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Petunia 〆/410


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自分のトピックを作る
391: ギデオン・ノース [×]
2023-03-14 19:56:20




(/ビビの誕生日、名前の呼び方に関するビビの心境変化について、かしこまりました! 完全な余談ですが、マフラーでご機嫌なビビがあまりに破壊力高すぎて……心底癒されまくっております……
一点、ごく些細な修正の共有を。ビビのカイロについてなのですが、赤いのは小花の刺繍部分であるのを記憶違いしてしまっておりました。また同時に、中期クエストに発つギデオンの無自覚マーキング説に大爆笑させていただきました。なので、ギデオンが例のマフラーを選んだ理由も、是非そちらの無意識によるものということにさせてください。こちら本当にささやかな変更ですので、お返事には及びません。
常日頃より温かくお気遣いいただき、本当にありがとうございます。また何かあればお気軽にお声がけくださいませ……!/蹴り可)



ああ、そっちもお疲れさん。

(耳慣れた歓声に呼ばれ、ギデオンもぴくっと振り向き。駆け寄ってくる相手を見留めると、春用のそれに衣替えした長い脚衣を捌いて、こちらからも歩み寄る。そうして応対する表情や言いぐさは、天真爛漫な彼女に比べれば、一見事務的に、淡々として見えるだろう。しかし、熟練戦士と若手ヒーラー、年代も職種も大きく異なるはずの彼らは、会話の呼吸がすぐさま自然に溶け合っているし、顔色を見ればいくつかの確認も省けたらしい。そんな熟した親密さを眺め、密かに打ちひしがれる青年たちもいれば、遠くでにまにましながら顔を寄せ合う若い女性陣も多々いる。しかし、戦闘中は視野が広いはずのギデオンも、そんな周囲にはさっぱり気づかぬままでいて。「生憎、手持無沙汰でな」と、笑顔の相手とは反対に、小さなため息を落としてみせる。もっとも、他人の分の仕事も片付けてきた後であるから、生憎というのは冗談だ。故に、薄青い瞳の奥に戯けの色をちらつかせたまま、ごく緩く首を傾げ。いつぞやと似た言い回しを用いて、この場で作業して長い彼女に命令を仰ぎ。)

小難しい魔法の要る作業はできないが……適当な仕事をくれ。“指示されたことはする”。





392: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-15 21:46:42




……あら。"言いましたね?"

 ( 二人が初めて共闘することとなった、かの魔獣討伐依頼。今まさに当時と同じ季節がまた始まらんとしている。明らかに戯れの色をのぞかせたギデオンの発言に、ビビの表情にもまた楽しそうな、可笑しそうな微笑みが宿り──それでは!と、相変わらずテキパキと飛ぶ、情け容赦のない指示の甲斐あって、今年の新人歓迎会は無事定刻通りに開催されたのだった。 )

 ( この春の大宴会は例年、一部野心溢れるマメな連中も中にはいるものの、大多数の冒険者たちにとっては、体良く酒の飲める大宴会である。ただでさえ力自慢の大男が集まっている上、箍の外れた彼らがご馳走を平らげ、酒を飲む勢いと言えば牛馬の如し。マーゴ親子が食堂の威信と今後の宣伝を兼ね、次々と繰り出す皿の数々は、自分の分を皿にとり、次にテーブルを見る頃には同じ料理は二度とない程である。当然酒も各種樽単位で容易される有様で、とにかく量を確保するためだろうか。ビビが酒に詳しくないということもあるだろうが、ここで初めて見る酒に出会うことも少なくない。ビビがギルドに所属する数年前、その年の歓迎会では、名はなんだったか……東洋のとんでもなく酒精の強いそれが混ざりこみ、異例の速さで会がお開きになったという噂も聞いたことがあるが、果たして真偽は定かでは無い。あちこちで調子にのった者が噴出しては、物凄い勢いで制圧のプロ達に鎮圧される、なんてことを繰り返しながら、宴もたけなわ。ビビはと言えば、女冒険者の固まる辺りで、先程カトリーヌに注がれた酒に凝っていた。それは花のような、果実のような、華やかな香りが心地よく、味も甘すぎず辛すぎず、すっきりと口当たりの良いそれで。あまり酒に強くないビビもすいすい飲むことができ、普段尊敬して止まない彼女たちに、飲む量だけでもついていけるのが嬉しくて仕方がなかったのだ。比較的グラスを割らない女性陣達に廻される華奢なグラスを握りしめ、真っ赤な顔をして、にこにこと頭を揺らすビビの焦点は、明らかにぼんやりと何処にもあっていなかった。最早何を言っているかよく分からないが、賑やかに上がる大好きな人達の歓声と、美味しい食事、お酒も美味しくて──楽しいなあ、嬉しいなあと、小さなしゃっくりに肩を揺らしながら、次々グラスを煽る今のヴィヴィアンには、酔っ払いにありがちな無根拠な無敵感が漂っていて。 )

──ん、く……っ、……っ……?




393: ギデオン・ノース [×]
2023-03-16 00:46:23


(※背後は津軽弁ノンネイティブです、不正確な点はどうかお見逃しくださいませ!)



(『聖ゲオルクに──乾杯!』『乾杯!!』と、お決まりの音頭を口火に、いよいよ始まった歓迎会。主役である新人たちをもてなそうという和気藹々とした雰囲気は、しかしほとんどすぐに喧騒で塗り潰された。何せ、酒精の回りやすい野郎どもに限って、初っ端から勢い任せにガンガン杯を干していくのだ。そうすることで気遅れがちな新人たちが飲みやすい雰囲気を作る……というの意図もあろうが、自分らが酔いどれたいのが九分九厘だろう。そうして開宴から1時間も経つ頃には、やれもっと肉を寄越せだの、やれ樽ごと持って来いだの、野太い声での言い合いへし合いが、ホールじゅうにわんわんこだますようになり。これが2時間目に差し掛かると、上を下への大騒ぎは当たり前。調子の良い奴らは千鳥足で開けた場に繰り出し、決闘に興じはじめる。小突き合い程度ならきりがないので周りもとやかく言わないが、如何にも調子に乗り過ぎていたり、下手に実力の高すぎる者同士であったりすると、皆示し合わせたように、てんでにふん縛りにかかり。
そうして3時間、4時間──と、時間がどんどん進むにつれ、辺りはどんどんカオスな様相を呈していく。熊のように大柄な重戦士たちと単身飲み比べを挑み、ぶっちぎりの優勝を勝ち誇るカトリーヌ。新たな娘を誑し込み、絢爛な美女たちの剣呑極まりない視線をその背に突き刺されているデレク。クエストにおいて高い危機察知力を誇るアリスは、悪酔いした輩がその顔色をうっぷと変える数分前には、さらりとその場を離れるから、彼女の様子を見て席替えする女性陣も後を絶たない。そのひとり、“氷の受付嬢”と呼ばれるだけあって普段恐れられがちなエリザベスは、その鉄壁のガードが酔いで緩んだのを良いことに、結構な数の青年たちに口説かれまくっているようだ。しかし如何せん、本人の応じる言葉は北国訛りが全開で(「わのあんこァなじょしてあんサあったらに知きやんぷりばすらはんですだなァ? たげだばかちゃくちゃねぇはんで、もうえへでまってぇっきゃァ──」)、彼女が何を言っているのかまるでわからない男たちは、皆どうにもこうにも攻めあぐねている様子。そんな有り様をにこにこと──もとい、目を離さずに眺めているのがバルガス。先ほどから同じ槍使いの先輩のホセに「もっと飲めよオラァ!」などとダル絡みされまくっているが、それにほどほどに付き合いつつ、上手くいなしてしまう術まで心得ているらしい。「この青年は間違いなく大成する」と言わんばかりに周囲が大きく目を瞠るが、当の本人ははたして気付いているのかいないのか。その巧みなホセ捌きも、同郷の幼馴染を見守り続けるためだろうか。そのホセは五十路がらみのくせして盛大にはっちゃけており、後輩男子たちにさっそく尊崇されていたジャスパーの顔面に、魔法で蘇らせた煮魚をびちょっとけしかけたため本気でブチギレられていた。彼らの応酬のあおりを受け、ホセの呪いの流れ弾を受けてしまった不憫なジュナイドは、その服がパーン! と千々に弾け飛ぶ。途端、乙女宜しく両腕を交差させて汚い胸元を隠す相棒を見て、すかさず激高したドニーが長椅子の上に立ち上がったはいいが、短足な小男なので大した迫力は出ず、おまけに足元が思い切りふらふらだ。中年どもが揉み合うその後ろでは、レオンツィオが新人の少年を口説こうとしてアランに必死に止められており、そのアランの頭を、おうおう号泣するスヴェトラーナが執拗に撫で繰り回している。マリアは最初のうちに安全な席に避難して、セオドアやアリアといった若手と穏やかに話していたはずだが、今はとっくに、息子のペドロを迎えるべく引き上げてしまっていた。故に、新人へのだる絡みを注意されて不貞腐れた野郎ふぉも(と一部のお姉さまがた)が、ギルドに入って数年目の彼らに目をつけるのは必然のこと。そんな彼らを守るべく、酒の強さを武器に盾役を引き受けていたのが、その頃のギデオンの様子──というわけだ。)

(宴も五時間目に突入したころには、騒ぎまくっていた連中もようやくあちこちで潰れ始め、喧騒がほんの少し落ち着いてきた(マルセルとフェルディナンドは空き樽に逆さに突っ込んだか突っ込まれるかしており、「こいつは東洋由来の犬神家という亜人一族が現れる時の出で立ちだ」と、真面目腐った顔のホセが新人たちに教育していた)。とはいえ、元から体力のある冒険者どもだ、肝臓の強い連中はまだまだ元気ぴんぴんである。そのうち「席替えしようぜ!」と言い始め(かれこれもう七度目だ)、やいやいと移動し始めた様子だ。先ほどセオドアとアリアを逃がしたギデオンは、そのまま気の合う連中と静かに飲んでいたかったのだが、目敏く発見した同僚は、どうもそれがつまらなかったらしい。有無を言わさぬ雰囲気で「おまえはあっち!」と激しく追い立てられ、仕方なく向かった先は──なんと相棒のいるところ。というか、その周りにいる同席者の男女は皆、年代を問わず独身、しかももしかすれば片想い先の相手が同卓にいるような者たちである。先ほどまでそこは華やかな女性冒険者だけの空間だったはずであるが、恋人や夫のいる者は皆、席替えを機に気を利かせていなくなった様子。どうやら暗黙の見合い席、の皮を被った、じれったい一部に対する焚きつけの席であるらしいそこに己まで突っ込まれるのは、つまりそういうことだろう。振り返って同僚を睨むが、良い仕事をしたと言わんばかりのドヤ顔を返されてうんざりする結果に終わり、仕方なく空いた席に──ヴィヴィアンからやや遠い席に落ち着こうとしたものの。一部の青年の恨みがましい目を笑顔でガン無視した女弓使いに、「あんたはこっち!」とこれまた強引に引き立てられ、仕方なく相棒の隣の椅子を引く。自然、当人の様子を確認してみたところ、一年前のあの件で随分深酒を警戒していた筈の彼女が、結構しっかり酔っているらしいことにぎょっとして。……まあ、今宵はそういう席ではあるが、普通に体調面も心配だ。故に、周囲が盛り上がっていてほとんどこちらを見ないのをいいことに、マーゴ食堂のアルバイトに冷や水をひとつ持ってこさせると、それを相棒に差し出して。)

……随分飲んだみたいだな。ほら、こいつも少し呷れ。





394: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-17 00:39:04




──……っ、ギデオンさん!

 ( 人の脳は得られる情報の全てに対して、ただ平等に振舞っている様で、割と重要な情報とそうでない情報を取捨選択している。あちこちで実に面白いことになっている会場の光景など、酒精に侵され何もまともに捉えちゃいなかった視覚が映した、ギデオンの画質の良さたるや。その瞼の薄い皺の一本まで、世界一愛おしく大好きな相手の登場を、元々緩みきっていた表情を更に溶かしてで迎えれば。ギデオンの隣にいることが嬉しくって堪らないといったいつもの表情が、いかに理性的で抑えられた物だったのか思い知らせるかのごとく。熱く潤んだ瞳は、色んな角度からのギデオンを楽しむかのように、ずっと相手を捉えて解放する気配がない。それでもグラスを差し出す相手の要請へ、「はぁい!」とお利口に見えたのはそこまで。両手でそれを受け取ったまでは良かったが、なんたって比喩でもなんでもなく、その双眸はギデオンしか捉えていないのである。元気よく煽った水は大いに的を外れて、赤い唇、尖った顎、白い喉や豊かな胸をこれでもかと濡らしながら、びたびたと勢いよく流れ落ち。…………そして、余程"そこ"しか見てなかったのだろう。隣のテーブルに腰掛けた──後に剣聖と呼ばれる大天才──今は、まだあどけなき少年である今年の新人君から。本来重力の速度に従って溢れ落ちるべき水分が、その豊かな起伏に一瞬とどまった後、たっぷりと深い谷間に吸い込まれていく光景へ、「……すっげぇ」と生唾を飲み込むような音が上がって、漸く隣のギデオンに気付いたらしい少年は、そそくさとその席から逃げるようにして離れていく。その衝撃的な瞬間を見逃した後さえ、濡れたシャツが張り付く胸元はごく普通に扇情的にも関わらず。当の本人と言えば、想像以上に口を潤してくれなかったグラスに首をかしげて。ふに、と不満げにその唇を中指で押し上げている有様で。次にそのグラスを追いやるようにして手放した酔っぱらいは、しゃっくりも止まらぬまま、懲りずに次の花酒へ手を伸ばそうとしていて。 )

…………?……っ、く!




395: ギデオン・ノース [×]
2023-03-17 03:41:31




おま、バッッ……!!

(こちらにふわんと向き直ったヴィヴィアンの微笑みは、砂糖を加えた蜂蜜よろしく、どろどろに甘い蕩けよう。そんな殺人的な代物を、ギデオンはたったひとり、真正面かつ至近距離でぶっ放されてしまったわけで。見事なまでの処理落ちで、びしりと硬直してしまったのが、今宵初めての大きな失敗。次の瞬間、目の前でへにゃへにゃ笑う件の娘が、冗談かと疑うほど衣服をびちゃびちゃに濡らすのを見れば、さすがに焦った声をあげ、グラスを揺らす細い手首を、空に縫い留めるようにして捕まえる。──そこまでは、まだよかったはずだ。
問題は、彼女の現状を確かめようと巡らせた青い視線が、とある一点に滑った瞬間。ミルクのような柔肌の丘、その深い影の部分へ、きらめく水晶が転がり落ちていく様を、追わずにいられなかったこと。掴む手首を思わず離し、「…………」と押し黙るギデオンを、しかし見咎める者がどこにいよう。幸か不幸か、周囲は周囲で楽しく盛り上がっている真っ最中。先ほど不貞腐れた青年たちも、目の前で見せつけられてはたまらないとでも思ったのか、とっくに離席した後である。故に今のふたりは、宴のど真ん中にいながら、ふたりきりに近い状況──というより、たちまちそういう空気に入れる程度に親しいのを、当人たちだけがまるで自覚しておらず。それを生温い目で見抜いた周囲も、すぐさま示し合わせたように放っておいてくれているだけだ。ともかくこのときのギデオンは、眼前の桃源郷に、ともすれば暫くは目を吸われていたかもしれない。だが実際は数秒と経たず、間近に上がった少年の、いっそギデオンより潔い歓声ひとつで、我に返ることができ。しかし反射でそちらを睨み、若い雄を威迫する虎のような目で追い払うや否や。今度は相手から顔を逸らして、ひとり深々とため息をつく。……今宵のここは宴会場。先ほどのようなクソガキもいれば(普段のギデオンは別にここまで乱暴な物言いはしない筈である)、酔いに酔った野獣どもだっている。そんな奴らに、今のヴィヴィアンを見られてはたまらない。そんなのは絶対にごめんだ、これを見ていいのは己だけだ──と、妙な方向に突っ切った思考に、強い独占欲が駄々洩れている自覚がはたしてあるのかどうか。冷めたおしぼりをかき集め、それで相手を拭おうとして、すぐにその犯行に気づき、顔をぐっとしかめてみせて。)

……おい。おい、もう駄目だ、こら。
悪いことは言わないから、今夜はもうこの辺にしておけ。

(と、彼女の背中から腕を回し、その右手を同じ右手で捕まえる。ついでに左手もそれに倣い、ヴィヴィアン自身に椅子の上で身じろぎさせて上手いこと落ち着けば、彼女を斜め背面から抱き込む形の完成だ。──これでいて、往年のギデオンもデレク並みの誑しだったのを、見る者が見れば思い出したかもしれない。しかし平然とした顔の本人としては、こうして両手を後ろから捕まえておけば、悪さをせずに大人しく眠くなるだろうと、ズレた論理によるものでしかなく。己のそれと重ね合わせた彼女の手を操縦し、おしぼりのひとつを掴ませれば。それを緩く引き寄せさせ、「ほら、濡れたところをこいつで拭いとけ」と後ろから雑に促して。)


 

396: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-18 01:11:59




 ( 後ろから伸びた邪魔な手に、いやいやと藻掻いていたヴィヴィアンが、まんまとその腕の中にすっぽりと収まった途端、その変わり身の早いこと。ギデオンの温もりに心底幸せいっぱい微笑んで、その触れ合いが取り上げられぬよう、形だけは「えー?」と不満の声を上げてみせるものの、緩みきった口からは無邪気な笑い声が漏れるだけ。そのままかわい子ぶって、相手の肩へと後頭部を擦り付けた瞬間、不自然に回った視界と、胸元へせり上がった違和感さえスルーせずに、自分の脚で御手洗に向かう等していれば、その後の惨事にギデオンを巻き込むことだけは免れたのだろうが。──ともかく、明らかに二人だけの世界に入り始めたバカップルに、「何アレ酔ってんの?」「知らね、見るな伝染るぞ」という周囲の温かい言葉が届くことは無く。幸か不幸かギデオンの望み通り、砂糖を吐くような光景からは目を逸らす連中が殆どで、ビビのあられもない姿を直視したのはごくごく一部の冒険者に限られたのだった。 )

 ( さて、背後からその手を器用に操って、おしぼりを手に取らせることが出来たくらいだ。その感触だって手に似とるように掴めただろう。これに関してはビビは悪くない……──少なくとも、その判断が出来なくなるくらい泥酔していたことを覗いては、あまり悪くなかったはずだ。何せギデオンが拭けと言ったのだ、濡れたところを。その忠告に素直に従って、シャツのへばりついて気持ちが悪い胸元を拭いもするし、雫の転がり落ちる感触がこそばゆい渓谷を浚いもするだろう。予定調和。そうしてギデオンの腕の中、それなりに真剣な顔でむいむいと拭っていたビビだったが、そうはいっても酔っぱらいの手つきなどたかが知れている。20秒もしないうちに、未だべったりとシャツを張り付かせたまま、飽きたかのようにおしぼりを取り落とすと、小さく欠伸をひとつ。諦めたようにギデオンへ寄りかかり、ゆっくりと瞼を伏せると、そのまま寝に入ろうとするそれはそれは自由な有様で。 )

はぁい、ありがとう、ございます、…………、……




397: ギデオン・ノース [×]
2023-03-18 02:38:51




(犬猫が甘えるように、栗色の柔らかな髪をくしゅくしゅ擦りつけられる感触。それはちょうど半年前、あの舞踏会の夜にも味わったことがあるはずだ。あの時は深刻な状況下だったが──対する今宵は、春真っ盛りの陽気な酒宴。しかも相手はご機嫌な酔っ払いという、平和極まりない状態。その条件で再度向けられた親愛の摩擦は、まさかここまで印象が変わるのかと狼狽えるほど、あまりに浮ついて感じられるものだから、それはそれは落ち着かない。故に、あからさまに気まずそうな顔を横に逸らし、彼女におしぼりを掴ませ次第、手をほどこうとしたのだが。──へにゃへにゃしたヴィヴィアンのどこに、そんな力があったのだろう。彼女の手を操縦すべく、ギデオンが上から指先を差し入れていた、彼女の指同士の隙間の部分。そこををきゅっと狭めることで逆に捕まえられてしまえば、「……おい、」と動揺した声で抗議するも、当然聞き入れられなくて。それからというもの、重なり合ったふたりの手をふわふわ動かされたかと思えば、ヴィヴィアンの堂々たる曲線をなぞるように這わされたり、或いは隙間に近づかされたり──といった、煩悩に対するまさかの攻撃第2弾に。背後のギデオンは完全に顔を伏せきり、今起きている出来事を自覚せぬよう、必死に意識を噛み殺す。因みにそのわずかな数十秒間、顔を伏せた無言のままで、何度か脱出を試みたものの、酔拳でも使っているのかと思うほど酔いどれ娘の防御が固く、結局まったく叶わなかった。そうして、平和で不埒な公開処刑がようやく終わった気配に、疲れ切った顔を上げ。「待て、寝るな」と、自らの体ごとヴィヴィアンを軽く揺り動かす。──今夜に限り、酔いつぶれた冒険者どもはここで寝ていいという許可は、開宴前にも知らされていた。とはいえ、酒の入った男女が万一風紀を乱さぬよう、女性冒険者の寝る場所は二階一帯と決められている。もちろん上に行く階段には、男性冒険者が通ろうとすればたちまち簀巻きの刑に晒す防衛魔法が、ガチガチにかけられている。つまり、ヴィヴィアンがこのまま寝入ったとして、ギデオンがそれを送り届けるということはできないということである。かといって、ここで無防備に眠るのを見逃すのは絶対にごめんだし、さりとてこのままギデオン自身が寝袋代わりになるつもりない。爆睡してしまう前に、彼女には己の脚で、二階に上がってもらわねば。──そういった善意やら心配やら保身やらに囚われていたため。彼女をどうにか起こすべく、腕の中で無理やりこちらに向かせながら、再度揺り動かしたのは……完全なる事故だったわけで。)





398: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-18 11:51:58




 ( 最初の波は、落ちかけているビビに気がついたギデオンが、その逞しい体ごとビビの上半身を揺すった時だった。腹の底がひっくり返るような不快感に眉をひそめるも、歯を食いしばって小さく唸ることでその波を乗り切り、あたたかな胸に落ち着きかけたと言うのに──ぐりん。と、突如回った視界にサッと顔色が青ざめる。──まずい、"それ"だけは駄目だ。絶対に、駄目。せめて、ギデオンさんのいない所で……口内に甘い唾液がぶわりと湧いて、食道の弁が逆流する。もんどり打つ頻度が早まってきた胃袋の感覚に、慌てて重い腰を上げかけるも、酒浸りになった平衡感覚が邪魔をして、追い討ちのように回り始めた視界がこれまた最悪に気持ちが悪い。極めつけに、少し落ち着くまで──そう悪酔いしか引き起こさない視界を遮断したタイミングが最悪だった。分厚い掌が両肩に添えられたかと思うと、僅かに力が込められる。一瞬遅れてその意図に気がついた時には既に手遅れで。ぐわん、と体ごと視界が揺れ、胃酸に焼かれる痛みが喉奥に走る。口元を抑えようとした手は間に合わず、好きな人の目の前どころか、当人の腕の中で、喉奥だけでなく、ビビの尊厳も焼き切れることとなるのだった。 )

……?、!……ギデ……ンさ、……っぷ、ゃめ──…………

 ( ──……最悪だ。あれからどこをどうやって逃げ出したのか、気がつけば喧騒から程遠い、ギルドの医務室にただひとり。簡易ベッドの毛布を頭から被って、部屋の角と薬棚の隙間に蹲る体勢は、傍から見ればグズグズと泣き声をたてながら震える饅頭スタイルで。医務室と言っても医者がいる訳でもなく(寧ろビビが看護する側の人間だ)そこまで本格的に体調が悪い訳でもない。ギデオンが手でも洗いに行ったのか、何かしらの事情で席を外した瞬間に、無我夢中で逃げ出して、よく使う自分のテリトリーにたどり着いただけ。酔っ払いの相手をさせて、その上……あんな、あんな醜態を晒して迷惑をかけ、更に後片付けを押し付けられて帰ってくれば、何処にも当人が見当たらないなんて。何処まで厄介になれば気が済むのだという話だ。酔い潰れている者も多々いたとはいえ、ギルドに関わる面子がほぼ揃った席で醜態を晒したことが大して気にならない程、脳裏に浮かぶのはギデオンのことばかり。やっと最近、本当にちょっぴり、ほんの少しだけ……好きになって貰えたんじゃないかと、思ったのに──そう思うと涙が溢れて、再び子供のような嗚咽が漏れた。 )

──絶対、嫌われちゃった……




399: ギデオン・ノース [×]
2023-03-18 13:40:49




(まずい、と気づいた時には既に遅く。彼女がもどす深酒の代償すべてを、その胸に受け止めきったギデオンは。しかし顔色ひとつ変えず、悲鳴ではなく心配の声を漏らす周囲に手を借り、(なんだか妙になれた様子で)起きた出来事の処理にあたった。だがその途中、青褪めた顔をくしゃくしゃに歪めたヴィヴィアンが、ひとり飛び出してしまったのだ。迷惑を残さぬ程度に後片付けを終えてから、周囲に「悪い」と断りを入れ、ギデオン自身も席を立った。流石にそれを囃し立てる者はなく、皆気がかりそうに見送るのみ。ちなみにその後、一部の連中がてきぱきと手伝う様は、異性の胸をきゅんきゅんときめかせたらしい。卓はそこから再び盛り上がり、甘い発展を遂げたそうだが、これはまた別のお話。
さて、ギデオンがヴィヴィアンを探す道すがら。ギルドの私物置き場を通りがかったため、そこに置いてある予備のシャツにさっぱりと着替えてから、まずは近場にある女性用の手洗い場をあたってみた。しかし出入りする女性冒険者によれば、中にヴィヴィアンはいないという。……どこに行ったのだろう、あんなに具合が悪かったくせして。そもそもあれは、思えば自分が無神経を働いてしまったせいだというのに。と、ふとなんとなく勘めいたものが起こり、その足を医務室に向ける。建国祭の頃にも世話になったその場所は、しかし今は無人のはずだ──悪酔いした連中を介抱するための場所は、ホールの近くに移動している。
はたして扉を開けてみると、どこからかひっく、ひっくとすすり泣く声。そっと奥を窺ってみれば、なんだか部屋の隅の方に、可哀想なほど震えている饅頭がある。僅かにはみ出ている髪が栗色をしているのを見て、まずはほっと胸を撫で下ろし。わざと軽い足音を立てて歩み寄ると、その傍にしゃがみこんでから、頭の辺りを毛布越しに軽く撫でてやる。これまで何だかんだ、何度も彼女にこうしているのだ、だれの手つきかはわかるだろう。そうしてあやすようにしながら、穏やかな声で話しかけ。)

……さっきは気づいてやれなくて、本当に棲まなかった。今は……具合は収まったか。





400: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-20 01:23:26



…………。

 ( その気配に息を殺したビビの隣へしゃがみこむ、そのあたたかな気配の正体なんて。穏やかな声どころか、優しく添えられる手よりも前に、軽やかな足音だけで十分だ。何せ一番見られたくない相手だと言うのに、ビビが弱っている時にいつも隣にいるのはこの人だから。──……でも、こんなところまで探しに来てくれるんだ……。そう我ながらこんな時でさえ、呑気に増長する甘い思考が煩わしくて。許されたくて顔を出す、醜悪な希望を付け上がらせる、優しい触れ合いにも首を竦めると、僅かに覗いていた栗毛も毛布の中へ引っ込めてしまって。調子に乗ってはいけない。どこまでも優しいこの人は、自分の限界さえ把握出来ない子供にも博愛なだけ。そう己に言い聞かせるビビの思考をリズが覗いたならば、一刀両断いつかのように、「謙虚もそこまで来ると嫌味なんですよ」とばっさり切り捨て。ホセやドニー、レオンツィオなどには、聖人君子と成り果てている古馴染みの姿に、大いに首を傾げさせただろう。一向に進まない二人の関係を、ギルドの面子はギデオンばかり責め立てるものの、ビビとてかなり強情で。教会で過ごした一晩の後でさえ……寧ろその経験が、より強くそう思い込ませるのだろうか。どこかまだ相手を目の前にして、都合の良い女でいなければという思いが勝る。清廉潔白で完璧な、絶対に迷惑をかけない強い女。そんなありもしない者を夢想しては、未だ歪む視界に、気を許せば再びひっくり返りそうな胃袋。先程は本当にどうやって逃げ出したのか、一向に力の入る気配がない足腰を気取らせないように、毛布の奥へと引っ込めて。その代わりに、浅くないショックに色濃く濡れた、やけに彼女が強情な時に見せる、気の強そうな双眸だけを光らせると。穏やかな声に首を振り、相変わらず下手くそな嘘を硬質な声音で響かせて。 )

いえ。こちらこそ本当にごめんなさい。シャツは弁償します。
……私は、大分治まったのでギデオンさんは歓迎会を楽しんできてください。




401: ギデオン・ノース [×]
2023-03-20 03:27:47




(身じろぎする気配を感じ、てっきりいつもの安心した顔を出してくれるものと思ったが。どうやら実際のヴィヴィアンは、むしろ警戒するアルマジロよろしく、さっと身を縮こまらせてしまったらしい。その予想外の反応に、はていったい……と目を瞬いていると。今度は毛布の下から、やけに張りつめた声と言葉。それらをすぐに理解できず、薄暗い医務室を一瞬静寂で浸したのちに。「……ん……??」と、大変わかりやすい困惑の唸り声を落として。
これはどうしたというのだろう。この毛布の下に隠れているのは、本当にヴィヴィアンだろうか。いや、今聞こえてきた声も、そもそも最初に撫でた時の感触も、間違いなく彼女なのだが。いつもギデオンにしゃにむに構うヴィヴィアンが、こんな突き放すような物言いをするだろうか。……どうして、何をいったい、固く気を張っているのだろうか。しばし考えあぐねたものの、結局結論を得られないまま。とりあえず、壁にとんと背を預け、彼女の隣に腰を下ろす。立てた片膝に片腕を乗せる、その寛いだ体勢は、すぐにここを離れる気がないことをありありと語っていて。反対の手はなんとなく彼女のそばに下ろすものの、再びむやみに撫でようとはしない。──が。しばし薄闇を眺めていたのち、けれどやっぱりもう一度。彼女の被っている毛布に、手の甲を緩やかに添える。普通に会話を切り出すよりも、そうしてから話しかけるほうが、なんとなく良い気がしたのだ。)

あれはもう、随分長く着古してるやつだ。洗えばまた着られるさ。
……それよりも。俺は、具合の悪い相棒を忘れて楽しめると思われるほど……薄情に振る舞ってきたつもりはないんだが。





402: ギデオン・ノース [×]
2023-03-20 03:48:46




(身じろぎする気配を感じ、てっきりいつもの安心した顔を出してくれるものと思ったが。どうやら実際のヴィヴィアンは、むしろ警戒するアルマジロよろしく、さっと身を縮こまらせてしまったらしい。その予想外の反応に、はていったい……と目を瞬いていると。今度は毛布の下から、やけに張りつめた声と言葉。それらをすぐに理解できず、薄暗い医務室を一瞬静寂で浸したのちに。「……ん……??」と、大変わかりやすい困惑の唸り声を落として。
これはどうしたというのだろう。この毛布の下に隠れているのは、本当にヴィヴィアンだろうか。いや、今聞こえてきた声も、そもそも最初に撫でた時の感触も、間違いなく彼女なのだが。いつもギデオンにしゃにむに構うヴィヴィアンが、こんな突き放すような物言いをするだろうか。……どうして、何をいったい、固く気を張っているのだろうか。しばし考えあぐねたものの、結局結論を得られないまま。とりあえず、壁にとんと背を預け、彼女の隣に腰を下ろす。立てた片膝に片腕を乗せる、その寛いだ体勢は、すぐにここを離れる気がないことをありありと語っていて。反対の手はなんとなく彼女のそばに下ろすものの、再びむやみに撫でようとはしない。──が。しばし薄闇を眺めていたのち、けれどやっぱりもう一度。彼女の被っている毛布に、手の甲を緩やかに添える。普通に会話を切り出すよりも、そうしてから話しかけるほうが、なんとなく良い気がしたのだ。)

あれはもう、随分長く着古してるやつだ。洗えばまた着られるさ。
……それよりも。俺は、こんな状態の相棒を忘れて楽しめると思われるほど……薄情に振る舞ってきたつもりはないんだが。



(/ささやかながら修正しました。また、ビビはギデオンの離席中にいなくなったという点を見落としてしまい、食い違う描写をしておりました。申し訳ありません……!/お返事不要)





403: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-20 15:11:37




 ( 静かな医務室に、何とも言えない間を持って響いた困惑の声。この時のギデオンと、この世の終わりが如く沈みきったヴィヴィアンの温度差といったら、キーフェン砂漠の昼夜のそれより酷いものがあった。徐ろに隣へと腰を下ろし直した相棒に、びく、と些か過剰に反応してしまった己が恥ずかしくて。白い毛布の中、ショックと困惑と羞恥に濡れる相貌とは裏腹に、カサ……と微かな衣擦れだけを響かせて、僅かに傾ぐ饅頭の奇妙な様よ。普段自分から詰め寄るばかりで、こうして相手から距離を詰められると、どうしていいのか分からなくなってしまうのだ。それでも暫く、強情に決め込んでいた強情な沈黙の構えを、思わず解かざるを得なかったのは、再びその温かな手を翳した相手の切り出した言葉が、あまりに聞き捨てならなかったためで。 )

ちが……っ、違い、ます!!
ギデオンさんが薄情だなんてありえません……!

 ( 結局どこまでも気になってしまうのは、己の羞恥心より、うんと価値ある相手の名誉の方で。先程までの強情ぶりはどこへやら。ギデオンの方へと乗り出すように膝立ちになると、被っていた毛布が音を立て床に落ちる。涙や擦った痕の痛々しい目元は、今もたっぷりと涙をたたえているし、ここに逃げ込む前に濯いだ口元は口紅が剥げ、普段の自然な血色も今は青白く失せてしまっている。その上、酒浸しになった平衡感覚では、起こした上半身さえ支えられずに、くらっとギデオンの方向へ倒れ込もうとして。その寸前、何処までも強情に薬棚へと腕をつけば、何処までもみすぼらしい己の成りを、自嘲するようにくしゃりと顔を歪めて。 )

……ごめん、なさい。こんな、幻滅したでしょう……?


( / お世話になっております。各所で温かい反応をいただいているにも関わらず、お返事できておらず申し訳ございません。いつもありがとうございます。描写については、あの状況でギデオン様が席を外すことは無い、という形で認識しておりましたのでお気になさらず。/蹴り可 )




404: ギデオン・ノース [×]
2023-03-21 03:00:44




…………

(慌てて跳ね起きたヴィヴィアンの顔、それが随分酷いことになっているのを見て目を瞠る。見目がどうという話ではない──随分辛い思いをしていたことを、その痛ましい痕が如実に物語っていたせいだ。だというのに、それなのに。すぐに危うくふらついた体を、ヴィヴィアンはしかし己で支え。あまつさえ、聞き捨てならない自虐の台詞を吐き落とすような有り様だから。瞬間、ギデオンの表情が抜け落ち、医務室の時間が静寂に凍りついた。そうして数拍置いた後、ゆっくり立ち上ったのは──しかしなんだか、妙に憮然とした気配。別に、腹の底からの怒りというわけではない、それほど冷え冷えしたものではない。しかし今のギデオンが、迷走するヴィヴィアンを見て腹を立てたのも事実。ゆえに、無言で眉間に険を宿すと、不意にヴィヴィアンのほうに迫り──文字通り、絡めとった。。その腕を取り上げ、背中に大きな掌を添えて、こちらにしなだれかかるように。暗澹たる囚われの蜘蛛の巣から、ギデオンの体温と鼓動をじかに感じられる空間へ。無論、今度はいきなり揺さぶったりしないよう、問答無用のなかに気遣いも忘れない。そうして再び、妙な表情で彼女をすっぽり抱き込み。何気にがっちりと両腕で閉じ込め、何なら長い脚でも退路を塞ぎ、逃げられないようにしてしまってから。真下に見慣れたつむじに、あからさまに不機嫌そうな声を落として。)

どういうつもりか知らないが。──俺が今更、おまえを嫌うわけがないだろう。
何を思いつめている? ……酒で羽目を外すくらい、誰にでもあることだろうが。






405: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-22 21:01:02




──だって、だってぇ…………あんなところ……大好きな人に、見られたく、ないじゃないですか、
ギデオンさんに、嫌われたら……ッ。私、生きていけないもの。

 ( ギデオンの逞しい腕の中、うぅう──と、か細く震える頼りない泣き声が上がる。未だその腕に捉えられる直前、その憮然とした険しい表情を初めて見た際は、内心深く傷ついた癖をして、それを押し殺せているつもりになった、無感動な表情を浮かべていられたというのに。温かな檻に捉えられ、必死にもがいても逃げ出すことも許してもらえぬまま。至近距離でぶつけられた不機嫌な声に、これでもかと溶け込んだ心配を捉えてしまった途端、再び涙が溢れるのを止めることが出来なかった。──ああ、また迷惑をかけちゃう……でも、この人がそうしろって、本当にそう言っただろうか、もう分からない。いまだアルコールも抜けきらぬ、混乱しきった脳は頼りになる物を求めて、相手の分厚い半身に全力で縋り付き、硬い肩に顔を埋めると、冷えきっていた身体がじわじわと温まり出す。そうして肩肘を張っていた力が緩めば、未だ血色悪い唇から漏れ出るのは、我ながら幼稚で耳を塞ぎたくなるような言い訳で。そうして何度もしゃくりあげながら、ひんひんと栗色の頭から全身を震わせ、最後の一言を今にも消え入りそうな囁き声で漏らせば。暫く啜り泣く音をギデオンの肩に吸い込ませてから、彼が介抱に慣れる次第となった存在など知らぬまま、大分遅れて先程相手が落とした言葉に反応して。 )

それに……誰でもって、殿方はそうかも知れませんけど……




406: ギデオン・ノース [×]
2023-03-22 23:32:29




(己の腕の中、ぐしゃぐしゃに崩れはじめたぬくい生きものの咽びを聞いて。仕方なさそうな──だがどこか安心めいた──ため息をついたかと思うと。腕の力を緩めた代わりに、彼女の後頭部にそっと手をやり、彼女の柔らかい栗毛をあやすように撫ではじめ様々な酔っ払いを眺めてきた自分からすれば、ヴィヴィアンの失敗など、こんなに絶望するほどではない、まったく可愛いレベルのそれだ。しかし、酔うと誰しも感情的に取り乱すもの。それがその当時の本人には真剣な問題であるのも、どことなく知っている。ゆえに、ひっくひっくとしゃくりあげるヴィヴィアンが、未だにギデオンに嫌われることを想像してしまって震えようと、それ以上咎めることはなく。代わりにただただ、相手が縋りついている己の胸に深い呼吸を取り込みながら、相手の頭を撫で続け。ほら、こうして胸を貸しててやるから、ここで好きなだけ泣けばいい──と、この態度によって言い聞かせられているだろうか。
そうして、ほんの少し落ち着いたころ。未だ落ち込むヴィヴィアンが、乙女らしい思考回路で尚も言い募るのを聞けば、「ほう?」と愉快気に異論を唱える。「言っておくが、俺はお前よりよっぽど酒癖の悪かった女を知ってるぞ」と。それで相手が顔を上げようものなら、目尻の涙を拭ってやりながら、「おまえの母さんだ」と穏やかに微笑むだろう。──思い返せば、夏の建国祭以来、シェリーについての話は、結局ほとんどしたことがない。最初にギデオンが拒絶した時とは違い、今はもう禁句にしていないつもりだが……それでも思えばどことなく、不自然にならない程度に腫物扱いをしていたのだろう。それはかつて己が秘めていたシェリーへの想いが原因だが、今は不思議と──もう、この話をしても大丈夫だ、という深く静かな確信がある。だから懐かしむように天井を仰ぐと。再び相手を見下し、可笑しそうに目を細めながら。初めて共有する思い出話を、撫で続けながら語りはじめて。)

……俺は14の頃、あの人の弟子になって、身の回りの世話をしたわけだがな。シェリーの酒癖と言ったら、そりゃあもう、とてもお前の比なんかじゃなかったぞ。
酒場で酔っ払った日には、そこらの梁の上によじ登って寝て、夢を見ながら下にゲロを降らせるなんてのが当たり前。せっかく稼いだ難易度Ⅶの報酬を、一晩で全部酒樽に替えたことある。「つまみが欲しい」と言って聞かずに、酒瓶片手に山まで行って、ドラゴン狩りをおっぱじめることも、数えきれないほどあった。それで本当にしとめてくるから、誰も何も言えなくてな。
ああ、それから。そういう風に、なまじ剣の腕だけは絶対落ちないもんだから……本人は酒場で楽しく振り回しただけのつもりが、あわや大惨事になんてことも、珍しくなかったぞ。ロビーの奥の大きな柱、二本くらい木材の色が違うところがあるだろ。あれはシェリーがやらかした痕だ。本人は覚えてなかったが……人には絶対怪我をさせないくせして、ものは器用に壊すんだ。
こういう話はまだあるが、多分、何百枚という始末書を書いたおまえの父さんのほうが詳しい。そのくらいすごい女だったぞ、シェリーは。だからおまえのこれなんて、随分行儀が良い方だ。





407: びびはいご [×]
2023-03-24 01:03:20




──母が?

 ( 不意にギデオンから上がった、場違いに明るく、楽しげな声。思わずつられるようにして顔をあげれば──どきん、と。視界いっぱいに映った、優しい微笑みに見惚れて、かさついた指先の感触に、恥じらいの表情を浮かべるのが一瞬遅れた。その間に母シェリーとの思い出を語り出したギデオンに、零れ落ちんばかりに見張っていた瞳を、おっとりと伏せると、少し恥ずかしそうに俯いて、相手にされるがまま。優しく撫でられている頭を、相手の上半身に委ねる。ビビもまた夏の建国祭以来、相手が触れないものを態々掘り返しこそしないものの、誠実に向き合ってくれる相棒を心の底から信頼しているし、相手の口から出る母の話題も、今や心穏やかに聞くことが出来る。それを証明するかのように身体の力をすっかり抜いて、相手の肩口にあたたかく擦り寄ることで、その信頼を伝えることはできているのだろうか。そうして、大好きな唇から紡がれる偉業の数々に、先程まで泣き濡れていた女はどこへやら。居心地のよい胸の中、時に吹き出し、時にクスクスと口元を抑えながら、再び睡魔に溶かされ始めた瞳で、ギデオンをうっとりと見上げて──気づいてしまった。ずっと、この人だけを見つめて来たのだ。その双眸に浮かぶ、少年のような輝きに、温かな含みのある声の響き甘さに、気づかないはずもなかった。……不思議とショックも、不安も何も湧き上がない。ただ未だ楽しそうに昔話を続けている、在りし日の少年の頬へと手を添えると、慈しむような微笑みをギデオンへ向け )

ギデオンさんは──母が、好きだったんですね。


( / 大変お世話になっております。歓迎会シーン誠にありがとうございました。ギデオン様の糖度についてですが、全く問題ないどころか、毎度予想を飛び越えてくる愛の深さに悶えっぱなしでございます!
以前お話していた、ギデオン様にシェリーへの気持ちを知ってしまうという展開ですが、あまりに楽しげに愛しげにギデオン様が話すものですから、彼女が気づかないわけが無いなと思いまして、以上の形にさせて頂きました。
もし背後様の中で、ビビがギデオン様の初恋を知ることで怒る事件を、何か考えているということであれば、このまま酔っ払いには記憶を飛ばして貰いますので、お申し付けください/蹴り可 )




408: ギデオン・ノース [×]
2023-03-24 13:07:14




………………。


……手の、届かないひとだったよ。

(相手が頬に手を添えてくる仕草には、最早動じる様子さえ見せない。なんだかんだこの一年で、そういった触れ合いにすっかり馴染んでいたからだ。──だが、その後優しく続けられた言葉には。……嫌だとか、警戒だとかではなく、優しく虚を突かれた……というべき静止をあらわにして。相手の慈愛のまなざしに見守られるまま、彼女を撫でていた手をそこに留めたまま。無自覚に甦っていた少年の瞳は、かすかに、ほんのかすかに揺れている。決して気まずくはない長い長い沈黙を下ろしたのち、ようやくぽつりと落とした答えは、ごく迂遠ながら、決して偽らぬ正直なもの。だがその台詞は、ヴィヴィアンの手が己の頬に、己の手はヴィヴィアンの頭に触れながら発しているのを、まだ自覚していないだろう。)

……いつも、めちゃくちゃなことをやるくせして……太陽みたいに明るく笑うもんだから。あのひとを好きにならない人間はいなかった。
……俺も、おまえの父さんも。あのひとの世話を焼くうちに、絆されたようなクチだ。

(そうして再び、習慣めいた手つきで相手の慰撫を再開しつつ。視線は虚空を静穏にさ迷いながら、口にする言葉をゆっくりと手探りしていく。隠し立てをするつもりはないことのあらわれか、ついには自然と、彼女の緑色の目と視線を溶け合わせて。──相手に請われたわけでもないが、何故か自然と、シェリーについてを素直に語るときだと感じている。ヴィヴィアンの記憶にない、たったひとりの母親。己の記憶に今も残る、たったひとりの……初恋の恩師。思えば、彼女が大切な存在であることが、ヴィヴィアンと自分は共通している。いっとき、たったいっときだけれども、シェリーのそばで生きた記憶を持つ者として。相手の母がどれだけ大切に愛された人だったか、分かち合いたかったのだろう。)



(/いつもお世話になっております! そう伺えてほっとしました……
シェリーへの想いに気づくことに関して、今回いただいた形で全く問題ございません。その件をどう処理するか全く考えていなかったのですが、今回のこれがいちばん幸せかつ心の通じ合う形に違いなく、寧ろ感謝し倒しております。それ以外にも、シリアスな「黒い館編」に入る前に、例えば事件だとかシェリーだとか魔力切れだとか、何かしらの大事な話をして絆を深めておきたいな……と思っていた次第ですので、これ以上ない最高のタイミングでの挿入です。ありがとうございます。

こちらからも一転確認を。舞台が「黒い館」に物理的に移る経緯について、主様の中で何かお考えはありますでしょうか? こちらは全く考えておらず、ライブ感でアドリブして楽しむもよし……整合性をしっかり考えてやるのもよし、というくらいでして。後者の場合案出しの必要があればしっかり捻りだしますので、主様のご意向もお聞かせくだされば幸いです。)






409: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-26 01:10:40




──はい、

 ( 後頭部に沿わされた硬い温もり。それがピタリと固まって──余計なことを口走っただろうか、その心配は、相手の顔を見上げることですぐに霧散した。ビビの言葉をゆっくりと消化しているらしき男の腕の中、そっと相手に向き直ると、もう片方の手も相手の頬を包むように沿わせて。自分の体温を分け与えるかのように、その少し油分の抜けた滑らかな肌の上、ゆっくりと親指を滑らせる。ぽつり、と。空気を震わせた第一声のそら寒さに、かけられる言葉を持ち合わせていないことがもどかしくて。既に触れていた両手を無意識に、少しでも相手との距離を埋めるかのように、更にその頬へと吸い付かせ。膝立ちだった腰を相手の膝に下ろすと、否応なく高さの揃った視線が絡み合う。常に誰より冷静で、ずっと自分の感情を押し込ている静かなアイスブルー。それをこんな熱烈に染め上げているのが、自分の母親なのだと思うと、少しの嫉妬が湧かないでもないが、それ以上にどうしようもない誇らしさが満面に滲み出てしまう。それは、幼かった娘への気遣いでもあったのか、滅多に母のことを話したがらない父がたまに零した彼女の話。勿論、娘の教育に適さない不健全な箇所は、綺麗さっぱり割愛されていた代物だが、その中でシェリー以外に唯一登場した──彼女が可愛がって止まなかった愛弟子を。思い出話をする時でさえ、どこか自虐的な言い回しの抜けない男を目の前にして。思わず──アンタはアタシにゃ勿体ほど出来がいい、自慢の弟子だわねぇ、と。いつか酔っ払った彼女がそうしたように、(尤も当のシェリーは直後、その状態でリバースした前科があるわけだが)膝立ちになって正面からゆっくりと腕を回し、その背中を擦りながらも痛いほど強く抱きすくめ、はっきり彼女の"自慢"だと口にしたのは単なる偶然に過ぎないはずだ。 )

──……だから。……そんな母が、"自慢する貴方"だから。きっと……こんなに素敵なんですね。


( / 暖かく寛大なお言葉ありがとうございます。あとから読み返して、諸々強引かつ雑だったかなと反省しておりましたので、そう仰っていただけて安心しております……

「黒い舘」に映る経緯としては、こちらもざっくりとアドリブで楽しむイメージでおりました。導入は歓迎会が終わった翌日等に2人でクエストに出かけ、その際に雨宿りやら、怪しい影を追ってやら。何がしかの理由で館に迷い込む感じでしょうか。
かなり漠然としたイメージで申し訳ございません。設定置き場の方の更新もありがとうございます。現状としてはあちら以上の構想はございませんが、何か思いつき次第提案させていただきます。 )




410: ギデオン・ノース [×]
2023-03-26 04:30:34




…………、

(あのひとと同じ瞳が、こちらを見つめて誇らしげに微笑んだ。それだけで既に揺らぐものがあり、ギデオンは思わず言葉を失ったというのに。その隙を突くかの如く、不意にヴィヴィアンがこちらに腕を回しかけてきた、その感触、その強さ、その温もり。そしてギデオンの耳朶を打つ──シェリーにとって、己は自慢の存在なのだと愛おしむ声。もたらされたその数々は、あまりにも奇跡と祝福に満ちていて。淡い月光の差し込むなか、ヴィヴィアンに抱かれるまま一瞬呆然としたギデオンは。大きく瞠っていた青い瞳を、やがてくしゃりと歪めてしまった。
──ヴィヴィアンは、きっと知らないはずだ。13年前、あの事件を引き起こしてしまって以来。事件そのものに対する激しい呵責の念に押し潰されそうになりながら……そして、シェリーの遺したあの言葉にそぐわぬ己を思い、かえって深く苦しみながら。それでももう一度、あのときシェリーが言ったとおりの自分を少しでも取り戻そうと。ギデオンには、あの抱擁の記憶を頼りに、必死に己を奮い立たせてきた過去がある。あの暗く苦しい日々の中、何度も何度も、かつてシェリーに与えられた温もりを密かに握りしめてきたのだ。その記憶がすっかり擦り切れるまで、古びてぼやけてしまうまで。──だから、ちょうど1年前のあのとき。獰猛なワーウルフの群れから、シルクタウン市民たちを見事救ったヴィヴィアンを、帰りの馬車で労ったあのとき。この誇らしい熱が支えになればいい、シェリーが自分に与えてくれたように、自分も与えられればいい……そう祈ったギデオンは。かつてあんなにも大事に握り込んでいた熱を、しかし自ら、思いがけず自然に手放した。受け継いだものを受け継がせる、その流れに己が汲み込まれたことで、ひとつの役目を果たせたような気がしたからだ。それで己の中のシェリーの記憶が遠くなっても、それで良いのだとさえ思えた。その頃にはギデオンもようやく、事件の重みから自力で立ち上がれるようになっていたし。何よりとうに、壮年も過ぎようという枯れた大人になっていたから。──だが、ああ、どうして。もはや四半世紀もの月日が過ぎ去った今になって、どうして。もう二度と得られぬはずのシェリーの熱を、再び力強く与えられる日が来るなどと、どうして想像できるだろう。自分はまだ与えられているのだと……今も尚、シェリーに見守られているのだと、どうして思わずにいられるだろう。
様々な感情に眉根を寄せた目を閉じて、ヴィヴィアンのほうに頭を寄せ。何も答えられぬまま──与えられたものがあまりに大きすぎて、何をどう言えば良いのかわからないのだと伝えるべく──ただただ無言で、彼女の温もりに身を委ねる。……だが、そうしたからこそ、不意に新しく気づくものがあった。自分を抱きしめている相手は、呼吸をしている。脈もとくとくと打っている。──記憶、ではない。今ここにいる存在だ。同じ時間、同じ空間を生きている人間だ。……ならば、ならばそうだ。今の己を抱きしめているのは、娘の体を借りて甦ったシェリーなどでは決してない。もちろん、ヴィヴィアンの瞳も顔立ちも、声や仕草や体温だって、彼女に生き写しだけれども。それはあのひとの血を継いでいるからであって、シェリーの代わりをしているのではない。ギデオンを抱きしめているのは、……今ここにいる、ヴィヴィアンだ。今の己を救っているのは、ヴィヴィアンの愛情だ。とうに死に別れたシェリーをもう一度強く感じられたのも、娘の彼女が、自分を過去に繋ぎ直してくれたからだ。──時を超えたこの幸福は、ヴィヴィアンがくれたものだ。ようやくそう悟ったギデオンは、ふ、と静かに顔をあげると。緩く身をほどき、相手と視線を合わせ。ひどく穏やかに微笑みながら、彼女の頬に武骨な掌を添え返して。)

………………。
……つくづく感じることだが。
俺はたぶん、おまえには一生敵わないだろうな。



(/諸々かしこまりました! 漠然としているのはこちらも同じですので、細部がどう転ぶかわからない感触を一緒にわくわく冒険できればと思っております。設定置き場のあちらも、リマインド程度の者ですので、これまで通りの雑談などもお気兼ねなく。これにて背後はいったん下がりますが、何かあればまたお声がけくださいませ。)





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