TOP > オリジナルキャラなりきりチャット

銀河鉄道の夜 / NL,ML,GL / 指名制/228


最初 [*]前頁 次頁[#] 最新 50レス ▼下へ
自分のトピックを作る
201: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-14 19:45:35



>烏座


(頷いた彼の口から転び出た“決まりごと”の話に、心臓と喉に巻き付く焼けた鉄枷が、ぐっと引っ張られたような焦燥を起こす。それは取り繕う暇も無く僅かに見開いた目にも、もう一度問い掛けんとして失敗した微かな掠れ声にも顕れた。規則を守れ、規律に従え、さもなくば――頭の奥で唸る強迫に、とっくに治った筈の火傷が一瞬熱く痛む心地がして、薄いグローブ越しに右手の甲を撫でさすったのは無意識の事。それも次に彼と目を合わせる頃には表面からすっかり隠して、「ほう。したら面白い事ば企んどるんか?」そう打った相槌に応えるように取り出された一枚のコイン。それに行き着く前に彼から受けた視線の温度が、この心臓の枷に伸ばされた指先のようで、ゆったりとだが思わず目を逃す。「ああ、種も仕掛けも何も無ェ。」逸らした目線の名目上は言われた通りの確認。コインが只の古い硬貨でしかない事を確かめたと是を返した後、明らかな意図を持って問う男。その賭けは単なる遊びで天秤に互いを掛けたようで、その実此方には選択肢など最初から有りはしない。あっという間に袋小路まで追い込まれたも同然の状況下だと、理解するのに時間は掛からなかった。だが、それでも。「……そったら訊き方は野暮じゃァねえのけ、烏君?」狼狽して震える事も、頼み縋る事も無く、咎めるような冗談をけろりと軽やかに投げる。――人より隠す弱味が多かろうが、それで損や苦労を抱えようが、こうして悪意が肌を滑ろうが。情緒も風情も台無しにする情けない醜態を易々晒すほど、己は性根の脆い男ではない。「ああ、乗った。俺ァ表さ賭ける。」罠を構えた狩人を前に決して項垂れず、その穏やかで鷹揚とした態度を崩さない雄鹿の如き浪漫家の矜持で強がり、背筋をぴんと伸ばして。己は彼の思惑に捕らわれたのではなく、自らの意思で向けられた蜜を飲み干すのだと微笑む悠々たる視線で彼を見据え、そう言い放った。)




202: 蠍座 [×]
2025-05-15 18:33:09


>リズ

(近い。いや、近づけさせているのは自分だ。まるで毒に酔うかのように、彼女は目の前の“蠍”に自ら触れに来る。怯える小狐とは違う賢く美しい女狐のように、気まぐれに愛嬌を振り撒いてみせながら、その指先は計算された挑発を孕んでいた。たとえばそれが殺意にも似た本能の衝動だったとしても、一向に気にしない。ただ愉快げに、気分のままに喉を鳴らすだけだった。カシス色に濡れた唇からこぼれた言葉は“馬鹿で可愛い女”。それを咎めもせず、訂正もせず、ただ受け取るように笑んでから明確な恐怖を宿しながらも逃げず、媚びながら牙を隠さず、かと思えばその牙をわざと晒して嗤ってくるそんな彼女に好感を得ていた。彼女の姿を少しも逸らさずにじっと見つめ返す。視線を逸らすなんて選択肢は最初から存在しないというように、ただただじっと。華奢な手のひらが自らの頬に触れた瞬間、その冷ややかさすらも可笑しくて。ふいに緩く目を細めてから首をわずかに傾けて彼女の指先に頬を預けるような仕草をして「へえ……震えてんじゃん」喉の奥で笑うように囁かれる声は、薄く皮肉を塗した愉悦の音だった。指先の震えを見逃すほど、この男の観察眼は甘くなかった。むしろ、その震えすら彼にとっては“可愛い”という評価対象になっていた。まるで玩具の細部を舐めるように撫でていくような目で、彼女の頬に、まつ毛に、化粧の濃淡にすら視線を這わせて「……いいねぇ。やっぱさ、可愛くて馬鹿な女ってのは、見てて飽きない」す、と彼女の手を取る。触れるのではなく、絡め取る。そうすることで、物理的に“優位”を誇示する。爪の先で、彼女の手の甲をなぞるようにゆっくりと滑らせながら、視線はただ一点、彼女の瞳にだけ注がれ続けた。「……あははっ」それから高らかと楽しげに漏れた声は、あまりにも素直で、だからこそ狂気じみていた。小さく震える肩。笑いすぎて滲んだ涙が膜となり大きな瞳を覆い隠し、頬を滑り落ちる寸前に雫を指先で拾う。拾って、つま先で床へ落とした。それが“毒”であることに言及するまでもなかった。「つーかさ、俺のことを隠してたなんてさ。あのアンドロメダも、意外と独占欲あるんだな」皮肉混じりの笑みとともに口元が吊り上がる。笑っている。けれど、怒っていないとは言っていない。知っていて隠されていた、それだけでこの男の“興味”は彼女へと濃く、深く、致命的に染まりつつある。次の瞬間、彼女の手に添えられた指が、するりと彼女の頭部へ頭蓋ごと捕まえてしまうように耳の裏へ撫でるように移動した「で? 噂の蠍に会った感想は?」ぎょろりとするほど大きな目が彼女の顔を覗く。吐息を混じらせた声が、すぐそこに。悪意と戯れ、愛情と死を同時に携えるような距離感で。舌先で舐めるような言葉運び。愉快そうに、傲慢に、確信的に問いかける。「……自分で言うのもなんだけどさ、いい男だったろ?」不敵に笑うその顔は、ひたすらに支配者のもの。誰かの意思に左右される気なんて最初からない。好みで手を伸ばし、飽きたら棄てる。けれど、今の“遊び”はそう簡単に終わらせる気はないと楽しそうな顔が物語っていて)



203: 烏座 [×]
2025-05-15 18:33:22



>鹿子

(車内を満たしていたのは、静寂とわずかに軋む車輪の音。にもかかわらず、彼が高く跳ね上げた銀色のコインが天井近くでくるくると舞い、再び彼の手の甲に落ちて音を立てた瞬間にその沈黙に裂け目が生まれた。「……カカカカッ!」乾いた笑いが、裂け目から覗いた黒の羽ばたきのように響き渡る。笑っていた。喉の奥底から愉快げに鳴くそれは、ただの失笑でも、侮蔑でもない。勝負に敗れたことを、心から楽しむものの声だった。「ははァ……まいったまいった。ホンマ、つっよいのぅ、お前さん。」少し肩を竦めて、わざとらしいほどに目を細めて笑ってみせる。演技じみた身振りにこそなってしまうが、しかしその内側で湧き上がる感情は紛れもなく本物。紛れもない好奇心がまるで猫のように、あるいは獲物を前にした猛禽のように、確かな重さを持って胸の奥に沈む。鹿子晴匡。今一度彼の名前を舌の上で転がした。ふうん、と鼻で小さく笑うと、コインを持ち上げて陽の入らぬ車内にかざし、表面である事を確認する。間違いない。これはもう、彼の勝ちだ。「……そいじゃ、ひとつ目の景品をやらんといけんのう。」す、と目を細めたままに優雅な所作で手首を返し、コインを指の間でくるりと回しながら、口元に愛想の良い仮面のような笑みを貼り付けた。笑みの“かたち”ではあっても、それは一切の温もりを含まず、猛禽がその黒い嘴の奥に骨まで砕く力を隠しているようにも似ていた。「ええか、晴匡さん。こっから先、銀河鉄道が停まる駅は、ひとつ、ふたつ……」言葉に合わせて伸ばした指を一本ずつ折っていく。まるで呪文のように、ひとつひとつの名を丁寧に言葉へ変える。「“鷲の停車場”に、“新世界交響楽”の流れる“小さな停車場”。ほいで、“蠍の火”にな、“ケンタウルの村”。“サウザンクロス”、んで“石炭袋”。そんで“銀河ステーション”じゃ。」ぱちん、と指先を弾く音が、小さな合図のように空気を震わせた。「お前さんは、この駅のどれかで……ぜったいに降りにゃあならん。ええか?絶対、じゃ。のうたりんのフリしとっても、その時が来たら……降りなければぜ~んぶ終わりじゃ」コインを再び弾く。高く、高く。今度はわざと、さっきよりも派手に。回転の軌道は僅かに乱れながら、しかし的確に彼の手の甲へと帰還した。パシ、と音を立てて覆われるその硬貨。「さて……どうするかのう?」柔らかな声音で、低く潜ませた声。けれどその笑みの裏には、問答無用の支配欲と、試すような苛烈さが混じる。「続きが気になるんじゃったら……ゲームも続けるしかないじゃろ?」そう言って、手の甲をゆっくりと持ち上げる。指が離れ、露わになった銀の硬貨は再び、“表”。その事実を確認する前に、彼の眼を捉えていた。逃がさない。たとえ微かな揺れでも、鼓動でも、眉の動きでも。すべてを観察する目で射抜いてみせる。「運も実力のうち、っちゅうがな。お前さん……つくづく面白い男じゃ。」声色が僅かに熱を帯びる。さっきまでの遊戯めいた響きではない。もっと、獣じみた気に入った相手へ向ける特別なそれで)次は……どっちじゃ?晴匡さん。



204: カムパネルラ [×]
2025-05-16 10:42:13



蠍座「あぁ……つまんない。どうしてお前たちはいつも“目を逸らす”んだろうな。俺という劇薬を前にして、その程度の覚悟で立っていられると思ったのか?──まあいい。今からでも見つめなよ、たった今、お前の“死に場所”を塗り替えてやるからさ。ほら、早く乗れよ、じゃないとお前を置いて発車しちゃうぞ」



○ 世界観 ○
>1

〇 提供 〇
>2

〇 好み / 萎え 〇
>3

>ジョバンニの受付はいつでも行っております。



興味を持っている、お試しで参加してみたいなど、質問やご相談だけでも受け付けていますのでお気軽にお問い合わせ下さい。


>只今の時間よりリアルタイム交流、早い反応が可能です



本日纏まった時間を作れたのでこれよりリアルタイムの反応が可能です。
もし少しでも興味を持って下さった方がいらっしゃいましたらお気軽にお声かけください。




205: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-16 20:21:00



>烏座


(耳を澄ませる程に投げられるコインに集中していたものだから、沈黙を裂くその音がいやに鋭く突き刺さる。しかしそれに仄かな安堵の息を溢したのは、続く彼の言葉に賭けの結果を知ったからこそ。「そりゃァ、男だはんでの。」言葉ではそう告げたものの、正直こういった強さに男も女も関係は無いだろう。だが少なくとも、今自身を奮わせたのはそんな昔ゆかしい大和魂の度胸だと、此方からも笑い返す。その直後にまた変わる空気を感じ取れば、また気を引き締めて彼の仕草ごと“景品”を確と清聴する。「……なるほど、こりゃ重大だの。」この列車の名、停まる駅の名、すべき事。そこに殆ど独り言の相槌を落としながら、言葉の他に読み取れるものを探して改めて彼の表情を窺った。しかしそこに在ったのは出会い頭に浮かべていたものと同じようで全く違う、薄ら寒く底の見えない笑顔。それに明白に向けられた、捕食を想像させる熱と声。そこから得られたものは彼の抱く欲の一欠片と、それに気付いてぞくぞくと走った己の背の粟立ちのみだ。つ、とほんの一瞬目を逸らす仕切り直しの後、再び彼を見据える。「そりゃァ勿論続けるとも。全部聞けねば終わってしまるからなァ。」頷く声は平静を保っていれども、刻限の不明が己の焦りを煽って拍動を早め、呼吸は些か苦しく浅く、瞳の焦点が僅かに揺れるのを誤魔化すように瞬く回数も増える。落ち着け、と命じた頭を巡らせる――ここまで詰められている時点で、謀略も腹芸も彼には敵わない。此方が察しきれぬ企みだってあるかもしれない。なればそう、やるべきはたった一点の防衛戦。勝っても負けてもその嘴が己の枷に触れぬよう、全霊を以て尽力するのみ。腹を括るその際にもう一度、やはり無意識に右手を撫でて覆った後に、「いやァ、あんまし褒めたって、なぁんも出ねェよ。ほれ、こん通り。」顔の横まで両手を持ち上げひらひら蝶々の如く揺らしてにっかりと、上がったまま戻らない鼓動の苦しさを抑えた音で冗句の常套句を放る。――コインは既に投げられた。イカサマが無いのなら確率は表裏半々、そして悩んだ所で結果は変わらない。「裏。……どうだ?」故に迷わずすっかりきっぱりと賭けに答えながら、震えども退かぬ覚悟をしなやかに宿した瞳で、此方を射抜く彼の視線を真っ直ぐに受け止めていた。)




206: 烏座 [×]
2025-05-16 22:30:19



>鹿子

(──表だ。開いた掌に現れた硬貨の顔を見てまず目を細めた。隠しきれない笑みが、嘴のように鋭利な唇の端を持ち上げる。まるでそれが最初から決まっていたかのように、動きに一寸の迷いもなく飄々とした声で結果を伝える。「おお、また表じゃの。……ほいじゃあ、ワシの勝ちっちゅうことかいの。」声は軽やかだ。列車の音にさえ紛れず、浮かぶような調子で。だがその裏に張り詰めた糸のような愉悦が通っているのを、彼の聴覚は見逃さなかったに違いない。選択肢など与えられたようでなく、勝負の形をしてはいるが実態はただの誘導で彼の言葉通り、”理不尽極まりない”ゲームだった。それでも、彼は怯まず一歩も退かなかった。それが何より面白くてピカピカと輝いて見えた。手の内を読まれているとわかってなお、笑っていられる度胸。それが良い。「まあまあ、二分の一じゃけぇ、そういうこともあるけぇな。……落ち込んだらいけんよ?」慰めとも煽りともつかぬ声色で、楽しげにそう言う。言葉だけは優しい。だが、その実で舌先ではなく視線の先に既に標的を定めていた。それは彼が無意識に何度も撫でていた右手の甲。グローブ越しに隠された何か。意図せず手癖が出てしまうほどの“何か”がそこにある。欲しかったのは、賭けの結果ではなく、そこに刻まれているであろう“理由”だった。「……晴臣さん。」わざとらしく、くるりと首を傾けてみせる。黒羽根をそっと撫でるような柔らかい声で彼の名を呼び、コインをしまいながらゆっくりと、しかし真っ直ぐに彼の手へと手を伸ばす。「俺ァ、あれが欲しい。」にっこりと、屈託のない笑顔を浮かべる。色眼鏡の奥で形を変えた笑みは、捕食者のそれ。食卓に並んだ一皿に手を伸ばすような、当たり前で当然の欲望。「晴臣さんが……ずっと大事そうにしとるけぇ。なんか、俺も欲しゅうなったんよ。」それはまるで子どもが兄の持ち物に憧れるみたいな声音だった。だがその言葉の端に隠された、“それを隠そうとする理由ごと欲しい”という濁流のような意志は、無垢な風を装ってなお余りある熱を孕んでいる。「くれるじゃろ?」視線はまっすぐ。けれど優しい笑顔を崩さない。選ばせているように見せかけて、断れない空気をじんわりと作る、あくまでも上機嫌に残酷な静けさの中に沈んだ毒を、さらりと溶かして。その手が彼のものに触れるまで、ほんの僅かな距離を保ちながらその反応を待って。)




207: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-17 18:28:42



>烏座


おんや、残念。
(此度の賭けは負け。けれども問題は無い。勝敗は大事だが、一番はそこではないのだ。彼とは対照的に少しばかり大袈裟に肩を下げて落胆する仕草を取り、「ああ、次もあるはんでの。」彼からの慰めに答える傍ら、切り替える頭はその先に続くだろう罠の糸に備えて構え、口元を一度引き結ぶ。彼の視線の行く末は、追うまでもなかった。名を呼ぶいやに優しい声と伸びてきたその手から、反射的に避けようとした右手が微かに跳ねる。「……っ!」気付かれている。防衛の一線に踏み込まれるのは、想定していた事。しかしそれで尚動揺で心臓が絞められるのは、向けられる彼の笑顔に、注がれる言葉に、纏う空気に溶けた捕食の毒を捉えて飲んでしまったからだ。本来隠し事など不得手の喉が呼吸を詰まらせた数秒後、「……手にしたって、きっと気分の良いもんでねェよ。」今までよりも低く静かな声でそう予防線を張って、グローブの爪先を引いて黒布を外す。露になるのは、手の甲から五指の背の一杯まで広がる引き攣れとケロイド。そこに皮膚感覚など殆ど無いと一目で解る火傷の痕を晒し、握るも撫でるも好きに出来るよう、彼の指先へそれを差し出して、「子供ん頃、出先で火事さ遭ってねェ。こりゃァそん時の跡だ。こん跡な、そのまんまにしたっきゃ人ば怖がらせてしまっての。だはんで手袋で隠してるってェだけの、……」何でもないように軽々話す。その内容は確かに事実だが、あくまでも客観的な建前だ。求められているものではないと、言う側も聞く側も察せられて、それでも煙に巻いて肝心な部分から遠ざけようとする精一杯の不器用な言振り。――ここまでで止めればいい、そう考えていた筈だった。しかし、黒い羽根が退路ごと囲い込んでくるような、息苦しささえ感じる熱を含む彼の視線に、苦い笑みを形作っていた目は不意に膝元へ伏せられ、「……ありゃァ、とんでもねぇ大火事だった。」弱々しい音が溢れた。毒の回った舌が、勝手に紡いでいるような感覚だった。「逃げ道も見えねくなるような、人を、焼き尽くす、恐ろしい地獄のようで――」怖い、怖い、怖い、と呼吸が幾度も途切れて。丸めた肩と加減無く力の籠る手が、焦げ付く恐怖を雄弁に物語る。「――……罰ば、当たったんだ。きっと次は無ェ。」けれどそう、恐れるのは炎そのものではないと、最後に落とした一際か細い声が意味深に示す。そのまま項垂れた髪を左手でぐしゃぐしゃと掴み乱し、更に何かを言いかけて、しかしぐっと脚を踏ん張る仕草を切っ掛けにそれ以上を留まる。「……今の“景品”で言えんのはここまでだなァ。」核心である強迫の執着だけは、ぎりぎり話さなかった。そこまで吐き出して、こんな視線を注ぐ彼から“約束”なんて決まり事の鎖を枷に繋がれたのならば、己は何だって逆らえないと解りきっているから。「他に気になることがあんだら……」あともう一歩、些細な言葉であれ行動であれ、何か仕掛けられたら崩れる程の、酷い怯えが伸し掛かる顔を上げる。「……そうだなァ、」元より主導権も選択権も握れない理不尽の状況、景品が足りぬと今再び迫られたのなら、その瞬間に自分は終わると自覚しながら、眦と口端を無理矢理引っ張っただけの不完全な笑みを浮かべて足掻く。――その言動は最早、幼い子供が枕や玩具を投げ、“こっち来るな”と泣いて駄々を捏ねるのと変わらない稚拙さだ。「“遊び”ば続けるしか無ェな。」先刻聞いた物言いを借りたのは態と、情けなく震えた揶揄に近いそれに幾分かの心の安寧を図りつつ、彼の次の挙動に緊張を巡らす目を配る。)




208: 烏座 [×]
2025-05-17 21:02:41



>鹿子

(しんと静まった空気の中で追い掛けるように指先がゆっくりと動く。幾重にも予防をした上で火傷の痕が露わになったその手を彼が見せてくれたから、その手をまるで硝子細工のようにそっと包み込んだ。手の中に感じる温もりとざらつきが同時に脳へと沁み込む。哀れで、痛ましくて、それでいて綺麗だった。「……ええ手ぇしとるわ。ホンマに、うつくしゅうていけん。」かすれ気味に落ちた声は、驚くほど穏やかだった。ほんの数分前までのギラつきがなりを潜めた柔らかな声。火傷の痕に視線を這わせるその双眸には、軽薄な好奇心の色など欠片も無い。ただ真摯な、美への賛美だけがあった。掌で包んだ手をもう片方でも添え、慈しむように撫でながら続けて「賭けや遊びはさておきじゃ。おまえさん、今宵いちばんええもん見せてくれたわ。おおきにの……」囁くように、声だけでくすぐるように、そして心の芯を溶かすように。火傷の痕を、撫でる。皮膚の硬さを擽るように時折指先で円を描きながら。「見とれたわい……こりゃ最近じゃ一番綺麗なもんじゃけ。ほうじゃ、よう頑張ったのう。ええ子じゃった」その声音は、幼い子を宥めるようなやさしさに満ちていた。まるで酷い夢から目覚めた子供の涙を、掌で拭ってやるように。言葉のひとつひとつが、焼け爛れた記憶の上に絆創膏を貼るように滑らかだった。「罰が当たった?……アホ言いんさんな。そりゃあ神さまが焼きもち焼いたんじゃろ。晴臣さんはあんまりええ男じゃけぇのう。」くっと短く笑って、先ほどまで掛けていた色付き眼鏡を指先で摘み、無造作にテーブルの上へ置く。カチ、と乾いた音が鳴ったその瞬間、彼の目元がふと変わった。細かった瞳がすう、と真っ直ぐに開く。それは真剣に、全てを見ようとする目だった。見目ではなく、過去でもない、その奥の奥を暴きに行く目。そして、それが美しさを讃える時の礼儀だとでもいうように真っ直ぐに向き合うことにしたらしい。「こがぁ美しいもん、隠さんでええ。……ええか、俺ぁおまえさんの焼けた跡も、怯えた目も、喉の奥で震えた声も、全部が美しゅうて欲しくなった。」包むように触れていた指が、今度はそっと火傷の痕から離れて、身を乗り出すように彼へ体を寄せると頬へ向かった。まるで硝子よりも脆い何かに触れるように慎重に、愛しむように。「……ほいで、その罰の話の続きも、聞かせてくれんかの?」静かな声。だが、それは逃げ場のない問いだった。優しさという名の檻の中で、ゆっくりと扉が閉じていくような。「“景品”じゃ言うならゲームをするしか無いけぇ、何でも賭けてやろか。おまえさんの命よりも、おまえさんの持つ景品のが重いけぇの。」茶化しでも冗談でもなかった。伝える声は静謐で、ただ真っ直ぐな重みのあるもの。頬を撫でる手はまだ止まない。小さな子供が抱き枕を離さないように、指先を触れさせたまま宝物のように扱って)



209: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-18 14:10:04



>烏座


(焼けた肌に彼が触れる。何も感じない其処がむず痒くなる錯覚を覚えるほど、優しく、細やかに。張った警戒さえ緩やかに剥がされていったその先に、掛けられた台詞はあまりにも予想外だった。「烏君、そんな、綺麗なんて……」戸惑いに眉を下げる。それまでの強張りの解けた、出会った瞬間と同じ柔い懐っこさのあるその表情を苦笑いに変えて、冗談混じりの否定を口にする。が、重なった言葉の温度に、それは半端なまま切れてしまった。次の一手を見失って、また顔を伏せてしまった沈黙の中に鳴った音。はっとして上げた目は真っ直ぐな瞳とぶつかって、たじろいだ身体が息を飲む。その隙に迫る彼岸花の如き赤が、紡がれる真摯な言の葉が、頬へ添う掌の繊細さが思考を奪って、冗句も強がりの覚悟も何処かに掻き消していった。はく、と声を忘れて一度空振った唇が、ゆっくりと空気を肺に満たした後、「……罰ってェのは、悪ぃ事ばしたら当たるもんだろう?」話すまいとしていた筈の続きが溢れた。こうなればもう、止められはしない。「あん日もそうだ、俺ァお家の決まりば幾つも破った。俺が、父様と母様の言う“正しい子”でいねかった。そんな悪ぃ事ばしたはんで、神さまは怒って俺さ罰ば当てた。」訥々と拙く、泣きそうに顰めた顔で語っていく。何処にだって在る微笑ましい反抗が、凄惨たる火の海に焼き潰された刹那を。「だから俺ァ、恐ろしい。また決まりば破れば、約束が守れねェば――あん日と同じに、罰が……」その時からがちりと巻き付いた枷は苦しくて堪らなかったのに、親に責められた幼い後ろめたさに相談の道を自ら断って。誰にも言えずに歳月を経た今、それは最早呪いと大差無いほど己を縛って焼いている。――いつしか言葉通りの怯えを隠せなくなった背は小さく丸まり、話も遂に涙で途切れて。「なあ貴方さん、頼む。……頼む。此処の決まりをちゃんと教えてけろ。俺ァ“正しい人”でいねばなんねェ。」不意に、ふらりと上がった右手が彼の肩に落ちる。服を掴む指は懸命で、しかしかたかたと酷く震えて力が上手く籠められていない。「あんな地獄はもう嫌だ。どうか、どうか……っ、」蜘蛛の糸に縋る必死さで、助けてくれと声を絞り出した。この己の名にある“匡”の字を、そっくりそのまま体現する枷の何もかもを彼に晒して、矜持も何も無い少年のようにそう懇願を繰り返す。)




210: 烏座 [×]
2025-05-19 09:08:00


>鹿子

(自らの肩に未だ力なく落ちている手を横目に見ていた。推測でしかないが、頼るということすらも彼にとってはきっと罪に近かったのだろう。そう考えると、震えるその指先がひどく尊く見えた。そう思うと短く酸素を吸い込んでから深く吐長く吐き出した。無自覚に浮かぶのは彼を手篭めにしようとする明確な悪意であり、それを振り払うようにして一度だけ目を伏せ唇に笑みを戻して「……晴臣さん。アンタ、自分が俺のタイプじゃったことに、感謝したほうがええわ」そんな風に軽口のようにそう言って、肩に添えられた手をそっと握り返すようにして外した。一度距離を取り椅子の背もたれに身を預けると、彼へとまっすぐ視線を向ける。「ほいで、聞きたかった“決まり”の話じゃがな」声のトーンは低く落ち着いていて、それでいて言葉一つ一つを丁寧に扱うように続けられて「次に寄る駅は……さっき言うた通りじゃ。途中で降りたら、そこがどこの時代の、何の世界に繋がっとるんか、もうわからんくなる。正しゅう降りる場所っちゅうんは“銀河ステーション”だけ。そこが終点じゃ。もし乗り遅れたら、たとえ次の電車に乗れたとしてもアンタの今まで暮らしとった場所には、もう戻れん。……それが、この汽車の決まりなんよ」淡々と語るその調子は、どこか鉄道の案内放送にすら似ていた。決して情に溺れることなく、だが冷たくもなく。ただ、乗る側がそれをどう受け止めるかだけの問題だというように。それでも、ふいにその声音が和らぐ。「じゃがな、アンタが“正しい子”やなかったけぇ、俺と出会えたんよ」今度は彼の瞳をまっすぐに見つめて、言葉の重さを変えるように、静かに語りかけた。ふ、と空気が止まったような一瞬が生まれる。火に焼かれた過去に囚われながら、それでも今を生きている彼だから今こうして強い興味と好感を抱いたのだ。「ほんなら、“罰”ちゅうんも、少しはわるぅないじゃろ?」緩やかに笑みを浮かべて言ったそれは、決して慰めではなかった。罪を肯定するのではなく、それを越えて続く縁の価値を提示するような声音で「どこまでが正しゅうて、どこからが間違いか、そがぁなもんは人の都合で変わる。けど、アンタが“正しゅうありたかった”気持ちは大事にしておやり。」そう言って身を乗り出し、再び彼の傍に寄った。真っ直ぐな目で彼を見つめながら。次にするのはそこまでの決まりを話した上で彼という男をこの夜に縛る行為だった。そこには甘い毒のように彼を残そうとする不純な動機が浮かんでいた)晴臣さん。ここまで話した上で言うが、アンタ俺と一緒に居ったらええよ。ずっと可愛がっちゃるけぇ

211: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-19 21:56:05



>烏座


(懇願の隙間に彼の声が滑り込む。その言葉の額面通りの意味は理解したが、今そう告げた真意までは読みきれない。少しばかりぽかっと間の抜けた顔を思わず上げたとほぼ同時に、己からも己の手からも彼は離れていった。続けて此方が先の事を問うより前に、静かな音で置かれた最重要事項に崩れきっていた姿勢をさっと正し、一言一句聞き漏らすまいと相手を見据える。「銀河ステーション、で降りる。……そうかァ、それが決まりか。」彼の話す声は至極落ち着き払っていた。だがそれは冷淡ではなく、摯実さを感じさせてもらえるものだったからだろうか、聞き終わる頃には怯えも震えも、いつの間にかすっかり凪いでいた。ふっと一つの区切りに息を短く吐き、肩を下ろした安堵の合間、届いたそれは自分には思い付く事の無かった発想であり、価値観であった。「……そうだなァ。うん、確かに悪くねェ。」じっくりと噛み締めるように、それでいて何処か嬉しそうな温かさで呟く。――己にあの罪と罰があったからこそ、そこを乗り越えたからこそ、この奇跡の如き夜にて彼と縁が繋がった、など。そんな浪漫も、案外素敵な話だった。「ありがとうな、烏君。」己に巣食うものが、解かれていく。ただひたすらに囚われていた心が緩んで、随分と呼吸がし易くなった。一度ゆっくりと瞬きをしながら、深く息を吸い込んで礼を告げた直後。忘れていた毒が彼の瞳から己の瞳へ垂れ込んで、その油断しきっていた不意を突かれた驚きを、瞠目に顕した次の瞬間、「…ふ、ははっ!貴方さん、ほんに悪いお人だの。」溢れたのは楽しげな笑い声、それに朗らかな軽口。「でもごめんなァ、烏君。俺ァ降りねばならんよ。……決まりだから、だけじゃァねェ。俺ァ俺ん時代と世界を、貴方さんの言葉と一緒にもうちっと歩いてみてェはんで。」それから迷う事の無い明確な拒否を。けれどもその理由は枷の為ではなくて――彼がくれたこの光を通した自分の世界に、前以上にきっと新しい何かがあると思えて、それを見てみたいと心が疼くから。「……ただ、そうだの。もし……もしな、俺が歩くのば止めた後で、また烏君さ会えたったら。そん時にまだ、俺ん事ば“綺麗だ”って烏君が思ってくれたったら――」しかし一度、顎を指で擦って目を泳がす、悩む仕草を数秒程行って。また視線を合わせ直してゆったりと紡ぎ始めた話はあまりにも遠い、あるかも解らない、冗談にすら聞こえる夢物語。だけれども、「――もういっぺん、今と同じ事言ってけろ。そん時ゃ必ず、貴方さんの思う通りになる。」そんな事が叶ってほしいと、本気で願ってしまう。それ程に今夜の終わりが惜しいと、彼へ抱いた情が言葉を柔く甘く色付け、注ぐ眼差しに仄かな幽艶を負わせる。「俺ァ、そう“約束”する。」とん、と。小指を立てた右手を自らの心臓の上に添え。その次に、慣れない事をするほんの僅かな気恥ずかしさを含む唇を一旦結んでから、その右手を彼の方へと向けて。「……烏君は、どうだ?」己からの“約束”の重さは、枷の全てを晒した彼には伝わっている筈。だからこそ、差し出した小指にはおずおずとした遠慮を、彼を映す瞳には純粋な甘さの奥に不安を滲ませていた。)




212: 烏座 [×]
2025-05-20 08:58:34


>鹿子

(あの静かな告白を終えた彼が、小指を立てて胸に添え、それをこちらへと差し出してきた時。その仕草はひどく慎ましく、それでも確かに「誓い」としての重みを持っていた。彼の瞳に宿る光は、これまで見せてきたどれとも違っていた。かつては罪に苛まれる影が、しがらみの奥で蠢いていたが、今のそれは違う。薄く不安を滲ませながらも、透明な願いと、微かな希望の灯が滲んでいる。その変化を見逃すほど、無頓着な性質ではなかった。真っ直ぐな眼差しで交わされる“約束”の提案に、心の奥が、静かに波打った。決まり事を守ろうとする、その誠実さ。己が選び取った道に迷いながらも、その足を止めず進もうとする姿勢。「……ほうかアンタぁ、益々、綺麗になったのう。」思わず、吐息のような声で呟いた。彼のその手に、己もゆるりと指を伸ばす。子供の頃、誰かと交わした幼い誓いのように、小指と小指を絡ませる。指先の熱が、ほのかに伝わった。その温もりは、思いの外柔らかくて、破っちゃいけんよと。声にせずとも、それを伝えるように指をきゅっと引き寄せた。「……おう、しゃあないのう。そんな風に言われてしもうたら、ワシはもう、晴臣さんの好きにさせちゃるしかないわ。」落ちた肩を、ゆっくりと持ち上げる。先ほどの芝居がかった落胆を少しだけ引っ込めて、改めて彼を見た。正面の彼はどこまでも愛おしく、綺麗な男だった。今彼を手放すことはとても惜しいが、下拵えだと思えば悪くないと思わせるほどに。それなら今できることをしようと、そう思えた。テーブルの上、少し前に置いたサングラスへと手を伸ばす。うっすらと紫が滲んだ、烏の羽根のような色合いのレンズ。ほんのりと星が煌めきとして埋め込まれたそれはこの世界のどこを探しても、烏座にしか持ちえぬ代物だ。誰の目にも、これが烏のものであると分かるはず。「……ほれ、これはワシからの“おまもり”じゃ。」そんな色眼鏡をそっと手渡した。彼の手の中に収まるように、少しだけ角度を調整して。「ワシと次、会えるんがいつになるか分からんけぇ……それまでのあいだ、他のカムパネルラに殺されんように、な。」わざと軽く言う。けれど、言葉の奥には、本物の心配と祈りを込めていた。彼が無事でいることを、願わずにはいられない。手放した彼が、複数いる危険なカムパネルラによって壊されないようにと、今できる最善だと思った。「大事にせえよ。無くしたら、怒るけぇね。」笑みを浮かべたその声音は、どこか真剣さを滲ませていた。まるで、次に彼と再会するその時を、夢見ているかのように。再び彼の瞳を覗き込むと、ほんの少し前までは、触れれば壊れそうだったその心が、今はしっかりと根を張り、光を宿している。そうだ。彼は、決して脆くなんかない。ましてや己との時間を経て強くなった訳じゃない。ただ、本来の彼に、ようやく出会えたのだと気づく。軽口をひとつ添えればクッと喉を鳴らして短く笑い)……んで、約束したんじゃけぇな。忘れた言い訳なんぞ聞かんけぇ。



213: リズ・フェリシティ [×]
2025-05-20 18:44:38




>蠍座

( 愉悦と堕落、張った虚勢すらも悪戯に見抜き、転がすように笑う彼の瞳に呑まれてしまいそうだ。色濃く滲む興味と握られた手のひら、伝う指先にぴくりと反応を示しつつ、そんな逃げられない状況の中でも笑みだけは絶やさない、それが矜持であり、すぐに怯む獲物などとは思われたくなかったから。そう考えて笑みを作ったことなども全て、彼には余さず伝わると思ったからだった。物理的な優位性ももちろん、握る掌の大きさ、伸びた爪の長さ、形。男女という骨格差が浮き彫りになる中で、くいと引き上がった口角と表情に宿る感情に、ふ、と小さく、その感情を煽るように唇を歪める。「あの女王様に独占?アハ、悪くない気分ね。…悪友なんでしょ?アンドロメダとアンタは。どっちもアタシの好みのタイプだもん。」髪を揺らすように首を揺らせば、するりと回り込んだ手のひらにぞわりと背筋が粟立つ。距離が酷く縮まって、その合間に横たわる濃密な空気が、ひりついた感情が肌に突き刺さった。…ふっと吐いた吐息が興奮からか恐怖からか。わからないまま、きっと簡単に壊せるであろう手に包まれているという事実、その美しさを引き立たせる狂気に見惚れてしまう。その確信的な問いに、ぐしゃりと笑顔が歪に崩れる。表れ出たのは繕わない剥き出しの激情。「……は、ははっ、ほんとイイ男ね、アンタ。」まるで同調するかのように熱の籠った上擦った声で笑い声を上げる。彼がそうしたように身を預ける仕草で擦り寄ると見せかけ、ふわりとその手の支配から頭を浮かせる。裏を避ければ行くのは表。互いの額が触れ合う寸前で動きを止めて。「ええ、イイ男。…キスしたくなるぐらい」吐息を混ぜ合わせるかのように囁く。声を落とし薄く唇を開くと、中から赤い舌先を覗かせその愛玩を誘うように笑いかけた。しかしすぐに居ずまいを正し、今度こそ彼の手のひらに懐くように首を傾げたのは気まぐれな猫のようで。「…だけど、そのアンドロメダから聞いたの。キスは厳禁だってね」ちろりと唇を舐め、けらけらとアンドロメダを思わせるような笑い声を上げる。それが暗に深く触れ合うものであると指し示したのは、彼の悦楽をくすぐるためか、目の前のスリルに構わず飛びつく愚かな一面を隠せなかったからか。きゅう、ときちんと閉じ切って笑う唇だけが、微かに残ったな自衛心を表していて、 )




214: 蠍座 [×]
2025-05-20 20:09:17



>リズ

(僅かな感情の変化すらもが可愛らしい彼女の表情を変えている。作られた笑顔の下で微かに浮き上がる呼吸の乱れや僅かに強張る肩。そうした全ての虚勢を、まるで全て許してやるとでも言うように寛容な眼差しで、けれど冷酷に拾い上げた。彼女抱える誇りがどれほど丁寧に磨かれた陶器であるかを鑑みながら、それを砕く愉悦を想像して甘いキャンディでも舐めるように舌の奥で転がしていた。「リズちゃん。お前、ずいぶんと耳障りの良いことを口にするじゃないか。“キスしたくなるぐらい”?どうせ言うならもうすこし気持ちを乗せて誘えよ、まるで三文芝居だな」声は低く、爪先で嬲るように音を紡ぐ。く、と鼻で笑う仕草一つとってもそれは感情ではなくこの場を楽しむための“演出”のようだった。冷徹な視点で彼女の中に秘められる情熱を戯れるように弄ぼうとして「そういうのはな、“本当にキスしてはいけない相手”にこそ、もっと慎ましく言うものだよ。もしくは、もっと切実に、もっと哀れに、もっと、汚らしく言うのも効果的だ。……はは!ってゆーか、リズちゃんってアンドロメダの警告を“守ろうとする側”の人間なのか」軽く肩をすくめ、わずかに口元を歪める。あくまで静かに、抑えた音量で、しかし残酷な響きだけが残るように語った。名を呼ぶ声は甘やかで、毒を含んだ蜜のように喉を通り抜けるのが困難な濃厚さがあった。すべてを溶かし、毒すらも甘くする類の声色で、意地悪くも彼女のことを煽るのだ。「リズちゃん、お前。自衛のつもりで笑っただろう?その唇で、必死に武装してるな。……人からの警告を無視するそんな女とは違うのか?」言葉の一つ一つが、鋭利なガラス片のように胸へ突き刺すように、切っ先で彼女の心をなぞるように喋り。「誰かから植え付けられた知識なんか忘れちまえよ。お前が見たままの俺と会話しようぜ」そこまで語ると、ふっと目を細め、触れ合いそうな距離感を取り戻すように唇を寄せ、吐息だけが彼女の口元を撫でる。「キスは、しない。“それを許されたと思っていいほど”の立場には、まだいないから」その声音は酷薄に、しかしどこまでも優美で冷ややかだった。殺めるほどの興味にはまだ足りない。欲深い男は楽しげに彼女のことを眺めて)──俺は別に誰でも彼でも殺したい訳じゃないんだ



215: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-20 21:24:31



>烏座


そりゃァ、貴方さんのお陰様だの。
(綺麗、と。また呟かれたそれに返す言葉は軽やかに、しかしたっぷりと感謝を詰めて溢れさせた一声を。差し出した小指へ心地好い温度がじんわりと伝わって、僅かに感じていた不安など跡形も無く溶かし、残るのは喜びばかり。苦しさだけだった“約束”が、今は結ぶだけでこんなにも温かな光明に変わるのだと知って、綻ぶ頬で繋がるそこを見詰めながら此方もそっと柔く、指先で返事をする。続けて掌に乗せられたのは、彼が着けていた色眼鏡。彼の背から覗く羽根に似た色と星光を含んだそれに籠められる想いに、少し擽ったげに笑い、「……ああ、失くさん。大事に、大事にするとも。」その言葉ごとそっと両手でサングラスを包んで胸に抱き、そう応える。――他のカムパネルラに会えば命の危険もある。彼の祈りにそう理解して尚、恐怖を感じる事は無かったのだから、この“おまもり”の効果は既に絶大だ。もう一度だけ手の中のそれを外の星々に照らしたその後に、壊れ物を扱うよりも丁寧に細やかに、自らの懐の内に確かに仕舞う。「そりゃァ勿論。」軽口には軽口での応戦を。けろりと笑った後の右手に持つのは、もう一方も脱いで揃えた一対の黒いグローブ。「貴方さんこそ、“忘れた”なんて言わせんからの。」己の手にぴったりのそれは、彼の手にはきっと合う筈もなければ、当然新品でもない、限りなく只の布に等しいもの。けれども、己の罪と罰の価値を変えてくれた彼への対価は、今日まで抱えた自分自身を象るそれが相応しいだろう。彼がしてくれたのと同じように手渡した直後、「それと、」不意打ちにグローブごと彼の手を両手で挟み撃ちにして、少しばかり強引な力で引き寄せる。そのまま彼を見据える眼差しが悪戯をする少年の如き無邪気さと、射抜くような不敵さに細められて、「“次ん時”は花札ばしようなァ。あれなら俺ァ一つも負けんよ。泣かしたるはんで覚悟しておけ。」そうにんまりと告げる。そう、謀略や賭けの勝敗に拘らないとはいえども、一度は負けた事も、散々己の胸中が掻き乱された事も全く悔しくない訳ではない。だからこのわざと低く強気な物言いをする宣戦布告は、彼を驚かす事だけを目的にした、今夜限りのせめてもの“お返し”だ。「……なんてなァ。」最後にころっと冗句の尾を転がして、柄に合わない自分自身の言葉に吹き出しながら彼からすっかり離れて背凭れに身体を預ける。それからふと窓の向こうに目を移して、また彼へと戻す頃には穏やかな表情を纏い直し、「……なあ烏君。」悠然と声を掛ける。これから終着駅を待つばかりの間、訊かなければならない事は沢山ある。カムパネルラ達の事、彼自身の事、この汽車の子細。だが、「駅に着くまで暫く、貴方さんの事ば見ていてもいいか?」口から溢れた問いはそれだけだ。「……貴方さんの顔をいつでも思い出せるくらい、覚えておきてくてなァ。」己は数多ある情報を手にするよりも、彼とこの夜を過ごした思い出を焼き付ける事を優先したのだ。こんな時までどうしようもない性分だと苦い笑みに眉を下げながら、名残惜しさを湛える瞳に彼を映したままそう語る傍ら、せめて仕草だけはおどけるように肩を竦めてみせた。)





216: 烏座 [×]
2025-05-20 23:09:57



>鹿子

(手の中に納まったそれは柔らかく、少しだけ湿った温度を帯びていた。新品ではなく、布地の隅に染み込んだ無数の記憶が時折くすぐるようにこちらの掌に訴えかけてくる。無骨な縫い目、擦れた箇所、そして何よりも鹿子晴臣という男の「罪」と「罰」。それらすべてが織り込まれたかのような、手袋だった。彼の指が自分の手を包むように引き寄せたとき、胸の奥で火が点いたような気がした。「……晴臣さん、ほんま、えぇ顔しよるのう。」にやりと笑い、敢えて目を逸らす。じゃないと今にも目の奥の湿りを見破られそうだった。花札、だなんて魅惑的な次の約束を口にしてくれること自体が、何よりの贈り物だった。勝つ自信たっぷりのくせに、見え透いた戯れ言でこっちを笑わせにかかってくるその姿が、いじらしくて、愛おしくて、どうしようもなかった。けれど、だからこそ。だからこそ気を抜けば手放せなくなりそうだった。グローブを胸元のポケットに滑らせるようにしまいこみ、まるでそれが自分の心を封じる鍵か何かのように、すっとその上から押さえた。名残惜しさというよりも、甘やかで鈍い、飢えのような感情が喉元に絡む。それでも黙ってそれを飲み込んだ。彼が覚えていてくれるというのなら、自らも覚えておかねばならんのだと、あの笑い声も、穏やかな眼差しも、真っ直ぐで、誠実な心根も。そんな彼から伝えられたその申し出は、あまりにも優しくて、ずるかった。「……えぇよ。好きなだけ、見とき」そんな風に頷くより早く、返事が口をついていた。あまりにも真っ直ぐなその眼差しを受け止めるのは、正直、気恥ずかしかったが、同時に誇らしくもあった。「ほいで……俺ぁ、忘れんけぇな。晴臣さんが、どんな顔で、どんなふうに笑うたか。どんだけ優しい声で、ああ言うてくれたか。」こっちもなァ、と付け加えるように言いながら、ふと目を細める。笑ってるくせに、喉の奥が少しだけ軋んだのはご愛嬌だ。片肘をついて背凭れに寄りかかる彼を横目に捉えたまま、ゆっくりと体を預ける。並んで夜を見上げながら、ふと黙る。言葉なんてなくとも、心地良い静寂が流れていた。そして──しん、と汽車が静まり返ったような感覚があった直後、車内放送が流れ出す。”次はァ、銀河ステーション、銀河ステーション。お降りのお客様は──”ああ、来てしまった。夜の終点が。そうぽつり、と喉奥で息を吐き、それから名残惜しさをぐっと噛み潰すように飲み込んだ。もう未練は残させない。そう思いながら、彼の方へ身を乗り出して「晴臣さん、聞こえとるか? ……次に会える夜を、俺ァ楽しみにしとるけえの。花札も、話の続きも、どこまででも付き合うけえ。」言葉とともに彼の手を取る。短い時間の、短い触れ合い。だが、それで十分だった。彼の温もりは、もうしっかりと記憶の奥底に刻み込まれていたから。)アンタのこと、忘れられるもんか。

(/烏座との素敵な夜をありがとうございます…!キリが良さそうでしたので一旦〆させて頂きました!素敵な夜は烏座にとっても忘れられないものとなっています。また、次の夜のカムパネルラにご希望など有りましたら遠慮なくお伝え下さい!)



217: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-21 19:41:07



>烏座


……あんがとなァ。
(間も無い許しに瞳へ嬉々を、声には感謝を乗せる。それから一つ瞬いて確りと開いた視界に彼を捉えたその矢先、続いた語りに唇をきゅっと結んだ後、「そう言葉にされっと、急に恥ずかしくなってまうなァ……」それは彼の想いだと解っていながら、同時に此方の心を見透かされたような気分。仄かに集まる頬の熱に合わせて眉を垂らし、もごもごとした細い呟きを溢す口元を一度掌で押さえる照れた仕草は取るものの、否定もしなければ目を逸らす事もしなかった。――訪れる静寂。流れる時が緩やかになるような、或いはまるっきり止まったような、春の夜の如く穏やかな静けさの中。己を映した彼の瞳を、言葉をくれた唇を、優しく触れたその手まで、何一つ逃す事無く真っ直ぐ思い出に刻む。あと少し、もう少しだけ続けば――やがて沈黙を断ち切る放送が、無情にも己の耳に響いた。「……ああ。」一瞬の寂寥に瞼を伏せて、けれどもすぐに灯りを点して前を向く。そうだ、今夜汽車を降りても、それは終わりではない。今踏み出す足は、いつか来る“約束”までの旅路の第一歩なのだ。「次は烏君さ土産話ばたぁくさん持って、今よりずっと良い男になって貴方さんに会いに来るはんで――」取られた手を握り返して、温もりを交わしすぐに離す。それ以上は反って無粋だと思える程、満たされていた。「――それまでお互い、良い旅を。」帰り支度に帽子を被り、立ち上がる。駅へと降りる頃、“さようなら”ではなく“またいつか”と想いを籠めて満面に笑うその顔は、秋空の如く晴れて澄み渡っていた。)



(/此方こそ素敵なお時間を有り難うございます…!鹿子も翻弄されながらも、自分自身を変える一手を引いて下さった烏座様とかけがえの無い夜を過ごせまして、何があったとしてもこの大切な一夜決して忘れる事は無いでしょう。お次のカムパネルラ様についてですが、気になっておりますのは牡羊座様と小狐座様、山猫座様辺りでしょうか。前にも話しましたが正直どの方も魅力的で、どうしても選びきる事は出来ず……お手数ではありますが、再び主様に選んで頂く事は可能でしょうか……?勿論、主様の方で鹿子とお話をさせてみたいというカムパネルラ様がいらっしゃいましたら、そちらでも大歓迎です。
それから、鹿子の名前について一つ……大変ややこしいのですが、彼の名の最後の字は“臣(おみ)”ではなく、『はこがまえ』に『王』の“匡(まさ)”でございますので、その点だけご留意頂ければ幸いです……!それでは、次の夜の文も此方に置いていきますので、またお時間のある際に素敵な夜を過ごせる事を願います。)


身分証 >181


(ことんことんと、微かな振動が身体に伝わる。瞼を上げるよりも先に身動いだ手に頭上の帽子が落ち、条件反射に持ち上げたそれを口元に当てれば、寝惚けに大きな欠伸を少々。そこで漸く開いた視界に広がるのは見覚えの無い――いや、一度だが確かに見た景色。もしやと視線を窓の外に移すと予想通り、見渡す限りに散らばる星の海。「……ああ、また来たんだなァ。」寝起きに少し掠れた声へ喜色を滲ませ、そう独り呟いて正面へと顔を戻す。そのままふっと淡く柔らかな笑みを浮かべて、「どうも、今晩はァ。」目の前の人物へと一礼する。続けてゆったりとした所作で再び頭を起こし、居住まいを簡単に整えて背筋を伸ばす。「はじめまして。……カムパネルラさん、で合っとる?」それからもう一つ挨拶の礼儀を通し、一呼吸の間を置いて。瞬いた後に相手を見詰める瞳へ期待ばかりの灯火を宿し、尋ねる物言いや声音には柔らかながらも殆ど確信を持った芯を裏に張って。それでも合わせて首を傾げる仕草だけは、何処か懐こい隙を残してのんびりとしていた。)




218: 牡羊座 [×]
2025-05-21 23:12:10



>鹿子

(ちら、ちら、と幾度も盗み見るような控えめな視線を送っていたかと思えば彼が僅かに動きを見せたり呼吸の為の小さな音を立てる度にビクッと肩を震わせて逃げるように視線を逸らし、顎を少し引いて俯いた。彼の髪色は燃える火のように珍しい色をしていて、アーティスト気取りのこの男にとって見ずにはいられないほど心を擽られる色をしていた。そんな彼が愈目を覚ますと挙動不審に体を縮こませて視線を泳がせながらぶつぶつ、ぽつぽつと変事をして「ん。その、カムパネルラってやつ。 そう、呼ばれてるけど……それよりも、羊。俺ァ羊って呼ばれてるョ」俯きがちに、けれど指先はゆっくり膝の上で絡まり、解け、また絡まるのを繰り返していた。本人でも気づかないうちに、まるで絵筆のように細い手が何かの“構図”を描こうとしていた。「……なァ、初めましてとか、そういうの、慣れてねェんだ。俺ァ、そういうの、苦手っていうか……なんつぅか、話すのとかも下手だから。あんまりこの夜を期待しないでくれょ」背を丸めて伝える割にはどこから来る自身なのか、表情だけははにかんで、ぽつりぽつりと、不器用に言葉を紡ぎ。)アンタは、なんのジョバンニなんだァ?

(/お世話になっております!何よりもまず先にお伝えさせて下さい。このたびは大切なお名前を誤ってしまい本当に申し訳ございませんでした。言いにくかったでしょうに、教えていただき誠にありがとうございます。ご丁寧にお伝えくださったこと、深く感謝しております。お名前は背後様にとって何より大切なものであるにも関わらずこのような失礼をしてしまい、心よりお詫び申し上げます。以降、同じことのないよう十分に気をつけてまいります。また、至らない背後となりますので、今後ももし何か不備や無礼などございましたらどうか遠慮なくお知らせいただけますと幸いです。ご不快な思いをさせてしまったこと、重ねてお詫び申し上げます。
気になっているというカムパネルラのリストアップも有難う御座います。それでは最初に名前の挙がった牡羊座にてお迎えに上がらせて頂きます…!それではまた次の夜も宜しく御願い致します。)




219: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-22 18:54:25



>牡羊座


(この前の烏より一回りは若く見えるカムパネルラ。黄白色や灰色など全体として淡い色を持つ姿にほんの少し眩しげに目を細めつつ、おどおどとしているようにも見える彼の言葉を最後まで静かに聞き、「…そうかそうかァ。俺ァ逆にお喋りだはんでの、お返事だけでも嬉しくなって、つい喋り過ぎてまうんよ。」その終わりから数秒保った後にゆったりと頷き受け入れる。続けて相手に合わせて己を語っている形に見せかけながら、彼へ気兼ね引け目を負わせない慮りを散りばめて。「ちぃっと煩いかもしれんけんど……駅まで容赦してけろ、羊君。」それも案外不必要だったかもしれないと気付いて笑ったのは、此方が話し終えてから彼の口元を見た数秒後の事。「俺ァ鹿さんのジョバンニだの。」問い掛けに冗句を混ぜた一言をまず先に。それに自ら小さく吹き出した後、「名ァは鹿子晴匡。鹿君だの晴ちゃんだの、友にゃァ好き勝手渾名付けられとるはんで、貴方さんもどうぞ。」改めてきちんとした自己紹介をすらすら繋げる間、自らを示したり彼を差したりと緩やかに身振りを行うその両手には、新品だがやはり薄布の黒いグローブを填めている。――それは建前上の理由も然りだが、この汽車の夜に再び出会える事への願掛けも籠めていたが為。それ故何処か浮わついてしまう色を含んだ視界に、動くものを捉えて視線を下げる。そこに在るのは繊細そうで忙しない彼の十指。「……羊君、良い手ばしてるなァ。細くて、爪まで綺麗で、芸事ば上手そうな手っこだ。」上品そう、育ちが良さそう、器用そう、など。そんな明るい評価ばかりを詰めたしなやかな声音が、ぽつりと思ったままの感嘆を溢す。「そん爪、色ば付いてるように見えるけんど、そりゃァ爪紅かの?」それに加えてちらりとだが窺えた指先は、よくある自然な薄桃ではないよう。惹かれた興味が滲む眼差しをまた彼の瞳の方へと向け直し、此方から彼について、ゆったりと朗らかに交流の誘いを掛けた。)


(/いえいえ、全く何も間違わない人間はいませんし、あまりお気になさらず…!更にお気遣いまで頂きまして、大変恐縮の極みです。此方も無礼や粗相など行わないよう精進して参りますので、どうかお互い、今後とも楽しい一時を紡げたら幸いです。それと今夜のカムパネルラ様は芸術センス抜群の牡羊座様という事で、今からどんな会話を重ねていけるのか大変わくわくしております…!それでは、また宜しくお願いいたします…!)




220: 牡羊座 [×]
2025-05-24 09:15:18



>鹿子

(“鹿のジョバンニ”。耳慣れない呼び名に一瞬だけ目を細め、くるんとした髪の下で白い瞳が曇りなく彼の輪郭をなぞる。ふっと角度を変えて彼の頭部を見るが、それらしきモノはなかった。「……あ、役名みてーなやつ、スか、それェ。鹿子さん、でお願いします。俺より歳上だろうから、経緯ってヤツは大事でしょお」ごにょりとした声音と、八の字のように眉が下がる。どう答えるか一瞬迷って、それでもきちんと視線を戻せばそこまで言って、ふと口元を緩めると彼の渾名の中にあった呼び名を拾うように「俺は羊だけど、俺のコト“メリーちゃん”って呼ぶカムパネルラもいるンです。メリーさんは羊を飼う方だョって。」不満げにぼやく割に、そこまでが全部冗談を含めているようで口調はどこか楽しげで、照れ隠しに肩をすくめて笑ってみせて。そして次に来たのは、思いがけない褒め言葉だった。その言葉を受けるなり、まるで耳の奥に熱が走ったみたいに、 ちょっと背を丸めて俯きがちになる。むずがゆそうに唇の端を引き上げながら、でもどこか誇らしげに十本の指を持ち上げてみせると「……これ、マニキュア、って言うやつ。夜空のインクに星を砕いてて。キラッキラでしょォ」嬉しそうに爪を披露しながら伝える目線は、ほんの少し上向きで明るさを隠せていない。自分が気に入ってるものを、誰かに良いって言ってもらえたのが嬉しくて仕方ないようで「色決める時もただの黒とかただの藍色じゃつまんねーンで、何がいいか時間かけて選んだンです。……っつーか、年下なんスよ、俺の方がァ。だから、呼び捨てで全然いいしィ、敬語とか、逆に、くすぐったいっていうかァ」頬をぽりぽりと掻く。ちらちらと彼の顔色を窺いながら遠慮がちに声を落として、もにゅもにゅと言いながらも、どこか嬉しそうに笑ってる。当初、歳上だろう彼に身構えていた警戒心がお気に入りの爪を褒められたことでいとも簡単に彼を良い人にしたらしい。控え目なように見せながらも隠しきれない自己愛で得意気に両手を爪を見せるように向けて)鹿子さんには特別に見せてあげます。どうです?綺麗っしょ



最初 [*]前頁 次頁[#] 最新 50レス ▲上へ

名前: 下げ

トリップ: ※任意 半角英数8-16文字
※画像を共有する場合は、外部の画像アップローダなどをご利用ください

規約 マナー
※トリップに特定文字列を入力することで、自分だけのIDが表示されます

【お勧め】
初心者さん向けトピック



[0]セイチャットTOP
[1]オリジナルキャラなりきりチャット
[9]最新の状態に更新
お問い合わせフォーム
(C) Mikle