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銀河鉄道の夜 / NL,ML,GL / 指名制/228


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自分のトピックを作る
178: 子犬座 [×]
2025-05-10 21:26:02



>レイラ

(彼女の口から“時計”の名がこぼれた瞬間、目がわずかに見開かれる。普段なら感情の起伏を他人に悟らせまいとする男が反射的に顔を動かした。それほどに、あの名は特別だった。それからその碧眼の奥をじっと見据えた。彼女が座席へ戻るその合間に、警戒の影を纏って見せるがそれは彼の名前が口にされたことによる拒絶ではなく、確かめるための警戒だった。眉間にわずかに皺を寄せながら、くんと鼻を鳴らした。すると静かに、だが確かに。彼女の纏う空気の中に、自分が深く懐いている“時計”の気配がある。「アンタから──時計の匂いがする」ぽつりと、そう口にする。問いかけというより、確かめるような声音で。その言葉は短いが言外にいくつもの意味を含んでいた。なぜ? どうして? どんな関係だ?彼女の顔色を探るように、目を細める。右手の指が、無意識に膝の上で蠢き、黒い犬の耳がわずかに伏せられ、尾は膝に巻かれて感情を閉じ込めるように静まっていた。「アンタ……時計と知り合いかよ。……しかも、悪い感じじゃなさそうだな」ようやく視線が少しだけ和らいだ。その変化は本当に微かなもので、傍目には気づかれない程度だったかもしれない。時計の良さをわかるなら悪いやつじゃないのかもしれない、そんな考えが脳裏を過ぎり、呼吸がひとつ、深く落ち着く。「ったく……初対面でその名を聞くとは思わなかった」なんてぶつぶつ呟くように言いながらも、その口調には先ほどまでの棘が少し緩んでいた。)別にアンタのこと拒んじゃねぇよ。……席ぐらい、好きにしろ



179: レイラ [×]
2025-05-11 03:58:28

>子犬座

(「──ありがとうございます。そうさせていただきますわ」“好きにしろ”の一言に対する返事は落ち着きがあり、遠慮がない。相手と向かい合い、閉じた膝の上に両手を置く座り姿は変わらず品があるが、堅苦しい雰囲気はなく、むしろリラックスした様子。それは相手の、“時計”の名を聞いたときの僅かな表情の変化だけでなく、育ての親の顔見知りが、善いのか悪いのかを心配する態度に満足したからで「…わたくし、これで二度目の乗車なんです。一度目は時計様とお会いし、銀河ステーションに着くまでの間、一緒におりました。…ふふ、そのときですわ、子犬様のことを聞いたのは」頭の中で記憶を想起すると、自然な微笑が顔に浮かび「先程、時計様の匂いがする、とおっしゃられましたね。ひょっとしたら」ポケットに手を入れ、奥の方に大事に忍ばせていた物を取り出す「これのおかげかもしれませんわ」一度目の列車を降りる前、彼から貰った藍の革に包まれた小さな折りたたみ鏡を見せて)

180: 子犬座 [×]
2025-05-11 10:02:11



>レイラ

(二度目の乗車。その言葉を聞けば眉がわずかに上がる。なるほどな、と喉の奥でぽそりと呟きながら、目の前の彼女をもう一度見直す。初対面の人間にしてはどこか銀河の空気に馴染んでいた理由が、ようやく腑に落ちた。彼女が懐から取り出した何かに目を向けると無意識に上体を前へ乗り出してしまった。指の先に握られたそれが見えた瞬間に目を見張った。どんな言葉よりもたった一つのそれが抱く警戒心を完全に打ち砕いたらしい。藍の革はしっとりと手に馴染む艶がある。その折りたたみ鏡は、間違いなく彼の持ち物だった。丁寧に扱い、常に懐に入れていた私物を今は目の前の彼女が大事そうに掌に包んでいる。驚きは、隠せなかった。瞳が音もなく丸くなりまばたきが追いつかない。その衝撃は、胸の奥にかすかに火を灯したようだった。「……あいつが、それを……アンタに、渡したのか?」疑いは、もうない。目の前の彼女は彼が手放しで信頼し、何かを託した相手だ。ゆっくりと、椅子の背もたれに体を預け直す。緩んだ肩、力を抜いた指。膝にかけた尾が、わずかに揺れる。「……それ、大事にしてくれてるんだな。ありがとうよ」今度の言葉には、しっかりと温度があった。ぬくもりと、どこか名残惜しげな気配が滲んでいた。目を伏せたまま、ふっと息を吐いて。しかしその表情にはごく僅かな緩みが灯っていて)




181: 匿名さん [×]
2025-05-11 13:45:41



名前
鹿子 晴匡(かのこ はるまさ)

性別
男性

年齢
32歳

外見
身長172cm。燃える炎のような緋色の髪はふんわりと芯が細く癖の付きやすい直毛。目に掛かる前髪を真ん中分けに、他は耳と項が出るよう短く切り揃えてある。穏やかそうな榛色の垂れ目に太めの垂れ眉、それに右頬に黒子が一つ。瓶底よりは多少薄い、黒縁の大きな丸眼鏡を着用。低く丸い鼻に円やかさを帯びた面長の輪郭と、ある種日本人らしい柔和な顔立ち。やや細身の体型で色白、右手の甲から五指の先にかけて火傷の痕が残っている。灰色の石畳文様を織った袷着物と紺青色の袴、紐付きの革製ハイカットブーツに、黒色の中折れ帽と薄布のグローブ。その上へ紅葉の柄が裏地に入った羽織を合わせている。

性格
細やかな事柄に琴線を揺らす豊かな感受性と、情緒や風情を愛しむ心を併せ持つ浪漫家。その延長線上として新しいもの好き、珍しいもの好きでもある。鷹揚な感情表現と仕草に訛りのある話し方、職業柄の面倒見の良さや交友の積極性など、纏う雰囲気は親しみ易いおっとりとした人柄に見える。しかし規則や約束などの“決まり事”に強迫的な固執があり、その遵守を絶対とする規律正しい人間であろうと努めている為、そこを他者に利用され損を被る事も多い。

備考
髪や肌の色は母方に異人の血を持つ事に由来。一人上京して学び舎に職を持っている教師だが、実家は北部の田舎に所在しており、その訛りが言葉に混じっている。12歳の頃に家の決まりを破って一人出掛けた先で大きな火事に遭い、阿鼻叫喚を生き残ったその名残に右手の火傷と決まり事への執着が心身に焦げ付き痕を残している。

ロルテスト
(心地好い音に揺られていた身体に一際大きな振動が伝わって、安らかな眠りに波紋を落とした。ゆっくりと開いた視界が帽子に半分遮られていたものだから、その些かの煩わしさに思わず微かな唸りを溢し、頭の頂上にそれを収め直す。「……はて。」少し落ちかけていた腰も戻した所で醒めた思考に浮かぶは近々の記憶、即ち今列車に乗るような用事も、そもそも駅にさえ近付いた覚えの無い事。僅かな困惑に眉を下げ窓の方をひょいと見やって――息を飲む。「……天の川ば、溢れたみてェだ。」美しい星々が一面と氾濫した煌めきに数秒遅れて感嘆を落とし、少々と見入ったその後にふと我に返り今度は車内に目を向け、「…おや、」そこで漸く他者の存在に気付く。先程までの己の行動をその者に見られただろう決まり悪さから、もう一度居住まいを正した後に、「こりゃァ失礼、人が居るとは思わねかったはんで。」そのまま一つ、苦笑いを添えた詫びを挨拶代わりに渡す。それに続けて、「其処の方、もし良けりゃァこの列車が何処さ向かってるか、教えてくれんかねェ。」両手は膝の上に組み、ほんの僅か身体を相手側へと傾けて、世間話と殆ど変わらぬ気軽な調子でその人へと声を掛けた。)

指名
お任せ



(/はじめまして。前々より此方の静かで煌びやかな世界に惹かれておりまして、この度ようやっと出来上がりました身分証を提出しに参りました。もし彼がお気に召しましたら、どなた様かとご交流させて頂きたく存じます…!また、ご指名に関しまして、いずれのカムパネルラ様ともお話してみたく目移りしてしまい……お手数ですが、主様より相性その他を鑑みて選んで頂ければ幸いです。最後に、なにぶん癖の強い我が子です故、相性不安等ありましたら忌憚無くお断り頂いて構いません。それでは、長々と失礼致しました。お返事をお待ちしております…!)




182: カムパネルラ [×]
2025-05-11 14:53:42



>鹿子

烏座

やっと起きたか?(まだ眠りについたままの美丈夫を見て、心の中で少しニヤリとした。整った見た目、そして何よりもパッと目を引くのは珍しい髪の色、それは染めているのではなく自前だという事が睫毛や眉の色から読み取れた。顔の作りは東洋的、にも関わらずその色はとても珍しかったからこそ余計に興味を擽ってしまう。目を覚ました彼が戸惑いを抱きながらも目の前の景色に感想を漏らすと、彼の落ち着いた物腰と、そしてその笑顔から伝わる人の良さに思わず顔をゆるませてしまった。素敵な玩具を見つけた時のように胸がときめき「おお、なんじゃ。ええ男が乗ってきたもんじゃな。」と、ご機嫌にカカと笑いながら嬉しそうに目を細める。その雰囲気だけは人が良く愛想もいい。「そりゃあどうしようかね。情報はただで譲るもんじゃないじゃろう。」にやり、そう笑えば意地悪にも片目を細めて彼の様子を伺って)アンタがわしにくれる何かに見合う分だけわしもアンタに情報をやろうか

ペガスス座

(彼が目を覚ました瞬間から、車内の空気が変わったのがわかった。まだ星の欠片が夢の中で瞬いているようなまなざしで、窓の向こうに目を向けている。そんな彼が帽子を直し、身体を起こすと驚いたようにこちらを見てから、不意に笑った。少しばかり困ったような、人懐こい笑みだった。話しかけてくれるその声はやわらかくて、思わずビクッと肩を揺らしてから胸を張って返事をしてしまう「……なっ、なによいきなり! べっ、別にアンタなんか待ってたわけじゃないんだからねっ!」言ってから、しまったと思った。だって、全然、説得力がない。だって本当は、ずっとここで、誰かを待っていた。誰とも知らぬ“誰か”を待ち侘びていたのだ。頬をふくらませながらつん、と勝気に伝えるのは共に過ごす時間への期待を含んだ内容で)仕方ないわね!まっ、まぁでも……その、隣に座って少し話をしてあげるくらいは、許してあげてもいいわよ。特別なんだからっ!


(/このたびはご訪問と素敵なお申し出、誠にありがとうございます。静かで煌びやかというあたたかいお言葉に、身に余る光栄を感じております……!鹿子さんのご参加をとても嬉しく感じています。ぜひ銀河鉄道の物語を鹿子さんと共に紡いでまいりたく存じます。お任せとあったため、お迎えとして「烏座」「ペガスス座」の二人でお迎えにあがらせていただきますので、もしどちらか気になる方がいらっしゃいましたらお好きな方を選んで下さいませ…!もちろん、他が気になる場合はまたお声かけ下さい!
交流が始まった後でも、もし相性などに不安や違和感がございましたら、すぐに別のご案内をさせていただきますので、どうかお気軽にお申しつけください。
それでは、鹿子さんとお会いできることを楽しみに、お返事をお待ちしております…!)




183: レイラ [×]
2025-05-11 21:43:40

>子犬座

(脅かしたりするつもりはなかったが、深緑色の鋭い目が分かりやすく動揺するほど、鏡を見せた効果は絶大で、結果として彼の警戒を一気に緩めた。しなやかな指先で、すぅ…と藍の革を愛おしげに撫でれば「誰かを傷つけそうになったとき、この鏡を開いていつでも“おいの顔”を思い出せるように、と──。時計様はわたくしに預けてくださったのです」薄桃色の唇が一言一句に思いを込めて奏でるように話をし「大事。ええ、これは大事なものですわ。時計様にとっても、わたくしにとっても。そして…あなたにとっても」真っ直ぐに相手を見つめる。上縁に並ぶ睫毛が憂いげな印象を与える瞳は、春の海のように穏やかで)

184: 子犬座 [×]
2025-05-12 14:55:28



>レイラ

(誰かを傷つけるという言葉が彼女の口からこぼれた瞬間、疑問符が浮かぶ。彼女という存在が纏う儚げで透明な美しさからは決して結びつかない響きだったからだ。華奢な指先が革の表面を慈しむように撫でながら語った“鏡”の意味、その深さを理解できるほどに大人ではなかった。ただ、それがきっと重い約束の証なのだと、そう思った。彼女の声には確かに、あの時計の響きがあった。それが嘘であるはずがない。彼女の話す時計は、まさしく“あの人”だった。「……アンタ、運がいいな」不意に漏れたのは、どこか照れくささを隠した言葉だった。だが、耳の先がぴくりと揺れてしまったのは、きっと誤魔化しようのない本音で。「一度目で時計に会えたんだろ。此処には沢山のカムパネルラがいる。そう簡単に会えるもんじゃねぇのにさ」その声音には、無意識のうちに誇らしげな響きが滲んでいた。まるで誰よりも彼をよく知っている、と言わんばかりの無自覚な優越感が、背筋を少しだけ伸ばさせたけれど、そんな自身の幼さにふと気付いてそっと目を伏せて)



185: レイラ [×]
2025-05-12 17:11:12

>子犬座

(誇らしげだったり、かと思いきや恥ずかしげに目を伏せる様子に首をこてんと傾げる。青年や男子との関わりが薄いために心境の変化に理解できない部分もあるが“まるで四季の移ろいのようだ”と興味が湧き「ええ、わたくしは幸運ですわ。はじめに時計様、二度目の乗車ではその息子さんにお会いできてますもの」憚らず口にした肯定は自分の思ったことそのまま、敬意を込めて「あ、そういえば時計様の口からあなたを含む4人のカムパネルラ様のお名前が出ていましたわ」ふと思い出したかのように、右手の人差し指を頬に当て、さらに記憶を辿りながら、浮上していた4人の名前を指折り数えて)
山猫様、子犬様、蠍様、アンドロメダ様……。後半二人はなにやら危険がお有りそうですわね。他にはどんな方がいらっしゃるんですか?

186: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-12 18:05:48



>烏座


(目の前の彼は、己と同じか少し年上くらいだろうか。暮らす時代柄まだまだ珍しい類いに入る洋装に惹かれる以上に視線を奪われたのは、その高い背の後ろに見え隠れする艶やかな翼。未だ眠りの中で夢を見ているのかと、問い掛けた後に仄かに瞠目した思考を優しく撫で払う、機嫌良い笑い声。「ふふ、あんがとなァ。貴方さんも、黒のよう似合う格好良い男だねェ。」それにつられて此方も笑みを吹いて、お返しとばかりに彼を褒めた後。「――おんや。おや、まあ。困ったねェ。」思わぬ答えを返されたと驚きの音を溢して、しかしながら台詞ほどの困惑は見せず、反って楽しむような色を混ぜた声で返す。「これ、こん通り、俺が持っとるもんは大して無ェ。」自らの羽織の両端を十指で摘まみ、ふんわり広げて翻してみせて文無しだと示しはしたが、こんな時に求められるものが金銭物品の類いとは限らないと知る程には旅を重ねた年の功。「だはんで、お手柔らかにしてけろなァ。」それ故、にっこりと笑む顔を軽く傾げる茶目っ気を含んだ仕草と共に、彼の言葉に乗り込んだ。そこに緊張や警戒の色は見当たらない――夢であれども現であれども、この銀河を駆ける静かな列車と、其処に己と彼の音だけが揃った奇跡が如き一期一会の風情にもう少し浸りたいと鳴いた、そんな浪漫家の性分がそうさせたのだ。それから、帽子を脱いで膝の上に置き、明るく開ける視界に彼を改めて捉える。「さて……ああそうだ、話の前に一個良いかねェ。」この脱帽に含まれる意は、これより言葉を交わし合う相手への礼儀。互いを対等な立場とする、或いは彼を上とし敬意を払う仕草でもあるが、紡ぐ物言いは変わらず堅苦しさの無い和やかさを保つ。「先に互いの呼び名ば決めとかんか?こうして腰ば据えて話すんに、ずっと“貴方さん”と“アンタ”じゃァ不便だし、……ちぃっと味気無かべや。」左の人差し指を二人の間にぴんと立てて告げた、提案とも要望とも取れるそれは、先程意表を突かれた返事の名残に最後が些か自信無さげに萎れている。だがその語尾とは裏腹、彼を見据える眼差しには期待の灯火が確かと宿っていた。)



(/参加許可を頂きまして有り難うございます!此方こそ身に余る光栄に大変恐悦しております…!また、お迎えに関しましてもご丁寧にお二人も提示して頂いて嬉しい限りです。どちらのカムパネルラ様も素敵で、迷いに迷ってお時間を多く頂戴いたしましたが、ここはまず危うい色香を持つ烏座様とお話をさせてもらいたく存じます。勿論、負けん気の愛らしいペガスス座様も大変魅力的です故、後々にまた鹿子とお話を紡げる夜を設けられたら良いなと思っております!それでは、粗相無きよう努めて参りますので、これより宜しくお願いいたします。)




187: 子犬座 [×]
2025-05-12 20:41:43


>レイラ

……あー、そいつらの名前、出たか(ふとした一言が引き金になったかのようにに表情が目に見えて曇る。特に“蠍”と“アンドロメダ”という名が乗せられたとき、分かりやすく渋い色が浮かんだ。唇の端がわずかに引きつり、鼻先に皺を寄せて、言葉にせずとも嫌悪を語るような眼差しで、まるで舌に苦い薬でも含んだかのように、低く唸るような声で呟いた。「……蠍とアンドロメダ、あいつらはやめとけ。マジで、ろくでもねぇ」真剣な眼差しが彼女に注がれる。瞳の奥には、自分が警告する理由がちゃんとあるのだという信念があった。それだけでは足りぬとばかりに、ひと呼吸置いてから、さらに一人の名を足して「それから“烏”。あいつも入れとけ。その三人は、なーんていうか……合わねぇ奴はほんと合わねぇ。関わらんに越したことねぇから」“苦々しい”という言葉そのもののような顔をして、ぽつり、ぽつりと零すように言った。その人物は本当に厄介なのだと、彼の表情が物語っていた。けれど、次の瞬間に頬を指でかくようにしながら少しだけ視線を逸らして、それでもどこか誇らしげにこう言った「……でも、俺の好きなやつもいる。小狐ってやつがいてな」声色が心持ち和らぎ、口調にだけではなくそのまなざしにも愛着が滲む。思い浮かべているのであろう姿を追うように、遠くを見ながら語る。「そいつ、めちゃくちゃ美味いもん作んだよ。しかもな、俺の走りにもつきあってくれんだ。いいやつなんだよ、ほんと」言葉の端々からあふれる好意は、少年のような率直さと、どこか兄弟のような信頼に満ちていた。「他にもいるぞ、カムパネルラ。十人……いや、もうちょい多いかもしんねぇけど。大体そんくらいだ」数を数えきれないほどにいる仲間たちを想いながら、彼はふと小さく微笑んだ。)アンタは?俺は子犬だけど、アンタはなんて言うんだよ




188: 烏座 [×]
2025-05-12 20:41:52



>鹿子

(まるで掌の上で羽虫が踊るような、くすぐったい高揚が胸奥を撫でていた。人見知りなどという垣根はとうに持たぬはずだったけれど、目の前の男が見せる飄々とした身ごなしの奥にどこか翳りのない聡さがある事を読み取った瞬間、その理知的な閃きを愛おしむような感情が唐突にしかしごく自然に芽吹いていた。ひらりと脱がれた帽子の内に隠されていた髪は、まるで暖かな炎でも思わせる優しく暖かい淡い光を孕む色彩だった。目を奪われる、とは正にこういう瞬間を言うのだろう、と思わず瞬きを忘れたままその不思議な輝きにひととき見蕩れてしまった。けれど彼が楽しげに笑えばその魔法のような間も音を立てて溶けてゆき、まるで時を巻き戻すような調子で、どこか子供のような気安さと親しみを籠めて「カカカッ」と笑い「よか、よか。こりゃあええ提案じゃのぉ!」湧き上がった声は正に鳥の鳴き声めいて朗々と、しかしどこか律儀に響き。朗らかさの裏で物語の幕を上げるように、演技がかった動きで自らの胸元へとそっと指をあてがって「……そいじゃあ、まずは教えとくことがあるんよ」そう前置きを。不思議とその声音には重さがあるが沈むような重さではない。柔らかに地に降り立つ雪のような、語ることそのものに意味を灯す静かな敬意が見えて。「ワシは、カムパネルラじゃ」つづいて、指が空を泳ぐように彼の方へ向き「ほいで、アンタは……ジョバンニ、じゃ」その宣言にはどこか確信にも似た響きがあった。既に決まっていた真理をただ告げただけのような、落ち着きすら滲み。それから微かに唇の端が引き上がる。まるで悪戯を打ち明ける直前の少年のような、しかしどこまでも優しい笑みで「もうちぃと言やァ……ワシは“烏”のカムパネルラ、っちゅうてな。気ぃ楽に、“烏”ゆうて呼んでええけェ」名乗るそれは烏。黒を司る名にしては、その響きはあまりに明るく重苦しさなど一切なかった。先に名乗れば遅れてすこしだけ首を傾けてみせる。その仕草は風の向きを測るようでもあり、対話という名の波を呼び込む潮目を読む者のようでもあった。己を語り終えたその表情には、疑うでもなく急かすでもなくただ静かな期待の明かりがあり。先に名乗ったのだから、人のいい彼ならばきっと続いて名乗ってくれるだろうとそう信頼を寄せて口を閉じ)



189: レイラ [×]
2025-05-12 22:10:05

>子犬座

(ほうほう、と冷静に頷きながら話を聞いていたが、注意が必要なカムパネルラがもう一人追加されるとは思わなかった。“烏”の名を新たに頭に入れておけば、ふむ…と顎に指を添えて思案する仕草をし「困りましたね。この汽車が私とその3人を巡り会わせたときはどうしましょ」車両の天井を見上げながら呟く。苦虫を噛み潰したかのような顔で、真剣に話をする彼の様子から3人の危険性というか、会ったら帰るのが困難になるのは明白。恐怖はないが──。と考えているうちに相手の声色が変わったのを聞いて、目線を前に向ける。“小狐”というカムパネルラについて語る彼の表情や口調は先程までの嫌悪に満ちたものとは違い、和やかで愛好的。垣間見える少年のような一面を意外そうに見つめていると、小さな微笑みに思わずつられて「──レイラ。わたくしはレイラといいますわ、子犬様」口角が自然と笑みを浮かべ)

190: リズ・フェリシティ [×]
2025-05-13 04:26:49




>蠍座

……ああ、そう。そういうこと。
( その声はどこか不思議な音階を保ちながら、ぽつりと落とされた。彼の指先を、態度を、その表情を余すことなく目で追いながら、纏うカリスマ性を頷かせるような言葉に一瞬、ぴくりと肩を跳ねさせた。確かに、少し考えればわかることだった。小狐座から蠍座の話を聞いたのならば、その逆もまた有り得るということ。きゅうと細まった瞳孔が落ちた影の中で爛々と輝いて、全てを呑み込む暗闇をじいっと見つめる。「アンタってヤなオトコね、わかってて聞くなんて。」はあ、とわざとらしく肩を竦め溜息をつくものの、ゆっくりと見せつけるようにして閉じられた拳、その上で確かに我が身を握られたかのような感覚と彼の用意周到さに舌を巻くようにも喜色を孕んでいた。そして己が事前に立てた算段、それが覆されたことに思考を巡らせる。一度言い返せば暴力、または脅しは免れないと考えていたからこそ、この反応は一体何か探るように五本の指を順番に落とし、机をとととん、と叩く。「あなたの可愛い可愛い小狐くんに聞かなかったの?蠍座」わざと呼び捨てにしたのは当てつけだった。適当なニックネームで呼ばないこともまた、彼が自分の名前を覚え、呼んだという意味を確かに捉えたから。唇はニヒルな笑みを描きながらもそう吐き捨てるように横を向いて、頬杖をつく。指先の次に腕を置いたのは彼との対話の意思を明確に汲んだからだった。上半身を倒し、先程よりも迫った距離。一歩も引く素振りを見せずに圧倒的な強者と対峙する。目の前にいる彼がすぐに自分を加害する気はないと判断した上で、ゆっくりと瞼を上下させて。「さあね。アタシもよくわかんない。…ただ、ここで死なない方法をって聞いたら、なんか庇護欲が湧いちゃったみたい?」ふいと視線は珍しく窓を向いて、あの夜を思い返すように華美に装飾された横顔はやけに達観していた。すぐさま蠍座に戻された瞳、そこには先程までの触れたら切れるような鋭さはなく、ほんの少しの温かさを孕んでいるようにも思える。蠍座に似たような軽口を叩きつつも、薄く弧を描いた口角は人を小馬鹿にしたような笑みではなく、くるりと髪先をいじる指先はどこか年相応で。「小狐くんはアンタたちの餌食になるジョバンニがカワイソーだったみたい。…ホント変なヤツだった、アタシのこと怖い、理解できないって思いながら助けンの。ジョバンニ全員がここから逃げ出したがってるワケじゃないのにね。」ギラついたラメ、毒々しいインナーカラーをライトに照らしながらそう目の前の彼に挑戦的に笑いかける。案に競争やリスク、それに伴う快楽を追い求めている自分たちのような人間を指すように示しているが、しかし「…だから、助かった。アンタのことも知れた。あんな甘っちょろいヤツだから、アタシ、アイツのこと好きよ。」続いた言葉はやけに落ち着いて、そうはっきりと好意を口にする。これが彼にとっての”自分を見ない”ということの地雷であろうとも、はっきりと伝えるべきだと判断したから。先程から読めない彼の目的、それは何かと見据える瞳には一切の揺らぎはなく、回想に浸りながらも彼女もまた、彼だけを見つめている。まるで小狐座を通して、理解を深めていくようだった。馬鹿という言葉には賛同しないまま、「__…だから、今回のこともアタシを彼が”売った”とは思いたくない。」そう付け加えたのは、正直自分でもよくわからない感情から。彼に裏切られたとは思いたくなかったのかもしれない。そんな小さな囁きを掻き消すように、かつん、と先程までとは異なる鋭い音を立てヒールを鳴らす。手のひらで踊らされる舞台に一石を投じるようにも、小狐座を盾にされたことに対しての不満を表すようにもじろりと視線を返しつつ、選んだ言葉はやはり彼への愛着を感じさせるもので )
…んで?これで満足?アンタはアタシの“友人”に何を聞いたの。




191: 子犬座 [×]
2025-05-13 10:12:19


>レイラ

(柔らかな声色だった。“レイラ”と名乗るその女は、名乗りすらも一輪の花が風に揺れるように、気負いなく、しかしどこか品を纏って放った。その声音の向こうに、こちらの口元が自然と緩むのがわかった。「……俺のことは、子犬でいい。俺も……お前のこと、レイラって呼ぶ。……それでいいか」言い終えたあと、不器用に視線を逸らす。その眼差しの先には何もない。ただ、まっすぐに彼女を見つめるのは、まだ慣れないだけだった。だが、その穏やかな一時を壊すように、ふと頭の隅に過った影があった。いや影、などという柔らかい言葉では足りない。それは、現れれば全ての空気を塗り潰す“死”そのものだと考えを改める。蠍座と、アンドロメダ座。名を思い浮かべただけで、吐息の温度が一度下がった気がした。「……蠍座と、アンドロメダ座。もし、お前があいつらと出くわしたら……もう、運に任せるしかない。烏座の好みは……男だからな。お前がこの汽車に取り残される可能性は、正直、薄い」肩の力を抜いたような口調だがその実、内に込められたのは凍てつくような現実。幻想の汽車に似つかわしくない冷たさ。淡々と、まるで統計を述べるかのように告げる。「──でも、あの二人は違う。気に入られたら取り残されるし、気に入られなければ殺されるかもしれない。いつも、あいつらの周りには死臭が漂ってる。馴れたくない匂いだ」そこまで言って、ふと目を伏せた。わざとらしさも、悲壮感も、強がりもなかった。ただ、事実を言葉にしただけ。悪趣味だと言うのを表情に浮かべて苦々しい面を見せて)



192: 蠍座 [×]
2025-05-13 10:12:36


>リズ

(す、と紫煙のように形を成す思考を纏いながら、面前の彼女を見た。片肘ついた彼女の華奢な指が机を叩く音、その余韻すらも耳に心地よい。表情も仕草もどれを取っても計算が利いている。だが、その奥に覗くのは冷たい硝子よりも透明な感情で彼は確かに“それ”を感じ取っていた。数あるジョバンニのなかでも、一際色濃いこの存在。興味が湧かないはずもない。むしろ湧きすぎて困るほどだった。「──へえ、アタマも回るし、見た目も良い。黙って座ってるだけでサマになる女ってのは、ほんと面倒くせぇくらい面白い。ま、答えてやるよ。アンタの“友達”が俺に何を言ったか……つっても、大したもんじゃねぇ」彼女の言葉の棘をひとつずつ舐めるように味わいながら、低く笑う。嬉しそうでも、怒っているようでもなく、ただ愉快そうに。そして言葉の主導権を、完全に自分の掌に収めるようにして続きを語る。そこまで言ってから喉の奥でひとつ笑いを噛み殺した。「小狐くんがわざわざ俺に言いに来たんだ。ジョバンニに、また会いたいと思ったヤツができたってな。しかも、俺の好きなグミを手作りして。俺、グレープのグミが好きなんだよ」ふっと、掌の上に透明な飴玉を転がすような仕草をする。持っているわけではない。ただ、思い出すように。「挙句の果てにお前とそのジョバンニが居合わせた時“暴力はやめろ”って言ってきやがる。俺が小狐くんに甘ぇの知っててさ。あれだよ、そいつは紫が良く似合う綺麗な顔してる女だから、傷物にしたら許さねえって。……それ、俺に言うかねぇ?俺だって紫が良く似合うじゃんね」くくく、と笑う声には毒気がある。けれど、妙に嬉しそうでもある。彼女の目を真っ直ぐに見て、先程までの気障さや芝居がかった声音をほんの少し崩し、低く本音を紡いだ。「自己主張なんて滅多にしない小狐くんが俺相手に交渉しようとすんだぜ。もし願いを断ったなら“飯作ってくんねえ”って、最後にそう言われたんだよ。……いやぁ、狡いだろ。お前だったらどうする?美味い飯と目の前の楽しさを天秤にかけて、簡単に断れるか?」かすかに目を細めた彼の笑みは、いっそ少年のように見えた。ほんの一瞬、無防備な愛しさを宿して。それは次の言葉に繋がる、一拍の助走であり「だからな、リズちゃん──白状すると、今の俺はだいぶ不利なんだよ。アンタのお友達がお節介なせいでさァ」にやりと口角を上げる。だがその奥には、彼なりの“譲れない感情”が確かに潜んでいた。まるで自分が知らぬうちに、小狐とその“友達のジョバンニ”を、天秤にかけさせられていたかのように。「……で?」と、彼女の問いをなぞるように、喉奥で低く呟いた。「今度はアンタが答える番だ。──その小狐くんが“助けたがった”アンタが、何を考えてんのかってこと。俺はまだ、アンタの全部を見ちゃいねえ。だけど、ちょっとだけ分かってきた。少し話しただけでつたわる負けん気の強さ、悪くない。」ぐっと身を乗り出すようにして、彼女の瞳に自身の影を落とす。囁くような声音、鋭くも艶めく視線。それは問いでもあり、誘いにも似ていて。)頼むよリズちゃん。タイムリミットまで面白い女でいて、アンタを傷つけないでくれるか?




193: カムパネルラ [×]
2025-05-13 16:09:54


山猫座「あら、貴方にも聞こえる?耳を澄ましてご覧なさいな、貴方の心臓がこの汽車に恋をする音。これは契約なの。愛とか、罠とか、そんな甘ったるい名前で呼ばないで。この列車に乗ったなら、誰もが忘れていた獣の鼓動を山猫が教えてあげる。」


○ 世界観 ○
>1

〇 提供 〇
>2

〇 好み / 萎え 〇
>3

>ジョバンニの受付はいつでも行っております。


興味を持っている、お試しで参加してみたいなど、質問やご相談だけでも受け付けていますのでお気軽にお問い合わせ下さい。


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もし少しでも興味を持って下さった方がいらっしゃいましたらお気軽にお声かけください。




194: レイラ [×]
2025-05-13 16:25:14

>子犬座

(日常生活で呼び捨てを受けることは殆ど無い。相手の提案を新鮮に思いながらも「子犬“さん”と呼ばせてください。その、わたくし、人を呼び捨てにするのは慣れておりませんので…」同時に照れくさい気持ちがあり、一瞬だけ視線が斜めに逸れたのがその証拠。相手が自分と歳が近い異性だからなおさら恥じらいがあるのだろう。ただし、垣間見えた少女らしい一面はあくまでも“素の一部”。再び蠍座と、アンドロメダ座の名が出たとき、空気はまた重くなり“運に任せるしかない”という言葉を耳にして、無意識に手元の鏡を握った。まるでお護りのように。突きつけられる現実を何も言わずに聞き、最後にふぅ、と静かに息をつき、沈んだ声色で「殺されたくない……」ゆっくりと瞼が動いて、瞬きを一回、休止を挟んだ瞬間「と、言ったら嘘になりますわ」さっきのはまるで演技だったかのように、沈着な態度に戻り「正直に言って、わたくし死への恐怖はありません。元の世界に未練もありません、べつに、殺されてもいい、美しい宇宙の藻屑になれるなんて素晴らしいとも思いますわ。……けど、約束しましたの、時計様と…。『必ず銀河ステーションで降りて帰る』と──それを果たしたいですわ。運を味方につけてでも」据わった眼差しで、ほとんど抑揚をつけない言葉の数々。けれど確かな意志がこもっていた。次第に表情はほころんでいき)
ですから子犬さんには、わたくしがこれからまた汽車に乗っても無事に帰れるよう、祈っていただきますわ。

195: 子犬座 [×]
2025-05-13 17:03:28



>レイラ

(彼女の言葉を黙って聞いていたが、無意識に眉がわずかに動く。自分の命に執着がないこと、それでも“約束”があるから生きたいと言う彼女の意思は静かに、それでいて確かに伝わってきた。死への恐怖がないと告げられた瞬間、脳裏を過ったのは時計座の顔だった。あいつはきっと、そんな結末を聞いたら立ち直れない。彼女が言うように、宇宙の藻屑になったくらいで割り切れるほど器用な奴じゃない。「……そうか。そいつぁ、良かった」喉の奥でくく、と短く笑いながら、柔らかな敬意を込めて頷いた。彼女が死を選ばない理由が、自分の命の価値じゃなく“時計との約束”だってことに少しだけ胸が熱くなる。ふ、と小さく息を漏らしてから「俺は、死ぬのが怖ぇよ。ガキみてぇな理由だけどさ。まだ知らねぇことが多すぎる。もっと色んな奴と話して、もっと多くを知りたい。……だから、俺は汽車に乗る」すっと立ち上がるような気持ちで、静かに彼女へと目を向けた。強く主張するわけじゃないが、その声には芯がある。低く抑えられた口調に、どこか少年の夢と、今の自分の生き様が滲んでいる「……レイラ。あんたの夢は何だ?」問う声に、軽薄さはなくて、そこにあるのは等身大の真剣さ。彼女がその答えを持っていてもいなくても、ちゃんと受け止めるつもりで口を閉じて)




196: レイラ [×]
2025-05-13 19:19:46

>子犬座

(「夢…?」たった一つの小さな単語は彼女を戸惑わせた。人が将来なりたいものやしたいこと、生きる原動力にもなりうる“夢”について、今まで想像もしたことなかった。聞かれて初めて、自分はそういうものを持っているのかと疑問がわく。意味もなく唇に指を当て、しばらく沈黙し始める。真っ先に死や鮮血を見たいという欲求が候補として上がってきたが、あくまで嗜好であり夢ではないと判定する。では一体なにが答えに当たるのか──「あ…」不意にこぼれた声の裏では、様々なものに憧れ、ときに羨んでいた幼き日の自分の姿が頭に浮かんでいて「夢かどうかは分かりませんが…。小さいときからわたくしは、知りたいことがあると本を読んで、そこに書かれていることに満足していました。けれど今は、本だけではなく、自分の身を通じていろんなことを知りたいですわ」ここで、時計のカムパネルラを思い出した。父親の顔をして愛について語る彼は、本では得られなかったものをたしかに教えてくれた)
はぁ、わたくしがこんなことを思ったのは、きっと…あなたのお父様が、あなたへの愛を語ってくださったおかげですわね…。

197: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-13 19:26:40



>烏座


ふむ、カムパネルラ。
(伸びやかに響いた可々を落ち着けるように、そっと丁寧に置かれるその言葉へ此方も耳を傾け受け取る。始めはそれそのものが彼の名であると勘違いをして、しかし己を指して向けられた呼称に直ぐ様思考を正す。「ジョバンニ……」この場所での役割か関係性か、それとももっと別の何かか。子細は遠く遠く、今すぐと見える事は無い。ただ、無償の施しはしないと言う彼から教えられたその名の静謐な重さは、きっと一等大事にしなければならない語りであると思わせるには充分だった。「……うん。うん、なるほどなァ。」カムパネルラとジョバンニ、その二つをもう一度口の中で転がして、ゆっくりと確かに飲み込んで。その瞬間を見計らったようにまた彼の表情は徐と変わり、先程の語りにもう一つ枝葉が増える。「烏。…ははぁ、通りで綺麗な髪ばしとる訳だ。」成る程正しく連想する程美しい彼の濡れ羽色とその名称を掛け混ぜて、素直な感嘆と納得を落として頷いた。それに加えて、態々そう名乗る事の意味は恐らく、“カムパネルラ”と称されるのは彼一人ではないという事。ならば己は――と推測の糸を一旦断ち切る。彼是考える前にまずは、そう、「俺ァ鹿子晴匡。学校で教師ばしとる“ジョバンニ”だ。貴方さんの好きなように呼んでけろ、烏さん。」名乗られたのだから此方も誠実に、しかし少しの遊びを含んで彼を真似た自己紹介を。それから話の内にすっかり伸ばしていた背は、再び彼の方へ緩やかな角度で傾いて。「そんで烏さんは、こん列車さ乗んのは慣れとるんか?」見合う対価を探るだとか、上手く情報を集めるだとか、そういった建前が全く無いとは言わない。けれども正直、そんな無粋な打算は一割未満で二の次三の次。今はもっと純粋に、目の前の彼との交流を楽まんとする軽やかな浮わつきを和む目尻と声音に乗せて、そう対話の最初の一歩を踏み出す。)





198: 子犬座 [×]
2025-05-13 21:56:16



>レイラ

(まるで心の奥底に静かに沈んでいた泉から、ぽつりと一滴こぼれたようなそんな声だった。「夢かどうかはわかりませんが…」と、彼女が語り出したその瞬間、ごく自然に呼吸を止めた。耳を澄ませるとは、こういうことなのだろう。慎重に、丁寧に、彼女の言葉を受け取っていた。本により知識に満たされていた少女が、それでも本を閉じて外の世界へと歩み出そうとする。恐らくはその一歩に、痛みも、迷いも、戸惑いも伴うだろう。それでも彼女はそれを望んでいる。そうしてその背中を押したのが、“時計”だったというのなら、とても誇らしい。気づけば、感情が無意識に尻尾へ伝わっていた。重力に従ってわずかに揺れたそれを見て、なんだか恥ずかしくて自分で自分に呆れる。なんだよ、と誰にも聞こえない声で呟いて、口をむずと結び。視線を逸らすのに理由はいらなかった。ただ、照れくさくて、どうしようもなく嬉しかった。「……そん時ゃ、教えてくれよ。今までやったことなかったこととか、初めて食ったもんとか」それから不意に口を開けば、その声音はどこまでも低く静かで、けれども不思議とぬくもりが滲んでいた。言葉にしてしまえば、それはただのお願いだ。でもそこには、確かな信頼と期待と、かすかな照れ隠しが同居していた「……次、俺に会った時でいい。お前が、新しく知ったこと。それを聞けるの、楽しみにしとく」新たな一歩を踏み出そうとしている、その足音を逃さぬように悪戯に口角を持ち上げて、そう伝えて。)



199: 烏座 [×]
2025-05-13 22:00:48


>鹿子

(名乗った名前をまるで掌の上に載せて遊ぶように、鹿子晴匡という男はさっそくそれを試すように口に乗せて転がした。己のことを指す「カムパネルラ」に少しばかりの戸惑いと、それを受け入れる肯定とが微かに混ざった声色で。いい声だと内心で思った。広がる窓辺の夜景に、あの穏やかな声音はきっとよく似合っていた「……晴匡、かぁ。ええ名じゃ」小さく喉を鳴らして、くつくつと笑う。すっかり馴染んだように発音してから、軽く片手を挙げて応じるように「烏でええよ。変に気ぃ遣われるんも、性に合わんけぇな」そう伝える。己についてを問いかける流れがあまりにも自然体だった。探るでもなく、図るでもなく、ただただ、目の前の烏という存在を面白がってくれている。それだけが伝わってきて、思わず毒が抜けるような気がしていた。息を一つ吐いて、外の星を追うように細い目を向け、肩を背凭れに預けながら小さく頷き伝える。「この列車にはなァ、ちいとばかし“決まりごと”があるんよ」人好きのする笑顔でゆるく笑いながらも、その声音には低く沈む重さがあった。冗談の皮に包まれた言葉の芯には、ひやりとした現実が宿っている「守らんかったら、帰れんようになる。どこにも、じゃ」もっと焦らしてから伝えようと思っていたのに、ああ、簡単に言うてしもうたと、自分の唇からこぼれた言葉に内心で小さく目を見張っていた。こんなふうに、誰かに対して対価も無しに情報を差し出すなんて。けれど今は、それが惜しいと思えないほどに目の前のこの男の温度がちょうどいい。そう感じてしまったのだった。切り替えるべく咳払いを一つ。まるで湯気の立ちすぎた湯呑をいったん脇へ置くように、己の熱を冷ます仕草。次に目を合わせたときに瞳の奥にはやんわりとした毒と甘さが戻っていた。「……けどまぁ、つまらん話ばっかしじゃ退屈やろ?」ちょいと指先に乗せて見せたのは、一枚の古びた銀色のコイン。かすかに歪んだ縁の、使い込まれたそれを彼の方へ差し出しながら、にこりと笑って「まずはこれ、よう見てつかぁさい。イカサマなんぞ仕込んどらん。裏表、ちゃんとしとる。……確認、した?」片目を細め、色眼鏡の奥からいたずらっぽく覗き込む。微笑は保ったまま、しかしその熱はどこか挑発的で、目の前の相手の心に指を添えるようだった。「今から、表か裏か──ひとつ、賭け事しようや。あんたが勝ったら、俺ァ“その大事な決まり”をひとつ教えちゃる」ことさらさらりと、その価値を言い下ろして見せる。その実、その“決まり”が命に関わるほど重大であることを知っているのはこちらだけだと言うのに。「ほいじゃが、俺が勝ったら──あんたの“大事なもん”を、ひとつ貰う」そう言って、しれっとした顔のまま唇の端をわずかに上げて微笑みを見せて「……乗るか降りるか。さて、どうするね、晴匡さん?」問いかけは、まるで軽口のように。けれどもその声音には、背筋を撫でるような滑らかな悪意があった。遊戯と知りつつ抗えぬ蜜を用意した烏座は、まさにそんな言葉で彼を誘っていた)




200: リズ・フェリシティ [×]
2025-05-14 04:31:45




>蠍座

( ふたりだけの声が響く車内、静寂を震わせる声はどこまでも愉快げにこの場を支配していた。くるりと宙を描く彼の手のひら。その中にあったもの、小狐座がしたこと。彼から語られる事実に取り繕うことも忘れ、ただ目を丸くする。微かに動揺したように視線を泳がせ、葛藤に揺れ動く瞳がその内容を受け入れ難いとも、先程彼があげたような馬鹿と思わず肯定したくなるような気持ちで子供のようにぎゅっと眉間に皺を寄せて「……ホント、ヘンなヤツ。」数秒の間ののち、僅かに目を伏せ、そう短く言葉を落とす様はどこか噛み締めるようにも、確かに彼との友情は存在したのだと、その喜びを隠すようにもツンと跳ね上がっていた。たった一度きり、それも彼らからすれば瞬きの間共に過ごしただけのジョバンニと彼自ら友人と称する蠍座を比べて、こちらを優先するなんておかしなことだ。彼のそんな一面が、やっぱり好きだった。そんな中、目の前で不敵に笑みを形作り、それ相応の色香を纏わせる彼が小狐座を語るとき、その無邪気さはすこし異質で。彼の危険性を知らぬものならその差にくらりときてしまうのだろう。しかし、その姿はまるで自分に意見した小狐座を愛でるように自分には感じられる。…そして、その言葉の裏に滲んだ感情。ちくりと刺さるそれに何かを察する。つまり、結果はすべてこちら次第なのだろう、と。タイムリミットとは銀河ステーションに着くまで。ぐっと迫った距離間、その艶やかな視線を一身に受けて唇が僅かに水音を立てた。「…アラ、アタシの友達がごめんなさいね」小首を傾げて、ゆっくりと笑みを作る。誘うように唇を甘く彩るカシスを歪めて、纏う雰囲気を少しずつ変化させていく。「そ、女のコはすこし気が強い方がカワイイでしょ?だから、そんな女が考えてることなんてカンタンよ」不利、なんて言っているが小狐座がどう言おうと彼はきっと変わらない。同じく人を動かし、支配することに悦楽を覚える。自分はそう言った相手に…。「___どうやったら、カムパネルラ1キケンな蠍座を出し抜けるか。それだけをさきっから、ずうっと考えてンの。無傷でここから逃げて、他のカムパネルラにどう自慢してやるかって、考えてるの。」そんな相手に、歯向かうのが大好きだ。内側に秘めたスリルと刹那主義、本能の狭間に住み着く獣性を晒すように、にいっと悪戯っぽく口角を上げる。先程までの警戒、それを大きく凌駕するほどの、刺激を欲するオンナの表情。「ま、アタシをブン殴って、彼の作るご飯を抜かれるアンタも見てみたいけどね。」くるりと楽しげに喉を鳴らし、戯けたように口角を持ち上げる。まるで野良の動物が腹を見せ懐いたように思わせる素振り、しかしその合間にも相手を観察する手は止めず、瞳はうすく細めたまま。彼と小狐座が引いた安全という境界線を、まるで子猫が悪戯をするように引っ掻く。もしそんなことになれば無事で帰れる保証はないと理解した上で、敢えてそう口にしたのは、彼の言う”見えていない考え“をちらつかせるもので。「…ねえ、嫌いじゃないでしょ。こういった、”馬鹿で可愛い女”。」悪辣に、確かに少女めいた瞳で先程の彼の言葉をなぞる。ふっと頬杖を解いて、伸ばした先は彼の頬。躊躇いもなくひたりと手のひらと頬を触れ合わせ、欲に濡れギラつく瞳で笑いかける。彼の猛毒のことは知っている、その上で彼に触れたということは彼に対する挑発の程度を探るようにも、奇しくも同じく許されるラインを見極め、そしてその上を踏みつけ、そのギリギリを弄ぼうとする意地汚い心から。しかし、その指は微かに無意識からの震えを纏っていたし、主導権を奪い取ろうと必死な子供のようにも、絶対的な王者の瞳には写ってしまったかもしれない、 )




201: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-14 19:45:35



>烏座


(頷いた彼の口から転び出た“決まりごと”の話に、心臓と喉に巻き付く焼けた鉄枷が、ぐっと引っ張られたような焦燥を起こす。それは取り繕う暇も無く僅かに見開いた目にも、もう一度問い掛けんとして失敗した微かな掠れ声にも顕れた。規則を守れ、規律に従え、さもなくば――頭の奥で唸る強迫に、とっくに治った筈の火傷が一瞬熱く痛む心地がして、薄いグローブ越しに右手の甲を撫でさすったのは無意識の事。それも次に彼と目を合わせる頃には表面からすっかり隠して、「ほう。したら面白い事ば企んどるんか?」そう打った相槌に応えるように取り出された一枚のコイン。それに行き着く前に彼から受けた視線の温度が、この心臓の枷に伸ばされた指先のようで、ゆったりとだが思わず目を逃す。「ああ、種も仕掛けも何も無ェ。」逸らした目線の名目上は言われた通りの確認。コインが只の古い硬貨でしかない事を確かめたと是を返した後、明らかな意図を持って問う男。その賭けは単なる遊びで天秤に互いを掛けたようで、その実此方には選択肢など最初から有りはしない。あっという間に袋小路まで追い込まれたも同然の状況下だと、理解するのに時間は掛からなかった。だが、それでも。「……そったら訊き方は野暮じゃァねえのけ、烏君?」狼狽して震える事も、頼み縋る事も無く、咎めるような冗談をけろりと軽やかに投げる。――人より隠す弱味が多かろうが、それで損や苦労を抱えようが、こうして悪意が肌を滑ろうが。情緒も風情も台無しにする情けない醜態を易々晒すほど、己は性根の脆い男ではない。「ああ、乗った。俺ァ表さ賭ける。」罠を構えた狩人を前に決して項垂れず、その穏やかで鷹揚とした態度を崩さない雄鹿の如き浪漫家の矜持で強がり、背筋をぴんと伸ばして。己は彼の思惑に捕らわれたのではなく、自らの意思で向けられた蜜を飲み干すのだと微笑む悠々たる視線で彼を見据え、そう言い放った。)




202: 蠍座 [×]
2025-05-15 18:33:09


>リズ

(近い。いや、近づけさせているのは自分だ。まるで毒に酔うかのように、彼女は目の前の“蠍”に自ら触れに来る。怯える小狐とは違う賢く美しい女狐のように、気まぐれに愛嬌を振り撒いてみせながら、その指先は計算された挑発を孕んでいた。たとえばそれが殺意にも似た本能の衝動だったとしても、一向に気にしない。ただ愉快げに、気分のままに喉を鳴らすだけだった。カシス色に濡れた唇からこぼれた言葉は“馬鹿で可愛い女”。それを咎めもせず、訂正もせず、ただ受け取るように笑んでから明確な恐怖を宿しながらも逃げず、媚びながら牙を隠さず、かと思えばその牙をわざと晒して嗤ってくるそんな彼女に好感を得ていた。彼女の姿を少しも逸らさずにじっと見つめ返す。視線を逸らすなんて選択肢は最初から存在しないというように、ただただじっと。華奢な手のひらが自らの頬に触れた瞬間、その冷ややかさすらも可笑しくて。ふいに緩く目を細めてから首をわずかに傾けて彼女の指先に頬を預けるような仕草をして「へえ……震えてんじゃん」喉の奥で笑うように囁かれる声は、薄く皮肉を塗した愉悦の音だった。指先の震えを見逃すほど、この男の観察眼は甘くなかった。むしろ、その震えすら彼にとっては“可愛い”という評価対象になっていた。まるで玩具の細部を舐めるように撫でていくような目で、彼女の頬に、まつ毛に、化粧の濃淡にすら視線を這わせて「……いいねぇ。やっぱさ、可愛くて馬鹿な女ってのは、見てて飽きない」す、と彼女の手を取る。触れるのではなく、絡め取る。そうすることで、物理的に“優位”を誇示する。爪の先で、彼女の手の甲をなぞるようにゆっくりと滑らせながら、視線はただ一点、彼女の瞳にだけ注がれ続けた。「……あははっ」それから高らかと楽しげに漏れた声は、あまりにも素直で、だからこそ狂気じみていた。小さく震える肩。笑いすぎて滲んだ涙が膜となり大きな瞳を覆い隠し、頬を滑り落ちる寸前に雫を指先で拾う。拾って、つま先で床へ落とした。それが“毒”であることに言及するまでもなかった。「つーかさ、俺のことを隠してたなんてさ。あのアンドロメダも、意外と独占欲あるんだな」皮肉混じりの笑みとともに口元が吊り上がる。笑っている。けれど、怒っていないとは言っていない。知っていて隠されていた、それだけでこの男の“興味”は彼女へと濃く、深く、致命的に染まりつつある。次の瞬間、彼女の手に添えられた指が、するりと彼女の頭部へ頭蓋ごと捕まえてしまうように耳の裏へ撫でるように移動した「で? 噂の蠍に会った感想は?」ぎょろりとするほど大きな目が彼女の顔を覗く。吐息を混じらせた声が、すぐそこに。悪意と戯れ、愛情と死を同時に携えるような距離感で。舌先で舐めるような言葉運び。愉快そうに、傲慢に、確信的に問いかける。「……自分で言うのもなんだけどさ、いい男だったろ?」不敵に笑うその顔は、ひたすらに支配者のもの。誰かの意思に左右される気なんて最初からない。好みで手を伸ばし、飽きたら棄てる。けれど、今の“遊び”はそう簡単に終わらせる気はないと楽しそうな顔が物語っていて)



203: 烏座 [×]
2025-05-15 18:33:22



>鹿子

(車内を満たしていたのは、静寂とわずかに軋む車輪の音。にもかかわらず、彼が高く跳ね上げた銀色のコインが天井近くでくるくると舞い、再び彼の手の甲に落ちて音を立てた瞬間にその沈黙に裂け目が生まれた。「……カカカカッ!」乾いた笑いが、裂け目から覗いた黒の羽ばたきのように響き渡る。笑っていた。喉の奥底から愉快げに鳴くそれは、ただの失笑でも、侮蔑でもない。勝負に敗れたことを、心から楽しむものの声だった。「ははァ……まいったまいった。ホンマ、つっよいのぅ、お前さん。」少し肩を竦めて、わざとらしいほどに目を細めて笑ってみせる。演技じみた身振りにこそなってしまうが、しかしその内側で湧き上がる感情は紛れもなく本物。紛れもない好奇心がまるで猫のように、あるいは獲物を前にした猛禽のように、確かな重さを持って胸の奥に沈む。鹿子晴匡。今一度彼の名前を舌の上で転がした。ふうん、と鼻で小さく笑うと、コインを持ち上げて陽の入らぬ車内にかざし、表面である事を確認する。間違いない。これはもう、彼の勝ちだ。「……そいじゃ、ひとつ目の景品をやらんといけんのう。」す、と目を細めたままに優雅な所作で手首を返し、コインを指の間でくるりと回しながら、口元に愛想の良い仮面のような笑みを貼り付けた。笑みの“かたち”ではあっても、それは一切の温もりを含まず、猛禽がその黒い嘴の奥に骨まで砕く力を隠しているようにも似ていた。「ええか、晴匡さん。こっから先、銀河鉄道が停まる駅は、ひとつ、ふたつ……」言葉に合わせて伸ばした指を一本ずつ折っていく。まるで呪文のように、ひとつひとつの名を丁寧に言葉へ変える。「“鷲の停車場”に、“新世界交響楽”の流れる“小さな停車場”。ほいで、“蠍の火”にな、“ケンタウルの村”。“サウザンクロス”、んで“石炭袋”。そんで“銀河ステーション”じゃ。」ぱちん、と指先を弾く音が、小さな合図のように空気を震わせた。「お前さんは、この駅のどれかで……ぜったいに降りにゃあならん。ええか?絶対、じゃ。のうたりんのフリしとっても、その時が来たら……降りなければぜ~んぶ終わりじゃ」コインを再び弾く。高く、高く。今度はわざと、さっきよりも派手に。回転の軌道は僅かに乱れながら、しかし的確に彼の手の甲へと帰還した。パシ、と音を立てて覆われるその硬貨。「さて……どうするかのう?」柔らかな声音で、低く潜ませた声。けれどその笑みの裏には、問答無用の支配欲と、試すような苛烈さが混じる。「続きが気になるんじゃったら……ゲームも続けるしかないじゃろ?」そう言って、手の甲をゆっくりと持ち上げる。指が離れ、露わになった銀の硬貨は再び、“表”。その事実を確認する前に、彼の眼を捉えていた。逃がさない。たとえ微かな揺れでも、鼓動でも、眉の動きでも。すべてを観察する目で射抜いてみせる。「運も実力のうち、っちゅうがな。お前さん……つくづく面白い男じゃ。」声色が僅かに熱を帯びる。さっきまでの遊戯めいた響きではない。もっと、獣じみた気に入った相手へ向ける特別なそれで)次は……どっちじゃ?晴匡さん。



204: カムパネルラ [×]
2025-05-16 10:42:13



蠍座「あぁ……つまんない。どうしてお前たちはいつも“目を逸らす”んだろうな。俺という劇薬を前にして、その程度の覚悟で立っていられると思ったのか?──まあいい。今からでも見つめなよ、たった今、お前の“死に場所”を塗り替えてやるからさ。ほら、早く乗れよ、じゃないとお前を置いて発車しちゃうぞ」



○ 世界観 ○
>1

〇 提供 〇
>2

〇 好み / 萎え 〇
>3

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205: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-16 20:21:00



>烏座


(耳を澄ませる程に投げられるコインに集中していたものだから、沈黙を裂くその音がいやに鋭く突き刺さる。しかしそれに仄かな安堵の息を溢したのは、続く彼の言葉に賭けの結果を知ったからこそ。「そりゃァ、男だはんでの。」言葉ではそう告げたものの、正直こういった強さに男も女も関係は無いだろう。だが少なくとも、今自身を奮わせたのはそんな昔ゆかしい大和魂の度胸だと、此方からも笑い返す。その直後にまた変わる空気を感じ取れば、また気を引き締めて彼の仕草ごと“景品”を確と清聴する。「……なるほど、こりゃ重大だの。」この列車の名、停まる駅の名、すべき事。そこに殆ど独り言の相槌を落としながら、言葉の他に読み取れるものを探して改めて彼の表情を窺った。しかしそこに在ったのは出会い頭に浮かべていたものと同じようで全く違う、薄ら寒く底の見えない笑顔。それに明白に向けられた、捕食を想像させる熱と声。そこから得られたものは彼の抱く欲の一欠片と、それに気付いてぞくぞくと走った己の背の粟立ちのみだ。つ、とほんの一瞬目を逸らす仕切り直しの後、再び彼を見据える。「そりゃァ勿論続けるとも。全部聞けねば終わってしまるからなァ。」頷く声は平静を保っていれども、刻限の不明が己の焦りを煽って拍動を早め、呼吸は些か苦しく浅く、瞳の焦点が僅かに揺れるのを誤魔化すように瞬く回数も増える。落ち着け、と命じた頭を巡らせる――ここまで詰められている時点で、謀略も腹芸も彼には敵わない。此方が察しきれぬ企みだってあるかもしれない。なればそう、やるべきはたった一点の防衛戦。勝っても負けてもその嘴が己の枷に触れぬよう、全霊を以て尽力するのみ。腹を括るその際にもう一度、やはり無意識に右手を撫でて覆った後に、「いやァ、あんまし褒めたって、なぁんも出ねェよ。ほれ、こん通り。」顔の横まで両手を持ち上げひらひら蝶々の如く揺らしてにっかりと、上がったまま戻らない鼓動の苦しさを抑えた音で冗句の常套句を放る。――コインは既に投げられた。イカサマが無いのなら確率は表裏半々、そして悩んだ所で結果は変わらない。「裏。……どうだ?」故に迷わずすっかりきっぱりと賭けに答えながら、震えども退かぬ覚悟をしなやかに宿した瞳で、此方を射抜く彼の視線を真っ直ぐに受け止めていた。)




206: 烏座 [×]
2025-05-16 22:30:19



>鹿子

(──表だ。開いた掌に現れた硬貨の顔を見てまず目を細めた。隠しきれない笑みが、嘴のように鋭利な唇の端を持ち上げる。まるでそれが最初から決まっていたかのように、動きに一寸の迷いもなく飄々とした声で結果を伝える。「おお、また表じゃの。……ほいじゃあ、ワシの勝ちっちゅうことかいの。」声は軽やかだ。列車の音にさえ紛れず、浮かぶような調子で。だがその裏に張り詰めた糸のような愉悦が通っているのを、彼の聴覚は見逃さなかったに違いない。選択肢など与えられたようでなく、勝負の形をしてはいるが実態はただの誘導で彼の言葉通り、”理不尽極まりない”ゲームだった。それでも、彼は怯まず一歩も退かなかった。それが何より面白くてピカピカと輝いて見えた。手の内を読まれているとわかってなお、笑っていられる度胸。それが良い。「まあまあ、二分の一じゃけぇ、そういうこともあるけぇな。……落ち込んだらいけんよ?」慰めとも煽りともつかぬ声色で、楽しげにそう言う。言葉だけは優しい。だが、その実で舌先ではなく視線の先に既に標的を定めていた。それは彼が無意識に何度も撫でていた右手の甲。グローブ越しに隠された何か。意図せず手癖が出てしまうほどの“何か”がそこにある。欲しかったのは、賭けの結果ではなく、そこに刻まれているであろう“理由”だった。「……晴臣さん。」わざとらしく、くるりと首を傾けてみせる。黒羽根をそっと撫でるような柔らかい声で彼の名を呼び、コインをしまいながらゆっくりと、しかし真っ直ぐに彼の手へと手を伸ばす。「俺ァ、あれが欲しい。」にっこりと、屈託のない笑顔を浮かべる。色眼鏡の奥で形を変えた笑みは、捕食者のそれ。食卓に並んだ一皿に手を伸ばすような、当たり前で当然の欲望。「晴臣さんが……ずっと大事そうにしとるけぇ。なんか、俺も欲しゅうなったんよ。」それはまるで子どもが兄の持ち物に憧れるみたいな声音だった。だがその言葉の端に隠された、“それを隠そうとする理由ごと欲しい”という濁流のような意志は、無垢な風を装ってなお余りある熱を孕んでいる。「くれるじゃろ?」視線はまっすぐ。けれど優しい笑顔を崩さない。選ばせているように見せかけて、断れない空気をじんわりと作る、あくまでも上機嫌に残酷な静けさの中に沈んだ毒を、さらりと溶かして。その手が彼のものに触れるまで、ほんの僅かな距離を保ちながらその反応を待って。)




207: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-17 18:28:42



>烏座


おんや、残念。
(此度の賭けは負け。けれども問題は無い。勝敗は大事だが、一番はそこではないのだ。彼とは対照的に少しばかり大袈裟に肩を下げて落胆する仕草を取り、「ああ、次もあるはんでの。」彼からの慰めに答える傍ら、切り替える頭はその先に続くだろう罠の糸に備えて構え、口元を一度引き結ぶ。彼の視線の行く末は、追うまでもなかった。名を呼ぶいやに優しい声と伸びてきたその手から、反射的に避けようとした右手が微かに跳ねる。「……っ!」気付かれている。防衛の一線に踏み込まれるのは、想定していた事。しかしそれで尚動揺で心臓が絞められるのは、向けられる彼の笑顔に、注がれる言葉に、纏う空気に溶けた捕食の毒を捉えて飲んでしまったからだ。本来隠し事など不得手の喉が呼吸を詰まらせた数秒後、「……手にしたって、きっと気分の良いもんでねェよ。」今までよりも低く静かな声でそう予防線を張って、グローブの爪先を引いて黒布を外す。露になるのは、手の甲から五指の背の一杯まで広がる引き攣れとケロイド。そこに皮膚感覚など殆ど無いと一目で解る火傷の痕を晒し、握るも撫でるも好きに出来るよう、彼の指先へそれを差し出して、「子供ん頃、出先で火事さ遭ってねェ。こりゃァそん時の跡だ。こん跡な、そのまんまにしたっきゃ人ば怖がらせてしまっての。だはんで手袋で隠してるってェだけの、……」何でもないように軽々話す。その内容は確かに事実だが、あくまでも客観的な建前だ。求められているものではないと、言う側も聞く側も察せられて、それでも煙に巻いて肝心な部分から遠ざけようとする精一杯の不器用な言振り。――ここまでで止めればいい、そう考えていた筈だった。しかし、黒い羽根が退路ごと囲い込んでくるような、息苦しささえ感じる熱を含む彼の視線に、苦い笑みを形作っていた目は不意に膝元へ伏せられ、「……ありゃァ、とんでもねぇ大火事だった。」弱々しい音が溢れた。毒の回った舌が、勝手に紡いでいるような感覚だった。「逃げ道も見えねくなるような、人を、焼き尽くす、恐ろしい地獄のようで――」怖い、怖い、怖い、と呼吸が幾度も途切れて。丸めた肩と加減無く力の籠る手が、焦げ付く恐怖を雄弁に物語る。「――……罰ば、当たったんだ。きっと次は無ェ。」けれどそう、恐れるのは炎そのものではないと、最後に落とした一際か細い声が意味深に示す。そのまま項垂れた髪を左手でぐしゃぐしゃと掴み乱し、更に何かを言いかけて、しかしぐっと脚を踏ん張る仕草を切っ掛けにそれ以上を留まる。「……今の“景品”で言えんのはここまでだなァ。」核心である強迫の執着だけは、ぎりぎり話さなかった。そこまで吐き出して、こんな視線を注ぐ彼から“約束”なんて決まり事の鎖を枷に繋がれたのならば、己は何だって逆らえないと解りきっているから。「他に気になることがあんだら……」あともう一歩、些細な言葉であれ行動であれ、何か仕掛けられたら崩れる程の、酷い怯えが伸し掛かる顔を上げる。「……そうだなァ、」元より主導権も選択権も握れない理不尽の状況、景品が足りぬと今再び迫られたのなら、その瞬間に自分は終わると自覚しながら、眦と口端を無理矢理引っ張っただけの不完全な笑みを浮かべて足掻く。――その言動は最早、幼い子供が枕や玩具を投げ、“こっち来るな”と泣いて駄々を捏ねるのと変わらない稚拙さだ。「“遊び”ば続けるしか無ェな。」先刻聞いた物言いを借りたのは態と、情けなく震えた揶揄に近いそれに幾分かの心の安寧を図りつつ、彼の次の挙動に緊張を巡らす目を配る。)




208: 烏座 [×]
2025-05-17 21:02:41



>鹿子

(しんと静まった空気の中で追い掛けるように指先がゆっくりと動く。幾重にも予防をした上で火傷の痕が露わになったその手を彼が見せてくれたから、その手をまるで硝子細工のようにそっと包み込んだ。手の中に感じる温もりとざらつきが同時に脳へと沁み込む。哀れで、痛ましくて、それでいて綺麗だった。「……ええ手ぇしとるわ。ホンマに、うつくしゅうていけん。」かすれ気味に落ちた声は、驚くほど穏やかだった。ほんの数分前までのギラつきがなりを潜めた柔らかな声。火傷の痕に視線を這わせるその双眸には、軽薄な好奇心の色など欠片も無い。ただ真摯な、美への賛美だけがあった。掌で包んだ手をもう片方でも添え、慈しむように撫でながら続けて「賭けや遊びはさておきじゃ。おまえさん、今宵いちばんええもん見せてくれたわ。おおきにの……」囁くように、声だけでくすぐるように、そして心の芯を溶かすように。火傷の痕を、撫でる。皮膚の硬さを擽るように時折指先で円を描きながら。「見とれたわい……こりゃ最近じゃ一番綺麗なもんじゃけ。ほうじゃ、よう頑張ったのう。ええ子じゃった」その声音は、幼い子を宥めるようなやさしさに満ちていた。まるで酷い夢から目覚めた子供の涙を、掌で拭ってやるように。言葉のひとつひとつが、焼け爛れた記憶の上に絆創膏を貼るように滑らかだった。「罰が当たった?……アホ言いんさんな。そりゃあ神さまが焼きもち焼いたんじゃろ。晴臣さんはあんまりええ男じゃけぇのう。」くっと短く笑って、先ほどまで掛けていた色付き眼鏡を指先で摘み、無造作にテーブルの上へ置く。カチ、と乾いた音が鳴ったその瞬間、彼の目元がふと変わった。細かった瞳がすう、と真っ直ぐに開く。それは真剣に、全てを見ようとする目だった。見目ではなく、過去でもない、その奥の奥を暴きに行く目。そして、それが美しさを讃える時の礼儀だとでもいうように真っ直ぐに向き合うことにしたらしい。「こがぁ美しいもん、隠さんでええ。……ええか、俺ぁおまえさんの焼けた跡も、怯えた目も、喉の奥で震えた声も、全部が美しゅうて欲しくなった。」包むように触れていた指が、今度はそっと火傷の痕から離れて、身を乗り出すように彼へ体を寄せると頬へ向かった。まるで硝子よりも脆い何かに触れるように慎重に、愛しむように。「……ほいで、その罰の話の続きも、聞かせてくれんかの?」静かな声。だが、それは逃げ場のない問いだった。優しさという名の檻の中で、ゆっくりと扉が閉じていくような。「“景品”じゃ言うならゲームをするしか無いけぇ、何でも賭けてやろか。おまえさんの命よりも、おまえさんの持つ景品のが重いけぇの。」茶化しでも冗談でもなかった。伝える声は静謐で、ただ真っ直ぐな重みのあるもの。頬を撫でる手はまだ止まない。小さな子供が抱き枕を離さないように、指先を触れさせたまま宝物のように扱って)



209: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-18 14:10:04



>烏座


(焼けた肌に彼が触れる。何も感じない其処がむず痒くなる錯覚を覚えるほど、優しく、細やかに。張った警戒さえ緩やかに剥がされていったその先に、掛けられた台詞はあまりにも予想外だった。「烏君、そんな、綺麗なんて……」戸惑いに眉を下げる。それまでの強張りの解けた、出会った瞬間と同じ柔い懐っこさのあるその表情を苦笑いに変えて、冗談混じりの否定を口にする。が、重なった言葉の温度に、それは半端なまま切れてしまった。次の一手を見失って、また顔を伏せてしまった沈黙の中に鳴った音。はっとして上げた目は真っ直ぐな瞳とぶつかって、たじろいだ身体が息を飲む。その隙に迫る彼岸花の如き赤が、紡がれる真摯な言の葉が、頬へ添う掌の繊細さが思考を奪って、冗句も強がりの覚悟も何処かに掻き消していった。はく、と声を忘れて一度空振った唇が、ゆっくりと空気を肺に満たした後、「……罰ってェのは、悪ぃ事ばしたら当たるもんだろう?」話すまいとしていた筈の続きが溢れた。こうなればもう、止められはしない。「あん日もそうだ、俺ァお家の決まりば幾つも破った。俺が、父様と母様の言う“正しい子”でいねかった。そんな悪ぃ事ばしたはんで、神さまは怒って俺さ罰ば当てた。」訥々と拙く、泣きそうに顰めた顔で語っていく。何処にだって在る微笑ましい反抗が、凄惨たる火の海に焼き潰された刹那を。「だから俺ァ、恐ろしい。また決まりば破れば、約束が守れねェば――あん日と同じに、罰が……」その時からがちりと巻き付いた枷は苦しくて堪らなかったのに、親に責められた幼い後ろめたさに相談の道を自ら断って。誰にも言えずに歳月を経た今、それは最早呪いと大差無いほど己を縛って焼いている。――いつしか言葉通りの怯えを隠せなくなった背は小さく丸まり、話も遂に涙で途切れて。「なあ貴方さん、頼む。……頼む。此処の決まりをちゃんと教えてけろ。俺ァ“正しい人”でいねばなんねェ。」不意に、ふらりと上がった右手が彼の肩に落ちる。服を掴む指は懸命で、しかしかたかたと酷く震えて力が上手く籠められていない。「あんな地獄はもう嫌だ。どうか、どうか……っ、」蜘蛛の糸に縋る必死さで、助けてくれと声を絞り出した。この己の名にある“匡”の字を、そっくりそのまま体現する枷の何もかもを彼に晒して、矜持も何も無い少年のようにそう懇願を繰り返す。)




210: 烏座 [×]
2025-05-19 09:08:00


>鹿子

(自らの肩に未だ力なく落ちている手を横目に見ていた。推測でしかないが、頼るということすらも彼にとってはきっと罪に近かったのだろう。そう考えると、震えるその指先がひどく尊く見えた。そう思うと短く酸素を吸い込んでから深く吐長く吐き出した。無自覚に浮かぶのは彼を手篭めにしようとする明確な悪意であり、それを振り払うようにして一度だけ目を伏せ唇に笑みを戻して「……晴臣さん。アンタ、自分が俺のタイプじゃったことに、感謝したほうがええわ」そんな風に軽口のようにそう言って、肩に添えられた手をそっと握り返すようにして外した。一度距離を取り椅子の背もたれに身を預けると、彼へとまっすぐ視線を向ける。「ほいで、聞きたかった“決まり”の話じゃがな」声のトーンは低く落ち着いていて、それでいて言葉一つ一つを丁寧に扱うように続けられて「次に寄る駅は……さっき言うた通りじゃ。途中で降りたら、そこがどこの時代の、何の世界に繋がっとるんか、もうわからんくなる。正しゅう降りる場所っちゅうんは“銀河ステーション”だけ。そこが終点じゃ。もし乗り遅れたら、たとえ次の電車に乗れたとしてもアンタの今まで暮らしとった場所には、もう戻れん。……それが、この汽車の決まりなんよ」淡々と語るその調子は、どこか鉄道の案内放送にすら似ていた。決して情に溺れることなく、だが冷たくもなく。ただ、乗る側がそれをどう受け止めるかだけの問題だというように。それでも、ふいにその声音が和らぐ。「じゃがな、アンタが“正しい子”やなかったけぇ、俺と出会えたんよ」今度は彼の瞳をまっすぐに見つめて、言葉の重さを変えるように、静かに語りかけた。ふ、と空気が止まったような一瞬が生まれる。火に焼かれた過去に囚われながら、それでも今を生きている彼だから今こうして強い興味と好感を抱いたのだ。「ほんなら、“罰”ちゅうんも、少しはわるぅないじゃろ?」緩やかに笑みを浮かべて言ったそれは、決して慰めではなかった。罪を肯定するのではなく、それを越えて続く縁の価値を提示するような声音で「どこまでが正しゅうて、どこからが間違いか、そがぁなもんは人の都合で変わる。けど、アンタが“正しゅうありたかった”気持ちは大事にしておやり。」そう言って身を乗り出し、再び彼の傍に寄った。真っ直ぐな目で彼を見つめながら。次にするのはそこまでの決まりを話した上で彼という男をこの夜に縛る行為だった。そこには甘い毒のように彼を残そうとする不純な動機が浮かんでいた)晴臣さん。ここまで話した上で言うが、アンタ俺と一緒に居ったらええよ。ずっと可愛がっちゃるけぇ

211: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-19 21:56:05



>烏座


(懇願の隙間に彼の声が滑り込む。その言葉の額面通りの意味は理解したが、今そう告げた真意までは読みきれない。少しばかりぽかっと間の抜けた顔を思わず上げたとほぼ同時に、己からも己の手からも彼は離れていった。続けて此方が先の事を問うより前に、静かな音で置かれた最重要事項に崩れきっていた姿勢をさっと正し、一言一句聞き漏らすまいと相手を見据える。「銀河ステーション、で降りる。……そうかァ、それが決まりか。」彼の話す声は至極落ち着き払っていた。だがそれは冷淡ではなく、摯実さを感じさせてもらえるものだったからだろうか、聞き終わる頃には怯えも震えも、いつの間にかすっかり凪いでいた。ふっと一つの区切りに息を短く吐き、肩を下ろした安堵の合間、届いたそれは自分には思い付く事の無かった発想であり、価値観であった。「……そうだなァ。うん、確かに悪くねェ。」じっくりと噛み締めるように、それでいて何処か嬉しそうな温かさで呟く。――己にあの罪と罰があったからこそ、そこを乗り越えたからこそ、この奇跡の如き夜にて彼と縁が繋がった、など。そんな浪漫も、案外素敵な話だった。「ありがとうな、烏君。」己に巣食うものが、解かれていく。ただひたすらに囚われていた心が緩んで、随分と呼吸がし易くなった。一度ゆっくりと瞬きをしながら、深く息を吸い込んで礼を告げた直後。忘れていた毒が彼の瞳から己の瞳へ垂れ込んで、その油断しきっていた不意を突かれた驚きを、瞠目に顕した次の瞬間、「…ふ、ははっ!貴方さん、ほんに悪いお人だの。」溢れたのは楽しげな笑い声、それに朗らかな軽口。「でもごめんなァ、烏君。俺ァ降りねばならんよ。……決まりだから、だけじゃァねェ。俺ァ俺ん時代と世界を、貴方さんの言葉と一緒にもうちっと歩いてみてェはんで。」それから迷う事の無い明確な拒否を。けれどもその理由は枷の為ではなくて――彼がくれたこの光を通した自分の世界に、前以上にきっと新しい何かがあると思えて、それを見てみたいと心が疼くから。「……ただ、そうだの。もし……もしな、俺が歩くのば止めた後で、また烏君さ会えたったら。そん時にまだ、俺ん事ば“綺麗だ”って烏君が思ってくれたったら――」しかし一度、顎を指で擦って目を泳がす、悩む仕草を数秒程行って。また視線を合わせ直してゆったりと紡ぎ始めた話はあまりにも遠い、あるかも解らない、冗談にすら聞こえる夢物語。だけれども、「――もういっぺん、今と同じ事言ってけろ。そん時ゃ必ず、貴方さんの思う通りになる。」そんな事が叶ってほしいと、本気で願ってしまう。それ程に今夜の終わりが惜しいと、彼へ抱いた情が言葉を柔く甘く色付け、注ぐ眼差しに仄かな幽艶を負わせる。「俺ァ、そう“約束”する。」とん、と。小指を立てた右手を自らの心臓の上に添え。その次に、慣れない事をするほんの僅かな気恥ずかしさを含む唇を一旦結んでから、その右手を彼の方へと向けて。「……烏君は、どうだ?」己からの“約束”の重さは、枷の全てを晒した彼には伝わっている筈。だからこそ、差し出した小指にはおずおずとした遠慮を、彼を映す瞳には純粋な甘さの奥に不安を滲ませていた。)




212: 烏座 [×]
2025-05-20 08:58:34


>鹿子

(あの静かな告白を終えた彼が、小指を立てて胸に添え、それをこちらへと差し出してきた時。その仕草はひどく慎ましく、それでも確かに「誓い」としての重みを持っていた。彼の瞳に宿る光は、これまで見せてきたどれとも違っていた。かつては罪に苛まれる影が、しがらみの奥で蠢いていたが、今のそれは違う。薄く不安を滲ませながらも、透明な願いと、微かな希望の灯が滲んでいる。その変化を見逃すほど、無頓着な性質ではなかった。真っ直ぐな眼差しで交わされる“約束”の提案に、心の奥が、静かに波打った。決まり事を守ろうとする、その誠実さ。己が選び取った道に迷いながらも、その足を止めず進もうとする姿勢。「……ほうかアンタぁ、益々、綺麗になったのう。」思わず、吐息のような声で呟いた。彼のその手に、己もゆるりと指を伸ばす。子供の頃、誰かと交わした幼い誓いのように、小指と小指を絡ませる。指先の熱が、ほのかに伝わった。その温もりは、思いの外柔らかくて、破っちゃいけんよと。声にせずとも、それを伝えるように指をきゅっと引き寄せた。「……おう、しゃあないのう。そんな風に言われてしもうたら、ワシはもう、晴臣さんの好きにさせちゃるしかないわ。」落ちた肩を、ゆっくりと持ち上げる。先ほどの芝居がかった落胆を少しだけ引っ込めて、改めて彼を見た。正面の彼はどこまでも愛おしく、綺麗な男だった。今彼を手放すことはとても惜しいが、下拵えだと思えば悪くないと思わせるほどに。それなら今できることをしようと、そう思えた。テーブルの上、少し前に置いたサングラスへと手を伸ばす。うっすらと紫が滲んだ、烏の羽根のような色合いのレンズ。ほんのりと星が煌めきとして埋め込まれたそれはこの世界のどこを探しても、烏座にしか持ちえぬ代物だ。誰の目にも、これが烏のものであると分かるはず。「……ほれ、これはワシからの“おまもり”じゃ。」そんな色眼鏡をそっと手渡した。彼の手の中に収まるように、少しだけ角度を調整して。「ワシと次、会えるんがいつになるか分からんけぇ……それまでのあいだ、他のカムパネルラに殺されんように、な。」わざと軽く言う。けれど、言葉の奥には、本物の心配と祈りを込めていた。彼が無事でいることを、願わずにはいられない。手放した彼が、複数いる危険なカムパネルラによって壊されないようにと、今できる最善だと思った。「大事にせえよ。無くしたら、怒るけぇね。」笑みを浮かべたその声音は、どこか真剣さを滲ませていた。まるで、次に彼と再会するその時を、夢見ているかのように。再び彼の瞳を覗き込むと、ほんの少し前までは、触れれば壊れそうだったその心が、今はしっかりと根を張り、光を宿している。そうだ。彼は、決して脆くなんかない。ましてや己との時間を経て強くなった訳じゃない。ただ、本来の彼に、ようやく出会えたのだと気づく。軽口をひとつ添えればクッと喉を鳴らして短く笑い)……んで、約束したんじゃけぇな。忘れた言い訳なんぞ聞かんけぇ。



213: リズ・フェリシティ [×]
2025-05-20 18:44:38




>蠍座

( 愉悦と堕落、張った虚勢すらも悪戯に見抜き、転がすように笑う彼の瞳に呑まれてしまいそうだ。色濃く滲む興味と握られた手のひら、伝う指先にぴくりと反応を示しつつ、そんな逃げられない状況の中でも笑みだけは絶やさない、それが矜持であり、すぐに怯む獲物などとは思われたくなかったから。そう考えて笑みを作ったことなども全て、彼には余さず伝わると思ったからだった。物理的な優位性ももちろん、握る掌の大きさ、伸びた爪の長さ、形。男女という骨格差が浮き彫りになる中で、くいと引き上がった口角と表情に宿る感情に、ふ、と小さく、その感情を煽るように唇を歪める。「あの女王様に独占?アハ、悪くない気分ね。…悪友なんでしょ?アンドロメダとアンタは。どっちもアタシの好みのタイプだもん。」髪を揺らすように首を揺らせば、するりと回り込んだ手のひらにぞわりと背筋が粟立つ。距離が酷く縮まって、その合間に横たわる濃密な空気が、ひりついた感情が肌に突き刺さった。…ふっと吐いた吐息が興奮からか恐怖からか。わからないまま、きっと簡単に壊せるであろう手に包まれているという事実、その美しさを引き立たせる狂気に見惚れてしまう。その確信的な問いに、ぐしゃりと笑顔が歪に崩れる。表れ出たのは繕わない剥き出しの激情。「……は、ははっ、ほんとイイ男ね、アンタ。」まるで同調するかのように熱の籠った上擦った声で笑い声を上げる。彼がそうしたように身を預ける仕草で擦り寄ると見せかけ、ふわりとその手の支配から頭を浮かせる。裏を避ければ行くのは表。互いの額が触れ合う寸前で動きを止めて。「ええ、イイ男。…キスしたくなるぐらい」吐息を混ぜ合わせるかのように囁く。声を落とし薄く唇を開くと、中から赤い舌先を覗かせその愛玩を誘うように笑いかけた。しかしすぐに居ずまいを正し、今度こそ彼の手のひらに懐くように首を傾げたのは気まぐれな猫のようで。「…だけど、そのアンドロメダから聞いたの。キスは厳禁だってね」ちろりと唇を舐め、けらけらとアンドロメダを思わせるような笑い声を上げる。それが暗に深く触れ合うものであると指し示したのは、彼の悦楽をくすぐるためか、目の前のスリルに構わず飛びつく愚かな一面を隠せなかったからか。きゅう、ときちんと閉じ切って笑う唇だけが、微かに残ったな自衛心を表していて、 )




214: 蠍座 [×]
2025-05-20 20:09:17



>リズ

(僅かな感情の変化すらもが可愛らしい彼女の表情を変えている。作られた笑顔の下で微かに浮き上がる呼吸の乱れや僅かに強張る肩。そうした全ての虚勢を、まるで全て許してやるとでも言うように寛容な眼差しで、けれど冷酷に拾い上げた。彼女抱える誇りがどれほど丁寧に磨かれた陶器であるかを鑑みながら、それを砕く愉悦を想像して甘いキャンディでも舐めるように舌の奥で転がしていた。「リズちゃん。お前、ずいぶんと耳障りの良いことを口にするじゃないか。“キスしたくなるぐらい”?どうせ言うならもうすこし気持ちを乗せて誘えよ、まるで三文芝居だな」声は低く、爪先で嬲るように音を紡ぐ。く、と鼻で笑う仕草一つとってもそれは感情ではなくこの場を楽しむための“演出”のようだった。冷徹な視点で彼女の中に秘められる情熱を戯れるように弄ぼうとして「そういうのはな、“本当にキスしてはいけない相手”にこそ、もっと慎ましく言うものだよ。もしくは、もっと切実に、もっと哀れに、もっと、汚らしく言うのも効果的だ。……はは!ってゆーか、リズちゃんってアンドロメダの警告を“守ろうとする側”の人間なのか」軽く肩をすくめ、わずかに口元を歪める。あくまで静かに、抑えた音量で、しかし残酷な響きだけが残るように語った。名を呼ぶ声は甘やかで、毒を含んだ蜜のように喉を通り抜けるのが困難な濃厚さがあった。すべてを溶かし、毒すらも甘くする類の声色で、意地悪くも彼女のことを煽るのだ。「リズちゃん、お前。自衛のつもりで笑っただろう?その唇で、必死に武装してるな。……人からの警告を無視するそんな女とは違うのか?」言葉の一つ一つが、鋭利なガラス片のように胸へ突き刺すように、切っ先で彼女の心をなぞるように喋り。「誰かから植え付けられた知識なんか忘れちまえよ。お前が見たままの俺と会話しようぜ」そこまで語ると、ふっと目を細め、触れ合いそうな距離感を取り戻すように唇を寄せ、吐息だけが彼女の口元を撫でる。「キスは、しない。“それを許されたと思っていいほど”の立場には、まだいないから」その声音は酷薄に、しかしどこまでも優美で冷ややかだった。殺めるほどの興味にはまだ足りない。欲深い男は楽しげに彼女のことを眺めて)──俺は別に誰でも彼でも殺したい訳じゃないんだ



215: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-20 21:24:31



>烏座


そりゃァ、貴方さんのお陰様だの。
(綺麗、と。また呟かれたそれに返す言葉は軽やかに、しかしたっぷりと感謝を詰めて溢れさせた一声を。差し出した小指へ心地好い温度がじんわりと伝わって、僅かに感じていた不安など跡形も無く溶かし、残るのは喜びばかり。苦しさだけだった“約束”が、今は結ぶだけでこんなにも温かな光明に変わるのだと知って、綻ぶ頬で繋がるそこを見詰めながら此方もそっと柔く、指先で返事をする。続けて掌に乗せられたのは、彼が着けていた色眼鏡。彼の背から覗く羽根に似た色と星光を含んだそれに籠められる想いに、少し擽ったげに笑い、「……ああ、失くさん。大事に、大事にするとも。」その言葉ごとそっと両手でサングラスを包んで胸に抱き、そう応える。――他のカムパネルラに会えば命の危険もある。彼の祈りにそう理解して尚、恐怖を感じる事は無かったのだから、この“おまもり”の効果は既に絶大だ。もう一度だけ手の中のそれを外の星々に照らしたその後に、壊れ物を扱うよりも丁寧に細やかに、自らの懐の内に確かに仕舞う。「そりゃァ勿論。」軽口には軽口での応戦を。けろりと笑った後の右手に持つのは、もう一方も脱いで揃えた一対の黒いグローブ。「貴方さんこそ、“忘れた”なんて言わせんからの。」己の手にぴったりのそれは、彼の手にはきっと合う筈もなければ、当然新品でもない、限りなく只の布に等しいもの。けれども、己の罪と罰の価値を変えてくれた彼への対価は、今日まで抱えた自分自身を象るそれが相応しいだろう。彼がしてくれたのと同じように手渡した直後、「それと、」不意打ちにグローブごと彼の手を両手で挟み撃ちにして、少しばかり強引な力で引き寄せる。そのまま彼を見据える眼差しが悪戯をする少年の如き無邪気さと、射抜くような不敵さに細められて、「“次ん時”は花札ばしようなァ。あれなら俺ァ一つも負けんよ。泣かしたるはんで覚悟しておけ。」そうにんまりと告げる。そう、謀略や賭けの勝敗に拘らないとはいえども、一度は負けた事も、散々己の胸中が掻き乱された事も全く悔しくない訳ではない。だからこのわざと低く強気な物言いをする宣戦布告は、彼を驚かす事だけを目的にした、今夜限りのせめてもの“お返し”だ。「……なんてなァ。」最後にころっと冗句の尾を転がして、柄に合わない自分自身の言葉に吹き出しながら彼からすっかり離れて背凭れに身体を預ける。それからふと窓の向こうに目を移して、また彼へと戻す頃には穏やかな表情を纏い直し、「……なあ烏君。」悠然と声を掛ける。これから終着駅を待つばかりの間、訊かなければならない事は沢山ある。カムパネルラ達の事、彼自身の事、この汽車の子細。だが、「駅に着くまで暫く、貴方さんの事ば見ていてもいいか?」口から溢れた問いはそれだけだ。「……貴方さんの顔をいつでも思い出せるくらい、覚えておきてくてなァ。」己は数多ある情報を手にするよりも、彼とこの夜を過ごした思い出を焼き付ける事を優先したのだ。こんな時までどうしようもない性分だと苦い笑みに眉を下げながら、名残惜しさを湛える瞳に彼を映したままそう語る傍ら、せめて仕草だけはおどけるように肩を竦めてみせた。)





216: 烏座 [×]
2025-05-20 23:09:57



>鹿子

(手の中に納まったそれは柔らかく、少しだけ湿った温度を帯びていた。新品ではなく、布地の隅に染み込んだ無数の記憶が時折くすぐるようにこちらの掌に訴えかけてくる。無骨な縫い目、擦れた箇所、そして何よりも鹿子晴臣という男の「罪」と「罰」。それらすべてが織り込まれたかのような、手袋だった。彼の指が自分の手を包むように引き寄せたとき、胸の奥で火が点いたような気がした。「……晴臣さん、ほんま、えぇ顔しよるのう。」にやりと笑い、敢えて目を逸らす。じゃないと今にも目の奥の湿りを見破られそうだった。花札、だなんて魅惑的な次の約束を口にしてくれること自体が、何よりの贈り物だった。勝つ自信たっぷりのくせに、見え透いた戯れ言でこっちを笑わせにかかってくるその姿が、いじらしくて、愛おしくて、どうしようもなかった。けれど、だからこそ。だからこそ気を抜けば手放せなくなりそうだった。グローブを胸元のポケットに滑らせるようにしまいこみ、まるでそれが自分の心を封じる鍵か何かのように、すっとその上から押さえた。名残惜しさというよりも、甘やかで鈍い、飢えのような感情が喉元に絡む。それでも黙ってそれを飲み込んだ。彼が覚えていてくれるというのなら、自らも覚えておかねばならんのだと、あの笑い声も、穏やかな眼差しも、真っ直ぐで、誠実な心根も。そんな彼から伝えられたその申し出は、あまりにも優しくて、ずるかった。「……えぇよ。好きなだけ、見とき」そんな風に頷くより早く、返事が口をついていた。あまりにも真っ直ぐなその眼差しを受け止めるのは、正直、気恥ずかしかったが、同時に誇らしくもあった。「ほいで……俺ぁ、忘れんけぇな。晴臣さんが、どんな顔で、どんなふうに笑うたか。どんだけ優しい声で、ああ言うてくれたか。」こっちもなァ、と付け加えるように言いながら、ふと目を細める。笑ってるくせに、喉の奥が少しだけ軋んだのはご愛嬌だ。片肘をついて背凭れに寄りかかる彼を横目に捉えたまま、ゆっくりと体を預ける。並んで夜を見上げながら、ふと黙る。言葉なんてなくとも、心地良い静寂が流れていた。そして──しん、と汽車が静まり返ったような感覚があった直後、車内放送が流れ出す。”次はァ、銀河ステーション、銀河ステーション。お降りのお客様は──”ああ、来てしまった。夜の終点が。そうぽつり、と喉奥で息を吐き、それから名残惜しさをぐっと噛み潰すように飲み込んだ。もう未練は残させない。そう思いながら、彼の方へ身を乗り出して「晴臣さん、聞こえとるか? ……次に会える夜を、俺ァ楽しみにしとるけえの。花札も、話の続きも、どこまででも付き合うけえ。」言葉とともに彼の手を取る。短い時間の、短い触れ合い。だが、それで十分だった。彼の温もりは、もうしっかりと記憶の奥底に刻み込まれていたから。)アンタのこと、忘れられるもんか。

(/烏座との素敵な夜をありがとうございます…!キリが良さそうでしたので一旦〆させて頂きました!素敵な夜は烏座にとっても忘れられないものとなっています。また、次の夜のカムパネルラにご希望など有りましたら遠慮なくお伝え下さい!)



217: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-21 19:41:07



>烏座


……あんがとなァ。
(間も無い許しに瞳へ嬉々を、声には感謝を乗せる。それから一つ瞬いて確りと開いた視界に彼を捉えたその矢先、続いた語りに唇をきゅっと結んだ後、「そう言葉にされっと、急に恥ずかしくなってまうなァ……」それは彼の想いだと解っていながら、同時に此方の心を見透かされたような気分。仄かに集まる頬の熱に合わせて眉を垂らし、もごもごとした細い呟きを溢す口元を一度掌で押さえる照れた仕草は取るものの、否定もしなければ目を逸らす事もしなかった。――訪れる静寂。流れる時が緩やかになるような、或いはまるっきり止まったような、春の夜の如く穏やかな静けさの中。己を映した彼の瞳を、言葉をくれた唇を、優しく触れたその手まで、何一つ逃す事無く真っ直ぐ思い出に刻む。あと少し、もう少しだけ続けば――やがて沈黙を断ち切る放送が、無情にも己の耳に響いた。「……ああ。」一瞬の寂寥に瞼を伏せて、けれどもすぐに灯りを点して前を向く。そうだ、今夜汽車を降りても、それは終わりではない。今踏み出す足は、いつか来る“約束”までの旅路の第一歩なのだ。「次は烏君さ土産話ばたぁくさん持って、今よりずっと良い男になって貴方さんに会いに来るはんで――」取られた手を握り返して、温もりを交わしすぐに離す。それ以上は反って無粋だと思える程、満たされていた。「――それまでお互い、良い旅を。」帰り支度に帽子を被り、立ち上がる。駅へと降りる頃、“さようなら”ではなく“またいつか”と想いを籠めて満面に笑うその顔は、秋空の如く晴れて澄み渡っていた。)



(/此方こそ素敵なお時間を有り難うございます…!鹿子も翻弄されながらも、自分自身を変える一手を引いて下さった烏座様とかけがえの無い夜を過ごせまして、何があったとしてもこの大切な一夜決して忘れる事は無いでしょう。お次のカムパネルラ様についてですが、気になっておりますのは牡羊座様と小狐座様、山猫座様辺りでしょうか。前にも話しましたが正直どの方も魅力的で、どうしても選びきる事は出来ず……お手数ではありますが、再び主様に選んで頂く事は可能でしょうか……?勿論、主様の方で鹿子とお話をさせてみたいというカムパネルラ様がいらっしゃいましたら、そちらでも大歓迎です。
それから、鹿子の名前について一つ……大変ややこしいのですが、彼の名の最後の字は“臣(おみ)”ではなく、『はこがまえ』に『王』の“匡(まさ)”でございますので、その点だけご留意頂ければ幸いです……!それでは、次の夜の文も此方に置いていきますので、またお時間のある際に素敵な夜を過ごせる事を願います。)


身分証 >181


(ことんことんと、微かな振動が身体に伝わる。瞼を上げるよりも先に身動いだ手に頭上の帽子が落ち、条件反射に持ち上げたそれを口元に当てれば、寝惚けに大きな欠伸を少々。そこで漸く開いた視界に広がるのは見覚えの無い――いや、一度だが確かに見た景色。もしやと視線を窓の外に移すと予想通り、見渡す限りに散らばる星の海。「……ああ、また来たんだなァ。」寝起きに少し掠れた声へ喜色を滲ませ、そう独り呟いて正面へと顔を戻す。そのままふっと淡く柔らかな笑みを浮かべて、「どうも、今晩はァ。」目の前の人物へと一礼する。続けてゆったりとした所作で再び頭を起こし、居住まいを簡単に整えて背筋を伸ばす。「はじめまして。……カムパネルラさん、で合っとる?」それからもう一つ挨拶の礼儀を通し、一呼吸の間を置いて。瞬いた後に相手を見詰める瞳へ期待ばかりの灯火を宿し、尋ねる物言いや声音には柔らかながらも殆ど確信を持った芯を裏に張って。それでも合わせて首を傾げる仕草だけは、何処か懐こい隙を残してのんびりとしていた。)




218: 牡羊座 [×]
2025-05-21 23:12:10



>鹿子

(ちら、ちら、と幾度も盗み見るような控えめな視線を送っていたかと思えば彼が僅かに動きを見せたり呼吸の為の小さな音を立てる度にビクッと肩を震わせて逃げるように視線を逸らし、顎を少し引いて俯いた。彼の髪色は燃える火のように珍しい色をしていて、アーティスト気取りのこの男にとって見ずにはいられないほど心を擽られる色をしていた。そんな彼が愈目を覚ますと挙動不審に体を縮こませて視線を泳がせながらぶつぶつ、ぽつぽつと変事をして「ん。その、カムパネルラってやつ。 そう、呼ばれてるけど……それよりも、羊。俺ァ羊って呼ばれてるョ」俯きがちに、けれど指先はゆっくり膝の上で絡まり、解け、また絡まるのを繰り返していた。本人でも気づかないうちに、まるで絵筆のように細い手が何かの“構図”を描こうとしていた。「……なァ、初めましてとか、そういうの、慣れてねェんだ。俺ァ、そういうの、苦手っていうか……なんつぅか、話すのとかも下手だから。あんまりこの夜を期待しないでくれょ」背を丸めて伝える割にはどこから来る自身なのか、表情だけははにかんで、ぽつりぽつりと、不器用に言葉を紡ぎ。)アンタは、なんのジョバンニなんだァ?

(/お世話になっております!何よりもまず先にお伝えさせて下さい。このたびは大切なお名前を誤ってしまい本当に申し訳ございませんでした。言いにくかったでしょうに、教えていただき誠にありがとうございます。ご丁寧にお伝えくださったこと、深く感謝しております。お名前は背後様にとって何より大切なものであるにも関わらずこのような失礼をしてしまい、心よりお詫び申し上げます。以降、同じことのないよう十分に気をつけてまいります。また、至らない背後となりますので、今後ももし何か不備や無礼などございましたらどうか遠慮なくお知らせいただけますと幸いです。ご不快な思いをさせてしまったこと、重ねてお詫び申し上げます。
気になっているというカムパネルラのリストアップも有難う御座います。それでは最初に名前の挙がった牡羊座にてお迎えに上がらせて頂きます…!それではまた次の夜も宜しく御願い致します。)




219: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-22 18:54:25



>牡羊座


(この前の烏より一回りは若く見えるカムパネルラ。黄白色や灰色など全体として淡い色を持つ姿にほんの少し眩しげに目を細めつつ、おどおどとしているようにも見える彼の言葉を最後まで静かに聞き、「…そうかそうかァ。俺ァ逆にお喋りだはんでの、お返事だけでも嬉しくなって、つい喋り過ぎてまうんよ。」その終わりから数秒保った後にゆったりと頷き受け入れる。続けて相手に合わせて己を語っている形に見せかけながら、彼へ気兼ね引け目を負わせない慮りを散りばめて。「ちぃっと煩いかもしれんけんど……駅まで容赦してけろ、羊君。」それも案外不必要だったかもしれないと気付いて笑ったのは、此方が話し終えてから彼の口元を見た数秒後の事。「俺ァ鹿さんのジョバンニだの。」問い掛けに冗句を混ぜた一言をまず先に。それに自ら小さく吹き出した後、「名ァは鹿子晴匡。鹿君だの晴ちゃんだの、友にゃァ好き勝手渾名付けられとるはんで、貴方さんもどうぞ。」改めてきちんとした自己紹介をすらすら繋げる間、自らを示したり彼を差したりと緩やかに身振りを行うその両手には、新品だがやはり薄布の黒いグローブを填めている。――それは建前上の理由も然りだが、この汽車の夜に再び出会える事への願掛けも籠めていたが為。それ故何処か浮わついてしまう色を含んだ視界に、動くものを捉えて視線を下げる。そこに在るのは繊細そうで忙しない彼の十指。「……羊君、良い手ばしてるなァ。細くて、爪まで綺麗で、芸事ば上手そうな手っこだ。」上品そう、育ちが良さそう、器用そう、など。そんな明るい評価ばかりを詰めたしなやかな声音が、ぽつりと思ったままの感嘆を溢す。「そん爪、色ば付いてるように見えるけんど、そりゃァ爪紅かの?」それに加えてちらりとだが窺えた指先は、よくある自然な薄桃ではないよう。惹かれた興味が滲む眼差しをまた彼の瞳の方へと向け直し、此方から彼について、ゆったりと朗らかに交流の誘いを掛けた。)


(/いえいえ、全く何も間違わない人間はいませんし、あまりお気になさらず…!更にお気遣いまで頂きまして、大変恐縮の極みです。此方も無礼や粗相など行わないよう精進して参りますので、どうかお互い、今後とも楽しい一時を紡げたら幸いです。それと今夜のカムパネルラ様は芸術センス抜群の牡羊座様という事で、今からどんな会話を重ねていけるのか大変わくわくしております…!それでは、また宜しくお願いいたします…!)




220: 牡羊座 [×]
2025-05-24 09:15:18



>鹿子

(“鹿のジョバンニ”。耳慣れない呼び名に一瞬だけ目を細め、くるんとした髪の下で白い瞳が曇りなく彼の輪郭をなぞる。ふっと角度を変えて彼の頭部を見るが、それらしきモノはなかった。「……あ、役名みてーなやつ、スか、それェ。鹿子さん、でお願いします。俺より歳上だろうから、経緯ってヤツは大事でしょお」ごにょりとした声音と、八の字のように眉が下がる。どう答えるか一瞬迷って、それでもきちんと視線を戻せばそこまで言って、ふと口元を緩めると彼の渾名の中にあった呼び名を拾うように「俺は羊だけど、俺のコト“メリーちゃん”って呼ぶカムパネルラもいるンです。メリーさんは羊を飼う方だョって。」不満げにぼやく割に、そこまでが全部冗談を含めているようで口調はどこか楽しげで、照れ隠しに肩をすくめて笑ってみせて。そして次に来たのは、思いがけない褒め言葉だった。その言葉を受けるなり、まるで耳の奥に熱が走ったみたいに、 ちょっと背を丸めて俯きがちになる。むずがゆそうに唇の端を引き上げながら、でもどこか誇らしげに十本の指を持ち上げてみせると「……これ、マニキュア、って言うやつ。夜空のインクに星を砕いてて。キラッキラでしょォ」嬉しそうに爪を披露しながら伝える目線は、ほんの少し上向きで明るさを隠せていない。自分が気に入ってるものを、誰かに良いって言ってもらえたのが嬉しくて仕方ないようで「色決める時もただの黒とかただの藍色じゃつまんねーンで、何がいいか時間かけて選んだンです。……っつーか、年下なんスよ、俺の方がァ。だから、呼び捨てで全然いいしィ、敬語とか、逆に、くすぐったいっていうかァ」頬をぽりぽりと掻く。ちらちらと彼の顔色を窺いながら遠慮がちに声を落として、もにゅもにゅと言いながらも、どこか嬉しそうに笑ってる。当初、歳上だろう彼に身構えていた警戒心がお気に入りの爪を褒められたことでいとも簡単に彼を良い人にしたらしい。控え目なように見せながらも隠しきれない自己愛で得意気に両手を爪を見せるように向けて)鹿子さんには特別に見せてあげます。どうです?綺麗っしょ



221: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-25 06:11:46



>牡羊座


(此方の冗談には少し迷う様子の彼、しかし返ってくる冗句に笑みを深めて。「確かに、あん歌はメリーさん“の”羊だなァ。でも、良い発想の利くカムパネルラさんだの。」かつてその童謡を母と歌った日のように、或いは自らの教え子へ歌う時のように、緩く握る両手を頭の辺りに当て、彼も持つ羊の巻いた角を示す手遊びの仕草を。そのまま彼に渾名を付けたまだ知れぬカムパネルラについても、明るい一言を及ばせる。続けて己の言葉に十指を上げる姿、目一杯拘っている事を己に聞かせてくれる姿は、宝物を見せびらかす子にも似て微笑ましく、思わず湧く庇護や温かな包容の心のまま、ゆったりと相槌を打って話に耳を済ませて。「歳も言葉遣いも気にせんでいい、いい。こういうお喋りってェのは楽しいのが一番だ。…それにあんまし言うと俺ァ調子さ乗って、それこそ“メリーちゃん”や“ラム君”と貴方さんを呼んでまうよ。」まだまだ距離を感じさせる言葉とは裏腹、満更悪くもなさそうな彼へひらひらと片手を互いの間に振って。その先に童謡の原題と絡めた渾名で脅すような文言が繋がるものの、そこにはただ親しみばかりを籠めている事が軽やかな声音に示されている。その後で許しを得た彼の爪に改めて視線を注いで、感嘆の吐息を漏らす。「ははあ……まるで星夜の花束だの。」灯りを映して光る爪先の星々。その舞台も成る程単純ではなく、紺色や天鵞絨色を内包して、それは正しく夜空の如し。「色っこもお空が引っ越したみてェにぴかぴかで、お月さんの目ェした貴方さんによう似合ってる。羊君はお洒落さんだねェ。」そっと己の手で指先の星空を掬い眺めて、彼と同じ程に何処か嬉しげに細める視線を今度は彼の瞳へ贈り、心からの称賛を紡ぐ。「俺もなァ、ようお洒落ばするんよ。例えばほれ、こん服。こりゃァ仕事向けだはんで、外見の色はちっと控えとるばって……」それから見付けた共通の話題を逃さず捉え、膝元に置く自らの中折れ帽を撫でたり、履くブーツの片踵を軽く持ち上げたりと、選び抜いた服装を主張しつつも一度笑みに苦みを含む。だが、「その分羽織ん裏で遊んどる。中々良いだろう?」最後に悪戯を滲ますにんまり顔で、襟元から裾まで捲り上げた羽織の裏地へ彼の視線を誘導する。――それは鮮やかな紅の濃淡を下地に金色の雲を浮かべ、更に橙や緑、黄色の楓をふんだんに散らした紅葉柄。大胆に描かれたそれを披露して、少しばかり子供じみた自慢に胸を張った後。「んだども、爪のおめかしば思い付かんかったなァ。いやァ凄いの、貴方さん。」また戻ってくる会話は彼の発想と感性へ。丸めた自身の五指に目線を一度落とし、その爪をグローブ越しに透視する仕草の後、また上げた純粋な羨望の眼差しを彼へと照らしてころころ笑う。)




222: 牡羊座 [×]
2025-05-31 01:18:17



>鹿子

(優しさとはこういう手触りだったのかもしれない。そんな風にふと心のどこかで思った。彼が纏う物腰はどこまでも滑らかで、でも決して媚びてはいない。まるで深く温かな陽だまりの中に足を沈めたようで、柔らかな喋りを聞いているだけでいつの間にか肌が緩むような心地よさを感じていた。歳のことも、喋り方も、気にしなくていいとそう言われた瞬間に張っていた意地も、格好つけも、ふっと霧みたいに消えてしまった。改めて彼に向き合うと、目を引くのは派手すぎるくらいの髪の色と品良く整えられた持ち物。どれもこれもがただの飾りじゃなくて、ちゃんと選ばれてることが伝わる。そんな彼に対して素直に羨ましいとか、憧れとかの気持ちが混ぜこぜになり気がつくともっと話したいと抱いていた。「……イヤじゃなかったらさァ、駅着くまでに色、乗せてやっても良いョ。 すぐ出来るし」照れを隠すように指先でクルクルと髪をいじりながら、先程よりも更にちょっとだけ声が小さくなった。ぐいと背中を丸めて「オレ、そーいうの、ちょっと得意っていうかァ。それ以外は不器用だけど……爪に色載せんのは上手いから」ぐるぐる指先を回して伏せ目がちの目がそっと彼の様子を伺う。素直な“好き”を認められることが自分でも思っていた以上に嬉しくて、まるで胸の奥に咲いたちっちゃい花をそっと手で包まれたみたいな気分だった。その時にふと、仕事柄、控えてると漏らした彼の言葉が頭を掠めたらしい。その途端、口元がぎゅっと結ばれる。うろ、と目が泳ぎ遅れて首をすくめるとバツが悪そうに笑ってみせて。「……あー、でも、やっぱ無理かァ。お仕事的に……そーいうの、ダメだったり……すんのかな……?」眉がへにょっと垂れて、いつもよりわかりやすく“しょんぼり”が顔に浮かび。先程までの勢いと真逆の、申し訳なさそうな声で呟いてから指先で前髪をいじる。けど、そのままじゃ終われなかったのか「でも、似合うぜ。……お空みたいな色、ぜってー似合う。」たどたどしく言いながら、それでも誠実さだけは全部乗せて。まっすぐ彼の瞳を見上げるようにして、胸の内をそっと差し出すと少しだけ照れくさそうに笑顔を見せて)



223: 鹿子 晴匡 [×]
2025-06-01 11:55:02



>牡羊座


(少しずつ崩れていく彼の言葉遣いが、その分だけ仲を紡げている証のようで、つい頬が綻ぶ。「おんや、良いのけ?」照れ混じりの申し出に一度だけ瞬き、しかし直ぐ様問い返す言葉は朗らかな前向きを示す。そのまままた話に焦れる事無く耳を傾けていた折、不意と曇り泳ぐ月色の消沈。そこから見える己への気遣いや、指先にまで迷いを顕しながらも飾り無く向けられる真心の笑顔に、どうしようもなく胸を擽られて。「……なァんも。駄目な事ば何にも無ェ。」ゆったりと、首を横に振る。声音はふくふくと、笑みを含んで柔らかい。「折角貴方さんがそんなに言ってくれるんに、何もせんなんて。そったら勿体無ェ事する方がよっぽどいけねェべや。」仕事での華美を控えるのは個人的な配慮であって規則ではない。そして、今此処で一等尊重されるべきは、彼が懸命とくれるその心だろう。そう自身の引いた大人らしい境界線をあっさり踏み越え、にっと悪戯坊主の表情を覗かせた後。グローブを引き抜いた左手を、先から順にテーブルへと置いて、「――こん爪に、似合う色っこば乗せてけろ。」つうっと彼の方へと滑らせた、長く骨張った手の天辺。いつだって短く切り揃えている己の爪を、お願いの形を取る茶目っ気と一緒に差し出す。――それから、「……なァ羊君。」彼によって粧してもらうその合間に交わす言葉の種を探し、沈黙した数秒の続き。「爪ばおめかしする間――もし良けりゃァ、貴方さんを“メリーちゃん”と呼ぶカムパネルラさんの事、聞かせてくれんかねェ。」もっと彼の事、彼に纏わる事を知りたい。目の前の彼が見せる表情に疼く、混じりの無い澄んだ関心が選んだのは先程の渾名の話。ああして冗句に昇華して笑うなら、少なくとも悪いものではない筈と、そんな明るい見込みを立てた穏和な問いを彼へと贈る。)




224: 牡羊座 [×]
2025-06-07 00:40:22



>鹿子

(まさかの、優しい肯定。断られるだろうと決めつけてた自分が少し恥ずかしくなるくらいに優しい承諾が戻ると「……え、マジで……?」と、ぽつりと漏れた声は心からのもの。素直で嬉しそうな音を持っていた。彼の言葉や声が、自分の願いをちゃんと受け止めてくれたと言う事実、それだけで胸が暖かさでいっぱいになる。差し出した“好き”の気持ちを流さずにちゃんと拾ってくれた。こんなにも嬉しいことは無かった。そう理解した次の瞬間には差し出された大きな手を、自らの両手でふわりと包んでた。「へへ……オッケー、じゃ、遠慮なく、やらせて貰う」ちょっと照れくさくて、でも満面の笑みが勝ってるそんな表情で口元を緩め。包んだ手で彼の手の甲から指先まで、ひとつずつそっと撫でて、爪の形、肌の色、服の雰囲気に至るまでを全部をちゃんと見る。それからちゃんと考えた。今からやるのは、ただの“塗る”じゃなくて、“飾る”でもなくて、“贈る”ことだと。彼の雰囲気の奥にある“夜”みたいな静けさと、芯のあるやさしさ。それを浮かび上がらせるのは──そう、きっと赤と、藍だ。迷いなく選んだのは、冬の空にひときわ目立つ赤い星みたいなポリッシュと、深い藍のきらめきを持つもうひとつ。どっちも、星の粉が混ざってて、光に揺れてきらりきらりと色を変える物だった。「良い色見っけたから、期待してイイぜ」それを伝えればにやっとして、瓶の中の星屑に目を細める。ポーチから手早く道具を揃えて、赤いビンのキャップをそっと回したそのとき、不意に聞こえてきたのはさっきのあだ名にまつわる、問いかけだった。「……あー、それなァ」筆を取りつつ、口の端だけで笑って、ちょっと目を泳がせる。照れ隠しじゃなく、気恥しさそのものを見せつつ「時計……だよ。“時計座”。カムパネルラの中でも、オレが一番一緒にいるやつ。つーかァ……うん、アイツ、めちゃイイヤツなんだけど、やたら口出してくんの。ウザくて、助かるって感じの男。」そんな風に自らを渾名で呼ぶ男について答えれば、今度は真剣な面持ちで、彼の手を片手で支えなおした。筆先に、赤のポリッシュをほんのり含ませ、そっと、彼の左手の親指に落として。ちゅっと筆を滑らせると、そこにちいさな星が一粒灯る。赤く、深く、まるで体温のある光。冬の夜空に浮かぶ、あの星とそっくりな色が爪を染めた。「……似合うと思ったんスよ。鹿子さん、空っぽの夜じゃなくて、ちゃんと星がある夜に見えたし」呟くような声が想像通りに良く似合う赤の乗った爪に感想を落として)



225: カムパネルラ [×]
2025-06-07 10:13:07



兎座「ねえ、ジョバンニ。退屈って、君を鈍くしちゃうから。ぼくと、ちょっとだけ星のトンネル、くぐってみない? ね、乗ろうよ、銀河鉄道。夜が飽きる前に。……ふふ、ずっと朝が来なきゃいいのにね。」


○ 世界観 ○
>1

〇 提供 〇
>2

〇 好み / 萎え 〇
>3

>ジョバンニの受付はいつでも行っております。




興味を持っている、お試しで参加してみたいなど、質問やご相談だけでも受け付けていますのでお気軽にお問い合わせ下さい。


>只今の時間よりリアルタイム交流、早い反応が可能です




本日纏まった時間を作れたのでこれよりリアルタイムの反応が可能です。
もし少しでも興味を持って下さった方がいらっしゃいましたらお気軽にお声かけください。


226: 鹿子 晴匡 [×]
2025-06-07 21:46:06



>牡羊座


…ああ、任せた。貴方さんのお好きに。
(相手が嬉しいと笑えば、己まで嬉しくなる。その単純な心の在り方は、偽り無く人と向き合う内に得た賜物。言葉通り抗う力を一雫も持たない手に触れる指を、此方を確と見詰める真剣な眼差しを、柔く綻ぶ頬で受け止める。やがて取り出す小瓶の瞬くような煌めきに目を奪われた一瞬の次、戻した視界に捉えた表情に此方まで口角を引き上げて頷いた。それからは普段窺えない物珍しい粧飾の光景に、きらきらと好奇を輝かせた視線で彼の指先を追う傍ら、問いかけの答えにも耳を澄ませる。「ほう、……ふふ、仲ば良いんだの。」名前だけではぼやけて掴めない人物像を、彼の話で少しずつ輪郭を描き上げ、何となく浮かんできたのは生真面目で世話焼きの青年。その相手に一等気を許している事は、面持ちからも物言いからも充分に知れて、微笑ましさに思わず声が溢れてしまう。その後、「……“時計座”、」覚える意図も含めて名を繰り返した所で、はたと気が付く。「“牡羊座”、“烏座”――そうかァ。なるほど、お星様ん名前かァ。……あァ、綺麗だねェ。」“銀河”鉄道の名に脳裏へ蘇る古い星図からもう二つ、この前の彼と目の前の彼を並べて、その“カムパネルラ”なる秘密箱を組み上げる細工の美しさに一人掠れた感嘆を漏らす。しかし、それに浸るのも彼が手を掬うまでの短い間。――いよいよと爪を滑った筆の跡、そこに宿る色は赤。けれども燃える苛烈さはなく、いうなれば、雪の晴れた冴えた夜を仰いで初めに見付けられる、あの光のような暖かい赤。自らの肌と服の色が一層引き立てるそれに、言葉を忘れてすっかりと見惚れる。「……本当に凄いなァ、羊君は。人ん事ば、よう見とる。」落とされる呟きが、じんと優しく沁み込む。それまでの自分自身ごと、大切に拾い集めた細かな想いごと、擽ったく撫でられた心地に情けない程はにかんで。「――続きも頼めるかの、羊君?」ほんのちょっと照れくさそうに、しかしそわそわとした喜びを細めた瞳に乗せて。この先まで期待して浮かれるその心は表情だけではなく、解りきっている答えをわざわざ尋ねる口の軽やかさにも顕れていた。)




227: 牡羊座 [×]
2025-06-08 08:49:35




>鹿子

(その声色も、その言葉も、心からの信頼に満ちていた。期待してくれてる、任せてくれているのだと真っ直ぐ伝わるもんだから胸がふわっと熱くなった。照れくささも、嬉しさも全部ひっくるめてつい吹き出すように綻んだ笑い声が上がる「んふふ、任されました、だし」ニッと口角を持ち上げてどこか挑むような顔をして見せたのは、応えたいという気持ちの裏返し。勿論、自信もあるけれどそれ以上に応える喜びがあった。ポーチの中から選んだ瓶を傾ける、その中身は藍。それは彼に似合う夜の色だ。深く、優しく、静かで、でもちゃんと光を含んでる先に人差し指に赤を置いたのは、きっと何気ない動作の中でよく使う指だから。その分目を引き目立つところだから。赤を目立たせるために周りは少し落ち着いた、けれどただの静けさじゃない奥行きのある色で囲いたかった。中指へ筆を移すその少し手前で何の気なしの会話みたいに、でも大切なことのように口を開いた「……俺、時計と一緒に、一人のガキンチョを育ててるんス」そうさらりと言いながらも、自然と指先の動きが優しくなる。細く整えられた爪の上に、夜を流すように藍を乗せて「今じゃだいぶ育っちまったけど……最初に拾ったときは、俺の腰んとこにも届かねェくらい小さくて、なのに泣きもせず、噛みつくみたいな目でこっち見てて。可愛げはなかったんスけど、ガキンチョ放置することも出来なかったから」藍色が彼の肌に映えて、見事に馴染んでいく。赤と藍。二色が、彼を纏う空気にぴたりと添って、まるで最初からそこに在ったみたいに思えた「だから時計は仲がいいっていうより、同志みてェなもんで、育ててるガキは子犬って呼んでるんだけど、まあ……これが生意気で、ぶっきらぼうで、でも情には熱いイイ子で。手ェかかるけど、大事な子なんス」すっと薬指へ筆を移しながら、ちらと彼の顔を見やる。少し、ほんの少しだけ、声の温度を落として「だから、鹿子さんみたいな優しい人に、もしどこかの夜で会えたなら、遊んでやってほしいなァって。」小指まで丁寧に筆を滑らせると、星の粉がぱちぱちと光を跳ねるように煌めいた。夜空の一角を飾るような、静かな、でも確かな存在感がある。最後の一本まで乾き切るのを見届ければ手をそっと離して、少しだけ離れてみる。まるで、星座の一部を描いたあと、それが夜空でどう光るかを確かめるみたいな眼差しだった「……うん。やっぱ、めちゃくちゃ綺麗だし。鹿子さんの手、星みてェ」囁くように、ぽろりと落ちた超えだけれどそれは、どこまでも確信に満ちていて)見てみてくれョ。どーだァ?




228: 鹿子 晴匡 [×]
2025-06-09 22:58:42



>牡羊座


(自信満々で、でも照れくさそうで、でも嬉しそう。お互い様の表情で、それに尚更心が弾んで堪らない。赤い星を囲っていく筆の一筋一筋をつぶさと見詰めながら、ふと綴られる声に耳を傾ける。小さく頷く声を相槌に時折彼の瞳に視線を移せば、その表情に、それに話し始めて変わる手元の細かな力加減に、その子を慈しむ温かさが感じ取れた。「そりゃァ勿論。貴方さん達の大事な子犬君さ会えるの、楽しみにしとるよ。」頼みを断る理由なんて何処にも無くて、静かだけれども朗らかに、是とする言葉が自然に落ちた。――やがて小指の端まで夜が乗って、彼の声に目を下ろせば宿る光が瞬いて主張する。「……いつまぁでも見ていられるねェ。目ば離すんが惜しいくらいだ。」その手を引く事も忘れるほどに美しく、けれど自然で、やっと本来の色に染まったような不思議な感覚。問い掛けが無かったら、それこそずっと見惚れてしまうと感嘆が溢れる。「素晴らしいお人だの、貴方さん。色っこ選ぶ目も塗る指先も勿論だばって――人ば育てるもんとしても、充分になァ。」ふっと緩やかに顔を上げた先、溶々たる称賛はその芸術技術に飽きたらず、その絆にまで及ぶ。「……貴方さん、さっき子犬君を“情に厚い良い子”だと言ったけんども、子ってェのは親の背を見て育つもんだ。…だはんで、その子がそう育ったんは、貴方さん達自身が“そう”で、惜し気無くその愛を教えられるお人達でもあるって証に違いねェ。」そのまま滔々と話し始める言葉は読み聞かせのように優しく、揺り籠を思わせる程にゆったりと。視線は真っ直ぐに、柔い微笑みを滲ませて彼に向けられて。「……貴方さんも、時計さんも、とんでもなく立派な親御さんだ。」怒るよりも叱る事、甘やかすより甘えさせる事――“人を育てる”という事の難しさたるや。それが我が身でなくとも、教師として多くを見てきたからこそ、その大役を心の底から褒め上げ労いたくなる。そうなれば早いか、徐と腰を上げて互いの距離をもう少しだけ縮めて、「――えらい、えらい。」星と夜空の浮かぶ手の平を、癖の強い黄白の髪の天辺へ。羽織の袂が彼の顔に掛からないよう左で軽く押さえながら、二度だけ小さな往復で撫でて。それから直ぐに離して腰を戻し、「本当は何かあげられたら良かばってなァ……今はこれが精一杯だねェ。」子供にするようだが、揶揄ではなく至極真剣に。素敵に染めた爪の礼も、絆への労いも、多くの想いをそこに籠めた。「お嫌じゃなけりゃァこれで勘弁してけろ、羊君。」それでも伝え足りないと笑む眉を苦みで垂らして、肩を竦めて首を傾げる茶目っ気で彼を窺う。)




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