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あなたはどんな夢を叶えますか?【オリジナル/戦闘/近未来/途中参加歓迎!】/272


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235: レアリゼ [×]
2023-12-14 19:37:50

>>234


「ぅらぁいッッ!!」

何度も鋸を叩き付けた事で既に千切れかかっていた左腕に、さらに強く力を込めて鋸を振り下ろす。当然耐えられる訳もなく、手首まで再生していた筈の左腕は肘から下が切り落とされてしまった。だがこれでひとまずは落ち着いた。音は遠のき、臭いも薄くなった。大きな溜め息のあと、肩を上下させて深呼吸する。傷は時間をかければ治るが、疲労までは治せない。先程のを沈めるのに体力を使いすぎてしまった。次の行動に支障が出そうだが、友人は既に手負いで銃も撃てないはず。今は何をしているのかと、のっそりとした動作で顔を上げて友人を見やった。
銃口が、自分の頭に向けられていた。何を馬鹿な。あれには弾が入っていないはず……いや、まさか、本当に入っているのか、あの腕で装填を済ませたというのか。本当に装填されているなら、確実に頭を撃ち抜かれる。そうなれば即死は必至だ。先程までは自分が優位だと思っていたのに、いつの間にか逆転されていた。ふふ、と自嘲の笑みがこぼれた。
じっと銃口を見つめていたが、予期していなかった問いかけに真顔になる。何を願ったか、か。ただ音と臭いを消し去りたいと言えばそれだけで済む話ではあるが、何故だろう、今は身の上から話したい気分だった。

「……私、元々はスラムの生まれなんです。暴力や略奪は日常茶飯事で、残飯がご馳走になるくらい食べるものもないような酷い場所でしたよ。その日その日を生きるのもやっとで、食べるものもないから文字通り泥水を啜って生きてきました。そんな環境だから当然体なんて洗えなくて、汚れたらそのまま。だから私の体は次第に常に虫が集るような、汚れまみれで悪臭を放つ不衛生な体になっていました。……その時の、私の周囲をずっと飛び交う不愉快な虫の音
羽音と、体中にこびりついた汚泥と廃棄物と下水道のドブが混じったような臭いが、ずっと私の中に残ってるんですよ。聞こえる筈のない音、臭う筈のない臭いが、ふとしたときに現れるんです。勿論病院にも行きましたよ?お父さんとお母さんには内緒で。だけど治りませんでした。結局幻聴と幻嗅は骨の髄まで染み付いたまま……」

息継ぎのためまた深く深呼吸する。そして、回転鋸を腹部に当てて一気に横に引く。鋭い刃が服ごと皮膚を切り裂き、鮮血が舞った。

「でもひとつだけ、この忌々しい音と臭いから逃れる手段があったんです。それは傷付け合うこと。スラム時代は暴力を振るわれることも振るうこともよくありました……何度死にかけたことか。だけど痛みによる悲鳴が虫の羽音をかき消して、むせ返るような血の匂いがドブみたいな臭いを誤魔化してくれたんです。
病院でも治せなかった音と臭い、その苦しみから解放してくれるのは悲鳴と血だけ。だから私は願ったんです。臭い匂いと苛立つ虫の羽音を消し去りたいから、長く長く傷付け合える力が欲しいと。その結果、手に入れたのがこの力なんです」

切り裂いた腹部の血を、手で乱雑に拭き取った。まだ血の痕が残っているので分かりづらいが、傷口は既に塞がっていた。

「あなたの言う通り、私は化け物です。人と傷付け合うことでしか生きられない化け物。生まれるべきではなかった化け物、それが私なんです。……あなたも、そんな化け物を放っておくわけにはいかないでしょう?」

鋸を落とすようにしてその場に捨てた。がしゃん、と大きな金属音が周囲に響き渡った。

「ひとつ、約束してほしいことがあります。私のことは好きにしてくれて構いません。でもその代わり、私のお父さんとお母さんには危害を加えないと誓ってくれませんか。……もし約束を受けない、あるいは破るというのなら、あなたを殺します。例え私が死んでも、あなたを殺します……」

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