみじみ長く吐息して、真に求心性に秀でるのは彼の方ではないかとすら思えてしまう。いずれにしても彼の甘いやり方は悪魔兄弟に効果的なものではないけれど、それでも弟の敗北を煽る際に使えそうだと半ば無意識に思考している最中に当の本人に話題が移ってしまえば困ったように低く笑って「 君の事、素敵な子やと思っとるんよ。せやからホンマやったら独り占めしたいンやけど? 」蛇のような流し目はしかし爬虫類には無いしっとりとした情熱を底光りさせるように彼を見つめて)




1551: キルステン [×]
2024-10-27 13:04:39



>グレン(>>1549)


そう、イイコだからキビキビついて来なさい。ホントはアンタを連れ回すのだって気が引けるんだから
(自身の使い魔に片手間に命じたものとはいえ、出したお茶を無下にされないのは矢張り好ましい。背後から聞こえてきた使い魔への小さなお願いに背を向けたままふっと微笑み、厳かながらも上機嫌の滲む声色にて後ろに追従しているであろう彼へとお小言に似た忠告を。あの特別製の錠、部屋を満たす彼を雁字搦めにするような魔力であの部屋は最早獲物の檻から特製の軟禁室へと変貌を遂げているように感じる。そこからたった一つの閉じ込める対象を連れ出したとなれば部屋もその創造主も心中穏やかではないだろう。面倒事は御免被るがいくら好かないとはいえ同胞に不愉快な思いをさせる事も御免だ、そんな逸りに似た心地から歩行のテンポは普段よりも早く。ふと頭上に気配を感じてちらと高い天井を見上げれば短くため息を吐き、ネイルでより長く見える指先で上を指し示し「 ホラご覧。ちんたら歩いててあんなのに囲まれたらその指輪があっても五体満足じゃ済まないわよ 」あの部屋から出たのにハイネの魔力に付き纏われているような気がしていた、その元凶且つ正体は彼の左中指にこそあったのだと部屋から十分に離れて漸く気付いて。まるで早く寝ないとオバケが来るぞと子供を緩やかに脅かすように引き合いに出したのは丁度出現していた理性なきバケモノの存在。音もなく天井を這いまわる影のような靄をまとう蜘蛛は映画館のスクリーンを覆えてしまうようなおどろおどろしい巨体でじっと怪物と獲物を見下ろしており「 怖けりゃアタシの服の裾でも握ってなさい 」いかに巨大なバケモノでも怪物に敵わない事は皆理解しているため人魚と共に在る限り手を出してはこないだろう。自身はそう分かっているからよいものの、見慣れないバケモノに彼がどう感じるかは想像に難くなくつっけんどんながらもそれに寄り添う姿勢を見せながら幾つかの階段を降りていき)




1552: グレン [×]
2024-10-27 14:44:35





>キルステン( >1551


ある程度自由に過ごす事は許されているから、そんなに気を張らなくても大丈夫なのにな
( ややむくれたような声で紡ぎ出す能天気とも捉えられるだろう感覚はどれほどあの部屋を一人の魔力が満たしているのかを知らないからこそ。けれども彼が言わんとしている事も分からないでは無いために歩を止める事はせずに廊下を進み続けるも辺りを見渡しながら歩いていたためか、それとも歩みを進める彼のペースが早いのか、気が付けばいつの間にか部屋を出た時よりも開き始めた距離に気が付きつつも焦る事をしないのは指輪に守られている、そんな思考が強いため。指差された先の天井へと素直に視線を持ち上げればそこに居る巨大な蜘蛛を視界に捉え。本来であれば恐怖を覚えるところなのだろうが、それを感じるどころか内心落ち着いているのはダークエルフのお気に入りたる自覚があるからか 「 ふふ、ありがとう。でもキルステンと一緒なら安全だろうし……万が一の事があってもハイネが飛んでくるよ 」 左手の中指に嵌る指輪へと軽く口付けを落とし、服の裾を掴むまではしないものの僅かに開いた彼との距離を埋めるために小走りに近寄って半歩程後ろの辺りで 「 そういえば、今ってどこに向かってるか聞いても良い?屋敷の中に何があるとか全然分かってなくって 」 部屋の中にいれば安全、外に出る時は誰かと一緒に。そんな約束を愚直に守っているがために主な生活圏は自身のテリトリーたるあの部屋のみ。それに加えて屋敷の設備に関する話を誰かと交わした記憶も無い。へらりとした笑みを浮かべながら首を傾けて )





1553: キルステン [×]
2024-10-28 16:43:13



>グレン(>>1552)

世間知らずなガキみてえなコト言ってんじゃないわよ。大人同士は色々気ィ遣うモンなの
(ここは大いなる魔力に護られた自室の外にもかかわらず些か緊張感に欠ける彼の様子に呆れたように大袈裟な溜息を。彼の外出を〝大丈夫〟と捉えるかどうかは彼ではなく飼い主が決める事、もし彼が絶対的庇護者を持たない他の獲物と同様の立ち位置なのであればあれこれと好きに連れ回せるのだがよりにもよって囲い主はあの執着気質なダークエルフ。ハイネもそのお気に入りの獲物も自分から見れば腫れ物に近い存在であり可能な限り関わりを避けたいと感じるのは当然の事、しかし依頼を引き受けたのは少なからず彼のエゴたっぷりな願いの中にも無垢な健気さを感じ取りその気持ちは応援してやりたいと思ったからで「 ったく…。次グズグズしたら強制首根っこ鷲掴みの刑よ 」ちらと肩越しに背後の様子を窺えば指輪にキスする姿を丁度目撃し、よく懐いたものねと軽く肩を竦める。彼がしっかりと自分との距離を縮めた事を確認してから前方を正視、この見目麗しい人間がハイネに依存に近い全幅の信頼を置いている事は充分理解できた――どれだけハイネが彼を甘やかしているのかも何となく想像がついて「 きっとハイネは激しく親馬鹿になる男でしょうね。周りの方が躾にあれこれ気を揉むタイプの厄介な親馬鹿 」必ず守るからとたっぷり甘やかす余り、子の健全な危機感を養えず面倒を見る羽目になった周囲が疲弊する――そんなイフを容易に想像できてしまえば実現する夜は来ないであろうと理解しているため冗談めかしてカラカラと笑い「 終わらない廊下、ループする階段、扉だって無限に存在するってのは知ってるでしょ?とびきり運が良い夜はね、どっかの扉がステキな場所に繋がったりすンのよ。勿論黒薔薇のテリトリー内限定だけどね 」階段を降り、廊下を曲がり、それを何度か繰り返して立ち止まったのは何の変哲も装飾もない、獲物の部屋と全く同じ意匠の扉の前。自慢気にコン、と扉を一度叩いて「 これはアタシの見つけたお気に入り。誰も彼も連れて来てやるわけじゃないのよ 」そのままノブを捻り扉を押し開けると、その先には見慣れた間取りの部屋ではなくぽつぽつとランタンの灯りが点在するだけの薄暗い洞窟のような道が続いていて「 おいで。足元、滑りやすいから気をつけるのよ 」危険はないと示すようにまずは自身が一歩先に前へ、そうして半身で振り返り勝気な微笑みのまま忠告をしてから今度はカツカツと高い踵の音を響かせながら奥へと進行し――突き当たりの階段を数段登ればそこに広がるのは洞窟の吹き抜け部分。空いた穴から月光が煌々と差し込み、壁や床のあちこちに埋まった色とりどりに煌めく石がそれを反射し共鳴するようにキラキラと存在を歌う神秘的な光景が広がっていて)


***


交流中に悪いわね。アタシのお気に入りの場所、〝煌めきの塒〟のイメージ画像を公開したわ。ここにある宝石の色とか形とか自由にロル内で描写して大丈夫だからね。
https://grand-guignol.hatenablog.com/entry/locus




1554: グルース・リヨン [×]
2024-10-28 20:13:44



>レンブラント(>1550


(誓いと祈りの後の申し出に相好をまた崩して、「そのお言葉、痛み入るよ。…うん。休みたい時には、君を呼ばせてもらおうかな。」何時か解らずともそれに甘える約束をする。「ふふ、きっと喜ぶよ。」可愛いと褒める言葉は無論弟妹達のものとして、ジョークに至極楽しげな吐息を零して相槌代わりの一言を。……雛鳥達が、決して己と同じ目に遭わない保証は無い。届く言葉はあまりに残酷で、けれどどうしようも出来ない事実に一層唇を結んで俯く。震えぬよう地を踏む力を籠めた身体へ回った腕と、安堵を促す声。それへ一瞬戸惑ったように彼の顔を覗いたのは、無条件に誰かへ凭れた記憶があまりに遠く淡く、思い出すまでに時間を要したから。「――ありがとう、サー・レンブラント。」それでも額を彼の胸元に寄せて、しかし重さを掛けないまま静かな礼を返す、安らぎをもたらす言葉への精一杯の応答を。一通り弟の話を終えた後に届いた感心へ笑みの苦みは蒸発し、「ああ。彼も他の雛鳥達も、皆真っ直ぐで人の言葉を素直に聞ける良い子だから、僕も善き兄として居られたのさ。」因果の順序は逆なのだと、甘やかす長兄の言葉で丸々弟妹達を褒め称す。――月を背にした彼の眼差し。その光と同じ冷ややかに見えたそれへ確かな温度を感じて、兄の温もりを湛えていた鶴の瞳はすっと細まる。「……熱烈だね、サー・レンブラント。」声に怯えは見当たらない、だが先程までの軽やかな囀りでもない。言うなれば、命尽きるまで情を奏でる小夜啼鳥の歌を思わせる甘い音。重ね合わせた視線も同じ、先程までのふんわりとした綿羽の如き上澄みとは違う、幾度も煮詰めた蜜に似た濃密な愛の一雫を滲ませて。深く深く、その彼の情熱さえも包んで口付けるような、いやに大人びた慈愛の笑みの後。それを泡沫と掻き消して悠然の微笑を整え、「もし本当に“そう”したいのならば、サー・カナニトときちんと仲直りをしたその後で、もう一度言っておくれ。」確実性など何も無い、出鱈目や嘘を言われた所で確かめようの無いそんな条件を差し返して、彼からの情熱に今ひと時の猶予を渡す。)




1555: レンブラント [×]
2024-10-29 18:29:32



>グルース(>>1554)


(たくさん雛鳥を甘やかしてきたであろう彼は、果たして誰かに同じように甘やかしてもらっていたのだろうか。反射的にそんな疑問を抱いたのは先ほど腕に収めた彼の狼狽するような様子を垣間見たからで、甘やかされ馴れた雛達と異なりどこか遠慮して大人に甘えきれない長子、そんな印象を覚えればますます甘い誘惑を重ねたくなるのを初夜の清廉さに免じて堪えて。しかし一変、こちらの熱に呼応するように彼の中の何か重く熱いものの片鱗が首を擡げた気がして、幼さの残る姿には不似合いとも言えるひとときの表情にうなじの辺りが微かにぞく、としたのを知覚しぬらりと微笑みを深め「 ……上手に仲直り出来たらご褒美くれるん? 」退屈な屋敷では喉から手が出る程欲しい刺激。その匂いを敏く感じ取れば低い声を僅かに熱に濡らしてじっと彼を見つめ、音もなく持ち上げた鏃の尻尾の先端を形の良い彼の顎についと添わせて)




1556: グルース・リヨン [×]
2024-10-30 17:55:05



>レンブラント(>1555


(触れるひやり冷たい悪魔の象徴。そちらに一度視線を寄せ、それからまた彼へ移して贈る眼差しに、一瞬の幻とした濃密さを再び浮かべる。「……勿論。僕にあげられるものなら、何だって。」おねだりにも聞こえるその問い掛けを甘く肯定し、緩やかに上げた指は顎に添うそれの形を柔くなぞる。「僕の言葉を果たしてくれた夜、部屋を訪れたその時に、」雛の羽を繕うような、子の髪を梳かすような、優しい優しい慈しみの掌で鏃を撫でさすった後、徐と五指に包んだ其処に唇を寄せて、「思うまま、満たしたいまま――君の望みを言ってごらん。どんな事でも、叶えてあげる。」彼を捉えたまま一度も逸らされぬ夜鳴鶯の瞳。陽と若葉を映す澄んだ湖面のその内、欲して手を伸ばせば何処までも沈み包んでいく底無し沼の甘露を湛えて、愛しみあやす音色で言葉を紡ぐ。「……約束するよ。」そう締め括って彼の尾を離し、後ろに両手を組んで低い靴の踵を一歩前へと、互いの距離を縮めて。「…仲直り、出来そうかい?」まるで、己の方から頼み込んだと言わんばかりの下手の問いに、拗ねる弟妹の機嫌を窺うような微笑ましい視線を添え、彼を見上げる為にほんの少し反らしたその首をゆったりと傾げて鋭い琥珀色を見詰める。)




1557: レンブラント [×]
2024-10-30 20:51:36



>グルース(>>1556)


(どんな事でも――その言葉に万能の力など無いというのに、あわや〝自由〟の希求を口走りかけたのは彼に獲物の無力を知らしめる為の意地悪か、それともとうの昔に宿命を受け入れ未練の火が消えた筈の炉に一抹の燻りを感じたからだろうか。いずれにしてもランプの魔人を彷彿させる少年の魔性に刹那とはいえ中てられたのはきっと誤魔化しようのない事実、侫悪な悪魔ではなく単純な同胞の誰かであれば彼の虜になっていたかもしれない。怪物すら魅入ってしまいかねない彼の性質に思わずくつくつと肩を揺らしながら低く笑って「 こンお屋敷では無力なヒトの約束ほど儚いモンそうそうないで 」尾の先端に触れた体温の何と熱く感じた事か。その熱をもっともっとと欲しがるように窓へ預けていた体勢をふわりと直立に戻したかと思えば嘘か幻のようにその姿は掻き消える、まさに人の命が風前の灯火と揺らぎ消え去る儚さを体現するように。自身を見上げた彼のその背後に音もなく再臨すれば後ろから彼の首へと腕を回して、尻尾で撫ぜた顎を今度は冷たい指先で柔く掴み「 君こそ。その夜まで長生き出来そうなん? 」背後から彼の耳元へ寄せた唇で、その約束が果たされるのかを問い掛けても仕様のない雲を掴むような事と解っていながら微笑みのままに投げ掛けて)




1558: 執事長 [×]
2024-10-31 07:22:42



>和風テイストの演者様募集を解禁しました。忍者や花魁、山賊にお侍様、国籍問わず個性的なお方をお待ちしております。


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1559: グルース・リヨン [×]
2024-10-31 20:36:34



>レンブラント(>1557


(笑う悪魔の声。皿の上の料理である己の言葉に返されたそれに眉を寄せるでもなく、嘆くでもなく、ただ微笑んだままに頷いて、「……そうだね。人の世でさえ、命も約束も夢幻と同じ。一つ瞬く内に消えていく。――このお屋敷なら、きっと尚更。」ゆらり陽炎の如く姿を散らす彼へか、それとも月を見詰める独り言か、諦観と寂寥が微かに滲む静かな音を中空へと漂わせて、そっと視線を伏せる。――直後、首へと回された見覚えのある腕。背後に彼が居る、そう気付いた所で今度は顎に尾と同様ひやりとした指が這って。耳に問う近さに擽ったげにくすりと吐息を零した後、「ふふ。僕、悪いものに食べられない術には少しだけ覚えがあるからね。君より魅力的な方が現れない内は大丈夫さ。」“悪いもの”とは人か感情か、それともお屋敷の怪物か、明言はせず曖昧なまま。ともすれば“君ほど悪い子もそうは居ない”なんて解釈も出来る、そんな危うい返答を友へのジョークに同じ軽やかさで踊らせて。「…もし口上で足りなければ、何か形ある証を残そうか。」それからまた歌うは子を愛でる夜鳴鶯の音。柔く円やかに細めた瞳を背後の彼へと流しながら、傍にある滑らかな紫髪をそっと緩やかな仕草で幾度か撫で梳いた後、「……サー・レンブラント、君はどうしたい?」そうっと、冷たい頬にその掌を添えて。まるで内緒話をするような密やかな吐息を含め、何もかも赦し包んでしまう甘やかしを存分に滴らせる問いを彼に返す。)




1560: グレン [×]
2024-10-31 22:10:50





>キルステン( >1553


キミたちに比べたらまだまだガキでしょ?
( 悠久とも言える時を生きる彼らと比べれば人間の寿命など些細なものだろう、そう理解をしている為にやや冗談地味た口調で。指輪への軽い口付けの後持ち上げた視線の先が交われば、ふっと表情を和らげて見せて。どこかの世界線ではあるかも知れない未来を想像し 「 ふふ、目に浮かぶな。きっと誰よりも目を掛けて育てるんだろうな 」 つられる様に軽やかな笑い声を漏らすものの、胸の内に燻る “ 羨ましい ” そんな想いは翳りとして表情へと表れてしまっていただろうか。その感情は自身へ向く執着が他者へ移る事を想定したものよりかは、己の幼少期の家庭環境を踏まえたものなのだが、どう捉えられたのかは近くにいる彼だけが知る事だろう。屋敷の中に何があるのか、そんな質問に答えてくれる声にハッと意識を浮上させ 「 それって例えば、人間だけで廊下を辿ったとしても辿り着けるようなものなの 」 ハイネとの約束を守っている身としては一人で出歩く事なんて無いだろうが、興味が無いといえば嘘になる。ゆるりと首を傾げ、その興味を消化させようと。部屋を出てからどれくらい歩いただろうか、辿り着いた先はこれまで廊下に続いていた扉と何ら変わりのないものだが、口振りから察するに特別な部屋に違いない事は容易に想像がつく 「 そんな特別な場所に連れて来て良かったの? 」 扉の開いた先に広がる景色は薄暗いだけの洞窟に見える。立ち居振る舞いからも、身につけている物からも、どちらかと言えば派手好きのような彼が好むだろう物とは正反対に思え、傾げた首の角度は深まるばかりで。彼の声に一歩室内へと踏み込めば足から伝わる感触も洞窟のそれに近く、履き慣れない靴では滑って転ぶ未来が容易に想像出来る為に一歩一歩ゆっくりとした足取りでその背中を追いかけて。階段を登った先、眼前に広がる景色にぱちりぱちりと瞬きを数回 「 ……すごい、綺麗 」 ぽつりと呟くように。月の光を受け、色とりどりに輝くそれらは人の手の加えられていない天然の物だろうか。視界に映る範囲だけでも数多の石があるように見えるこの中から目当ての石を探し出すのはかなり骨の折れる作業となるであろうが、この場で力を借りるつもり等更々無く 「 ねえ、キルステン。この部屋の中は一人で歩いてても安全だって認識でいいんだよね? 」 廊下を歩いている際も注意を促す発言こそあれども危険に晒されるような事は無かった為、横目で見遣りながらの質問は単なる確認。肯定の返答が返ってくるのならば探し物の為に足元から頭を見せる石へと視線を向けつつ歩みを進めるつもりで )





1561: レンブラント [×]
2024-11-05 12:10:54



>グルース(>>1559)


どおやろなあ、切羽詰まった奴に迫られたらすぐ君明け渡してしまいそやけど
(顎に添えた指をつつと滑らせ、その頸動脈を長い爪にてくすぐるように横一文字にゆったりとなぞる。どれほど言葉を弄しても所詮悪魔は悪辣なるもの、それをこの短い間に理解したと解釈できる彼の言葉を否定するでも抗弁するでもなく、むしろ危うい綱渡のようなこの夜気を味わい愉しむように密やかな笑気を声に織り交ぜて「 ほんなら人質取らしてもらおか? 」耳を伝って脳を溺れ蕩かす毒の甘露のような声、悪魔でなければそれだけでくらくらしてしまいそうなそれを軽やかに受け止め頬に添う柔らかな手のひらの側面を唇で淡く食みながら家紋の浮かび上がるカメオをコツ、コツと硬く鋭い爪先で指し示し「 それともこっちのンが一生懸命自分守ろうと出来るやろか 」見せ付けるように背後から伸ばした手を彼の眼前に、図鑑を顕現させた時のように手のひらを上に魔力を込めればまたしてもぽむっと空気の弾ける音と共に掌上へ現れたのは精巧な白鷺の模型――否、手のひらサイズだが命あるように動き時折小さく鳴いている。「 俺がカナニトと仲直りして君の部屋に来た時、もぬけの殻やったら…… 」声には相変わらずの笑気を幽かに交えながら、ゆぅっくりと拳を握ってゆく――当然身体を押し潰す圧力を感じた小さな白鷺は苦し気に一声高らかに鳴き、それを契機にふっと力を緩め再度手のひらを開いて見せて)




1562: キルステン [×]
2024-11-05 12:15:50



>グレン(>>1560)


(こちらの忠告もどこ吹く風と生意気な態度に改めて小さく肩を竦め、しかしそれとは裏腹に曇った表情も横目に見逃さず色々あるのねと短く吐息して「 一度見つけた特別な扉はね、同じ場所でお利口に待ってくれてるわけじゃないのよ。アタシは自分の魔力でマーキングしてるからそれを辿ってるの 」無限の扉はその位置関係すら目まぐるしくスイッチを繰り返しており、だからこそこの屋敷では変動し続ける道順を覚えるのはまさに徒労を極めた行為。魔法を行使できる怪物だからこそ道を辿れるのだと種明かしをしながら、哀れな獲物にだって冒険の権利くらいはあるとふと思考し代替案を挙げようとぶつぶつと喋り始め「 クソ長い紐か何かをドアノブに括って、端っこを自分の部屋まで持って帰れれば――いいえ、それこそ無謀ね。一晩でこんがらがっちまうわ 」ゆるゆるとかぶりを振って思い付きに過ぎないアイデアの致命的な欠陥を受け入れて。「 アンタの飼い主にこのアタシがテキトーなモン持たせるわけないでしょ。持ってる手札は使うわよ 」これは自身の面子にかかわる問題なのだと背を向け洞窟を進みながら端的に疑問に答え、そうしてこの光景に目を奪われる彼の様子を満足げに眺めてはカツカツと歩いて宝石の物色に向かいながら「 ええ、この部屋の美しさを理解できないケダモノは締め出すように細工してるわ。荒らされたら堪ったもんじゃないからね。安心して目当ての石を探しなさい 」敢えて彼の方を向く事無く安全を告げることで理性無き化物からの干渉を受ける可能性が限りなくゼロに近いことを示しつつ、手や視線を忙しなく動かし宝石たちを観察しては黒と金の混じったような水晶型の石を発見しちょいちょいと手招きを「 …あら、こんな色前まで無かったわね。ハイネに似てるわ、ちょっとこっち来て御覧なさいよ。やァんコッチのも素敵じゃないッ 」招いておきながらそのすぐ近くに自身の好みにストライクな深くも透き通ったビリジアンの石を発見し、目を輝かせながらキャッキャとはしゃいで)




1563: グルース・リヨン [×]
2024-11-05 19:30:03



>レンブラント(>1561


……雛鳥に似た誰かであれば、可能性はあるかもしれないね。
(とくとくと温かに脈打つ喉へ滑っていく指と、其処に備わる鋭い爪。命を遊ばれるようなその仕草の好きにさせ、己は彼の頬に当てた掌でゆったりと冷たい肌を撫でる。世間話の軽やかさと薄氷を辿る危うさを併せた会話は、首元から届いた硬い音に一度途切れる。「それは、」それから転がり落ちた声には緊張の糸が密かに縫われ、次にまた問いを積みかけたその眼前に現れたのは彼の掌上で囀り尾羽を揺らす白鷺。愉楽の混ざる言葉と共に畳まれていく指の内、その白鷺の悲鳴と雛鳥が己を呼ぶ声が重なって――咄嗟だった。彼の力に自身が敵う事は無いと解っていて、潰れる前に拳が緩められたのも見えていて、それでも気付けばその小さなものを庇うように彼の五指と白鷺の間に自らの手を隔てていた。「――…君はとても、上手なお人だね。」今の数秒、止めてしまっていた息を少しずつ取り込み、感情を抑え付けた静かな音色をまず一節。続けて、「いいよ。それならば僕は、僕の持ち得る全霊を以て“その時”まで生き延びてみせよう。だから、」芯を持って朗々並べ立てるは彼への宣誓、振り返り浮かべるは貴族の優雅たる笑み。……あの一瞬の間、恐れに粟立った背の震えも、跳ね上がった心臓の音も、今もまだ逸ったままの拍動も全て伝わっているだろう。それでも、「君も、僕の愛しい雛鳥達への約束を違えないように。」何もかも圧倒的な相手を前に、怖じ気を圧し潰し隠して高潔に見せる“強がり”を、微笑む眼差しに凛と宿して。彼が己を抱擁した際の、“もしも”の言葉を引き合いの契りと告げる。「…白鷺の彼に、誓っておくれ。」その最後、ふっと移した視線の先。彼の掌でふわふわ膨らむ羽を繕うその鳥を通し、今も遠い向こうで何も知らず生きる己が弟に馳せる慈しみを細めた瞳と柔い声に湛えながらも、己と同じ誓言を彼に確と求める。)




1564: レンブラント [×]
2024-11-06 22:17:25



>グルース(>>1563)


……おおきに、
(取り乱すか或いは激昂するか、並の人間であれば大きく揺さぶられた感情に引っ張られて態度や行動にそれが発現してしまってもおかしくない自らの試しにも似た戯れに、期待に反さず彼は気丈を保ってみせた。無論それが虚勢だと見抜けないほど優しく無神経な怪物ではない、だからこそ自身の目には大きく跳ね上がるような鼓動も背筋の震えるような恐れも綯い交ぜに強さを圧し出す様子は大変可愛らしく好ましく映るもので。皮肉と取れる賛辞に三日月のように口角を吊り上げ背後にて小さく礼を、間髪入れずに「 君はめっちゃ魅力的な子や 」応酬を一往復だけ返すようにこちらからは心からの感想を。魔力でネジを巻いた分だけ動くに過ぎない錻力の玩具なのにやはり効果覿面だったらしい白鷺を取り囲むように、掌には黒い鳥籠が形成されていき「 勿論。悪魔は嘘吐くけど契約は守る――そういうもんや 」急に袋小路へ追い詰められ狼狽するようにきょろきょろと細い首を巡らせる自律人形に我ながら良いリアクションだと内心で微笑みながら、気を付けなければ一晩で失くしてしまいそうな小さな黒い鍵をそっと彼に差し出して。約束の夜、それと引き換えに白鷺は空へ解き放たれるのだと、そう示唆しながらぬるりと彼から離れるように姿を消しては瞬きのうちに眼前へ現れ胸に手を当て浅く礼を「 この白鷺は俺のモン。やから俺が誓うのは君自身にや、グルース 」それが未だ黒薔薇の目に留まらぬ本当の次男を指すのかそれともただ自分で作り上げた人形そのものを指すのか、煙に巻くように薄く微笑し腰を屈めてじぃっと彼の目を見つめて。もし彼が鍵を受け取ってくれたのならばその時点で契約は成立、ああ面白い愉しみが出来たと上機嫌に悪魔は微笑みを深め「 俺も作戦考えんとな。臍曲げた弟とどないして仲直りするか…どう転ぶか楽しみにしといてなあ 」サラサラと微かな音と共に足元から魔力の粒子となり掻き消えてゆく、特段呼び止められなければこのまま最後まで蛇のような笑みを残して幻の如く消え去るだろう)




1565: グルース・リヨン [×]
2024-11-08 07:10:03



>レンブラント(>1564


……それはどうも。
(彼の賛辞に、形のみの礼言を。それから彼の五指を塞ぐように白鷺と隔てた其処からも、震えが見付からぬ内にそっと手を離せば、掌のそれは何処からと無く組み上がった鳥籠に閉じ込められる。変化に戸惑う様子を見せるその子に“ごめんね”と、音無き唇で胸中の罪悪を詫びた後、次に眼前へ現れたのは黒い鍵。差し出された小さな小さなそれを、下から掬うようにして手の中へそっと収める。視線をそちらに取られた隙にまた失せた背後の気配は、瞬きと共に上げた視界の内に。此方を覗いて細まる琥珀を、臆さず逸らさず、真っ直ぐに見詰め返して微笑んで、「…ああ。君の行く先に幸あらん事を。」少しばかり強気な振りを。声色ばかりは穏やかに、消え行く彼へ祝福を贈って――静寂の帰ってきた室内。踏み締めていた足を緩めて座るベッドの縁で、落とした目線の先にあるのは契約の証。今頃になって押さえ付けた怯えが微かに揺らすそれをぎゅっと握り込み、その上へもう一方の手を重ねて、「――大丈夫、大丈夫。」胸に抱いて背を丸め、身ごと包んで温める言葉を溢す。「僕が守ってあげるから、君は何も知らずに、安心して眠っておいで。」泣く子をあやすように手の甲越しに鍵を撫で、此処から届く筈も無い安堵の情を、それでも淡く甘い音に乗せて。「エグレット――僕の可愛い白鷺、大事な家族。…君を愛しているよ。だから、」名を呼んだ彼へ紡ぐようで、自分を確かめるようでもあるその羽毛の愛の中、「……どうか“君まで”、消えてしまわないで。」“二度目”を恐れて悲痛に絞り落とされた、切実なおまじないと祈りを。……俯ききった顔は誰も窺えない、誰にも窺わせない。弱る姿を隠す小鳥の如く、吐息さえ潜めてベッドの陰にじっと蹲った後。ふと息を深く吸い込み、すっと窓の向こうを見上げた顔に怯えは浮かべず、ただ毅然とした笑みを湛えて、「……見ていておくれ、」凛と背を伸ばし立ち上がる姿は、目一杯に翼を広げ、気高く空へ飛び立つ鶴そのもの。「ねえ、――――。」その先に続けた名は、かの悪魔か白鷺か、それとも――知るは鶴に光を注ぐ窓辺の月ばかり。)


***


今宵も良い一時を過ごせた事に感謝を、サー・レンブラント。君は駆け引きの上手なお人だね、僕では敵いようが無い。……でも、愛しい雛鳥達のお話が出来て楽しかったよ、有り難う。
さて、それでは次は宝箱で紹介させてもらった虎の方の手番……と言いたい所だけれど、その前に少し相談かな。彼、まだ指名を決めきれていないようだから。
今、彼が候補として考えている怪物様はお三方。レディ・ゼズゥとサー・キルステン、それからサー・アッシュ。僕から見る限りどの方とも相性の不安は無いのだけれど、だからこそ迷ってしまってね。君達怪物様方から見て、このお三方の内と誰が良いのか尋ねたい、もしくは彼らと彼女以外でも気の合いそうな御仁が居たのならそちらの紹介を願いたい、というのが相談事の要点さ。……候補はあくまで候補で、正直どの方も魅力的だから、君達の思うままの答えをおくれ。

では、僕は一度休息を取るから、この先は虎の方にお任せしようか。……ふふ。またね、サー・レンブラント。約束の夜まで息災を祈っているよ。




1566: レンブラント [×]
2024-11-09 10:55:26



>グルース(>>1565)


回収おおきになァ、俺の方こそ君の反応が可愛ゆうて楽しませてもろたわ。また遊ぼなあ。
次は早速虎の彼に会わせてもらえるんやね、相手に選ばれる怪物が羨ましなあ。そうやね、まず挙げてくれた候補は君の見立て通りこっちも何も不安ないわ。となると希望してくれとるルートと照らし合わせて誰がより適してるかやけど…秘密の共犯者の道はこンお屋敷とそれを支配する黒薔薇だけやのうて、おんなじように囚われた俺ら怪物全員を自分勝手な炎に巻き込ンで殺戮する修羅の道や。

キルステンは挙げてくれた中では一番精神が安定しとって、同じ境遇に苛まれる同胞の事もなんやかんや大事にしとる。せやから、かなり酷な道を歩ませる事になるやろなあ…まア漢気のある奴やから心中決め込んだら迷うことなく虎と並び立って突き進むやろけど。
ゼズゥは物分かりのいいツラしながら酒やら煙草やらナシやったら屋敷に囚われた運命を直視出来ひん危うい弱さを持っとる。こン屋敷と黒薔薇が憎うてしゃアないし、こっから解放されるならそれが死っちゅう極端な形であれ同胞にとっても救いになるんちゃうかて開き直れそうやね。現状に絶望しとっても自分の無力を理解しとるから動けん、そういう奴やからこそグイグイ手ぇ引っ張って道を切り拓いてくれる虎の彼ン姿はえっらい眩しゅう映るやろうね。
アッシュは自分を愛して認めてずっと傍にいてくれる存在を渇望しとるし、そんな特別が出来たンやったら何にも顧みることなくその存在の為だけに行動してどんな犠牲も厭わんやろうね。…厭えるアタマが無い、ちゅう表現の方が適切やけど。そういう意味では無垢で無邪気にいっちばん残酷な道をズカズカ無遠慮に驀進出来る奴や。喉から手が出るほど欲しかった特別な人間にこの屋敷から出たい、言われたら後先考えんと自分から「だったら屋敷を燃やしちまおうぜ」なンて言い出すかもしれんなあ。
挙げてくれた三人以外やったら、ジョネルやギレルモなんかもアッシュに近い属性で適性があるかもしれんね。どうやろ、こン情報でお相手絞れそうやろか。

ああまたなぁ、グルース。長生きしてや。




1567: 執事長 [×]
2024-11-09 12:51:14



【 黒薔薇屋敷の扉は開かれており、演者様を歓迎します 】


◆統一された世界観で、複数のキャラクターを気軽にCCしながら遊びたい
 (基本的には各演者様にそれぞれの別の世界線があり人間同士の関わりを持つ事はありませんが、兄弟や姉妹等の設定であればCCしながら同じ世界線で遊ぶ事も可能です)

◆キャラメイクしたけれど満足に動かせず眠ったままのキャラクターの供養をしたい

◆亡国のお姫様、失地した忍者、古代のアマゾネス等々の一風変わったキャラメイクをしたい


――他にも、黒薔薇のお屋敷が演者様の楽しめる場となれれば幸いです




1568: ナミル・アッシャムス [×]
2024-11-09 17:26:00



>レンブラント(>1566


よぅし、こっからは鶴の坊主に代わって、俺の出番だな。っつう訳で、此方さんじゃあ初めまして、黒薔薇の怪物さん方。
しっかり丁寧に答えてくれてあんがとな、悪魔のアンタ。話聞いても迷っちまう所は正直多いが、そうさな…そんなら、ラミアの嬢ちゃんと道を歩ませてもらおうか。なぁに、過酷な茨道なんぞこちとら百も承知、何もかもぶっ飛ばす勢いで手を引っ張って走ってやるさ。

そんじゃ、前口上はこの辺にして、とっとと舞台に上がらせてもらうとしよう。アレコレ寄り道したり、何か問題が起きたりするかも知れねえが、まあ後の事はまた後で考えりゃ良い。
これから宜しく頼むぜ、怪物さん方よ。


***


指名:ゼズゥ様
希望ルート:秘密の共犯者ルート
名前:ナミル・アッシャムス(Namir Al-Shams)
性別:男性
年齢:46歳
職業:商人
性格:気っ風の良い豪快な人物、が第一印象。怒る事の無い余裕ある感情表現ははっきりと、言葉や態度は堂々としており、他者から扱き下ろされたとしても心一つ揺るがず笑い飛ばす自信家でもある。それを裏打ちするのは、興味を持った何事も完璧と成すまで修練を積み重ねる、粘り強く妥協の無い努力家の片鱗。『有言実行・即実行』の自銘の下、良いと思った事を直ぐ様行動に移す活発さ、自分から積極的に声を掛ける社交性の旺盛さの反面、一人きりの寂寥と退屈が苦手。それ故、一人にしておけば突拍子も無い行動に出る事もままある。
容姿:身長194センチ。幅広の骨格に筋肉が乗るがっしりとした体躯に高めの体温。黒色の髪は芯を持った固い毛質であり、一度癖が付くと直り難い為、ベリーショートに整えて額を出す形に前髪を分けている。髪と同色の眉は太めで真っ直ぐ、笑い皺の付いた切れ長のアンバーアイと相俟って、虎のような意志の強さを窺わせる。全体的に彫りが深く、やや厚い唇と浅黒の肌がエキゾチックな雰囲気を纏わせている。ゆったりとした黒の開襟シャツ、白のスラックスと至ってシンプルな格好だが、どちらも専用に仕立てられた質の良い一品。シルバーリングを左手の薬指に着用、生まれつき左側の肩と鎖骨の境界辺りに目玉のような二重丸形の赤痣がある。
備考:15歳で故郷を飛び出し、その身一つでやりたい物に片っ端から手を広げ、宝飾品から不動産まで幅広く商業を育てて財を築き上げた後、それらを子や部下に引き継がせ早々に隠居した元企業オーナー。事故や病など原因は様々ながら、親族とその伴侶全てが40代の内に終命する早世の家系であり、本人が看取った内では、両親、兄姉、弟、妻が40代の内に逝去している。多くの命の終わりに立ち会ったが故か、「いつ終わっても笑って逝ける、悔い無き人生を」としたい事を貫き通す方向に志を決め、思い立てば世界旅行やら登山やらと日々エネルギッシュに驀進している。とうに成人し独り立ちしてはいるが二人の子を持つ父親でもあり、少々荒っぽいものの年下の面倒見が良い。声は強い意志と同じく張りを有してよく通る、重ねた年の分渋みの滲むバリトン。一人称は俺、二人称はアンタ、または呼び捨て。年若い相手には嬢ちゃん、坊主などと呼ぶ事も。

ロルテスト:
(朝日が昇る少し前、熱い珈琲を片手にルーフバルコニーへ上がって紫煙を燻らせる。手摺に寄り掛かってまだ静かに眠る街を眺めていれば、遠くから顔を出す太陽がゆっくりと夜を赤く焼いていく。「おう、おはようさん。」些かの眩しさに目を細めながらも、その光へ親しげな挨拶を投げるいつもの日課の後。珈琲を啜る傍ら今日の空っぽな予定を何で埋めるか暫し思考を巡らせ、「あー……そういや、アイツ店出したっつってたな。」思い出したのは少し前の友人との会話。念願のカフェ経営を始めたと笑う若き彼の背を叩いて祝福した事が記憶に新しい。「…よし、朝飯がてら顔出すか。」そう決めるが早いか半分程吸い残した煙草を消して、準備に戻ろうと踵を返したその隣のテーブルに、真っ黒な何かが乗っているのが視界を掠めた。「……ん?」改めてよくよく見たそれは薔薇を象る封蝋であり、無論用途に適した便箋が共立って置かれていた。「ほう。今時シーリングなんて、凝った真似する手紙もあったもんだな。」思わず零れた感心する言葉はさておき、その唐突に現れた不審物を手にしてみれば紙も蝋も中々の上等品、誰かの宝物でも舞い込んできたのかと辺りを見回すが、探す素振りをする人影はどの窓にも道にも見えない。首を傾げてその黒薔薇と向き合っていると、いやに中身への興味が疼いて仕方無く、気付けばぱきりとその封を割っていた。中に書かれたその一文を目で辿り、「……迎え、ねえ。」楽しげに呟きを返す。これは己に当てた文言だと、根拠は無くともそう直感して、「カッカッカ!良いねえ、俺を選ぶたぁお目が高い!いつでも来い来い、歓迎するぞ。」大笑いしてひらり振った紙が風に浚われ、舞い上がっていくそれを見上げ――覚えていたのはそこまで。次に開いた目に飛び込んできたのは見慣れない天井、それと素っ気無いが豪奢な調度品。「……何だこりゃ。」起き抜けの嗄れ声で疑問を落として身体を起こし、室内を見回しつつ眠る直前の事を思い返す。そう、確か日課の後に妙な手紙を見付けて――「……ああ、“迎え”ってヤツか。」思い当たるのはそれくらいしか有らず、一人納得した次に、「これじゃあ“迎え”というより“誘拐”だな。」実際そうであるかもしれない可能性を一息に笑い飛ばす。……さて、少しばかり状況の情報を、と探索に立ち上がった瞬間に響いたノック音。それに思案を回したのは刹那にも満たない間、欲しいものが向こうからやってきたとばかりに口の端をにんまりと弛め、「あいよ、ちょいと待ってな。」あっさり返事をして大股にドアへ近付けば、これまた呆気なく簡単に其処を開いてノックの主を不敵な笑みにて出迎える。)

Image:※じゃろ様の「uomo」をお借りしました。
https://picrew.me/share?cd=cFnC7vbJ18




1569: グレン [×]
2024-11-09 21:14:49





>キルステン( >1562

( 純粋なる興味からなる質問に真面目に思案してくれる辺り、彼が “ 良いヒト ” なのは疑いようもなく。部屋が動くなんて事のない元の世界であれば彼のアイデアも突飛だなんて感じる事は無いのだろうが、今いるのは摩訶不思議な屋敷。首を傾げ考える仕草を見せるも良い案なんて浮かんで来るはずもなく 「 仲良くなった誰かしらに連れて行ってもらう、っていうのが一番マトモそうだね 」 苦笑を浮かべて。彼の様子を見て察するに屋敷の廊下のような危険と隣り合わせと言うことは無いらしい。それが聞けて満足、とばかりに足元を彩るかのような色とりどりの宝石の中から目当てを探すべく一歩二歩とゆっくりとした足取りで歩き回っているも、呼び寄せるように手招きをされれば側にしゃがみ込み 「 ふふ、確かに 」 視界に捉えた石はダークエルフの外見を彷彿とさせるもので。すうと目を細めつつも、それに対して然程心が惹かれないのはもっと彼らしい宝石が、色があるだろうと考えているからか。隣ではしゃぐ様子にゆるりと口角を持ち上げて 「 ねえ、こっちはどう? 」 手招きをしつつ案内をするのは先程見かけたアレキサンドライトに似たそれの所 「 キルステンの好みのど真ん中からは外れるかも知れないけれど、石言葉も含めてぴったりだと思うんだよね 」 月光の差し込む洞窟内では紅いルビーのように見えるだろうが屋敷の中、少なからず人間に与えられている部屋の中で見たならば青緑色に見えるであろうそれ。傍に欠片が落ちている事に気が付けば、軽く袖口で宝石を拭ってから 「 騙されたと思って部屋の中でこれ見てみてよ 」 彼が手を差し出してくれたのならば、その手の中に宝石の欠片をコロンと転がすように入れるつもりで )





1570: ゼズゥ [×]
2024-11-09 23:37:56



>ナミル(>>1568)


(物憂げな視線を落とす先は両手の内に収まるグラス。あと少しで飲み干せてしまう量まで減った透明の液体に目を伏せ、傍に控えるトカゲの使い魔は空っぽになったボトルの上にちょろちょろと登り心配そうに主人を見つめ「 …分かってる。今夜は一本って約束だもんね 」力なく微笑しグリーンを基調としたネイルに彩られた指先でつるつるとした使い魔の鱗をそっと撫でる。小さなトカゲは心地良さそうに目を細め、また主人の深酒を止められなかったら…という懸念が杞憂に終わった事に安堵するようにその場でくるりと一周してからぷきゅいと鳴いて「 この近くに新入り?……そう、また… 」またひとつ、理不尽に黒薔薇へ縛られる命が増えてしまった。陰る表情を引き摺ったままとぐろを巻いていた下半身をしゅるしゅると解いて立ち上がり、手慣れているというよりすっかり癖になってしまったという手つきでテーブルの上のシガレットケースから黒い煙草を一本取り出し咥えながら自室を後にし、向かうのは件の不運な新入りの部屋。あまり煙の出ない仕掛けをしているのか、僅かな紫煙をくゆらせながらノックの応答を待つ事数秒。怯えなど微塵も感じさせない、寧ろ微かな喜色さえ含むような声が扉の向こうから聞こえてくればきょとんと眉を上げ、その表情のまま想像だにしなかった剛毅な笑みと対面し「 ……こんばんわ。あんた、人間にしちゃデカいね 」些か抑揚に欠けるトーンで思ったままを告げながら相手の顔を見上げ「 新入りって聞いたよ。色々困ってるだろうから説明しに来た 」端的に訪問の用件を伝えれば答えを待つこともなく上げていた視線を真正面に戻し、明らかに人ならざる下半身を器用にくねらせその鱗をずるずると引き摺りながら彼の横をすり抜けるようにして室内へと進み、まだどの怪物の残り香もない部屋に一番乗りだと悟りながら特段それを嬉しいとも面倒とも感じることなく彼の方に顔を向けて「 …煙草、苦手だったらごめん 」言いつつ消す気は無いのか、灰が床へ落ちる代わりに微細な粒子となってハラハラと消えてゆく不思議なそれを咥えたままソファーの背凭れ部分に両腕を置くようにして体重を僅かに預け「 あたしゼズゥ。あんたは? 」自然と視線の先にある、不気味なほど巨大な銀色の満月を見据えながら問い掛けて)




1571: キルステン [×]
2024-11-09 23:39:24



>グレン(>>1569)


そういうコト。いいじゃない、アンタは他のコと違って頼む相手に事欠かないんだから
(この屋敷では風前の灯火に近い儚さをもつ命の炎、それが燃え尽きてしまう前に不思議なこの屋敷を探検したいと願う気持ちは理解できる。だがそれを易々と叶えられる獲物は決して多くない、彼のように特定の怪物から深い寵愛を受けるのならば話は別だが「 なあに? 」お気に入りの場所で煌めいているものに囲まれてすっかり上機嫌なのか、幾許か刺々しさが抜け丸みを帯びた声にて手招きに応じてカツカツとヒールを運び「 あら情熱的ね。嫌いじゃないわよ 」自身の顎に手を添えまじまじと見つめる紅は率直に綺麗だと感じるものの確かに選抜して自らの手元に持ち帰るほどのものではない。だからこそ光源が異なる場所でそれを見る機会もなく、どこか腑に落ちない様子のまま彼の意を汲んで片手を掌を上に向けて差し出し「 アンタ、石言葉なんていちいち覚えてンの?ロマンチストなのねえ 」指先でつまんだその欠片をあちこち透かして観察しながら、しかし変わる気配のない色合いに首を傾げてポケットへと仕舞い込み「 それじゃあ、ハイネにあげる石にも意味のあるもの選ぶワケ? 」ゆったりとしたテンポで洞窟を歩くヒールの音を響かせながら、自らも再度物色へと戻りながら語りかけて)




1572: ナミル・アッシャムス [×]
2024-11-10 11:24:59



>ゼズゥ(>1570


(己が文字通り頭抜けた体格である自負から、ドアを開きつつ下げる癖の付いた視線の先で、躑躅を彷彿とさせる濃色の瞳と搗ち合う。「おう、こんばんは。嬢ちゃんこそ随分イカした格好だな。」初めの挨拶に添えられたものを褒め言葉として受け取り、それに此方からも一言お返しをした後、「そりゃあまた、わざわざと有難い。」礼の一声と共に、入室の素振りを見せた彼女へ一歩退き、少し離れた所でやっとその全身に気付く。――作り物とは思えぬ動きをする蛇の胴と尾。それにタトゥーかと思えた肌の鱗も、照明や月光を反射して艶々と煌めいている。しかしながらそれらに呆気に取られたのは一瞬の話、今は情報収集と頭を切り替え、丁度彼女の真正面へと当たる位置まで己も移動する。それから詫びる彼女へ上げた片手をひらひら軽く振って、「いい、いい。気にすんな。俺も煙草はやるクチよ。」そう寛大に笑みながら、どっかりと傍の椅子に脚を開いて座る。「俺はナミル・アッシャムス。宜しくな、ゼズゥの嬢ちゃん。」続けて名乗りに応じて此方からも堂々あっさり答えを渡したその次、「さて、自己紹介も済んだ事だし、アンタの親切にちょいと甘えさせてもらおうか。」本題とばかりに話の道を開拓しつつ、人ならざる何かへ対して距離を縮めるように、膝の間で手を組み上体を彼女の側に傾ける。「そうだなあ…まず此処が何処で、何の目的で此処に俺を置いたのか、その辺りを訊かせてくれ。」一番初めの小手調べ、まるで交渉事でもするかの如くじっくりと彼女の瞳を見据えた問いの後、「なにぶん、誰ぞに拐われる理由に心当たりが多くてなあ。こればっかりは見当がつかん。」ジョークなのか本気なのか、少なくとも喋る当人は些事とからから笑って質問の補足をし、そのまま彼女の返答を待つべく一度言葉を締める。)




1573: ゼズゥ [×]
2024-11-13 10:47:02



>ナミル(>>1572)


……嬢ちゃん?
(どこか気怠い気性をそのままに僅かに瞼を押し上げることで眠たげな双眸を軽く瞠ったのは明らかにヒトよりは数段長い時を歩んできた自負から来る違和感、しかし何の説明も受けないまま理不尽に囚われた彼にそんな事は知る由もないと理解しているためそれ以上の追及はせず「 この姿がイカしたカッコに見えるなら、あんたの感性は〝こっち側〟だね 」人を堕落させる悪しき存在、毒牙によって命を蹂躙し自身の体積より遥かに大きな獲物をも丸呑みする貪食の怪物。蛇という生物が人間界で忌避される側だと自覚があるうえに、事実ここへ攫われてきた人間たちも往々にしてこの鱗や異形の風体をおぞましいものを見る目で眺めるもの。ゆえにあっけらかんと告げられたポジティブな感想は世辞の類であると解釈し、ふたりの間を隔てる埋めようのない種族の差を示唆するようにじつと見つめなければ見逃すほど幽かに口角を上げて。「 そう、気の毒。ここじゃあんた達は煙草一本味わう事もままならないのに 」此処で人間に対して保証されるのは最低限の衣食住であり、嗜好品は自動で支給される対象には含まれない。もし酒と煙草に依存する自身が彼らの立場に置かれればと思うとぞわりと背中に冷たいものが奔り冷汗が滲んでしまう心地で「 ……あんた、あっちで悪い事してたの? 」豪快に笑う彼に好奇でも嫌悪でもない純粋な疑問を宿した目を向けるが、しかし彼の態度の通り善人も悪人もこの屋敷では些末な事。どこから話そうかと一度煙を吐いてから食指と中指で吸いかけの煙草を挟み「 あの月見てよ。あれだけであんたが昨日までいた世界とは全くの別物でしょ?ずっと夜だし、魔法やら怪物やらで溢れてる。此処は黒薔薇のお屋敷、有り体に言えばあんたの死に場所。 」視線だけで示すのは窓の先に鎮座する滑稽なほど巨大な満月。次いで異世界を証明する自身の尻尾の先で一度だけ床をぽふりと叩いて見せて、初対面だがずいぶん剛毅な人物に思える彼に回りくどい表現は無用と抑揚に欠けた調子で淡々と紡ぎ「 このお屋敷に住んでるのは怪物とその使い魔、それと攫われた人間たち。あんたは数十億の中から怪物の食事に選ばれたの 」そこまで言い終えてから、まるで息継ぎでもするように当然のような手つきで一口煙草を吸って。屋敷に住まう存在についての言及にひとつ言い洩らした種があると気付けば視線を斜め上に向け「 ああ…忘れてた。もうひとつ、腹ペコのケダモノも屋敷のあちこちを徘徊してる。言葉の通じる相手じゃないから、見つかれば人間はすぐ食べられちゃう。あんた達はあくまでもあたしらの為の食事、だからそんな勿体ない目には遭ってほしくない。…この部屋はもうあんたのものだよ、ナミル。だから気兼ねなく過ごせばいいし、生活に必要なものは使い魔が世話してくれる 」同じく黒薔薇に囚われた身としては何百と説明してきた当然の事柄、しかし今しがた拉致されたばかりの彼には荒唐無稽と唾棄されて然るべき内容。ゆえに「 質問は? 」と余計な悲壮感を醸すこともなく惜しみなく求められた情報は与えると意思表示をして彼に視線を向け)




1574: ナミル・アッシャムス [×]
2024-11-15 21:14:23



>ゼズゥ(>1573


(気怠そうな彼女の言葉の含みに異常事態である事は察しながら、動揺する様は微塵も無い。「いんや、別段何も。ちっとばかし好き勝手はしたが。」彼女が恐らく想像したような悪事には首を横に振り、しかし付け加えたそれが言葉通りの“ちょっと”ではない事は、不敵な悪戯顔で伝わるだろうか。――まず指し示された窓の大月に同じく視線を、次に揺れた蛇の尾にも瞳を。暈す真似をしない蓮っ葉な物言いで綴られる、妄誕出鱈目に思える話にも茶々や顰蹙一つ入れずに只黙って真剣と聞き入り。「……成る程なあ。」向けられる目と搗ち合ったのを切っ掛けに前のめりだった上体を背凭れへと移しつつ、五指で顎を擦ってまずその状況を飲み込む一声を打ち、思案するような数秒の沈黙の後。「――フハッ、ハッハッハ!」思わずといった具合に零れた息を呼び水に、顔を上げて呵々と笑い声を部屋に響かせ、「ああすまん、別にアンタの話を嗤った訳じゃあなくてな。」それから顎元の手をひらり彼女へ振って謝意を口にはするものの、それはどうにも未だ大笑の跡を引き摺った説得力に欠ける震え声。「いやあ、そろそろ俺もくたばる頃合いだとは思ってたが…そうかそうか、こりゃまた凄い奇跡に選ばれたもんだ。」その合間に気触れにも見える一連への説明とも、単なる独り言とも聞こえる言葉と、治まらない笑いにばしばしと膝を掌で叩く豪快な音を互いの間に置いてから少々。「おっとそうだ、質問だったな。……ちょいと失礼。」一つ息を吐いた折に問いを思い出し、首を捻る所作に続けて断りと共に椅子を立って、そのまま踏み出した足が向かうのはついさっき彼女が示した窓。其処から始めに空を、次に地を覗くようにじっくりと視線を動かして外を観察し、ほんの微か感嘆らしき声を落とした後に、その場から室内にも改めて目を巡らせる。「…ふむ、待たせた。」それが一通り済んだ所でまた椅子へと座り直し、「まず、此処が俺ら人間にとって死が隣り合う屋敷だってのは解った。この部屋に居りゃ比較的安全な事もな。その上で訊くが、」彼女の瞳を至極真摯に真っ直ぐ見詰め、己なりの解釈を告げる事で話を丸々飲み込む意を記す。だがその先には、「アンタらみてえな話の出来る怪物さん方と屋敷を歩くってのは可能か?…いやなに、折角知らん世界に来たんなら探検の一つでもしてみたいんだが、それが一人じゃ味気無えなと思ってよ。」危機感など無い――否、危険も承知で立ち向かう放胆な冒険心を、細めた琥珀の眼と吊り上がる口端に目映く宿して、それこそ無稽と評されかねない問いを堂々彼女へ投げ掛ける。)




1575: ゼズゥ [×]
2024-11-16 08:56:08



>ナミル(>>1574)


確かに悪人には見えないね。……もうすぐ死にそうにも見えないけど
(この屋敷に攫われてきた人間は、その理由を明かされた時幼いほど泣き喚き老いるほど憤慨する傾向にあると感じていた。からこそ彼の静寂を打ち破る呵呵大笑には波紋の双眸を一度ぱち、と瞬かせ、豪快で活気に満ち溢れたように感じる眼前の獲物が自身の死期を示唆するような発言をしたことに違和感を覚えて小さく息を吐きながら見たままの感想を。窓から見える景色は果てしなく広がる黒い森と窓枠に這うように咲く黒薔薇と、人間だけでなく怪物をも矮小な命だと嘲笑うような無遠慮に巨大な月輪。それを眺める彼の魂胆を図れずただ黙して待ち、その間に吸い終わってしまった煙草の吸殻を指先で粒子のように消し去って、また彼と視線を合わせ「 無理。――って言っても、あんたなら独りで出て行っちゃいそうだね 」これまでの話を踏まえても恐れるどころか好奇に満ちたような目、それを真っすぐに見つめてしまえば何よりの説得力を感じて点々と鱗の這う両腕を組んで「 使い魔を経由すればあんたからでも怪物にコンタクト出来る。伝言なり手紙なり持たせたらいい 」ちらと視線だけで見遣るのはベッドの傍のデスクの上に備え付けらえた簡易なメモ用紙とペン一式。しゅるり、鱗同士の擦れあう音と共にまるでろくろ首のように伸びるのは蛇の肢体、腰から下を伸ばすことで立ち位置を変えることなく上身のみを彼に近づけ、グリーンのネイルに彩られた食指の先、その腹を彼の額にそっと押し当て「 話が通じるって言っても所詮あたしたちは怪物。それなりの役割を持って此処に居るから、食事の我儘に付き合うには何かしらの対価を求められるケースが大半と思っときな。中には無償で人間の世話焼きたがる変わり者もいるけど、当然引っ張りだこよ 」このまま指を当てていれば体温で火傷してしまいそうに錯覚して、言い終われば指と共に伸ばしていた体の部分をしゅるしゅると元のとぐろへ収納していき「 ラクシュエリとラザロ…それからキルステンもか 」五指を折りながら彼には馴染みのない名前を列挙、そうしてまた彼を見つめ「 ナミル、あんたは今言った三人の大好物。冒険のお供に選ぶのはやめといた方がいい 」彼からは死を忌避するような所感はないが、とはいえそれを歓迎し早死したがっているようにも思えない。余計なお世話と半ば分からぬ無意識のまま、熱を感じる指先をふうと吹いて)




1576: ナミル・アッシャムス [×]
2024-11-17 12:35:53



>ゼズゥ(>1575


おう、倅やダチにもよく言われたな。“あと二百年は生きそう”だとかよ。
(彼女からの言葉にまたにっかりと口を緩め、親しいものとの軽口のやり取りを再現しては笑う声を噴き。己の問いに素気無い返答、しかしそれでも思案してくれている姿へ、「まあな。じっとしてんのは苦手な性分さ。」更にもう一つ意志を裏打ちする質を補足して。続けて彼女の視線を追って筆記用具を認識し、再び戻した視界の真ん前には濃色の瞳と細い指。「…成る程。なあに任せておけ、交渉事は得意な方よ。こちとら、それで食い扶持稼いだ人間なもんでな。」冷たい温度が伝わる額はそのまま、互いの立場をより明確にされる助言にも臆さず胸を張り、今までの経験に支えられた自信を全面に威勢良く言葉を返す。それから退いていった彼女の口からは、それだけでは人物の想像が付かない名の羅列。「ラクシュエリ、ラザロ、キルステン……解った。忠告あんがとよ。」それらを己の口でもなぞる事で確かに記憶へ貼り付けた後で、姿勢はまた彼女の方へと前のめりに。「そんじゃあ嬢ちゃん。――いや、ゼズゥ。」切り替えの一呼吸と瞬きの次、先程までの豪快な笑いを潜めつつも、余裕あるどっしりとした態度は崩さぬまま、茶化す真似をしない真剣な声で彼女を呼んで、「アンタなら、どんな対価がありゃ付き合ってやってもいいと思える?」一歩一歩ゆっくりと獲物との距離を縮めていく虎が如く、油断も不敬も無く確と瞳に彼女を捉えながら、話の参考とも交渉の開始とも取れる一声を立てる。)




1577: ゼズゥ [×]
2024-11-17 20:24:03



>ナミル(>>1576)


…………、
(倅、と。その単語に反応するように華奢な肩をぴくりと揺らし口を噤み、今まで能面のようだった表情は哀しみを帯びて長い睫毛を伏せて。守るべき存在から彼を引き離した張本人ではないと頭では理解しながらも、〝子〟に関連する内容には何か含みがあるように沈黙を破る術を見つけられずにいる中、重厚感のある声に唯一の名を呼ばれてゆっくりと俯きがちになっていた顔を上げて「 ……旨くてキツい煙草と酒。 」少しの間が空いたのは対価を考えていたわけではなくそれを要求する事に少し後味の悪い恥ずかしさを感じているのと、人間の身で用意できるものではないと理解していたから。勿論最も欲しいものはこの黒薔薇の呪縛からの解放だがそれこそ誰に願っても叶わぬ絵空事、夢見の悪さは今に始まった事ではなくふるふるっと小刻みにかぶりを振って「 …煙草、作った事ある? 」ふとそう問いかけ、ちょろちょろと忙しなさそうに窓の外を這うトカゲの使い魔に視線を遣り「 あの子たちが調達してくれる既製品じゃもう物足りないんだ。だから自家製に切り替えたいんだけど、葉の組み合わせが何百通りもあるから難航してんの 」不健全極まりない事を言っている自覚はあるものの、これは互いにとって利のある取引の筈。魔界の葉は人間にとって猛毒、ゆえに人に依頼する作業ではないと分かっているが葉っぱ同士の匂いから人間独自の感性で奇跡的に理想的なブレンドを生み出せる可能性もある。恥じるな、と内心で己を鼓舞し真っすぐだけれどどこか照れくさそうな色を混ぜた複雑な表情で「 手伝ってくれる? 」と告げてはすぐについと目を逸らし)




1578: ナミル・アッシャムス [×]
2024-11-18 20:15:36



>ゼズゥ(>1577


(己とは対照的に憂いを帯びた表情に、一瞬訝しむように片眉を軽く吊り上げる。しかし此方の声に応対して顔を上げた彼女が答えた物品へ、「お、そいつぁ良いなあ。俺も欲しい。」何処か気まずさを抱えた言葉ごとからり笑って、冗談混じりに相槌の一言を打った次、「ああ、シャグが俺の愛用煙草よ。」拘りの手巻き煙草を紙に包む慣れた仕草を、顔の横に備えた片手の指先で示してみせ。動いた視線に合わせ窓向こうを自身も窺えば、作業に追われるような心配に様子を覗くような、兎に角慌ただしい爬虫類の姿が視界に入り。これが先程言われた使い魔かと数秒好奇の光を注いだ後、彼女へと再び向き直った顔には、かっと照り付けるような太陽の如く快活な笑みを浮かべ、「おうとも、お安い御用。どうせ吸うなら、とびきり自分好みに拘ったモンが良いに決まってらあ。」一も二も躊躇いも無く頷いて、続けて取引を受け入れるついでに己の信条もさらっと流す。その了承の区切りに膝を一打ち、それから立ち上がって片腕を一回し。「ようし、そんじゃあ早速やるとしよう。その葉っぱってのは何処にあるんだ?」有言実行、善行――とは言い難いかもしれないが、少なくとも己にとっては善き事と疑わぬそれを即実行、と気合い充分に身の簡素な準備を整え終えれば、わくわくと心躍る色を隠しもしないやんちゃを滲ます面持ちでその肝心な葉の居所を問い掛ける。)




1579: ゼズゥ [×]
2024-11-23 10:13:31



>ナミル(>>1578)


言ったでしょ、あんたは食事なんだから有害物質禁止。
(今までで最もメリハりのある声色できっぱりと言い切るのは何処かの誰かに向けたパフォーマンスのような色を帯びる。喫煙に至った経緯や目的はきっと自身と相手で大きく異なるのだろうが、同じ愛煙家として目の前に煙草があるのに吸えない辛さは身に染みて理解できる。彼がヘビースモーカーかは現段階では分からないけれど、少なくとも自身の食欲を揮わせる事のない相手ならば多少甘やかしてもいいだろうと蛇の身体を伸ばして相手の耳元に顔を寄せ「 …今のは建前。もし最高の煙草が完成したらあんたにも吸えそうなやつ分けたげる 」彼にとってこの手伝いの見返りは屋敷探検への同伴だが、それにオマケを付けたって理不尽な檻に閉じ込められた者同士罰は当たらないだろう。また日を改めて候補の絞った葉を持ってこようかと思案していた矢先、思い立ったが吉日を地で行く彼の様子に一度瞬きをして、それからふっと吹き出すように軽く笑って「 そんなに探検が待ちきれない? 」まるで腕白盛りで片時もじっとしていられない少年を見るような慈愛に似た何かを視線に織り交ぜ、彼のそういった特性が家系の呪いにまつわるものなんて想像する由もないままずるりと鱗を引き摺って唯一の出入り口である扉へと向かい「 …ついておいで。丁度すぐ近くの扉に来てるみたい 」背中越しに伝えるのはまるで無数に並ぶ廊下の扉の中身が刻一刻と交代しているような違和感を与える口振り。廊下の静寂を破るドアノブと蝶番の軋む音、それと重い質量を引きずる音――薄暗く、月光と燭台の灯りが頼りのそこは果てしなく続く無限の迷宮で、しかしほんの三つばかり先の扉を呆気なく開けばふわりと漂うのは複雑でエキゾチックな香り。「 入る前に一つ約束して。此処にあるのはこっちの世界の葉っぱばっかだから、人間のあんたには毒性が強すぎてあんまり長くは居させらんない。とはいえ人間を連れて来た事なんてないからどのくらいが限界なのかも分かんない――だから、体調がおかしいと思ったらすぐ言うんだよ 」言い終えてすぐ〝 分かった? 〟と顔を近づけてから、ついて来いと示すように先んじて部屋へと入る。そこは色とりどりの葉がそこかしこにびっしりと貯蔵或いは群生している無法地帯で、部屋の中央のテーブルには何百通りもの配合を試した形跡がごちゃごちゃと放置されている。いずれも長時間に渡る作業だったろうに室内に椅子が存在しないのは、この部屋の主がそれを必要としない種族だという事を如実に物語り「 …これでもある程度厳選したんだけどね 」瓶の一つを指先でなぞりながら、どこか恥ずかしそうな、それでいてうんざりするような疲労感を醸してぽつり呟き)


***


話し中にごめん。あたしの研究室のイメージ画像を【足跡】に公開したからロル描写の参考までに見てくれると嬉しい。葉っぱの種類とかは好きに創作・登場させてもらって構わないからね。こっちには反応不要だよ。
https://grand-guignol.hatenablog.com/entry/locus




1580: ナミル・アッシャムス [×]
2024-11-24 12:20:27



>ゼズゥ(>1579


おっと、手厳しい。
(今までに無いぴしゃりとした物言いに嘆く言葉を、それとは正反対に跳ねた冗談で返す。「……ほう。こりゃ頑張んねえとなあ。」しかしながらその後に続いた話には此方も声を潜めて、悪戯を企む子供にも似た顔でにんまり笑い。己の行動にか言葉にか、何にせよ向かい合う瞳が何処か和らいだ事に喜ばしげに目を細めつつ、「おうよ。こちとら意欲も行動も鮮度第一主義、やりたい事を前に黙って大人しくなぞしてられんのよ。」問いを肯定したその上から更にやんちゃ小僧のようなアグレッシブさを放る。彼女の進行に合わせて己も扉の先へと出る直前、まるで屋敷そのものが生き物の肚さながら蠢いているとでもばかりの発言に頭を傾げつつ廊下に足を進める。――月と蝋燭の見下ろす冷えた通路。目を凝らしても先を見渡しきれない闇を残し、その内に言葉通じぬ人喰いのケダモノが潜むという其処は、成る程ミノタウロスの迷宮の如し。「……ますます面白そうな所だな。」だがそれに萎縮する性根の持ち合わせは端から無し、短い歩数の合間にそう好奇の独り言を零していれば、また扉の開く音と共に、多くが絡み合う芳しい香りが鼻を擽る。意識をそちらに向けた瞬間、丁度彼女の注意と約束事が飛んできて、「オーケーオーケー、ちゃんと言うさ。」少々ばかり軽さはあるもののきっちりとそれに頷き奥へと歩を踏んで。――有らん限りに広がる、当然見た事も無い葉に所狭しと並べられた瓶達。「ははあ……こんな量、一人じゃ大変だったろうよ。」厳選したと告げた彼女に、今見ている何倍も種類があったのだろうと察しが付けば、そこに言葉を惜しみ無く掛けて、隣の彼女の肩をぽんと柔らかに叩いて労う。「そんじゃ……どれ失礼、」それからもう一声置いて前へ進み、テーブルの上の瓶の中身を幾つか吟味に持ち上げて、「ハハッ、凄い色してんなあ。…ああでも匂いは悪かねえな。」思ったままの感想を一人流した後、一度それらを戻して今度は壁際の棚へ。其処から一つ一つを取って鼻を利かせる仕草を繰り返し、多くの内から苦い香のする薄赤い葉と、潮に近い香の黒い葉の二つを手に残した次に数秒首を捻って辺りを見回す。些かの間唸った後、棚の隙間を縫って顔を出す、紫に青の粉が振られたような葉を下げる植物に指先を近付け、「……おっといけねえ。嬢ちゃん、これ俺が触って大丈夫なモンか?」触れるその前にはっと手を引き、この部屋の主たる彼女へ身ごと振り返って、指差したそれの危険性を先んじて問い掛ける。)




1581: ゼズゥ [×]
2024-11-24 19:54:39



>ナミル(>>1580)


(自分で寄せ集めた葉達とは言え、強いフレーバーと毒性を求める余りかなり香りの主張が強い種類が選抜されてしまったこの空間は自身ですら長時間居れば頭がくらりとする夜もある。彼があまりにも豪胆なものだから半ば勢いに押される形で連れて来てしまったが、いざ密室になってしまえば人間の身で大丈夫なのだろうかと内心ハラハラしながら「 …ねえ、ほんとに大丈夫? 」強い香りに中てられてしまわないか心配そうに様子を伺いながら、蛇の肌には少々熱すぎる手のひらが触れた肩を冷やすように自身の冷たい手を当て「 乾燥させたら全部枯れ葉色になっちゃうの、勿体ない 」凄い色、という感想に釣られるように生きた葉を見上げながらぽつり呟く。無論煙草の色なんてどうでもよくただ絶望から目を逸らすための依存先としての役割を果たしてくれればそれで構わないのだが、色彩豊かに葉を茂らせるあれらを自身のエゴに付き合わせてしまう事には多少の負い目を感じて目を伏せ、しかし問い掛けにはハッとそちらを向いて「 ……素手はやめとこっか 」如何せん判断しかねるのは、怪物たる自身にとって無害な植物が人肌をどこまで侵食するのか見た経験が無いため。少々迷うように沈黙した後、熱いものを触る時に使用する分厚い黒のグローブを相手に手渡し「 …やっぱ自分の発想だけじゃ息詰まるもんか 」ちろり彼の手に選ばれた葉の組み合わせはとても斬新で、自身だけでならば辿り着く事のない選択。しかし妙に期待出来そうなそれらに感心したようにぼそりと呟いて、自身は中断していた作業の続きとばかりに迷うことなく彼に背を向ける位置の棚に手を伸ばし琥珀色の甘ったるい香の葉と、唐辛子を何倍にも凝縮したようなツンと痺れる刺激臭を放つ蘇芳色の葉を紙の上に選んでいき)




1582: ナミル・アッシャムス [×]
2024-11-25 23:08:47



>ゼズゥ(>1581


大丈夫大丈夫、身体は人一倍丈夫なもんでな。
(彼是と瓶を傾けてみる最中届く声に振り返り、自らの胸元を掌でばしばしと大仰に何度か叩き、風邪すら跳ね返していきそうな体躯の頑強さを主張する。それからまた遠慮無しに、しかし音を立てるような乱暴さとは無縁の丁寧な所作で片っ端から葉を吟味する。「……確かに。こんな見事なのになあ。」その途中で聞こえた一言へ、丁度手にしたマゼンタ色を室内の明かりに照らしつつ同調を零す。「おう、あんがとよ。」半端に下がっていた手を彼女が差し出すグローブへ軌道修正、それに指を通して拳を一度握り、爪の先まで馴染ませてから改めて目の前の葉を一つ拝借する。その香を確かめた後、植物の観察に少しばかり屈めていた背を伸ばしてテーブルへと足を運び、失敬した新品の紙の上へ持ったままの瓶の中身を乗せていく。「…なあゼズゥの嬢ちゃん、物でも策でも何でもいいけどよ、何かしらアイディア出すんなら誰かと一緒の方が良い。人が居りゃ居ただけ、視界が拓けて多くの道が見える。」作業の最中に徐と開いた口が紡ぎ始めるのは、先程の彼女の呟きに対しての言葉。「誰かの手を求めるのは何も恥ずかしい事じゃあない。寧ろ、勇気ある立派な決断さ。」目線は手元の紙と葉に、とんとんと指先で振るってその三種の量を調節しながら続けていくお節介じみた経験則の話は、瓶の代わりに紙を持ち上げた所で終いとなり。「……っと。そら、試作一号だ。」苦い薄赤の葉と潮の黒い葉は、後者の方をやや多めに。そのアクセントに燻したような渋く深い香の紫に青粉の葉を極少量。彼女の傍に歩み寄ってその調合品を互いの目の前へ向け、「俺の基準にゃなるが、取り敢えず酒に合いそうな香りのモンにしてみた。…アンタ、酒もやるんだろう?」まだ手探りの初回品、一先ずの選択材料としたのは他でもない彼女のもう一つの取引候補からの連想。「本当は味や煙の濃さも確かめられりゃ良いんだが……それは流石になあ。」何分異界の煙草葉、事前の注意もあって手出し出来ない所を補う為に、香り重視になってしまったのは否めず苦笑いを浮かべて。「兎に角まあ、これは単なる試しよ。好みじゃなけりゃ、それはそれで別に構わん。」しかし直ぐに表情の湿気を払って闊達に声を飛ばし、移った視線は彼女の手元。「そんで?嬢ちゃんのそれはどんなモンだ?」興味津々弾む問いに違わず、瞳を煌々と好奇に輝かせて彼女の持つ葉を覗き込む。)




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