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オリジナルキャラなりきりチャット
自分のトピックを作る
209:
鹿子 晴匡 [×]
2025-05-18 14:10:04
>烏座
(焼けた肌に彼が触れる。何も感じない其処がむず痒くなる錯覚を覚えるほど、優しく、細やかに。張った警戒さえ緩やかに剥がされていったその先に、掛けられた台詞はあまりにも予想外だった。「烏君、そんな、綺麗なんて……」戸惑いに眉を下げる。それまでの強張りの解けた、出会った瞬間と同じ柔い懐っこさのあるその表情を苦笑いに変えて、冗談混じりの否定を口にする。が、重なった言葉の温度に、それは半端なまま切れてしまった。次の一手を見失って、また顔を伏せてしまった沈黙の中に鳴った音。はっとして上げた目は真っ直ぐな瞳とぶつかって、たじろいだ身体が息を飲む。その隙に迫る彼岸花の如き赤が、紡がれる真摯な言の葉が、頬へ添う掌の繊細さが思考を奪って、冗句も強がりの覚悟も何処かに掻き消していった。はく、と声を忘れて一度空振った唇が、ゆっくりと空気を肺に満たした後、「……罰ってェのは、悪ぃ事ばしたら当たるもんだろう?」話すまいとしていた筈の続きが溢れた。こうなればもう、止められはしない。「あん日もそうだ、俺ァお家の決まりば幾つも破った。俺が、父様と母様の言う“正しい子”でいねかった。そんな悪ぃ事ばしたはんで、神さまは怒って俺さ罰ば当てた。」訥々と拙く、泣きそうに顰めた顔で語っていく。何処にだって在る微笑ましい反抗が、凄惨たる火の海に焼き潰された刹那を。「だから俺ァ、恐ろしい。また決まりば破れば、約束が守れねェば――あん日と同じに、罰が……」その時からがちりと巻き付いた枷は苦しくて堪らなかったのに、親に責められた幼い後ろめたさに相談の道を自ら断って。誰にも言えずに歳月を経た今、それは最早呪いと大差無いほど己を縛って焼いている。――いつしか言葉通りの怯えを隠せなくなった背は小さく丸まり、話も遂に涙で途切れて。「なあ貴方さん、頼む。……頼む。此処の決まりをちゃんと教えてけろ。俺ァ“正しい人”でいねばなんねェ。」不意に、ふらりと上がった右手が彼の肩に落ちる。服を掴む指は懸命で、しかしかたかたと酷く震えて力が上手く籠められていない。「あんな地獄はもう嫌だ。どうか、どうか……っ、」蜘蛛の糸に縋る必死さで、助けてくれと声を絞り出した。この己の名にある“匡”の字を、そっくりそのまま体現する枷の何もかもを彼に晒して、矜持も何も無い少年のようにそう懇願を繰り返す。)
210:
烏座 [×]
2025-05-19 09:08:00
>鹿子
(自らの肩に未だ力なく落ちている手を横目に見ていた。推測でしかないが、頼るということすらも彼にとってはきっと罪に近かったのだろう。そう考えると、震えるその指先がひどく尊く見えた。そう思うと短く酸素を吸い込んでから深く吐長く吐き出した。無自覚に浮かぶのは彼を手篭めにしようとする明確な悪意であり、それを振り払うようにして一度だけ目を伏せ唇に笑みを戻して「……晴臣さん。アンタ、自分が俺のタイプじゃったことに、感謝したほうがええわ」そんな風に軽口のようにそう言って、肩に添えられた手をそっと握り返すようにして外した。一度距離を取り椅子の背もたれに身を預けると、彼へとまっすぐ視線を向ける。「ほいで、聞きたかった“決まり”の話じゃがな」声のトーンは低く落ち着いていて、それでいて言葉一つ一つを丁寧に扱うように続けられて「次に寄る駅は……さっき言うた通りじゃ。途中で降りたら、そこがどこの時代の、何の世界に繋がっとるんか、もうわからんくなる。正しゅう降りる場所っちゅうんは“銀河ステーション”だけ。そこが終点じゃ。もし乗り遅れたら、たとえ次の電車に乗れたとしてもアンタの今まで暮らしとった場所には、もう戻れん。……それが、この汽車の決まりなんよ」淡々と語るその調子は、どこか鉄道の案内放送にすら似ていた。決して情に溺れることなく、だが冷たくもなく。ただ、乗る側がそれをどう受け止めるかだけの問題だというように。それでも、ふいにその声音が和らぐ。「じゃがな、アンタが“正しい子”やなかったけぇ、俺と出会えたんよ」今度は彼の瞳をまっすぐに見つめて、言葉の重さを変えるように、静かに語りかけた。ふ、と空気が止まったような一瞬が生まれる。火に焼かれた過去に囚われながら、それでも今を生きている彼だから今こうして強い興味と好感を抱いたのだ。「ほんなら、“罰”ちゅうんも、少しはわるぅないじゃろ?」緩やかに笑みを浮かべて言ったそれは、決して慰めではなかった。罪を肯定するのではなく、それを越えて続く縁の価値を提示するような声音で「どこまでが正しゅうて、どこからが間違いか、そがぁなもんは人の都合で変わる。けど、アンタが“正しゅうありたかった”気持ちは大事にしておやり。」そう言って身を乗り出し、再び彼の傍に寄った。真っ直ぐな目で彼を見つめながら。次にするのはそこまでの決まりを話した上で彼という男をこの夜に縛る行為だった。そこには甘い毒のように彼を残そうとする不純な動機が浮かんでいた)晴臣さん。ここまで話した上で言うが、アンタ俺と一緒に居ったらええよ。ずっと可愛がっちゃるけぇ
211:
鹿子 晴匡 [×]
2025-05-19 21:56:05
>烏座
(懇願の隙間に彼の声が滑り込む。その言葉の額面通りの意味は理解したが、今そう告げた真意までは読みきれない。少しばかりぽかっと間の抜けた顔を思わず上げたとほぼ同時に、己からも己の手からも彼は離れていった。続けて此方が先の事を問うより前に、静かな音で置かれた最重要事項に崩れきっていた姿勢をさっと正し、一言一句聞き漏らすまいと相手を見据える。「銀河ステーション、で降りる。……そうかァ、それが決まりか。」彼の話す声は至極落ち着き払っていた。だがそれは冷淡ではなく、摯実さを感じさせてもらえるものだったからだろうか、聞き終わる頃には怯えも震えも、いつの間にかすっかり凪いでいた。ふっと一つの区切りに息を短く吐き、肩を下ろした安堵の合間、届いたそれは自分には思い付く事の無かった発想であり、価値観であった。「……そうだなァ。うん、確かに悪くねェ。」じっくりと噛み締めるように、それでいて何処か嬉しそうな温かさで呟く。――己にあの罪と罰があったからこそ、そこを乗り越えたからこそ、この奇跡の如き夜にて彼と縁が繋がった、など。そんな浪漫も、案外素敵な話だった。「ありがとうな、烏君。」己に巣食うものが、解かれていく。ただひたすらに囚われていた心が緩んで、随分と呼吸がし易くなった。一度ゆっくりと瞬きをしながら、深く息を吸い込んで礼を告げた直後。忘れていた毒が彼の瞳から己の瞳へ垂れ込んで、その油断しきっていた不意を突かれた驚きを、瞠目に顕した次の瞬間、「…ふ、ははっ!貴方さん、ほんに悪いお人だの。」溢れたのは楽しげな笑い声、それに朗らかな軽口。「でもごめんなァ、烏君。俺ァ降りねばならんよ。……決まりだから、だけじゃァねェ。俺ァ俺ん時代と世界を、貴方さんの言葉と一緒にもうちっと歩いてみてェはんで。」それから迷う事の無い明確な拒否を。けれどもその理由は枷の為ではなくて――彼がくれたこの光を通した自分の世界に、前以上にきっと新しい何かがあると思えて、それを見てみたいと心が疼くから。「……ただ、そうだの。もし……もしな、俺が歩くのば止めた後で、また烏君さ会えたったら。そん時にまだ、俺ん事ば“綺麗だ”って烏君が思ってくれたったら――」しかし一度、顎を指で擦って目を泳がす、悩む仕草を数秒程行って。また視線を合わせ直してゆったりと紡ぎ始めた話はあまりにも遠い、あるかも解らない、冗談にすら聞こえる夢物語。だけれども、「――もういっぺん、今と同じ事言ってけろ。そん時ゃ必ず、貴方さんの思う通りになる。」そんな事が叶ってほしいと、本気で願ってしまう。それ程に今夜の終わりが惜しいと、彼へ抱いた情が言葉を柔く甘く色付け、注ぐ眼差しに仄かな幽艶を負わせる。「俺ァ、そう“約束”する。」とん、と。小指を立てた右手を自らの心臓の上に添え。その次に、慣れない事をするほんの僅かな気恥ずかしさを含む唇を一旦結んでから、その右手を彼の方へと向けて。「……烏君は、どうだ?」己からの“約束”の重さは、枷の全てを晒した彼には伝わっている筈。だからこそ、差し出した小指にはおずおずとした遠慮を、彼を映す瞳には純粋な甘さの奥に不安を滲ませていた。)
212:
烏座 [×]
2025-05-20 08:58:34
>鹿子
(あの静かな告白を終えた彼が、小指を立てて胸に添え、それをこちらへと差し出してきた時。その仕草はひどく慎ましく、それでも確かに「誓い」としての重みを持っていた。彼の瞳に宿る光は、これまで見せてきたどれとも違っていた。かつては罪に苛まれる影が、しがらみの奥で蠢いていたが、今のそれは違う。薄く不安を滲ませながらも、透明な願いと、微かな希望の灯が滲んでいる。その変化を見逃すほど、無頓着な性質ではなかった。真っ直ぐな眼差しで交わされる“約束”の提案に、心の奥が、静かに波打った。決まり事を守ろうとする、その誠実さ。己が選び取った道に迷いながらも、その足を止めず進もうとする姿勢。「……ほうかアンタぁ、益々、綺麗になったのう。」思わず、吐息のような声で呟いた。彼のその手に、己もゆるりと指を伸ばす。子供の頃、誰かと交わした幼い誓いのように、小指と小指を絡ませる。指先の熱が、ほのかに伝わった。その温もりは、思いの外柔らかくて、破っちゃいけんよと。声にせずとも、それを伝えるように指をきゅっと引き寄せた。「……おう、しゃあないのう。そんな風に言われてしもうたら、ワシはもう、晴臣さんの好きにさせちゃるしかないわ。」落ちた肩を、ゆっくりと持ち上げる。先ほどの芝居がかった落胆を少しだけ引っ込めて、改めて彼を見た。正面の彼はどこまでも愛おしく、綺麗な男だった。今彼を手放すことはとても惜しいが、下拵えだと思えば悪くないと思わせるほどに。それなら今できることをしようと、そう思えた。テーブルの上、少し前に置いたサングラスへと手を伸ばす。うっすらと紫が滲んだ、烏の羽根のような色合いのレンズ。ほんのりと星が煌めきとして埋め込まれたそれはこの世界のどこを探しても、烏座にしか持ちえぬ代物だ。誰の目にも、これが烏のものであると分かるはず。「……ほれ、これはワシからの“おまもり”じゃ。」そんな色眼鏡をそっと手渡した。彼の手の中に収まるように、少しだけ角度を調整して。「ワシと次、会えるんがいつになるか分からんけぇ……それまでのあいだ、他のカムパネルラに殺されんように、な。」わざと軽く言う。けれど、言葉の奥には、本物の心配と祈りを込めていた。彼が無事でいることを、願わずにはいられない。手放した彼が、複数いる危険なカムパネルラによって壊されないようにと、今できる最善だと思った。「大事にせえよ。無くしたら、怒るけぇね。」笑みを浮かべたその声音は、どこか真剣さを滲ませていた。まるで、次に彼と再会するその時を、夢見ているかのように。再び彼の瞳を覗き込むと、ほんの少し前までは、触れれば壊れそうだったその心が、今はしっかりと根を張り、光を宿している。そうだ。彼は、決して脆くなんかない。ましてや己との時間を経て強くなった訳じゃない。ただ、本来の彼に、ようやく出会えたのだと気づく。軽口をひとつ添えればクッと喉を鳴らして短く笑い)……んで、約束したんじゃけぇな。忘れた言い訳なんぞ聞かんけぇ。
213:
リズ・フェリシティ [×]
2025-05-20 18:44:38
>蠍座
( 愉悦と堕落、張った虚勢すらも悪戯に見抜き、転がすように笑う彼の瞳に呑まれてしまいそうだ。色濃く滲む興味と握られた手のひら、伝う指先にぴくりと反応を示しつつ、そんな逃げられない状況の中でも笑みだけは絶やさない、それが矜持であり、すぐに怯む獲物などとは思われたくなかったから。そう考えて笑みを作ったことなども全て、彼には余さず伝わると思ったからだった。物理的な優位性ももちろん、握る掌の大きさ、伸びた爪の長さ、形。男女という骨格差が浮き彫りになる中で、くいと引き上がった口角と表情に宿る感情に、ふ、と小さく、その感情を煽るように唇を歪める。「あの女王様に独占?アハ、悪くない気分ね。…悪友なんでしょ?アンドロメダとアンタは。どっちもアタシの好みのタイプだもん。」髪を揺らすように首を揺らせば、するりと回り込んだ手のひらにぞわりと背筋が粟立つ。距離が酷く縮まって、その合間に横たわる濃密な空気が、ひりついた感情が肌に突き刺さった。…ふっと吐いた吐息が興奮からか恐怖からか。わからないまま、きっと簡単に壊せるであろう手に包まれているという事実、その美しさを引き立たせる狂気に見惚れてしまう。その確信的な問いに、ぐしゃりと笑顔が歪に崩れる。表れ出たのは繕わない剥き出しの激情。「……は、ははっ、ほんとイイ男ね、アンタ。」まるで同調するかのように熱の籠った上擦った声で笑い声を上げる。彼がそうしたように身を預ける仕草で擦り寄ると見せかけ、ふわりとその手の支配から頭を浮かせる。裏を避ければ行くのは表。互いの額が触れ合う寸前で動きを止めて。「ええ、イイ男。…キスしたくなるぐらい」吐息を混ぜ合わせるかのように囁く。声を落とし薄く唇を開くと、中から赤い舌先を覗かせその愛玩を誘うように笑いかけた。しかしすぐに居ずまいを正し、今度こそ彼の手のひらに懐くように首を傾げたのは気まぐれな猫のようで。「…だけど、そのアンドロメダから聞いたの。キスは厳禁だってね」ちろりと唇を舐め、けらけらとアンドロメダを思わせるような笑い声を上げる。それが暗に深く触れ合うものであると指し示したのは、彼の悦楽をくすぐるためか、目の前のスリルに構わず飛びつく愚かな一面を隠せなかったからか。きゅう、ときちんと閉じ切って笑う唇だけが、微かに残ったな自衛心を表していて、 )
214:
蠍座 [×]
2025-05-20 20:09:17
>リズ
(僅かな感情の変化すらもが可愛らしい彼女の表情を変えている。作られた笑顔の下で微かに浮き上がる呼吸の乱れや僅かに強張る肩。そうした全ての虚勢を、まるで全て許してやるとでも言うように寛容な眼差しで、けれど冷酷に拾い上げた。彼女抱える誇りがどれほど丁寧に磨かれた陶器であるかを鑑みながら、それを砕く愉悦を想像して甘いキャンディでも舐めるように舌の奥で転がしていた。「リズちゃん。お前、ずいぶんと耳障りの良いことを口にするじゃないか。“キスしたくなるぐらい”?どうせ言うならもうすこし気持ちを乗せて誘えよ、まるで三文芝居だな」声は低く、爪先で嬲るように音を紡ぐ。く、と鼻で笑う仕草一つとってもそれは感情ではなくこの場を楽しむための“演出”のようだった。冷徹な視点で彼女の中に秘められる情熱を戯れるように弄ぼうとして「そういうのはな、“本当にキスしてはいけない相手”にこそ、もっと慎ましく言うものだよ。もしくは、もっと切実に、もっと哀れに、もっと、汚らしく言うのも効果的だ。……はは!ってゆーか、リズちゃんってアンドロメダの警告を“守ろうとする側”の人間なのか」軽く肩をすくめ、わずかに口元を歪める。あくまで静かに、抑えた音量で、しかし残酷な響きだけが残るように語った。名を呼ぶ声は甘やかで、毒を含んだ蜜のように喉を通り抜けるのが困難な濃厚さがあった。すべてを溶かし、毒すらも甘くする類の声色で、意地悪くも彼女のことを煽るのだ。「リズちゃん、お前。自衛のつもりで笑っただろう?その唇で、必死に武装してるな。……人からの警告を無視するそんな女とは違うのか?」言葉の一つ一つが、鋭利なガラス片のように胸へ突き刺すように、切っ先で彼女の心をなぞるように喋り。「誰かから植え付けられた知識なんか忘れちまえよ。お前が見たままの俺と会話しようぜ」そこまで語ると、ふっと目を細め、触れ合いそうな距離感を取り戻すように唇を寄せ、吐息だけが彼女の口元を撫でる。「キスは、しない。“それを許されたと思っていいほど”の立場には、まだいないから」その声音は酷薄に、しかしどこまでも優美で冷ややかだった。殺めるほどの興味にはまだ足りない。欲深い男は楽しげに彼女のことを眺めて)──俺は別に誰でも彼でも殺したい訳じゃないんだ
215:
鹿子 晴匡 [×]
2025-05-20 21:24:31
>烏座
そりゃァ、貴方さんのお陰様だの。
(綺麗、と。また呟かれたそれに返す言葉は軽やかに、しかしたっぷりと感謝を詰めて溢れさせた一声を。差し出した小指へ心地好い温度がじんわりと伝わって、僅かに感じていた不安など跡形も無く溶かし、残るのは喜びばかり。苦しさだけだった“約束”が、今は結ぶだけでこんなにも温かな光明に変わるのだと知って、綻ぶ頬で繋がるそこを見詰めながら此方もそっと柔く、指先で返事をする。続けて掌に乗せられたのは、彼が着けていた色眼鏡。彼の背から覗く羽根に似た色と星光を含んだそれに籠められる想いに、少し擽ったげに笑い、「……ああ、失くさん。大事に、大事にするとも。」その言葉ごとそっと両手でサングラスを包んで胸に抱き、そう応える。――他のカムパネルラに会えば命の危険もある。彼の祈りにそう理解して尚、恐怖を感じる事は無かったのだから、この“おまもり”の効果は既に絶大だ。もう一度だけ手の中のそれを外の星々に照らしたその後に、壊れ物を扱うよりも丁寧に細やかに、自らの懐の内に確かに仕舞う。「そりゃァ勿論。」軽口には軽口での応戦を。けろりと笑った後の右手に持つのは、もう一方も脱いで揃えた一対の黒いグローブ。「貴方さんこそ、“忘れた”なんて言わせんからの。」己の手にぴったりのそれは、彼の手にはきっと合う筈もなければ、当然新品でもない、限りなく只の布に等しいもの。けれども、己の罪と罰の価値を変えてくれた彼への対価は、今日まで抱えた自分自身を象るそれが相応しいだろう。彼がしてくれたのと同じように手渡した直後、「それと、」不意打ちにグローブごと彼の手を両手で挟み撃ちにして、少しばかり強引な力で引き寄せる。そのまま彼を見据える眼差しが悪戯をする少年の如き無邪気さと、射抜くような不敵さに細められて、「“次ん時”は花札ばしようなァ。あれなら俺ァ一つも負けんよ。泣かしたるはんで覚悟しておけ。」そうにんまりと告げる。そう、謀略や賭けの勝敗に拘らないとはいえども、一度は負けた事も、散々己の胸中が掻き乱された事も全く悔しくない訳ではない。だからこのわざと低く強気な物言いをする宣戦布告は、彼を驚かす事だけを目的にした、今夜限りのせめてもの“お返し”だ。「……なんてなァ。」最後にころっと冗句の尾を転がして、柄に合わない自分自身の言葉に吹き出しながら彼からすっかり離れて背凭れに身体を預ける。それからふと窓の向こうに目を移して、また彼へと戻す頃には穏やかな表情を纏い直し、「……なあ烏君。」悠然と声を掛ける。これから終着駅を待つばかりの間、訊かなければならない事は沢山ある。カムパネルラ達の事、彼自身の事、この汽車の子細。だが、「駅に着くまで暫く、貴方さんの事ば見ていてもいいか?」口から溢れた問いはそれだけだ。「……貴方さんの顔をいつでも思い出せるくらい、覚えておきてくてなァ。」己は数多ある情報を手にするよりも、彼とこの夜を過ごした思い出を焼き付ける事を優先したのだ。こんな時までどうしようもない性分だと苦い笑みに眉を下げながら、名残惜しさを湛える瞳に彼を映したままそう語る傍ら、せめて仕草だけはおどけるように肩を竦めてみせた。)
216:
烏座 [×]
2025-05-20 23:09:57
>鹿子
(手の中に納まったそれは柔らかく、少しだけ湿った温度を帯びていた。新品ではなく、布地の隅に染み込んだ無数の記憶が時折くすぐるようにこちらの掌に訴えかけてくる。無骨な縫い目、擦れた箇所、そして何よりも鹿子晴臣という男の「罪」と「罰」。それらすべてが織り込まれたかのような、手袋だった。彼の指が自分の手を包むように引き寄せたとき、胸の奥で火が点いたような気がした。「……晴臣さん、ほんま、えぇ顔しよるのう。」にやりと笑い、敢えて目を逸らす。じゃないと今にも目の奥の湿りを見破られそうだった。花札、だなんて魅惑的な次の約束を口にしてくれること自体が、何よりの贈り物だった。勝つ自信たっぷりのくせに、見え透いた戯れ言でこっちを笑わせにかかってくるその姿が、いじらしくて、愛おしくて、どうしようもなかった。けれど、だからこそ。だからこそ気を抜けば手放せなくなりそうだった。グローブを胸元のポケットに滑らせるようにしまいこみ、まるでそれが自分の心を封じる鍵か何かのように、すっとその上から押さえた。名残惜しさというよりも、甘やかで鈍い、飢えのような感情が喉元に絡む。それでも黙ってそれを飲み込んだ。彼が覚えていてくれるというのなら、自らも覚えておかねばならんのだと、あの笑い声も、穏やかな眼差しも、真っ直ぐで、誠実な心根も。そんな彼から伝えられたその申し出は、あまりにも優しくて、ずるかった。「……えぇよ。好きなだけ、見とき」そんな風に頷くより早く、返事が口をついていた。あまりにも真っ直ぐなその眼差しを受け止めるのは、正直、気恥ずかしかったが、同時に誇らしくもあった。「ほいで……俺ぁ、忘れんけぇな。晴臣さんが、どんな顔で、どんなふうに笑うたか。どんだけ優しい声で、ああ言うてくれたか。」こっちもなァ、と付け加えるように言いながら、ふと目を細める。笑ってるくせに、喉の奥が少しだけ軋んだのはご愛嬌だ。片肘をついて背凭れに寄りかかる彼を横目に捉えたまま、ゆっくりと体を預ける。並んで夜を見上げながら、ふと黙る。言葉なんてなくとも、心地良い静寂が流れていた。そして──しん、と汽車が静まり返ったような感覚があった直後、車内放送が流れ出す。”次はァ、銀河ステーション、銀河ステーション。お降りのお客様は──”ああ、来てしまった。夜の終点が。そうぽつり、と喉奥で息を吐き、それから名残惜しさをぐっと噛み潰すように飲み込んだ。もう未練は残させない。そう思いながら、彼の方へ身を乗り出して「晴臣さん、聞こえとるか? ……次に会える夜を、俺ァ楽しみにしとるけえの。花札も、話の続きも、どこまででも付き合うけえ。」言葉とともに彼の手を取る。短い時間の、短い触れ合い。だが、それで十分だった。彼の温もりは、もうしっかりと記憶の奥底に刻み込まれていたから。)アンタのこと、忘れられるもんか。
(/烏座との素敵な夜をありがとうございます…!キリが良さそうでしたので一旦〆させて頂きました!素敵な夜は烏座にとっても忘れられないものとなっています。また、次の夜のカムパネルラにご希望など有りましたら遠慮なくお伝え下さい!)
217:
鹿子 晴匡 [×]
2025-05-21 19:41:07
>烏座
……あんがとなァ。
(間も無い許しに瞳へ嬉々を、声には感謝を乗せる。それから一つ瞬いて確りと開いた視界に彼を捉えたその矢先、続いた語りに唇をきゅっと結んだ後、「そう言葉にされっと、急に恥ずかしくなってまうなァ……」それは彼の想いだと解っていながら、同時に此方の心を見透かされたような気分。仄かに集まる頬の熱に合わせて眉を垂らし、もごもごとした細い呟きを溢す口元を一度掌で押さえる照れた仕草は取るものの、否定もしなければ目を逸らす事もしなかった。――訪れる静寂。流れる時が緩やかになるような、或いはまるっきり止まったような、春の夜の如く穏やかな静けさの中。己を映した彼の瞳を、言葉をくれた唇を、優しく触れたその手まで、何一つ逃す事無く真っ直ぐ思い出に刻む。あと少し、もう少しだけ続けば――やがて沈黙を断ち切る放送が、無情にも己の耳に響いた。「……ああ。」一瞬の寂寥に瞼を伏せて、けれどもすぐに灯りを点して前を向く。そうだ、今夜汽車を降りても、それは終わりではない。今踏み出す足は、いつか来る“約束”までの旅路の第一歩なのだ。「次は烏君さ土産話ばたぁくさん持って、今よりずっと良い男になって貴方さんに会いに来るはんで――」取られた手を握り返して、温もりを交わしすぐに離す。それ以上は反って無粋だと思える程、満たされていた。「――それまでお互い、良い旅を。」帰り支度に帽子を被り、立ち上がる。駅へと降りる頃、“さようなら”ではなく“またいつか”と想いを籠めて満面に笑うその顔は、秋空の如く晴れて澄み渡っていた。)
(/此方こそ素敵なお時間を有り難うございます…!鹿子も翻弄されながらも、自分自身を変える一手を引いて下さった烏座様とかけがえの無い夜を過ごせまして、何があったとしてもこの大切な一夜決して忘れる事は無いでしょう。お次のカムパネルラ様についてですが、気になっておりますのは牡羊座様と小狐座様、山猫座様辺りでしょうか。前にも話しましたが正直どの方も魅力的で、どうしても選びきる事は出来ず……お手数ではありますが、再び主様に選んで頂く事は可能でしょうか……?勿論、主様の方で鹿子とお話をさせてみたいというカムパネルラ様がいらっしゃいましたら、そちらでも大歓迎です。
それから、鹿子の名前について一つ……大変ややこしいのですが、彼の名の最後の字は“臣(おみ)”ではなく、『はこがまえ』に『王』の“匡(まさ)”でございますので、その点だけご留意頂ければ幸いです……!それでは、次の夜の文も此方に置いていきますので、またお時間のある際に素敵な夜を過ごせる事を願います。)
身分証 >181
(ことんことんと、微かな振動が身体に伝わる。瞼を上げるよりも先に身動いだ手に頭上の帽子が落ち、条件反射に持ち上げたそれを口元に当てれば、寝惚けに大きな欠伸を少々。そこで漸く開いた視界に広がるのは見覚えの無い――いや、一度だが確かに見た景色。もしやと視線を窓の外に移すと予想通り、見渡す限りに散らばる星の海。「……ああ、また来たんだなァ。」寝起きに少し掠れた声へ喜色を滲ませ、そう独り呟いて正面へと顔を戻す。そのままふっと淡く柔らかな笑みを浮かべて、「どうも、今晩はァ。」目の前の人物へと一礼する。続けてゆったりとした所作で再び頭を起こし、居住まいを簡単に整えて背筋を伸ばす。「はじめまして。……カムパネルラさん、で合っとる?」それからもう一つ挨拶の礼儀を通し、一呼吸の間を置いて。瞬いた後に相手を見詰める瞳へ期待ばかりの灯火を宿し、尋ねる物言いや声音には柔らかながらも殆ど確信を持った芯を裏に張って。それでも合わせて首を傾げる仕草だけは、何処か懐こい隙を残してのんびりとしていた。)
218:
牡羊座 [×]
2025-05-21 23:12:10
>鹿子
(ちら、ちら、と幾度も盗み見るような控えめな視線を送っていたかと思えば彼が僅かに動きを見せたり呼吸の為の小さな音を立てる度にビクッと肩を震わせて逃げるように視線を逸らし、顎を少し引いて俯いた。彼の髪色は燃える火のように珍しい色をしていて、アーティスト気取りのこの男にとって見ずにはいられないほど心を擽られる色をしていた。そんな彼が愈目を覚ますと挙動不審に体を縮こませて視線を泳がせながらぶつぶつ、ぽつぽつと変事をして「ん。その、カムパネルラってやつ。 そう、呼ばれてるけど……それよりも、羊。俺ァ羊って呼ばれてるョ」俯きがちに、けれど指先はゆっくり膝の上で絡まり、解け、また絡まるのを繰り返していた。本人でも気づかないうちに、まるで絵筆のように細い手が何かの“構図”を描こうとしていた。「……なァ、初めましてとか、そういうの、慣れてねェんだ。俺ァ、そういうの、苦手っていうか……なんつぅか、話すのとかも下手だから。あんまりこの夜を期待しないでくれょ」背を丸めて伝える割にはどこから来る自身なのか、表情だけははにかんで、ぽつりぽつりと、不器用に言葉を紡ぎ。)アンタは、なんのジョバンニなんだァ?
(/お世話になっております!何よりもまず先にお伝えさせて下さい。このたびは大切なお名前を誤ってしまい本当に申し訳ございませんでした。言いにくかったでしょうに、教えていただき誠にありがとうございます。ご丁寧にお伝えくださったこと、深く感謝しております。お名前は背後様にとって何より大切なものであるにも関わらずこのような失礼をしてしまい、心よりお詫び申し上げます。以降、同じことのないよう十分に気をつけてまいります。また、至らない背後となりますので、今後ももし何か不備や無礼などございましたらどうか遠慮なくお知らせいただけますと幸いです。ご不快な思いをさせてしまったこと、重ねてお詫び申し上げます。
気になっているというカムパネルラのリストアップも有難う御座います。それでは最初に名前の挙がった牡羊座にてお迎えに上がらせて頂きます…!それではまた次の夜も宜しく御願い致します。)
219:
鹿子 晴匡 [×]
2025-05-22 18:54:25
>牡羊座
(この前の烏より一回りは若く見えるカムパネルラ。黄白色や灰色など全体として淡い色を持つ姿にほんの少し眩しげに目を細めつつ、おどおどとしているようにも見える彼の言葉を最後まで静かに聞き、「…そうかそうかァ。俺ァ逆にお喋りだはんでの、お返事だけでも嬉しくなって、つい喋り過ぎてまうんよ。」その終わりから数秒保った後にゆったりと頷き受け入れる。続けて相手に合わせて己を語っている形に見せかけながら、彼へ気兼ね引け目を負わせない慮りを散りばめて。「ちぃっと煩いかもしれんけんど……駅まで容赦してけろ、羊君。」それも案外不必要だったかもしれないと気付いて笑ったのは、此方が話し終えてから彼の口元を見た数秒後の事。「俺ァ鹿さんのジョバンニだの。」問い掛けに冗句を混ぜた一言をまず先に。それに自ら小さく吹き出した後、「名ァは鹿子晴匡。鹿君だの晴ちゃんだの、友にゃァ好き勝手渾名付けられとるはんで、貴方さんもどうぞ。」改めてきちんとした自己紹介をすらすら繋げる間、自らを示したり彼を差したりと緩やかに身振りを行うその両手には、新品だがやはり薄布の黒いグローブを填めている。――それは建前上の理由も然りだが、この汽車の夜に再び出会える事への願掛けも籠めていたが為。それ故何処か浮わついてしまう色を含んだ視界に、動くものを捉えて視線を下げる。そこに在るのは繊細そうで忙しない彼の十指。「……羊君、良い手ばしてるなァ。細くて、爪まで綺麗で、芸事ば上手そうな手っこだ。」上品そう、育ちが良さそう、器用そう、など。そんな明るい評価ばかりを詰めたしなやかな声音が、ぽつりと思ったままの感嘆を溢す。「そん爪、色ば付いてるように見えるけんど、そりゃァ爪紅かの?」それに加えてちらりとだが窺えた指先は、よくある自然な薄桃ではないよう。惹かれた興味が滲む眼差しをまた彼の瞳の方へと向け直し、此方から彼について、ゆったりと朗らかに交流の誘いを掛けた。)
(/いえいえ、全く何も間違わない人間はいませんし、あまりお気になさらず…!更にお気遣いまで頂きまして、大変恐縮の極みです。此方も無礼や粗相など行わないよう精進して参りますので、どうかお互い、今後とも楽しい一時を紡げたら幸いです。それと今夜のカムパネルラ様は芸術センス抜群の牡羊座様という事で、今からどんな会話を重ねていけるのか大変わくわくしております…!それでは、また宜しくお願いいたします…!)
220:
牡羊座 [×]
2025-05-24 09:15:18
>鹿子
(“鹿のジョバンニ”。耳慣れない呼び名に一瞬だけ目を細め、くるんとした髪の下で白い瞳が曇りなく彼の輪郭をなぞる。ふっと角度を変えて彼の頭部を見るが、それらしきモノはなかった。「……あ、役名みてーなやつ、スか、それェ。鹿子さん、でお願いします。俺より歳上だろうから、経緯ってヤツは大事でしょお」ごにょりとした声音と、八の字のように眉が下がる。どう答えるか一瞬迷って、それでもきちんと視線を戻せばそこまで言って、ふと口元を緩めると彼の渾名の中にあった呼び名を拾うように「俺は羊だけど、俺のコト“メリーちゃん”って呼ぶカムパネルラもいるンです。メリーさんは羊を飼う方だョって。」不満げにぼやく割に、そこまでが全部冗談を含めているようで口調はどこか楽しげで、照れ隠しに肩をすくめて笑ってみせて。そして次に来たのは、思いがけない褒め言葉だった。その言葉を受けるなり、まるで耳の奥に熱が走ったみたいに、 ちょっと背を丸めて俯きがちになる。むずがゆそうに唇の端を引き上げながら、でもどこか誇らしげに十本の指を持ち上げてみせると「……これ、マニキュア、って言うやつ。夜空のインクに星を砕いてて。キラッキラでしょォ」嬉しそうに爪を披露しながら伝える目線は、ほんの少し上向きで明るさを隠せていない。自分が気に入ってるものを、誰かに良いって言ってもらえたのが嬉しくて仕方ないようで「色決める時もただの黒とかただの藍色じゃつまんねーンで、何がいいか時間かけて選んだンです。……っつーか、年下なんスよ、俺の方がァ。だから、呼び捨てで全然いいしィ、敬語とか、逆に、くすぐったいっていうかァ」頬をぽりぽりと掻く。ちらちらと彼の顔色を窺いながら遠慮がちに声を落として、もにゅもにゅと言いながらも、どこか嬉しそうに笑ってる。当初、歳上だろう彼に身構えていた警戒心がお気に入りの爪を褒められたことでいとも簡単に彼を良い人にしたらしい。控え目なように見せながらも隠しきれない自己愛で得意気に両手を爪を見せるように向けて)鹿子さんには特別に見せてあげます。どうです?綺麗っしょ
221:
鹿子 晴匡 [×]
2025-05-25 06:11:46
>牡羊座
(此方の冗談には少し迷う様子の彼、しかし返ってくる冗句に笑みを深めて。「確かに、あん歌はメリーさん“の”羊だなァ。でも、良い発想の利くカムパネルラさんだの。」かつてその童謡を母と歌った日のように、或いは自らの教え子へ歌う時のように、緩く握る両手を頭の辺りに当て、彼も持つ羊の巻いた角を示す手遊びの仕草を。そのまま彼に渾名を付けたまだ知れぬカムパネルラについても、明るい一言を及ばせる。続けて己の言葉に十指を上げる姿、目一杯拘っている事を己に聞かせてくれる姿は、宝物を見せびらかす子にも似て微笑ましく、思わず湧く庇護や温かな包容の心のまま、ゆったりと相槌を打って話に耳を済ませて。「歳も言葉遣いも気にせんでいい、いい。こういうお喋りってェのは楽しいのが一番だ。…それにあんまし言うと俺ァ調子さ乗って、それこそ“メリーちゃん”や“ラム君”と貴方さんを呼んでまうよ。」まだまだ距離を感じさせる言葉とは裏腹、満更悪くもなさそうな彼へひらひらと片手を互いの間に振って。その先に童謡の原題と絡めた渾名で脅すような文言が繋がるものの、そこにはただ親しみばかりを籠めている事が軽やかな声音に示されている。その後で許しを得た彼の爪に改めて視線を注いで、感嘆の吐息を漏らす。「ははあ……まるで星夜の花束だの。」灯りを映して光る爪先の星々。その舞台も成る程単純ではなく、紺色や天鵞絨色を内包して、それは正しく夜空の如し。「色っこもお空が引っ越したみてェにぴかぴかで、お月さんの目ェした貴方さんによう似合ってる。羊君はお洒落さんだねェ。」そっと己の手で指先の星空を掬い眺めて、彼と同じ程に何処か嬉しげに細める視線を今度は彼の瞳へ贈り、心からの称賛を紡ぐ。「俺もなァ、ようお洒落ばするんよ。例えばほれ、こん服。こりゃァ仕事向けだはんで、外見の色はちっと控えとるばって……」それから見付けた共通の話題を逃さず捉え、膝元に置く自らの中折れ帽を撫でたり、履くブーツの片踵を軽く持ち上げたりと、選び抜いた服装を主張しつつも一度笑みに苦みを含む。だが、「その分羽織ん裏で遊んどる。中々良いだろう?」最後に悪戯を滲ますにんまり顔で、襟元から裾まで捲り上げた羽織の裏地へ彼の視線を誘導する。――それは鮮やかな紅の濃淡を下地に金色の雲を浮かべ、更に橙や緑、黄色の楓をふんだんに散らした紅葉柄。大胆に描かれたそれを披露して、少しばかり子供じみた自慢に胸を張った後。「んだども、爪のおめかしば思い付かんかったなァ。いやァ凄いの、貴方さん。」また戻ってくる会話は彼の発想と感性へ。丸めた自身の五指に目線を一度落とし、その爪をグローブ越しに透視する仕草の後、また上げた純粋な羨望の眼差しを彼へと照らしてころころ笑う。)
222:
牡羊座 [×]
2025-05-31 01:18:17
>鹿子
(優しさとはこういう手触りだったのかもしれない。そんな風にふと心のどこかで思った。彼が纏う物腰はどこまでも滑らかで、でも決して媚びてはいない。まるで深く温かな陽だまりの中に足を沈めたようで、柔らかな喋りを聞いているだけでいつの間にか肌が緩むような心地よさを感じていた。歳のことも、喋り方も、気にしなくていいとそう言われた瞬間に張っていた意地も、格好つけも、ふっと霧みたいに消えてしまった。改めて彼に向き合うと、目を引くのは派手すぎるくらいの髪の色と品良く整えられた持ち物。どれもこれもがただの飾りじゃなくて、ちゃんと選ばれてることが伝わる。そんな彼に対して素直に羨ましいとか、憧れとかの気持ちが混ぜこぜになり気がつくともっと話したいと抱いていた。「……イヤじゃなかったらさァ、駅着くまでに色、乗せてやっても良いョ。 すぐ出来るし」照れを隠すように指先でクルクルと髪をいじりながら、先程よりも更にちょっとだけ声が小さくなった。ぐいと背中を丸めて「オレ、そーいうの、ちょっと得意っていうかァ。それ以外は不器用だけど……爪に色載せんのは上手いから」ぐるぐる指先を回して伏せ目がちの目がそっと彼の様子を伺う。素直な“好き”を認められることが自分でも思っていた以上に嬉しくて、まるで胸の奥に咲いたちっちゃい花をそっと手で包まれたみたいな気分だった。その時にふと、仕事柄、控えてると漏らした彼の言葉が頭を掠めたらしい。その途端、口元がぎゅっと結ばれる。うろ、と目が泳ぎ遅れて首をすくめるとバツが悪そうに笑ってみせて。「……あー、でも、やっぱ無理かァ。お仕事的に……そーいうの、ダメだったり……すんのかな……?」眉がへにょっと垂れて、いつもよりわかりやすく“しょんぼり”が顔に浮かび。先程までの勢いと真逆の、申し訳なさそうな声で呟いてから指先で前髪をいじる。けど、そのままじゃ終われなかったのか「でも、似合うぜ。……お空みたいな色、ぜってー似合う。」たどたどしく言いながら、それでも誠実さだけは全部乗せて。まっすぐ彼の瞳を見上げるようにして、胸の内をそっと差し出すと少しだけ照れくさそうに笑顔を見せて)
223:
鹿子 晴匡 [×]
2025-06-01 11:55:02
>牡羊座
(少しずつ崩れていく彼の言葉遣いが、その分だけ仲を紡げている証のようで、つい頬が綻ぶ。「おんや、良いのけ?」照れ混じりの申し出に一度だけ瞬き、しかし直ぐ様問い返す言葉は朗らかな前向きを示す。そのまままた話に焦れる事無く耳を傾けていた折、不意と曇り泳ぐ月色の消沈。そこから見える己への気遣いや、指先にまで迷いを顕しながらも飾り無く向けられる真心の笑顔に、どうしようもなく胸を擽られて。「……なァんも。駄目な事ば何にも無ェ。」ゆったりと、首を横に振る。声音はふくふくと、笑みを含んで柔らかい。「折角貴方さんがそんなに言ってくれるんに、何もせんなんて。そったら勿体無ェ事する方がよっぽどいけねェべや。」仕事での華美を控えるのは個人的な配慮であって規則ではない。そして、今此処で一等尊重されるべきは、彼が懸命とくれるその心だろう。そう自身の引いた大人らしい境界線をあっさり踏み越え、にっと悪戯坊主の表情を覗かせた後。グローブを引き抜いた左手を、先から順にテーブルへと置いて、「――こん爪に、似合う色っこば乗せてけろ。」つうっと彼の方へと滑らせた、長く骨張った手の天辺。いつだって短く切り揃えている己の爪を、お願いの形を取る茶目っ気と一緒に差し出す。――それから、「……なァ羊君。」彼によって粧してもらうその合間に交わす言葉の種を探し、沈黙した数秒の続き。「爪ばおめかしする間――もし良けりゃァ、貴方さんを“メリーちゃん”と呼ぶカムパネルラさんの事、聞かせてくれんかねェ。」もっと彼の事、彼に纏わる事を知りたい。目の前の彼が見せる表情に疼く、混じりの無い澄んだ関心が選んだのは先程の渾名の話。ああして冗句に昇華して笑うなら、少なくとも悪いものではない筈と、そんな明るい見込みを立てた穏和な問いを彼へと贈る。)
224:
牡羊座 [×]
2025-06-07 00:40:22
>鹿子
(まさかの、優しい肯定。断られるだろうと決めつけてた自分が少し恥ずかしくなるくらいに優しい承諾が戻ると「……え、マジで……?」と、ぽつりと漏れた声は心からのもの。素直で嬉しそうな音を持っていた。彼の言葉や声が、自分の願いをちゃんと受け止めてくれたと言う事実、それだけで胸が暖かさでいっぱいになる。差し出した“好き”の気持ちを流さずにちゃんと拾ってくれた。こんなにも嬉しいことは無かった。そう理解した次の瞬間には差し出された大きな手を、自らの両手でふわりと包んでた。「へへ……オッケー、じゃ、遠慮なく、やらせて貰う」ちょっと照れくさくて、でも満面の笑みが勝ってるそんな表情で口元を緩め。包んだ手で彼の手の甲から指先まで、ひとつずつそっと撫でて、爪の形、肌の色、服の雰囲気に至るまでを全部をちゃんと見る。それからちゃんと考えた。今からやるのは、ただの“塗る”じゃなくて、“飾る”でもなくて、“贈る”ことだと。彼の雰囲気の奥にある“夜”みたいな静けさと、芯のあるやさしさ。それを浮かび上がらせるのは──そう、きっと赤と、藍だ。迷いなく選んだのは、冬の空にひときわ目立つ赤い星みたいなポリッシュと、深い藍のきらめきを持つもうひとつ。どっちも、星の粉が混ざってて、光に揺れてきらりきらりと色を変える物だった。「良い色見っけたから、期待してイイぜ」それを伝えればにやっとして、瓶の中の星屑に目を細める。ポーチから手早く道具を揃えて、赤いビンのキャップをそっと回したそのとき、不意に聞こえてきたのはさっきのあだ名にまつわる、問いかけだった。「……あー、それなァ」筆を取りつつ、口の端だけで笑って、ちょっと目を泳がせる。照れ隠しじゃなく、気恥しさそのものを見せつつ「時計……だよ。“時計座”。カムパネルラの中でも、オレが一番一緒にいるやつ。つーかァ……うん、アイツ、めちゃイイヤツなんだけど、やたら口出してくんの。ウザくて、助かるって感じの男。」そんな風に自らを渾名で呼ぶ男について答えれば、今度は真剣な面持ちで、彼の手を片手で支えなおした。筆先に、赤のポリッシュをほんのり含ませ、そっと、彼の左手の親指に落として。ちゅっと筆を滑らせると、そこにちいさな星が一粒灯る。赤く、深く、まるで体温のある光。冬の夜空に浮かぶ、あの星とそっくりな色が爪を染めた。「……似合うと思ったんスよ。鹿子さん、空っぽの夜じゃなくて、ちゃんと星がある夜に見えたし」呟くような声が想像通りに良く似合う赤の乗った爪に感想を落として)
225:
カムパネルラ [×]
2025-06-07 10:13:07
兎座「ねえ、ジョバンニ。退屈って、君を鈍くしちゃうから。ぼくと、ちょっとだけ星のトンネル、くぐってみない? ね、乗ろうよ、銀河鉄道。夜が飽きる前に。……ふふ、ずっと朝が来なきゃいいのにね。」
○ 世界観 ○
>1
〇 提供 〇
>2
〇 好み / 萎え 〇
>3
>ジョバンニの受付はいつでも行っております。
興味を持っている、お試しで参加してみたいなど、質問やご相談だけでも受け付けていますのでお気軽にお問い合わせ下さい。
>只今の時間よりリアルタイム交流、早い反応が可能です
本日纏まった時間を作れたのでこれよりリアルタイムの反応が可能です。
もし少しでも興味を持って下さった方がいらっしゃいましたらお気軽にお声かけください。
226:
鹿子 晴匡 [×]
2025-06-07 21:46:06
>牡羊座
…ああ、任せた。貴方さんのお好きに。
(相手が嬉しいと笑えば、己まで嬉しくなる。その単純な心の在り方は、偽り無く人と向き合う内に得た賜物。言葉通り抗う力を一雫も持たない手に触れる指を、此方を確と見詰める真剣な眼差しを、柔く綻ぶ頬で受け止める。やがて取り出す小瓶の瞬くような煌めきに目を奪われた一瞬の次、戻した視界に捉えた表情に此方まで口角を引き上げて頷いた。それからは普段窺えない物珍しい粧飾の光景に、きらきらと好奇を輝かせた視線で彼の指先を追う傍ら、問いかけの答えにも耳を澄ませる。「ほう、……ふふ、仲ば良いんだの。」名前だけではぼやけて掴めない人物像を、彼の話で少しずつ輪郭を描き上げ、何となく浮かんできたのは生真面目で世話焼きの青年。その相手に一等気を許している事は、面持ちからも物言いからも充分に知れて、微笑ましさに思わず声が溢れてしまう。その後、「……“時計座”、」覚える意図も含めて名を繰り返した所で、はたと気が付く。「“牡羊座”、“烏座”――そうかァ。なるほど、お星様ん名前かァ。……あァ、綺麗だねェ。」“銀河”鉄道の名に脳裏へ蘇る古い星図からもう二つ、この前の彼と目の前の彼を並べて、その“カムパネルラ”なる秘密箱を組み上げる細工の美しさに一人掠れた感嘆を漏らす。しかし、それに浸るのも彼が手を掬うまでの短い間。――いよいよと爪を滑った筆の跡、そこに宿る色は赤。けれども燃える苛烈さはなく、いうなれば、雪の晴れた冴えた夜を仰いで初めに見付けられる、あの光のような暖かい赤。自らの肌と服の色が一層引き立てるそれに、言葉を忘れてすっかりと見惚れる。「……本当に凄いなァ、羊君は。人ん事ば、よう見とる。」落とされる呟きが、じんと優しく沁み込む。それまでの自分自身ごと、大切に拾い集めた細かな想いごと、擽ったく撫でられた心地に情けない程はにかんで。「――続きも頼めるかの、羊君?」ほんのちょっと照れくさそうに、しかしそわそわとした喜びを細めた瞳に乗せて。この先まで期待して浮かれるその心は表情だけではなく、解りきっている答えをわざわざ尋ねる口の軽やかさにも顕れていた。)
227:
牡羊座 [×]
2025-06-08 08:49:35
>鹿子
(その声色も、その言葉も、心からの信頼に満ちていた。期待してくれてる、任せてくれているのだと真っ直ぐ伝わるもんだから胸がふわっと熱くなった。照れくささも、嬉しさも全部ひっくるめてつい吹き出すように綻んだ笑い声が上がる「んふふ、任されました、だし」ニッと口角を持ち上げてどこか挑むような顔をして見せたのは、応えたいという気持ちの裏返し。勿論、自信もあるけれどそれ以上に応える喜びがあった。ポーチの中から選んだ瓶を傾ける、その中身は藍。それは彼に似合う夜の色だ。深く、優しく、静かで、でもちゃんと光を含んでる先に人差し指に赤を置いたのは、きっと何気ない動作の中でよく使う指だから。その分目を引き目立つところだから。赤を目立たせるために周りは少し落ち着いた、けれどただの静けさじゃない奥行きのある色で囲いたかった。中指へ筆を移すその少し手前で何の気なしの会話みたいに、でも大切なことのように口を開いた「……俺、時計と一緒に、一人のガキンチョを育ててるんス」そうさらりと言いながらも、自然と指先の動きが優しくなる。細く整えられた爪の上に、夜を流すように藍を乗せて「今じゃだいぶ育っちまったけど……最初に拾ったときは、俺の腰んとこにも届かねェくらい小さくて、なのに泣きもせず、噛みつくみたいな目でこっち見てて。可愛げはなかったんスけど、ガキンチョ放置することも出来なかったから」藍色が彼の肌に映えて、見事に馴染んでいく。赤と藍。二色が、彼を纏う空気にぴたりと添って、まるで最初からそこに在ったみたいに思えた「だから時計は仲がいいっていうより、同志みてェなもんで、育ててるガキは子犬って呼んでるんだけど、まあ……これが生意気で、ぶっきらぼうで、でも情には熱いイイ子で。手ェかかるけど、大事な子なんス」すっと薬指へ筆を移しながら、ちらと彼の顔を見やる。少し、ほんの少しだけ、声の温度を落として「だから、鹿子さんみたいな優しい人に、もしどこかの夜で会えたなら、遊んでやってほしいなァって。」小指まで丁寧に筆を滑らせると、星の粉がぱちぱちと光を跳ねるように煌めいた。夜空の一角を飾るような、静かな、でも確かな存在感がある。最後の一本まで乾き切るのを見届ければ手をそっと離して、少しだけ離れてみる。まるで、星座の一部を描いたあと、それが夜空でどう光るかを確かめるみたいな眼差しだった「……うん。やっぱ、めちゃくちゃ綺麗だし。鹿子さんの手、星みてェ」囁くように、ぽろりと落ちた超えだけれどそれは、どこまでも確信に満ちていて)見てみてくれョ。どーだァ?
228:
鹿子 晴匡 [×]
2025-06-09 22:58:42
>牡羊座
(自信満々で、でも照れくさそうで、でも嬉しそう。お互い様の表情で、それに尚更心が弾んで堪らない。赤い星を囲っていく筆の一筋一筋をつぶさと見詰めながら、ふと綴られる声に耳を傾ける。小さく頷く声を相槌に時折彼の瞳に視線を移せば、その表情に、それに話し始めて変わる手元の細かな力加減に、その子を慈しむ温かさが感じ取れた。「そりゃァ勿論。貴方さん達の大事な子犬君さ会えるの、楽しみにしとるよ。」頼みを断る理由なんて何処にも無くて、静かだけれども朗らかに、是とする言葉が自然に落ちた。――やがて小指の端まで夜が乗って、彼の声に目を下ろせば宿る光が瞬いて主張する。「……いつまぁでも見ていられるねェ。目ば離すんが惜しいくらいだ。」その手を引く事も忘れるほどに美しく、けれど自然で、やっと本来の色に染まったような不思議な感覚。問い掛けが無かったら、それこそずっと見惚れてしまうと感嘆が溢れる。「素晴らしいお人だの、貴方さん。色っこ選ぶ目も塗る指先も勿論だばって――人ば育てるもんとしても、充分になァ。」ふっと緩やかに顔を上げた先、溶々たる称賛はその芸術技術に飽きたらず、その絆にまで及ぶ。「……貴方さん、さっき子犬君を“情に厚い良い子”だと言ったけんども、子ってェのは親の背を見て育つもんだ。…だはんで、その子がそう育ったんは、貴方さん達自身が“そう”で、惜し気無くその愛を教えられるお人達でもあるって証に違いねェ。」そのまま滔々と話し始める言葉は読み聞かせのように優しく、揺り籠を思わせる程にゆったりと。視線は真っ直ぐに、柔い微笑みを滲ませて彼に向けられて。「……貴方さんも、時計さんも、とんでもなく立派な親御さんだ。」怒るよりも叱る事、甘やかすより甘えさせる事――“人を育てる”という事の難しさたるや。それが我が身でなくとも、教師として多くを見てきたからこそ、その大役を心の底から褒め上げ労いたくなる。そうなれば早いか、徐と腰を上げて互いの距離をもう少しだけ縮めて、「――えらい、えらい。」星と夜空の浮かぶ手の平を、癖の強い黄白の髪の天辺へ。羽織の袂が彼の顔に掛からないよう左で軽く押さえながら、二度だけ小さな往復で撫でて。それから直ぐに離して腰を戻し、「本当は何かあげられたら良かばってなァ……今はこれが精一杯だねェ。」子供にするようだが、揶揄ではなく至極真剣に。素敵に染めた爪の礼も、絆への労いも、多くの想いをそこに籠めた。「お嫌じゃなけりゃァこれで勘弁してけろ、羊君。」それでも伝え足りないと笑む眉を苦みで垂らして、肩を竦めて首を傾げる茶目っ気で彼を窺う。)
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