TOP > 1対1のなりきりチャット

Petunia 〆/914


最初 [*]前頁 50レス ▼下へ
自分のトピックを作る
895: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2025-06-10 19:41:53




──……! 
はいっ!! とっても楽しいです……!!

 ( ギデオンの発言に一瞬、思わず反応が遅れたのは、その内容があまりに予想外だったからだ。人の領域外れた危険な森で、屈強な亜人と対峙しているとは思えない単語に目を瞬き、そもそもこの件が起こった経緯を考えれば。決して楽しいだなんて言えない──言ってはいけない、不謹慎だとさえ思うのに。ギデオンの言葉を咀嚼するほど、それ以外の言葉で今の気分を言い表すことができず、くしゃりと満面の笑みで頷いて。これは相手に任せたいと思う前に太い草蔓が木っ端微塵に切り裂かれ、これは自分で対処した方が早いと描いた軌道は邪魔されない。相手の呼吸が、鼓動が、魔素の流れが、手に取るようにわかる、まるで自分の何十倍も強く賢い相手が自分の身体の一部になったような一体感といったら。しばらく続いた追いかけっこも終盤、山羊亜人達がほぼ垂直に近い崖を逃げていく様子に、ここらが一旦潮時だろうと脚を緩め。まろい頬を薔薇色に上気させ、華奢な肩を小さく上下させながらギデオンの方へ振り返れば。 )

…………すごい、スゴイすごいっ!!
なんで!? 私の考えてること、ギデオンさん全部ご存知だったんですか!?
グンッてやったらバァンッてなって……気持ち良かったぁ、ありがとうございます!!

 ( きゃあっとその場で飛び跳ねるヒーラー娘の瞳には、ベテラン剣士への深い尊敬が満ち溢れ、未熟な自分に相手が合わせてくれたのだろうと、まず微塵も疑わない様子で栗色の尻尾を振りたくれば、擬音過多な感動を爆発させ。そうして、尊敬する相手に改めて、自分も役に立たねばと目を細めれば。深い懸崖の下、鬱蒼と茂る森の中でも、事前にかけておいた探索魔法の魔素が辿れることを確認すれば。今後の作戦を確認しようと、再度ギデオンの方を振り返り。 )

まずはあの人達が住処に帰るのを待たないとですよね。
ばっちり魔素は追えてますから、今度は私に任せてくださいね……




896: ギデオン・ノース [×]
2025-06-12 10:46:39




っくく、ああ──頼りにしてるぞ。

(わくわく張り切る娘を前に、とうとう堪えきれなくなって籠手を口にやり吹き出しつつも。その声を和らげてふと穏やかに投げかけたのは、薄青い目に滲ませる紛れもない感心だった。──いやはやまったく、大したものだ。相手はまるで、ベテランであるこちらが全て合わせたように言ってくれるが、あらゆる動きがしっくり噛み合い、全てが自由に無限に叶う……そんな不思議な一体感を得られていたのは、ギデオンもまた同じ。こんな感覚、それこそ十年以上前に、同じ魔剣使いの“相棒”がいた頃が最後だったと思っていたが。……この春から始まった妙なあれそれを差し引けど。この元気な若手ヒーラー、後輩ヴィヴィアン・パチオとは、どうも相性が好いようだ。
──ギデオンのその確信は、それから続く碑文奪還の任務の上でも、ますます深まる一方だった。翌朝早くに森に分け入り、エジパンス族の巣窟に突撃しての大暴れ。その一部始終において、戦士とヒーラーのふたりだけでここまで掌握できるものかと思わず苦笑してしまったし、何なら近場の集落が盗まれた財産もついでに取り返した次第。しかしさらに優れていたのは、ヴィヴィアンの機転により、なんとこの亜人族をやっつけるだけでなく、周辺の同類含めた一定の協定さえ、魔法で結ばせてしまえたことだ。……奴らはどうも、いつぞやの川のあの迷惑齧歯類同様に、稀代の乙女ヴィヴィアン・パチオの虜になってしまったらしい。故に、人類が追い求める錬金術の奥義より、かのヒーラーが作りだした世界に唯一の贋作の方が、よほどプレミアと思ったようで。仕方なく、彼女がマテリア・プリマの節を消して己のサインを上書きすれば、大歓喜するエジパンス族のまあなんとも鬱陶しいこと。これで平和になるならいいか……と、ヴィヴィアンが眉を下げる一方。ギデオンの方と言えば、すっかり懐いたふりをしてヴィヴィアンに撫でられている十数頭のエジパンス族の幼獣に、相次いで渾身のドヤ顔を見せつけられる羽目となった。──そうだ、そういえば。奴らは本来、“他人の所有する”価値ある財産に高い価値を見出すという、捻じれた性根の生きものである。ヴィヴィアン絡みで何だか妙に改心したと思ったら……いや待て、何故奴らがにやにや見るのが俺なんだ、と。ギデオンがうっすら駆られたその複雑な心境を、野性的な亜人族こそが余程的確に捉えていたとわかるのは……しかし一年後の話。)

(──ともかくこれで、失われていた人類の秘宝、タブラ・スマラグディナの一片は、無事人類の手に戻った。近隣の牛追い祭りは、近場の集落への財産返還の手続きであいにく逃がしてしまったが、ギルドのある王都でもまもなく祭が始まるから、ヴィヴィアンもそう惜しい思いをしつづけないで済むだろう。
戻った碑文の行く末は、ギルドマスターから学院経由で、外部に委ねることとなった。ガリニア絡みということでなかなか大事ではあるが、向こうの客員教授であるヴィヴィアンの父ギルバートが、その辺りはかなり慎重に根回しをしてくれたらしい。しかし同じ教授でも、カレトヴルッフ相手にごねた元のクエストの依頼人、あのローゼン・クロイツァーに内通している老人は、何やら余罪も出てきたことで、王立憲兵団の取調室に強制移送されたとか。これだけ迷惑をかけられたのだ、奴の企みのあらましをこちらも知りたいところだが……しかしこの事情についても、ギデオンたちが聞き知るのは、やはりしばらく後となる。
──騒ぎを招いた張本人、マルセルとフェルディナンドは、今日も元気にギルド厩舎の馬糞の処理を担当中だ。連日ひいひい喘いでいるが、こればかりは仕方ない。かれら皺寄せに翻弄されたギルド幹部の望みときたら、どうせ自分たちの休みはまだまだ先になるからと、いつもギルドを支えている掃除夫や見習いたちに休暇をやることだったのである。棚ぼたの褒美を得られた彼ら一同は大喜び。うだる暑さを迎える前に、家族や友人とのひとときで羽を伸ばせることとなった。)

(──そうしてカレトヴルッフに、盛る夏を迎える前の静けさが戻ってきた頃。しかしギデオンはと言えば、カレトヴルッフ本舎四階・執務室の横にある、あの休憩室にてひとり、何やら書類を見つめていた。本来事務員でもない人間は閲覧できない代物なのだが、己は一応ランクⅥ、加えて普段携わる業務内容の特殊さから、こういった機密情報に触れる権利を密かに得ている。……それによれば、あの溌溂とした若い後輩、ヒーラーヴィヴィアン・パチオには、ギデオンの知らぬところでいくつか苦労があるようだった。
──端的に言えば、彼女が加入している保険が、今は不完全なのだ。キーフェンなどに比べればこれでもかなりマシではあるが、この国トランフォードもまた、女は男の署名がなければ得られぬものが山ほどある。保険周りもそのひとつで、これは元々彼女の父ギルバートが署名をきちんと付していたが、彼がガリニアで勤める間に、更新するべき数々がすっかり放置中らしい。忙しいあの方のこと、愛娘の身のことは誰より案じているはずだが、こういった些事については失念しているのだろう。とはいえ先日の娘の手紙に即刻返事を寄越したように、あまりにも忙しくて知らせが届かぬわけではない。……おそらくはヴィヴィアンの方が、自分自身に関することでは連絡を取れずにいるのだ。
とにかく問題は、今もおそらく書類周りで面倒が生じている上、もし万が一のことが起これば、あの明るく元気な娘が、かなりの不利益を被ってしまうということ。これは完全にプライベートな事情であり、上司が立ち入るべきでは無いが、一度知ってしまったからには、今更見過ごすことはできない。……以前から考えていたことは、やはり実行に移すべきだな、と書類から顔を上げたのと、コンコンと控えめなノックの音がしたのが同時。「入れ」と促しながら、保険の書類は脇へ仕舞って。)





897: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2025-06-14 01:31:40




 ( 時を遡ること約一週間、様々な感動に満ち溢れたガダヴェルでの大冒険が始まる数日ほど前。若手ヒーラー・ヴィヴィアン・パチオは、密かに胸を高鳴らせていた。それは、帝国魔導学院から届いた協力要請の書面とは別にもう一通、とある手紙が娘の元へと届いていたからだ。今回協力を仰いだガリニアの学者──もとい、ヴィヴィアンの父親にあたるギルバート・パチオから、一人娘に当てた一通の私信。流行の薄紙を使った便箋には、お堅い時候の挨拶や今回の事件についての個人的な主観の他、"久しぶりに顔が見たい"、と。忙しいパパが、私に、会いたいと!! この話の流れだ、魔導学院からギルドへ協力しに来てくれる代表者はパパなのだと──てっきり、そう信じ込んでいた娘の下を、つまりカレトヴルッフを訪れたのは、顔も知らない歴史学者の青年だった。
 とはいえ、彼個人の名誉の為にいうと、学者の仕事は非常に素晴らしかった。盗まれた碑文が、いつどこで出土した代物なのか、確かな文献とともにあっさり提示し、ついでに“薔薇十字原理教団”が多用する管理魔法の痕跡さえ、捜査の証拠として正式に使える形式で並べられては誰もが感心するしかない。あとから話を聞けば、今の帝国では右に出る者はいないと謳われるその道の第一人者ということで。ギデオンらの活躍をもって尚、彼の存在がなければこんなに早い事態収拾は望めなかったであろう大物の出国を、よくもあの帝国が認めたものだと、カレトヴルッフ側が感心していた時期を同じにして。そんな彼の出国に一番大きく貢献した大魔法使い、愛する娘が自分を頼ってくれたことに、密かに浮かれ回っていたギルバート・パチオが──例の私信を出すに至った、それを進めてくれた研究助手から、「そうじゃないでしょう!」と。何故アンタが行かなかったのか、「娘さんに"会いたい"って、今度こそ書けたんでしょう!?!?!?」と、持ち前のコミニケーション下手をボコボコに叩かれていたのは別のお話。 )

…………。

 ( 閑話休題。カレトヴルッフに激震を走らせたタブラ・スマラグディナに纏わる一連の事件が収束し、いつも通りの日常が帰ってきたギルドにて。此度大変お世話になった教授に感謝を伝え、辻馬車の駅までお見送りから帰還したヒーラー娘は、普段元気よく揺れている尻尾をしょんぼりとさせ、とぼとぼと長い廊下を歩いていた。──忙しいって、わかってたのに。普段滅多に個人的な連絡を寄越さない父からの手紙に、ただの社交辞令を真面目に受け取ってしまった自分が恥ずかしい。子供じゃないのに、こんなことで落ち込んで、会いたかったのは、あんなにお世話になった教授じゃ無かったなんて失礼だ。そうして、ふ、と自嘲を漏らし──いけない、と。暗い気持ちを物理的に振り切るように首を振れば、ぱたぱたと真っ直ぐ走り出した先は、ドクターのおじ様に聞いた"彼"の居場所。こんな酷い気分の時は、誰か他の人に構いつけ、忙しくなってしまえば自分の事など忘れてしまえる。そんな破滅的な思考を自覚していた訳ではないが、担当治療官として任務後の相手の体調は、他意なく確認しておきたかったところ。ワーカーホリックな相手のことだ、もたもたしているとすぐ様次の依頼に向かってしまう前に捕まえなくてはと。ノックの返事を待って勢いよく部屋に飛び込めば、いつもの通りの人懐こい笑顔で擦り寄って。 )

お疲れ様です、ギデオンさん!
今先生を送ってきたんです……あれから傷の調子は如何ですか?




898: ギデオン・ノース [×]
2025-06-14 14:45:24




ああ、いや……まったく問題ない。
おまえの狙い通り、新しい調合が効果を発揮しているらしい。

(てっきり伝令の見習いか誰かだろうと思っていたその矢先、まさか思い描いていたヒーラー娘本人が飛び込んでくるとは思わず。一瞬大きく目を瞬き……とはいえ動揺を隠すべく、すぐにいつもの気怠げ顔を。「来週もまた調整して、それで問題がないようなら、外部の精密検査には行かなくて済むようだ」──と、それで時間が浮くことのほうをありがたがるような口ぶり。しかし実際、相手の全てにつくづく感謝しているのだと、擦りつく娘を以前ほどは遠ざけずにおくことで、多少は示せているだろうか。)

今回の件、改めて助かった……おまえがうちにいるんでなけりゃ、もっと大事になってただろう。

(ため息交じりにそう言いながら横の椅子に座らせて、これを見ろ、と促したのは、丸テーブルに広げていた今朝付の新聞だ。窓から差し込む夏の陽で明るく輝くそれによると、なんでも隣国ガリニアが、自国の古代の歴史に関わる美術品の流出を巡り、北方の周辺国と火花を散らしているだとか。……もしトランフォードのほうでも、碑文と先住民の件でひとたび狼煙が上がったならば、この記事に書かれているのと似たような厄介ごとが膨れ上がっていただろう。事態が大きくなる前に碑文そのものを回収し、それを誰より適格なガリニア人の手に渡す。ただひとつの正解をここまで早くこなせたのは、偏にパチオ父娘のおかげだ。
──しかしそのギルバートは、今もあちらの学院にいるまま。今回こちらに寄越してくれた歴史学者がおそらくはそうしたように、特権でも何でも駆使してワイバーンに乗ってくれば、ほんの一週間もかからずこちらに戻ってこられるだろうに。とはいえ、なかなかそんな時間も建前も取れないお立場なのだろう。そしてヴィヴィアンのほうもまた、契約の更新の件を長らく伝えていないとなると──……と。
相手が読み終わったと見て新聞を四つ折りにすれば、その下から現れた数枚の羊皮紙を、相手のほうにふと滑らせ。とんとん、と指の頭で空欄を指し示してがら、胸ポケットから取り出した少し特殊な羽ペンをテーブルの上に置く。──本人が少し魔素を込めれば、それが中のインクに混ざる公文書用の羽根ペンだ。通常、ギルド内の報告書にわざわざ使う代物ではないが、今はそれしか持ち合わせがないんだ……というような声の調子で通しながら、他にも広げていた書類を封筒に纏める間。相手が目を通す書類の最後、クリップで留められた少し紙色の違うそれらは、既にギデオンの署名が為された、『魔獣討伐者身元保証書』『第2号連帯保証書』『一通扶助新規適用届』……等々であるはずで。)

ついでだ。今回の件で俺が出さなきゃならない書類にいくつかお前のサインがいるから、ここで書いていってくれ。





899: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2025-06-16 03:27:41




そんな……私自身は大したことは何も。
でも、ギデオンさんのお役にたてたなら嬉しいです。

 ( 相手の体調の確認も済み、大好きな相手からの感謝に、えへへ、と促された椅子に手をかければ、長い脚を斜めに引き美しい仕草で腰掛けて。そうして、受け取った記事に、ギデオンからの評価を実感し、じわりと頬を赤く染める一方で、形の良い眉尻を八の字に下げ、「大事にならなければ良いんですが……」と、自分らが免れた不穏を他人事として、僥倖だったと切り捨てられないのは性分だろう。どこか複雑そうな表情で、読み終わった新聞を返しながら、代わりに差し出された書類に「サイン?」と小さく身を乗り出せば。慣れた動きで魔導率の良いペンをふわりと浮かせて引き寄せると、椅子ごとテーブルの方へと向きを変え、長い睫毛を揺らしながら、また小さい文字の並んだ書類を、特に苦もなく目を通していき。 )

…………。……!!
ギデオンさん、これ……!!

 ( そうして、まずは一枚目、それから二枚目の『魔獣討伐者身元保証書』と『第2号連帯保証書』に視線を滑らせていた時は、まだ困惑しつつも悪くなかった顔色が、『一通扶助新規適用届』に至った瞬間、さっと薄く青ざめる。本来であれば、『相棒届』に対しても、何故こんなに唐突にだとか、人の承諾を得る前に申込もうとしてくれるなだとか、そもそも勝手に人の情報に当たるなでも。ギデオンの少し(?)行き過ぎた行為から守るべきは自分の身だったろうに、問題の書類を見た途端全て吹き飛んでしまい、思わず立ち上がりながら、必死の表情でギデオンの方へ向き直り。 )

違うんです!!
パッ……父は!! 元々ちゃんと入ってくれてたんです!!
更新を……更新を、わ、"私が"、忘れてただけなんです!!

 ( 本当は、違う。ヴィヴィアンはその保険の通知先を、ガリニアのギルバートの住所にしていた。故に約3ヶ月ほど前の更新手続きの書類も、そちらに届いているはずで。しかし、借りぐらしのアパートにまともに帰りつきやしないのか、それとも見た上で失念しているのか。どちらにせよ、忙しい父親に催促するのが申し訳なくて、躊躇っている内に切れてしまった保険を相手に見られたという焦燥が背中を濡らして。たった一人の肉親から、あまり関心を向けられていないだなんて、寄りにも寄ってこの人にだけは知られたくない。ましてや、"パパの大切な人を殺した私が悪いのに"、私のせいでパパの評価が下がるのはもっと嫌だ。その一心で、相手の拳を両手でとると、どこか焦点の合わない必死な視線で、父の名誉を守ろうとすがりつき。 )





900: ギデオン・ノース [×]
2025-06-21 22:51:04




わかってる──わかってるから、落ちついて聞いてくれ。

(──流石に勘が良いな、などと、取り乱す娘を前にモラルを欠いた感慨を得るも。その上辺の表情だけはいつも通り涼しげなまま、すべらかな手を優しく払い、逆に包み込むようにして、卓上に軽く抑える。会話の主導権を穏やかに絡め取りたいときに、若い頃からよく使ってきた手だ。さらに念には念をとばかりに、椅子の上から身を乗り出し、薄青い双眸で縫い留めるように相手の翡翠を覗き込んで。──そこらのぼんくら冒険者に何か一筆書かせるときは、いいから黙って従えと言いつければそれでよかった。だがしかし、頭脳も学歴も充分なこの若い娘には、同じ手管は通用しない。まずは不安を取り除きながら、ギデオンなりの誠意を……一応ちゃんと嘘偽りではないそれを、感じ取ってもらわなくては。)

いきなりこんなのを出したりして悪かった。……お前の状況を勝手に調べたりしたことも。
だが、こいつは……グランポートから帰ってすぐに考え始めていたことでな。
頼む、この機会に相談させてくれないか。

(乞うようにそう呟けば、そこで一旦視線を外し、テーブルの上の書類にその視線を走らせる。相手がそれに倣おうものなら、空いた片手で滑らせるように扇形に書類を広げ、そのいくつかを引き寄せて、共に向き合うよう誘うだろう。身元保証書、“二号”に“一扶”。この組み合わせだけでただ解釈するならば、相手が青褪めたその通り、まるでこちらが出しゃばって、彼女の父親代わりにでもなろうとしているかのようだ。しかし実際はそうではない。今回ギデオンが持ち掛けたいのは、この申請の先にあるもの。──ヴィヴィアンとの正式な、公的な相棒契約だ。
「今年から、ふたりで仕事をすることが増えたろ」と。敢えて相手と顔を合わさず、重ねていた手もようやくどけて、彼女に考える余地を与える。シルクタウン、グランポート、それから今回の碑文探しと、幾つかクエストを共にする中で、互いを相棒と呼ぶことは、確かに何度かありはした。……だがそれはあくまでも、その都度限りの関係で。毎回パーティーが解散すれば、後はただの一冒険者同士に過ぎず、互いに何の恩恵もない……そのはずだったというのに、しかしふたりの関係が決定的になってしまった部分がある。シルクタウンでのあの夜のことではない。ギデオンがグランポートでレイケルの呪い傷を負い、ヴィヴィアンがその治療を引き受けるようになったことだ。
優しい相手は一も二もなく担当ヒーラーとなってくれたが、それこそが問題だった。今のギデオンの右肩は、天文学的な確率で適合する魔素を持つヴィヴィアンにしか癒せないが、彼女自身による継続治療が欠かせないということは、ギデオンの具合に合わせて、ヴィヴィアンが自分の依頼を調整せねばならぬということ。老兵の世話のため、若い女性冒険者がそのキャリアに制限を受ける……これはよくある話だが、本来ならばあってはならない。これまで業界全体で連綿と続いてきたものを、ギデオンはこの優秀で気立ての良い大事な後輩に負わせてしまいたくはなかった。……よりによって、かつて慕った“シェリーの娘”なら尚のこと。その彼女にどうせ負担を強いねばならぬというのなら、こちらもその分恩返しを。それはごくごく当然の、自然な道理であるはずで。)

……冒険者同士が助け合うための契約には、いくつかの種類がある。俺たちはまだ仕事を組みはじめたばかりだから、本格的な内容のものはまだ承認が下りないだろうが……それでもこの書類でなら、過去の特例を引き出して通せるし、部分的には新しい先例も拓けるんだ。
だから何も、親父さんとお前の問題に首を突っ込むためじゃない。ついでにそこも助けられるなら一石二鳥、というだけで……俺の真意としてはあくまで、この先も今以上に、お前の治療を堂々と頼れる立場にしてほしい、といったところだ。





901: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2025-06-25 23:37:11




お気遣い、ありがとうございます……。

 ( ──また、だ。また、一体この人は何故こうもビビに頼るのに申し訳なさそうにするのだろう。年齢? 性別? 未来の後輩達のための先例作り? いつかの海上でのやりとりを、覚えていてくれているのだろう。ビビの名誉を傷つけないよう、かなり言葉を選んではいるものの。『堂々と頼れる立場にしてほしい』という言葉とは裏腹に。まるで、自分にその価値はないとでも言うかのような。その言葉の本質が変わっていないことくらい、付き合いの浅い自分でも分かる。次第にその卑怯な薄氷が何気なく逸らされた気配に、それまで、大きさも、厚みも、皮膚の薄さの違いからくる触り心地までも、その全てが自分とは違う掌に絡め取られた時から俯いていた視線を上げ、今度は此方から真っ直ぐな翡翠で相手を射抜き返せば。__やはり目の前のギデオンは今日だって一段と美しい。いや顔立ちの話だけではなく。人一倍の長身に見合った素晴らしい体格、剣を握るための形をした大きな掌、それら全てが見かけだけではない、実際に人々を守ってきたそれだと言うことは、キングストンの誰もがよく知っている。そして、その恵まれた腕力を司る理知的で、理性的な頭脳。まるで神話の英雄のようなどこをとっても精悍で、その存在を脅かせる物などないほど強く、賢く美しい大男だというのに、そのどこか非常にアンバランスで、ともすれば簡単に突き崩してしまえそうな危うさに目が離せなくなっていたことに、この時はまだ無自覚だった。
 とはいえ、そんな娘にとって、男から『頼れる立場にしてほしい』と、合法的にこのベテラン剣士に纏わりつける口実、もとい言質を抑えられたのは僥倖だ。自らの衝動の理由も自覚せぬまま、これでこの人をぬい止められるなら良いと。そう思えば、ビビの身上に、相手のサインを載せられる余白があったこと、保険に不備があったことはラッキーだったのかも。なんて、そんな内心の嘯きは、心の傷を癒すための強がりだったが。「確かに、この契約を結んでいただければ、私はすごく助かります。それで私以外の誰かの助けになれるなら、おっしゃる通り一石二鳥で、光栄です──」と。そこで、音を立てながら椅子を引き、すっくと立ち上がると同時に、今度は相手にやり込められぬよう、男が立ち上がる経路を塞ぐかのように上半身を乗り出し、相手の瞳に写る自分の顔が見えるほどの至近距離で見つめ返せば。これだけはなんとしてでも伝えたい、伝えなければならないことを。非常に堅い意志にそのエメラルドをギラギラと強く光らせて。 )

__でも。
私がギデオンさんを治療するのは、女だからでも、若いからでも、契約のためでもありません。
私が、ギデオンさんをそうしたいから、するんです。
ギデオンさんのことが、好きだから!!




902: ギデオン・ノース [×]
2025-06-26 04:22:47




(自身の心の持ちようにどこまでも無自覚な、ギデオン・ノースにしてみれば。相手の娘、ヴィヴィアン・パチオのその剥き出しの愛の台詞は、酷く唐突に聞こえたはずだ。何をいきなり、なぜそこに話が戻る、何をそんなに必死な面で。本来そんないろいろを、目を瞬いた上の眉間に皴のひとつでも寄せながら、ため息交じりにぼやくつもりが……しかし、実際のギデオンはちがった。その気配こそうっすらとだが、静かに凍りついていたのだ。
引き戻される──否応なく──もう二十五年も前の、色褪せたはずのあの夏に。もう遠い記憶の向こうで霞んでいたはずのあのひとも、今ここにいるヴィヴィアンと同じことを言っていた。……いや、違う。あのひとの目は違う。たとえよく似た翠緑だろうと、恩師シェリーの瞳には、こんなにぎらぎら燃え盛る眩い激しさはなかったし、こんなにギデオンただひとりにがむしゃらな顔もしちゃいなかった。あのひとはもっとずっとおおらかで、穏やかで……けれどいつも、どこか少し哀しげで。その陰を隠した笑顔からずっと目を離せずにいたのは、ギデオンの方だというのに。彼女は酒焼けでしゃがれた声で、それでも……心底愛おしそうに。

──ギデオン。
アタシがアンタの面倒を見るのは、ギルドにやらされてるからでも、雑用係が欲しいからでもない。
アンタのことが可愛くて、そうしたいから、そうするだけなんだよ。
アンタのことが、大事だからだ。)

────……

(──しかし、それでもかろうじて。表に現れる動揺は、頼りなく揺れ動く薄青い双眸のみだった。それが一度横に逸れ、どこへともなく落とされたのは、ともすればきっと、ただ単に相手の言葉に心が動かされたように見えもすることだろう。それはあながち間違いではないのだが、しかしこの時のギデオンは、もっと深くにあるものを見過ごしてしまうべく、それを装うことにした。──拳を上に持っていき、彼女のまろやかな白い額を軽く小突くふりをして、ふわりと仕方なさそうに笑う。これはあくまでこのふたりの会話だと、自分に言い聞かせるように。)

……言ったろ、「お前を頼りにしてる」って。
ちゃんとわかってるから、そう心配するな。






903: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2025-06-30 01:17:20




……信じてますからね。

 ( ──ああ、全く本気にされていないな。こういった時、説得力に欠ける自分の社会経験の無さがもどかしくて、むうと唇を尖らせつつも、上半身の距離感を正常に起こした娘にはまだ、相手の密かな動揺の真意は読み取れなかったらしい。それでも、『“お前を”頼りにしている』と言う相手に一旦矛を収めるくらいには、その言葉を嬉しくも感じていたものだから。まもなく来たる建国祭、頼りにするどころか、一人の個人としてさえも認められていなかったと信頼を裏切られ、二人がひどくすれ違うのはまた別のお話。
 閑話休題。そうして、手元の書類に再度向き直れば、手元のそれを便宜的な制度と見做しつつも、憧れの相棒届が手元にある感慨に、気づけばため息を漏らしていた。かつて、やはり相棒関係にあった先輩方お二人へ憧憬の念を向け、そんないいもんじゃないと、身寄りのない者同士の利害関係だと切り捨てられて、うすら寂しい思いをしたのはいつのことだったか。この関係だって、あくまでギデオンの負い目を減らすためのギブアンドテイクにすぎないのだが、それを承知の上、密かに幼少期からの夢に浸るくらいなら許されるだろう。──ギデオン・ノースの相棒ヒーラー……なんて。赤く艶のある唇に弧を描き、ヴィヴィアンの署名のために残された空欄の上の欄、男性らしい筆跡で滑る剣士の名をそっと撫で、手に取ったペンに魔力をこめると。窓から吹き込む外の風は、いつの間にか夏らしい雰囲気を纏っていた。)

__……その、私ばかり……じゃなくて。
どう、したら……ギデオンさんにも、喜んでいただけますか……?

 ( そんなガダウェル山脈でのタブラ・スマラグディナ捜索、及び初めての相棒契約から約一年。その間様々な事件が二人を取り巻き、その関係性に"相棒"以外の称号が加えられても。──優しい相手から貰ったそれ以上に、自分もまた相手のために尽くしたい、という想いはずっと変わらなかった。
 とはいえ、まさか本人も、それが褥の上でも対象だとは、自覚していたわけでは決してあるまい。
 時分は建国祭直前、救世主の祝日の関係でギデオンとヴィヴィアンのどちらも早く帰りつけた夜のこと。今日も美味しい夕飯に舌鼓を打ち、後片付けも終えたいつも通りの団欒の時間。愛しい恋人の腕の中、ネグリジェから透ける胸元まで真っ赤にした娘の声は、その至近距離をもってしても、消え入りそうにか細いもので。先日、初めて迎えた夜は予想外の事情がきっかけだったが、ギデオンの想いにやっと報いることが出来た満足と同時に、一つ叶えばまた一つと欲が出るのは我儘だろうか。未だ完遂には至らぬ触れ合いに──今度、もしまた誘っていただけたら、と。密かに決めていた勇気を振り絞ると、透きとおった金髪がさらりと隠す耳元へ、震える唇をそっと寄せて。 )

……教えて、いただけませんか、





904: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2025-06-30 01:18:04




……信じてますからね。

 ( ──ああ、全く本気にされていないな。こういった時、説得力に欠ける自分の社会経験の無さがもどかしくて、むうと唇を尖らせつつも、上半身の距離感を正常に起こした娘にはまだ、相手の密かな動揺の真意は読み取れなかったらしい。それでも、『“お前を”頼りにしている』と言う相手に一旦矛を収めるくらいには、その言葉を嬉しくも感じていたものだから。まもなく来たる建国祭、頼りにするどころか、一人の個人としてさえも認められていなかったと信頼を裏切られ、二人がひどくすれ違うのはまた別のお話。
 閑話休題。そうして、手元の書類に再度向き直れば、手元のそれを便宜的な制度と見做しつつも、憧れの相棒届が手元にある感慨に、気づけばため息を漏らしていた。かつて、やはり相棒関係にあった先輩方お二人へ憧憬の念を向け、そんないいもんじゃないと、身寄りのない者同士の利害関係だと切り捨てられて、うすら寂しい思いをしたのはいつのことだったか。この関係だって、あくまでギデオンの負い目を減らすためのギブアンドテイクにすぎないのだが、それを承知の上、密かに幼少期からの夢に浸るくらいなら許されるだろう。──ギデオン・ノースの相棒ヒーラー……なんて。赤く艶のある唇に弧を描き、ヴィヴィアンの署名のために残された空欄の上の欄、男性らしい筆跡で滑る剣士の名をそっと撫で、手に取ったペンに魔力をこめると。窓から吹き込む外の風は、いつの間にか夏らしい雰囲気を纏っていた。)

__……その、私ばかり……じゃなくて。
どう、したら……ギデオンさんにも、喜んでいただけますか……?

 ( そんなガダウェル山脈でのタブラ・スマラグディナ捜索、及び初めての相棒契約から約一年。その間様々な事件が二人を取り巻き、その関係性に"相棒"以外の称号が加えられても。──優しい相手から貰ったそれ以上に、自分もまた相手のために尽くしたい、という想いはずっと変わらなかった。
 とはいえ、まさか本人も、それが褥の上でも対象だとは、自覚していたわけでは決してあるまい。
 時分は建国祭直前、救世主の祝日の関係でギデオンとヴィヴィアンのどちらも早く帰りつけた夜のこと。今日も美味しい夕飯に舌鼓を打ち、後片付けも終えたいつも通りの団欒の時間。愛しい恋人の腕の中、ネグリジェから透ける胸元まで真っ赤にした娘の声は、その至近距離をもってしても、消え入りそうにか細いもので。先日、初めて迎えた夜は予想外の事情がきっかけだったが、ギデオンの想いにやっと報いることが出来た満足と同時に、一つ叶えばまた一つと欲が出るのは我儘だろうか。未だ完遂には至らぬ触れ合いに──今度、もしまた誘っていただけたら、と。密かに決めていた勇気を振り絞ると、透きとおった金髪がさらりと隠す耳元へ、震える唇をそっと寄せて。 )

……教えて、いただけませんか、





905: ギデオン・ノース [×]
2025-07-01 02:46:09




(時が経つのは早いもの。あの後やがて訪れる波乱のひと夏から一年、そしてサリーチェに越してきてから数間ほど過ぎた今。すっかり住み良く調えられた宵のリビングルームには、ついに恋仲となったふたり──ベテラン剣士ギデオン・ノースと若手ヒーラーヴィヴィアン・パチオの、他愛ない囁きだけが温かに満ちている。
ともに現役冒険者同士、そう毎日とはいかないものの、たまに過ごせるこのひとときがギデオンは大好きだ。ふたりで選んだソファーの上でヴィヴィアンを膝に抱き、仕事の話やその日の出来事をあれやこれやと話しながら、合間合間にキスをねだってねだられて、笑い合ったり見つめ合ったり。これ以上の人生の歓びなんて、この世のどこにあるだろう。そう大真面目に感じていたから、“自分ばかり”という彼女の台詞に、どこかあどけなく見えるほどきょとんとした顔を差し向け。いったい何を、と軽く問おうとした、しかしまさにその瞬間──油断していた耳元に、この清艶な爆撃である。)

────……、
…………、、、

(わかりやすくたっぷりと、愕然と目を瞠ったのち。すっと教会の信者のように敬虔な顔をしたかと思えば、天を仰いで目を閉じるなり息を止めて押し黙る、珍妙な反応のギデオン・ノースがそこにいる。この衝撃のやり過ごし方もかれこれ数度はしているはずで、ずっと傍にいる恋人もそろそろ見慣れてくる頃だろうか。「おまえな……、」と仰いだまま参ったような声を漏らすと、相手に回していた腕をぐっと力強く狭めて、真っ赤になって震える恋人を力いっぱい抱きしめてやる、これもいつものお約束。相手がどんな反応をそこで示してみせたにせよ、溜飲を下げるように大きな唸り声を漏らせば、ようやく少し腕を緩めて、見上げてくるエメラルドをじっくりと見つめ返す。──もう他の誰とも重ねない、ヴィヴィアンだけのその輝き。今はおずおずと揺れるそれがもっとよく見えるよう、軽くかかった横髪を片耳にかけるそのまま、その可愛らしい耳朶の端をかすかに擽る悪戯を。しかし続けたその声は、相手の望みに寄り添うように、こちらも湿度を帯びたもので。)

そういや、あれからお互いなんだかんだと忙しくて、すっかり間が空いてたものな。
……あの痕も、もう……?





906: ギデオン・ノース [×]
2025-07-01 03:01:10





(時が経つのは早いもの。あの後やがて訪れる波乱のひと夏から一年、そしてサリーチェに越してきてから数間ほど過ぎた今。すっかり住み良く調えられた宵のリビングルームには、ついに恋仲となったふたり──ベテラン剣士ギデオン・ノースと若手ヒーラーヴィヴィアン・パチオの、他愛ない囁きだけが温かに満ちている。
今はヴィヴィアンが段階的に復帰しつつも療養中、加えてギデオンも内勤が多く帰りやすいこともあり、共に過ごせるこのひとときが己は心底大好きだ。ふたりで選んだソファーの上でヴィヴィアンを膝に抱き、仕事の話やその日の出来事をあれやこれやと話しながら、合間合間にキスをねだってねだられて、笑い合ったり見つめ合ったり。これ以上の人生の歓びなんて、この世のどこにあるだろう。そう大真面目に感じていたから、“自分ばかり”という彼女の台詞に、どこかあどけなく見えるほどきょとんとした顔を差し向け。いったい何を、と軽く問おうとした、しかしまさにその瞬間──油断していた耳元に、この清艶な爆撃である。)

────……、
…………、、、

(わかりやすくたっぷりと、愕然と目を瞠ったのち。すっと教会の信者のように敬虔な顔をしたかと思えば、天を仰いで目を閉じるなり息を止めて押し黙る、珍妙な反応のギデオン・ノースがそこにいる。この衝撃のやり過ごし方もかれこれ数度はしているはずで、ずっと傍にいる恋人もそろそろ見慣れてくる頃だろうか。「おまえな……、」と仰いだまま参ったような声を漏らすと、相手に回していた腕をぐっと力強く狭めて、真っ赤になって震える恋人を力いっぱい抱きしめてやる、これもいつものお約束。相手がどんな反応をそこで示してみせたにせよ、溜飲を下げるように大きな唸り声を漏らせば、ようやく少し腕を緩めて、見上げてくるエメラルドをじっくりと見つめ返す。──もう他の誰とも重ねない、ヴィヴィアンだけのその輝き。今はおずおずと揺れるそれがもっとよく見えるよう、軽くかかった横髪を片耳にかけるそのまま、その可愛らしい耳朶の端をかすかに擽る悪戯を。しかし続けたその声は、相手の望みに寄り添うように、こちらも湿度を帯びたもので。)

そういや、あれからお互いなんだかんだと忙しくて、すっかり間が空いてたものな。
……あの痕も、もう……?






907: ギデオン・ノース [×]
2025-07-04 01:57:01




(あの後やがて訪れる波乱のひと夏から一年、そしてサリーチェに越してきてから数週間ほど過ぎたその晩。明日も午後まで休みだからと、少しばかりの“夜更かし”に恋人を誘ってみたのは、今度は初心な乙女ではなく、こなれた男のほうだった。
鉄と何やらは熱いうちに……なんて、往年のその考えが微塵もないとは言わないが。こちらは肌着を脱ぎ捨てて広い背中を晒しながらも、相手の可憐な砂糖衣は未だ剥がずにいる辺り、一応今宵のギデオンとしては、前回程度の戯れで満足するつもりでいたのだ。──剣だこのある掌で彼女のすべらかな肌に触れれば、ぴくり、と強張るその感触から、その先の行為には未だ恐れがあるのだろうと推察するのは難くなかった。だがそれでいて、それでも一歩踏み出す程度に、彼女側なりの動機がどこかしらにあることも。
ならばせめて、元凶たる過去の記憶が、少しずつでも自分とのそれで薄らいでいけばいい。いつまでも十代の頃の男の影を引きずらせてなるものか、今の彼女の身も心も己が安心させてやろうと。そんな殊勝な──もとい、至極単純な心意気で彼女を優しく啄んでいた、その矢先のことである。)

…………どう、って……、

(耳元に吹き込まれた精一杯の懇願に、一瞬ぴたりと固まったのち。ベッドの上で体を傾け、その顔を上げた男は、すっかり熱っぽい顔をして、返す声すら掠れていた。──前回“程度”の戯れ、なんて。そう楽観していたはずが、結局心の奥底では彼女との睦み合いを渇望していたせいだろうか。その頬に、額に、肩に、腕に、あらゆる場所にキスを落として時折鼻梁を摺り寄せるだけで、何故かこちらが多幸感でぼんやりしはじめ、頭の奥がとろりと蕩けて、この体たらくという始末である。それを幾らか誤魔化すのように、どこか番の獣じみた動きで相手の肩に顔を寄せ、ぱくぱくと軽く食んでから。そのまま厚い胸元に相手の頭を抱き寄せ、シーツの下の脚を絡め、その栗毛を撫でながら、低い小声で囁いて。)

……今だって、喜んでるさ。
それとも何か……何がしたい……?





908: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2025-07-06 14:09:20




……っ、う、嘘……!!

 ( 首筋を食む唇の柔らかな感触、そこから漏れる熱い吐息。それら全てを拾って強ばる娘のその表情は、あどけない困惑に濡れていた。私は何もしてないのにと、翻弄されるばかりだった初夜を思い出しては唇をもにょもにょと尖らせ。振り絞った勇気を、まさか相手が問い返してくるとは思ってもみなかったという表情で、シーツの上で身動ぎもできないまま、腹の辺りでネグリジェを握り込むと。二人のコミュニケーションの果てに、より深い交わりとして楽しむギデオンと、未だその行為を物理的な接触としてしか捉えられていないヴィヴィアン、その経験差から来るすれ違いに困ったように眉を下げ。その挙句、何って──手、とか、胸とか……!? と、なまじ中途半端に備えた知識故に、生々しく迷走し出す思考にぐるぐると目を回し、オーバーヒートして真っ赤になった顔を両手で覆い隠すと。ひん、と頼りなく喉を鳴らしながら、分厚い胸板に丸い頭を擦り寄せ。覚悟を決めたようにぐっとあげたエメラルドの輝きは、あくまで──だから、自分に出来ることを教えてくれ、という健気なお強請りだったが果たして、 )

──……わ、わかんない……。
でも、私、ギデオンさんが喜んでくださるなら……何でも、頑張ります……!!



909: ギデオン・ノース [×]
2025-07-07 04:16:31




っくく、ああ、そうか──何でも、だな……?

(彼女を狼狽えさせたのは他でもない己だろうに、それでもこちらに縋るように擦りつけられる小さな頭、またそのぽかぽかと温かなこと。これを世界でただひとり享受できる男ときたら、先ほどまでの顔から一転、今や目尻に皴を寄せ、その上躯を小刻みに震わせてしまう始末である。
しかし今宵のちがうのは、いつもならそこで二、三の言葉を交わしてあとは満足するはずが、そうはならなかったところだ。相手に注ぐ薄青い目に隠しもしない熱を宿せば、「……ヴィヴィアン、」と名を呼びながら、そのすべらかな片頬を掌で優しく包む。彼女がどう応じたにせよ、ナイトランプの薄明りに照らされたヒーラー娘の面差しには、こちらもやはり隠しきれない緊張の色が窺えよう。いつもはごく紳士に振る舞う──ふりに興じる──歳上の恋人が、いよいよ今夜に限っては、ならば先へ進もうとその手を取ってしまうのだから。
とはいえこちらも退く気はない。まるで仔羊のような相手を、仕方がなさそうな愛おしい目でくすりと笑ってみせたと思うと。「おいで、」と囁きながら、腕枕にしていた腕で彼女のしなやかな体を転がし。──そうして、およそ一般的な男女の閨事のそれのように、ギデオンが上、ヴィヴィアンが下……そんな体勢になるかに見えたが。その太い両腕でギデオンがまず導いたのは、ヴィヴィアンが上、ギデオンが下──この初心な恋人に主導権を取らせる構図だ。しかしそれでいて、まずはリードが必要だろうと。見下ろしてくる相手の瞳に、わざと少し気取ったような表情を映しながら、「なあ、それならゲームをしないか?」などと軽い声で尋ねてみせて。)

相手の身体に指文字で名詞を書いて、それを当て合うだけの遊びだ。
ルールはふたつ──一度書くのに使った場所は、それきりもう使わないこと。
それから、指文字を当てられた方は、当てた方の言うとおりにすること。
当然その内容は、その場ですぐに叶えられるものだけだ……どうだ、乗ってみないか?





910: ギデオン・ノース [×]
2025-07-07 04:35:35




っくく、ああ、そうか──何でも、だな……?

(彼女を狼狽えさせたのは他でもない己だろうに、それでもこちらに縋るように擦りつけられる小さな頭、またそのぽかぽかと温かなこと。これを世界でただひとり享受できる男ときたら、先ほどまでの顔から一転、今や目尻に皴を寄せ、その上躯を小刻みに震わせてしまう始末である。
しかし今宵のちがうのは、いつもならそこで二、三の言葉を交わしてあとは満足するはずが、そうはならなかったところだ。相手に注ぐ薄青い目に隠しもしない熱を宿せば、「……ヴィヴィアン、」と名を呼びながら、そのすべらかな片頬を掌で優しく包む。彼女がどう応じたにせよ、ナイトランプの薄明りに照らされたヒーラー娘の面差しには、こちらもやはり隠しきれない緊張の色が窺えよう。いつもはごく紳士に振る舞う──ふりに興じる──歳上の恋人が、いよいよ今夜に限っては、ならば先へ進もうとその手を取ってしまうのだから。
とはいえこちらも退く気はない。まるで仔羊のような相手を、仕方がなさそうな愛おしい目でくすりと笑ってみせたと思うと。「おいで、」と囁きながら、腕枕にしていた腕で彼女のしなやかな体を転がし。──そうして、およそ一般的な男女の閨事のそれのように、ギデオンが上、ヴィヴィアンが下……そんな体勢になるかに見えたが。その太い両腕でギデオンがまず導いたのは、ヴィヴィアンが上、ギデオンが下──この初心な恋人に主導権を取らせる構図だ。しかしそれでいて、まずはリードが必要だろうと。見下ろしてくる相手の瞳に、わざと少し気取ったような表情を映しながら、「なあ、それならゲームをしないか?」などと軽い声で尋ねてみせて。)

相手の身体に指文字で名詞を書いて、それを当て合うだけの遊びだ。
ルールはふたつ──一度書くのに使った場所は、それきりもう使わないこと。
それから、指文字を当てられた方は、当てた方の言うとおりに……逆に当てられなかった方は、書いた方の言うとおりにすること。
当然その内容は、その場ですぐに叶えられるものだけだ……どうだ、乗ってみないか?





911: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2025-07-08 18:01:21





 ( 頬に添えられる大きな掌、呼び掛けと共に向けられる真っ直ぐな熱。──大丈夫、この人になら、触られても怖くない。歳上であるギデオンがビビの緊張を、ともすれば内心の葛藤をも見通していた一方で。経験の浅い娘は、そんな相手を信頼して、愛しているからこそ、相手に喜ばれたいという想いで縮こまっていたものだから。優しい呼び声におずおずと寄ろうとしたところを、ぐんと腕枕を持ち上げられると、いとも簡単にころんと軽く転がされてしまって。 )

──ひゃっ……!?

 ( そうして、不安定な体勢に思わず白い太腿に力を込め、相手の腹筋にしがみつくも。ギデオンの上に自分が跨る体勢に気がつくと、気まずそうな表情でギデオンを見下ろしながら、気になる荷重を膝立ちの要領でもじもじと逃がす乙女心には気づかれたかどうか。少なくとも、ギデオンの提案に──そんなことでいいの? といった表情で、思わず目を丸くしていたあたり、その手の遊び方に縁遠いことは知れただろう。実際に、「……ギデオンさんが、よろしいなら」と、また優しく紳士な相手が、不慣れな自分に遠慮しているのではという疑いを隠さない表情で頷きながらも。ビビの返答に満足気に頷くギデオンに、どうやらそうでもないらしいと、不思議そうな表情で受け入れれば。有利だからと譲ってもらった先攻に──……名詞、めいし、と。お題を探して見渡すことで、無意識のうちに身体の強ばりが些かほぐれ、いつの間にか上手く呼吸が出来るようになっているのだから敵わない。そうして、数秒の沈黙の末、窓の外になにか見つけたように瞬きすると「えっと、じゃあ……お手を」と大好きな手を取り綴ったのは、今まさに窓辺に八重咲きの花弁をたっぷりと広げて咲き誇っている可愛らしい花の名前。白い指先で最後のaを書き終わり、あげた視界に映った半裸の相手に、自分もまた薄いネグリジェという格好をして、ちぐはぐなように思える遊びに戯れるギャップが恥ずかしくてはにかむと、照れ隠しにその手をキュッと握りながら、細い小首を小さくかしげて。 )

さあ……なんて、書いたでしょう?




912: ギデオン・ノース [×]
2025-07-09 09:11:58




参ったな。
一問目から難問な上に……こいつは随分な反則技だ。

(しどけない姿の相手が幾重も綻ばす、あどけない愛らしさ──その破壊力たるや。口元を緩めながら思わ唸り声を上げると、繋がれた掌をぎゅむぎゅむと握り返して、この温かなハニートラップに抗議する振りに興じてみせる。しかし相手が解こうとすれば、その手を軽くこちらに引いて、離すことなど許さずに。「何だったかな、」と、寝室の天井を白々しく見上げては、ああでもない、こうでもないと、澄ました顔で思案してみせ。)

サルビアじゃ字数が合わない……ヴァニラでもなかったはずだろ……?

(──本当はその答えに辿り着いていることなんて、こちらもちらりと窓辺に目をやる、その横顔の穏やかさですっかり筒抜けに違いない。たしかそこにあるのは、退院後の静養期間に暇を持て余したヴィヴィアンが、「聖バジリオでの入院中に持ってきてくれた花だから」と、たまの散歩をねだった時に花屋で買っていたものだ。ギデオン自身に草花を愛でる感性はないにせよ、彼女と交わした些細な言葉を忘れてしまうわけもなく。繋いだ手と手をもう一度引き、彼女の真っ白な手の甲に笑み交じりの唇を寄せ、「──……ペチュニア。そうだ、それだろう?」と、正解を吹く込めば。その顔を正面へ、彼女の前に戻した時には、窓から入る夏の夜風を受けながら、もう片方の掌でその小さな頬を優しく撫でて言い聞かせ。)

それじゃあ、さっそく権限行使だ──もっとこっちに、潜り込むくらいの気持ちで寄ってくれ。
そんな風に離れられてちゃ、肌寒くって敵わない。





913: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2025-07-10 11:26:33




……え、

 ( 大好きな恋人がくれる甘やかな触れ合いに、えへえへと嬉しそうに頬を染め、「反則……イヤ?」だとか、「うん、そう、あたり……!」だとか、添えられた手に控えめに頬ずりしながら、たっぷりと甘えていた娘の顔色が、しかし、ギデオンの要求を耳にした途端、心底困ったように曇り出す。それまでは緊張していながらもキラキラと、純粋な愛情に瞬いていたエメラルドが泳ぎだし、リップクリームだけを塗った桃色の唇からはうにゃうにゃと言葉にならない声が漏れる。その表情からは一片の恐怖も見当たらない代わりに。一体何が問題で、何に困るかって。
 ──ギデオンさんに、重いって思われたくない……!! と。ただそれだけが何より重大な問題なのだ。ゆるゆると浮かんだ臀部を上げて下げて、覚悟を決めかねたようにギデオンを見下ろすと。う~っと幼獣のような唸り声を上げ、紅潮した頬をぷいと逸らして。 )

私もギデオンさんとくっつきたい、けど……
私、身長があるでしょう……他の女の子より、重い、と思う、から……





914: ギデオン・ノース [×]
2025-07-12 00:12:35




(いやはやまったく、その仕草のひとつひとつでこちらをきょとんとさせた挙句に、何を言いだすかと思えばこれだ。年頃の娘にとっては文字通り重大だろうが、鍛えた男にしてみれば、それこそ羽根より軽い話。故に苦笑交じりの声で、「気にする必要はないだろうに」と喉を鳴らしてみせるものの。その程度の台詞では、この可愛い恋人の顔が晴れないのだから仕方ない。)

……なんだ。
試しもせずに諦められてしまうほど、俺はヤワななりに見えるか?

(片肘を突く格好で腰から上を斜めに起こし、如何にもこれ見よがしにもう片方の腕を広げて。相手が寄越したその双眸に惜しげもなく披露するのは、布きれ一枚纏わないありのままの己の躰だ。──己が肉体を資本とする冒険者である以上、毎日のように鍛えてメンテナンスしているそれは、歳の割に肌艶がよく、リラックス中の今でさえ程良く隆々と張りつめたもの。多少の自惚れを差し引いたとて、十六も下のヴィヴィアン相手に決して見劣りしないつもり……なのだが。はたしてそれでは不足だったか、なんて弱気な論法は、しかし実際はったりで。その目元を優しく和らげ、伸ばした片手を相手のそれに重ねると、優しい声で説得し。)

お前のその長身は……そのまっすぐな長い脚は、市民の元にいち早く駆けつけるためにあるんだろう。
俺はそれごと、お前のまるごと全部が好きなんだ。
──だから、おいで。





最初 [*]前頁 50レス ▲上へ

名前: 下げ

トリップ: ※任意 半角英数8-16文字
※画像を共有する場合は、外部の画像アップローダなどをご利用ください

規約 マナー
※トリップに特定文字列を入力することで、自分だけのIDが表示されます

【お勧め】
初心者さん向けトピック



[0]セイチャットTOP
[1]1対1のなりきりチャット
[9]最新の状態に更新
お問い合わせフォーム
(C) Mikle