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その血は華となり【途中参加 OK】/104


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57: 栗花落 [×]
2023-03-01 18:59:04

>51 カーメル様

「酒が入って誰かを傷つけるヒトは、酒に呑まれてしまった成れの果てだろうね。幸い、呑まれたとしても俺にはお嬢さんに手をあげる趣味はないし、その点は安心していいよ」

悪戯をしすぎたらしく、隣の彼女からは冷静な言葉が返される。
そろそろこの遊びから手を引かねば本格的に嫌われることになりそうだ、と適切な位置まで距離を保つ。
しかし、先程の彼女の姿を思い出してはくつくつと笑いが溢れるのは許して欲しい。
一頻り笑いを反芻していれば、何やら彼女の纏う空気が変わったように感じた。
殴るという言葉から、きっと酒に呑まれた誰かによくないことをされたのだろうとあたりをつける。
それはそれとして、他人の事情に土足で踏み込むほど常識知らずではないため、気づかないふりをして再び酒に口をつける。

「…そう言えば寒くないのかい?俺は酒を飲んでるからいいけれど、何も飲んだり食べたりしていない君には寒いだろう」

彼女をちらりと見て、最も気づくべきだったことに漸く思考がさかれる。
この肌寒さの中、何も持っていない彼女に席だけ勧めるのはよろしくないのではなかろうかと今更ながら意識が向いたのである。
とはいえ、自身が飲んでいる酒以外のものはないため、どうしたものかと思考を巡らせる。



>54 唯織様

「金木犀?…あぁ、そう言えば金木犀も御花の一部だったね。極少量しか咲いていないのに香りがよすぎるんだ。俺の御花のメインはね、曼珠沙華なんだよ。言い換えれば彼岸花。まぁ、あまりいい印象を持つヒトがいない御花なわけだ」

ふわりとした笑みと共に返された言葉に疑問符が浮かぶ。
が、すぐに少ないながらも存在感を放つ御花の一部を思い出した。
メインの曼珠沙華よりも圧倒的に占める割合が低いのに、なぜか香り高いその存在は、鼻が慣れてしまった自分にはとうに忘れたものだった。
意識しても金木犀の香りを強く感じることはできなかったが、隣の彼女が頬を緩めて楽しむ姿にきっといい香りなのだろうと、こちらも頬が緩む。
花に疎い自分には、なぜ曼珠沙華と金木犀、そして水引が咲いているのかわからないが。
きっと隣にいる花に詳しそうな彼女なら、見当がつくのだろう。

「…はは、あまり無警戒すぎると悪いヒトによくないことをされてしまうよ?」?
冗談で出した手に躊躇いなく手を重ねられたことが、意外すぎて反応に遅れてしまう。
警戒心を感じさせないその動きに嬉しさは感じるが、強い危うさを見出してしまって、つい咎めるような言葉を吐いてしまう。?いつものように悪戯でもしかけて悪いヒトを演じようかと考えを巡らせていたところに、そっと優しく撫でられる感覚が与えられる。
それが不快に感じないどころか、懐かしいような、心が落ち着くような何かを感じて胸が詰まる。??「冷たくはないよ。それより、こうした方が暖かいだろう?」

酒を持っていた手を空けて、ゆるゆると自分の手を撫でる彼女の手を両の手で包み込む。
力を込めたら折れてしまいそうな、そんな印象を受けた。
同じ花憑きでも、こんなに異なるのかとやんわり彼女の手を包みながら実感する。

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