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銀河鉄道の夜 / NL,ML,GL / 指名制/212


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自分のトピックを作る
193: カムパネルラ [×]
2025-05-13 16:09:54


山猫座「あら、貴方にも聞こえる?耳を澄ましてご覧なさいな、貴方の心臓がこの汽車に恋をする音。これは契約なの。愛とか、罠とか、そんな甘ったるい名前で呼ばないで。この列車に乗ったなら、誰もが忘れていた獣の鼓動を山猫が教えてあげる。」


○ 世界観 ○
>1

〇 提供 〇
>2

〇 好み / 萎え 〇
>3

>ジョバンニの受付はいつでも行っております。


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194: レイラ [×]
2025-05-13 16:25:14

>子犬座

(日常生活で呼び捨てを受けることは殆ど無い。相手の提案を新鮮に思いながらも「子犬“さん”と呼ばせてください。その、わたくし、人を呼び捨てにするのは慣れておりませんので…」同時に照れくさい気持ちがあり、一瞬だけ視線が斜めに逸れたのがその証拠。相手が自分と歳が近い異性だからなおさら恥じらいがあるのだろう。ただし、垣間見えた少女らしい一面はあくまでも“素の一部”。再び蠍座と、アンドロメダ座の名が出たとき、空気はまた重くなり“運に任せるしかない”という言葉を耳にして、無意識に手元の鏡を握った。まるでお護りのように。突きつけられる現実を何も言わずに聞き、最後にふぅ、と静かに息をつき、沈んだ声色で「殺されたくない……」ゆっくりと瞼が動いて、瞬きを一回、休止を挟んだ瞬間「と、言ったら嘘になりますわ」さっきのはまるで演技だったかのように、沈着な態度に戻り「正直に言って、わたくし死への恐怖はありません。元の世界に未練もありません、べつに、殺されてもいい、美しい宇宙の藻屑になれるなんて素晴らしいとも思いますわ。……けど、約束しましたの、時計様と…。『必ず銀河ステーションで降りて帰る』と──それを果たしたいですわ。運を味方につけてでも」据わった眼差しで、ほとんど抑揚をつけない言葉の数々。けれど確かな意志がこもっていた。次第に表情はほころんでいき)
ですから子犬さんには、わたくしがこれからまた汽車に乗っても無事に帰れるよう、祈っていただきますわ。

195: 子犬座 [×]
2025-05-13 17:03:28



>レイラ

(彼女の言葉を黙って聞いていたが、無意識に眉がわずかに動く。自分の命に執着がないこと、それでも“約束”があるから生きたいと言う彼女の意思は静かに、それでいて確かに伝わってきた。死への恐怖がないと告げられた瞬間、脳裏を過ったのは時計座の顔だった。あいつはきっと、そんな結末を聞いたら立ち直れない。彼女が言うように、宇宙の藻屑になったくらいで割り切れるほど器用な奴じゃない。「……そうか。そいつぁ、良かった」喉の奥でくく、と短く笑いながら、柔らかな敬意を込めて頷いた。彼女が死を選ばない理由が、自分の命の価値じゃなく“時計との約束”だってことに少しだけ胸が熱くなる。ふ、と小さく息を漏らしてから「俺は、死ぬのが怖ぇよ。ガキみてぇな理由だけどさ。まだ知らねぇことが多すぎる。もっと色んな奴と話して、もっと多くを知りたい。……だから、俺は汽車に乗る」すっと立ち上がるような気持ちで、静かに彼女へと目を向けた。強く主張するわけじゃないが、その声には芯がある。低く抑えられた口調に、どこか少年の夢と、今の自分の生き様が滲んでいる「……レイラ。あんたの夢は何だ?」問う声に、軽薄さはなくて、そこにあるのは等身大の真剣さ。彼女がその答えを持っていてもいなくても、ちゃんと受け止めるつもりで口を閉じて)




196: レイラ [×]
2025-05-13 19:19:46

>子犬座

(「夢…?」たった一つの小さな単語は彼女を戸惑わせた。人が将来なりたいものやしたいこと、生きる原動力にもなりうる“夢”について、今まで想像もしたことなかった。聞かれて初めて、自分はそういうものを持っているのかと疑問がわく。意味もなく唇に指を当て、しばらく沈黙し始める。真っ先に死や鮮血を見たいという欲求が候補として上がってきたが、あくまで嗜好であり夢ではないと判定する。では一体なにが答えに当たるのか──「あ…」不意にこぼれた声の裏では、様々なものに憧れ、ときに羨んでいた幼き日の自分の姿が頭に浮かんでいて「夢かどうかは分かりませんが…。小さいときからわたくしは、知りたいことがあると本を読んで、そこに書かれていることに満足していました。けれど今は、本だけではなく、自分の身を通じていろんなことを知りたいですわ」ここで、時計のカムパネルラを思い出した。父親の顔をして愛について語る彼は、本では得られなかったものをたしかに教えてくれた)
はぁ、わたくしがこんなことを思ったのは、きっと…あなたのお父様が、あなたへの愛を語ってくださったおかげですわね…。

197: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-13 19:26:40



>烏座


ふむ、カムパネルラ。
(伸びやかに響いた可々を落ち着けるように、そっと丁寧に置かれるその言葉へ此方も耳を傾け受け取る。始めはそれそのものが彼の名であると勘違いをして、しかし己を指して向けられた呼称に直ぐ様思考を正す。「ジョバンニ……」この場所での役割か関係性か、それとももっと別の何かか。子細は遠く遠く、今すぐと見える事は無い。ただ、無償の施しはしないと言う彼から教えられたその名の静謐な重さは、きっと一等大事にしなければならない語りであると思わせるには充分だった。「……うん。うん、なるほどなァ。」カムパネルラとジョバンニ、その二つをもう一度口の中で転がして、ゆっくりと確かに飲み込んで。その瞬間を見計らったようにまた彼の表情は徐と変わり、先程の語りにもう一つ枝葉が増える。「烏。…ははぁ、通りで綺麗な髪ばしとる訳だ。」成る程正しく連想する程美しい彼の濡れ羽色とその名称を掛け混ぜて、素直な感嘆と納得を落として頷いた。それに加えて、態々そう名乗る事の意味は恐らく、“カムパネルラ”と称されるのは彼一人ではないという事。ならば己は――と推測の糸を一旦断ち切る。彼是考える前にまずは、そう、「俺ァ鹿子晴匡。学校で教師ばしとる“ジョバンニ”だ。貴方さんの好きなように呼んでけろ、烏さん。」名乗られたのだから此方も誠実に、しかし少しの遊びを含んで彼を真似た自己紹介を。それから話の内にすっかり伸ばしていた背は、再び彼の方へ緩やかな角度で傾いて。「そんで烏さんは、こん列車さ乗んのは慣れとるんか?」見合う対価を探るだとか、上手く情報を集めるだとか、そういった建前が全く無いとは言わない。けれども正直、そんな無粋な打算は一割未満で二の次三の次。今はもっと純粋に、目の前の彼との交流を楽まんとする軽やかな浮わつきを和む目尻と声音に乗せて、そう対話の最初の一歩を踏み出す。)





198: 子犬座 [×]
2025-05-13 21:56:16



>レイラ

(まるで心の奥底に静かに沈んでいた泉から、ぽつりと一滴こぼれたようなそんな声だった。「夢かどうかはわかりませんが…」と、彼女が語り出したその瞬間、ごく自然に呼吸を止めた。耳を澄ませるとは、こういうことなのだろう。慎重に、丁寧に、彼女の言葉を受け取っていた。本により知識に満たされていた少女が、それでも本を閉じて外の世界へと歩み出そうとする。恐らくはその一歩に、痛みも、迷いも、戸惑いも伴うだろう。それでも彼女はそれを望んでいる。そうしてその背中を押したのが、“時計”だったというのなら、とても誇らしい。気づけば、感情が無意識に尻尾へ伝わっていた。重力に従ってわずかに揺れたそれを見て、なんだか恥ずかしくて自分で自分に呆れる。なんだよ、と誰にも聞こえない声で呟いて、口をむずと結び。視線を逸らすのに理由はいらなかった。ただ、照れくさくて、どうしようもなく嬉しかった。「……そん時ゃ、教えてくれよ。今までやったことなかったこととか、初めて食ったもんとか」それから不意に口を開けば、その声音はどこまでも低く静かで、けれども不思議とぬくもりが滲んでいた。言葉にしてしまえば、それはただのお願いだ。でもそこには、確かな信頼と期待と、かすかな照れ隠しが同居していた「……次、俺に会った時でいい。お前が、新しく知ったこと。それを聞けるの、楽しみにしとく」新たな一歩を踏み出そうとしている、その足音を逃さぬように悪戯に口角を持ち上げて、そう伝えて。)



199: 烏座 [×]
2025-05-13 22:00:48


>鹿子

(名乗った名前をまるで掌の上に載せて遊ぶように、鹿子晴匡という男はさっそくそれを試すように口に乗せて転がした。己のことを指す「カムパネルラ」に少しばかりの戸惑いと、それを受け入れる肯定とが微かに混ざった声色で。いい声だと内心で思った。広がる窓辺の夜景に、あの穏やかな声音はきっとよく似合っていた「……晴匡、かぁ。ええ名じゃ」小さく喉を鳴らして、くつくつと笑う。すっかり馴染んだように発音してから、軽く片手を挙げて応じるように「烏でええよ。変に気ぃ遣われるんも、性に合わんけぇな」そう伝える。己についてを問いかける流れがあまりにも自然体だった。探るでもなく、図るでもなく、ただただ、目の前の烏という存在を面白がってくれている。それだけが伝わってきて、思わず毒が抜けるような気がしていた。息を一つ吐いて、外の星を追うように細い目を向け、肩を背凭れに預けながら小さく頷き伝える。「この列車にはなァ、ちいとばかし“決まりごと”があるんよ」人好きのする笑顔でゆるく笑いながらも、その声音には低く沈む重さがあった。冗談の皮に包まれた言葉の芯には、ひやりとした現実が宿っている「守らんかったら、帰れんようになる。どこにも、じゃ」もっと焦らしてから伝えようと思っていたのに、ああ、簡単に言うてしもうたと、自分の唇からこぼれた言葉に内心で小さく目を見張っていた。こんなふうに、誰かに対して対価も無しに情報を差し出すなんて。けれど今は、それが惜しいと思えないほどに目の前のこの男の温度がちょうどいい。そう感じてしまったのだった。切り替えるべく咳払いを一つ。まるで湯気の立ちすぎた湯呑をいったん脇へ置くように、己の熱を冷ます仕草。次に目を合わせたときに瞳の奥にはやんわりとした毒と甘さが戻っていた。「……けどまぁ、つまらん話ばっかしじゃ退屈やろ?」ちょいと指先に乗せて見せたのは、一枚の古びた銀色のコイン。かすかに歪んだ縁の、使い込まれたそれを彼の方へ差し出しながら、にこりと笑って「まずはこれ、よう見てつかぁさい。イカサマなんぞ仕込んどらん。裏表、ちゃんとしとる。……確認、した?」片目を細め、色眼鏡の奥からいたずらっぽく覗き込む。微笑は保ったまま、しかしその熱はどこか挑発的で、目の前の相手の心に指を添えるようだった。「今から、表か裏か──ひとつ、賭け事しようや。あんたが勝ったら、俺ァ“その大事な決まり”をひとつ教えちゃる」ことさらさらりと、その価値を言い下ろして見せる。その実、その“決まり”が命に関わるほど重大であることを知っているのはこちらだけだと言うのに。「ほいじゃが、俺が勝ったら──あんたの“大事なもん”を、ひとつ貰う」そう言って、しれっとした顔のまま唇の端をわずかに上げて微笑みを見せて「……乗るか降りるか。さて、どうするね、晴匡さん?」問いかけは、まるで軽口のように。けれどもその声音には、背筋を撫でるような滑らかな悪意があった。遊戯と知りつつ抗えぬ蜜を用意した烏座は、まさにそんな言葉で彼を誘っていた)




200: リズ・フェリシティ [×]
2025-05-14 04:31:45




>蠍座

( ふたりだけの声が響く車内、静寂を震わせる声はどこまでも愉快げにこの場を支配していた。くるりと宙を描く彼の手のひら。その中にあったもの、小狐座がしたこと。彼から語られる事実に取り繕うことも忘れ、ただ目を丸くする。微かに動揺したように視線を泳がせ、葛藤に揺れ動く瞳がその内容を受け入れ難いとも、先程彼があげたような馬鹿と思わず肯定したくなるような気持ちで子供のようにぎゅっと眉間に皺を寄せて「……ホント、ヘンなヤツ。」数秒の間ののち、僅かに目を伏せ、そう短く言葉を落とす様はどこか噛み締めるようにも、確かに彼との友情は存在したのだと、その喜びを隠すようにもツンと跳ね上がっていた。たった一度きり、それも彼らからすれば瞬きの間共に過ごしただけのジョバンニと彼自ら友人と称する蠍座を比べて、こちらを優先するなんておかしなことだ。彼のそんな一面が、やっぱり好きだった。そんな中、目の前で不敵に笑みを形作り、それ相応の色香を纏わせる彼が小狐座を語るとき、その無邪気さはすこし異質で。彼の危険性を知らぬものならその差にくらりときてしまうのだろう。しかし、その姿はまるで自分に意見した小狐座を愛でるように自分には感じられる。…そして、その言葉の裏に滲んだ感情。ちくりと刺さるそれに何かを察する。つまり、結果はすべてこちら次第なのだろう、と。タイムリミットとは銀河ステーションに着くまで。ぐっと迫った距離間、その艶やかな視線を一身に受けて唇が僅かに水音を立てた。「…アラ、アタシの友達がごめんなさいね」小首を傾げて、ゆっくりと笑みを作る。誘うように唇を甘く彩るカシスを歪めて、纏う雰囲気を少しずつ変化させていく。「そ、女のコはすこし気が強い方がカワイイでしょ?だから、そんな女が考えてることなんてカンタンよ」不利、なんて言っているが小狐座がどう言おうと彼はきっと変わらない。同じく人を動かし、支配することに悦楽を覚える。自分はそう言った相手に…。「___どうやったら、カムパネルラ1キケンな蠍座を出し抜けるか。それだけをさきっから、ずうっと考えてンの。無傷でここから逃げて、他のカムパネルラにどう自慢してやるかって、考えてるの。」そんな相手に、歯向かうのが大好きだ。内側に秘めたスリルと刹那主義、本能の狭間に住み着く獣性を晒すように、にいっと悪戯っぽく口角を上げる。先程までの警戒、それを大きく凌駕するほどの、刺激を欲するオンナの表情。「ま、アタシをブン殴って、彼の作るご飯を抜かれるアンタも見てみたいけどね。」くるりと楽しげに喉を鳴らし、戯けたように口角を持ち上げる。まるで野良の動物が腹を見せ懐いたように思わせる素振り、しかしその合間にも相手を観察する手は止めず、瞳はうすく細めたまま。彼と小狐座が引いた安全という境界線を、まるで子猫が悪戯をするように引っ掻く。もしそんなことになれば無事で帰れる保証はないと理解した上で、敢えてそう口にしたのは、彼の言う”見えていない考え“をちらつかせるもので。「…ねえ、嫌いじゃないでしょ。こういった、”馬鹿で可愛い女”。」悪辣に、確かに少女めいた瞳で先程の彼の言葉をなぞる。ふっと頬杖を解いて、伸ばした先は彼の頬。躊躇いもなくひたりと手のひらと頬を触れ合わせ、欲に濡れギラつく瞳で笑いかける。彼の猛毒のことは知っている、その上で彼に触れたということは彼に対する挑発の程度を探るようにも、奇しくも同じく許されるラインを見極め、そしてその上を踏みつけ、そのギリギリを弄ぼうとする意地汚い心から。しかし、その指は微かに無意識からの震えを纏っていたし、主導権を奪い取ろうと必死な子供のようにも、絶対的な王者の瞳には写ってしまったかもしれない、 )




201: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-14 19:45:35



>烏座


(頷いた彼の口から転び出た“決まりごと”の話に、心臓と喉に巻き付く焼けた鉄枷が、ぐっと引っ張られたような焦燥を起こす。それは取り繕う暇も無く僅かに見開いた目にも、もう一度問い掛けんとして失敗した微かな掠れ声にも顕れた。規則を守れ、規律に従え、さもなくば――頭の奥で唸る強迫に、とっくに治った筈の火傷が一瞬熱く痛む心地がして、薄いグローブ越しに右手の甲を撫でさすったのは無意識の事。それも次に彼と目を合わせる頃には表面からすっかり隠して、「ほう。したら面白い事ば企んどるんか?」そう打った相槌に応えるように取り出された一枚のコイン。それに行き着く前に彼から受けた視線の温度が、この心臓の枷に伸ばされた指先のようで、ゆったりとだが思わず目を逃す。「ああ、種も仕掛けも何も無ェ。」逸らした目線の名目上は言われた通りの確認。コインが只の古い硬貨でしかない事を確かめたと是を返した後、明らかな意図を持って問う男。その賭けは単なる遊びで天秤に互いを掛けたようで、その実此方には選択肢など最初から有りはしない。あっという間に袋小路まで追い込まれたも同然の状況下だと、理解するのに時間は掛からなかった。だが、それでも。「……そったら訊き方は野暮じゃァねえのけ、烏君?」狼狽して震える事も、頼み縋る事も無く、咎めるような冗談をけろりと軽やかに投げる。――人より隠す弱味が多かろうが、それで損や苦労を抱えようが、こうして悪意が肌を滑ろうが。情緒も風情も台無しにする情けない醜態を易々晒すほど、己は性根の脆い男ではない。「ああ、乗った。俺ァ表さ賭ける。」罠を構えた狩人を前に決して項垂れず、その穏やかで鷹揚とした態度を崩さない雄鹿の如き浪漫家の矜持で強がり、背筋をぴんと伸ばして。己は彼の思惑に捕らわれたのではなく、自らの意思で向けられた蜜を飲み干すのだと微笑む悠々たる視線で彼を見据え、そう言い放った。)




202: 蠍座 [×]
2025-05-15 18:33:09


>リズ

(近い。いや、近づけさせているのは自分だ。まるで毒に酔うかのように、彼女は目の前の“蠍”に自ら触れに来る。怯える小狐とは違う賢く美しい女狐のように、気まぐれに愛嬌を振り撒いてみせながら、その指先は計算された挑発を孕んでいた。たとえばそれが殺意にも似た本能の衝動だったとしても、一向に気にしない。ただ愉快げに、気分のままに喉を鳴らすだけだった。カシス色に濡れた唇からこぼれた言葉は“馬鹿で可愛い女”。それを咎めもせず、訂正もせず、ただ受け取るように笑んでから明確な恐怖を宿しながらも逃げず、媚びながら牙を隠さず、かと思えばその牙をわざと晒して嗤ってくるそんな彼女に好感を得ていた。彼女の姿を少しも逸らさずにじっと見つめ返す。視線を逸らすなんて選択肢は最初から存在しないというように、ただただじっと。華奢な手のひらが自らの頬に触れた瞬間、その冷ややかさすらも可笑しくて。ふいに緩く目を細めてから首をわずかに傾けて彼女の指先に頬を預けるような仕草をして「へえ……震えてんじゃん」喉の奥で笑うように囁かれる声は、薄く皮肉を塗した愉悦の音だった。指先の震えを見逃すほど、この男の観察眼は甘くなかった。むしろ、その震えすら彼にとっては“可愛い”という評価対象になっていた。まるで玩具の細部を舐めるように撫でていくような目で、彼女の頬に、まつ毛に、化粧の濃淡にすら視線を這わせて「……いいねぇ。やっぱさ、可愛くて馬鹿な女ってのは、見てて飽きない」す、と彼女の手を取る。触れるのではなく、絡め取る。そうすることで、物理的に“優位”を誇示する。爪の先で、彼女の手の甲をなぞるようにゆっくりと滑らせながら、視線はただ一点、彼女の瞳にだけ注がれ続けた。「……あははっ」それから高らかと楽しげに漏れた声は、あまりにも素直で、だからこそ狂気じみていた。小さく震える肩。笑いすぎて滲んだ涙が膜となり大きな瞳を覆い隠し、頬を滑り落ちる寸前に雫を指先で拾う。拾って、つま先で床へ落とした。それが“毒”であることに言及するまでもなかった。「つーかさ、俺のことを隠してたなんてさ。あのアンドロメダも、意外と独占欲あるんだな」皮肉混じりの笑みとともに口元が吊り上がる。笑っている。けれど、怒っていないとは言っていない。知っていて隠されていた、それだけでこの男の“興味”は彼女へと濃く、深く、致命的に染まりつつある。次の瞬間、彼女の手に添えられた指が、するりと彼女の頭部へ頭蓋ごと捕まえてしまうように耳の裏へ撫でるように移動した「で? 噂の蠍に会った感想は?」ぎょろりとするほど大きな目が彼女の顔を覗く。吐息を混じらせた声が、すぐそこに。悪意と戯れ、愛情と死を同時に携えるような距離感で。舌先で舐めるような言葉運び。愉快そうに、傲慢に、確信的に問いかける。「……自分で言うのもなんだけどさ、いい男だったろ?」不敵に笑うその顔は、ひたすらに支配者のもの。誰かの意思に左右される気なんて最初からない。好みで手を伸ばし、飽きたら棄てる。けれど、今の“遊び”はそう簡単に終わらせる気はないと楽しそうな顔が物語っていて)



203: 烏座 [×]
2025-05-15 18:33:22



>鹿子

(車内を満たしていたのは、静寂とわずかに軋む車輪の音。にもかかわらず、彼が高く跳ね上げた銀色のコインが天井近くでくるくると舞い、再び彼の手の甲に落ちて音を立てた瞬間にその沈黙に裂け目が生まれた。「……カカカカッ!」乾いた笑いが、裂け目から覗いた黒の羽ばたきのように響き渡る。笑っていた。喉の奥底から愉快げに鳴くそれは、ただの失笑でも、侮蔑でもない。勝負に敗れたことを、心から楽しむものの声だった。「ははァ……まいったまいった。ホンマ、つっよいのぅ、お前さん。」少し肩を竦めて、わざとらしいほどに目を細めて笑ってみせる。演技じみた身振りにこそなってしまうが、しかしその内側で湧き上がる感情は紛れもなく本物。紛れもない好奇心がまるで猫のように、あるいは獲物を前にした猛禽のように、確かな重さを持って胸の奥に沈む。鹿子晴匡。今一度彼の名前を舌の上で転がした。ふうん、と鼻で小さく笑うと、コインを持ち上げて陽の入らぬ車内にかざし、表面である事を確認する。間違いない。これはもう、彼の勝ちだ。「……そいじゃ、ひとつ目の景品をやらんといけんのう。」す、と目を細めたままに優雅な所作で手首を返し、コインを指の間でくるりと回しながら、口元に愛想の良い仮面のような笑みを貼り付けた。笑みの“かたち”ではあっても、それは一切の温もりを含まず、猛禽がその黒い嘴の奥に骨まで砕く力を隠しているようにも似ていた。「ええか、晴匡さん。こっから先、銀河鉄道が停まる駅は、ひとつ、ふたつ……」言葉に合わせて伸ばした指を一本ずつ折っていく。まるで呪文のように、ひとつひとつの名を丁寧に言葉へ変える。「“鷲の停車場”に、“新世界交響楽”の流れる“小さな停車場”。ほいで、“蠍の火”にな、“ケンタウルの村”。“サウザンクロス”、んで“石炭袋”。そんで“銀河ステーション”じゃ。」ぱちん、と指先を弾く音が、小さな合図のように空気を震わせた。「お前さんは、この駅のどれかで……ぜったいに降りにゃあならん。ええか?絶対、じゃ。のうたりんのフリしとっても、その時が来たら……降りなければぜ~んぶ終わりじゃ」コインを再び弾く。高く、高く。今度はわざと、さっきよりも派手に。回転の軌道は僅かに乱れながら、しかし的確に彼の手の甲へと帰還した。パシ、と音を立てて覆われるその硬貨。「さて……どうするかのう?」柔らかな声音で、低く潜ませた声。けれどその笑みの裏には、問答無用の支配欲と、試すような苛烈さが混じる。「続きが気になるんじゃったら……ゲームも続けるしかないじゃろ?」そう言って、手の甲をゆっくりと持ち上げる。指が離れ、露わになった銀の硬貨は再び、“表”。その事実を確認する前に、彼の眼を捉えていた。逃がさない。たとえ微かな揺れでも、鼓動でも、眉の動きでも。すべてを観察する目で射抜いてみせる。「運も実力のうち、っちゅうがな。お前さん……つくづく面白い男じゃ。」声色が僅かに熱を帯びる。さっきまでの遊戯めいた響きではない。もっと、獣じみた気に入った相手へ向ける特別なそれで)次は……どっちじゃ?晴匡さん。



204: カムパネルラ [×]
2025-05-16 10:42:13



蠍座「あぁ……つまんない。どうしてお前たちはいつも“目を逸らす”んだろうな。俺という劇薬を前にして、その程度の覚悟で立っていられると思ったのか?──まあいい。今からでも見つめなよ、たった今、お前の“死に場所”を塗り替えてやるからさ。ほら、早く乗れよ、じゃないとお前を置いて発車しちゃうぞ」



○ 世界観 ○
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〇 提供 〇
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〇 好み / 萎え 〇
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205: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-16 20:21:00



>烏座


(耳を澄ませる程に投げられるコインに集中していたものだから、沈黙を裂くその音がいやに鋭く突き刺さる。しかしそれに仄かな安堵の息を溢したのは、続く彼の言葉に賭けの結果を知ったからこそ。「そりゃァ、男だはんでの。」言葉ではそう告げたものの、正直こういった強さに男も女も関係は無いだろう。だが少なくとも、今自身を奮わせたのはそんな昔ゆかしい大和魂の度胸だと、此方からも笑い返す。その直後にまた変わる空気を感じ取れば、また気を引き締めて彼の仕草ごと“景品”を確と清聴する。「……なるほど、こりゃ重大だの。」この列車の名、停まる駅の名、すべき事。そこに殆ど独り言の相槌を落としながら、言葉の他に読み取れるものを探して改めて彼の表情を窺った。しかしそこに在ったのは出会い頭に浮かべていたものと同じようで全く違う、薄ら寒く底の見えない笑顔。それに明白に向けられた、捕食を想像させる熱と声。そこから得られたものは彼の抱く欲の一欠片と、それに気付いてぞくぞくと走った己の背の粟立ちのみだ。つ、とほんの一瞬目を逸らす仕切り直しの後、再び彼を見据える。「そりゃァ勿論続けるとも。全部聞けねば終わってしまるからなァ。」頷く声は平静を保っていれども、刻限の不明が己の焦りを煽って拍動を早め、呼吸は些か苦しく浅く、瞳の焦点が僅かに揺れるのを誤魔化すように瞬く回数も増える。落ち着け、と命じた頭を巡らせる――ここまで詰められている時点で、謀略も腹芸も彼には敵わない。此方が察しきれぬ企みだってあるかもしれない。なればそう、やるべきはたった一点の防衛戦。勝っても負けてもその嘴が己の枷に触れぬよう、全霊を以て尽力するのみ。腹を括るその際にもう一度、やはり無意識に右手を撫でて覆った後に、「いやァ、あんまし褒めたって、なぁんも出ねェよ。ほれ、こん通り。」顔の横まで両手を持ち上げひらひら蝶々の如く揺らしてにっかりと、上がったまま戻らない鼓動の苦しさを抑えた音で冗句の常套句を放る。――コインは既に投げられた。イカサマが無いのなら確率は表裏半々、そして悩んだ所で結果は変わらない。「裏。……どうだ?」故に迷わずすっかりきっぱりと賭けに答えながら、震えども退かぬ覚悟をしなやかに宿した瞳で、此方を射抜く彼の視線を真っ直ぐに受け止めていた。)




206: 烏座 [×]
2025-05-16 22:30:19



>鹿子

(──表だ。開いた掌に現れた硬貨の顔を見てまず目を細めた。隠しきれない笑みが、嘴のように鋭利な唇の端を持ち上げる。まるでそれが最初から決まっていたかのように、動きに一寸の迷いもなく飄々とした声で結果を伝える。「おお、また表じゃの。……ほいじゃあ、ワシの勝ちっちゅうことかいの。」声は軽やかだ。列車の音にさえ紛れず、浮かぶような調子で。だがその裏に張り詰めた糸のような愉悦が通っているのを、彼の聴覚は見逃さなかったに違いない。選択肢など与えられたようでなく、勝負の形をしてはいるが実態はただの誘導で彼の言葉通り、”理不尽極まりない”ゲームだった。それでも、彼は怯まず一歩も退かなかった。それが何より面白くてピカピカと輝いて見えた。手の内を読まれているとわかってなお、笑っていられる度胸。それが良い。「まあまあ、二分の一じゃけぇ、そういうこともあるけぇな。……落ち込んだらいけんよ?」慰めとも煽りともつかぬ声色で、楽しげにそう言う。言葉だけは優しい。だが、その実で舌先ではなく視線の先に既に標的を定めていた。それは彼が無意識に何度も撫でていた右手の甲。グローブ越しに隠された何か。意図せず手癖が出てしまうほどの“何か”がそこにある。欲しかったのは、賭けの結果ではなく、そこに刻まれているであろう“理由”だった。「……晴臣さん。」わざとらしく、くるりと首を傾けてみせる。黒羽根をそっと撫でるような柔らかい声で彼の名を呼び、コインをしまいながらゆっくりと、しかし真っ直ぐに彼の手へと手を伸ばす。「俺ァ、あれが欲しい。」にっこりと、屈託のない笑顔を浮かべる。色眼鏡の奥で形を変えた笑みは、捕食者のそれ。食卓に並んだ一皿に手を伸ばすような、当たり前で当然の欲望。「晴臣さんが……ずっと大事そうにしとるけぇ。なんか、俺も欲しゅうなったんよ。」それはまるで子どもが兄の持ち物に憧れるみたいな声音だった。だがその言葉の端に隠された、“それを隠そうとする理由ごと欲しい”という濁流のような意志は、無垢な風を装ってなお余りある熱を孕んでいる。「くれるじゃろ?」視線はまっすぐ。けれど優しい笑顔を崩さない。選ばせているように見せかけて、断れない空気をじんわりと作る、あくまでも上機嫌に残酷な静けさの中に沈んだ毒を、さらりと溶かして。その手が彼のものに触れるまで、ほんの僅かな距離を保ちながらその反応を待って。)




207: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-17 18:28:42



>烏座


おんや、残念。
(此度の賭けは負け。けれども問題は無い。勝敗は大事だが、一番はそこではないのだ。彼とは対照的に少しばかり大袈裟に肩を下げて落胆する仕草を取り、「ああ、次もあるはんでの。」彼からの慰めに答える傍ら、切り替える頭はその先に続くだろう罠の糸に備えて構え、口元を一度引き結ぶ。彼の視線の行く末は、追うまでもなかった。名を呼ぶいやに優しい声と伸びてきたその手から、反射的に避けようとした右手が微かに跳ねる。「……っ!」気付かれている。防衛の一線に踏み込まれるのは、想定していた事。しかしそれで尚動揺で心臓が絞められるのは、向けられる彼の笑顔に、注がれる言葉に、纏う空気に溶けた捕食の毒を捉えて飲んでしまったからだ。本来隠し事など不得手の喉が呼吸を詰まらせた数秒後、「……手にしたって、きっと気分の良いもんでねェよ。」今までよりも低く静かな声でそう予防線を張って、グローブの爪先を引いて黒布を外す。露になるのは、手の甲から五指の背の一杯まで広がる引き攣れとケロイド。そこに皮膚感覚など殆ど無いと一目で解る火傷の痕を晒し、握るも撫でるも好きに出来るよう、彼の指先へそれを差し出して、「子供ん頃、出先で火事さ遭ってねェ。こりゃァそん時の跡だ。こん跡な、そのまんまにしたっきゃ人ば怖がらせてしまっての。だはんで手袋で隠してるってェだけの、……」何でもないように軽々話す。その内容は確かに事実だが、あくまでも客観的な建前だ。求められているものではないと、言う側も聞く側も察せられて、それでも煙に巻いて肝心な部分から遠ざけようとする精一杯の不器用な言振り。――ここまでで止めればいい、そう考えていた筈だった。しかし、黒い羽根が退路ごと囲い込んでくるような、息苦しささえ感じる熱を含む彼の視線に、苦い笑みを形作っていた目は不意に膝元へ伏せられ、「……ありゃァ、とんでもねぇ大火事だった。」弱々しい音が溢れた。毒の回った舌が、勝手に紡いでいるような感覚だった。「逃げ道も見えねくなるような、人を、焼き尽くす、恐ろしい地獄のようで――」怖い、怖い、怖い、と呼吸が幾度も途切れて。丸めた肩と加減無く力の籠る手が、焦げ付く恐怖を雄弁に物語る。「――……罰ば、当たったんだ。きっと次は無ェ。」けれどそう、恐れるのは炎そのものではないと、最後に落とした一際か細い声が意味深に示す。そのまま項垂れた髪を左手でぐしゃぐしゃと掴み乱し、更に何かを言いかけて、しかしぐっと脚を踏ん張る仕草を切っ掛けにそれ以上を留まる。「……今の“景品”で言えんのはここまでだなァ。」核心である強迫の執着だけは、ぎりぎり話さなかった。そこまで吐き出して、こんな視線を注ぐ彼から“約束”なんて決まり事の鎖を枷に繋がれたのならば、己は何だって逆らえないと解りきっているから。「他に気になることがあんだら……」あともう一歩、些細な言葉であれ行動であれ、何か仕掛けられたら崩れる程の、酷い怯えが伸し掛かる顔を上げる。「……そうだなァ、」元より主導権も選択権も握れない理不尽の状況、景品が足りぬと今再び迫られたのなら、その瞬間に自分は終わると自覚しながら、眦と口端を無理矢理引っ張っただけの不完全な笑みを浮かべて足掻く。――その言動は最早、幼い子供が枕や玩具を投げ、“こっち来るな”と泣いて駄々を捏ねるのと変わらない稚拙さだ。「“遊び”ば続けるしか無ェな。」先刻聞いた物言いを借りたのは態と、情けなく震えた揶揄に近いそれに幾分かの心の安寧を図りつつ、彼の次の挙動に緊張を巡らす目を配る。)




208: 烏座 [×]
2025-05-17 21:02:41



>鹿子

(しんと静まった空気の中で追い掛けるように指先がゆっくりと動く。幾重にも予防をした上で火傷の痕が露わになったその手を彼が見せてくれたから、その手をまるで硝子細工のようにそっと包み込んだ。手の中に感じる温もりとざらつきが同時に脳へと沁み込む。哀れで、痛ましくて、それでいて綺麗だった。「……ええ手ぇしとるわ。ホンマに、うつくしゅうていけん。」かすれ気味に落ちた声は、驚くほど穏やかだった。ほんの数分前までのギラつきがなりを潜めた柔らかな声。火傷の痕に視線を這わせるその双眸には、軽薄な好奇心の色など欠片も無い。ただ真摯な、美への賛美だけがあった。掌で包んだ手をもう片方でも添え、慈しむように撫でながら続けて「賭けや遊びはさておきじゃ。おまえさん、今宵いちばんええもん見せてくれたわ。おおきにの……」囁くように、声だけでくすぐるように、そして心の芯を溶かすように。火傷の痕を、撫でる。皮膚の硬さを擽るように時折指先で円を描きながら。「見とれたわい……こりゃ最近じゃ一番綺麗なもんじゃけ。ほうじゃ、よう頑張ったのう。ええ子じゃった」その声音は、幼い子を宥めるようなやさしさに満ちていた。まるで酷い夢から目覚めた子供の涙を、掌で拭ってやるように。言葉のひとつひとつが、焼け爛れた記憶の上に絆創膏を貼るように滑らかだった。「罰が当たった?……アホ言いんさんな。そりゃあ神さまが焼きもち焼いたんじゃろ。晴臣さんはあんまりええ男じゃけぇのう。」くっと短く笑って、先ほどまで掛けていた色付き眼鏡を指先で摘み、無造作にテーブルの上へ置く。カチ、と乾いた音が鳴ったその瞬間、彼の目元がふと変わった。細かった瞳がすう、と真っ直ぐに開く。それは真剣に、全てを見ようとする目だった。見目ではなく、過去でもない、その奥の奥を暴きに行く目。そして、それが美しさを讃える時の礼儀だとでもいうように真っ直ぐに向き合うことにしたらしい。「こがぁ美しいもん、隠さんでええ。……ええか、俺ぁおまえさんの焼けた跡も、怯えた目も、喉の奥で震えた声も、全部が美しゅうて欲しくなった。」包むように触れていた指が、今度はそっと火傷の痕から離れて、身を乗り出すように彼へ体を寄せると頬へ向かった。まるで硝子よりも脆い何かに触れるように慎重に、愛しむように。「……ほいで、その罰の話の続きも、聞かせてくれんかの?」静かな声。だが、それは逃げ場のない問いだった。優しさという名の檻の中で、ゆっくりと扉が閉じていくような。「“景品”じゃ言うならゲームをするしか無いけぇ、何でも賭けてやろか。おまえさんの命よりも、おまえさんの持つ景品のが重いけぇの。」茶化しでも冗談でもなかった。伝える声は静謐で、ただ真っ直ぐな重みのあるもの。頬を撫でる手はまだ止まない。小さな子供が抱き枕を離さないように、指先を触れさせたまま宝物のように扱って)



209: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-18 14:10:04



>烏座


(焼けた肌に彼が触れる。何も感じない其処がむず痒くなる錯覚を覚えるほど、優しく、細やかに。張った警戒さえ緩やかに剥がされていったその先に、掛けられた台詞はあまりにも予想外だった。「烏君、そんな、綺麗なんて……」戸惑いに眉を下げる。それまでの強張りの解けた、出会った瞬間と同じ柔い懐っこさのあるその表情を苦笑いに変えて、冗談混じりの否定を口にする。が、重なった言葉の温度に、それは半端なまま切れてしまった。次の一手を見失って、また顔を伏せてしまった沈黙の中に鳴った音。はっとして上げた目は真っ直ぐな瞳とぶつかって、たじろいだ身体が息を飲む。その隙に迫る彼岸花の如き赤が、紡がれる真摯な言の葉が、頬へ添う掌の繊細さが思考を奪って、冗句も強がりの覚悟も何処かに掻き消していった。はく、と声を忘れて一度空振った唇が、ゆっくりと空気を肺に満たした後、「……罰ってェのは、悪ぃ事ばしたら当たるもんだろう?」話すまいとしていた筈の続きが溢れた。こうなればもう、止められはしない。「あん日もそうだ、俺ァお家の決まりば幾つも破った。俺が、父様と母様の言う“正しい子”でいねかった。そんな悪ぃ事ばしたはんで、神さまは怒って俺さ罰ば当てた。」訥々と拙く、泣きそうに顰めた顔で語っていく。何処にだって在る微笑ましい反抗が、凄惨たる火の海に焼き潰された刹那を。「だから俺ァ、恐ろしい。また決まりば破れば、約束が守れねェば――あん日と同じに、罰が……」その時からがちりと巻き付いた枷は苦しくて堪らなかったのに、親に責められた幼い後ろめたさに相談の道を自ら断って。誰にも言えずに歳月を経た今、それは最早呪いと大差無いほど己を縛って焼いている。――いつしか言葉通りの怯えを隠せなくなった背は小さく丸まり、話も遂に涙で途切れて。「なあ貴方さん、頼む。……頼む。此処の決まりをちゃんと教えてけろ。俺ァ“正しい人”でいねばなんねェ。」不意に、ふらりと上がった右手が彼の肩に落ちる。服を掴む指は懸命で、しかしかたかたと酷く震えて力が上手く籠められていない。「あんな地獄はもう嫌だ。どうか、どうか……っ、」蜘蛛の糸に縋る必死さで、助けてくれと声を絞り出した。この己の名にある“匡”の字を、そっくりそのまま体現する枷の何もかもを彼に晒して、矜持も何も無い少年のようにそう懇願を繰り返す。)




210: 烏座 [×]
2025-05-19 09:08:00


>鹿子

(自らの肩に未だ力なく落ちている手を横目に見ていた。推測でしかないが、頼るということすらも彼にとってはきっと罪に近かったのだろう。そう考えると、震えるその指先がひどく尊く見えた。そう思うと短く酸素を吸い込んでから深く吐長く吐き出した。無自覚に浮かぶのは彼を手篭めにしようとする明確な悪意であり、それを振り払うようにして一度だけ目を伏せ唇に笑みを戻して「……晴臣さん。アンタ、自分が俺のタイプじゃったことに、感謝したほうがええわ」そんな風に軽口のようにそう言って、肩に添えられた手をそっと握り返すようにして外した。一度距離を取り椅子の背もたれに身を預けると、彼へとまっすぐ視線を向ける。「ほいで、聞きたかった“決まり”の話じゃがな」声のトーンは低く落ち着いていて、それでいて言葉一つ一つを丁寧に扱うように続けられて「次に寄る駅は……さっき言うた通りじゃ。途中で降りたら、そこがどこの時代の、何の世界に繋がっとるんか、もうわからんくなる。正しゅう降りる場所っちゅうんは“銀河ステーション”だけ。そこが終点じゃ。もし乗り遅れたら、たとえ次の電車に乗れたとしてもアンタの今まで暮らしとった場所には、もう戻れん。……それが、この汽車の決まりなんよ」淡々と語るその調子は、どこか鉄道の案内放送にすら似ていた。決して情に溺れることなく、だが冷たくもなく。ただ、乗る側がそれをどう受け止めるかだけの問題だというように。それでも、ふいにその声音が和らぐ。「じゃがな、アンタが“正しい子”やなかったけぇ、俺と出会えたんよ」今度は彼の瞳をまっすぐに見つめて、言葉の重さを変えるように、静かに語りかけた。ふ、と空気が止まったような一瞬が生まれる。火に焼かれた過去に囚われながら、それでも今を生きている彼だから今こうして強い興味と好感を抱いたのだ。「ほんなら、“罰”ちゅうんも、少しはわるぅないじゃろ?」緩やかに笑みを浮かべて言ったそれは、決して慰めではなかった。罪を肯定するのではなく、それを越えて続く縁の価値を提示するような声音で「どこまでが正しゅうて、どこからが間違いか、そがぁなもんは人の都合で変わる。けど、アンタが“正しゅうありたかった”気持ちは大事にしておやり。」そう言って身を乗り出し、再び彼の傍に寄った。真っ直ぐな目で彼を見つめながら。次にするのはそこまでの決まりを話した上で彼という男をこの夜に縛る行為だった。そこには甘い毒のように彼を残そうとする不純な動機が浮かんでいた)晴臣さん。ここまで話した上で言うが、アンタ俺と一緒に居ったらええよ。ずっと可愛がっちゃるけぇ

211: 鹿子 晴匡 [×]
2025-05-19 21:56:05



>烏座


(懇願の隙間に彼の声が滑り込む。その言葉の額面通りの意味は理解したが、今そう告げた真意までは読みきれない。少しばかりぽかっと間の抜けた顔を思わず上げたとほぼ同時に、己からも己の手からも彼は離れていった。続けて此方が先の事を問うより前に、静かな音で置かれた最重要事項に崩れきっていた姿勢をさっと正し、一言一句聞き漏らすまいと相手を見据える。「銀河ステーション、で降りる。……そうかァ、それが決まりか。」彼の話す声は至極落ち着き払っていた。だがそれは冷淡ではなく、摯実さを感じさせてもらえるものだったからだろうか、聞き終わる頃には怯えも震えも、いつの間にかすっかり凪いでいた。ふっと一つの区切りに息を短く吐き、肩を下ろした安堵の合間、届いたそれは自分には思い付く事の無かった発想であり、価値観であった。「……そうだなァ。うん、確かに悪くねェ。」じっくりと噛み締めるように、それでいて何処か嬉しそうな温かさで呟く。――己にあの罪と罰があったからこそ、そこを乗り越えたからこそ、この奇跡の如き夜にて彼と縁が繋がった、など。そんな浪漫も、案外素敵な話だった。「ありがとうな、烏君。」己に巣食うものが、解かれていく。ただひたすらに囚われていた心が緩んで、随分と呼吸がし易くなった。一度ゆっくりと瞬きをしながら、深く息を吸い込んで礼を告げた直後。忘れていた毒が彼の瞳から己の瞳へ垂れ込んで、その油断しきっていた不意を突かれた驚きを、瞠目に顕した次の瞬間、「…ふ、ははっ!貴方さん、ほんに悪いお人だの。」溢れたのは楽しげな笑い声、それに朗らかな軽口。「でもごめんなァ、烏君。俺ァ降りねばならんよ。……決まりだから、だけじゃァねェ。俺ァ俺ん時代と世界を、貴方さんの言葉と一緒にもうちっと歩いてみてェはんで。」それから迷う事の無い明確な拒否を。けれどもその理由は枷の為ではなくて――彼がくれたこの光を通した自分の世界に、前以上にきっと新しい何かがあると思えて、それを見てみたいと心が疼くから。「……ただ、そうだの。もし……もしな、俺が歩くのば止めた後で、また烏君さ会えたったら。そん時にまだ、俺ん事ば“綺麗だ”って烏君が思ってくれたったら――」しかし一度、顎を指で擦って目を泳がす、悩む仕草を数秒程行って。また視線を合わせ直してゆったりと紡ぎ始めた話はあまりにも遠い、あるかも解らない、冗談にすら聞こえる夢物語。だけれども、「――もういっぺん、今と同じ事言ってけろ。そん時ゃ必ず、貴方さんの思う通りになる。」そんな事が叶ってほしいと、本気で願ってしまう。それ程に今夜の終わりが惜しいと、彼へ抱いた情が言葉を柔く甘く色付け、注ぐ眼差しに仄かな幽艶を負わせる。「俺ァ、そう“約束”する。」とん、と。小指を立てた右手を自らの心臓の上に添え。その次に、慣れない事をするほんの僅かな気恥ずかしさを含む唇を一旦結んでから、その右手を彼の方へと向けて。「……烏君は、どうだ?」己からの“約束”の重さは、枷の全てを晒した彼には伝わっている筈。だからこそ、差し出した小指にはおずおずとした遠慮を、彼を映す瞳には純粋な甘さの奥に不安を滲ませていた。)




212: 烏座 [×]
2025-05-20 08:58:34


>鹿子

(あの静かな告白を終えた彼が、小指を立てて胸に添え、それをこちらへと差し出してきた時。その仕草はひどく慎ましく、それでも確かに「誓い」としての重みを持っていた。彼の瞳に宿る光は、これまで見せてきたどれとも違っていた。かつては罪に苛まれる影が、しがらみの奥で蠢いていたが、今のそれは違う。薄く不安を滲ませながらも、透明な願いと、微かな希望の灯が滲んでいる。その変化を見逃すほど、無頓着な性質ではなかった。真っ直ぐな眼差しで交わされる“約束”の提案に、心の奥が、静かに波打った。決まり事を守ろうとする、その誠実さ。己が選び取った道に迷いながらも、その足を止めず進もうとする姿勢。「……ほうかアンタぁ、益々、綺麗になったのう。」思わず、吐息のような声で呟いた。彼のその手に、己もゆるりと指を伸ばす。子供の頃、誰かと交わした幼い誓いのように、小指と小指を絡ませる。指先の熱が、ほのかに伝わった。その温もりは、思いの外柔らかくて、破っちゃいけんよと。声にせずとも、それを伝えるように指をきゅっと引き寄せた。「……おう、しゃあないのう。そんな風に言われてしもうたら、ワシはもう、晴臣さんの好きにさせちゃるしかないわ。」落ちた肩を、ゆっくりと持ち上げる。先ほどの芝居がかった落胆を少しだけ引っ込めて、改めて彼を見た。正面の彼はどこまでも愛おしく、綺麗な男だった。今彼を手放すことはとても惜しいが、下拵えだと思えば悪くないと思わせるほどに。それなら今できることをしようと、そう思えた。テーブルの上、少し前に置いたサングラスへと手を伸ばす。うっすらと紫が滲んだ、烏の羽根のような色合いのレンズ。ほんのりと星が煌めきとして埋め込まれたそれはこの世界のどこを探しても、烏座にしか持ちえぬ代物だ。誰の目にも、これが烏のものであると分かるはず。「……ほれ、これはワシからの“おまもり”じゃ。」そんな色眼鏡をそっと手渡した。彼の手の中に収まるように、少しだけ角度を調整して。「ワシと次、会えるんがいつになるか分からんけぇ……それまでのあいだ、他のカムパネルラに殺されんように、な。」わざと軽く言う。けれど、言葉の奥には、本物の心配と祈りを込めていた。彼が無事でいることを、願わずにはいられない。手放した彼が、複数いる危険なカムパネルラによって壊されないようにと、今できる最善だと思った。「大事にせえよ。無くしたら、怒るけぇね。」笑みを浮かべたその声音は、どこか真剣さを滲ませていた。まるで、次に彼と再会するその時を、夢見ているかのように。再び彼の瞳を覗き込むと、ほんの少し前までは、触れれば壊れそうだったその心が、今はしっかりと根を張り、光を宿している。そうだ。彼は、決して脆くなんかない。ましてや己との時間を経て強くなった訳じゃない。ただ、本来の彼に、ようやく出会えたのだと気づく。軽口をひとつ添えればクッと喉を鳴らして短く笑い)……んで、約束したんじゃけぇな。忘れた言い訳なんぞ聞かんけぇ。



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