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1対1のなりきりチャット
自分のトピックを作る
324:
ギデオン・ノース [×]
2023-01-20 03:29:45
(相手はその唇を、ギデオンのそれに重ねようとまっすぐに近づけてきて。しかしやはり衝動を躊躇ったのだろうか、寸前で踏みとどまった。……その代わりに、温かい呼気をギデオンの口元に感じさせる距離のまま。ふたりきりの静かな小屋で唐突に告げられたのは、しかしもはや三度目にもなる、ひたむきな愛の言葉で。
瞳を揺らして見上げれば、少し顔を離して覗き込んでくる彼女の鮮やかな双眸に、きゅっと強く睨まれる。怒っているような、でも悲しんでいるような、そんな表情。鈍った思考のまま、いったい……と戸惑う視線で問いかけるより早く、ヴィヴィアン本人がその胸中を震える声で語りだす。──あなたの力になりたいのに。ひとりで危ないことばかりして、全然休まないで。危険な薬を勝手に取り入れて、治させてもくれないで。ほとんどしゃくりあげる寸前といった様子で、これまで彼女が堪え続けた数々の感情が、盛り上がった大粒の涙と一緒にぽろぽろと零れ落ち。しまいには堰切ったように、いたいけに罵倒する声が、ギデオンの唖然とした顔に降りかかる。
……こんなヴィヴィアンを、自分は知らない。ギデオンの知る彼女はいつだって、明るく素直で、気丈で知的で、したたかで……そのはずで。何度か喧嘩のようなことになったためしはあるにせよ、彼女はいつも理性的だった。だがこんな風に、自分の客観を気にするそぶりすらかなぐり捨て、燻っていた胸の内を洗いざらい感情的にぶちまけてくるヴィヴィアンなど。この半年の付き合いで、未だかつて、一度だって──つまり彼女は今、それほどまでに。
相手の有り様に目を奪われ続けるギデオンの心が、我知らず大きく動かされたのは。涙目で見下ろしてくるヴィヴィアンが、急に恥じらったかと思えば、今度は盛大な居直りよろしく己の焼きもちを叫んだ瞬間だ。もはや普段の丁寧な口調など消え失せ、ありのままの心情を剥き出しにした彼女の言葉。全身全霊で、女として体当たりしてくる台詞。それはギデオンの胸の奥に、ごく静かな衝撃をもたらし。そして……そのたった一瞬だけで、もう二度と元に戻れなくしてしまった。)
────……、
(力尽きたヴィヴィアンが、こちらの胸板にそっと手を突く。それが体を引き離す前兆だと気が付けば、彼女の細い手首を武骨な片手で素早く掴むのはほとんど反射で。同時に、もう片方の手を彼女の華奢な背に回し。こちらを見る緑の瞳に、いっそ落ち着き払った──けれどどこか熱のこもる──青い視線を絡めてから。無言でぐっと抱き寄せ、ふたり一緒に、ソファーの上へ雪崩れるように倒れ込んでしまう。
積まれた毛布を枕にして仰向けになったギデオンは、ヴィヴィアンを自分の上にほとんど乗せきった状態だ。中途半端では落ち着かないからと、床に下ろしていた脚を器用に動かし、彼女のほっそりした足先ごと掬い上げていた。そうしてさらりと寝そべった今、ソファーの背と反対側、つまり外側の方の膝は、自然に立てている状態。つまるところヴィヴィアンは、ギデオンの太い腕と無駄に長い片脚に、完全に閉じ込められているような状態で。
日々鍛えている以上彼女はそれなりに重みがあるが、しっかり包帯を巻いてくれたおかげで、傷には全く響かない。むしろ彼女のもたらすその存在感と、何よりその体温が、己にはどこまでも心地よくて。ふ、と明らかに満足の緩みが起こったのは、密着している彼女には如実にバレたかもしれない。だが、仮に逃げ出そうとしてもそれが叶わないくらいには、なんだかんだがっちりと捕まえて譲らない隙のなさで。……後に振り返れば、これは結局のところ、熱で朦朧としていたからこそ及んでしまえた蛮行だった。しかし平時ならいざ知らず、先程の出来事もあっていつもどおりでないギデオンには、今の状況に深い満足感を得るばかり。とうとう両手をその背に回し、逃がすものかともう一度抱きしめ。遂にはいっそあやすように、ぽんぽんとヴィヴィアンの頭を撫ではじめながら、穏やかな声で話しかけたのは。──嫌いになったか、という問いかけに、わざわざ否と答えることすら馬鹿馬鹿しかったからだ。)
……勝手、勝手か。なあ、お互いに……勝手をひとつずつ交換しないか。
(/まずはご事情お疲れ様です、楽しみにお待ちしておりました……!
反応しづらいなどとんでもないです、思いが溢れてなりふり構っていられなくなったビビの可愛さにあちこち悶えておりました。
さんざん逃げ回っている以上、初めてのあれはギデオンからすることでせめて男を見せたいなと(現時点では)考えたため、今回確定を用いましたことご了承くださいませ。
また、美味しいシーンゆえ反応をじっくり書かせていただきましたが、字数合わせのお気遣いには及びません。今後ともよろしくお願いいたします。/蹴り可)
325:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-01-21 01:57:46
ッ、ひゃ……っ!!ヒッ!?
( ああ、どうしてこうなんだろう。内心の驚きを隠さず、素直に見開かれた青い瞳。一番見られたくない相手を目の前にして、醜態を晒してばかりの事実に気分が落ち込み、取られた手首への反応が遅れた。するり、と絡め取られた脚に悲鳴をあげたかと思うと、倒れ込んだ先、固くも暖かな、布を挟まない感触の正体に、更に間抜けな声を上げると。猫の子のように跳ね上がろうとして、他でもないギデオンの腕に阻まれてしまう。 )
──……う、やぁ
( 分厚い胸板に押し付けられた顔が、火照るように──いや、太い腕の回る背中も、長い足の触れる腰も、全身が堪らなく熱くて溶けだしそうだ。今までに無いほど心臓が激しく暴れだし、呼吸が浅く早くなるのも恥ずかしくて堪らない。どうにか落ち着こうと吸い込んだ息までギデオンの香りで満たされて、くらくらと脳が揺さぶられる思いがした。そんな今にもキャパオーバーで気絶しそうな意識を必死に保ち、身を固くした瞬間。頭上から響いた笑い声に、これ以上は無いと思っていた脳味噌が一瞬で沸騰して。「──ッ、ちょっと、」と精一杯の、けれどいつもの半分も勢いがない抗議に、頭をもたげかけた時だった。とうとう力強く抱きしめられ、混乱の涙がじわりと滲んだ。今まで示し続けてきた愛情を、そのままそっくり返されるような感覚にどうすればいいかわからなくなってしまう。既にここ数ヶ月の嫉妬や不安など、思考の端からさえ吹きとんで、今はその優しい掌に思いのまま、もっとと強請るように擦り付けてみる。そのまま、穏やかな声に濡れた視線を持ち上げると、ギデオンの真意を計りかね、先程の勝手分を返されるのかと首を傾げ。 )
…………?私に出来ることがあれば、
326:
ギデオン・ノース [×]
2023-01-21 12:22:18
(喉を低く鳴らして笑い、ぐしぐしと押し付けられた栗色の小さな頭を求められるがまま撫でてやる。今のヴィヴィアンはまるで、甘え盛りの犬猫のようだ──半年ほど前なら、実際そうとしか思わなかったろうが。彼女を労わるギデオンの手つきは、しかしもはや、そういった類のものではなかった。それは例えば、実にゆっくり、けれどしっかり、何度も掌で掻き撫でてやる仕草だったり。時たま親指の腹だけで、そっと構いつける優しい仕草だったり。──そうして、火の粉の爆ぜる音を聴きながら、不思議そうにこちらを見上げる相手の目前。しばし目を伏せ、ゆっくりと言葉を探す。ギデオン自身は、先程の彼女が吐露した本音の数々を、別に勝手な発言などと思ってはいない。……“勝手の交換”をしたいなら、もっと別の、ギデオンの要求と同等のそれが必要になるのではないだろうか。)
……おまえのことを躱し続けておいて、今更他の女とどうこうなろうというような腹積もりは持っちゃいない。でも、例えふりだとしても、俺が“そういうこと”をしてるのを見るのは嫌だ、って……話だったよな。
(そうして引き合いに出したのは、いつかの夕食で触れられた話題。自分にギデオンの選択を縛る権利はないとわかっているけれど、目にしてしまったら耐えられない、というあの発言。今ならギデオンにもあれがわかるし、寧ろ彼女よりよっぽどマシなはずの接触ですら、先程は我慢ならなかった。──とはいえ別に、ヴィヴィアンはギデオンの所有物でも何でもない。そして未だに、関係の変化を容認してやれるわけでもない。だからこれは、限りなくぎりぎりの、違反すれすれの要求だ。……そのところを自覚してはいるのだろう、大きな掌を彼女の形の良い後頭部に沿わせると。再び緩く抱きしめることで、いけしゃあしゃあと卑怯な言い回しを使うこちらの顔を──或いは少しだけ、嫉妬や寂しさといった翳りが差した面差しにを──相手に見られてしまわぬよう。さりげなく、或いは露骨に誤魔化してしまい。)
……おまえのそれを、俺もちゃんと聞き届けるから。だからおまえも、俺の相棒でいる間だけは……盗られないでいてくれないか。
このところ、ずっとあいつらに貸してやっていたが。そのまま返ってこないのは……話が違うだろ。
327:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-01-23 01:46:06
それ、は……!
( ギデオンが持ち出したヴィヴィアンの"勝手"。この一ヶ月、二人の関係がぎこちなくなった原因でもあるその言い草を、当の本人であるギデオンの口から聞くことにより、我ながらその理不尽さ、子供っぽさが際立つようで。そうでなくとも、求めるまま与えられる触れ合いに、少しずつ落ち着きを取り戻し、感情的に喚き散らした羞恥が、じわじわと襲いかかって来たところ。気持ちの良い掌への多幸感に耽溺していた思考がスっと冷えた感覚に、それは──本当に気にしなくて良いんです。と起き上がろうとした上半身を、再び緩く抱きしめられてしまい。 )
──……えへ、ただいま、"帰って"来ました……!
( 穏やかな声音とは裏腹に、その"勝手"は何処か切羽詰まった余裕のない響きを孕んでいた。互いに他の異性と触れ合わない、関係を持たない誓い──それが、どんな意味を持つのか。押し付けられた頬が緩むのが抑えられずに。何処か不安げに回された腕の中、ぷは、と顔を横に逸らすと、オレンジ色に揺れる暖炉の炎が目に映る。直接鼓膜を揺らすトクトクと少し早い、己のものでは無い心臓の鼓動さえ愛しくて。こんな大胆なことをしておきながら、何処か自信の足りないこの人を、安心させてあげたい──そう最後の抵抗とばかりに立てていた膝を伸ばすと、背中には回せない腕をその胸の横に這わすと、小さな笑い声をたてながら精一杯抱き締め返した。 )
そんなこと言われたら、離せるわけ、ないじゃないですか……
328:
ギデオン・ノース [×]
2023-01-23 08:51:38
(こちらの提案を相手が拒まなかったこと、寧ろどうやら喜ばれたらしいこと。その華奢な細腕で、優しく抱きしめ返してきたこと。そして何より、“ただいま”と……ギデオンの元に“帰ってきた”と、ヴィヴィアン自身が表現してくれたこと。その全てが、先程の一件以来密かに張り詰め続けていたギデオンの身体から、一切の不要な力を安らかに抜け落ちさせ、深い安心感をもたらす。しかしそうなればその途端、ぐらり、と重い高熱の眩暈が再来してしまうのも、仕方のない話ではあって。──言わずもがな、例の副作用だ。そっちが片付いたならこっちも片付けろ、と言わんばかりのタイミングでぶり返してくれたものだが、しかし。
体調を崩したとき人は人肌恋しくなるもの、とはいったい誰の名言だったか。安心で再び朦朧としはじめたギデオンは、相手の小さな笑い声に喉をごく低く鳴らして曖昧に応じると。腕の中のヴィヴィアンごと、ソファーの上で徐に横向きの体勢に移り。枕にしていた毛布のひとつを引っ張り出し、片手で器用に広げ、ふたりとも暖をとれるようばさりと広く覆いかぶせてしまった。──後にはたして嘘か真か、この時のことは高熱であまり覚えていないとギデオンは言い訳するのだが。カレトヴルッフ屈指のヒーラーを贅沢にも湯たんぽ代わりにした、完全な抱き枕体勢の確立である。すり、と相手の後頭部に顔を寄せて安心を貪ると、しかしこの有り様でも未だにまだ気恥ずかしさはあるのだろう、見え透いた言い訳を掠れ声で取り繕って。)
………今夜の、ところは……離さないでくれ。
魔力の………補給が……必要なんだ。
329:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-01-26 02:55:21
……ギデオンさんが起きるまで、絶対隣にいますから。
だから……おやすみなさい、愛してます。
( 簡素なソファーベッドは、二人が横になるには些か狭い。大きなギデオンが落ちない様、できるだけ体を縮込めると、そんな小さな隙間さえ許さないとでもいうかのように、後頭部へと摺り寄せられる体温が愛しくも、そのあまりの弱り様にやはり心配が勝ってしまう。──どうか、この時ばかりは不安や恐怖の一切を取り払って、穏やかな休息を得てほしい。その一心で、相手の甘えに低い声で返事をすると。こちらからも腕を伸ばして形の良い頭を抱き寄せ、指通りの良い金髪を一房掬って、目の前の耳珠へとそっと口付けた。
暫くして聞こえてきた深い呼吸に──ふわり、と大きな欠伸が漏れる。全身を包む熱が心地良い。ここ暫く、相棒と離れて過ごした時間の反動と、明日からもこの人の隣にいられる、その安堵に肩の力が抜けたのはビビもまた同じ。腕の中のギデオンと約束した以上、ここを離れて仕事に戻る気は毛頭ないが──暖炉があるから少し、乾燥が気になる。寝具も毛布一枚では心許ないし……休憩室に使われるなら、誰かが来てしまう前にシャツを閉じなくちゃ、体勢もせめてもう少し……そう既に睡魔で半分瞳を閉じながらも、次々と浮かぶ課題の一つでもこなせたのなら。この晩、ギデオンがビビを抱き枕にした、などという噂でギルドが持ち切りになる事態になど陥らなかっただろう。 )
( そうしてあまりにあっけなく、幸せの“お呪い”騒動は幕を閉じた。あの朝、多少強引にでも弱っていたギデオンを先に帰すと、一晩分の疲れを滲ませたエドワードに第一声。「昨晩、真っ先に君たちを見つけて、休憩所を別に用意する羽目になったのは僕だよ」とかまされ、色んな意味で勢いよく頭を下げる羽目になる。そうして、もうわかりきっているから。とビビの返答から逃げ回る彼を捕まえ、もう一度。今度はゆっくり深々と頭を下げると、「そういう融通が利かないところ……も、好ましい、のが悔しいな」と自分の顎に手を添えた彼の表情は、やはりどこまでも胡散臭くて、「まあ、現場指揮の手柄はいただいたからね」と、その軽薄さにどこか救われていたことを思い知る。ニールはといえば、今回の対外的な火消しに追われながらも、上層部を糾弾する準備を進めているらしい。今までの傲慢なお役所仕事の恨みも相まって、しばらくは新聞や雑誌で魔法省の名を見続けることになりそうだ。アメリアを始め、呪いの被害者達も順調に快方に向かっている。その一方で、この件が一気に有名になったことで、自分の不調もそれによるものではないか、という訴えがあちこちで噴出し、最近は専らそんな市民たちの診察や往診に夜まで追われる毎日で、結局ギデオンには殆ど会えていない。
──そうして、あの晩から一週間程たったある日。久しぶりに夕方までに仕事が片付き、ギルドに一日の報告書を提出した後。中央の噴水が夕焼けの光を美しく反射する東広場にて。賑わいから少し離れた“お決まりのベンチ”に腰を掛けてから──はた、と。もう終業後の待ち合わせは不要だというのに、どうやら疲れからか無意識に、この広場へと歩を進めてしまっていたらしい。──なにをやってるんだか。折角早く帰れる日だというのに、忙しくてたまっていた掃除や、作り置きおかずの準備など、幾らでもやることはある。薄紫色になり始めた東の空に、やれやれと漏らした息の白さに苦笑しながら、一度下ろしてしまった重い腰をなんとか持ち上げて。 )
──……今日は、何か買って帰ろう、
330:
ギデオン・ノース [×]
2023-01-27 17:04:22
(あくる朝。一晩も休んだからもう大丈夫だ、と頑なに言い張るギデオンと、ヒーラーとしてそれを毅然と許さぬヴィヴィアンは、昨夜の甘い余韻どころか、犬も食わない何とやらを繰り広げていたのだが。そこにドニーの手配した協会の馬車が、精密検査を受けてほしいとギデオンを乗せにやってきた。検温やら採血やら魔法薬の投薬やら、被験者たるギデオン相手にやりたいことが山ほど待ち受けているしい。ほら早く、とヴィヴィアンに力強く背中を押されてしまえば、さしもの頑固者も渋々諦めざるを得ず。またな、と小声で告げると、長い長い一夜を過ごした教会を先に引き上げることにして。
そうして事件から三日が過ぎたころ。しっかり全快したギデオンは、ギルドマスターに直接の報告だけ上げるべく、カレトヴルッフのエントランスをひとり潜り抜けたのだが。帰還早々、古馴染みの野郎どもにいきなり罵詈雑言を飛ばされ、若い青年たちにギガントスを見るかの如き絶望の表情を向けられ。クロスボウやハルバードを構える剣呑な空気が勃発し、しまいには喚くスヴェトラーナに召喚獣をけしかけられる──という、なんだか夏にもあったような状況に襲いかかられ、嫌な予感が背筋を走る。くつくつ笑っているデレクに、おい何が、と小声で尋ねてみたところ。どうやら、“治療にかこつけてギデオンがビビを抱き枕にした”などという由々しき噂が出回っているらしい。──しかし今回はなまじ嘘でもないだけに、周囲からの吊るし上げにも、夏とは違ってただただ「記憶にない」と苦しい言い訳を絞り出すばかり。そんなギデオンの醜態と、喧々囂々の冒険者たちを、受付にいるマリアとエリザベスは、どんな目で眺めていただろうか。
ロビーの修羅場をどうにか切り抜け、ようやくギルドマスターへの報告に向かえば。今回もまた一言二言の余計なお世話とともに、「これを彼女と引き受けるように」と新たなクエストを回される。今度は巨人狩りだ──どうやらカレトヴルッフの頭領は、自分と彼女のもたらす成果をいたく気に入っているらしい。抜け目のないエドワードを通じて、憲兵団との太いパイプもいつの間にやら築いたという。将来有望な魔法官僚ことニールとも、上を挟まず連絡を取る手段を確保したそうだ。“彼女”はカレトヴルッフにとって有用な人脈をもたらしてくれるようだから、今後“も”離さないように──と、なんだか意味深な言い回しで言い含められれば、微妙な顔を浮かべるのみで部屋を後にするほかなく。
そういえば、捜査に協力してくれたあいつらに礼を言い忘れたな……と思いながら、最後の帰りがけに自分の私書箱を確かめてみれば。想定していたもののほかに、どうやら三通の新しい手紙が入っている。人気のない談話室に移り、暖炉の火に当たりながら確かめれば。まず最初の手紙は、娼館『サテュリオン』のやり手婆からだ。今度うちに来たら、アドリアーナの揚げ代を一度だけまけてやるよ──この横柄なたった一言だけ。婆なりの感謝の手紙らしい、読み捨てても構わないだろう。次の二つ目は、宿『ウトピア』のアイリーン。アメリアのことありがとうね、あの子を治してくれたビビちゃんにも是非宜しく伝えて。式には絶対呼びなさいよ? これも何のことやらである。そして三通目……これにはしかし、送り主の名前がどこにも記されておらず、切手すら貼られていなかった。怪訝に思いながら封を開ければ、そこにはやけに達筆な文字。『元々、この仕事が明けてからすぐ、山の向こうに潜らされる予定だったのよ。だからちょっとくらい、一緒に昔を懐かしみたかったのに。最後の最後になって、あんな光景見せられたこっちの身にもなってよね。あの夜こと、あたしは絶対謝ったりしないから!』。……ああ、なるほど。文面こそ素直ではないが、どうやら彼女なりに思うところがあって、わざわざこんなものをこっそり置いていったらしい。不穏だったこの件も、どうやらひと段落ついたようだ。口の端を小さく緩めると、三通ともくしゃりと丸め、燃え盛る火に食わせておく。──長く長く捜査してきたまじない事件の騒動は、これでようやく、終幕となった。)
(──さて、それからさらに数日後。このところギデオンの相棒は、まじない事件の余波に駆り出されて忙しくしているらしい。が、ついさっき報告書を出して帰っていったぞと耳にして、それならまだ見つかるか、と思いながら探してみれば。ギデオン自身もごく自然と赴いた東広場、その“いつもの場所”に見慣れたヒーラーの背中を見つけて。──ほんの一瞬脳裏をよぎったのは、このところギルドで騒がれている自分自身の所業のこと。なんだかんだあの朝以来会っていなかったが……いや、今はとにかくクエストの話だ。そう密かに頭を切り替えると、いつもの涼やかな表情を即座に取り繕い。「魔装具探しなら付き合うぞ」と背後から話しかけ、歩み寄りながら相手に差し出したのは、クエストの依頼書で。──魔法巨人を扱うとあって、レベルの高い討伐要求と、やけに高額な報酬が記載されているものの。目立つ内容だというのに、ギルドの募集掲示板では見かけた覚えがないことだろう。)
331:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-01-28 00:38:00
( ──適当な総菜を買って帰るくらいなら、いっそ魔導学院にでも寄って、レイン先生にお会いしようか。尊敬する恩師からは二日程前、やたら堅苦しく仰々しい礼状が送られて来た。書面の最後には直接お礼に伺いたい旨と同時に、忙しいであろう教え子を慮る文章が並べられていたが、此方から会いに来るなとは書かれていなかったはずだ。先生からのお手紙を入れる額縁を探してるんです、なんて伝えたら、きっと呆れたように溜息をついて、でも、きっと少しだけ笑ってくださるだろう。そうだ、それがいい──と、どうしようもない寂しさに自分を誤魔化しながら、その長い足を踏み出しかけた瞬間だった。
今この瞬間、恩師よりも誰よりも、世界で一番待ち望んでいた相手の声に、表情筋を働かせるより素早く、ぐるん!と勢いよく体が動く。そうして次の瞬間には、心から嬉しそうに満面の笑みを浮かべながら「ギデオンさん!」と、最愛の相棒に此方からも、飛び跳ねるように駆け寄って。ギデオンの経過について、胸焼けでも起こしたような表情を浮かべるリズに頼み込み、どれだけ忙しくとも耳にしてはいたものの「熱、下がって本当に良かったです。どこかお辛いところはないですか?」と、自分の目で確認してやっと心からの安心を浮かべられた。そうしてやっと受け取った依頼書に目を落とすと、普段掲示板に貼られるそれとは桁違いの報酬に目を丸くする。内容の難易度も相まって、こんなものが貼られていれば、絶対に見逃すことなどなかっただろう。──その依頼の難易度や、事件の特殊性により、一般の冒険者には任せられない依頼が、個人的に下されることがある……ということは、その生い立ち上、耳にしたことはあるが、それこそギデオンの様なほんの一部のベテランに下されるものであって、若手のヴィヴィアンには縁がない。──そういえば、と先程の相手の声掛けの意図も測り兼ね、不思議そうにギデオンを見上げると、小さく首を傾げて説明を促して。 )
──魔装具って……アレ? ……この依頼、私がさっき掲示板を見た時はこんなのなかったような……?
332:
ギデオン・ノース [×]
2023-01-28 04:10:54
(あまりにも“いつもどおり”な相手の様子を目の当たりにして、仕方のなさそうな苦笑を漏らす。……ついこの間まで、彼女との関係は何週間も拗れきっていたはずなのに。不思議なもので、小屋で過ごしたあのたった一晩が、全てをほどいてくれたらしい。「ああ、もう大丈夫だ。クエストに出てもいいって、しっかり許可も貰ってきた」と、若い相棒を安心させるべく鷹揚に頷くと。相手のもっともな質問に、意味ありげに片眉を上げ。)
当然だ、非公開のクエストだからな。……ギルドマスター直々に、おまえをご指名だ。
(そう、指名されたのは相手ひとり──今回のギデオンの本質は、あくまで監督役である。魔導学院研究部からの転身という異例の経歴を持つヴィヴィアンは、並みの冒険者よりやや周回遅れのキャリアを辿っている真っ最中。21歳でデビューした女ヒーラー、というその経歴書だけを見て、余程才能がないのかと鼻を鳴らす愚か者は未だに多い。だが実態は、寧ろその逆だ──彼女は類稀なる天才である。何年もかかるはずの見習い期間をたった一年で修了し、そこからも下積みで修練。ヴァイツ狩りのような地道なクエストでも着実に指揮能力を伸ばしたかと思えば、グランポートでは古代魔法の習得を、建国祭では救急医療のマネジメントを、この秋のまじない事件では数えきれないほどの解呪治療や呪具解析をやり遂げてみせた。彼女のこなせる仕事の質が並みのヒーラーにとどまらないのはもはや火を見るより明らかで、ならばより高度なクエストを、と上が期待するのも道理である。──要するにヴィヴィアンは、国内最高レベルの大型冒険者ギルドにて、次世代の星としっかり見定められているのだ。
ならばその補佐をするのが、自分のような余力ある熟練戦士の務めのうち。そういうわけで今回も、クエストのお供はこの自分である。「そろそろ飽きる頃合いかもしれないが、今回も俺が一緒に行くことになっている。おまえの活躍のほどを報告するための……いわばお目付け役ってところだ」と、淡々とした口調ながらも冗談めかして教えれば。紙面上の備考欄に指を添え、記された情報を彼女と一緒に確かめつつ。これからの予定を問いかけるように、相手の顔を真剣に見下ろして。)
今回の討伐対象は、ヨトゥンとフリームクルス……どちらも氷結系の魔法を使う巨人族だ。あいつらの魔法は少し特殊だから、きちんとした装備が入り用になる。今回は他所のギルドの欠員に協力しに行くわけだから、向こうで用意はしてくれるだろうが……これからこういったクエストに参加することが増えるなら、自分専用のものをきちんと買って使い込む方がいいだろう。
出発するなら明後日だろうし、俺はまだ有給中で時間に余裕がある。今夜でも明日でも、おまえの都合に合う方で、良い店を紹介できるが……どうする?
333:
ギデオン・ノース [×]
2023-01-28 04:25:58
(※些事ではありますが、フリームクルスではなくフリームスルスでした。お詫びして訂正いたします……!/蹴り可)
334:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-01-30 13:25:03
──……すご…い……ありがとうございます、ギデオンさんのお陰です……!
( 意味深に片眉を上げたギデオンに、緑色の大きな瞳がキラキラと輝いて、こぼれ落ちんばかりに見開かれる。ヨトゥンもフリームスルスも、今までのビビには声もかからない危険な魔物達だ。遅まきにして選んだ冒険者の道、その選択を後悔したことはないが、全く焦りがなかったと言えば嘘になる。──早く憧れの冒険者達に近づきたい。その一心で、実力以上の依頼にばかり手を伸ばし、跡が残るような怪我を負ったこともある。それが今、目の前に差し出された秘匿依頼書に、興奮の収まらない様子でギデオンを交互に仰ぎ見ると。その表情を冒険者らしいものに引き締め直し、熱い視線で相棒をじっと見つめて。──作戦指揮の経験を積めと言ったのも、実際に現場で格下のビビの意見を常に尊重し、フォローしてくれたのも、全部この人だ。直接彼が関わっていない依頼でさえ、ギデオンの言葉がビビにとって、どれだけ力になったことか。その上、『これからこういったクエストに参加することが増えるなら、』と当たり前のように次を信じてくれている。そんな真剣な表情の相手に応えたくて、半ば噛み付く勢いで顎をグッとあげれば、力強く胸の前で両拳を握る。そうして、その距離の近さにニッと歯を見せ悪戯っぽく微笑むと、内容こそ本気の全く冗談ではないものの、また再びか、それ以上に強気な軽口を叩ける関係に戻れたことを、心から嬉しく思って破顔し。 )
──今夜!今夜は、もう帰るだけなので、今からお願いします!
……っと、それから、私がギデオンさんに飽きるわけないんですから、そろそろ諦めてくださるご予定は?
( / お世話になっております。ビビの背後です。幸せのお呪い編』ありがとうございました!
これまで最大の大長編で、色々反省点もございますが、昔の女性関係や夫婦漫才、クソデカ感情等、春からずっと見たかったものが形となり、個人的には非常に楽しませていただき、大満足のボリュームでした。重ね重ね感謝の気持ちしかございません。
病み上がりのギデオン様を、無理させるような描写を防ぐため、エピローグ及び締めまでに時間をおいたのですが、背後様の秘匿クエストの伏線回収が鮮やかすぎて……このまま、二回目のダブルベッド事件に突入するのもありかと考えております。勿論、背後様の方で既に別のアイデアをお持ちでしたら、共有していただければ幸いです。
それにあたり、ビビとニールの関係がマリア様に伝わるタイミングを時系列に追加させていただきました。
毎度時系列の更新ありがとうございます。
番外編が間に合わず非常に申し訳ございません。
ニュアンスとしては、主にギデオン様との関係の悩みを打ち明ける際に、昔のトラウマを漏らしたビビを心配し、結果的に女性冒険者達を守る立場にいるマリア様にリズが相談、及び念の為に共有した……という流れだと思います。マリア様に伝えるにあたり、リズはビビに許可をとっているはずですが、そこら辺は背後様のやりやすいように改変していただければ幸いです。
次回は息抜きも兼ねての短編だと思いますので、戦闘描写はざっくり飛ばして、同じ部屋に止まる経緯まで飛んでもいいような、今回ビビに沢山見せ場を頂いたので、ギデオン様の格好良いシーンも是非見て見たいような、その他ご要望があれば教えていただけると幸いです!
いつも誠にありがとうございます。今後ともよろしくお願い致します! )
335:
ギデオン・ノース [×]
2023-01-30 17:55:43
……俺をずっと見てきたなら、どれだけ強情かってのも、そろそろわかってくるはずだろう。
(可笑しそうに喉を鳴らし、青い瞳を笑みに細める。“自分をずっと見てきたなら”──臆面もなくそう言い切ってしまえるのは、相手か日々伝えるまっすぐな愛情が、きちんとこちらに届いているから。そして自分の頑固さを笑い草にしてしまえるのも、先日までのすれ違いがようやく晴れた表れと言えるだろう。結局はギデオン自身も、こうして相手の好意をあれこれかわしておきながら、以前の距離感に戻れたことを喜んでいるのには違いない。──そして、その表現を躊躇うほど、相手を遠ざけたいわけでもないのだ。
そうして今一度繋がりを結び直せば、相手と連れ立って、夕暮れに沈む大通りの方へと向かう。乗り合い馬車を捕まえると、住宅街行きとは違い混んでいないそれにゆったりと腰掛けて。──ギデオンはあくまで戦士職、広義で言えば魔法使いに含まれるヒーラーとは職種が異なる。それでもこの数十年の経験で、他職の纏う装備についても、それなりに目が利くようになっている。職人街の親方たちも、若く熱心なビビを前にすれば、あれこれ蘊蓄を語りながら手頃なそれを見積もってくれるだろう。──そんなことを語りながら、蹄が石畳を打ち鳴らす快い音を聞き続け。)
(/こちらこそ、いつもお世話になっております!
まず、たくさんの打ち合わせをしながら共に駆け抜けた『幸せのお呪い編』について。
背後も本当に楽しかったです、約5ヵ月弱もの間ありがとうございました……! 個人的に、ビビの恋心がいたいけなそれだけでなく、しっかりと大人の女性のそれに熟成していく過程を眺めさせていただいたことが、今回いちばんの喜びでした。ギデオン以上に背後の方が、相も変わらず骨抜きにされまくっております……。また、この変化を見守った後もで以前の元気なビビを今回再び拝むことができて、なんとお礼を申し上げればよろしいやら。本当にありがとうございます。
次は順番を前後して、ビビのトラウマ情報について。
メインストーリー時系列を確認させていただきました、追記ありがとうございます!
番外編についてはどうかお気になさらず。主様が楽しんで書かれる分にはもちろん大変楽しみなのですが、万一「書くといったからには書かなきゃ……」という感じになっておりましたら、そこは全然ご放念ください。ただでさえご多忙と存じておりますし、何より大事な本編を一緒に楽しんでいただければ、背後にとってそれに勝る喜びはありません。(背後自身、ジャネットのキャラクター像を脳内で悶々とこねくり回し続けたまま、書くといったサイドストーリーの更新を停滞状態にしておりますので……)
ビビ→リズ→マリアで、192日目付近で情報が伝わることについても把握いたしました。
ビビがリズに許可を与えたのはマリアを信頼してのことだと思いますし、マリアのキャラクター上、ビビのセンシティブなトラウマを明け透けな形でギデオンに話すことはなさそうかな、と思っています。
そもそもおそらく、共有前に当のギデオンが抱き枕事件をやらかしておりますし………(※共有が遅れた原因として、あの日まではギデオンが連日連夜クエストに駆られほとんどギルドに帰らなかったこと/魔法省・憲兵団の介入でまじない捜査が本格化したためギルドの事務方も多忙になったこと、があっただろうなと考えています)。
とはいえ、ダブルベッド事件前にギデオンが知る方が事件当夜が面白いので()、今描写しているギデオンとビビの再会当日・前日・クエスト出発前、のどこかで耳に入れさせる予定です。短めのストーリーにてまとめますので、少々お待ちくださいませ!
また、ダブルベッド事件について。
元々「次の短編にダブルベッド事件再来を据える」というお話をしておりましたので、今回の巨人討伐クエストもそのバックボーンとしてアドリブさせていただきました。ですから、このまま突入するという主様のお考えに全く異論ございません。ふたりの直面するクエストをじっくり丁寧に描写するのはおまじない編で楽しみましたので、息抜き重視で戦闘描写はざっくり飛ばす、というのにも大賛成です! 無論、美味しいところだけ描写する……という目的で、ギデオンの活躍シーンを主様がご要望の場合、それに沿わせていただければと。
またその手前、現在進行中のダブルベッド事件再来変プロローグ部分(?)について。以前、建国祭とは関係のない普段のキングストンの風景を見てみたい、と仰っていた気がするので、「ともに魔装具を買いに行く」というお買い物イベントの導入として魔装具の話を出してみた背景がございます。
とはいえ、背後としては「どうしてもやりたい」というものでも、何かイメージがあるものでも決してなく、もし主様的に美味しいシーンが見込めそうであれば……という感じです。ですので今回のロルの続きは、このまま夜のお買い物でも、巨人狩りの美味しい部分でも、いよいよダブルベッド事件再来でも、背後様にとっていちばん心躍る方向へ転がしていただければ幸いです。
こちらからの要望としては一点(?)、ロル中で描写したいわけではなく、今回の巨人討伐に関するバックグラウンドの提案がございます。
【ストーリー中の情報】
・難易度の高いクエストとあって、今回はギデオンとビビのみで動くのではなく、出向先の既存大型パーティーに出向・参加する形。
・出向先のギルドでは、グランポート編の腐りきっていたトリアイナとは違い、まともな引き継ぎやバックアップを事前にしてもらえた=まともな出向クエストを、ビビがきちんと経験し直せた。
・ギデオンは他の現地戦士と連携し、前線で戦闘する役割。若手のビビは、彼ひとりではなく多人数のベテラン戦士を一挙支援する仕事に奔走=上位ランク帯で求められる立ち回りをこの機会に学ぶ。
・互いに、ふたりきりの時には見られない相手の姿を見る、という新鮮な体験を得る(戦士のひとりとして同格の冒険者と肩を並べるギデオンや、他の年配戦士を前に後輩側として指示を聞く側に回るギデオン、世の中にごろごろいるハイレベルな剣士の動きを活かすべく引き立て役に回るギデオン/あちこちから治療・支援要請を受けつつ上級ヒーラーにも(育成のため)しごかれてハードに揉まれるビビ、カレトヴルッフではもはや有名になっていたその高い魔法力・脳筋スタイルで周囲の度肝を抜きざわめかれるビビ、早くも上位ランク帯に交じることで他所のギルドにも感心され可愛がられるビビ……など? あくまで例として)。
【メタ的な狙い】
・ベテランのギデオンと若手のビビが毎回ふたりきりで動くのは変なので、普通に他人ありきのパーティーに交じるパターンの一例として。(なりきりのロルは一対一のキャラクター描写に向いている一方多人数ものが難しいため、こういうダイジェスト形式で「経験したことにする」のを繰り返すのがよさそう)
・「カレトヴルッフの意向によりビビがどんどん育っていく」ことで、だんだんギデオンとビビのクエストの水準が近づき、今後のクエストをふたりで引き受けても不自然でなくなる
・多人数と一緒に動くクエストの後、帰還時にようやくふたりきりになれる──という経緯のもと、改めての交流が一層美味しくはかどる
……というものをぼんやりと考えております、いかがでしょうか。
ついつい詳細部分まで考えこんでしまう背後の悪癖が大爆発しておりますが、認識のすり合わせの一案としてご検討いただければ幸いです……!
こちらこそ、いつもありがとうございます。今回大変長文になってしまいましたので、お返事は必要な箇所の身にとどめていただいて構いません、毎度ご迷惑をおかけします……!)
336:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-02 15:57:58
──狡い、そう言われたら何も言えないじゃないですか!
( ギデオンだけを見つめ続けてきたことに関しては、この半年間誰にも負けない自負がある。それを逆手に取られると、その艶やかな唇を不満げに尖らせつつも。いつもどこか自罰的な相棒が、ビビの好意を信じて疑わない様子を目の前にして、半年間の成果に暖かな達成感で頬が緩む。そうして自然なエスコートに導かれるまま踏み入れた、規則正しく揺れる馬車の中。装備に関してあれこれと、素直な質問を口にしては、ギデオンの装備に興味深く目を丸くしたり、まだ見ぬ自分の装備を想像したりと、馬車を降りるその瞬間まで。久しぶりに迎えられた気の置けない時間に、自然と滲み出る笑顔が絶やされることは無く。 )
──……わあ!
( 心地よい馬車の音に揺られること十数分。夕方のキングストン職人街は、西の空のそれ以外にも、あちこちで炉の光がオレンジに輝いて、この無計画に、かつ機能的に増築を繰り返されたろうバラックや、不思議な形の建物が並ぶ街並みを、美しく染め上げている。店や工房の主人達である親方や、一人前の職人達は朝が早いと聞く。この時間に炉を使っているのは、未だ修行中の弟子達なのだろう。向かいの工房で、なにやら爆発したような音が響いたかと思うと、黒い煙とともにビビと同年代らしい若者たちが転がり出てくるし、あちこちからリズミカルな槌の音が響いている。そんな賑やかな光景に、実家からも下宿からも、大して離れている訳では無いのだが、父によれば一度、学院入学時に杖を作りに来たきり、とんと縁がなかった地域に目を輝かせると、その興奮の収まらぬ表情を素直にギデオンへと向け。夕刻の街へと踏み出す前に、自然にその腕へと手をかけようとして。 )
すごくワクワクしてきました……!早く行きましょう!
( / ご丁寧なお褒めの言葉ありがとうございます。
こちらこそ、ギデオン様のビビへの想いの変化や、大切にしたいがために余裕のなくなっていく姿に、キュンキュンし通しでした!毎回映画のような言い回しも本当に素敵で、何度も何度も読み返してはうっとりしております!
ビビのトラウマ描写について。
番外編についても、そう仰っていただけますと非常にありがたいです。お気遣いも本当にありがとうございます。
もう展開についてはほぼ思いついており、途中まで書いてもいるのですが、できるだけ番外編よりは本編を優先(それでもお待たせしてばかりで、誠に申し訳ございません)したいと思っており、大した内容でもないのですが、気長にお待ちいただければ幸いです。
また、時系列の把握もありがとうございます。共有が遅れた経緯までご用意していただいて、なんとお礼を申し上げればよろしいか、本当にありがとうございます。
短編非常に楽しませていただきました!マリア様とギデオン様間の絶妙な空気感が大好きでして、『Confession』の頃から、非常に推しコンビだったりします。ギデオン様の、自分のピンチ目の前に次々とフラグを立てていくスタイルには、いつもお腹の底から笑わせていただいております。
(まあ、そう何度も同衾することはないだろ……←あるんだなあそれが……)
ダブルベッド編の展開についてもご確認ありがとうございました。
当方も息抜き重視でざっくり進行がいいかと考えておりましたので、意見が一致して良かったです。ギデオン様のシリアスなご活躍は『黒い館編』まで心待ちにしております!
また、お買い物デートについて、以前当方が漏らした妄想を覚えていてくださり、本当にありがとうございます。秘匿クエストに関わるにあたり、丁度ビビの装備が心許なく感じ始めていたのと、折角拾っていただきましたので、少しだけ描写させていただいたのですが、当方としても今すぐやりたい展開がある訳ではなく……1,2往復でダブルベッド事件勃発に飛ぶ感じがよろしいかなと。
バックグラウンドについても確認致しました!
毎度素晴らしいご提案をありがとうございます。何一つ反論ございませんのと、既に大変お待たせしてしまっておりますので、お言葉に甘え、ひとつひとつへの返答は割愛させていただきます。
今回も大変お待たせ致しました。これ以上何も無ければ、返信には及びません。久しぶりのイチャイチャ回もよろしくお願い致します! )
337:
ギデオン・ノース [×]
2023-02-03 02:31:03
(目を輝かせる相棒につられて、こちらの口元もつい緩む。こんなにはしゃいでくれるのなら、わざわざこうして付き添いに来た甲斐があるというものだ。そのまま何ら考えず、相手の求めに従って同じようにごく自然と、腕を差し出しかけたものの。「あれっ、ギデオンの旦那でねえの!」と、やけによく通る明るい声を投げかけられれば、未遂のままはたと振り返って。
そこにいたのは、先程通りに転がり出てきた煤だらけの連中である。真っ黒な顔でにこにこしている先頭の青年は、よくよく見ればギデオンの知り合いだ──元々カレトヴルッフの見習い小僧だった男で、他の少年たちと一緒にギデオンの手ほどきを受けていた。しかしそのうち、剣を握るより研ぐ方が性に合うと気付き、ギルドを出て工匠の道へ入ったのが、四年ほど前の話。いつかギデオンの魔剣を扱うのが憧れのひとつだそうで、こうして顔を合わせるたびに、そいつを研がせてくれないかと熱心にせがんでくる、そんな気安い関係である。──そうヴィヴィアンに紹介していたところ、やはりブレずに「今日こそその気になってくれたんで!?」と食いついてくるものだから。相棒に(な?)という可笑しそうな視線を寄越すと、「いや、お前にはまだ10年早い」と本音ながらも勿体ぶって、青年の肩を盛大に落とさせた。
その後ようやく、ヴィヴィアンのことを彼と仲間たちに紹介し。明後日の巨人狩りのため、彼女の装備を探しに来たのだと説明すれば、そこからが大騒ぎだった。最初こそヴィヴィアンの美貌にデレデレしていたものの、もともと彼らは、可愛い娘の手なんぞより鑿や玉捻を握ってきたような連中である。ざっと輪を成したと思えば、ああだこうだと熱っぽく、当のヴィヴィアンとギデオンすらそっちのけで真剣に議論しはじめる有り様で。──今日中に揃えるってぇと、オーダーメイドは論外か。そんじゃうちは駄目だなあ、おめえんとこはどうよ、金具足りてっか。先月卸した革で実は一品作ってある、けどもうちじゃマントは織らねえ。それならあっちの川向こうの工房はどうだ、ここにはいねえがあいつの腕なら、エトセトラエトセトラ。そうしてひとしきりやいやい話し込んだかと思うと、煤を拭いたさっきの青年が気っ風良く名乗りを上げてきた。どうやら、ヴィヴィアン相手にセールスツアーを決行するつもりらしい。新進気鋭の見習い職人たちが製作した品を順繰りに紹介する代わりに、もし買い上げてくれるのならば、相場よりかなり安くしてくれるそうだ──若い冒険者の懐にとってかなり助かる話だろう。ヴィヴィアンに頷きかけ、この話に安心して乗って良いと伝える。職人気質の彼らは冒険者に嘘をつかない。何より、ギデオンの目で見て相応しくない品であれば、それにはきっちり口を出すつもりだ。それにこの機会を利用して、次世代の職人たちと関係を築いておけるならば。それは長い目で見たとき、ヴィヴィアンの冒険者業に非常に役立つに違いない。)
(/諸々温かいお言葉をありがとうございます……! こちらの提案等無理がないようで安心いたしました。
今回、主様が色鮮やかに描写する職人街の様子に大興奮してしまいまして、お買い物はさくっと……あくまでもさくっと……! と思いつつついつい確定多々で盛り込んでしまいました。毎度素敵な世界を見せてくださり、本当にありがとうございます。主様の方でも、ギデオンの言動含めお好きなように、お好きな程度に展開を動かしてくださいませ!
以上、概ねお礼ですので、ご返信等のお気遣いなく。こちらこそ、いよいよ始まる二度目の平和な一波乱も、よろしくお願いいたします……!)
338:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-03 16:39:10
( ギデオンがとても顔の広い人物だということは、ここ数カ月でよく知ったことの一つだ。どこへ行っても誰かしらから慕われている様子に、謎の誇らしさを覚える一方で、青年の声掛けにより空ぶった腕を、密かにそっと握りしめ。しかし、向けられた視線に浮かぶ楽し気な色に、仕方なさそうに眉を下げ薄く息を漏らして、肩が触れるほど近くその隣に寄り添い、先程触れられなかった腕にそっと己の手を添える。そうして、すまし顔でもったいぶる相棒を見上げると、「あら、10年後には研いでもらうつもりなんですね?」と可笑し気に微笑めば、その後ギデオンの紹介を待ってから、じんわりと赤面する青年たちに自らも名乗り出る。そうして始まったセールスツアーは、基礎的な技術をしっかりと踏襲して作られた良品や、時代が発想に追いつけていない奇天烈な試作品まで、将来のトランフォードの発展を確信させる素晴らしい時間だった。何より分野は違うものの、同じ魔物由来の素材を活用して物を作るという観点で、職人たちの発想に魔法薬学にも通じる反応を見つけたり、逆に全く違う発想に感心したり。そして時折、ギデオンから挟まれる、ベテラン冒険者の実地的視点から見る評価にもうっとりするばかりで。その気になれば時間を無限に溶かせそうな心地に、なんとか自制してギデオンの見繕ってくれた品々を購入すれば、今度はその価格に目を剥くことになる。既製品とはいえ良い品を、これだけの時間付き合ってもらって──と慌てるビビに、つやつやとした顔をして固辞する若き職人たちもまた、此方の発想に湧き上がる何かを得たようだ。そうして再び帰りの馬車の中、嫌な顔ひとつせずに付き合ってくれた相棒に、もう一度感謝の言葉を伝えれば、ビビの将来を考えてくれた暖かな心配りに、二日後の依頼では今の実力なりの大活躍を見せこそすれ、醜態をさらすわけなど在りえなかった。 )
──ギデオンさーん、お疲れ様でした! すっっっごく会いたかったです……!
( 万全な準備をして迎えたその日は、キングストンから70km程北上した廃村・ライヒェレンチの郊外が前線となった。巨人の脅威で放置された村の会館で作戦会議が行われ、ビビにとっては実質初めて、他の冒険者ギルドと協力するクエストとなる。幾らカレトヴルッフが大型ギルドとはいえ、3年も在籍していれば、大抵のクエストは顔見知りの冒険者と組むことが殆ど。ベテラン戦士であるギデオンとは早々に別行動となり、丸一日近く初対面の、更に遥か天上の存在にも揉まれながら走り回る経験は、非常に得るものが多い一方で、心身ともに相当摩耗するのもまた事実。その後、深夜というよりは、早朝と表現した方が正しい時間帯に最後のヨトゥンを退けた後も、ヒーラー達にとってはむしろその後が主戦場といった方が差し支えない。そうして、キングストンを出発してからまる一日半以上。太陽はとっくに真上を通り過ぎ、もう一度冬の長い夕闇が近づく時刻。翌朝のキングストンへ帰る馬車が発車する近隣の宿場町にて。しばらくぶりに相対した相棒を前に、あからさまに安心した表情を浮かべ、らしくない弱った本音が漏れてしまったのも仕方がないことで。寧ろ、用意された宿に赴く前に、仲良くなった近郊ギルドの冒険者に勧められた食堂で、軽く食事をとりながら、最愛の相棒の隣でみるみる元気を取り戻す若さを見せつけながら。やれフリームスルスの魔法の珍しさを、目を輝かせ語ってみたり。ビビのいた後方部隊にギデオンを知る女性がいたことに、先月までの思いつめた温度はまったくない様子で唇を尖らせつつも、彼女の仕事のすばらしさに唸ってみたり。更に、ビビの中で誰より強かったギデオンがフォローに回るような、大天才の存在を初めて目の当たりにし、その韋駄天の如き動きに感動した様子で、子供の様な擬音を漏らしつつ、その興奮を伝えながらも。食事をとり終わり、さて。といったところで、依頼達成祝いにほんの少しだけ入れたアルコールで火照った頬を、乃東生の夜気で更に赤くして、上機嫌に浮かべた満面の笑みを相棒に向けながら、宿へと向かう道すがら。その太い腕を両手でとって、すれ違う男女がそうしているように、柔らかく押し付けるように縋りついたのは、やはり先程話題に出した女性に対して湧いたおさまらない気持ちを、抱え込まずに霧散させようとする確信犯的な甘えで。 )
……でも、やっぱりギデオンさんが一番格好良かったです!
( / 此方こそ細やかなお心遣いありがとうございます。
返信不要とのことでしたが、ビビの一新した装備について、例にもれず長考してしまう悪癖を発揮しておりまして……。いったん申し訳ございませんが、描写は避けさせていただきました。
詳細は決まり次第、設定置き場の方に追記いたします。/蹴り可 )
339:
ギデオン・ノース [×]
2023-02-04 00:02:44
(それから二日後。ともに旅慣れた冒険者らしく、揺れる馬車内でしっかり仮眠をとりながら辿り着いたのは、北の小さな山間に埋もれた廃村・ライヒェレンチ。──二十年前、巨人の群れの急襲で村民の多くが命を落とし、以来そのまま打ち捨てられていたという、ありふれた悲史の地である。
しかし近年の王国議会で、豊富な資源があるかもしれないここらの山々を開発すべく、ライヒェレンチへの再入植計画が持ち上がるようになっていた。ならば周辺脅威の排除が先決、というわけで。実は今年の春ごろから、この地方の管轄ギルドによる徹底的な魔獣狩り・亜人狩りが、幾度となく為されてきた。しかしながら、人間を襲う邪悪な怪物どものなかには、冬にならねばその姿すら現さぬものも多い。今回のヨトゥン巨人、フリームスルス巨人なども、まさしくその典型例だ。とはいえ、冬眠……ならぬ夏眠から目覚めて二ヵ月程度の今であれば。彼らのほとんどが地表をうろつくようになる一方、その力はまだ、全盛期ほどは戻っていない。つまり、見つけやすい上に狩りやすい今のうちに、虱潰しにしておけば。この山地一帯の安全がある程度確保され、早ければ来年の春にも、再入植計画を本格化できるようになる。
カレトヴルッフに急な要請が入ったのは、そういった大層な事情によるものであり。敵の殲滅・現場の後処理といった所要フローも、既成パーティーのベテランによって既に確立されている以上。──ヴィヴィアンのような場慣れぬ若手がしっかり経験を積んでおくのにも、今回のクエストはまさしくうってつけだった、というわけだ。)
(はたして、雪積もる野山のなか──それでも幸い、天候に恵まれて新雪に降られることはなく。今回の狩りを一晩かけて完遂すれば、依頼完了書を受け取ったのち、実に丸一日ぶりに相棒と落ち合うことにして。
……実のところ、彼女のことはその実力面より、出向クエストで稀にある新人いびりに見舞われないかを案じていた。その割合こそ違えども、大抵どこのギルドにも、人並外れて優れた若い芽を潰したがるにかかる嫌な年長者がいるからだ。しかし、食堂のカウンター席でともに夕餉を取りながら、今回の報告をお互いにしあったところ。どうやら若い相棒は、下らぬ懊悩の類には直面せずに済んだらしい。無論、彼女なりに気を張った疲れはあるようだが、その唇から次々零れ落ちるのは、明るく楽しい色とりどりの興奮ばかり。ギデオンの昔の女、魔法使いのエマの話になった時すらも、あの小屋で共に一夜を過ごした後だからだろう、以前のような気まずい雰囲気に陥ることはなく、ごく軽いつまみ程度に供されて。
程よいアルコールで舌も心もほぐれているのか、若い相棒はいつにも増して饒舌だ。ギデオンだけに向けられるその愛らしい表情の、くるくるとよく色づく鮮やかなことといったら。普段はこちらをうっとりと見上げるその横顔を、今夜は逆にギデオンのほうが、静謐な眼差しでじっと見つめている有り様で。そうして、相棒のお喋りに相槌を打ちながら──クエスト終わりの夕餉のひとときは、瞬く間に過ぎていった。)
まったく、少しは目が肥えたかと思ったが……変わらないな、相変わらず。
(──そうして今は、彼女と連れ立って歩きながら、出向先の用意した今夜の宿へと向かっている。隣の甘えん坊な相棒がしたたかに絡みついてくるのには、呆れたような白いため息を吐き出したものの。夏のいつかの昼下がりとは違い、別段振り払う様子も見せない。……路面の端には先日の雪がうずたかく積もっているし、毛皮のコートを着込んでいようと、冷たい空っ風が吹いている。この寒さなのだ、互いに暖は必要だろう──などと。胸の内でそう言い訳して甘んじる愚かさを、はたして自覚しているのかどうか。「バディ関係を組んでいても、他のパーティーに自分だけ参加することはままある。俺以外の剣士の動きも、ちゃんと見るようにするんだぞ」と、落ち着き払って言うこの台詞さえ、付き合いの長い彼女には、照れ隠しに端を発するもっともらしい言い回しなのだと、そろそろバレ始めるだろうか。そうこうしながら歩いていると、ちり、と冷たい感触が頬を掠り、立ち止まって上を見上げる。粒状の白い雪片が、暗い空から降り始めていた。あの棚雲が山の峰々に差し掛かる間じゅう、ここら一帯に冷たい羽毛を振りまいていくのだろう。白い息を再びふわりと吐きだすと、隣に感じる相手の顔をわざわざ確かめるでもなく、ごく静かな声を落として。)
………、降ってきたな。ひと吹雪来そうだ。
340:
ギデオン・ノース [×]
2023-02-04 00:34:24
(※ぐるぐる推敲していたところ、「変わらないな、相変わらず」の二重構造な台詞を完全に直し忘れておりました。
不自然な発言になっておりますが、大体のニュアンスは伝わるかと思いますので、適宜読み替えていただけますと幸いです。ビビの新装備についてもかしこまりました!/蹴り可)
342:
ギデオン・ノース [×]
2023-02-06 01:58:26
………?、???
(突然離れる相手を振り返れば、その予想外の状態に、呆気に取られて目を瞬かせる。──いったい何だ、急にどうした。頭の上に疑問符をいくつも並べ立てたものの、ふと思い当たったのは、急な体調不良の類。慣れぬ集団でのハードなクエスト、その後少量とはいえ得意ではない酒を飲んだとあって、今更何かが来たのかもしれない。その心配故、「どこか具合でも悪いなら……」と、無駄に落ち着いた声で見当違いも甚だしい問いかけを投げながら。相手の頼みには取り合わず、間近によく見て確かめようと覗き込むような有り様で。
──そうしてひと悶着繰り広げながら、辿り着いた宿の受付。純情多感な乙女と無自覚な朴念仁のふたり組を出迎えたのは、にこやかな太っちょの女将と陰険な目つきの倅であった。……あの時とは別人だというのに、なんだか妙に、ものすごく嫌な感じで見覚えのある組み合わせである。果たして予感はすぐさま当たり、やけにくさくさした男からは、鍵をひとつしか渡されず。「……二部屋の予約では?」と、ヴィヴィアンとともに真剣に尋ねたところ、「この町は今どこもかしこも満杯なんだよ! おめえら冒険者とリア充どものせいでなクソが!」と、八つ当たり気味に返される始末。こいつでは埒が明かないので、温厚な女将のほうにも説明を求めたところ──どうやらこれは、どうにも不可避の事態らしい。元々、冬期休暇のシーズンで普通の旅客も多いところに、巨人狩りの大隊が大勢やってきた。その上、降り始めた雪を見た町の長老が、大量の氷雪系巨人を屠ることで稀に起こる“ヨトゥン雪”なる吹雪の来襲を警告したため、危険区域に住む地元の住民も避難泊に来ているという。この突然の需要高騰により、数多の宿が甍を連ねる宿場町であるにもかかわらず、その全てがパンク状態。「ご予約いただいたパーティーリーダー様の部屋割り変更で、このように……」と困り顔で微笑む女将を、泊まりに来たらしい地元民が乱暴な声で呼ぶのを見れば──何より、この吹雪を招いたのは冒険者一行の狩りのせいだとわかってしまえば──パーティーリーダーには物凄く物申したいものの、今どの宿にいるのかもわからぬ以上、ひとまずは受け入れざるを得なかった。
はたして、本格化し始めた吹雪の吹きつける外廊下から、鍵を開け踏み入れたその部屋は。しかしお約束通り、あからさまにそういった目的用の、無駄にムーディーな内装である。しかも雪の名所の宿場町だからだろう、夏のあの宿より随分豪華な、金色と白のダブルベッド──挙句になんちゃって天蓋付きというダメ押しぶりで。これにはさしものギデオンも「…………、」と一瞬固まったものの。すぐに我に返ったのは、先程から様子のおかしいヴィヴィアンが外に飛び出しかけたから。その薄い肩を素早く掴み、「──風邪を引きかけてるんだろう、」と相変わらず誤解したまま窘めて有無を言わさず連れ戻せば。皴の寄る眉間を指先で抑え、盛大な白いため息をひとつ。それで素早く割り切ると、まずは冷え切った部屋を暖めるべく、備え付けの暖炉に薪を入れながら、相手にぼそりと打診して。)
……俺たちの巨人狩りのせいでどこも大変って話なら、仕方ない。
悪いが、一晩だけ我慢してくれ。
343:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-08 00:41:28
──だから違いますってば!
( とにかく一瞬でいいからほっといて欲しい。そうどれだけ否定したところで、心配性な相棒には全く届かなかったらしい。ひと悶着という名のイチャつきの果て、結局、情けない赤面もしっかりと見られて。シクシクと痛む乙女心をなんとか慰めていたところへ、ダブルベッドの破壊力のある光景を突きつけられれば、「ヒアッ」と情けない悲鳴が漏れた。かくして、ダブルベッド目の前に逃げ出す相手を、善意で引き止めるもう片方という、見覚えのある光景は、但し前回とは配役が入れ替わることとなるのだった。そんな肩を掴むギデオンの、明らかに窘めにかかっている声に頬を膨らませながらも、有無を言わさぬ力強さにもう一度、問題の部屋に向き直る。異国情緒を思わせるダマスク柄の優美な壁紙、質素ながら洗練されたデザインのマントルピース。全体的にシックに纏められた部屋の中、丸く垂さがるレースの天蓋が、暖炉の暖かなオレンジを反射して。この手の宿にしてはセンスのいい内装から、大きなベッドの存在感、及び、それを使うであろう二人の世界だけを、やたらムーディーに浮かび上がらせている。いつかの山中の宿と比べ、更に露骨に余計な感情を煽らんとする空間は、流石のビビもその意図に気がついて、「…………、」と俯きながら、その白い頬をじんわりと赤らめる。薪をくべようと歩を進めたギデオンの動きにさえ、ビクリ、と小さく反応し、一息遅れて「私が」──やります、と手を伸ばしかけた瞬間。目の前の相手から、心做しか暗い響きを持って響いた要望に、目を丸くして密かに息を飲む。その瞬間、思わず頭を過ぎったのは──また、自分が不慣れなせいで、大事な人が離れていってしまうかもしれない、その恐怖。ギデオンがそんな人間ではないことを、頭では理解しているようで、蓄積され続けた負い目と、この空間の異様な空気が、その広い背中へと、小さく震える手を伸ばさせる。そうして相手の身体の前方へ手を回し、露骨に上半身を密着させれば、その内容とは裏腹に、連ねられる声音は硬質な、絞り出すような、意中の相手を喜んで誘惑する女のそれとはかけ離れたもので。 )
"我慢"なんか……なわけ、ないです。
寧ろ、ギデオンさんと、だったら。私…………、
344:
ギデオン・ノース [×]
2023-02-08 02:13:22
(とにかく暖気を。相棒が少しでも休まるよう、過ごしやすい空間を。そう考えて、ひたすら手を動かし続けていたものだから。何も気づかずにいたギデオンは、己の広い背に何か柔らかなそれをきゅっと押し付けられて初めて、はたと一拍の硬直を見せた。──いや、待て。何だこれは。一瞬そんな、無限に広がる宇宙色の混乱をありありと浮かべたものの。背後から上がるか細い声に、その面差しはふと、静かなそれへ移り変わる。……しんと静かな寝室の緊張を、窓の外で激しさを増す風雪の音だけが、控えめに和らげるなか。ヴィヴィアンはその蠱惑的な身体を、めいっぱい主張するかのように、ギデオンに押し付けている。そして今さっき絞り出した、続きを暗に仄めかす台詞。このふたつを踏まえれば、己は今、若い彼女に誘惑されているのだと、流石にはっきりわかるのだが。──ヴィヴィアンの心は、もっと遠いどこかにある。そう直感できる程度には、この半年間で多少なりとも相手に詳しくなったのは、ギデオンもまた同じ。先程はあんなに鈍感ぶりを発揮していたくせに、今の彼女の震える声音も、大胆にしがみつきつつどこか心細げな手つきも。相手の震えを感じ取って注意深くなったギデオンは、決して聞き逃さず、見逃さない。故に、無言のまま肩越しに、衣擦れの音だけをさせながら振り向くと。「…………、」一瞬の思案を挟んでから、相手に細腕を緩めさせ、きちんと向き直ってその顔を見る。そっと落とした問いかけは、ごく穏やかで、気遣うような声色のもの。──相手の勇気を無碍にしようというのではないと、伝わるだろうか。)
…………。ヴィヴィアン、……どうした。
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