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1057:
クレア/セレステ [×]
2025-10-20 16:42:06
過去編「甘いひととき」
夕刻の執務室。窓の外では沈みゆく陽が、庭園の白い石畳を金色に染めていた。
その中でクレアはただ一人、机に向かっていた。
書類の束、無数の判、冷めきった紅茶。
金髪の束が肩に落ち、瞳には疲労の色が滲んでいる。
けれど、彼女は顔を上げない。
この国の秩序を守る――それが自分の使命だと信じているから。
感情よりも義務を、温もりよりも責務を優先してきた。
──だからこそ、気遣いを感じる控えめなノックの音が、張り詰めた彼女の心を僅かに緩めた。
「…入れ。」
扉を開けたのは、青い髪の少女。
セレステは深く頭を下げ、いつものように礼儀正しく立っていた。
けれどその手元には報告書ではなく、小さな箱。
「……何だ、それは。」
クレアの声は、いつも通りの冷静さを保っていた。
だが、セレステの指が少しだけ震えているのを見て、胸の奥に微かなざわめきが走る。
「ケーキです。……私が、焼きました。」
「お前が?」
信じられない、というよりも、ただ意外だった。
騎士学校時代から剣一筋だったこの少女が、自分のために何かを作るなんて。
「先輩、最近ずっとお忙しい様子だったので…。少しでも、リラックスできればと…」
その声は、小さく、けれど真っ直ぐだった。
まるで剣先のように澄んでいて、偽りの欠片もなかった。
クレアは息を呑む。
「首狩り」と蔑まれるようになったあの一件以降、自分が周囲からどれほど冷たく見られているか、誰よりも知っている。
けれど、この部下は――それでも自分に優しさを向けてくる。
「……セレステ。」
名を呼ぶ声が、かすかに揺れた。
セレステははっと顔を上げ、金の瞳がまっすぐにクレアを見つめる。
「ええと…先輩。お口に合うかどうかは……その……」
クレアは言葉を遮るように、そっと箱を開けた。
甘い香りがふわりと広がる。
その香りに、ずっと張りつめていた心の糸が少しだけ緩んだ。
フォークで一口。
やわらかな生地が舌の上で溶け、ほんのりとした甘みが広がる。
「…お前らしい味だな。」
「えっ……?」
「まっすぐで飾り気がない。でも、温かい。」
セレステの頬がわずかに赤く染まる。
それを見てクレアの口元も、ほんの僅かにほころんだ。
「ありがとうセレステ。お前の気持ち、確かに受け取った。」
静かな部屋に、二人の小さな笑みが重なる。
それはどんな名声よりも求めていた、僅かな温もりの瞬間だった。
(/過去編に於ける書きやすい文章スタイルを模索中でして、読みにくかったら申し訳ありません!)
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