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(3L)君を眷属にしたい。/96


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54: アンディ・トレット [×]
2023-04-04 00:26:21

>エデル

──烏滸がましい、成程。烏滸がましいか。
いや、僕もきっとキミがここで目を閉じてビスクドールのように黙っていたなら、きっと触れようとしていたに違いない

(揺れる長い髪が指先を撫でて抜けていく。この質感を保つためにこの生徒はたくさんのことを調べ、磨き上げてきたのだろう。魔法も使わずに、己のために費やして。透けるような青い瞳を興味深げに見上げたなら、行儀悪くも豪奢な彫り細工の施された図書館の長テーブルに軽く飛んで腰を下ろし、脚を組んで──無造作に僕は自分の髪をぐしゃぐしゃと片手で乱して笑う。それは、僕に触れることを許す免罪符にほかならないのだが)

覚えたさ、水のキミ。いつかその魔法にお目にかかる時が来たならその時は…上手くやってくれよ?
ところで──ああ、髪が乱れてしまった。整えてもらえるかい?僕は今…キミの秘密を知れたからか、あるいはキミが思わず手を伸ばすほどの何かを持っていたという事実に気分がいいんだ



>マリア

──それは、僕の形容詞としては正しくないものだと思うよレディ。
こんな所で寝ていては、午後の授業を明け透けにサボっていることがバレてしまうだろう

(花がほころぶように、あるいは桃色の季節から新緑を表すように──覗いた緑色は酷く穏やかで僕の瞳に反射してドロドロに溶けるみたいだ。小さな呟きが風に攫われなかったのが穏やかな気候の証明だろう、僕は…僕は、目の前の生徒の頬にかかった髪を横に払うように冷たい指先を伸ばして、それからサボりの常習犯としてのアドバイスを告げる。起きたなら良い、こうして声をかけたのも僕と似ているようで似ていない魔力の気配を分かっていて手を伸ばしたのも、似た髪色を持つ者同士の縁としておこう)



>ルカ

──そうか、それは随分な奴がいるものだな

(驚いたように顔を隠して、それでも事情を正確に話す生徒──眷属では無いな、眷属だったなら主人の頼みだとでも言うだろう。図書館の前で両手が塞がっていて、重たい扉を開けられるとは思わない。呆れたように首を振ったなら、早足にその影を追い抜いて…向かう先、図書館の扉を片手で押さえておいてやることにする。早く行きなよ、というように顎で先を示したなら…僕だったら、そんなことを強要してくる奴がいたなら直ぐにでも潰してしまうのに。クラスメイトなら名前を知ることくらい造作もないのに。そんな暗い事を思う。だから、助言にもならない言葉を呟いたのはついというものだ)

それでも“そいつの仕事なら無理にでもやらせておけばいいものを”


>ラルム

(無遠慮にこちらを見下ろすのは天上から好きに嘲笑う月にも似た黄色だ。神にも背を向けたその場所は、血肉にするには噎せ返りそうなワインより濃い鉄の香りがする。が、生憎と、僕は汚れた魔力にも鉄の香りにも痛みにも慣れている…はずだ。足元に転がった生徒の頭を踏まれていようが、僕には関係がない。この場から先に踏み込まない理由は単純だ──靴が汚れるから。マナーを騙るには穢れた世界の中で、僕は小さな唇で“嘘”を言う。名前はその人間を形付ける呪いだ、易々と渡しては痛い目を見ることを僕は…僕の魔法を持って知っている。首を傾ければ頬を撫でる金色の髪、暗闇で光る青い瞳、目の前の男とは随分と対象的な自分の見た目に反吐が出そうだ。少なくともチビと言われたことに腹が立ったのは事実、故に吐く毒も濃くなるというもの)

──僕の名前は、アンネ。僕には近付かないでくれよ、血の汚れは目立つし…キミの返り血で汚れる趣味は無い


>レイア

いや別に、知り合った相手に名前を尋ねるのは当然のことだろう?

(じっとして、と言われれば“この僕に命令するのか”と言いたくもなるが──それは後でいいだろう。脚を組んだまま、目だけを細めて返事をしたなら片足をついっと差し出して。保健室の片隅で、眷属でもない先輩に靴下を脱がさせている後輩というのは…今誰かしら事情を知らない生徒が入ってきたのならどうするつもりなのだろう)


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