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あなたはどんな夢を叶えますか?【オリジナル/戦闘/近未来/途中参加歓迎!】/272


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自分のトピックを作る
161: レアリゼ [×]
2023-11-18 17:24:35

>>159

「ごめんなさ……いえ、ありがとうございます」

躓きかけた女性の姿を見て、自分の話で気を逸らしてしまったかと謝罪の意味で頭を下げようとしたが、女性からきっと大丈夫と言われ、代わりにお礼の意味で頭を下げた。
エスカレーターを上りきり、少し歩いた所で女性が目当てのお店を示してくれた。自分にはまだよく見えないが、彼女の言う通りこのまま真っ直ぐ進めば辿り着く事ができるだろう。これでようやくプレゼントが買える、このプレゼントで両親に喜んで貰える。そういった未来予想図が脳内を駆け巡り、喜びのあまり我を忘れてその勢いのまま駆け出したが、数歩歩いた所で堪えた。一人で飛び出していくのは、ここまで折角案内してくれた女性を使い捨てたようになってしまう。そんな不義理はできない。

「あっ、ごめんなさい……最後まで一緒に行きましょう」

162: アデル [×]
2023-11-18 22:09:43

>>160

「あたしはこの辺に住んでるから、心配せんでもまた明日この公園に来れば会えるさ」

押しが強くなる子供を微笑ましく思いながら、綻んだ表情はそのままに嘘を吐いた。本当の場所は北エリアである。あそこは年中雪が降り、住むのには適さない為に人口が少なく、我々ユニコーンが身を潜めるにはうってつけの場所だ。しかし我々以外にも後ろめたい者共が同様に身を潜める場所であり、そんな場所にこの子を呼ぶなんてことはできない。
だが明日この公園にいるというのは本当だ。約束を違えて悲しませたくはない。

「ほう、笑顔でいてほしいとな」

この子の語ることは立派な事だと思う。周囲の者達を悲しませず笑顔でいてほしいが為に努力を重ねられ、それを何てことないと言い切れる。この若さで誰かの為に努力できるのは素晴らしい精神だ。しかし、その精神は本当に辛いことがあった時、それを“笑顔でいてほしい”という考えのもとに心の奥底に隠してしまい、それが積み重なればいつか崩れて大変な事になってしまうのではないか。
勿論これらはただの勝手な想像に過ぎないが、それでも余計なお世話を焼いておく事にした。

「それは良いことだが、もし本当に心の底から辛いと感じた時は、誰相手でも良いから“辛い”って言っておきな」

163: エレナ [×]
2023-11-19 02:19:04

>>161 レアリザ様

「あっ、走ったら危ないわよ!」

場所を教えるなり駆け出した少女の反応に驚き、思わず叫んでしまった。幸い周囲の人混みのせいでその声が届いたのかはわからないが、少女は数は進んだところで止まってくれた。エレナはそれを見てほっと胸を撫で下ろした。走って人とぶつかって、もしそれが発現者とかだと最悪命の危険まであり得る街なのだ。そうなりかけたとしてもエレナがあれば対処はできるとはいえ、トラブルを避ける事ができるのであれば避けるに越したことはない。
エレナは立ち止まった少女に追いつき、肩に手を置く。

「ええ、一緒に行きましょう。急がなくても店は逃げないわ」

164: レアリゼ [×]
2023-11-19 17:53:32

>>163

「はい!」

肩に置かれた女性の手を取り、そのまま握って歩き始める。しばらく歩いていると、自分でも目視できる範囲でお店が見えてきた。店内に入ると、少し名残惜しそうに手を離してお店の中を見て回る。やがてプレゼントに選ぶつもりだった目当てのもの──革の財布を見付けると、それを2つ手に取ってレジの方へ会計に向かう。レジはお店の奥にあるので普通は見えづらいが、優れた視力を持つ者ならば会計の様子が見えるかもしれない。
会計自体はスムーズに進行しているが、レジに表示された値段は非常に高額で、少なくとも学生が払うには難しいと言わざるを得ない金額だった。更に、その値段に特に驚く素振りも見せず全て現金で支払っており、その姿に違和感を感じるかもしれない。
会計が終了すると、買ったばかりの財布を丁寧にバッグにしまい、そのまま小走りで女性のもとへ戻った。

「ちゃんと買えました!ありがとうございます!」

165: エレナ [×]
2023-11-19 21:12:02

>>164 レアリザ様

不意に肩に置いた手を握られて一瞬戸惑ったエレナだが、振り払うような素振りは見せずにそのまま前にまで引っ張られていく。革細工店に着くなり少女は手を離してプレゼントを選びに行ってしまった。

「私には少し合わないわね」

一般人に紛れるために普段からラフな服装で過ごしているエレナにとっては、革製品は使いづらいし値段も高いしであまり魅力に感じる事はできなかった。それでも少女のプレゼント選びに口を出すような野暮な真似はせずに飾られている商品を眺めて回る。カバンやブーツなどを見ているうちに早くも少女はプレゼントが決まったのか、財布を持って会計に向かう少女の姿が目に入った。

「…やけに高級な財布ね」

盗み見るつもりは無かったが、少女が選んだ財布の金額と、平然と現金でその金額を支払う少女の姿を見てしまい、エレナは眉をひそめて小さく呟いた。この街の学生は簡単に負の感情を抱かないように極力ストレスを避けた必要最低限度の授業だけを受けており、自由時間が多い。その時間をアルバイトなどに当てているとしても易々と出せる金額では無かった。
目当ての物は最初から決まっていたようにも見えたし、もしかしたらあの財布を買うために長い時間をかけてコツコツと貯金をしたのかもしれない。わずかにノイズが残ったが、エレナはそう判断する。
そして買い物が終わって駆け寄ってきた少女に笑いかける。

「それは良かったわ。ご両親、喜んでくれたらいいわね。…さっきの話だけど、ここに来るまでに良さげなお店があったから、そこでお茶にしましょうか」

166: レアリゼ [×]
2023-11-20 00:11:36

>>165

「はい、行きましょうか!」

かけられた優しい言葉と笑顔に、こちらも柔らかな笑顔とご機嫌な返事で返す。不慮の事故で落としてしまわないようにトートバッグを両手で持ちながら女性の隣に着いた。
それにしても本当に良かった。元からお金は必要以上は使わない質であり、それに加えて依頼で稼げていたから買えるかどうかは全く気にしていなかったものの、迷ったせいで購入以前の問題だった。しかし、この女性のおかげでちゃんとお店までたどり着き、買うことができた。きっと彼女がいなければ、一生……は流石に言い過ぎだとしても、かなり長い間彷徨う事になっていただろう。

「本当に、ありがとうございます。あなたが……あっ」

そういえばまだこのお互いに名前を知らない関係だったと思い出した。たまたま今日ここで助けてもらっただけだからそれはそうなのだが、ここまでお世話になった相手に名乗らないのも失礼だろう。自分だけでも名乗っておくのが礼儀だ。

「そういえば、自己紹介とかってしてませんでしたよね。私はレアリゼ。レアリゼ・アンダーセンです」

167: エレナ [×]
2023-11-20 07:11:45

>>166 レアリザ様

「レアリゼ・アンダーセン。いい名前ね。…私はエレナ・ラヴィーナ。エレナでいいわ」

名を名乗るレアリゼに対して、エレナは一瞬悩んだが名乗る事にした。大事そうに財布が入ったバッグを両手で抱える彼女の姿を見て、先程一瞬抱いた違和感は消えてしまっていた。
レアリゼがプレゼントに選んだ財布はエレナの予想を遥かに上回る高級品。万が一無くしたりすると大変なため、できればそのまま帰ってもらって両親にプレゼントを渡してもらいたいところではあったのだが、自分から言ってしまった手前、そして少女のお礼をしたいという気持ちに応えるために、エレナは早速喫茶店を目指して歩き出す。
そしてそう遠くもない距離を歩いて喫茶店に到着する。そこはロイヤル・クローバーの外にも店舗を展開しているチェーン店。そんなことを知らないエレナは「良さげなお店」だなんて言ってしまっていたため人によっては非常識とも思われかねない。

「ここよ。なかなか良い場所じゃない?」

168: レアリゼ [×]
2023-11-20 22:13:52

>>167

「良い名前だなんて、ありがとうございます……えへへ」

明らかに上機嫌だと分かる声で、少し照れながらも返事を返す。“レアリゼ”とは両親がくれた大切な贈り物。気に入っているというレベルではない程に愛している。それをいい名前と褒められればご機嫌になるし、褒めてくれた相手──エレナと名乗った女性の印象も非常に良くなる。元から好印象だったのが、名前を褒めてくれたことで一気に好感度が急上昇し、すっかり深く信頼してもいい人となっていた。
やがて着いた喫茶店は、この都市の外にもあるごくありふれたお店だった。彼女は良さげな店と言っていたが、確かに多くのチェーン店を展開できるお店はそれだけ人々に人気があるということであり、それは一定の品質が保証されているということでもある。それにこう言っては失礼かもしれないが、劣悪としか形容できないスラムで育った自分にとってはどんな飲食店でも美味しいものが食べられるだけで嬉しいのだ。

「はい、とっても良いお店ですね!」

169: エレナ [×]
2023-11-21 19:44:23

>>169 レアリゼ様

「気に入ってもらえたみたいで良かったわ。じゃあ早速入りましょうか」

レアリゼの反応を見て満足げに小さく頷き、エレナは喫茶店に入る。どうやらカウンターで先に注文をしてから商品を持って席に着くシステムのようで、じっくりとメニューを眺めたいエレナは少し残念そうな表情を浮かべながらカウンターに向かった。カウンターに置かれるメニューはもちろんページなどもなく、1枚の大きな紙に店舗の商品がずらずらと並べられており、エレナの目はそれら全てを情報として読み取ってしまう。これ以上眺めていると目眩を起こしかねないと判断し、エレナは一旦メニューから目を逸らし、レアリゼの方を向いてメニューを指でなぞりながら話しかける。

「レアリゼさんもほら、色々飲み物があるみたい。私は後でいいから先に選んでいいわよ」

170: レアリゼ [×]
2023-11-21 21:30:27

>>169

「いいんですか?ではお言葉に甘えて」

先を譲ってくれたことに感謝しながら、カウンターに置かれたメニューを眺める。ありふれたチェーン店であり、両親や学校のクラスメイトと共に何度か訪れた事があるので全く知らないメニューばかりという訳ではない。とりあえず一通り目を通してから、少し考えてオレンジジュースを頼むことに決めた。コーヒーや紅茶などの大人っぽい飲み物にも何度か手を出したことはあるし、一応飲めないことはないので見栄を張ってそういった飲み物を頼もうと一瞬考えたが、そこは自分の好みに素直に従う事にした。分かりやすく甘いものは好物である。
指先でメニューの写真を示しながらオレンジジュースを頼むと、女性がメニューを見やすくなるように横へ移動した。

「私はこれで。エレナさん、お次をどうぞ」

171: エレナ [×]
2023-11-22 18:41:23

>>170 レアリゼ様

メニューを動かしてくれたレアリゼの姿を見ながら、意外だな、と言葉には出さなかったが思ってしまう。最近の学生はみんなコーヒーや紅茶を飲んでいるイメージがあったため、オレンジジュースという選択はエレナの想定外であった。だが、おかげでエレナも変に見栄を貼ったり気を使ったりする事なくメニューを選ぶ事ができる。

「ありがと。…じゃあ私は、これで。マシュマロも入れて頂戴」

エレナはレアリゼに対してお礼を言いながらメニューを一瞥し、ホットココアを選択する。以前高級なカフェでもココアを頼んだ事があったため、味の差が気になったのだ。
程なくしてトレイに乗ったオレンジジュースとココアが運ばれ、レジに金額が表示される。いわゆる場所代というやつだろうか、飲み物ふたつだけでもそこそこな金額が表示されているが、エレナは澄ました顔でレアリゼにトレイを指差しながら話す。

「私が払っておくから、悪いんだけど適当な席に運んでもらってもいい?」

172: レアリゼ [×]
2023-11-23 00:16:00

>>171

女性の注文を聞いて、少しの意外さを感じていた。クールなイメージが強かったから、コーヒーなどの大人っぽい飲み物を頼むのかと思っていたが、マシュマロ入りのココアという甘い飲み物を頼んでいたので、こんな可愛らしい所もあるんだな、なんて思った。口に出したら良い顔はされなさそうなので、勿論胸に秘めたまま。
注文が済み、レジに金額が示された時。分かりました、と女性の言葉に従ってトレイを運ぼうとするが、その場で立ち止まった。流石にこちらの飲み物の代金まで払ってもらうのは忍びない。財布を出し、1枚でも充分すぎる金額のお札を3枚程置いてからトレイを運んだ。

「これ、使ってください。もしよかったら、お釣りはエレナさんが取っておいてください」

改めて店内を見回す。それなりに人がいるようで、席も埋まっているものが多い。良い席がないものか、と歩いていると、窓際の二人席が丁度空いている事に気付いた。誰かに取られないように小走りで近寄って、トレイを机の上に置いて座った。

173: エレナ [×]
2023-11-23 08:25:28

>>172 レアリゼ様

財布の中から紙幣を取り出そうとするエレナを置いてレアリゼがお金を出してしまい、やはりか、とエレナは肩をすくめて財布を閉じる。本来ならば年上であり、誘った本人のエレナが支払うべきなのだが、レアリゼの気持ちも汲み取ってここは彼女を立たせる事にした。
しかし、置かれた紙幣を目をやると、1枚で釣りが来る額の紙幣が3枚置かれており、エレナはギョッとして思わず振り返りながらレアリゼに話しかけた。

「ちょ、こんなにいらないわよ!」

しかし当然レアリゼはそこにはおらず、灰色のネックウォーマーを身につけた少年と目が合い、「何か用?」と不機嫌そうに話しかけられてしまう。なんでもないわ、と手短に答え、急いで残りの2枚を一旦財布にしまって会計を済ませ、店内の奥へと進む。レアリゼはちょうどふたり分空いているスペースを見つけたようで、机にトライを置いている。エレナは早足でレアリゼの元へと向かい、テーブルに残りの2枚の紙幣を置きながら話しかける。本人は怒っていないのだが、慌てているため少しきつい口調に聞こえてしまうかもしれない。

「何考えてるのよ。…気持ちは嬉しいけど、もっとお金は大切にしなさい」

174: レアリゼ [×]
2023-11-23 17:22:15

>>173

「ご、ごめんなさい。私、お金にはまだ余裕があるし、何よりエレナさんにはお世話になったからこれくらいはしなくちゃって思って……」

目を伏せ、頭を下げて謝罪する。表情や声色から察するに、怒っている訳ではなさそうだが少なくとも気分を害してしまったのは間違いないだろう。よかれと思って多めにお金を置いたつもりだったが、それが裏目に出てしまった。軽率な行動だったと心の中で頭を抱えた。最近は特に節制を心がけていたから手持ちのお金がそこそこ溜まって、久し振りの依頼が入らない休みの日で、欲しかったプレゼントが買えて、道中では優しい人にも会えて、今日この日に幸運が重なって気分が大きくなっていたからかもしれない。
いくら怒っている訳ではないように見えるとはいえ、許して貰えるだろうか。

175: エレナ [×]
2023-11-24 00:59:33

>>175 レアリゼ様

「あぁ、ごめんなさい、謝らなくてもいいの。私は道案内しかしてないし、お喋りに付き合ってくれるだけでも十分よ。…それに、まだ余裕があるって……」

頭を下げる少女に、エレナは思わず慌てて謝罪を止めさせる。レアリゼはあくまでもよかれと思ってそうしたのだから決して謝罪の必要などないのだ。普段は冷静にキメラの命を奪って回るエレナでも、いや、そんな彼女だからこそ素直な少女ひとりに悪戦苦闘してしまっている。しかし、エレナの言葉は後半になるにつれて小さくなっていっていた。あれほどの買い物をしてさらに資金に余裕があるのはいくらなんでも少しおかしいのではないだろうか。
エレナは席に座ってトレイからココアが入ったカップを取り出し、スプーンでかき混ぜながら短く考える。カマを、かけてみるべきか? キメラはこの街にたくさん潜んでいるとはいえ、この街の総人口と比較すればごくごく僅かな人数しか居ない。たまたま話しかけた人物が…、だなんて確率はとんでも無く低い。それに、ただ少しお金持ちなだけでいきなり疑いをかけるなんてどうかしている。しかし一度発生した疑念がそう簡単に消えるはずもなく、エレナはカップの中身を少し啜ってから口を開いた。

「そういえばさっきのプレゼント、すごく高かったみたいだけど。なにかアルバイトでもしているの?」

ごめんなさいね、と心の中で謝りながらエレナはレアリゼの答えを待つ。しかし確かめずにはいられなかった。だが、その質問は同時に、遠くの方からレジに表示されていた金額がはっきり見えるほどの常人よりも優れた視力を持っていることをわざわざ教えるような真似だ。それにレアリゼが気付くかは分からないが、エレナはそんな失言をしてしまう程に動揺しているのだ。

176: レアリゼ [×]
2023-11-24 17:00:15

>>175

よかった、少なくとも彼女は機嫌を悪くしている訳ではなかったらしい。これで憂いなく彼女とのティータイム(正確にはジュースだが)を楽しめる。そう思っていたが、徐々に小さくなる声に何か不穏なものを感じた。ココアを飲むその姿の一挙一動を目で追いながら、続く言葉を待った。
やがて女性の質問、すなわち“高級品を購入できる収入源”を訊かれた時、さてどうやって誤魔化すべきかと心の中で悩んだ。正直に“キメラとして依頼をこなし、富豪達から多額の報酬を貰っている”なんて言える訳がない。バイトを頑張っている、と言っても高級な財布を2つも買った上でまだ余裕があるというのは少し不自然に思われるかもしれない。墓穴を掘ってしまうとは、先程感じたように今日は気分が大きくなりすぎていたようだ。反省しなきゃ、と思ったところで、ふと違和感を覚えた。
財布を買う際、レジは奥の方にあったし、モニターに表示された金額も少なくとも正確な金額は分からない程度には遠くから見えづらいはず。更に購入後、ちゃんと買えた、とは言ったがその金額までは喋っていなかった。となると、この女性は思考が読めるのか、目がとても良いのか、最初から買った財布が高級品だと見抜ける程の知識があったのか、そのいずれかになる。もし思考が読めるのなら、既に自分がキメラだと知られて相応の態度をとられるはず。しかし今のところ女性から敵意は感じないから、目が良いか、高い知識を持っていたかのどちらかだろう。いずれにせよ、ただ優しいだけの人では無かったという事だ。ここからの応対は慎重を要するだろう。

「そうですね、主に力仕事が多めのアルバイトをやってます。少しリスクはありますが、その分収入は良いんです」

力仕事=襲撃が多いのは本当。リスクがあるのも本当。収入が良いのも本当。ただ一つ、アルバイトではなくキメラの仕事だという点が異なる。ある程度真実を交えた方が嘘はバレにくいというが、これでどこまで誤魔化せるか。

177: エレナ [×]
2023-11-25 10:25:00

>>176 レアリゼ様

「力仕事……」

エレナはレアリゼが発した言葉を呟いて考え込む。レアリゼは具体的な仕事の内容を語らなかった。だがそれは彼女がキメラだろうがなかろうが、初対面の相手に対しては当然の対応である。
一口再びココアを口に含む。怪しくなりつつある空気とは逆に甘ったるい味がエレナの口の中に広がる。それはまるで、気づかなかった事にしてこのまま楽しい時間を過ごしたらどうだい、と囁かれているよう感じた。そしてあろうことか、エレナはその囁きに乗ると決断する。明確な尻尾、例えばグリフォンの連中と戦っている現場を押さえたり、犯罪を犯すその瞬間を目撃したり。そうなってからでも遅くはないはずだ。
少しじっとカップの中身を覗いていたエレナだが、ようやく顔を上げて笑みを浮かべてレアリゼに言葉を返す。しかしその笑みは先ほどまでの自然な笑顔に比べて遥かにぎこちない。

「そう、最近のアルバイトは凄いのね。…それでも大変だったでしょう。きっと喜んでくれるわ」

178: レアリゼ [×]
2023-11-25 21:50:44

>>177

考え込み、ココアに口を付ける女性の姿を、その影が目に焼き付くくらいに凝視する。嘘が暴かれるか、それとも隠し通せるかの瀬戸際だからか、やけに時間の流れが遅く感じた。そうして、体感では既に長い時が経過したと感じたとき。女性は顔を上げ、笑顔で返してくれた。どうやら隠し通す事ができたらしい。安心してオレンジジュースに一口着けることができた。良い人に会えて、楽しい一時を一緒に過ごせているこの空間と雰囲気が崩れてしまうのは自分でも望むところでは無かった。とはいえ、女性の笑顔は先程までのものと比べてぎこちなかった。疑惑を抱えたままか、見逃されたのか。少なくともこの空間は薄氷の上に成り立っている事には違いないだろう。
再びオレンジジュースを一口飲んでから、返事を返した。

「はい。とっても大変だけど、私が望んでやっているお仕事ですし、それにお父さんとお母さんが喜んでくれるって考えたらどこまでも頑張れるんです。……あっ、そういえば、エレナさんはどんなお仕事をされているんですか?」

179: エレナ [×]
2023-11-26 11:46:36

>>178 レアリゼ様

「えっ…?」

レアリゼに逆に聞き返され、思わずギョッとした顔になる。ユニコーンでの活動以外の仕事をしたことのないエレナにとって、この質問を誤魔化す事は2キロメートル先のピンポン玉を狙撃することに匹敵する難しさを感じた。これまでも同じ質問は何度もされたが、ユニコーンとして正義を執行する事を誇りに思っているエレナは隠さずに自分の正体を答えてきた。だが、一般人だと思っていたが、もしかしたらキメラかもしれない、だなんて相手は初めての経験であった。
だが、エレナは先程とは違ってすぐに考えをまとめる。下手に誤魔化して相手がキメラだった場合、バレた時になにをされるか分かったものでは無い。とすれば人の多いこの店舗でバラしてしまった方が安全だし、エレナの考え過ぎでレアリゼが一般人だった場合も、キメラの危険性を教える事で彼女を万が一の悲劇から救えるかもしれないと考え、真剣な表情でレアリゼの質問に答えた。

「私はユニコーンという組織に入って、この街で暗躍している悪い人達、キメラと呼ばれる連中をやっつけて回ってるのよ。…私の両親はキメラによって殺されてしまった後だからもう何もできないけど…、もしあなたが危険な目に遭って、誰かの助けが必要になったら、ユニコーンを頼りなさい」

180: レアリゼ [×]
2023-11-26 17:21:22

>>179

「エレナさん……」
(ユニコーン……!)

知識としては知っている。治安維持を目的とした組織であるが、グリフォンとは全く別系統の自警団に近い組織である。そのスタンスの違いからグリフォンと衝突する事もあるが、基本的には自分達キメラを排除するのが目的の組織である。ただ者ではないと思っていたが、まさかこの女性がユニコーンで、しかもキメラによって両親を喪ってしまっているとは思いもしなかった。両親を亡くしているのだ、キメラに対しては激しい憎悪の炎を燃やしているに違いない。自分がキメラだとバレれば、文字通り殺しに来るだろう。たまたま会った仲なのに、まさか敵同士だったとは思いもしなかった。
驚きの代わりの笑みを浮かべながら、返事を返す。

「はい、もし危険な目に遭ったらエレナさん達を頼ります。そのキメラっていう人達と会うことも、早々無いとは思いますけどね」

また一口、オレンジジュースを飲む。そういえば先程、彼女はキメラに両親を殺された、と言っていた。何度か自分の両親の話をしたが、もしかしたら彼女にとってはいわゆる“地雷”に近いものだったのかもしれない。

「……エレナさんは、そのキメラのせいでご両親を亡くされたんですよね。ごめんなさい、私がお父さんとお母さんの話題を口にするのは、エレナさんからすればあまり気分の良い話ではなかったでしょう?」

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