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206:
朽葉 [×]
2023-01-08 00:59:54
>204 蘇芳
それは――……ふふっ、光栄だわ。
(らしくもないことを言っている自覚はあるものの、笑い交じりに彼が口にした言葉を聞けば、いよいよ可笑しくなってつられるように笑みを零して。齢七つにほんの少し足りないこの身体が成長することはきっともうないけれど、この世界に生まれてから重ねた歳は、あと数年で自身を生んだ母にも追いつく頃合いだろう。ウツギの神様にも子供は生まれるのだろうか――不意に浮かんだそんな疑問は風のひと吹きで霧散してしまえば、悩んだ末に白狼を枕とすることを選んだらしい彼に小さく頷いて。彼の頭を受け止めて目を閉じた狼の背を毛並みに沿って撫でながら、身体を横たえた彼を見下ろしつつその言葉へと耳を傾け。「ミコトはもふもふでふかふかだから、寝心地だって抜群だし――わたしも蘇芳が元気になるまでここに居るから、安心してね」どこか誇らしげに自身の眷属について語ってから、彼の視線がこちらを向いていないことを知りつつも、求めに応じるように笑みを深めて。静かに休めるようにとそれきり口を閉ざせば、片手に握ったままの白いリボンに気が付き、吹き抜ける風に苦戦しつつも髪を結い直してから空を見上げて)
>205 千草
(普段は終わりを辿る指先が、平和にも月面のうさぎをゆっくりと象る。やがてすべての線を示し終えて伸ばしていた手を引っ込めれば、視線を紙面から彼へと移して。気の抜けるような声と疑問符、そして考え込むような表情は、その胸中をありありと示しているかのよう。長い指先が月面をなぞるのを暫し見守り、そんな時間も彼がカウンターへと足を向けたことで終わりを迎えれば、その指が示す先をちらりと見遣って。場にちなんだ呼び名にくすりと笑みを零して頷いてから、司書らしさを出そうとして余所行きの澄まし声でそれらしい返答を。「こちらへどうぞ、初めての利用者さん」それから彼を追い越して先導するように歩き出せば、カウンターへと向かう短い道中で、床に落ちた植物図鑑が目に留まる。それに引っ張られる形でひとつの記憶が蘇れば、歩きながら相棒の背にある小物入れのファスナーを下ろし。「そう言えば――本を読むのなら、確か、この中に……あった」暫しごそごそと探った後、カウンターの前まで来たところで何やら紙切れのようなものを取り出して。振り返って彼の方へと差し出したそれは、白い睡蓮の花弁が押し花にされている少し古びた一枚の栞で)
これ、よければ使って。どこまで読んだかを記録するもよし……千草が覚えておきたいと言ってくれた、そのページに挟んでおくもよし、よ。
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