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その血は華となり【途中参加 OK】/104


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71:  [×]
2023-03-02 22:22:59

>69 唯織様

自分の吐いた言葉にぽかんと口を開けたかと思えば、ゆっくりと反芻する彼女。
静かに様子を見守っていると、ややあってほわぁという声と共に赤く染まってゆく頬。
箱入りかと思っていたがなかなかに可愛い反応をしてくれる、と悪戯心が引いてくれないわけで。
花憑きという特性以外にも、彼女という人物そのものがヒトを惹きつけるのだろうと微笑ましく思う。
彼女が考えを浮かべては1人で納得してしまう性質を持っているのは学習済みだ。
また何かしらを考え込んでいる彼女の様子に、彼女が自分の世界から帰ってくるまでのんびり待たせてもらおうかなんて思っていれば。
予想外の言葉は脳を揺さぶる。

「…っははは!優しい狼さん、ねぇ。狼さんは軒並み、碌でもない奴しかいないものだけれど…まぁ、優しい狼さんっていうのも面白い」

一瞬の衝撃の後に訪れたのは、愉快さ。
街を染めて、街に染まってきた。
それを望んだのは周りか、自分か。
今まで振る舞ってきた姿に、街の外から来たヒトに新しい解釈を見出されて。
これを愉快とせず、何と言うのか。
それは決して不快ではなく、新しい役目に染まるのも悪くはないと、寧ろ気持ちが上を向くのを感じる。
ぱっと顔を明るくさせる彼女に、まるで今の自分を鏡写しにしたようだと柄にもないことが浮かんで。

「人気なのかねぇ…そりゃあ、散々遊び回っているから顔が広いっていうのはあるだろうけれど。ここの街の奴らは良くも悪くも欲に忠実だから…それを都合良いときに満たしてくれる存在は有難いんじゃないかな」

勿論俺もそれに含まれるけどね、なんて軽い調子で返す。
彼らも自分も愉しめる共通点がそれなわけで。
先程の噂話や時折ひっそりとされている会話が自分が行った遊びを評価するものであれば、彼らが愉しめているという証拠なのだろう。
もしそうならば、それほどに愉しいことはない。

「それにしても残念だな…君の御花が目じゃないところに咲いていたら、少しでも俺を気に入ってもらえたかもしれないのに…ね?」

彼女をしっかりと視界に捉えて分かったのは、視界を大きく覆っている御花と小さな手に握られている白杖。
きっと目が不自由なのだろうと推測するのは容易で。
容姿が特別整っているという自意識はないが、遊びに誘えば断られることの方が珍しいほどには綺麗なのだろうと自負はある。
それには、噂が一人歩きした結果の物珍しさが半分程度を占めているのだろうが。
やはりどうしても揶揄いたく…いや、悪戯したくなるのは性分のようで。
彼女の小さな手を優しく取ると、自分の頬にその手を誘導する。

「どう?俺の顔のかたち。気に入りそう?」

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