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自分のトピックを作る
345: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-09 20:30:23





 ( その穏やかな、優しい声音にハッと目を見開くと、真っ直ぐなアイスブルーに射抜かれて、嫌悪や羞恥に染まっていた胸の中が、速やかに晴れ渡っていく。知らぬうちに強ばっていた身体から力が抜け落ち、ゆるゆると相手の太い腕に掴まれば、恐怖の象徴でしかなかったその硬さは、いつも通り大好きな、非常に安心して頼もしいそれに戻っていた。そうしてまだどこか、己のトラウマに動揺しているような、認めがたいような、困ったような調子で眉を下げ、うっそりと瞼を伏せた後。つい癖で笑顔を浮かべようとして、僅かに逡巡してから、意を決したように。相手の誠実さに応えようとすることで、力が入ってしまう指先の爪が、ギデオンの腕を傷つけないよう、そっと掴んでいた両手をゆっくり離そうとして。 )

あ…………、ごめん、なさい。
なんでも──いえ。その……、私、あんまり "こういうこと"……に、いい思い出がなくて……。
でも、いい歳してって……呆れられたらって、馬鹿ですよね。

 ( 不愉快な詳細の明言は避けつつも、ぽつぽつと恥ずかしい過去を、信頼する相手に吐露する間。気丈に上げられた顎は次第に俯き、どうしようもない惨めさと、当時を思い出した恐ろしさに、その大きな瞳が頼りなげに潤んで揺れる。すぐさま誤魔化すように、大きく瞬きをしてはみたものの、目の前の相棒には気づかれてしまっただろうか。そうして──ふっ、と自嘲的に微笑んだかと思うと、小さく首を振ってから上げた表情は、まるで聖人君子を見るような。否、少なくともビビ本人は、ギデオンをそうだと信じて疑っていないことが一目で伝わるほどに、真っ直ぐに向けられた瞳はキラキラと輝いて、血色を取り戻しバラ色に染まった頬には、これ以上ない信頼と安心が、たっぷりと溶け込んでいる。そうして、あどけなささえ感じられるような笑みを、ふわりと満面に咲かせると、これから一晩同じベッドで過ごす男に対し、全く悪気なく自ら太い釘を打ち込んでいき。 )

───ギデオンさんが、"そんなこと"するわけないのに!




346: ギデオン・ノース [×]
2023-02-09 21:58:15




ン゙ッッ…………まあ、……その、──ん゙ん゙………

(「ヴィヴィアンは、昔の彼氏との一件で密かなトラウマを抱えている」。ギデオンがマリアからそう聞いたのは、つい先日、今回のクエストに発つ直前のこと。内容が内容なだけに、こちらとしては当分、相手から切り出さない限りわざわざ触れずにおこうというのが、ギデオン自身の考えであった。だからよもや、こんなにも早く回収するとは思わない。しかもその上、彼女が大いに葛藤しながら、目を潤ませながら、それでもギデオンへの信頼を揺るがさずに打ち明けてくれた……それ自体は別段、寧ろ想像以上の収穫で、とても喜ばしいはずなのだが。問題は目の前のヴィヴィアンの、このあまりにも眩し過ぎる……ありとあらゆる男の邪を焼き払うような純真さで。ギデオンと周囲の近しい人間が、ヴィヴィアンにいつ手をつけるつけないで、実は以前から散々ごたごた言い合っている、などと。彼女はおそらく夢にも思わないのだろう。ピュアッピュアの眼差しで、一切を邪推せず、無垢な信頼を笑顔で寄せてくる有り様である。そしてこの、とどめを刺すような極めつけの台詞。それはたった一撃でありながら、歴戦の猛者であるギデオンすらも、大いにたじろがせる高威力で。被っていた“良い大人”の仮面はバキバキと大きくひび割れ、先程まで彼女を優しく見守ろうとしていた目は、今や盛大に四方へ泳ぎ。露骨に言葉につまってしまい、何度か喉を鳴らして言い淀むものの、口から出まかせの肯定すら、なんだか絞り出せないままで。──流石に今宵どうこうというつもりはないが、それでも彼女に嘘をつきたくはない。つまりはそういうことだ。しかしこの流れでは言えない。とても言えない。そもそも彼女の告白を袖にし続けている以上、欲だけは既にがっつりあると白状したところで、寧ろ最低な男に成り下がるだけである。──故に、拳を口元に当て。一度大きく咳払いすることで、身を焼くような気まずさをどうにか懸命に鎮めると。彼女の最後の一言についてあからさまにスルーしながら、再びまともな大人の仮面をかぶり直すべく、一般論を説いてやり──そうすることで、寧ろ無自覚に墓穴を掘り進め。)

“そういう”のは、相手や世間体を気にして焦るようなもんじゃない。いい思い出がないっていうなら、ちゃんと待ってくれるような奴をますます選ぶべきだろう。
──とにかく、荷を解くぞ。明日は早いんだ、しっかり休んだ方がいい。






347: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-11 09:34:57




──ギデオンさん……!!
……はい、ありがとうございます。

 ( ごくごく一般的なその説諭も、つい先日、他の男の物になってくれるなと言った相手が言えば、"ビビに覚悟ができるまで、自分なら待ってやれる"という宣言に他ならないのではなかろうか。ギデオンの漢気ある宣言を受け、元々潤んでいた瞳に、今度は感動のそれを浮かべると、その瞳に滲む信頼はますます深まるばかりで。最後にほんの少しだけ、相手に応じられるようになった未来を想像してしまっては、小さくはにかみながらお礼を告げて。促されるまま、荷物の準備に取り掛かりながらも、また面倒な譲り合いの後。今度は自分が先に浴室へ踏み込むまで、その表情には安らぎこそすれ、緊張や警戒心の欠片さえ浮かぶことは無かった。
はたして、あまりに少量だった故に、ビビ本人は全く自覚していなかったが、旅先で摂取したアルコールは確かに仕事をしていたらしい。くぐもった水音の弾ける中に、何やら音程の怪しい鼻歌を微かに響かせながら、カーテン越しに脱衣所の方を見やったヴィヴィアンは、満足気に形の良い唇を嬉しそうに持ち上げる。──……ギデオンさん、こういうの好きかな。……倫理的にも、女子力的にも、それはそれは大いに問題のあった前回のそれと比べ、今回のそれはリズと買いに行ったお気に入りである。フワフワのシルエットが可愛らしくも暖かなそれを、自慢した時の優しい相棒の反応を想像しながら。無駄にラグジュアリーなシャワーのコックを捻り、きめ細かい泡を全て排水溝に流し切ると。手早くも細やかに、次の人が使いやすいよう浴室を整えていたヴィヴィアンが、そのお気に入りのパジャマの中、おりこんだはずの下着がすっぽりと抜け落ち、脱衣所の何処にも見当たらないことに気がついて、呆然と立ち尽くすまであと少し── )




348: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-11 14:14:02




( / 後半部ビビがずっと言及しているのは、お気に入りのパジャマについてです。推敲で削った文章の関係で、単語の初出がかなり遅れ、分かり辛い文章になってしまっておりました。大変申し訳ございません。
また、背後はこの手のチープなラキスケ展開は割と好きなのですが、読み返してみて苦手な方もいるかなと反省している次第です。もし反応に困るということであれば書き直しますので、お気軽にお申し付けください。何も問題内容でしたら返信には及びません、よろしくお願い致します。 )




349: ギデオン・ノース [×]
2023-02-11 15:49:00




(一方、その頃のギデオンは。防寒仕様の二重窓の施錠をしっかりと確認すると、後のことはろくに確かめぬまま、足早に部屋を出て鍵をかけ。念のため魔法封印を施す……という過保護ぶりまで発揮してから、ひとり宿の受付へと向かった。──ゆっくり体を温めろ、などと言い立ててヴィヴィアンを浴室に追いやったのは、何を隠そう時間稼ぎだ。今からでも別室手配が間に合うのではないか、そんな希望を未だ胸に抱いていた。
しかし結論から言えば、それは空しい徒労に終わった。何度問い合わせたところで、やはり客室は満杯、近隣の宿も満杯、防犯上ロビーで寝かせるわけにもいかないという答えしか返ってこない。くわえて気のいい女将がきょとんとして、「でも……もうじき聖夜ですし。皆さん、“そういう”わけでうちを選んだのでしょう?」などと言いだす始末だ。どうやらこの連れ込み宿には、あのパーティーリーダーの采配により、“好い仲の相手がいる”冒険者たちがまとめて放り込んであるらしい。終盤に飛び入り参加したギデオンたちとは違い、先に討伐を始めていたほとんどの連中は、実は数週間ぶりの休暇。戦終わりの冒険者は大概盛りがついているものだし、何より時期が時期──恋人たちのシーズン真っ最中である。粋な褒美を回してやろう、という魂胆で、パーティー内で成立しているカップルはここに。パーティー外に相手がいる場合も、事前に呼び寄せて一緒に泊まれるよう取り計らってやったそうだ。しかしそもそもそんな真似をしなければ、ここらの宿がパンクする羽目にならなかったのではなかろうか、と恨めしく思わずにいられない。……ちなみに完全な余談だが、他方独り身の冒険者たちは、別の大型の宿……連れ込み用ではない普通のところに突っ込まれたらしい。それも、砂糖を吐くほど相思相愛なおしどり夫婦が経営しているところだそうだ。否が応にも宿の主人らに見せつけられるその不憫さは推して知るべしである。
いずれにせよ、そんな不埒な事情のせいで、クエスト中に親しくなった同性冒険者のもとに自分か彼女を転がり込ませる、という策はとりようがなくなってしまった。自分と同室の彼女は別段恋仲ではないのだと、必死に説明してわかってもらおうとしたものの。「あらあらまあまあ!」と笑う女将は照れとしか受け取っていないようだし、僻み屋の倅は「ケッ、余裕があって良うござんすね!」と嫌味っぽく吐き捨てるだけ。ならせめて、倉庫の類にでも寝かせてくれないかと頼み込もうとすれば、途端に女将がくわっと目を剥く。この吹雪の夜に暖炉もない場所に客を押し込むものですか! 大体この吹雪ですよ! 一晩くらい大人しくしててください! そう捲し立てられれば、例の吹雪で迷惑をかけている身として、それ以上の我儘は言えず。……結局、そんなに言うならこれでどうにかしてください、でも廊下で寝るのはなしですよ、と毛布その他を借り受けるだけになり。いよいよ激しさを増す外の吹雪を眺めると──ため息をついて、一夜の覚悟を決めるほかないのだった。)

(──さて、そうして引き返したのが今。幸か不幸か、ヴィヴィアンのシャワーも終わりを迎えるころだ。すっかり暖気の満ちた寝室に立ち尽くすギデオンは、戻ってきてから暫くの間、途方に暮れて顔を覆っていた。『気をつけて。本当に、優しく気を遣ってあげて』……先日のマリアの忠告が、ともすれば焚き付けにもなりかねないそれが、脳裏に何度も甦っては、苛立ちに似た感情で眉間に皴が寄る。わかっている、ちゃんとわかっている──ご機嫌かつ安心しきっているヴィヴィアンとは反対に、常識的な歳上たらねばならない己は、これからが正念場だ。まかり間違っても変な雰囲気に陥ったりしないよう、慎重に立ち回らなければ。……まあ、さっきの会話からして、ヴィヴィアンにはまだまだそんな気もないようだし。こちらとて、恩師の娘に手だけはしっかり出してしまうような、最低な男に成り下がるつもりも毛頭ない。真面目に、落ち着いて、理性的に、冷静に、単なる先輩と後輩として、休息すればいいだけだ。そうだ、今回の振り返りでもしながら吹雪の夜長を潰せばいい。ヴィヴィアンは熱心な若手だし、戦略論についてでも持ち掛ければ、きっとまともな夜を過ごすことができるだろう。
──そうして、きりっと覚悟を決めた顔を上げ、まずは剣の手入れに入ろうとした瞬間。しかし真っ先に目に飛び込んできた、ベッドの上の女物の下着に、びしり、とひとり硬直して。……先程はやんごとなき事情によって急いでいたせいで、完全に見逃していた、などと、混乱の極致のギデオンには思いもよらない。若かりし頃に散々見飽きたそれらと無意識に比べても、持ち主のスタイルの良さがありありとわかる品物を見て──何事だ、というのが心のうちの第一声。……白か、というあまりに愚直な思考が第二声。次の瞬間、勢いよく身を翻して背中を向け、いっそ完璧な無表情を取り繕いながら、無駄に早い頭の回転を、事態の冷静な分析へと全力で差し向けにかかる。……ヴィヴィアンの性格からして、おそらくこういった露骨な手で誘惑しに来るとは考えにくい。あの娘の頃だ、おそらくうっかり、脱衣所に持っていき忘れたのだろう──いや待て、それは……つまるところ……要するに。具合の良い頭のせいで導き出してしまった更なる痴態に、言葉を失ったまま目を瞬くこと二、三秒。それから不意に浴室の方へ足を向けたのは、先程水音が止んだことからして、おそらく相手も気付くだろうと冷静に推理したからで。閉ざされた扉の前で一度咳払いすると、存在を知らせるべくしっかりノックを。それから中にいる相手に、これから一瞬部屋を出ておくと知らせようとして。)

……なあ、ヴィヴィアン──



(/ご丁寧な補足ありがとうございます! パジャマの件はばっちり伝わっておりますので、どうかご心配なく。また、コミカルなラキスケ展開が好物なのは実はこちらも同じ(というより大歓迎)ですので、そちらもお気になさらないでください。寧ろビビの今までにない危機に大爆笑しておりました。サイトの規約範囲内で、こういったドタバタコメディも一緒に思う存分楽しめればと思っております。
また背後のいつもの嗜癖により、同衾シチュ不可避のそれっぽい事情説明を無駄に盛り込んでおりますが、こちらは丸ごと余談程度に捉えてくださいませ。メインはあくまでギデオンとビビの交流ですので、ロルのボリューム等は依然お気遣いなく。ダブルベッド事件第2ラウンド本編も、引き続きよろしくお願いいたします。/蹴り可)





350: ギデオン・ノース [×]
2023-02-11 15:57:59





(一方、その頃のギデオンは。防寒仕様の二重窓の施錠をしっかりと確認すると、後のことはろくに確かめぬまま、足早に部屋を出て鍵をかけ。念のため魔法封印を施す……という過保護ぶりまで発揮してから、ひとり宿の受付へと向かった。──ゆっくり体を温めろ、などと言い立ててヴィヴィアンを浴室に追いやったのは、何を隠そう時間稼ぎだ。今からでも別室手配が間に合うのではないか、そんな希望を未だ胸に抱いていた。
しかし結論から言えば、それは空しい徒労であった。何度問い合わせたところで、やはり客室は満杯、近隣の宿も満杯、防犯上ロビーで寝かせるわけにもいかないという答えしか返ってこない。くわえて気のいい女将がきょとんとして、「でも……もうじき聖夜ですし。皆さん、“そういう”わけでうちを選んだのでしょう?」などと言いだす始末だ。どうやらこの連れ込み宿には、あのパーティーリーダーの采配により、“好い仲の相手がいる”冒険者たちがまとめて放り込んであるらしい。終盤に飛び入り参加したギデオンたちとは違い、先に討伐を始めていたほとんどの連中は、実は数週間ぶりの休暇。戦終わりの冒険者は大概盛りがついているものだし、何より時期が時期──恋人たちのシーズン真っ最中である。粋な褒美を回してやろう、という魂胆で、パーティー内で成立しているカップルはここに。パーティー外に相手がいる場合も、事前に呼び寄せて一緒に泊まれるよう取り計らってやったそうだ。しかしそもそもそんな真似をしなければ、ここらの宿がパンクする羽目にならなかったのではなかろうか、と恨めしく思わずにいられない。……ちなみに完全な余談だが、他方独り身の冒険者たちは、別の大型の宿……連れ込み用ではない普通のところに突っ込まれたらしい。それも、砂糖を吐くほど相思相愛なおしどり夫婦が経営しているところだそうだ。否が応にも宿の主人らに見せつけられるその不憫さは推して知るべしである。
いずれにせよ、そんな不埒な事情のせいで、クエスト中に親しくなった同性冒険者のもとに自分か彼女を転がり込ませる、という策はとりようがなくなってしまった。自分と同室の彼女は別段恋仲ではないのだと、必死に説明してわかってもらおうとしたものの。「あらあらまあまあ!」と笑う女将は照れとしか受け取っていないようだし、僻み屋の倅は「ケッ、余裕があって良うござんすね!」と嫌味っぽく吐き捨てるだけ。ならせめて、倉庫の類にでも寝かせてくれないかと頼み込もうとすれば、途端に女将がくわっと目を剥く。この吹雪の夜に暖炉もない場所に客を押し込むものですか! 大体この吹雪ですよ! 一晩くらい大人しくしててください! そう捲し立てられれば、例の魔物雪で迷惑をかけている身として、それ以上の我儘は言えず。……結局、そんなに言うならこれでどうにかしてください、でも廊下で寝るのはなしですよ、と毛布その他を借り受けるだけになり。いよいよ激しさを増す外の降雪を眺めると──ため息をついて、一夜の覚悟を決めるほかないのだった。)

(──さて、そうして引き返したのが今。幸か不幸か、ヴィヴィアンのシャワーも終わりを迎えるころだ。すっかり暖気の満ちた寝室に立ち尽くすギデオンは、戻ってきてから暫くの間、途方に暮れて顔を覆っていた。『気をつけて。本当に、優しく気を遣ってあげて』……先日のマリアの忠告が、ともすれば焚き付けにもなりかねないそれが、脳裏に何度も甦っては、苛立ちに似た感情で眉間に皴が寄る。わかっている、ちゃんとわかっている──安心しきっているヴィヴィアンとは反対に、常識的な歳上たらねばならない己は、これからが正念場だ。まかり間違っても変な雰囲気に陥ったりしないよう、慎重に立ち回らなければ。……まあ、さっきの会話からして、ヴィヴィアンにはまだまだそんな気もないようだし。こちらとて、恩師の娘に手だけはしっかり出してしまうような、最低な男に成り下がるつもりも毛頭ない。真面目に、落ち着いて、理性的に、冷静に、単なる先輩と後輩として、休息すればいいだけだ。そうだ、今回の振り返りでもしながら冬の夜長を潰せばいい。ヴィヴィアンは熱心な若手だし、戦略論についてでも持ち掛ければ、きっとまともな夜を過ごすことができるだろう。
──そうして、きりっと覚悟を決めた顔を上げ、まずは剣の手入れに入ろうとした瞬間。しかし真っ先に目に飛び込んできた、ベッドの上の女物の下着に、びしり、とひとり硬直して。……先程はやんごとなき事情によって急いでいたせいで、完全に見逃していた、などと、混乱の極致のギデオンには思いもよらない。若かりし頃に散々見飽きたそれらと無意識に比べても、持ち主のスタイルの良さがありありとわかる品物を見て──何事だ、というのが心のうちの第一声。……白か、というあまりに愚直な思考が第二声。次の瞬間、勢いよく身を翻して背中を向け、いっそ完璧な無表情を取り繕いながら、無駄に早い頭の回転を、事態の冷静な分析へと全力で差し向けにかかる。……妙なところで初心なヴィヴィアンの性格からして、おそらくこういう度の過ぎた手で仄めかすとは考えにくい。あの娘のことだ、おそらくうっかり、脱衣所に持っていき忘れたのだろう──いや待て、それは。つまるところ……要するに。具合の良い頭のせいで導き出してしまった更なる痴態に、言葉を失ったまま目を瞬くこと二、三秒。それから不意に浴室の方へ足を向けたのは、先程水音が止んだことからして、おそらく相手も気付くだろうと冷静に推理したからで。閉ざされた扉の前で一度咳払いすると、存在を知らせるべくしっかりノックを。それから中にいる相手に、これから一瞬部屋を出ておくと知らせようとして。)

……なあ、ヴィヴィアン──



(/ご丁寧な補足ありがとうございます! パジャマの件はばっちり伝わっておりますので、どうかご心配なく。また、コミカルなラキスケ展開が好物なのは実はこちらも同じ(というより大歓迎)ですので、そちらもお気になさらないでください。寧ろビビの今までにない危機に大爆笑しておりました。サイトの規約範囲内で、こういったドタバタコメディも一緒に思う存分楽しめればと思っております。
また背後のいつもの嗜癖により、同衾シチュ不可避のそれっぽい事情説明を無駄に盛り込んでおりますが、こちらは丸ごと余談程度に捉えてくださいませ。メインはあくまでギデオンとビビの交流ですので、ロルのボリューム等は依然お気遣いなく。ダブルベッド事件第2ラウンド本編も、引き続きよろしくお願いいたします。

※些細な部分を加筆修正させていただきました。/蹴り可)





351: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-12 15:24:28




…………。

 ( まさか自分の入浴タイムが、作戦中の本陣並みの防御力を誇るバリアに守られていたとは、ついぞ気づかなかったヴィヴィアンは、一人全く別ベクトルの窮地に陥っていた。──ない。ない……やっぱりない!シャワーを浴びる直前、体を清めたあと着るために用意していたはずの下着が、浴室のどこにも見当たらない。さりげないレースが大人っぽく可愛らしい純白のそれを、寝巻の中に折り込んだ記憶は確かにあるのだが……。サッと青ざめた顔を両手で覆う、奇しくも外のギデオンと同じ構えで、絶望した様に立ち尽くすビビの脳内に浮かんだ解決方法は二つ。一つは浴室の外、部屋で休んでいるはずのギデオンに頼んで、新しい下着をとってもらうこと。二つ目は、この場ではパジャマだけを身に着けて、この次にギデオンが入浴する間に急いで身に着けること。ただしかし、依然 下着の位置情報がわかっていない状況で、前者を選ぶのは……ただ鞄から取り出し損ねた可能性だって、ないことはないのだ。その場合、完全なる藪蛇である。それに、(ならばこんな事態を起こすなという話なのだが)ビビとて、ギデオンに対しての認識が甘いだけで、一般常識くらいは持ち合わせている。これから一晩過ごす異性の相棒、しかも片想いを公言している相手に、そんなことを頼むなんて、誘っていると言われても反論しようがない。先程のやりとりは何だったんだという話である。──であれば、後者にかけた方がまだ……そう追い詰められた際、甘い可能性に賭けたくなるのは人間の性。ここまでの思考を湯冷めする隙さえない程に一瞬で片付け、とりあえずパジャマを身に着けると、何やらやたら巨大な鏡に向き直ってみる。……購入した際は、気になる体形をカバーしてくれると思っていた布地は、一枚で着るとこんなに心許なかっただろうか。毛足が長いだけで丈は短いホットパンツも、動くとずれてソワソワして堪らない。──……ダメでしょ、なんか、もう色々と。そうしてもう一度顔を覆い、ため息を漏らした瞬間だった。──そうだ、もう正直に話そう!正直に話して、一瞬部屋の外に出ていてもらおう。それはもう、大分呆れられるだろうが、優しいギデオンならきっと苦笑して流してくれるに違いない。そう大いに血迷った挙句、一番最初に思いつくべきそれがやっと天啓しかけた瞬間──トントン、と。外から響いたノックにびくりと全身を振るわせれば、折角の天啓が頭から吹き飛んでいった。──あとでこの時のことを思い出したヴィヴィアンは、その猪突猛進な性格を大いに反省することになるのだが、それはあくまで後での話。この時の彼女は、実際は大した時間悩んでいたわけではないのだが、焦っていた中で、どれくらい時間が経っていたのか自信がなかった。もしかして、かなり長時間待たせてしまったのではという焦りと、もしかしたら隠し通せるのではないかという甘えが、判断を致命的に間違わせる。呼ばれた名前に力強くドアノブを捻り、一歩踏み出しかけた瞬間。胸部と臀部に走った予想以上に心許ない解放感に足を滑らせると、その締め付けが一切ない豊満な体は、狙ったかのように目の前のギデオンへと吸い込まれていくのだった。 )

あ!!ごめんなさいッ!今出ま──ひぁッ!?




352: ギデオン・ノース [×]
2023-02-12 17:14:23




(あくまでもギデオンとしては、板越しに返事だけ貰えれば、程度のつもりであったのだ。まさか寸前で勢いよく扉を引き開けられると思わず、ノックしたポーズのままびくっと身体を震わせると同時。戦場では非常に役に立つ嗅覚が、瞬時に押し寄せてきた艶めかしい香りを決して逃さず拾ってしまう。むわりと押し寄せてきた湿り気のあるそれは、若い女性がシャワーを浴びた後特有の、桃のようにみずみずしく甘い匂いがするものだ。瞬間、ギデオンの精神は当然激しく狼狽えて。女一人にびくともしないはずの現役戦士の体幹さえ、刹那の怯みが発生し。──故に、その多重の隙を狙いすましたようにダイブしてくる若い娘の勢いを、受け止めきれるわけもなく。)

────ッ!?

(驚愕と焦りの顔を浮かべながら、派手な床音を立てて背面に倒れるその一瞬。しかし咄嗟に相手を抱え込んだのは、不意の怪我から女性を守らんとする男の本能だったろう。……そう、紳士精神のそれであって、決して下心とか何だとかではなかった、はずである。そうしていつぞやよろしく、相手を胸板の上に乗せる形で仰向けになり。まだ頭が真っ白のまま、数秒ほどは無言で寝そべっていたのだが。──ただでさえ、先ほど香った女の匂いが、間近に濃厚に立ち上る上。今の己の腕の中には、湯上がりでやけにぽかぽかとぬくい生きものの体温がある。相手が身に纏っているのは、何やらふわふわと手触りの良い寝間着。だが、先ほど見た光景に照らすと、この下は──と、自然に気づいてしまったところで。血の巡る感覚を覚える反面、他方の顔は理性でざっと青褪め。瞼を閉ざしたその顔を、苛立ちのような表情で非常に険しくしかめると。腕を緩めて解放した相手に、どこか苦しげな、絞り出すような小声で頼み込み。)

……、…………、ヴィヴィアン、すまないんだが……こいつは、いろいろと……都合が……悪くてな。
……すぐに、どいてくれるか。





353: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-12 23:03:49




──! やだ、すみませっ……どこか痛めて……、っ、

 ( 嗚呼、やってしまった──絶対痴女だと思われた……!!こんな状況でさえ、ビビを気遣って回されたに違いない紳士的な腕の中、重力に従って硬い腹部へと押し付けられ、柔らかく歪む駄肉にざっと血の気が引く。この体勢への羞恥より、ギデオンに軽蔑されることが余程恐ろしくて、相手の鼓動に耳を傾けながら、戦々恐々とその反応を待つこと暫く。頭上から上がった苦しそうな声にはっとして体を起こせば、自分をかばって下敷きになった相棒の体に、純粋な心配100%の眼差しを向け──誤魔化しようのない事実を、その双眸ではっきりと確認してしまった。 )

…………、……。ッギデオンさん。……その、私、

 ( その信じがたい光景に、思わず相手の顔と勢いよく見比べると、一拍置いてからへなへなと腰を抜かして、冷たい床に尻餅をつく。そのまま小さく後退り、背中に当たった何かに振り返ると、今晩の元凶である大きなベッドを視界に捉えて、その顔をぶわりと朱に染めて。“ギデオンさんがそんなことするわけない”そう言って笑っていた半刻の己が、今はひどく恨めしい。ギデオンさんはいつも優しくて、紳士的で、たまに可愛くて──なんで。なんで、そんな自分に都合の良い風に思い込めたのだろう。……優しくて、紳士的なこの人は、自分がそう言って滑稽な子供でいる限り、ビビの信じる聖人君子を演じようとしてくれるに決まっていたのに。──そうして、目の前で苦しそうに表情を歪める相手を、ここまで追い詰めてしまっていたことに気が付いた途端。先程から激しく主張していた心臓の、その鼓動の原因から、幼い恐怖が消え失せて。腹の底から湧き上がる別の何かが、更にその鼓動を激しく掻き立てる。そのあまりの激しさに爆発してしまいそうな心臓を押さえつけ、じゅわりと潤んだ瞳を相手に向けると──この気持ちの鎮め方を、この人なら教えてくれるだろうか。そう熱に浮かされた表情を浮かべて、もう一度 両膝に力を籠めようとした時だった。部屋の薄い壁を突き抜けて、隣の部屋から──パリーンッ!!と何かが割れる音と、「ふざけんじゃないわよ!この○○野郎!!」と聞き捨てならない打撲音が飛び込んでくる。続いて上がった男の悲鳴に、ザワザワと廊下が騒がしくなってくる気配に目を丸くして、相棒へと見合わせた視線には、先程までの熱など消え失せていた。 )




354: ギデオン・ノース [×]
2023-02-13 00:55:57




(クソッ、畜生、間違えた──致命的に間違えた……!! 折しもギデオンの胸中を焼くのは、数秒前の相手と同じ、恐怖と紙一重の途方もない焦燥感で。仰向けに倒れたまま彼女側の片膝を立て、醜態が目に入らぬようするものの、あまりに取り返しのつかない事態に深く絶望し、顔を両手で覆ってしまう。自分ではその具合を目視していないものの、何せヴィヴィアンの、あのあからさまな逃げっぷり・愕然っぷりである。何が起きてしまったかは、火を見るよりも明らかだ。……本当なら、強引にでもヴィヴィアンを押しのけて隠し通すべきだったものを。深く吸い込んだ相手の香りに半ば麻痺してしまったせいで、自ら動く考えが咄嗟に思い浮かばなかった。ちゃんとわかるはずだったろうに──あのような言い方をすれば、本職がヒーラーであり、その上ギデオンを深く慕う彼女がどのような行動に出るか、予測できるはずだったろうに。若い時分は散々鳴らした己の雄健さが、今は心底恨めしい。長いこと娼婦の世話にすらなっていないのと、討伐明けの野性的な昂ぶりが残る身体だったことも、この大惨事を招いた原因には違いない。だがそんなこと、清純な乙女であるヴィヴィアンには全く関係のない話だ。あんなに信頼を寄せられたにもかかわらず、こんな無様を自ら晒してしまったとあれば。心地よかった相棒関係も、きっともう、以前通りには立ちいかなくなってしまうだろう。希薄な関係なら単に慰謝料で済んだ話も、なまじ双方向に情を通わせた関係では、そう簡単には消化できまい。これは──さすがに──本気で──詰んだ。いろいろ、終わった。頼む、だれでもいい、何でもいいから、今すぐ俺を殺してくれないか。……等々、ひとりどん底に落ち込んで萎みゆくギデオンは。愚かなことに、ヴィヴィアン本人の心境の変化にも、そっと落とされた妙に熱っぽい呼びかけにも、まるで気づかぬままでいて。
──されど、隣室で物々しい騒ぎが起これば、流石に急意識を浮上させ。一瞬だけごく普通に、いつもどおりに、相手と顔を見合わせると。体を起こして立ち上がり、軽く開けた扉から外廊下を覗き込む。どうやら左右のほかの部屋からも、なんだなんだと野次馬が顔を出しているようだ。そのうちのひとりが今日組んだ双肩剣使いで、何やら訳知り顔を浮かべていたので尋ねてみるに。どうやら、このパーティー内で有名なカップルが、男のいつもの異常性癖が原因で大喧嘩しているらしい。「あいつ、すぐドン引きもんの注文つけるからなあ……でもいつものことなのよ。どうせすぐ大人しくなるから、ほっときゃいいさ。ごゆっくり!」そう言い、次の瞬間には猫なで声で(「ジュリーちゃ~~~ん!」)……室内の女にかまい始めた男の様子に嘆息し。ギデオンもそっと、やけに大人しく扉を閉じると。「………………」と、ヴィヴィアンに背を向けたまま長い長い沈黙を落とし。それから不意に俯いた顔の眉間に、指をぐっと押し当てると。できるだけ普段通りを心がけようと試みながらも、やはり露骨にこわごわといった様子で話しかけ。)

……いつもの喧嘩で、一晩じゅう続くわけじゃないそうだ。わざわざ手当てしに行くこともないだろう。





355: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-15 12:40:32




そう……

 ( ──……ぱさり。先程の騒動中、立ち上がったギデオンの一方で、ビビもまたいつでも飛び出せるよう、手近に増えていた物を手に取り、肩から羽織っていた毛布が、音を立て床に落ちる。扉の前から動かない相手のその声が──あまりにも不安げに、頼りなく響いたものだから。気づいた時には靴も履かないまま、中途半端な生返事だけを浮かべて、未だ振り返らないその背中へ駆け寄っていた。そもそもが、この人は私に本気になったりしない。その安心感だけで始まった関係である。教会で過ごしたあの夜の後でさえ、どこかギデオンと共にいる未来など想像出来ずにいた心は、今回の事態に、ショックを受けていない、怖くない、なんて言えばどうしたって嘘になる。それでも、その心做しか覇気のない背中を見て溢れるのは、この優しい人を傷つけてしまった後悔と、今更消えようのない愛しさばかり。普段なら勢いそのまま飛びつくところを──自分あた不用意に触れることで、更に深く傷つけてしまうのが恐ろしくて──その直前で踏みとどまり。心許ない胸元をそっと庇った反対の手で、見慣れた真紅の裾を控えめに引く。そうして何か口にしようとしては、謝罪も、弁明も、何もかもが薮蛇か、言う権利もないそれにしかならないような気がして押し黙る、という行為を数回重ねてから。やっと絞り出した「……触れても、いいですか」と、口に出してから気づいた誤解を招きかねない表現に、微かに頬を赤らめ焦ったような表情を浮かべると。許可を得られればその手なり、そのままシャツの裾なりを緩く引いて。祈るような気持ちで、はるか遠くなってしまった相手を物理的にも部屋の中央へと引き戻そうとして。 )

え、と。そうじゃ、なくて…………寒い、でしょう。
ずっとここにいたら風邪ひいちゃいますよ。




356: ギデオン・ノース [×]
2023-02-15 13:35:43




(ぱたぱたと軽い足音がしたかと思えば、片袖を緩く引かれる感触。それは同室の男を恐れるにしては、未だ親しみのこもった仕草のように感じられる気がするのだが、思い上がりに過ぎないだろうか。そうして数秒の迷いを経たのち、ごくゆっくりと、身じろぎするようにして相手のほうを振り返れば。こちらに駆け寄っていたヴィヴィアンは、長い睫毛に縁どられた目を左右あちこちにさ迷わせてから。“触れてもいいか”なんて、やはり変わらぬ思慕を感じさせる言葉を選んでくる有り様で。
目を瞬くギデオンの前、慌てて言い繕うその赤面も、こちらを心配して見上げてくる祈るような視線も。流石におずおずとはしているものの、それでも……ギデオンの良く知る、いつものそれとほぼ変わらない。寧ろ何故か、とんでもない目に遭ったはずの彼女のほうが、罪悪感のようなものを滲ませた目をしている。そう感じてしまった瞬間、深刻な皴を刻んでいたギデオンの表情も、途端にふっと、脱力したように緩んで。──今夜は流石に、誰がどう見ても、どうにか別々に寝泊まりすることにしたほうが良いと。互いの精神衛生上最前に違いないと。そう考えて、すぐさま荷物をまとめて出ていくつもりでいたのだが。ヴィヴィアンのこの顔を見てしまえば、そんな構えは心底馬鹿らしいと、ごく自然に気を変えてしまった。この娘はどこまでも、ギデオンの身を案じるのだ──それを拒むほうが酷だろう。故に、落ち着きを取り戻した穏やかな声音で、「そうだな、」と応じると。相手の促すまま、室内へ引き返して。)

……なあ。お互いに、今夜ここで見た光景は忘ることにしよう。





357: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-16 10:56:04




お互いに……?

 ( 此方の愚かな失言にかどうか。見上げたギデオンの顔から険が薄れ、穏やかな相槌が続けられると、ホッと胸を撫で下ろす。しかし、この選択が正解かまではどうにも自信を持てずに。またギデオンに負担をかけるだけに陥るのではないかと、不安にならない訳では無いものの。ひとまずは、もう一緒にいられないほど、気まずくなる展開だけは避けられたことに嘆息し、この後、相手が入浴している間にでも、他の部屋が空いていないか聞いてみよう──と、つくづく似通った思考回路を密かに展開し始めて。そうして油断していたものだから、相棒の提案にぽやっと首を捻るヴィヴィアンは、勿論、先程の件に関して、ギデオンが望まなくとも、二度と掘り起こせる気さえしてこないのだが──はて。と、戻ってきた部屋に何気なく視線を飛ばした瞬間──相も変わらず赤面不可避な雰囲気で鎮座する大きなベッドの中央、見慣れた一組の白いそれを見つけると、ふぎゃ!だか、みぎゅ!だか。兎に角、踏まれた猫の様な声をあげ、動作までそれよろしく飛び上がり、それは素早い動きで問題の下着を掻き抱き「もう一度浴室失礼しますぅッ!!」と律儀に頭を下げてから、物凄い勢いで浴室へと飛び込む。そして静かに扉を閉じきってからやっと、荷造りの際にしまい忘れた振りをすれば良かったものを、今この瞬間、パジャマの下に何も身につけていないと、自分から白状したことに気がついて「んなあぁあ」と、扉越しにくぐもった苦悩を響かせた。…………それから数分後、首まで真っ赤な顔を両手で覆い隠しながら、しおしおと姿を表して。当たり屋同然の文句を垂れながら、柔らかいベッドマットに突っ伏すと、色気も何も無い羞恥に震える饅頭と化して。 )

ありがとうございました……お次どうぞ……
う、うぅぅー……、もうやだぁ……
お嫁にいけない、ギデオンさん貰ってください……




358: ギデオン・ノース [×]
2023-02-16 12:50:52




(マドンナヒーラーと呼び声高い、平時の可憐さはどこへやら。奇声奇態を迸らせた相手は、そのままものすごい勢いで浴室へすっ飛んでいった。そうして、固く閉ざしたシックな装飾の扉の向こうから、猫のような嘆き声が尚も長々響いてくる始末。無言でそちらを見遣っていたギデオンは、数拍置いてから、思わず吹き出してしまうのだった。──憎からず思う相棒相手に、目も当てられない醜態を晒してしまった、と先ほどまで絶望していたが。どうやら彼女も彼女で、乙女として致命的な失敗をしでかした、と見悶えているらしい。とはいえ、当のギデオンとしては別に、案外かなり抜けたところがあるんだな、くらいにしか思わないのだが。かえって不思議と好ましく感じるのは、素のヴィヴィアンにこんな一面があることを、ギルドのほかの連中は然程知らないに違いないからだろう。こちらの恥と引き換えにして、一生揶揄うネタができた。……などと、荷解きしながら愉快気に口元を緩めかけて、……──ん? と、冷静な違和感に動きを止め。しかし、そのわけを大して深く考えられぬうちに、ようやく戻ってきたヴィヴィアンを振り返り、出迎えることになる。相変わらず真っ赤な彼女は、萎々とベッドに丸まりつつ、やけくそ気味な逆プロポーズをかましてくる悶えようだ。それですぐさま蘇る先ほどの違和感を、しかし今は一旦忘れることにし。いつもの涼しい表情──その中でも、相手に何か意地悪を言うときのそれをさらりと取り繕うと。まだ濡れているためにいつもより色濃い栗毛に、自分の持ってきたタオルのひとつをぽふりと被せ、いかにも面倒見よく言い聞かせておいてから。タオル越しに相手の頭をぽんぽんと撫でたが最後、低い小声で一言落とし、そのまま浴室へと向かって。)

安心しろ。わざわざそんなことしなくても、おまえの秘密は墓場まで持ってってやる。それより、風邪をひかないようしっかり温まっておけよ。
それと……そうだな。────ごちそうさま。






359: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-16 17:02:20




──……ギデオンさ、──ッ!?!!?

 ( 墓場だなんてそんな後生大事に持ち歩かずに、早急に脳内から消し去ってくれだとか、そんなことってなんだとか。言いたいことは沢山あるものの、温かくかけられた優しい声と、二段階で後頭部を包む優しい感触に、うっとりと感動の面を上げた瞬間だった。不意打ちで落とされた爆弾に、ばっと耳を押さえると──心にもないことを!と、いつかの様にはもう、とても跳ね返れない事態が起こってしまったばかりだ。それこそ爆発するのではないかという程染まった顔で、声もなくパクパクと唇を震わせると、どこか上機嫌に消えていく背中を涙目で追いながら、ゆっくりと傾いでいって、今度こそしっかりとシーツの海に撃沈するのだった。──そうして、致死量の悪戯を喰らって暫く。耳に残る響きの甘さにピクリとも動けずにいた次は、聞こえてきた水音に耐えきれなくなって、お馴染みの外套をひっつかみ、勢いよく廊下に飛び出した。タイミングよく廊下の角に女将を見つけて、ぱあっと顔を綻ばせたのも束の間。こんな真冬の深夜にも関わらず、外套だけを雑に羽織って、太もも丸出しで飛び出してきた女性の姿に、女将はさぞ肝を冷やしたらしい。やれ「私のせいで」やら、「申し訳が立たない」などと、いささか過剰なほど青ざめた顔で震える女将を前にして、部屋を変えてほしいなどと言い出せるはずもなく。相棒が入浴している間の貴重な時間は、彼にかけられた不名誉な嫌疑を晴らすのと、可哀そうなほど憔悴しきった女将を宥めるだけに終始した。……ついでに、余計な心労をかけてしまった女将を元気づけるため、ギデオンとの関係をそれは甘いものに盛ってしまったような気もするが、おそらく二度と顔を合わせぬ相手だし、致し方ない不可抗力といったところだろう。それにしても、女将のせいでとはどういう意味だったのだろうかと、呑気に首をひねりながら。部屋へと続く扉を捻れば、丁度相棒も入浴が終わったところだったらしい。彼がたまに起こす意地悪のためといえど、『温まっておけ』とタオルまで貸してもらったにも関わらず、随分な恰好で外に出てしまった己を見下ろせば、へらりと気まずそうな微笑みを浮かべ。どうにも的外れな罪悪感に、分かりやすく視線を逸らしては、不自然な動きで自分の荷に近づくのは、下手くそな誤魔化しの構えで。 )

……えへ、雪もう一晩止まないみたいですよぉ。
あ、タオル使います……?




360: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-16 22:03:38




( / 度々失礼致します。
ビビの最後の台詞『雪"もう"一晩止まないみたいですよ』についてですが、本来意図していた『朝まで止まない』以外に、『明日の夜も止まない』方にも読み取れてしまうことに、後から気が付きまして……分かり辛い文章大変失礼いたしました。
タオルについても、新しいビビの物をという意味です。
度々申し訳ございません。ご確認よろしくお願い致します。/蹴可)



361: 匿名 [×]
2023-02-17 10:55:09



…………

(熱い湯を浴びるついでに邪心も鎮め、心身共にさっぱりすると。厚手の寝間着に着替えた姿で、濡れ髪にタオルを掻き込みながら浴室の扉を引き開け──思わず、ぎょっとする羽目になった。そこにいたのは、あからさまに外出帰りといった様子のヴィヴィアンだ。しかしながら、例のふわふわパジャマにバロメッツの外套だけ、なんていうあまりにあられもない恰好。無論、ぴちぴちした太ももも眩しいほどに丸出しである。ギデオンの目が思わず釘付けになったのも、今回ばかりは何も疚しいそれによるものではない。こんな姿で外を出歩くなんておまえは正気か、襲ってくれとアピールしているようなものだろう──そう本気で肝を冷やしたからだ。故に、頓珍漢な反応を示す相手を、ぎろりとおっかない目で睨みつけたものの。先ほどの珍事件の手前、少なくとも今夜ばかりは自分がうるさく言うのも少し筋違いだろうか、と弁えてしまえば。結局顔を片手で覆い、深々と呆れのため息を零すに留めて。)

いや、手持ちで充分だ。……しかし困ったな、そうなると明日は帰りの馬車が出ない可能性もある。

(そうして平静な会話に切り替えれば、首周りのタオルを横髪にわしゃわしゃさせつつ、相手とともに暖かい部屋の奥へと。かと思えば、ベッドの上から毛布を乱暴に引き?がし、そちらを見もせず相手に放り投げ、ぼふんと強引に被せてしまう。さながらお化けのような格好にさせてしまったが、さあ貪ってくれと言わんばかりの恰好で外を出歩いた怒りは、それはもう強いのだ。このくらいの仕打ちはされて然るべきだろう、とむすっとした顔でそれを見やり──その奥。ベッドボードの辺りに、連れ込み宿ならどの部屋にも備えてあるいかがわしい小袋が置いてあるのにふと気が付くと。未だ毛布を被っている相手を、凍りついた顔で振り返り──そこからまさに電光石火。大股でそちらに回り、それをガッとひっ掴めば、また大股で窓のほうへ回り、二重のそれをがたがたと喧しく押し開け。それから渾身の、歴戦の戦士の肩を奮いまくった膂力を活かし、激しい吹雪の中に大暴投をぶちかます。──先ほど邪欲は振り払ったつもりだが、あんなものが傍にあっては、一線を越える言い訳を己に与えてしまいかねない、故に及んだ奇行である。それをどうにか誤魔化せたろうか、相手にはどこまで見られずに済んだろうか。いずれにせよ、冷静な顔を今一度取り繕うと、暖炉に薪を足しながらしれっと先の会話を続けて。)

……この町も、明日は人手が足りないだろう。雪掻きの手伝いのためにもう一泊することもあり得るな。



(/ご丁寧な補足をありがとうございます。諸々伝わっておりましたのでご心配なく!
今回返信が遅れたのは偏に背後事情ですので、その辺りどうかお気になさらず。(余談ですが、いつにないラブコメっぷりに笑いっぱなしとなっております。いつも楽しい小話をありがとうございます……)/蹴り可)





362: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-18 23:59:11




それは困──わっ、ぷ……!? なに、何!?

 ( ギデオンの気持ちが、少しは此方へ向くようになったと思っても、その過保護なところはちっとも変わらないらしい。深い深いため息と、目尻の吊り上がった一睨みを、えへ、と肩を竦めることでやり過ごし──……過ごせたと。少なくとも個人的にはそう思い込みながら、明日の懸念に振り返ったところで。立ち上がり際、飛んできた毛布をまともに喰らってしまい。とはいえ、相手のその怒りの表し方には慣れたもので。全く意に介さない調子で、きゃあ、とはしゃいだ声を出しかけた寸前。突如ガタガタガタッ!と上がった異音に、混乱の声を漏らしながら、毛布の海をたっぷりもがくと。なんとか顔を出した頃には、何事もなかったかのように窓を閉めている相棒に、あちこち元気よく跳ねた頭を、不思議そうに捻って。しかし、ギデオンの奇行をそれ以上問い詰めなかったのは、当の相手がその先に漏らした言葉の方がより問題だったからだ。そもそもが便利屋と並べられることも少なくは無い冒険者稼業、雪掻きについては問題どころか、丁度よく力自慢の揃っているタイミングに降った雪(因果関係的には逆なのだが)には、この街の人々を助けられることに喜びさえ感じるのだが──しかし。薪を焚べる背中に視線を向けたかと思うと、次第にジワジワと赤くなっていき、終いには抱き締めるように抱えていた毛布に、ぽふりと顔の下半分を埋め、大きな背中へ困ったような、どこか期待するような視線を向けて。 )

雪掻き!は、いいんです、けど……も、もう一泊って。その、また……同じお部屋ですか……?




363: ギデオン・ノース [×]
2023-02-19 00:50:03




それは────それは、……俺にも、わからん。
まあ、地元の連中が自宅に帰る可能性だってあるわけだし……様子見になるんじゃ、ないか。

(わかりやすく恥じらう声がなんとはなしに気になって、そちらを振り返った瞬間。がちん、と不自然な硬直を晒したのは、しかし必然だったろう。──何故この若い相棒は、毎度毎度、そうも的確にあざとい仕草をしてみせるのだ。おそらく本人は無自覚にやってのけているのだろうが、それにしてもだ。毛布をぎゅうと抱きしめ、耳まで真っ赤にしながらも、こちらに感情たっぷりの上目遣いを寄越してくるなど。年頃らしく羞恥に困りながらも、どこか期待のこもったような、なんともいえない甘い声を、か細く聞かせてくるなど。──なんというか、駄目だろう。あまりに卑怯が過ぎるではないか。いきなりの破壊力に、いっそ理不尽に機嫌を悪くしたいほどであったのだが。しかし実際のギデオンはといえば。相手から外した視線を数秒揺らした挙句、ふいと真横に顔を逸らし。落ち着いた無表情だけはどうにか皮一枚保てたまま、冷静な意見を述べる、という、わかりやすいんだかわかりにくいんだか、微妙な具合の反応ぶりで。
……と、その先に窮していた矢先。こんこん、と控えめなノック音が聞こえてきて、ぱっとそれまでの空気感をかき消し。相手とちらと目をかわしてから、まだ下げていた腰の剣の柄に一応は手をかけつつ、己が素早く出迎えに向かう。はたしてこの夜半、ふたりの部屋を訪ねてきたのは、なんと先ほどの女将であった。出てきたギデオンに一瞬びっくりした様子を見せたが、「あのっ、そのっ、先ほどお嬢さんが身体を冷やしてらしたので……」と、持ってきたものを差し出す。どうやら、完全な厚意によるルームサービスらしい──生姜湯のポットなり、軽食と小型湯たんぽの入った籠なり、連れ込み宿のそれにしては妙に家庭的で手厚すぎる気もするが。とはいえ、貰えるものは貰う主義だ、ありがたく淡々と礼を述べると。女将はギデオンの目をやけにまっすぐ見つめてから、今度は身体を斜めにして、部屋の奥にいるヴィヴィアンのほうを気遣わしげに覗き込む。そして何やらほっと胸を撫で下ろすと、もう一度ギデオンを見上げ──露骨に悩ましそうな、心配そうな、微妙そうな。でもぎりぎり、無理矢理になら納得はできるというような。そんな妙な表情をころころ繰り広げてから、「うん、まあ、この人なら良いかしらね!」と、今度はやけに晴れ渡った様子を見せ、結局大人しく引き上げていった。……妙に手厚いサービスも、今の愉快な百面相も、最後の言葉の意味も。いまいちさっぱりなギデオンは、なんだか狐につままれたような顔で首を捻りながらも、差し入れを手に室内へと戻ってきて。)

よくわからんが……女将からの差し入れだ。今晩、おまえが身体を冷やさないように、だとさ。





364: ギデオン・ノース [×]
2023-02-19 02:20:17



(/※入浴後なので剣の装備は解いているはずでした……些細なことですが、そちらの描写はなかったことにしてお目通しくださいませ!/蹴り可)




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