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白む空に燻る紫煙 ---〆/5371


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自分のトピックを作る
5321: アルバート・エバンズ [×]
2026-01-03 17:18:12

 



( 病院を出て直ぐにタクシーに飛び乗り、指定されたバーの近くの大通りで車を降りる。裏道に入ると、嫌な記憶の蘇るバーには、“Closed”と書かれた看板が斜めになって掛かっていた。中に入ると、暗い店内には2人の姿。バーテンダーかのようにカウンターでカクテルを作るクラークの姿を認識し直ぐに歩みを進めようとするのだが、それよりも早く相手が自分の片腕を掴んだ事で視線が落ちる。矢継ぎ早に訴えるように相手が紡いだ言葉に首を振ると「_____お前は戻れ、此れは俺とあいつの間で取り交わした契約だ。」とだけ告げて、扉の方へと相手を押しやる。其のやり取りを見ていたクラークは、マドラーで中身をゆったりと掻き混ぜながら『…ミラーが此の店から出た瞬間に、貴方が全ての罪を被る事になりますよ。犯罪組織に情報を売りながら、無関係な情報セキュリティ課の署員に罪を擦り付けた。ログを操作する事なんて造作も無い。何年刑務所に入る事になりますかね、』と告げて。身動きを取れなくなった2人を片目に『今日は、カクテルに“あの薬”を混ぜてみたんです。飲んでから効果が出る迄、注射よりは時間が掛かるでしょうね。…時間が経つごとに恐怖に追い詰められる。』と告げて、相手にグラスを差し出して。 )





 

5322: ベル・ミラー [×]
2026-01-03 19:16:14





( たった一言で身動きが取れなくなる程に、彼の言葉は強く或る意味呪いだ。そして一瞬で終わらせず敢えて苦しみが長引く方法を選ぶ彼は紛れも無い悪魔だろう。最も恐れるのは増幅された苦しみの渦中に身を置く事では無く、そんな己を見た相手が自分自身を責め再び過去の痛みを思い出してしまう事だ。受け取らない選択など出来る筈もな無く、冷たくなった指先に力を入れ彼からグラスを受け取る。赤紫がグラスの中で揺れ、カシスの香りが仄かに鼻腔を擽るそれは“何も混ぜられてなければ”とても美味しいカクテルだっただろう。___これを飲んで、このBARを出て1人になる事も、何処か別の部屋に閉じ篭る事も出来ないのだ。「……、」せめてもの抵抗とばかりにクラークを再度睨み付け、2人から少し離れた壁際にある椅子に腰掛けた後、深い息を吐き出してから中身を煽る。薬自体は無味無臭なのだろう、特別変な味や香りを感じる事無く赤紫はあっという間に胃に落ちた。___それからものの数分、ドクン、と心臓が大きく脈打ち言い表す事の出来ない嫌な感覚が全身に広がるのだが、彼の言う通り注射じゃない為じわじわと恐怖が膨れ上がるのだろう、まだパニック発作を起こす程では無いが時間の問題なのは自分自身が一番良くわかった。荒い息が漏れ、掌に爪が食い込む程握り締めながら僅かに俯く。落ち着け、大丈夫だ、と言い聞かせるのだが、やがて小さな身体の震えから徐々に恐怖に追い詰められて行き )






5323: アルバート・エバンズ [×]
2026-01-03 23:42:12

 



( 飲むなと叫びたかったのに、相手が其の赤紫のカクテルを呷る姿をただ見ている事しか出来なかった。自分の事は良いから彼女を助けてくれと赦しを乞えば良かったのか、けれど謂れの無い罪を背負って一生其のレッテルと共に生きて行く事はそう簡単に選べなかったのだ。自分の保身の為と言われればその通りだ。直ぐ近くに居るのに何も出来ないという無力感は、“あの事件”を思い起こさせた。また、何も出来ずに自分だけが傷付かない道を選ぶのか、と。『…警部補、其処から動かないで下さいね。“貴方が”ミラーに此の決断をさせたんです。貴方を救おうとしなければ、俺と取り引きなんてしなかったでしょうね。…今回も、其処で見ていてください。』ミラーがカクテルを飲み干したのを見届けると、ややしてクラークはそう言って笑みを浮かべた。彼女が苦しむのは全てお前の所為だと刷り込むように紡がれる言葉。少し離れた場所で立ち尽くしたままでいると、彼は相手へとゆっくり近付いた。そうして、まるで見せ付けるかのように相手の座る椅子の傍らに膝を突き、相手を見上げながらそっと手を握る。『_____ミラー、大丈夫だよ。俺は此処に居る。…こんなに震えて、可哀想に。本当はこんな苦しみとは無縁の筈だったのにね、』呼吸を上擦らせている相手に優しく声を掛けながら、寄り添うように背中を摩って。 )





 

5324: ベル・ミラー [×]
2026-01-04 03:22:22





( ___喉を通った薬は体内から静かに、けれど確実に過去の恐怖を増大させ連れて来た。身体がまるで痙攣を起こしているかの様に震え、それを自分の意思で止める事が出来ないのもまた恐ろしい。クラークが傍に来た時には既に残り僅かだった理性は恐ろしい記憶に飲み込まれた後で、手を握られ背中を擦られた事で勢い良く顔を上げると、もうその緑の瞳には彼の姿しか映ってはいなく。あっという間に溜まった涙は頬を伝い大粒の雫となって顎先から落ちる。殆どまともに出来ていない呼吸の合間に「…め、なさ…いっ、ごめ…っ……!、」と、途切れ途切れの謝罪を繰り返すのだが、それが誰に向けたものかは不明。暗い地下室で見た男、助けられなかった沢山の被害者達、そうして幼い少女の姿。数秒の間に様々な人達の幻覚が見えた。目前に居るのがクラークであると認識出来ぬまま、伸ばした指先は彼の服を緩く掴み、離れないで欲しいと訴える。怖くて怖くて、誰かに縋っていないと心を保てなかった。「…1人に、しないで…っ!」身体を無理矢理動かし、彼の首に両腕を回し、懸命に抱き着きながら嗚咽する。___と、見えていた恐怖の種類が変わった。一度大きく双肩が跳ね、声にならない悲鳴が漏れた。“エバンズさん”と唇は動いたのだが、音として出る事は無く、ただ、虹彩には恐怖と別に絶望の色が広がり )






5325: アルバート・エバンズ [×]
2026-01-04 16:41:12

 





( 相手が恐怖に沈む姿を、泣きながらクラークに縋り付く姿を、ただ見ている事しか出来なかった。あの時と同じ、頭では動くべきだと分かっていても身体が硬直してしまって動かないのだ。『…この耐え難い恐怖の中にも、警部補が居るんだね。』ミラーを抱き寄せ背中を摩るクラークは耳元でそう囁きながら慈しむように相手の髪を撫で、やがて此方を見て微笑む。『貴方は罪な人ですよね。貴方の存在がミラーを苦しめる。そして、その苦しみの中にも貴方は現れる。_____彼女を自分に縛り付けているんですよ。ミラーは光の側に居た筈なのに、貴方が闇に引き摺り込んだ。』クラークの言葉は、鋭利な刃物のように心に突き刺さる。彼の言う事は間違いではなく、自分と関わりさえしなければ、相手はこんな闇を知る事もなかったのだ。過去の様々な辛い記憶がフラッシュバックし、泣きながら震えている彼女の苦しみは計りきれず、クラークの服を握りしめる手にも力が籠っている。クラークの狙い通り、相手の側に居るべきではないという想いばかりが膨らんでいた。 )




 

5326: ベル・ミラー [×]
2026-01-04 17:37:16





( 頭の中に流れる恐怖の映像は実際にあった過去の出来事から、何時の間にか“創り出した”映像に変わっていた。___風景は暗く周りに明かりは無いのにエバンズの姿だけは確りと見える。相手の背後に聞こえる音は恐らく波で、だとするならば此処は海だろうか。名前を呼び、伸ばした手は強い力で振り払われ、己を見る褪せた碧眼は酷く冷たい色が滲んでいる。「エバンズさん」ともう一度呼び掛けたのだが返って来た返事は「誰だ、気安く呼ぶな。」と言う冷徹なもの。相手は己を知らない。___再び映像が変わり足元には少女の遺体。その傍には相手が立っていて矢張り冷たい目をしている。そうして「助けられなかったのか、お前には心底失望した。」と吐き捨て背を向けるのだ。___“エバンズが居なくなる事”“失望される事”が何より恐ろしいのだとこの薬は正直な気持ちを押し上げてくれるものなれど、“毒薬”だ。奇しくも相手が離れなければと思う気持ちと、己が恐ろしいと感じる事は同じ。「行かないで…っ、」と、絞り出した声は小さく震え、至近距離に居るクラークにしか聞こえていないだろう。後は何も言葉無く、ただただ絶望と恐怖の中に身を置き、ややして体力や精神力の限界が来たのか徐々に身体の力が抜けていき彼に身を預ける形となり )






5327: アルバート・エバンズ [×]
2026-01-04 19:33:51

 





( 自分が離れて行く事を相手がどれ程恐れているか、知る由も無かった。「____此れは、俺とお前の取引きだった筈だ。…っ頼むから、解毒剤を打ってやってくれ、」相手が苦しむ姿を見ている事に耐えられず、そう言葉を振り絞る。崩れるようにしてクラークに身体を預ける相手と、上下する肩を摩る彼。そして、成す術もなく立ち尽くしている無力な自分。相手が犠牲になる必要など何処にもなかったのに、今苦しみを受けているのは全て自分の為だ。“自分が、闇に引き摺り込んだ”______クラークの言葉は棘のように心を抉る。また“失う“かもしれないという思いは、重くのし掛かるばかりで。 )





 

5328: ベル・ミラー [×]
2026-01-04 20:17:25






( 頭の中に流れる映像は電源が切られた様にぷっつりと途切れ真っ暗になったのだが、漠然とした恐怖心は理由無く心身を蝕み意志とは関係無く流れ続ける涙を止める事も出来ず、ただただ力の入らぬ身体を唯一ある“温もり”に委ねるだけ。___真下にあるミラーの柔らかなグレーの髪を梳く様に撫でながら相手からの懇願に再び顔を向ける。一歩たりとも動く事が出来ずに居る相手に『身勝手に闇の中に引き摺り込んでおいて、自分の力で助け出す事も出来ない。…貴方、“ミラーの人生”を壊すつもりなんですか?』目だけは全く笑っていない微笑みで、まるでミラーに寄り添う様な辛辣な言葉を吐き捨てた後。それでも既に虚ろな目で言葉を発する事も出来ない腕の中のミラーにこれ以上の“愉しさ”は望めないと思えば、器用にその身体を支えながら内ポケットから望み通りの解毒剤を取り出し。『俺が取り引きをしたのはミラーですよ。でも、予想以上に愉しませて貰ったので後は貴方たちの観察をする事にします。』と、告げつつ解毒剤をミラーの首に打ち、そのままぐったりしている身体をソファへと横たわらせて。『はい、ドーゾ。お返しします。』態とらしく両手を軽く上げて一歩後ろへ下がり、そのまま位置的に良く見えるバーカウンターの中へと再び戻って行き )






5329: アルバート・エバンズ [×]
2026-01-06 16:35:38

 





( 自己犠牲でも、自分の所為で起きた事でもないと相手は言ったが、其れは嘘だ。あの拘置所から自分を救い出す為に_____その為だけに、相手はクラークと契約を結び、襲い来る恐怖に苦しんだ。そして、自分の力だけでは彼女を助ける事も出来ず、クラークに縋り付く姿を見ている事しかできない。無力感が心に影を落としたものの、相手に解毒剤が打たれクラークが離れると、ようやく相手の側に近づく事が叶うようになる。「____っ、ミラー、」相手の名前を呼び、ぐったりしている相手の肩を揺する。そうして棚に何本もストックされているミネラルウォーターのペットボトルを手にするとキャップを開け、始めに注射針を刺された首元を濡らし、相手の口元へと近づける。「直ぐ楽になる、…こっちを見てくれ、」視線が合わない事に焦りを感じ、相手に呼びかけながら頬を撫で。 )





 

5330: ベル・ミラー [×]
2026-01-06 19:56:12





( 胃に落ちた薬とは違い、注射器で直接血管を通り流された解毒剤は遥かに短い時間で恐怖を取り去った。けれど身体に残る倦怠感は大きく、過呼吸による酸欠状態になっていた為か指先は冷えてしびれが残ったまま。呼び掛けに応える事も身体を動かす事も出来ず、上手く焦点を合わせる事の出来ない瞳が捉えたのは口元に近付けられたミネラルウォーターのペットボトルで、飲みたいと言う意思で重たい唇を開くが空いた隙間は極僅か。結局少量の水すらも飲み込む事が出来ず、苦しそうに眉を寄せ数回咳き込み、その際口の端から溢れた水は頬とソファを濡らす事となり。頬を撫でる相手の指先の温もりを感じ取れているかは定かでは無い。虚ろな目に真っ直ぐ相手は映っていないものの、たっぷりの時間を掛けて漸く少しばかり呼吸が落ち着いてくると、「……帰りたい…、」とだけ、絞り出した至極小さな声量で告げて )






5331: アルバート・エバンズ [×]
2026-01-08 18:08:16

 




( 差し出した水は相手の頬やソファを濡らし、胃の中へと落ちる事はない。苦しそうな様子にどうしようもなく胸が痛むのだが、今自分が相手を不安にさせるような表情や振る舞いをするべきではないと感じ、それを表に出す事はしなかった。相手が絞り出すように紡いだ言葉に頷くと「……あぁ、分かってる。直ぐに帰ろう、」と同意を示す。様々な感情が渦巻いてはいるものの、もうこれ以上この場所に留まっている必要はない。カウンターの中にいるクラークには見向きもせず、相手を家まで送り届けるためソファに身体を起こさせると背凭れにもたれさせて。 )





 

5332: ベル・ミラー [×]
2026-01-08 19:05:34






( 全体重を掛ける様にして背凭れに凭れ、その際重たい腕を持ち上げ相手の腕に力の入らぬ指先を引っ掛ける。倦怠感や僅かに残る震えから握るだけの力は無いものの“近くに居て”の意思表示だ。___そんな2人の遣り取りを珍しく黙って見ていたクラークだったが、家に帰るとの話になれば別。契約の1つは達成されたかもしれないがまだもう1つが残っているのだから、それを無かった事には出来ない。『__ちょっと待って下さい。』と言いながらカウンターから出て相手の元に近付くと、スーツの内ポケットから次は液体の入った小さな小瓶を取り出し中身を揺らす様に見せ『…これ、ミラーが飲んだ薬と同じものなんですけど、実はもう1つ契約がありましてね。貴方も飲まなきゃいけないんですよ。…今この場で飲んでもらうか、それともまた日を改めてミラーが元気な時にするか__これをミラーが貴方に打つ姿も唆られますよねぇ。どんなシチュエーションが一番良いかずっと考えてるんですけど、折角だから貴方の意見も聞きたいなぁ。』恍惚とした表情とまるで物語を語るかの様な口調で緩く首を傾けつつ。最後には、『貴方を助ける為に、貴方を苦しみに落とす契約をする、皮肉ですよね。』と締め括り、ぐったりしているミラーに徐に手を伸ばし涙の跡の残る頬をゆるゆると撫でて )






5333: アルバート・エバンズ [×]
2026-01-09 02:53:43

 





( カウンターの中で黙って成り行きを見ていた彼だったが、そのままクラークを無視してバーを出る事は叶わなかった。呼び止められ、近づいて来た彼が徐に取り出したのは先ほどと同じ薬の入った小瓶。相手を苦しみに突き落としておきながら、これ以上を求めるのかと思わず絶句する。この男と“取り引き”をすると言うのはこういう事なのかと理解させられる状況だった。この薬を、ミラーが自分に打つ______あの耐え難い恐怖と苦しみを思い出すだけで背筋が凍るのだが、相手の心を守る事も考えなければならない。この状況を覆せないのなら彼に従うしか無いのだが、今相手の意識が朦朧としている状態で終わらせるべきか、それとも間違いなく精神的に落ちている相手にこれ以上の負担を掛けない為に今は避けるべきか。答えなど出る筈もない。弄ぶように相手の頬を撫でる手を強引に掴み離させると、そのまま「…其れを寄越せ。今、自分で飲む。」と告げて。クラークを見つめる瞳には、冷ややかな憎しみと葛藤と恐怖とが渦巻いているものの、振る舞いはあくまで理性的なもので。相手に薬を打たせるという状況はやはり避けたかった。今目の前に薬があるのだから、自分で飲んだって構わない筈だと。 )





 

5334: ベル・ミラー [×]
2026-01-09 13:17:04





アーロン・クラーク



( ミラーの柔らかな頬を撫でていた時間は僅か。強い力で以て引き剥がされれば、その行動に可笑しそうにクツクツと喉の奥で低く笑い。至近距離で見る相手の碧眼に渦巻く感情の色は様々で、覗き込む様な角度で暫し何も言わず表情を眺める。薬を飲む事でどんな恐怖に襲われるか___何度も体験している相手が一番良くわかっていて本来ならば嫌だと拒絶したい筈なのに、その恐怖とミラーの心を守る狭間であくまでも冷静に、理性的に振舞おうとするその何と健気な事か。『本当、可愛らしい人ですよね。』と、しみじみ呟いた後は。けれど、望み通り渡す事なく『それも悪くは無いんですけど……やっぱりミラーに頼みます。それが最初の契約だった訳だし、どんな顔で貴方に薬を打つのか見たいですしね。__と、言う事で。ミラーの意識がしっかりするまでは此処に居て下さい。ミラーに付き添ってても良いし、暇なら俺がお喋りに付き合っても良い。此処から出なければ何をしても自由ですが…一歩でも外に出ればどうなるかは、態々言わなくてもわかりますよね。』薬を再び内ポケットに戻してから、“進み方”を勝手に決定しつらつらと説明した後、『お酒が飲みたかったら作りますから、遠慮無く。』なんて微笑み、またカウンターに戻ると自分が飲む分を先に作り始めて )






5335: アルバート・エバンズ [×]
2026-01-15 01:31:44

 




( 最悪な状況下で考え得る限りの最善策は、ことごとく打ち砕かれた。自分で飲む事も許さず、相手の意識がはっきりするまで待てと。「______何処までも悪趣味だな、」とだけ吐き捨てると、カウンターの方へ向かう事はせずソファに横たわる相手の側に留まって。取り乱さないよう、表向きはあくまで冷静に取り繕っているが思考はそうはいかない。自分を救う為に相手を苦痛に沈めてしまったという罪悪感は冷たく背中を這い上がって来るのだが、同時に此れは自己犠牲ではないのだと訴えた相手の真っ直ぐな瞳が其れを押し留めようともしていた。自分が相手の近くにいる限り、クラークはそれを“弱み”と見做し相手に危害を加えかねないという不安は、レイクウッドを離れた時の心情とよく似ていた。“身勝手に闇に引き摺り込んだ”というクラークの言葉と、ソファでぐったりしている相手の姿とが気持ちを追い詰め、相手の肩をゆっくりと撫でていた手に思わず僅かに力が籠り。 )






 

5336: ベル・ミラー [×]
2026-01-15 14:00:12





( 大きな倦怠感の中でもクラークが相手に伝えたもう1つの契約内容は耳に届き、肩を擦ってくれる手の動きは確かに感じていた。その手に身を委ねる様に双眸を閉じまるで負傷した動物が傷を癒す時の様に微動だにしなかったのだが。緩やかな手の動きが止まると同時にそこに僅かな力の籠りを感じると、静かに瞳を開き相手の表情を確認した後、重たい腕を持ち上げ骨張った相手の手の甲を今度は此方が労る様にして緩く撫でて。「……痛み分けにしよ、」小さく弧を描いた唇から発したのは、何方かが一方的に抱えるものでは無い、言うならば“おあいこ”。この後苦しませるとわかっているのに相手に薬を打たなければいけない絶望は大きく、心情的にはとても“おあいこ”だなんて思えないのだが、この言葉が今一番相手の罪悪感を小さく出来ると思ったのだ。幾らか身体に力を入れる事が可能になり、背凭れから身体を離すと今度は手の甲を撫でていた手を静かに相手の片頬へ伸ばし「…私達は大丈夫。」ね?と微笑んで )






5337: アルバート・エバンズ [×]
2026-01-21 13:15:58

 




( “痛み分け”だなんて、相手が本来感じなくて良いはずの痛みを押し付けているのは自分の方だ。相手の言葉に僅かに悲しそうな色が浮かぶものの、重たい倦怠感を感じているであろう中で自分の手の甲をさする相手に何も言うことは無く。「お前を巻き込みたくなかった、」とひと言だけ告げたものの、相手の努力を、葛藤を、思いを無駄にする訳にはいかない。「……彼処から救ってくれた事には感謝してる、…元々は、俺とあいつとの間で成される筈だった契約だ。心苦しく思う必要はない、」と相手の瞳を見据えて。相手が自分をあの絶望的な状況から救い出してくれた事には感謝しかないのだ。けれど本来なら自分とクラークの間で結ばれる筈だった契約に相手を咬ませてしまった。自分に薬を打つという行動を、相手が気に病む必要はないのだと言い聞かせて。言葉自体は冷静なものなれど、あの苦痛を思い返すだけで身体が震えるのもまた事実。相手の手を緩く握り締めていて。 )





 

5338: ベル・ミラー [×]
2026-01-21 20:31:27





( 誰よりも繊細で優しい相手の言葉。ちゃんとわかっているとばかりに柔らかな微笑みと共に頷く。___これで終わりならばどれ程良いかと思うものの、悪魔と取り引きした以上あの男は例え地球が滅びる目前であろうとも契約を遂行するのだ。『__互いが互いを思い遣り寄り添う…面白いくらいに微笑ましい姿ですが、俺は苦しんでる警部補を見たいので、…はいこれ。首に刺して此処を押すだけ。中身が無くなったら針は危ないのでちゃんとキャップして下さいね。』案の定カウンターの中から遣り取りを見ていたクラークは、清々しい程綺麗な笑みと共に、注射器の危険性までもを説きながらそれをミラーに渡し。___手の中の注射器は酷く冷たく重たかった。実際は拳銃よりも、手錠よりも、断然軽いものの筈なのに、“心を殺す”凶器だからだろうか。首元に刺すと言う事は相手は刺される瞬間を見る事が出来ない為、より大きな恐怖を感じてしまうだろう。今すぐ握り潰し粉々にしてやりたい気持ちが膨れ上がるものの、そんな事をすれば相手は今度こそ犯罪者として逮捕されてしまう。「……エバンズさん、ごめんね。」傍らに立つクラークを睨み付けてから、震える感情を押し殺す様に相手を真っ直ぐに見詰める。それから注射器のキャップを外し、深く息を吐き出した後。片手は相手の頬に軽く添え、一度親指の腹で撫でてから相手の首筋に注射針を突き立て中の液体を体内へと流して )






5339: アルバート・エバンズ [×]
2026-01-28 03:51:03

 




( 相手に罪悪感を抱いて欲しくない______それは間違いなく本心だ。けれど、そんな冷静な言葉を紡ぎながらも本当は逃げ出してしまいたい程恐ろしかった。やめてくれと懇願したい気持ちを懸命に押し留め俯いていたものの、相手の指先が首筋を撫でると其れだけで身体が強張る。謝罪と共に首筋に針が刺さり、冷たい液体が入ってくる嫌な感覚。ゾッとして反射的に振り払うように動かした右手は注射器に当たり、針が折れる事こそなかったものの其れを弾き飛ばして床へと乾いた音を立てて打ち付けられた。薬が体内に回り始める中、恐怖よりも先に襲ったのは寒気だった。指の先から少しずつ身体が凍っていくような妙な感覚。床に崩れたままソファに上半身を預けて小刻みに身体は震える。「……っ、嫌だ、…!」寒さはやがて明確な恐怖に変わり、何も見たくないと顔を覆ったまま上擦った呼吸を抑え付けるばかりで。 )






 

5340: ベル・ミラー [×]
2026-01-29 13:45:18





( 首筋に針を刺した時の薄い皮膚を突き抜ける感覚、強張った身体、鼓膜に残る注射器が落ちた音、上擦る呼吸音と悲痛な声。途端に襲い来る罪悪感に伸ばした手は相手に触れる事は無かった。それよりも先に側に居たクラークが相手の身体を包む様に抱き竦めたからだ。『__可哀想に、ミラーは本当に酷い事をしますね。』優しく背中を擦りながら、苦しむ相手の耳元で囁くのはそもそもの元凶には触れぬ“ミラーが悪い”と言う言葉。そうして今寄り添って居るのは自分なのだと言う様に相手の顎先に手を添え僅か顔を持ち上げると、その碧眼に自身の姿を映しながら『大丈夫、俺が貴方の側に居ます。何が怖いですか?』あくまでも穏やかな表情と共に問い掛けを。勿論“酷い事”に反射的に反論したミラーには『違わないでしょ。警部補に薬を打ったのは紛れも無くミラーなんだから。』と、真っ向からの切り捨ても忘れずに )





5341: アルバート・エバンズ [×]
2026-02-01 04:05:12

 




( 記憶に呑まれ、既に今を認識する事が困難になっていた。冷たい水の底に居るかのように身体の自由が効かない。ただ触れている温もりが自分をこの場所から引き上げてくれる事だけを朧げに願って、クラークの腕に指を食い込ませて。断片的な記憶が泡沫の様に浮かんでは弾け、鮮明な、残酷な場面が幾度と蘇る。忘れようとしても焼き付いたまま色褪せない幼稚園の悪夢も、犯人が引き金を引く瞬間の歪な笑みも、光を失った若葉色の瞳と血溜まりに投げ出された白い腕も。慟哭する遺族と、記者やカメラの群れ、次第に心を壊して行った捜査員たち。決して消えない罪が、あの事件の記憶ばかりを自分に見せる。更には建物の屋上でミラーの首に注射器を突き立てた男、薄暗い部屋で罪人の様に扱われた取り調べまで、様々な記憶が押し寄せて。「_____っ、違う、赦してくれ、…!」譫語のように紡いだ言葉は何に対するものか。クラークと視線は合っている、けれど目の前の相手を認識する事は出来ず、焦点が合わないまま苦しげな呼吸が唇から漏れる。やがて薬は現実ではない恐怖をも生み出した。刃物を手にした自分の両手は血で真っ赤に染まっている______顔を上げた先、自分が刃物を突き立てたのは紛れもなくミラーなのだ。声にならない声で“ミラー”と相手の名前を口にすると、身体は小刻みに震え始めて。 )






 

5342: ベル・ミラー [×]
2026-02-02 19:42:36





( “何か”に懸命に赦しを乞う相手の背を優しく撫でていたクラークの手が止まったのは、震える唇が“ミラー”と動いたから。音は無くとも震える身体と息遣いが恐怖の凡そを示して来た。『ミラーが怖い?それとも__貴方がミラーに酷い事しましたか?』今の相手ではまともに答える事が出来ないとわかっていながら問う言葉は底意地の悪さが滲み出ているもので。相手の顎先を固定し視線を強引に合わせたまま次なる言葉を紡ぐ為薄く開いた唇は、それよりも先にソファから伸びて来たミラーの手によって邪魔された。クラークの手を払う事で相手を拘束から解き放った後は紫暗と緑眼がぶつかる。暫く互いに全く別の感情でお互いを見据え続けたも、笑顔のまま先に肩を竦めたのはクラーク。『…ミラーもちゃんと約束を守ってくれたし、今日の所はこれでひくよ。十分満足出来たしね。…はいこれ、遣り方はもうわかるだろうから俺から口出しはしない。』そう言って取り出した解毒剤はミラーにひったくる勢いで奪われ、クラークが相手から離れれば、次は怯える相手に再び謝罪を落とした後、先程と同じ様に首筋に、今度はこの恐怖心を取り除く為の解毒剤を注射して )






5343: アルバート・エバンズ [×]
2026-02-04 15:52:58

 




( クラークが自分に対して何を言っていたのか、意識が鮮明な過去に引き摺られる中では殆ど理解出来ずにいた。首筋に走った痛みに身体は無意識に強張るのだが、悪夢と融合した記憶は解毒剤によって溶けていくように遠ざかり、やがて今を認識出来るようになり。身体には小刻みな震えが残るものの、ソファに手をつくようにして身体を起こす。重たい倦怠感と軋むような身体の痛みを感じながらも、大丈夫だと伝えなければいけないと思ったのだ。褪せた碧眼は未だ不安定な揺らぎを湛えているものの、相手と視線を重ねる。そうしてクラークにも視線を向けると「_____もう満足だろう、」とだけ冷たく告げて。「…タクシーを呼べるか、」と相手に尋ねたのは、互いに運転できる状態では無いながら早く家に戻りたかったから。無機質な拘置所に何日も閉じ込められ、その後がこれだ。一刻も早く安心できる場所に行きたかった。 )





 

5344: ベル・ミラー [×]
2026-02-04 18:52:18





( 相手の冷たい問い掛けにクラークは微笑みを浮かべただけで何も言わなかった。けれどミラーがタクシーを呼ぶ為に電話をした行動を邪魔する事も、出て行く2人を引き留める事もしない事から満足したと言えるだろう。___程無くして今は使われていないBARで何をしていたのだ、とばかりに訝しげな雰囲気を漂わせる運転手が来て、指定した目的地であるアパートへと連れ帰ってくれた。部屋の中はどこか肌寒く、電気をつけてからソファに腰掛ける事もせずキッチンに立つと「…うんと甘いホットミルクにしちゃう?」と、振り返りつつ何時もと同じ…を、心掛けた少しだけ悪戯な笑みを浮かべて見せて )






5345: アルバート・エバンズ [×]
2026-02-12 14:07:23

 




( 久しぶりに帰った相手の家は、主人が留守にしていた為ひんやりとしてはいたものの、長い時間を過ごす羽目になった無機質な拘置所の何倍も温かく穏やかな空気が流れているように感じた。ソファに腰を下ろし深く息を吐き出して、相手の問いに顔を上げる。魅力的な提案ではあったが、相手の身体にもかなりの負担が掛かっているのは間違いない。「有難いが、…お前も無理はするな。少し休んだ方が良い。」と告げて。先ほど薬を打たれた時に感じた身体の芯から震えるような“寒さ”、拘置所内で1人薬も飲めず過ごした感じた中で感じた“寒さ”、其れらから遠い所に居て安心したいという無意識な行動か、ソファの背もたれに掛かっていた毛布を近くに引き寄せて。 )





 

5346: ベル・ミラー [×]
2026-02-12 15:06:26





何かしてた方が落ち着く。
( 確かに身体には大きな倦怠感が纒わり付き、心は解毒剤が打たれて尚、理由の無い恐怖の残りに震えていた。しかし、だからこそか。気を紛らわせる為に動き続けていたいと思ったのだ。マグカップに温かいホットミルクを注ぎ普段より多めの蜂蜜を溶かし出来上がった特別が、何もかもを拭い去ってくれる事を願わずにはいられない。「__毛布よりもっと“あたたかいもの”が、今エバンズさんの近くには居るんだけど。…そっちは選ばない?」沢山の“寒さ”から逃れる為、毛布を手繰り寄せたその行動を一瞥し、感じた言い様の無い切なさは早くあの拘置所から出してあげられなかった事による罪悪感と、助ける為だったとは言えこの手で恐怖を呼び起こしてしまった罪悪感が混じりあったもの。マグカップを目前のテーブルに置きつつ隣に腰掛けると、片手で相手の肩を軽く擦って )






5347: アルバート・エバンズ [×]
2026-02-13 14:22:45

 




( 何かをして気を紛らわせたいという相手の気持ちも分かる気がした。じっとしていると、身体の内側に残る“恐怖”がじわじわと身体を侵蝕して行きそうで、他の事に意識を向ける事で其れに気付かないフリをする。相手の言葉に頷くと、やがて甘くまろやかな香りが漂い始め、それがまた少し気分を和らげた。マグカップを持ってソファに近づいた相手の言葉に顔を上げると、若葉色の瞳と視線が重なる。「……お前は、体温が高いからな。」という答えは、ある意味照れ隠しのようなものなのだが、仮のこの場に相手の同僚2人が居れば、何故そんな事を知っているのかと問い詰められた事だろう______そんな事は気付きもせず、相手の肩口に軽く顎を乗せるようにして距離を縮める。感じていた寒さが僅かに解け、無意識の内に僅かに強張っていた身体から少し力が抜けて。「…お前がどうにかしてくれなければ、俺は犯罪者に仕立て上げられていた。感謝してる、…あんな事に巻き込んで悪かった。」相手の体温を感じたまま、静かな声色で感謝と謝罪の両方を紡いで。 )






 

5348: アルバート・エバンズ [×]
2026-02-14 08:21:11

 



テスト



 

5349: ベル・ミラー [×]
2026-02-14 13:20:32






今もっとも必要でしょ?…それに、私にもエバンズさんの体温が必要。
( 褪せた碧眼と視線が重なり軽く微笑む。続けられたYESでもNOでも無い照れ隠しの言葉に同意を示す様に頷くと、己の肩口に身を寄せて来た相手の後頭部に片手を添え、焦げ茶の髪を緩く梳く様に撫でながら感じるのは言い様の無い愛おしさと安心感と、それから矢張り少しの罪悪感。瞳を閉じ確かに傍にある温もりの中で紡がれたお礼と謝罪を聞き届け「私も酷い事してごめんね。…あの薬で何方も苦しんだのは間違い無いけど、あの時はあれが最善だったと信じるしかない。」此方も謝罪を紡ぐ。本来ならばクラークと悪魔の契約などせず相手を助け出す事が出来れば、その後の寒さも恐怖も感じる事は無かった。けれどあの時の己の力ではそれが出来ず、相手を犯罪者にしない事が何より最優先事項だったのだ。互いに抱える罪悪感はこの場所に置いて進もうと言わんばかりの前向きな言葉の後、「寒かったね。__エバンズさんが戻って来て良かった。」再び相手の後頭部に添えた手を軽く動かしつつ、安堵にも似た溜め息を吐き出して )






5350: アルバート・エバンズ [×]
2026-02-18 00:02:17

 




( 相手や警視正が、自分の無実を証明する為に奔走してくれていた事は理解している。しかし綿密に仕組まれた今回の件だけを見れば、あの男に頼る以外に道は無かったと言えよう。互いに苦しんだが、相手がそれを“最善だった”と言ってくれるのなら、そう思おうと。後頭部を撫でる相手の手に意識を向ける。今こうして温もりを感じて安心出来る場所に居るのだから、もう大丈夫だと、僅かに身体の強張りが解けて。ややして少し身体を起こすと、湯気の立つマグカップに手を伸ばし、甘いホットミルクを啜る。身体の芯を温めてくれるような感覚に息を吐くと、「……温まる、」とひと言だけ言葉を紡ぎ。 )






 

5351: ベル・ミラー [×]
2026-02-18 01:02:39





__エバンズさん、スパイス系苦手じゃない?
前に行ったカフェで美味しいチャイ飲んだんだけど、今度試しに作ってみようと思って。スパイスが効いてる分、温まるのも早いと思うんだ。
( ホットミルクを啜るその横顔を不躾ながら見詰め、細く吐き出された息の後に溢された一言に破顔する。追う様に己も白を胃に落とし、同じ時間、同じ空間、そうして同じ物を飲んでいる折り重なる温かさを噛み締めた後。マグカップの端から唇を離し、少し前に同僚と訪れたカフェで飲んだ飲み物の話を唐突に。これまで相手には、今飲んでいるホットミルクの他にコーヒーや紅茶といった比較的飲み慣れたものをわたして来たが、あのカフェで飲んだチャイは格別で、相手にも、と思ったのだ。寒さを感じている時は特に、1秒でも早く身体も、心も温めて欲しいと思うのだから )






5352: アルバート・エバンズ [×]
2026-02-20 12:38:33

 




______多分飲める、辛みがあるのは嫌いじゃない。
( 何処か上擦っていた気持ちがようやく少し落ち着くと、相手の問いには小さく頷く。ほとんど飲んだことはないが、スパイシーな物が苦手という訳でもない為、大丈夫だろうと。甘く温かい飲み物が身体を温め心を落ち着けてくれることは相手と時間を共にするようになって実感した事。1人でアルコールを煽るよりずっと心身に健全な方法だろう。相手の家は、この場所は安全だと安心出来る場所になっていた。 )





 

5353: ベル・ミラー [×]
2026-02-20 13:54:19





じゃあ近い内に作るから味見して。流石にお店ほど上手には出来ないと思うけど。
( ジンジャーやシナモンと言った独特な味と香りを持つ飲み物は比較的好き嫌いが別れるだろうが、相手の好みを思えば然程問題は無いのかもしれない。背凭れに深く体重を掛け、少しばかり温くなってしまったけれど、その分甘みを強く感じる様になったホットミルクを飲み干し一息つく。「__今日は早めに寝よ。…勿論一緒に。」心身共に大きく疲弊した今日、何も考える事無く布団に包まれるべきだと思うのだ。落ち着ける場所、落ち着ける人の隣、そうして温かい飲み物を飲んだ事で幾らも解けた“負”が完全に消えるのもきっと直ぐの筈。少しだけおどけた様な口調と共に寝室に軽く視線を流しつつ、きっと翌日からはまた何時も通りが始まる事だろう )






5354: アルバート・エバンズ [×]
2026-02-25 18:20:44

 




( 日常が戻り、再び警部補執務室に電気がつくようになって数週間。比較的落ち着いていたレイクウッド署に一本の通報が入った。レイクウッド郊外から少し離れたアルマノール湖の湖畔にある貸し別荘で、男性が殺害されているのが見つかったというものだった。駆け付けた捜査員によって既に現場検証が始まっているため、捜査を担当してほしいと警視正からの命を受け、ジャケットに袖を通しつつフロアに出る。「ミラー、事件の資料を送った。直ぐに現場に向かう。正面に車を回してくれ。」と相手に声を掛けて。車では片道1時間ほどだろうか、準備を整え執務室の明かりを消して署を出るとちょうど相手が車を正面に着けたところで、助手席の扉を開けて乗り込む。「アルマノール湖に向かってくれ。」と、行き先を告げて。 )





 

5355: ベル・ミラー [×]
2026-02-25 20:15:35





( ___【アンドリュー・ベネット】38歳男性。送られて来た資料の被害者の名前を確認して、期間こそまちまちであるがどうしたって起きてしまう殺人事件に重い息を吐く。助手席に座る相手の言葉に車のナビを目的地の湖に設定し車を走らせれば凡そ1時間で現場に着き。___規制線が張られた先はこじんまりとしているが酷く落ち着けるであろう別荘。入口の直ぐ近くに捜査官に連れられ話を聞かれている、第一発見者の清掃員の姿があり、その様子を一瞥した後建物の中に入る。「金品目的の犯行では無さそうですね。」と言葉にした理由は部屋に荒らされた跡が無かったから。「…彼の他に誰が居たんでしょう。」胸をひと突きにされ絶命しているアンドリューと、テーブルの上に置かれた2つのワイングラスを交互に見てから、その視線を相手に向けて )






5356: アルバート・エバンズ [×]
2026-02-25 23:03:35

 





( 手袋を嵌めつつ現場となった別荘に足を踏み入れると室内を見回し、相手の言葉に頷く。2つのワイングラスと、荒らされた形跡のない室内。「…顔見知りの犯行で間違いないだろうな、」と同意すると、遺体の傍にしゃがみ込み凶器を確認する。ナイフが胸に刺さったままになっており、これが致命傷になったと考えてまず問題ないだろう。キッチンの下の収納を開くと、綺麗に並べられた包丁のうち左から2つめが無くなっている。柄の色やブランドを見る限り、この別荘にもともとあった刃物が凶器と推測される為、突発的な犯行と考えられた。死因が特定できない事件と違って、現場の状態から犯人像や事件当時の状況はかなり絞られる。「_____被害者との間にトラブルを抱えていた人物を探る必要があるな。状況は粗方分かった。」と言いながら立ち上がると、他に気になる事はあるかと相手に視線を向けて。 )





 

5357: ベル・ミラー [×]
2026-02-25 23:58:24





( アンドリューは此処に1人で来て途中誰かの訪問を受けたのか、それとも最初から誰かと一緒だったのか。少なくとも顔を合わせワインを嗜む事が出来る間柄の人が近くには居た訳で、初めは楽しく会話に花を咲かせていたが次第に雲行きが怪しくなり最悪の結末を迎えたのかもしれない。もしくは、然程仲良く無い相手だったがある種の礼儀としてワインを注いだか、酔わせて何か聞き出したい事や目的があったか。___本来包丁がおさまる箇所はぽっかりと空いたまま、そこを見詰め推測を繰り返すも、先ずは相手の言う通り彼と繋がる人物を探し出し話を聞く事が重要だろう。「グラスから彼以外の指紋が出ると良いんだけど、」と、早急な事件解決に繋がる手掛かりを欲しつつ、軽く首を横に振った後「なら、まずは一番身近な人からって事で。」最初は彼の奥さんの所に行くのがベストだろうと別荘を出て。車に乗り込む前、辺り一面をぐるりと見回し「__…こう言う所に監視カメラが無いのって、景観を損なうって理由からなのかな。」と徐に呟いて )






5358: アルバート・エバンズ [×]
2026-02-26 03:06:55






( 現場の状況自体は複雑なものではなかったが、貸し別荘という場所の性質が捜査を混乱させる可能性は大いにあると考え込む。先ずは現場検証で出た指紋などを待つ必要があるため、決定的な証拠を求める相手の言葉は最もなのだが「…不特定多数の人間が出入りする場所だという事を考えると、指紋やDNAには苦労するかもな、」と答えて。相手の言う通り、自然に囲まれたこういう場所には監視カメラが設置されていない事が多い。電源が落ちたまま何年も経過しているパターンもあった。証拠の裏付けがしにくい状況だからこそ、聞き込みで確かな情報やアリバイを浚う必要があるだろう。---被害者の家を訪ねると、妻・ミアは憔悴した様子で自分達をリビングに通した。『夫があそこに泊まるのは珍しい事じゃありませんでした。それがまさか…』と、膝の上に重ねた手の甲に視線をお落としたまま絞り出すように言葉を紡いで。 )




5359: ベル・ミラー [×]
2026-02-26 12:17:24





( ___妻であるミアは当たり前ながら酷く憔悴した様子で絞り出す言葉も弱く、痛々しい程。軽く相槌を打ちながら彼女と同じく膝の上で重ねられた手に視線を落とし、再び見詰める。「…別荘で誰かと会う約束をしていたとか、そう言った話は聞いていませんか?…それと、此処最近のトラブルの有無も__何か知っている事があれば、」開いた手帳の上部にペン先を軽くあてつつ、アンドリューの周囲であった出来事について問う。愛していた夫を亡くし、突如日常が崩れた妻…ではあるが、彼女のアリバイが立証出来ない以上、完璧な白と判断する事もまた出来ないのだ。嘘や淀みが無いかを表情や声色から判断する為、視線をそらす事はせずに )






5360: アルバート・エバンズ [×]
2026-02-26 16:04:13

 




( 相手の問いにミアは首を振り『1人で泊まっていた筈ですが、誰と会っていたかまでは…。トラブルと言えば、会社の事でしょうか。夫はアウトドア用品店を経営しているんですが、共同経営者のジェイソンと最近方針を巡って揉めていると聞きました。』と答えて。経営方針が食い違い、トラブルになるというのはよく聞く話だが、ジェイソンという男に話を聞く必要があるのは確かだろう。「…1人で泊まっていたという事は、奥様は別荘には行かなかったんですね?」そう尋ねると、ミアは少し硬い表情のまま頷いて『夫とは少し距離を置いていたので、』と答え、視線を再び手元に落として。 )






 

5361: ベル・ミラー [×]
2026-02-26 17:18:06





( 経営方針の食い違いで揉め衝動的に殺害、は理解こそ出来ないが“その人”にとっては動機として十分なのだろう。手帳に【ジェイソン】の名前を書き、次なる聞き込み先を彼の居るアウトドア用品店に決めた所で、相手の問い掛けの答えが鼓膜を揺らし思わず頭が持ち上がる。もしその話が本当だとすれば、家に居る時間を居心地悪く感じたアンドリューが毎週1人になれる別荘で寝泊まりを繰り返していた、と言う事にも繋がるかもしれない。「失礼ですが、距離を置いていたというのはどう言った理由で?」と問い掛けつつ、2人の間にあった夫婦関係を客観的な立場で見た人の話も聞きたい所だと考えて )






5362: アルバート・エバンズ [×]
2026-02-26 19:04:15

 




( ミアが一瞬答えに言い淀んだのは、動機に繋がると警察に捉えられかねないものだったからか。『…よくある夫婦仲の悪化です。喧嘩が増えたので、少し距離を置く事にしたんです。あの人はアウトドア好きだから、別荘で過ごす時間も気に入っていたと思います、』と答えて。死亡推定時刻はまだ分からないが、毎日清掃に入っていると考えれば殺害されたのは昨日の可能性が高い。「…ご主人と最後に会ったのはいつですか?」と尋ねると『金曜の朝です。金曜日に仕事が終わると直接別荘に行って、土日は別々に過ごすのが最近のルーティンだったので。』という返答。この状況に緊張しているのか、ミアの表情は硬いままで。 )




 

5363: ベル・ミラー [×]
2026-02-26 20:25:12





( 夫婦仲の悪化で距離を置く事を選ぶのは特別変わった事では無い。実際近過ぎる距離のせいで起きた問題が少し離れる事で修復されたり、解決の糸口が見付かる事は良くある話だ。緊張気味に紡がれるミアの言葉を再び手帳に書き記し、未だ明確になっていない死亡推定時刻を思案する。「__金曜の夜から、今日ご主人が亡くなったと連絡を受けた時間まで、何処で何をしていたのか教えて貰えますか?誰かと一緒に居たのならその人の名前も。」と、此方からは最後の質問を。此処でミアの確実なるアリバイが取れれば良いのだが、何方にせよアウトドア用品店に行く必要があるのは確か。尚も硬い表情のままの彼女に、これ以上の緊張は…と表情を緩め軽く微笑むも、疑われている状況の中では難しい話だろう )






5364: アルバート・エバンズ [×]
2026-03-01 02:37:34

 



( 相手の問いに対してミアは『友達の家にいました。大学時代の友人何人かと集まって、ホームパーティーをしたんです。』と答えて。友人からの証言が得られて、正確な死亡推定時刻と擦り合わせる事が出来ればアリバイは成立する訳だが、現時点では其れを疑う事も信じる事も出来ない。滞在していたという家の主である友人の名前を尋ね、手帳に“キャサリン”とその名を記すと、追ってアリバイを確認するために話を聞こうと。ひと通りの聴取を終えると「…何か気になる事や思い出した事があれば、直ぐにご連絡下さい。」といつもの言葉を事務的に述べて立ち上がる。被害者の周囲に居ると思われる犯人を炙り出す為に話を聞くべき対象が大勢居る訳で、相手と共に車に乗り込むと「次はアウトドア用品店だな。」と告げて。 )





 

5365: ベル・ミラー [×]
2026-03-01 10:57:06





ジェイソンとの揉め事は気になる所だね。
( ___運転席に座り相手の言葉に頷くと車を走らせる。“共同経営者”なんて経営方針の面でもお金の面でもある程度の擦れ違いは出て来る所だろう。赤信号で停止したタイミングで前を見据えたまま徐に言葉にしたのは「__…“被害者の親族”に向ける感情と、“被疑者である親族”に向ける感情とに、前ほど偏りが無くなった気がする。…今回で言えばミアね。昔は“被害者の親族”に話を聞いてるっていう気持ちがほぼ100%を占めてて、だからほら、エバンズさんがその人達を疑ったりすると正直冷たい人だなって思ってた。でも今は__、」と言うもの。途中で信号が青に変わり車を発進させる為言葉を切るのだが、再び「…今は、親族の悲しみに寄り添う前に、アリバイを探す事、動機を探す事が優先になってる。それが良いとか悪いとかじゃなくて、ただ……自分の中で不思議な感覚で、…今更だけど変化に戸惑ってるのかな、誰かに話したいって思って。」今の気持ちを整理する様に時折言葉を止めながら、最終的には聞いて欲しかったのだと。やがて車がアウトドア用品店に着くと「到着。」と、普段通り、これから聞き込みをする刑事らしい表情を浮かべて )






5366: アルバート・エバンズ [×]
2026-03-01 16:13:52

 




( 相手がハンドルを操作しながら溢した言葉に、車窓の外を流れる景色をぼんやりと眺めながら耳を傾ける。経験を経て刑事としての視点が備わったという事だと思うが、感受性が高い相手からすれば其れは“冷酷になった”という変化として捉えてしまい、戸惑いがあるのかもしれない。「_____新しい視点が備わっただけで、優しさを失った訳じゃない。冷酷になれるようにもなったという事だろう。」視線は前に向けたまま、そうとだけ答える。「…犯人を取り逃がさないように全てを疑う視点は、刑事として必須のものだ。それが“ようやく”お前にも備わってきた。それに加えて共感性の高さがあれば、強みになるんじゃないか?」聞いて欲しかったのだという相手に対して、ご丁寧に皮肉も加えて答えると、悲観する事など無いと。一方的に考えを伝えると車を降りて、ジェイソンがいるであろう本社の入る建物へと向かい。---いくつかの地元企業が入る、然程大きくはない5階建の建物。3階がアウトドア用品店の本社兼倉庫となっているようで、そこへと向かいジェイソンと話がしたいと伝える。フロアで働いている数人の社員が物珍しそうに此方を気にしていたものの、会議室に通されると程なくジェイソンがやって来て。ワイシャツにチノパンというオフィスカジュアルな服装の上に、自分のブランドのパーカーを着ている。『どうも。…驚きましたよ、まさかアンドリューが殺されるなんて。まぁ、警察が来るだろうとは思ってました。』そう言って椅子に腰掛けて。 )





 

5367: ベル・ミラー [×]
2026-03-01 17:03:52





( 刑事としては甘い考えである事は百も承知、けれど己が大切にして来た“寄り添い”が消え失せた訳では無く“他の視点を獲た”___つまり何方も選べる様になった、と言う事だと相手の言葉で腑に落ちた様に口角を持ち上げるのだが、ご丁寧に付け加えられた皮肉には肩を竦める。「“ようやく”エバンズさんの足を引っ張らないで済みそう。」同じ単語を態とらしく使い、それでも胸に灯った確かな優しさを抱えたまま建物へと入り。___会議室で顔を合わせたジェイソンは、警察が当然話を聞きに来るだろうとわかっていた様子で狼狽える事も無かった。「まだ詳しい事はお伝え出来ませんが、早急な事件解決に尽力します。」との前置きの後「何点かお伺いしたいのですが、まず…アンドリューさんと最後に会ったのは何時ですか?」と質問を始めて )






5368: アルバート・エバンズ [×]
2026-03-05 16:29:25

 




( ジェイソンは相手の問いに対して『金曜日に会いましたね。商品の仕入れの事で話をしました。』と答えて。「…アンドリューさんとは、経営の方針を巡って揉めていたそうですが、」と早々に切り出すと、『_____まぁ、意見の違いはありました。でも、あいつとは長い付き合いです。口論なんて日常茶飯事ですよ。殺すほどの恨みなんてありません。』と肩を竦めて見せ。少なくとも金曜日までは被害者の生存が確認できており、遺体が見つかったのは日曜の午前。正確には死亡推定時刻の発表を待つ必要はあるが、金曜日の夜から土曜日の夜の間に犯行が行われたという事だろう。彼の答えを手帳に書き記して。 )





 

5369: ベル・ミラー [×]
2026-03-05 16:59:55





( 相手からの鋭い言葉にも特別緊張する様な様子も、狼狽える様子も見せないジェイソンはあくまでも冷静に答えていく。金曜日の夜から土曜日の夜が凡その犯行時刻だとすれば、週末アンドリューがあの湖畔の別荘に行く事を知っている人物ならば誰でも犯行は可能と言う事だ。「…では、アンドリューさんとトラブルになった方について、心当たりはありませんか?何か相談を受けていた、でも。」共同経営者ならば、そう言った類の話を聞いている確率は高いと踏んでの質問を続けて )






5370: アルバート・エバンズ [×]
2026-03-06 00:44:33

 



( 現時点では不確定要素が多いため、話を聞いたそれぞれのアリバイは検視結果が出てから改めて確認する必要がある。相手の問いに対してジェイソンは足を組み替え『_____トラブルって言うなら……まあ、俺だけじゃないですよ。アルバイトのダニエルなんて、毎日のように叱られてた。俺が言うのもなんですけど、あれじゃ誰だって不満は溜まるでしょうね。』と答えて。アウトドア用品店のアルバイトだというダニエルの名前を手帳に書き留めつつ、意外と小さなトラブルの多い人物だった被害者像が明らかになってくる。次の約束があると言うジェイソンから、ダニエルが働いている近くの店舗を聞き、また近く話を聞きに来ると告げて一度建物を後にして車に戻り。 )





 

5371: ベル・ミラー [×]
2026-03-06 01:15:08





__早めに正確な死亡推定時刻が欲しい所だね。…取り敢えずダニエルの所に向かう。
( 車に戻り第一声は、明日以降になるであろう死亡推定時刻の確定を望むもの。妻であるミアのアリバイも、ジェイソンがアンドリューと最後に会った曜日の真偽も、明確にする為には絶対的に必要な情報だ。一度だけ軽い息を吐き出してから車を走らせ数分で到着したお店の扉を開ける。入退出を知らせるベルの音に続いて、いらっしゃいませ、との声を受けながら奥に進み。カウンターに立つ男性店員の胸に【ダニエル】と書かれたネームプレートを確認しては「FBIです。アンドリュー・ベネットさんの件でお話を聞かせて貰えますか?」と、警察手帳片手に声を掛けて )






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