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白む空に燻る紫煙 ---〆/4397


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自分のトピックを作る
4303: ベル・ミラー [×]
2024-06-21 20:30:29





( 相手からの指摘に言い難そうに答えた言葉で更に2人が疑わしくなった。リリーの存在をハンナが知っていたとなればジェイを取られたく無いと犯行に及んだ可能性もあるし、ジェイとハンナの2人が共謀してリリーに危害を加えた可能性もある。勿論ジェイ個人による犯行である可能性も消えた訳じゃない。「…わかりました。ハンナさんの__、」“住所を”そう続けようとした所で、何かが床に落ちる硬い音が響き自然と頭は下がる。一度僅かに跳ねたそれはペンで、相手が普段使用しているFBIの文字が彫り込まれている物。続いて落ちたそれを拾い上げるべく相手が屈み__特別変わった事では無い。日常的に普通にある事なのに何だかわからない違和感を感じた。それは直感的なもので、こういった、相手に関する事での勘は当たりやすいのだ。調子の悪さを振り返したのではと思えば一度だけ隣に視線をやった後に目前のジェイを真っ直ぐに見詰め「…ハンナさんの住所を教えて下さい。彼女が事件と無関係かどうかは私達が直接話を聞いて確かめます。」真剣な、けれどもやや早口な言葉で以て拒否は認めないとばかりに。少しでも早く車に戻るべきだと思っていて )






4304: アルバート・エバンズ [×]
2024-06-22 12:02:41

 






( 今日はあのマグカップを使っては居なかったのだが、既に摂取して体内に溜まっている毒が恒常的に身体に影響を引き起こしつつあるのだろう。立っていられないほどの目眩ではなかったが、少し気分が悪く視界が揺らぐ。メモ帳に書いた文字は普段よりもガタついていて、同時に少しばかり視界が霞むようで手元が見辛かった。相手の言葉にジェイは曖昧な表情を浮かべ『…でもハンナは関係ないので……』と、尚も煮え切らない態度で言葉を濁したものの、相手からの圧に観念したようでハンナの住所を伝えた。「リリーさんの両親に結婚の挨拶に行って、どうするつもりだったんですか?彼女は自分が浮気相手だなんて思いもしなかったんでしょう。」そう尋ねると、ジェイは“どうするか決められなかったから体調が悪いと言って挨拶を先延ばしにしようとした”と言った。そんな状況まで行きながら、リリーともハンナとも別れる決断が出来なかったと言うなら救いようがない。_____二股をしていたジェイ、そんな彼と長年付き合い浮気の事実を知ったハンナ、ジェイと結婚すると親に挨拶に行こうとしていたリリー_____この三角関係だけでもややこしいというのに、まだ他にも事件との関与を拭いきれない人物たちがいる上、被害者の遺体も、居場所を示す情報も出ていない。調べなければならない事も、やらなければいけないことも未だ山積みだというのに体調が優れない。その場で座り込む事にこそならなかったものの、車に戻る頃には背中に酷く汗をかいていて。 )







 

4305: ベル・ミラー [×]
2024-06-22 15:27:06





( 濁された言葉の後、渋々__と言った様子ながら告げられたハンナの住所をメモに書き留め鞄に仕舞ってから再び視線を向ける。相手の鋭い問い掛けに全く以て救いようの欠片も無い返事をしたジェイを見詰める瞳に嫌悪が滲むも、今は一先ず車に戻る事が先決。__助手席に雪崩る様に座り込んだ相手は矢張りあのペンの落下の時から相当無理をしていたのだろう、気分が悪いであろう事は明白で。「ちょっとゴメンね、」手を伸ばして相手のシャツの第一ボタンを外し、ネクタイを緩める事で少しでも息苦しさを払拭しようと試みた後エンジンを掛け。「なるべくゆっくり走るから。…ハンナさんの家に着いたら少しだけ休もう。」そう声を掛けてから車を走らせたそのスピードは言葉通り揺れを最小限にした速度。窓の外から照り付ける日差しもまた気分の悪さを助長させるかと思えば少し窓を開ける事で車内に風を送り。__そうやって進む事凡そ15分後、ジェイに教えられた通りの家に辿り着くと、車がある事を確認した後に路肩に車を停めハザードを点け。「…ハンナさんに話を聞いて来るから、少し待ってて。__終わったらまた署で供述の照らし合わせを一緒に。」少し温くなってしまっているかもしれないが新品のミネラルウォーターを差し出しつつ、穏やかな笑みと共に暗に相手は此処で休んでいて欲しいと。けれども“何も出来ない”と気に病む事が無い様に、最後一緒にやりたい仕事を付け加えてから車を降りて、ハンナが住む家の呼び鈴を押し出て来るのを待って )






4306: アルバート・エバンズ [×]
2024-06-22 17:50:18

 





( 首元を緩められると相手の言葉に軽く頷き、背もたれを倒す。フラッシュバックによる過呼吸ではない、けれど息苦しさから自然と呼吸が上擦ってしまい身体が酷く重たいのだ。また捜査が相手に任せきりになってしまうという罪悪感は、署に戻ってからの仕事に相手が言及してくれたことによってだいぶ薄れ、「…聞き取りを頼む、」とハンナへの聴取を相手に任せると車に残る事を選び。---インターホンが鳴った事で出て来たハンナは、長髪のブロンドで大人びた、被害者の雰囲気とはまた違った女性だった。相手が手帳を見せた事で警察だと理解はしたものの、何故自分の所に訪れたのかはすぐには思い当たらなかったようで『…何の捜査なの?』と不審そうに尋ねて。 )






 

4307: ベル・ミラー [×]
2024-06-22 19:20:44





( 扉の奥から出て来た女性__ハンナは、写真で見たリリーと比べてやや派手に感じた。それは決して悪い意味では無いものの、異なる2人の雰囲気に果たしてジェイは何方の見た目が好みだったのかと考える。警察手帳を見せた後に紡がれた問いは誤魔化している感じも知らない振りをしている感じも無く、本当に何の用事かわからない、と言った様子なものだから「リリー・ブラントさん失踪の件です。」と、質問に答えつつ話を聞かせて欲しい旨を伝え。不信感はあれど中に通されればソファに腰掛け、さて、内容の核心に迫ろうか。「…リリーさんが失踪した日、貴女は何処に居ましたか?」先ずは彼女のアリバイの確認から徐々に、と。__通されたリビングは窓が大きく開放感の感じられる明るい部屋。ソファに腰掛け少し横を見れば丁度窓の外には路肩に停めた己の車が見える位置で、一度だけ視線を向けて )






4308: アルバート・エバンズ [×]
2024-06-22 22:08:16

 





( ハンナは相手の口からリリーの名前が出ると眉を顰め『あぁ、あの子の事。』と告げると『色んな男をたぶらかしてたんでしょ?何か事件に巻き込まれても可笑しくないわ、恨みを買ったんじゃない?』と、刺々しく言い。『二股されてた私も容疑者って事ね。本当、災難続きだわ。その日なら…家にいた。ジェイは友達と飲みに行ってそのまま泊まるって言ってたから週末は1人だったの。アリバイなら無いわ、野球の中継を見てたけど証言できる人はいないもの。』ハンナはその日、家で1人だったと答えた。しかしジェイはその日リリーと会っていたのだから、彼女に二股がバレて尚、懲りずに関係を続けていた事になる。---ベルが事件の聞き込みを続け、エバンズが車で身体を休めている頃、署では再び書類を持った男がエバンズの部屋に訪れていた。そろそろ身体に不調が出る程には毒を摂取させる事に成功している筈だ。怪しむ事もなく変わらずデスクに置かれているマグカップに内心ほくそ笑みつつ、彼が異変に気づき病院に罹るよりも前に多量の毒を盛ろうと画策する。はやる気持ちを抑えて、今はまだ縁に塗りつけ密かに苦しませるのみだと。 )







 

4309: ベル・ミラー [×]
2024-06-22 22:48:17





( 目前の彼女は未だ発見には至らないリリーを心配するでも無く刺々しい言葉を吐き捨てた。二股されていたのだから勿論怒りはあると思うが、隠す事の無いその態度は寧ろ清々しいとも言うべきか。何にせよアリバイの立証が出来ない以上被疑者の枠から外す事は出来ず、現時点でアリバイのあるジェイに比べ最も事件に関与してる可能性が高い事になる。手帳に証言を書き留めた最後、静かに顔を上げ彼女を見据えると「二股の件でジェイさんと話し合いは?」と、問う。続けて「__貴女は自分の方が本命だと思いますか?」と。全くタイプの違う様に感じられる2人の女性の何方とも選ぶ事が出来ず、中途半端に互いと付き合って居たとなればその行動も、心情も、全く理解が出来ない。__署内で今も尚、エバンズを苦しめるべく毒を使用し続けている男の存在など知る由も無いままに目前のハンナに質問を重ねる時間が続き )






4310: アルバート・エバンズ [×]
2024-06-23 00:00:05

 






( ハンナは相手の問い掛けに『話し合うも何も、10も年下の女にうつつを抜かすなら別れるって言ったわ。向こうは学生でしょ?信じられない。』と吐き捨てて。『____失礼ね、私の方が遊びだったとでも言いたいの?ジェイとは学生の頃からの知り合いで、付き合って5年になるのよ。向こうが遊びに決まってるでしょ、』ハンナは苛立った様子を見せ『貴方も彼氏が居るなら気をつけた方が良いわよ、残業だとか友達との飲みだとか言って女遊びしてる奴なんて山ほどいるんだから。』と続けて。---車内にいるエバンズの元に連絡が入ったのは、その少し後の事だった。隣町の警察署から、女性の遺体が見つかったという通報。身体的特徴からリリー・ブラントである可能性が高かった。体調は未だ回復していなかったものの、直ぐに現場に急行する必要があった。ハンナの家にいる相手に電話をかけると「____ミラー、切り上げて戻って来い。隣町で被害者と思われる遺体が見つかった、」と告げ、ハンナの家の窓越しに相手に合図をする。相変わらず視界は嫌な歪み方をしていて、じっとりと汗をかいている。しっかりしろと自分に言い聞かせつつカーナビに通報があった現場の住所を設定し。 )







 

4311: ベル・ミラー [×]
2024-06-23 01:04:32





( リリーは勿論の事、ハンナの事も遊びでは無いと答えたジェイの言葉を思いだす。何方も遊びでは無く本気だったものの、ハンナに二股がバレた事で“別れる”と真っ向から突き付けられた時彼は果たしてどんな気持ちになり、どう行動するべきだと思ったのか。__リリーの両親に結婚の挨拶をする事を、体調不良を理由に先延ばしにしようとしたそれこそがある意味“答え”ではないのか。そう言えばハンナに飲みに行くと言ったジェイは、その日リリーと会っていたのだから結果的に嘘をついたのだと気が付き、彼女の苛立った言葉を聞きながら3人の関係性について考えを巡らせる。その時、ふいにスーツのポケットに入れたスマートフォンが震え相手からの着信を知らせた。失礼します、そう断りを入れてから通話ボタンを押し視線を窓の外に向ければ、果たして此方に合図を送る相手の姿と__電話口から聞こえる最も最悪な知らせ。嗚呼、生きている姿のリリーと対面する事は出来ないのだと、胸に落ちた重たい苦しさに思わずきつく双眸を閉じた後、軽く頷き電話を切り、再びハンナを見。「__話の途中ですが、事件に進展がありましたので失礼します。…ご忠告どうも。」話を切り上げ立ち上がり、尚も不機嫌そうな彼女に軽く頭を下げてから車に戻るや否や、「間違いであればいいのに。」と、一言だけ言葉にし、相手が設定したナビの案内通りに遺体が発見された現場へと急行して )






4312: アルバート・エバンズ [×]
2024-06-23 01:45:45

 





( 失踪した彼女が生きている一縷の可能性は崩れ去り、事件は紛れもない殺人事件となった。相手の言葉に小さく頷き同意を示しつつも、被害者である可能性は限りなく高いことは理解していた。---現場は山を少し入った所にある川で、車を停められる場所から少し歩く必要があった。それと言って傾斜が急な訳ではないものの、草木の中を歩いて行くのは身体に堪え表情は少しばかり険しいものに。やがて道が開けて現れたのは岩も多くある程度の幅と深さがある川で、既に規制線が張られていた。『お疲れ様です。』声を掛けてきた警官は此方に敬礼すると、ブルーシートで囲われた場所まで移動する。『第一発見者は川釣りに来ていた男性です。被害者は岩陰で故意に川底に沈められていました。身体にナイロンテープが巻き付けられ、ボートを停める時に使用するアンカーで底に固定されていました。遺体の発見を遅らせようとしたものと見られます。』位置関係や発見時の状況を説明されて分かる事は、19歳の少女に対する明らかな殺意と用意周到な隠蔽工作。やるせない気持ちを抱えたまま「…分かった。直ぐに検死に回してくれ、出来る限り早く情報が欲しい。」と告げて。照りつける太陽が川の水面に反射し酷く眩しい。眩しさに引っ張られるように平衡感覚が分からなくなる感覚から既の所でバランスを取り戻し。 )








 

4313: ベル・ミラー [×]
2024-06-23 10:49:04





( 遺体発見現場まで歩くのに苦労する程酷い道のりでは無いものの“今の”相手の体力を奪う事は間違い無いと思われた。けれど相手は足を止める事もせず、表情こそ険しいが気丈に立ち続けるのならば今は口煩く言葉を並べる事はしない。__規制線の向こうでは既に鑑識数名が慌ただしく動き現場は重苦しい雰囲気。それを更に加速させたのは発見された遺体の状態で、“殺す気は無かった”なんて犯人が使うお決まりの言葉すら陳腐な嘘に思える程に明らかな殺意と用意周到さ。相手からの命令に頷いた警官は直ぐにその場を離れていき。__柔らかな風が吹き抜け、川のせせらぎや鳥の声が静かに響くこの場所はきっと“こういう事の為”に使われる場所じゃない筈なのに。既に遺体の状態で運ばれて来たのでは無く、もしこの場所で殺害されたのだとしたら、リリーは生きている間どんな気持ちだっただろうか。照り付ける太陽の陽射しの強さと比例する様に、心が被害者の気持ちに傾く。__と、相手の表情が一瞬険しさを強め、僅かに身体が傾いた気がして空を見上げる。空に浮かぶ太陽を覆い隠す雲は一つも無く場所的には悪い。「__エバンズさん此方、」頭を戻し隣に立つ相手に声を掛けつつ、一度だけ軽く腕を引き呼んだのは、木々が生い茂り陽射しを遮断してくれる森との境目。そこで徐にしゃがみ込むと「…足跡とか、他に何か見落としてる証拠があるかもしれない。…情報が来るまで一緒に。」その状態で相手を見上げ小さく微笑み。“これ”が今の最前の判断だと思っての事で )






4314: アルバート・エバンズ [×]
2024-06-23 11:29:50

 






( 検死の結果が出るのは早くとも明日、死後時間が経っている可能性が高いため明後日、明々後日になる可能性も十分あった。その間に出来る事は現場に残された物を調べる事。不意に相手に手を引かれ向かった先は日陰になっているエリア。しゃがみ込んでいても不自然に思われないようにという配慮だろう、体調がぎりぎりの状態の今はそれだけでもありがたく小さく頷いて。足元は数日前の雨によって少しぬかるんでいる場所もあり、足跡が残っているとは考えにくかった。此処まで車で入ってくる事はできないためタイヤ痕は残っていない。少しすると警官が戻って来て、『検死の手配が出来ました。遺体の状態が良くないので、少し時間が掛かるだろうとの事です。現場に残っていた物は、此方の作業が終わり次第直ぐにレイクウッド署に届けます。』と告げて。検死に時間が掛かるのは遺体発見が遅れた自分たちのせいでもあるため責める事は当然できない。それでも捜査は進展を見せるだろうと、「ご苦労。また何か気になる事があれば携帯に電話をくれ。」と答えて立ち上がり。供述を照らし合わせ、現場に残された証拠品を調べ、検死結果を待つ。今出来る事はそれくらいだと思えば、相手に署に戻る事を促して。 )








 

4315: ベル・ミラー [×]
2024-06-23 12:16:29





( 地面と近くなった事で湿った土と葉の混じる匂いが鼻腔を刺激するがそこに証拠と呼べる物はありそうに無く、ややして小走りで戻って来た警官より検死の手配が出来たとの旨を告げられれば相手と同じく立ち上がり軽く頭を下げる。リリーの両親に彼女の遺体が発見された事を告げなければならないのは酷く気が重かった。__相手に促されるまま来た道を戻り、車に乗り込んで背凭れに後頭部を当て深く息を吐き出す。シートベルトを締めてエンジンを掛け、運転席側と助手席側の窓を少し開けた所で漸く口を開くと「…戻ります。」とだけ一言。__窓の外から入って来る風の香りに“緑”が混じらなくなった頃、景色はレイクウッドの見慣れた街並みに戻っていて、署の近くにあるスーパーマーケットと公園を通り過ぎ、到着した時には夕方近くになっていた。共に刑事課のフロアの扉を潜ればそこに残っていた署員達から労いの言葉を掛けられ、軽く微笑む事で返事とし。相手専用の執務室に入ってソファに鞄を置いた所で肩から力が抜ける。特別な緊張していた訳では無いが矢張り気は張るもので、「紅茶淹れるけどそれでいい?」と、確認を投げ掛けて )






4316: アルバート・エバンズ [×]
2024-06-23 13:28:45

 






( 執務室に戻りデスクに腰を下ろすと深く息を吐く。体調が良くない中で外に出るのはやはり疲れが溜まるもので。紅茶を淹れるという相手に「…あぁ、同じものを頼む。」と頷いてマグカップを手渡して。デスクの上には総務からの書類が置かれていて、それに目を通しつつ必要なサインを済ませて。容疑者は未だ4人から絞り込めていない状況で悠長に構えてはいられない。取り寄せていたマーティンの前科に関する資料に目を通し。 )








 

4317: ベル・ミラー [×]
2024-06-23 14:31:38





( 差し出されたマグカップを受け取り給湯室でお湯を沸かす。アールグレイの茶葉のティーバッグで紅茶を淹れ、出来上がった紅に少しの砂糖とミルクを入れたのは少しでもまろやかに喉を通る様にと言うそれ。二つのマグカップから優しく香る紅茶の匂いは鼻腔を通り胸に落ちる。一度大きく息を吸い込み、今日は長丁場になりそうな予感に気を引き締め直し執務室へと戻れば「お待たせしました。…どんな感じ?」相手のマグカップを手渡しつつ、マーティンの前科の有無が書かれている資料を覗き込み。__今はまだ気が付く事が出来ないで居た。飲み物を淹れると言う何時も通りのその行為が、相手を少しでも休ませられる様にと願うその気持ちが、逆に相手の調子の悪さをより一層酷いものにさせていると言う事に )






4318: アルバート・エバンズ [×]
2024-06-23 19:22:18

 






( 礼を言って受け取ったマグカップに口を付け、まろやかなミルクティーをひと口飲む。相手の気遣い通り飲みやすいそれは仕事の合間の息抜きにぴったりなのだが、実際は身体を蝕む毒を更に取り込んでいる事に他ならない。しかし無味無臭のそれに気付く事など、ここ最近の不調から毒を盛られている可能性に行き着く事など、不可能に等しい。手元の資料を覗き込んだ相手に「マーティンが逮捕された過去はないが、幾つか警察から厳重注意を受けている事案がある。どれも女性への付き纏いやストーカーまがいの行動によるもので、全員何かしらの店で働いている従業員だな。リリーの前は薬局の店員、その前はカフェのスタッフ。警察が介入してからは徐々に大人しくなって、別の店の女性に入れ込む、といった具合か。」と告げて。自分が足を運ぶことのできる店で気に入った女性店員に付き纏うといった迷惑行為を繰り返していたようだと。 )







 

4319: ベル・ミラー [×]
2024-06-23 20:09:37





( 厳重注意は幾度となくされたが逮捕までは至らない、どうせ“これくらい”じゃ警察は逮捕に踏み切れないだろうと調子に乗り迷惑行為を繰り返していた可能性が高いか。茶葉香るまろやかな濁りを一口胃に落とし、相手の僅か後ろで立ったまま資料の下まで目を通して。「__もし犯人がマーティンだった場合、迷惑行為を通報しなかった事をジェイはずっと引き摺るかな、」仮に警察に通報していたとして、危害を加えられて無い以上踏み込んだ対処は出来なかったかもしれないが。気持ちが僅かに別の誰かの心へと向いたそれを、今は捜査に集中しなければと言う思いで引き戻し紅茶をもう一口啜る。それからマグカップを相手のデスクに置きソファに腰掛けたタイミングで手帳を開き。「…検死結果が出ないと何とも言えないけど、ハンナ個人による犯行は難しいんじゃないかな。…別の場所で殺害したとしたも、女性の力であそこまで遺体を運ぶ事は出来ないだろうし、仮に生きてるリリーを車に乗せて2人きりで山までなんて、……面識の無い人に着いて行く?」ページをゆっくり捲りメモした供述を見直しながら、考えを巡らせ、最後、緩く首を傾け相手を見 )






4320: アルバート・エバンズ [×]
2024-06-24 02:46:06

 






( 事件が起きると誰もが過去の一瞬、自分の選択を後悔する。「…そういうものだ。後悔しても過去は変わらない、」とだけ答えて。続いた相手の考察には同意を示すように頷くと「…そうだな、ハンナの単独犯という事は考えづらい。彼女が事件に関わっているなら、誰かしら共犯者がいたと考えるのが普通だろう。被疑者は揃いも揃って4人ともアリバイがない、ただリリーを巡る三角関係と考えると、ジョンだけ毛色が違うな。」と資料を眺めながら口にして。---マグカップに仕込まれた毒薬が効果を示すのは早くなっていた。既に体内にある毒と反応する所為だろうか。汗が浮かび、胸の苦しさを自覚するようになる頃には、資料の文字を追えない程に視界の歪みが酷くなっていて。 )








 

4321: ベル・ミラー [×]
2024-06-24 08:09:59





( “後悔しても過去は変わらない”それは誰より一番相手自身が感じている事か。それ以上何も言う事無く頷くだけに留めると、手を伸ばしデスク上のマグカップを引き寄せ中身を啜り。「…ハンナの共犯者として上げるならジェイが妥当かなって思うけど、…まだ名前の上がって無い友人とかの可能性も拭い切れないし。」今いる容疑者の中でハンナの手助けをするなら1人しか居ないとは思うがそれも憶測。続く相手の言葉に「確かに、」と頷いては「誰も彼も動機があるのも厄介。」と溜め息を吐き出してからマグカップを再びデスクに置き。__互いに供述を照らし合わせ考察を口にしていた時間は凡そ20分。顔を上げた先に居る相手の額に汗が滲み、苦しげに寄せられた眉を見て体調の悪さを感じ取ればソファから立ち上がり駆け寄る。椅子から落ちてしまわぬ様に背中に添えた掌を僅かに押して、相手を前屈みの体勢にする事でデスクとの位置を近付け「待って、今薬出すから!」外には漏れぬ様、けれどやや切羽詰まった声色でそう声を掛け相手の鞄の中から目眩薬を取り出しそれを二錠掌に。近くに水は無く、相手を置いて取りに行くのは適切では無いと判断すると、良くない事ではあるものの温くなった紅茶で流し込む事を選択し「…飲める?」顔を覗き込み、今の状態で飲む事が出来るかの確認と共に軽く背中を擦って )






4322: アルバート・エバンズ [×]
2024-06-24 13:17:37

 







( 被疑者として上がっているリリーに好意があった周辺の男たちに、ハンナが殺害を依頼した____というのは、あまりにこじつけが過ぎるか。そもそも自ら嫉妬に狂いリリーを殺害する事こそあれど、見知らぬ女からの依頼で好意のあった女性を殺害するというのは無理がありそうだ。穿った見方をすればマーティンとならあり得るか。「…ジェイからマーティンの存在を聞いていて、リリーに対する嫉妬や憎しみを煽って殺害させた…というのは無理があるか、」思いつく繋がりを口にしたものの、いまいちピンと来ず首を捻り。---また原因の分からない、耐えようのない身体の不調に襲われ、デスクで顔を覆う。促されるまま何とか錠剤を飲み込んだものの「…喉が痛い、…」と苦しげな声が盛れ。何度も経口で毒を摂取している事で喉にも炎症が起き始めている様子。身体を起こしている事が辛いのだが、此処で横になる訳にも行かない。_____不意に扉がノックされ、扉が開き顔を覗かせたのは総務部の男。幸い外の刑事課の署員たちは異変に気付いた様子はない。部屋の中の様子に『す、すみません…書類をお渡ししようと…』と驚いたように告げたものの、エバンズの様子が明らかに可笑しい事は見れば分かる。この様子ではもう一押しで彼を殺害できると内心思いながら、表面上では慌てたふりをして『書類は置いておきます、』と告げて。 )







 

4323: ベル・ミラー [×]
2024-06-24 16:12:33





( やっとの思いで錠剤を飲み込んだその様子だけを切り取れば安堵出来るのだが問題はその薬が効く迄に時間が掛かると言う事だ。胃に落ちたそれが溶けて体調を回復させるに至る迄、相手はこの原因不明の不調に耐え続けなければならない。掠れた苦しげな声で訴えられた初めて聞く症状に視線は相手の喉元へ落ち。目眩や頭痛に加えて喉の痛み、薬の飲み過ぎかとも思うが、それならばほぼ毎日の様に安定剤を飲んでいる時に同じ症状が出ても可笑しくは無い筈だし、そもそも錠剤を服用して喉の痛みが出るなど聞いた事が無い。相手は続く不調を過去の事件で起きる発作的なそれでは無いと言い切ったのだから、そこに繋がりは無いだろう。だとしたら一体何だと言うのだ。パニックを起こしている訳では無いのだから落ち着かせてどうにかなる状態でも無く、どうしたら良いのかもわからないこの状況が酷く怖くて思わず吐き出した息が震え。だが兎に角何かはしなければ駄目だと。一先ず訴えられた症状を少しでも軽減出来る可能性としてコーヒーや紅茶では無く、矢張り水で喉を潤した方が良いのではと思えば「っ、待ってて、今水を__、!」と、背中から手を離し。扉をノックする音が聞こえたのは正にその時。不味い、と反射的に腕は扉に伸びるのだがそれよりも早く無情にも開いてしまったそこに居たのは以前もこの場所で顔を合わせた総務部の男性。彼だから良いとか悪いとかの話では無く、そもそもこの状態の相手を見られたのが不味い。当然彼も慌てた様子なものだから「ありがとうございます、」と、表面上何事も無くその書類を受け取るが全く誤魔化せていない事は明白で、変に言い訳をしても、誰にも言うなと釘をさしても更に可笑しな状況を産むだけだと思えば何も言える筈も無く、「…なるべく早く目を通してサインするよう伝えます。」結果的にそんな事務的な言葉で彼が居なくなるのを待つしかなくて )






4324: アルバート・エバンズ [×]
2024-06-24 19:45:18

 






( ノックの音がして、この状態を見られてはならないと思いはするのだが、既に平静を装える状態ではなかった。酷い息苦しさと視界の歪み、普段であればなるべく避けたい場所である病院に行ってでも楽になりたいとさえ思う程に苦しく、原因に一切の身に覚えがないのだ。---相手とのやり取りの中で男は『いえ、急がないので…』とだけ気を遣ったように答え、相手の後ろのエバンズに視線を向けたものの言及すべきではないだろうと『失礼しました。』と頭を下げて出て行き。さすがにここまで状態が悪くなれば異変に気付くだろう、長く引き延ばす訳には行かなそうだと明日この地道に重ねてきた作戦を終わらせる事を決め。---酷い症状が少しずつ落ち着くまでには、およそ1時間弱掛かった。相手が部屋にいて、自分の姿を隠すような配置で座ってくれた事で捜査の会議をしているのだろうと室内にまで入って来る者はいなかった。浅い呼吸を繰り返し、ようやく視界が正常な状態に戻り始めるもワイシャツは濡れて気持ちが悪い。「______被疑者逮捕の見通しが立ったら、病院に行く、…」自らそう告げる程に、身体はきつい状態だった。 )







 

4325: ベル・ミラー [×]
2024-06-24 20:28:35





( “何も言うな、早く出て行け”と__自分自身では気が付かないが男を見る瞳にはもしかしたらそんなある種の敵意にも似た色が宿っていたかもしれない。部屋を出る最後の最後迄エバンズを気に掛ける様な素振りこそ見せたが、結局男は小さく頭を下げるだけに留めた。男から受け取った書類をデスクの上に雑に放り、再び相手が調子を回復させる迄の間は物凄く長い時間の様に感じられた。デスクに身体を預ける様な前のめりの体勢で、正常とは程遠い呼吸を繰り返していた相手は、やがて酷く脱力した様子ながらその身体を起こし、例えどんな状況でも開口一番必ず拒否する様な病院へ自ら行くと。それ程迄に原因不明の調子の悪さが限界に達しつつあるのだろうと思えば思わず奥歯をキツく噛み締め「…うん、…絶対に。」と、頷く事しか出来ない。__刑事課の署員達はどうやらこの部屋で捜査会議をしていると思っている様で、それならば好都合。ブラインドをもう僅か閉め殆ど中の様子が見えない様にした所で別に怪しまれる事も無いだろうと。相手の浅い息遣いが酷く大きく聞こえる部屋の中、自身の鞄の中から取り出したのは、見張りの為車で一夜を過ごす事になったとしても問題無い様にと常に持ち歩いているソープの香りがする“汗拭きシート”。それを一枚取り出し「…失礼します。」と、突然触れられる事に驚きや嫌悪が無い様声を掛け、相手の首元を伝う汗を拭い。それからもう一枚を引き抜き__理由があるとは言え流石に“この場所”でこれ以上手を入れる事は出来ないと、シートを相手に握らせ。「検死結果が出ない以上出来る事は限られる。その出来る事は、“今日は”もう終わりでいいよね?」投げ掛けたのは確認の言葉ではあるものの、実際は“NO”の返事は聞くつもりが無かった。「少し休んだら帰ろう。」と真っ直ぐに見据え何がなんでも連れ帰る意志を前面に、後は相手の呼吸が整う迄の間、背中側のシャツを緩く掴み少しでも気持ちの悪さを軽減出来る様にと扇いで )






4326: アルバート・エバンズ [×]
2024-06-26 03:32:49

 






( 不調を感じるようになってから、日が経つにつれて症状は徐々に酷くなっていた。症状に気付いてから悪化するまでの時間がかなり短くなっている事、そして幾らか症状が落ち着いた後にも倦怠感や気分の悪さと言った不調が拭いきれないものになっている。首元にひんやりとした感覚があり、じっとりとした汗の不快さが少しばかり軽減された。手渡されたシートで、緩んだ首元から鎖骨あたりまで、そしてワイシャツの裾あたりから背中の一部を拭って。相手の言う通り検死結果や現場に残された証拠品が上がってこない事には喫緊でやらなければならない事はない。相手の問い掛けに対して“NO”と答えることはなく、軽く頷くと深く息を吐き出して。「……犯人は必ず捕まえる、」そう呟くように言葉にしたのは、最後まで捜査に邁進するという相手に対する宣誓か、或いは自分自身を奮い立たせ言い聞かせるものか。 )







 

4327: ベル・ミラー [×]
2024-06-26 07:23:16





( 自らの意思で病院を望む程に調子が悪くとも、相手は折れない。まるで誓の様な、自分自身に対する言い聞かせの様な音で落とされた言葉に、ただ大きく一度だけ頷いて。__それから凡そ一時間、倦怠感こそあれどある程度落ち着いた様子の相手の顔を覗き込み表情を確認しては、「…帰れそう?」と問い掛けて。今回の様にいきなり体調不良を振り返し今度は倒れてしまっても可笑しくは無いし、身体の調子の悪さと悪夢を見る事によって心の不安定さが同時に訪れるかもしれない。音として伝えてはいないものの、少しでも近くに居たい気持ちのだと、今夜は相手の家に泊まらせてもらおうと考えていて )






4328: アルバート・エバンズ [×]
2024-06-26 22:45:20

 





( 相手の問い掛けに帰れると頷けば、デスクを軽く整えて立ち上がる。立ち眩みこそあったものの、再び座り込んでしまうほどではなく鞄を手にすると相手と共に駐車場へと向かい。送ってくれるという相手の車の助手席に座り、ほんの数分微睡んだものの程なく家に着き。相手がエンジンを切った事で、家に来るつもりなのだろうと思うもその事に何か言うことはしなかった。「…家にあるものは好きに食べてくれ。帰る時に鍵はポストにでも入れておいてくれれば良い。」部屋に入りジャケットを脱ぎながら相手にそう告げると、そのまま寝室に向かいベッドに体を横たえて。 )







 

4329: ベル・ミラー [×]
2024-06-26 23:45:51





( __家に着き、部屋に入って早々に寝室へと消え行く背中を見送る。酷い倦怠感と尚万全に回復した訳では無い調子の悪さを引き摺っているのだろう、今は何よりも休息が必要な様に思えた。好きな様に、と言われた通りにキッチンの戸棚を開けてそこにあったパンを一枚だけ貰いミルクで胃に流し込む。何方かと言えば夜ご飯より朝ご飯的な感じではあるし、量だって少ないのだが余りお腹の空いてない今の状態ではこれくらいが丁度良かった。それから数時間、相手の不調の事やリリー殺害の事件について、何か見逃しや不審な点は無いかと考えを巡らせて。__相手は帰る時に鍵をポストに、と言ったのだが、そもそも今日帰宅する気は無い。痛重たく感じられる皺眉筋を解す様に人差し指の第二関節でグリグリと押し込む様なマッサージの後、静かに立ち上がり相手を起こさぬ様に寝室の扉を開け。暗がりでもわかるシーツの膨らみは、そこに相手がいる事の証明。忍び足で近付きベッドの脇にしゃがみ込む体勢で眠る様子を見詰め、願うのは一日でも早く原因不明の調子の悪さが治まる事。声を掛けるでも無く、けれど再びリビングに戻る訳でも無く、気が付けば瞼は重たく下がり、やがてそのまま座り込む様にして何時しか浅い眠りに落ちていて )






4330: アルバート・エバンズ [×]
2024-06-27 13:26:14

 






( 目眩への対処として応急的に飲んでいる薬は、不調の根本的な解決にはならないものの症状を緩和してくれた。身体に重怠さは残っているものの、身体を横たえると直ぐに眠りに落ちていて。---寝苦しさが助長したのか、その夜見た悪夢は鮮明なものだった。自分が見殺しにしてきた多くの罪なき人たちが、虚で暗い瞳を自分にむけている。そしてその内の1人が____夢とは気まぐれなもので、何故かそれはかつてクラークに見せられた彼の弟ルーカスの姿形をしていたが_____こちらに手を伸ばし、首を掴むのだ。ありったけの力で、自分たちを見殺しにしたお前も地獄に落ちるべきだと。---息が詰まるようなその苦しさと憎しみの籠った瞳に意識は覚醒し、苦しげに喘ぐような声が漏れる。喉が痛い、それに加えて呼吸は狂っていて呼吸の仕方を忘れてしまったかのように肩が上下するばかり。「_____っ、は…ッあ゛、」懸命に酸素を取り入れようとするものの、悪夢によって引き起こされたパニックがそれを阻み。 )







 

4331: ベル・ミラー [×]
2024-06-27 17:01:07





( 床に座り込み頭を垂れる様な体勢で眠り続けていたのは最初。やがてその身体は前のめりになりそのままベッドの縁に頭を預ける様な体勢へと変わり、けれども覚醒はする事無く静かに寝息をたてるだけ。__時計の針が0時を過ぎた頃、間近で喉の奥で息が引っ掛かった様な苦しげな声が聞こえ瞼が持ち上がる。寝起きの鼓膜を震わせたのは酸素を懸命に取り込もうとする狂った呼吸音で、体調の悪化によるものでは無く、悪夢を見た事によるパニック発作だと思えば立ち上がりベッドの縁に腰掛けた状態で相手の背中に掌を宛てがい。「…エバンズさん、」小さく、穏やかに、その名前を呼び掌を上下に動かす事で背中を擦りながらほんの僅かでも呼吸が楽になるようにと。それは何時ものやり方。けれど、今回相手の見ている悪夢にルーカスが関係しているなどとは思いもせずに )






4332: アルバート・エバンズ [×]
2024-07-03 22:03:25

 






( 毒による身体の不調が影響を来たし、結果的に辛い夜になった。喉の痛みが夢にも直結したのだろう。脳裏にこびりついた嫌な記憶を消し去ろうとしつつ喘ぐような呼吸と共に背中が上下して。自分が見た夢のような出来事は今も、そして過去にも起きていない。震える手でシーツを握り締めながら浅い呼吸を繰り返し、思わずベッドの上に置かれた相手の手を握り締めることで今に意識を押し留めようとして。 )







 

4333: ベル・ミラー [×]
2024-07-03 22:55:25





( 苦しみに喘ぐ相手のその痛みを少しでも早く消し去ろうと上下する背中を擦り続ける中、ふいに伸ばされた相手の手が己の手を握り締めると自然と視線はそこに落ち。咄嗟のその行動は考えるよりも先に身体が動いたのだろう、苦しくて、怖くて、近くにあるものに縋りたい時、はたまた“今”に意識を繋ぎ止めておく手段か。「__大丈夫、エバンズさんはちゃんと此処に居る。怖い事は何も無いんだよ。」相手の手ごと握り締められてる己の手をゆっくりと持ち上げ、自らの頬に相手の手の甲を押し付ける。そのまま何度も、何度も、まるで頬から伝わる温もりを相手に流れ込ませるかのように繰り返し動かしながら、一言一言を確りと伝わるように、相手がちゃんと戻って来れるように、言葉を伝えていき )






4334: アルバート・エバンズ [×]
2024-07-03 23:35:31

 






( 脳裏に焼き付いたままだった鮮明なまでの赤が徐々に色褪せ、苦しさの波が引くのにはかなりの時間を要した。それでも相手の手の温度と背中を摩る優しい感触に導かれ、恐怖心も薄らいで。あと少し、犯人逮捕に漕ぎ着けるまではしっかりと立っていなければならない。呼吸を意識的にゆっくりと整えながら、力が篭っていた手から少し力が抜ける。悪かった、と小さく囁くように告げた言葉。まだ起きるには早い時間、捜査に備えてもう少し休もうと無意識ながら相手が休めるようにベッドの半分を空けて。 )






 

4335: ベル・ミラー [×]
2024-07-04 00:08:00





( 相手からの謝罪には首を横に振る事で何も気にしていない事を伝える。例え夜中であれ、早朝であれ、何度目を覚ます事になったとしてもそれを僅かも迷惑だと感じた事などこれまでたったの一度だって無い。恐らく無意識なのだろう、己を気遣う様にして空けられたスペースに静かに横になり此方に背を向ける相手を見詰めれば、一拍程の間の後に「…エバンズさん、此方向いて。」と。相手が寝返りを打つ様に己の要望を叶えてくれたのならば、今度は苦しくない程度にその頭を抱き竦め、自身の胸元に軽く引き寄せる様にハグをしつつ目を閉じて )






4336: アルバート・エバンズ [×]
2024-07-04 03:50:17

 






( 相手に抱き締められ、その心音を聴きながら温もりに包まれる事で心の内に広がっていた恐怖や不安といった負の感情が少しずつ薄れていくのを感じた。そうして気付けば眠りに落ちていて、悪夢で再び呼吸を乱す事もないまま朝を迎えて。---身体には重怠さが残っていて、出来る事ならこのまま休んでいたいと思うような調子の悪さはこびりついて離れない。しかし漸く遺体が発見された局面、きちんと捜査を行い犯人逮捕に向けて動かなければならない。ソファで相手が淹れてくれたコーヒーを一気に煽るようにして気合いを入れると、署へと出勤して。 )






 

4337: ベル・ミラー [×]
2024-07-04 07:50:54





( __相手の調子は朝を迎えても悪そうではあったが、捜査が終わってない以上仕事には行かねばならない。署では検死結果が出る迄の間、ひたすらに被疑者の話の点に可笑しな所が無いか、何か見落としが無いかを今一度確認する作業が続くのと同時に、午前中は遺体発見現場に再び赴き、何か些細な事でも…と情報を集めて。__エバンズとミラーの両方が不在の時を見計らい総務部の男は専用の執務室に来ていた。今迄と同じ様に経費に関する書類を手に、刑事課の誰かに何かを言われても怪しまれないように。そうしてデスクの上にエバンズのマグカップを見付けると、振り返る様に背後の扉に一度視線を向けた後、ポケットに忍ばせていた毒が入った小さな容器を取り出して、今度は今迄とは違いカップの縁に少量塗るのでは無く、明らかな殺意を持って底面にたっぷりと塗りたくり。無色透明のそれは当然気付かれる事が無いだろう。思わず持ち上がった口角を誰に見られている訳では無いものの片手で隠し、壁に掛かる時計を一瞥して思うのはエバンズが倒れる時。即効性のあるものじゃないこの毒が身体を蝕み死に至るのは恐らく夜であろう。その瞬間を目の当たりにする事は出来ないだろうが、1人自宅で倒れれば救急車を呼ぶ事も出来ず朝には冷たくなっている筈。完璧だ、と一度息を吐き出し無表情へと戻れば誰に何を言われる事無く執務室を、刑事課フロアを出て自分の持ち場へと戻り )






4338: アルバート・エバンズ [×]
2024-07-06 04:02:00

 






( 恨みを抱いた1人の男によって普段使っているマグカップに致死量の毒が塗られている事などつゆ知らず、相手に淹れて貰った紅茶を口にしていた。味に違和感を覚えるでもなく、未だ半分以上残っている紅茶に時折口を付けつつ作業を進めていると部屋の扉がノックされ顔を上げる。入って来たのは紙を持った_____男ではあったのだが、彼は総務部の人間ではない。結果が出るのを待ち侘びた検死を担当している人物だと気付けば「どうだった、」と開口一番に尋ねて。監察医は頷くと資料をデスクに置き『被害者の死因は首を絞められた事による窒息死です。手ではなく紐状の物が使われています。それから…被害者は、妊娠していました。亡くなった時には妊娠3ヶ月ほどだったと見られます。』と説明して。思いがけないその言葉に思わず言葉を失う。被害者はまだ学生で結婚もしていない、これ迄の捜査では誰の口からもそんな事実は語られなかった。ただそうなると、付き合っていたジェイの子と考えるのが妥当だろう。被害者の妊娠を知り、それが動機になり得る人物____ジェイとハンナ、この2人への疑惑が一気に強まる事実に、険しい表情のまま資料に視線を向け。 )








 

4339: ベル・ミラー [×]
2024-07-06 09:33:15





( 相手に紅茶を淹れ、一度デスクに戻り再び相手の部屋を訪れ捜査の話をしていた丁度その時。待ち侘びていた検死担当の監察医が来れば自然と視線は彼へと向き。__告げられた検死結果は驚愕するもの。窒息死、とそこまでは驚くべき事では無かったが問題は続けられた“妊娠”の言葉だ。思わず息を飲み相手を見れば、相手もまた言葉を失い険しい表情で資料を見ている所。『失礼します。』と、頭を下げ監察医が執務室を出て行った後。「__妊娠、してたんだね…。」今しがたそう言われた言葉を至極小さな声で呟く様に繰り返すが、相手に向けたと言うよりはまるで独り言の様な響きを持って落ち。「…ハンナは兎も角、ジェイがこの事を知らなかったとは思えない!只でさえリリーとハンナの間でどうしたら良いのかわからないで居たのに、急に子供が出来たって言われて__エバンズさん、明日もう一度2人の所に行こう。他にも何か隠してる事がある筈。」リリーの妊娠の話が出なかった事で一気に疑惑が強まった2人。感情の昂りのままに前半はやや早口で、後半口調こそ落ち着いたものの表情は確実に怒りの色を宿していて )






4340: アルバート・エバンズ [×]
2024-07-06 11:22:09

 






( 相手の言う通りジェイとハンナに話を聞くのは急務と言えよう。遺体が見つかればその事実も公になると分かっていて、発見を遅らせるためにわざわざ錘を付けてまで隠蔽をはかろうとした。身勝手で悪質な犯行である事は間違いない。---夕方になると、現場の捜査が概ね完了し残っていた証拠品などが署に運び込まれた。遺体を沈めるのに使われた錘や遺体に巻きつけられていたナイロン製のロープ、足跡やタイヤ痕の有無に関する資料。それらを確認し、何か容疑者の絞り込みに繋がる証拠がないか見極める作業は何度やっても骨の折れるもの。「…遺体の発見が遅れた事で足跡のような痕跡は全滅だ。」資料に目を通しながら溜め息混じりに告げる。しかしその頃には、視界が眩むような感覚を覚える程に毒は体内に回り始めていて。 )








 

4341: ベル・ミラー [×]
2024-07-06 12:18:25





( 普通ならば見逃しても可笑しくは無い程に微細な証拠だったとしても、人が殺されその捜査にあたる以上“見落としました”は絶対に許されない。“ジェイとハンナは黒”と言う目線だけで証拠品を見極めるのはある意味“別の容疑者”を見逃す可能性に繋がるとは思うのだが、あの2人が事件に無関係だとは到底思えず眉間に皺を寄せた険しい表情で確認作業を続け。時間の経過と共に消えてしまった痕跡はもうどうする事も出来ない。もっと早く発見出来ていれば、と歯痒い思いを抱えたまま「別の証拠を何としても見付け出して明日2人に突き付ける。」尚も真剣な表情で資料を見詰め、今夜は徹夜も厭わない覚悟の言葉を。__感情の昂り、検死結果、届いた証拠品の確認、ある種の使命で相手の不調がほんの一瞬頭から抜け落ちていた )






4342: アルバート・エバンズ [×]
2024-07-06 13:46:36

 





( 証拠品の確認に没頭している間に、フロアからは1人また1人と署員が仕事を終え出て行った。暗くなったフロアの奥にある執務室にだけ煌々と明かりが灯り、相手と共に確認を進めて行く中で息がしづらくなるような、周囲の酸素が薄いような感覚を感じていた。しかしそれは座っていれば耐えられる程度のもので、軽くネクタイを緩める事でやり過ごした。遺体が見つかった地域の周辺でボートを扱っている会社がないか、或いはアンカーが盗まれた船がないか。ナイロン製のロープは何処で購入できるものか。其れらの事に集中して作業を進めている内に、耐えられる程度だった不調は気付けば重いものになっていた。資料から顔を上げると、既に部屋の中の間取りを認識できない程に眩しく感じられるような強い目眩の症状。トイレに立とうとしたものの立ち眩みによって平衡感覚が分からなくなり、咄嗟に身体を支えようと手を置いた場所はファイルと資料の積まれた場所で。 )








 

4343: ベル・ミラー [×]
2024-07-06 14:32:47





( 遺体発見現場に監視カメラは無かったが、そこに続くまでの道路、街中、お店、はたまたタクシーの車内カメラには容疑者としてあがった人達が映り込んで居る可能性がある。港の方まで足を運べばもっと確実な映像を見る事も出来るだろう。しかし今日この時間からでは流石に店も会社も開いていない為、矢張り明日朝一で確認し確実な証拠を手に入れる必要が__と、今は既にこの部屋しか明かりが点いていない事にも気が付かない程に考えを巡らせていた矢先。しん、と静まり返り秒針の音や書類を捲る小さな音しか聞こえていなかった部屋の中、ふいに響いた紙の束が床に落ちる音に反射的に双肩は持ち上がり弾かれた様に顔を上げ。果たしてそこには散らばった大量の資料と__「…ッ、エバンズさん!」そんなものは後で片付ければ良い事。顔面蒼白と言っても過言では無い程に血の気を失った様な顔色で、今にも崩れそうな身体を懸命に支える相手の姿。不調を抱えたままこんなに遅い時間まで仕事をしていた事で、身体に限界が来たのかもしれない、と。立ち上がるや否や倒れてしまわぬ様に相手の身体を抱き支え一先ず床に座らせようと試みる。散らばった書類の上であっても今は構わなかった。「エバンズさん、目を閉じて。直ぐ落ち着くから。」ぐるぐると回る様な目眩にも、ぐにゃぐにゃと歪む様な目眩にも、視界を閉じる事で僅かでも軽減させる事が出来る筈だと背に手を当てたままそう促して )






4344: アルバート・エバンズ [×]
2024-07-06 15:06:06

 





( 呼吸が上手く出来ず、呼び掛ける相手の声も一枚膜を隔てたかのように遠くに聞こえた。酷い目眩に加えて焼け付くような喉の痛み。あまりの苦痛に、このまま息が出来なくなって死んでしまうのではないかとさえ思った。空咳をする度に喉に強い痛みが走り思わず首元に手を添えたものの、息が出来ない苦しさと痛みに加えて不快な感覚が押し寄せる。「…っ、ごほ、…ッ」床に蹲ったまま、咄嗟に口許を覆ったものの床に散ったのは鮮血。多量の出血ではなかったものの、紙が散乱している事でその色は余計に鮮明な赤として主張した。それでも尚視界が歪むような目眩は落ち着く事なく、身体を起こしている事が困難になり。 )







 

4345: ベル・ミラー [×]
2024-07-06 16:52:54





( 相手は此方の声を認識していないようで、目を閉じる事も無く苦しげに眉を寄せ乾いた咳を何度も繰り返した。その度に丸くなる背中が跳ねる様に揺れ一秒でも早く落ち着く様にと背を撫で続けるのだが。「___え……」一層強い空咳の後、床に散乱した白い資料の上、散ったのは“赤”。内蔵に損傷を受け吐き出される大量の血液では無く、それは微量のものだったが量の問題では無い。多かろうが少なかろうがそれは“吐血”だ。身体は硬直し、双眸を見開いたまま薄く開かれた唇から何の言葉も発せないでいる中、蹲り苦しんでいた相手はまるで力尽きた、と言う言葉が正しいか、そのまま床に倒れヒューヒューと浅い呼吸を繰り返す。明らかに、明らかに不味い状況だ。“体調不良”なんて言葉で片付けられる程軽いものじゃない。「大丈夫…っ!今救急車呼ぶから!」半ば叫ぶようにそう言葉にし一度相手から離れ、デスク上の電話で救急病院に連絡をし救急車の手配をする。それからはあっという間だった。救急隊が駆けつける迄の間、これ以上の吐血で呼吸が阻害されぬよう相手の身体を横向きに寝かせ、懸命に声を掛け続ける。そうして救急隊が到着し相手が救急車に乗せられれば共に病院へと向かって )






4346: アルバート・エバンズ [×]
2024-07-09 14:10:49

 





( 救急車に乗せられたのと時を同じくして意識が途切れる。少量の吐血と異常な脈拍、呼吸困難、意識の喪失______酸素マスクを取り付けられ病院に搬送される間に、何かしらの中毒症状が疑われる状態だと病院に情報が共有された。病院に到着するとエバンズを乗せたストレッチャーは直ぐに処置室へと向かい、相手には外の待合室で待つようにとの声掛けがされて。---深夜1時を回った頃、ようやく担当の医師と見られる男性が相手の元へやって来て。『…未だ油断は出来ませんが、今は点滴による処置を行っています。_____多量の毒物を摂取した事による中毒症状で間違いないでしょう。体内から致死量に近い成分が検出されました。あと少しでも多く接種していたら、命を落としていた。…自殺、あるいは悪意を持って毒を盛られたか、その2択しかあり得ない状況です。』声を落として、今回の原因を相手に伝える。毒の成分を中和するために点滴での処置を行っているものの、未だ集中治療室から出られる状態ではないと。『血を吐いた事自体は、幸い命に関わるものではありませんでした。内臓がダメージを受けているのではなく、強い刺激によって喉が炎症を起こした。つまり、経口で毒物を摂取した事は間違いありません。』と続けて。 )








 

4347: ベル・ミラー [×]
2024-07-09 16:33:03





( 救急車の中で辛うじて繋ぎ止められていた意識が途切れたのを見て更なる恐怖から背筋が凍る思いをした。そしてその恐怖は病院に着き、告げられた医師の言葉で更に膨れ上がる事となる。__自殺?毒を盛られた?一瞬頭が真っ白になり目前の医師の顔を見詰めたまま口を開く事が出来なくただただ混乱を呼ぶだけ。「…毒って…でも、そんな__誰が、」漸く唇から僅かな息が漏れ、それに続く様に言葉がぽつ、ぽつ、と落ちるがエバンズが毒を摂取してる場面に身に覚えなど無い。そして絶対的に自殺では無いと言えるからこそ必然的に選択肢の1つは除外される訳で。倒れる前、相手が吐き出し書類に散った血が今尚頭を離れない。だが医師は内蔵の損傷では無く毒の経口摂取による喉への炎症だと説明するものだから、そこに関してだけはまだ唯一、僅か安堵出来るものだろう。「…警部補が口にする物は基本的に限られています。」と、伝えた後、此処で漸く少し頭が働くようになったのか「…警部補の事、よろしくお願いします、」と頭を下げ。__まだ集中治療室を出る事が出来ないとなれば、当然リリーの事件を追う事は不可能。この状況を警視正にも伝え何よりも相手に毒を盛った犯人を並行して見つけなければならない。絶対に許さない、と湧き上がる怒りをそのままに細い息を吐き出して )






4348: アルバート・エバンズ [×]
2024-07-16 01:28:20

 






( 相手から事情を聞いた警視正は、それが署内で起きた毒殺未遂事件である可能性も考慮して、エバンズに関する詳細は周囲に明かさないよう相手に指示した。彼は急遽対応しなければならない案件でレイクウッドを離れた、というのが表向きの理由。そして相手の他に本当の事情を知る存在として、信頼できる刑事に応援要請を打診すると告げて。---その後、早朝に相手のスマートフォンにメッセージを送ってきたのはダンフォードだった。“警視正から話は聞いた。お嬢ちゃんは大丈夫だったか?エバンズと捜査してた案件は俺が引き継ぐ。昼前には着けると思う。詳細は追って聞かせてくれ”と。 )







 

4349: ベル・ミラー [×]
2024-07-16 16:27:52





( “毒殺未遂事件”、それは言葉以上に重たく腹に落ち、その被害者となったのが相手だと言う事もまた負を助長させた。__翌朝、何故だろうか、応援に来るのは【クレア・ジョーンズ】だとばかり勝手に想像していたものだから、ダンフォードからの連絡には一度目を丸くし、続いて“私は大丈夫です。けれど何故エバンズさんが毒を盛られたのか、何もかもがわからない状態のままです。”と返信して。__時刻は午前11時30分を過ぎた頃。約束通り昼前にレイクウッドに到着したダンフォードと顔を合わせるなり、何も解決していないのだが大きな安堵を覚えたのは、きっと彼がどれ程エバンズを思っているか、その心を少しだけ知っているから。気丈に振舞っていた気持ちが僅か揺らいだ時、手が震え、思わず視界が歪みそうになったのを深い深呼吸で立て直す。リリーの事件、彼女が妊娠していた事がわかり一気に捜査は進みジェイとハンナが最重要容疑者として上がった中、今日は2人に話を聞き何としても証拠を見付ける大切な時なのだ。ダンフォードに事件の詳細が書かれた資料を手渡し、これまでの状況を説明しなきゃいけないのに。「…っ、ダンフォードさん…エバンズさんが…!」唇を開いた時、立て直した“と思っていた”不安定な揺れが顔を覗かせた。警部補専用の執務室の中、声量こそは抑えたものの、その震えまでは止める事が出来ずに )






4350: アルバート・エバンズ [×]
2024-07-20 02:27:03

 



ルイス・ダンフォード

( エバンズが何者かに毒を盛られ捜査から離脱せざるを得ないとレイクウッドのウォルター警視正から聞いた時、直ぐには状況を飲み込めなかった。同時にまた彼が謂れのない悪意を向けられ一方的に傷付けられ、苦しまなければならない事に憤りを感じた。そして、ミラーも既に同じ気持ちに苛まれているだろう、と。---事情を知らないレイクウッドの署員たちは応援に入った自分を明るく歓迎してくれたものの、彼女と顔を合わせた時からその不安定さ______なんとか感情を押し殺して捜査に集中しようと必死になっている事には気が付いていた。主人が不在の執務室で相手の声が揺らぎ、本当は一番気掛かりであろう本音が漏れると『……分かってる。あいつに毒を盛った犯人は必ず見つけて刑務所にぶち込んでやる。』と、乱暴な言葉選びながら力強く告げて。自分が知りたかった“詳細”は、担当する事件を差し置いて、エバンズの事。『あいつの一番近くに居たのはお嬢ちゃんだ。エバンズの様子に少しでも違和感を感じた事を全て教えてくれ。あいつは友達が居ない上に職場以外で人と接触する事がない。生活の中で毒を盛るなら、一番可能性が高いのは此の建物の中だ。証拠を消して逃げられる前に尻尾を掴む、』と。そこまで言った所で『少女が殺害された事件を早急に解決さえすれば、並行して何をやっていようが文句は言われないだろう。忙しくなるぞ、2つの事件を同時に担当するなんて本部の超売れっ子刑事くらいだ。』と、やや戯けて付け足して。 )








 

4351: ベル・ミラー [×]
2024-07-20 11:50:37





( 同じ署で働く仲間達にもエバンズの事を言う事は出来ず、あくまでも“何も無い”振る舞い方をしなければならなかったのもまた酷く心の磨り減る要因だった。不安も恐怖も顔に出す事が出来ない時間は余りに長く感じたのだ。だからこそ本当の事情を知るダンフォードと顔を合わせた時感情が溢れ出した。己の情けない揺らぎに、犯人に対して確かな怒りを滲ませた荒く力強い言葉が返って来ればそれだけで張り詰めていた心は幾分も軽くなると言うもの。震える息を一度細く吐き出してから同じ気持ちだと言う様に大きく頷き。「…最初は頭痛からだったんです。丁度天気も悪かったから、気圧の関係か風邪をひいたんだろうって思ってて。でも症状は全然治まらないし、それどころか酷くなる一方で、」エバンズの様子は果たしてどうだったか、最初に不調を訴えた所から遡る様にぽつ、ぽつ、と言葉を落とし。「…身体の震えや、脈が早くなったり酷い目眩がしたり__でも本人は過去に関するフラッシュバックが起きてる訳ではないって言ってました。それとはまた違う、わからない不調だって。」言葉にする事でその時の彼の苦しむ姿が思い出され胸が苦しくなるのだが、記憶している事は全て目前の相手に伝えなくてはならない。そうして最後、倒れた時の姿が鮮明に脳裏に浮かび、その時の息が出来なくなる程の恐怖が蘇りそうな感覚に床を見詰めグッと拳を握り締めてから「……此処で、倒れて病院に運ばれました。血を吐いたけど、それは内蔵の損傷によるものじゃなくて、何度も繰り返し毒を摂取した事で喉が傷付いたせいだって医者は。」病院に運ばれるまでの経緯を説明しつつ、静かに顔を上げ。「違和感は特別何も、…基本的にこの部屋に居るか捜査で私と一緒に外に出てるかで__、」この建物内で毒を盛られたとして、果たして一体誰が、と考えてしまう。一瞬だけクラークの姿が頭を過ぎったのだが、恐らく彼は違うだろう。エバンズを苦しめたい願望は人一倍強いだろうが、それはあくまでも“苦しみながら生きている”姿を見たい為。クラークの歪み切った性格を考えるなら生死に関係する様な手段は選ばない筈だ。無意識の内に眉間に皺が寄り険しい表情になったものの、まるで此方の心を少しでも軽くする様な戯けた言葉が続けられれば思わずぱち、と瞬きをし相手を見詰め。それから自然と持ち上がった口角のままに「エバンズさんが起きたら自慢出来ますかね。」と、同じく明るい戯けた返事を返して )






4352: アルバート・エバンズ [×]
2024-07-25 00:57:21

 





ルイス・ダンフォード

( ひとつひとつ、記憶の糸を辿るようにして紡がれたエバンズの変化。その中には彼の事をしっかりと見て、彼の言葉をしっかりと聞いていなければ記憶に留まらないほど些細なものも含まれていて、エバンズに対する相手の誠実で真っ直ぐな向き合い方を目の当たりにしたような気がした。毒物を摂取し血を吐くほど状態が悪いなら命に関わる可能性もあると一瞬肝が冷える思いをしたものの、内臓の損傷ではないという言葉に思わず息を吐き出す。『外に居る時に毒を盛るのは至難の技だ。煙草のフィルター部分に毒を塗り込んで毒殺を図ったケースを担当した事があるが、あいつは煙草は持ち歩かない。普段口にするものも限られてる…ペットボトルの飲み物や薬くらいだろう。』と、毒の摂取経路について考えを巡らせて。しかしどれも本人にバレずに毒を混入するのはそう簡単ではない。_____ふと、エバンズのデスクに置かれたマグカップに視線が止まる。いつも彼のデスクに置かれているイメージがあるし、此処で話をしている最中彼がマグカップを口に運ぶ姿は何度も見た事があった。『……マグカップなら、気付かれずに毒を混入できるか、』独り言にも近い呟きが溢れて。 )






 

4353: ベル・ミラー [×]
2024-07-25 08:47:34





( 相手の言う通り、署内でも聞き込みをする車の中でも彼が煙草を吸っている姿を見た事は無く、本当にたまに柔軟剤の香りに混じる様に僅かに煙草の香りを感じる事が出来るくらいの認識しかない。薬だって彼が服用している事を知っている人物は限られるのだから、そこを選ぶのは至難の業の筈。残るはペットボトル__と記憶を呼び覚まそうとしたその時。ふ、と溢される様にして落ちた相手の独り言に息を飲み勢い良くデスクに頭を向ける。そこには主不在であっても静かに鎮座する見慣れたマグカップがあり、それを捉えた時にまるで胃液が上がる様な嫌な感覚を覚え思わず片手を口元に宛てがい。「ッ、」この部屋でマグカップに毒を塗る事は簡単だ。彼が捜査で留守にしている間に部屋に入る事は誰でも出来る。このフロアの人物も、別のフロアの人物も、ただ一言“用事がある。”と言えば良いのだから。でも、もし本当に毒物が付着していたのがこのマグカップなのだとしたら__「っは、ぁ…」私は何度、このマグカップで彼に飲み物を淹れた?__自分でもわかるくらいに身体の温度が下がった。勿論毒が付着していると知っていて意図的にそのマグカップを彼にわたし続けた訳では無い。けれどもっと早く気が付き、注意をし、別のコップか何かを選びそれをわたしていれば此処まで酷い事態は避けられたのではないだろうか。喉に息が引っ掛かりそうな感覚に、口元に手をあてたまま俯く。瞳が揺らいだ事で部屋の床が滲み、余りに大きな罪悪感の様な負の感情に飲み込まれてしまいそうで )






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