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自分のトピックを作る
141: 都々 [×]
2016-11-21 23:04:23





結局うちの本丸には小烏丸来てくれなかった‥。イベント頑張ろ。



   

142: 都々 [×]
2016-11-24 01:09:30





 鉛のような重い身体をシーツに沈ませる。視界の端に脱ぎ捨てたままの制服が映ったが、起き上がるのも億劫ですぐにそこから視線を逸した。数時間後にはここから出て窮屈な電車に揺られ、学校に向かわなければならない。教室の扉に手を掛けるところを想像すると、このまま永遠の眠りにつくのも悪くないと思えた。
 身体は睡眠を欲している。にも関わらず、ここ最近特に睡眠時間が減っていた。瞼を閉じても1、2時間後には目が覚める。その繰り返し。こういう時、高校入学と同時に家を出て正解だったと思う。十分な睡眠も取れず、その上自宅にいても尚誰かに気を使う生活を続けられる程、私は出来た人間ではなかった。
 枕に顔を埋め、深く息を吐き出す。やがて眠気がやってきたが、思考を働かせるとあの人達の声が聞こえる気がして眠ることだけに意識を傾けた。


「あの子はバケモノだから」

 教室の真ん中。一つだけ残された席に私は座っていた。縛られている訳でもないのに手も足も石のように固くなり、少しも動かすことができない。私を取り囲むように立っている彼らの顔は黒く塗り潰されていて見ることは叶わないが、皆見慣れた制服を着ている。私が毎日身に着けているそれと同じものだ。どこからともなく聞こえる声。此方を気遣っているようでいて、そこには確かに悪意が含まれていた。似たような言葉があちこちから飛ぶ。誰が言った言葉なのか、それとも誰も発していないのか、それすらも分からない。違う、と悲鳴を上げたところで意識が浮上した。


 クーラーの無機質な音が聞こえる。部屋は涼しいはずなのに、着ていたTシャツは汗でじっとりと湿っていた。枕元のスマホを手に取り画面に明かりを灯すと、デジタル時計が示す数字は午前2時を少し回っていた。身体を起こし足を引きずるようにしてキッチンへ向かう。グラスにミネラルウォーターを注いで3分の1程を飲み干せば、幾らか気持ちも落ち着いた。
 ベッドには戻らず、グラスを片手に本棚の隣へ腰掛ける。壁に背中を預け、ベランダに続く窓に視線を遣った。私がもしこの棚に並べられた小説の主人公だったなら空は綺麗に輝いていたのだろうが、見上げた先には輝く満点の星も、静かに浮かぶ月もなかった。雨を降らす程ではない雲で覆われた薄曇りの都会の空。お世辞にも美しいとは言えないそれを、ひたすらに眺め続けた。

 どれくらいそうしていただろう。クーラーの風を直接浴び続けた足の指が冷えてきた頃、待ち望んでいた音が聞こえた。もたれた壁の向こう側から微かに耳に届くアコースティックギターの音。肩の力が抜けていく。いつの間にか浅くなっていたらしい呼吸も、ゆっくりと通常のものへと戻っていった。
 この壁の向こう側に住んでいるお隣さんは、私よりも少しだけ年上の大学生だ。どこにでもいる普通の学生といった風貌で、決して近所迷惑を進んで行うような人ではない。すれ違いざまに会釈をする程度の浅い関係にあるその人は、少し前からこうして夜中にギターを弾いていた。お隣さんの部屋は所謂角部屋と呼ばれる物で、上下の階も今は空いている。隣で暮らしている女子高生はぐっすり寝入ってしまっていると考えているに違いない。実際、その音はこうして壁に近付き耳を澄まさなければ聞こえない程遠慮がちなものだった。そのメロディーと一緒に聞こえてくる心の叫びさえなければ、私も気づかなかったと思う。

 その日も嫌な夢にうなされ、もう一度眠る気にもなれずベッドの上でぼうっとしていた。ふと叫び声に近い何かが聞こえた気がして窓を開けたものの、どうやら声の出処は外ではないらしかった。隣の部屋からだと思い、壁にそっと耳を添える。それが歌声だと気付いたのはひとしきり泣いた後だった。下の名前も知らない隣人が、心の奥底に抱えた本音。歌詞と言うには纏まりがなく、ただ思いの丈を言葉にしただけの不器用な歌だった。

 今日もそんな歌声が壁越しに聞こえる。まさかお隣さんも声に出していない心の中の思いを聞かれているとは思うまい。明日顔を合わせても、変わらず私達はただ会釈をするだけだ。そこには悪意なんて一欠片もなく、私はそれが心地良かった。
 壁につけていた背中を僅かに丸め、抱えた膝に額を乗せる。途切れ途切れに紡がれる拙い歌と、素人の私でも分かるくらい下手くそなギターの音。足先は冷えたまま、窓の外には相変わらずぼんやりとした空が広がっているだけで、月も星も輝いていない。だけど、明日もあの教室に私は行ける。そう思った。



▼ 診断メーカー「今夜の鬱語り」様よりお題をお借りして。

( 今夜の鬱語りに、「『あの子はバケモノだから』と影で言われている少女」は如何でしょう? )


 
   

143: 都々 [×]
2016-11-24 01:19:57





心の声が聞こえる子と、ギター掻き鳴らすお隣さん。
自分で書いておいてなんだけど、夜中に楽器鳴らすとか私なら無理。昔は電子ピアノにヘッドフォン繋げて弾いてたけど‥音出して弾く勇気は流石にないわ。
そしてちまちま書いてたらまさかの全文消えるという悲劇が起こり、書き直してたらこんな時間に。日付変わってるんだけどどういうこと。
ロル内に収めようとしたら無理だったので珍しく小説風。誤字脱字ありそう。でも満足したし、眠いから寝る!



   

144: 都々 [×]
2016-11-24 12:59:38





今読み返してみると何故夏設定にしたのか分からん。こんなに寒いのに。謎だ‥。
そして後に書いた方の文章、けどけど言いすぎ。



   

145: 都々 [×]
2016-11-27 01:41:54





(  今夜の鬱語りに、「愛されなくてもいいから必要とされたくて、命令されたことは自傷だろうが殺人だろうがやってしまう加州清光」は如何でしょう?  )

◎ 診断メーカーより「今夜の鬱語り」


これめっちゃ書きたい。でも今過去問集放り出したらものすごく後悔するだろうから我慢。休憩終わり。模試とか諸々終わってからにしよう、うん。今週時間取れるかな。ファンタビも見に行きたいのに去年のレポート掘り起こして資料も用意しなきゃいけないし、たぶん発表後も手伝わされるよなあ‥。いや、後輩のためだ。そして今の内に先生に恩を売っておくためだ。何が言いたいかって、とうらぶに割く時間が思いのほか取れなくて泣きそう。しかもPC急に重くなるし何これ。楽器ください。いや、時間をください。



    

146: 都々 [×]
2016-11-28 00:43:57





明後日はゼミの子たちと先生のお金でお肉。次の日の午前中は用事ないから思う存分飲めるし食べれる。ありがとう先生、資料作るのに時間使って勉強全然できなかったけど頑張るよ。でもさ、報告書だけじゃなくてパワーポイントの資料もいるならそれを早く言えよおおお!ごめんとか可愛いスタンプ送れば許されると思ってんのかあの人‥!財布絶対すっからかんにしてやる‥。



   

147: 都々 [×]
2016-11-30 17:56:23





ファンタビ観てきたんだけどちょっと待って。バイト行く前に吐き出さないとレジで発狂しそう。
え、グリンデルバルドさんって、ダンブルドア校長のあの人だよね?ダンブルドア校長の妹さんって確か魔力を制御できずに暴走させて、結果亡くなったんじゃなかったか‥。しかもグリンデルバルドさん、ダンブルドア校長に昔接近した上に死の秘宝について語り合った中なんでしょ‥?あのペンダント、死の秘宝の形してたよね?え、これもうそういうことですよね。えええ何これ。主人公達の冒険よりも伏線に感動が止まらない。
まあ何はともあれジェイコブが最高に良かったし、ジョニデが出てきた瞬間心の中で絶叫した。ニューヨークの街並みも素敵だった、行きたい。取り敢えず次行く時は字幕版を一人で観よう。静かに観れそうなレイトショー狙いだなこれ。



   

148: 都々 [×]
2016-12-01 01:26:11





「お前には殺しの才能がある」


 報酬を受け取った時に掛けられたお決まりの台詞を思い出し、ブルーノは無意識の内に目を細めた。まだ夕刻だというのに空は茜色を通り越し夜の色に染まっている。唇から漏れた息は白く、いよいよ冬も本番を迎えようとしていた。
 コートの内側へ無造作に押し込んだ紙幣の束が歩くたびに小さく音を立てる。均等に並べられた街灯が点滅し、夜の始まりを知らせるかのように一斉に明かりを灯した。その光から逃げるように表通りから外れ、細い脇道へと足を踏み入れる。
 すると道の端には二人の子供の姿。恐らく兄弟だと判断できる彼らは互いに身を寄せ合いながら薄い毛布に包まり寒さに耐えていた。ろくに食べていないのだろう。痩せ細った彼らは今にも倒れてしまいそうだった。
 ブルーノは一瞬その光景に足を止め、再び進行方向を変えた。曲がる予定だった道へは入らず、震える彼らに向かって真っ直ぐに進む。ブルーノの姿に気付いた子供たちは逃げようとしているのか、慌てて立ち上がろうとするものの手足が冷えて言うことを聞かないらしかった。怯えた様子の二人を前に、ブルーノは無表情のまま手をかざす。
 ぼとり。殴られると瞳を閉じた彼らの耳に届いたのは何かが地面に落ちる音。痛みに襲われる気配は一向やって来ない。ゆっくりと目を開けた彼らの側に男の姿は既になく、足元には乱暴に置かれた札束が転がっていた。


 ブルーノには人を殺める才能があった。それはとても幼い頃から。
 どれだけ記憶を遡っても、父親と呼ばれる存在が彼にはいなかった。忌まわしげに己を睨み付ける母の瞳だけがいつもそこにあり、幼き日の彼にとってはそれが全てだった。美しいブルーグレーの瞳は酷く澄みきっていたと、ブルーノは記憶している。向けられる憎悪すら気のせいだったのではないかと疑ってしまう程に。
 彼の母は娼婦だった。望まない相手との間に生まれた子を彼女が愛することは遂になく、何時しか二人が暮らす家にも帰って来なくなっていった。自宅から母親の持ち物が綺麗に消えていたことを思えば、彼女が自らの意思で息子を置いて出て行ったのだと容易に想像がつく。がらんどうになった部屋の中、待てども待てども開かない扉に、ブルーノはもう二度とあの憎しみの籠った瞳に自分が映ることはないのだと悟った。

 その頃のブルーノはまだ身体も小さく、働きたくとも当然雇い主など見つかるはずがなかった。ゴミを漁って飢えを凌ぎ、額を地面に擦り付けて得たなけなしの金でどうにか生き延びる日々。
 そんな毎日を何度も何度も繰り返した頃、彼は生きていく上で暴力が非常に有効な手段だと知った。__そうだ、己を虐げ、優位に立ってきた人間は何時もそれを振るっていたではないか。自分もそれをすれば良いのだとブルーノは学び、そして恐ろしいスピードで技術を身に着けていった。喧嘩が一方的な暴力へと変わり、やがて人の命を奪う程のものとなったそれを、彼が生業とするまでに然程時間は要しなかった。



 二人の子供から離れたブルーノは少しばかり遠回りする形で帰路についた。彼が向かう先は表通りに並ぶ鮮やかな煉瓦造りの家々とかけ離れた、其処此処に汚れが目立つ古びた薄灰色の建物。元々その色だったのか、年月が経ち変色したのか。どちらにしても良い配色だとは思えなかったが、このひっそりとした裏通りにその淀んだ色合いはよく馴染んでいた。三階建で各階に部屋は三つ、二階の左端が彼に与えられた住処だった。日当たりの悪い位置に建てられたその建造物には温かみもなければ生活感もなかったが、彼曰く雨風を凌いでくれるだけで十分だという。
 足元には煙草の吸い殻やら割れた酒瓶やらが転がり、不衛生なことこの上ない。視線を上げればとても上質とは言えない衣類が建物と建物の間に垂らされた紐に引っ掛けられており、冬の星空を台無しにしてしまっている。ブルーノはそれらに視線を遣り、おや、と足を止めた。自宅の壁にはめ込まれた窓の奥に明かりが見える。家を出た時はきちんと消灯したはず。それは彼以外の誰かが其処にいる証拠だった。
 しかし、彼は特警戒する様子も見せずに建物に辿り着き階段を上がっていく。彼の足音と重なるように一階の部屋から微かに漏れる音楽が、殺伐としたその空間をより異質なものにしていた。その部屋に住んでいるのは筋肉質な腕に趣味の悪いタトゥーを入れた、如何にも人の一人や二人は手に掛けたことがあります、といった風な悪人面の男。彼は顔に似合わずクラシックを心の底から愛していた。あの無骨な手が鍵盤の上を滑らかに動き回り、この美しい音色を生み出しているのだから驚きだ。
 ピアノの音から遠ざかるようにして自室へと向かう。ブルーノがドアノブを握ればいとも簡単に扉は開いた。浅く溜息をつきながら室内へ入り、扉にきちんと鍵を掛ける。吐き出した分の酸素を肺に取り込むと、煙草の匂いに混ざって食欲をそそる香りが彼の鼻孔を擽った。奥の部屋へと向かい、その香りの発生源とそれを食している人物を確認する。
 悠々とした態度でソファーに腰掛けた男が振り向いた。指通りの良さそうな金色の髪が揺れ、やがて男の瞳がブルーノを捉える。そこに映る己の姿を見る前にブルーノはその双眼から視線を外した。それに気付いているのかいないのか、男は唇に弧を描き彼に声を掛ける。
「随分と遅かったじゃないか」
 言葉自体は帰りを待っていたという様な内容だったが、男の声にはそれを心配する色も咎めるような棘もなく、だからブルーノは気付かなかった。男の瞳が寂しげに揺れたこと。男の瞳に映る彼自身が、恐ろしいものから目を逸らすように視線を滑らせたことにも。



  

149: 都々 [×]
2016-12-01 01:44:18





続く( たぶん )忙しい時ほど長い文章を書きたくなるのは何故なんだろう。現実逃避かな。世界観が洋風なのはお察しの通り今日観た映画の影響。三人称視点で書いたのはなんとなく、そういう気分だったから。
本当は前に診断した加州のを書こうと思ってたけど、いざ文字にしようとすると何かつらくて無理だった。ごめんよ加州。



   

150: 都々 [×]
2016-12-02 21:12:31





ハリーポッターシリーズの中でドビーが一番好きな私が通ります。ドビー‥私の家にも来ないかな。来たらどろどろに甘やかしたい。死の秘宝のあの場面は涙無しでは見られませんね‥。



   

151: 都々 [×]
2016-12-02 21:49:56





◎ 診断メーカー、忘却屋さんより


都々さんは涙を流したあの夜を忘れに来ました。あなたはその記憶を机の上に置いていきました。哀しかったでしょうね。


ブルーノさんは家族のことを忘れに来ました。あなたはその記憶を店の人に手渡ししました。可哀想ですね。


アルバートさんは幸せな過去を忘れに来ました。あなたはその記憶をインクで塗りつぶしてしまいました。可哀想ですね。


パトリシアさんは幸せな過去を忘れに来ました。あなたはその記憶を持ち帰ってしまいました。本当は忘れたくないんでしょうね。


シャーロットさんは大切な人の敵のことを忘れに来ました。あなたはその記憶を海に流しました。本当は忘れたくないんでしょうね。



    

152: 都々 [×]
2016-12-02 21:55:11





この診断、創作キャラたちの特徴的確に捉えすぎてて怖い。まだ名前と簡単な設定しか考えてないキャラが殆どなのに‥。



    

153: 都々 [×]
2016-12-02 22:42:53





来週のエピソードoneが楽しみすぎる。今年の映画に貢ぎまくった都々は安室さん推しです。昔は平次くん一択だったから来年の映画も楽しみ。和葉ちゃんとの可愛い絡みに期待。



   

154: 都々 [×]
2016-12-05 20:32:45





録画してた花丸で癒された。来派尊い‥。三条も尊い‥。編成も素晴らしかった、ありがとうございます。
しかし花丸の皆が当たり前のように焼き芋の皮まで食べていたことに驚きが隠せない。やっぱり皮食べない派は少数なのか‥?



   

155: 都々 [×]
2016-12-06 03:01:28





(  >148 続き  )



 まるで夢の中にいるような、現実からほんの少しだけ浮き上がったような感覚。人に銃口を向ける時、あるいは首元に刃物を押し当てた時、ブルーノは自分が薬物中毒者にでもなったのではないかという錯覚に陥る。
 どれ程緊迫した状況でも、痛みで気がおかしくなる程の怪我を負っていたとしても、その瞬間だけは身体が嘘のように軽くなるのだ。そして思考が正常に動く頃には何時も全てが終わっている。手に纏わり付く血液は確かに現実のもの。しかし、横たわる人物を死体にしたのが自分だという実感は限りなくゼロに近い。そこには罪悪感も後悔もなく、ただ相手が死に、己が生きているという事実だけが存在していた。まだ幼かった彼が、金を寄越せと脅してきた五つも年上の相手に初めて反抗し、拳を目一杯振り上げた時からそれはずっと変わらない。当時は死人こそ出なかったはずだがその記憶すらも曖昧で、彼らの喧嘩がどのように終結を迎えたのかは謎のまま。殴られた頬や腹が痛むのは何時ものことで、けれどその日、自分は確かに何も奪われなかったのだとブルーノは後に語った。
 


 シャワールームから聞こえる音を背に、男は温め直したスープを器へ流し込んだ。天井からぶら下がる飾り気のない電球は淡い明かりを生み、糸のように細く柔らかな金の髪を仄かに照らしている。必要最低限の物しか置いていないリビングには黒や灰色が多く、男が身に纏うシャツの白をより際立たせた。料理をする為に袖を捲ってはいたが、それが上質な物であることは見る人が見れば分かるはずである。
 煙草の匂いが染み付いた部屋の中で、彼は明らかに浮いていた。しかし、それも当然のこと。本来彼は、この小汚い裏通りの住人とはかけ離れた世界で生きているはずの人間だ。
 名をアルバート・キース・プレスコットという。この街で知らない者はいない、かの有名なプレスコット家の次男。それが彼に与えられた肩書きであった。

 プレスコット家は古くから国に仕え、代々優秀な軍人を排出し続けてきた貴族として知れ渡っている。それは今も変わることなく、軍の上層部にはこの姓を持つ者が多い。アルバートもまた、若くして既に一部隊を率いる指揮官としての地位を手にしていた。しかし、それを示す為のバッジが取り付けられた上着は今、とても座り心地が良いとは言えない草臥れたソファーの背に畳まれることもなく引っ掛けられている。更にはその彼自身がこんな狭っ苦しい家で、どこぞの馬の骨とも知らぬ男に手料理を振る舞おうとしているのだから、彼の部下が見れば卒倒ものだろう。

 テーブルに食事が並びきった丁度その頃、シャワールームの扉が開き、この部屋の主が姿を現した。ブルーノ・スペンサー。数年前、無差別な殺人を繰り返し街中を恐怖に陥れたシリアルキラー。アルバートとの契約により無差別に人を襲うことはなくなったが、彼は今でもそれを続けている。彼が単独で仕事を請け負い、その手を血で染めていることはアルバートも知っていた。自分が何を言ったところでそれを止めさせることは叶わないと、理解していた為である。
 ところが、今日の報酬は良かったかと聞けばブルーノは帰りに何処かで落としたと言う。本当に何でもないことのような、まるでコートのボタンを一つ無くしたといった風な軽い口調で。当の本人に涼しい顔でそう述べられてしまえば呆れる気力すらも削がれ、半ば自棄になりながらもシャワールームへと追い遣ったのだ。

 水分を含み普段より幾分か長くなったブルーノの髪からは未だ水が滴り落ち、彼が歩く度に床を濡らしている。それを気にすることなく席につく様子に、アルバートは今度こそ呆れたように笑みを浮かべ、向かいのソファーに腰掛けた。生憎この部屋にダイニングテーブル等という代物はなく、彼らが食事をする時はこうしてソファーで向かい合うのが通例である。ブルーノの帰りを待たずしてアルバートが先に食事を終えるのもまた、この二人の間では暗黙の了解と化していた。
「‥‥いただきます」
 ブルーノは礼儀作法とは無縁な男であったが、食事の前後には必ず手を合わせた。フォークと皿が当たる度に品のない音を鳴らしているし、パンは千切らずそのまま口へ運ぶ。小さな子供がそのまま大きくなってしまったような人だと、アルバートは常々思う。事情を知らない赤の他人がこの光景を見たとして、今のブルーノを殺人犯だと言い当てる者はそうそういないだろう。今日彼が落としたという大金も、きっと何処かの誰かが__そう、例えば飢えに苦しんでいる子供なんかが偶然拾っているに違いない。
 アルバートはテーブルの隅に置いていた小説を手に取り、並ぶ文字に視線を落とす。やはり瞳は合わなかったが、それでも彼はこの時間が気に入っていた。



   

156: 都々 [×]
2016-12-06 03:12:48





まだまだ続く。長編と言える程長くはならない。‥と思う。たぶん、おそらく。
そして相変わらず曖昧な世界観。国レベルで世界観練る時はイメージに近い国の歴史を辿ったりしてる。歴史系科目苦手だからそれでも矛盾点が残ることも多いけど、何もないよりはきっとマシなはず。



    

157: 都々 [×]
2016-12-07 22:42:33





あー‥輪るピングドラム一気見したい。本当にいいアニメ。前半の阿呆らしい雰囲気から一転、中盤に向けてあっという間に引き込まれ、終盤の涙無しでは見られない展開がもう素晴らしかった。あとPSYCHO-PASS。これもいいアニメ。終始かっこいい。世界観だけならこれが一番好きかもしれない。古いのなら定番だけどAIRとかCLANNADとかぼくらのとか。ひぐらしのなく頃にも見直したいなあ‥。

DVD-BOXとBlu-rayBOX全部父の部屋の引き出しに預けた過去の自分に拍手を送りたい。自分の部屋にあったら絶対誘惑に勝てなかった自信がある。24話一気見とか洒落にならんもんなあ‥。流石に勉強時間そこまで削れる余裕ないです。



    

158: 都々 [×]
2016-12-07 23:24:23





それにしてもピンドラのサントラは何回聞いても飽きないな。勉強も捗るし、電車の中でぼーっとしながらでも聞ける。最後の3曲は涙出そうになるけど。



   

159: 都々 [×]
2016-12-08 12:55:57





今夜の鬱語りに、「触れたもの全てを傷つけてしまう手を持つ都々」は如何でしょう?


この診断結果見て頭に浮かんだのは学アリのペルソナ。のばらちゃんと幸せになっくれて本当に良かった‥。



     

160: 都々 [×]
2016-12-08 12:57:23

 



なっくれてって何だろう‥。幸せになってくれて良かったです。



   

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