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白む空に燻る紫煙 ---〆/4717


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自分のトピックを作る
4463: ベル・ミラー [×]
2024-10-11 14:00:27





( 記憶と認識出来ぬ記憶は次から次に呼び覚まされ溢れ出す。__痛かった。何度も注射を打たれた腕は青黒く変色し、どんなに暴れ抵抗しても体格差から逃れる事は出来ない。それは正に“今”と同じ状況。己を落ち着かせようとする言葉も、体温も、今は何も届かずただ“帰りたい”と逃げる為に取った次なる抵抗とばかりに重たい口を開け相手の肩口に歯を立て__力を込め噛み付く、と表すその前。どんな事をしてでも逃げて、“約束”を果たさなければと思ったその瞬間、流れ込む記憶が変わった。鼻腔を擽るのは優しい柔軟剤の香りと、血の匂い。「…エバンズさんッ!!、」そう叫び、後頭部を支える手に一瞬僅か力が抜けたのを感じて勢い良く顔を上げると、先程迄は相手から逃れようと躍起になっていたのに、今度は決して離れないとばかりに震え何の力も入らぬ手を伸ばし相手の冷たい頬へ。「駄目、っ…駄目…待って、」駄目、嫌、と繰り返し頬を撫で、ボロボロと涙を溢す瞳には恐怖と絶望を宿す。やがて頬にあった手は下へと下がり相手の胸元へ。懸命に押さえようとするその姿は心臓マッサージをしているかのような、或いは止血をしているかのような、そんな動作ながら明らかに恐怖におかされ錯乱状態なのが見て取れるだろう。「や、だ…ぁっ」最終的に子供のように泣きじゃくり、相手の胸元の服を握り締めたまま、嗚咽を繰り返して )






4464: アルバート・エバンズ [×]
2024-10-11 16:17:30

 






( 相手の様子が変わった事で、襲い来る記憶に波がある事に気が付いた。自分を認識したものの“今”を見ている訳ではない。恐らく様子から察するに自分が撃たれて瀕死の怪我を負った時の記憶だろうか。胸元を抑える相手の手を掴み、心臓の場所へと誘うと鼓動の音を認識させるように押し当てる。「ミラー、俺は此処に居る。なんともない。お前は約束を果たしただろう、_____思い出せる筈だ。」相手が見ているのは過去の悪夢だと伝えるように静かに言葉を紡ぐと背中を摩り続ける。過去に堕ちてしまっても、ふとした瞬間に相手の声が届く事があった。何がきっかけで今に引き戻されるかは分からない、だからこそ声を掛け続け、一瞬でも今に戻るきっかけを作らなければならないのだ。 )







 

4465: ベル・ミラー [×]
2024-10-11 17:00:54





( ふいに手を取られ、それが先程宛がった箇所よりも少しだけ上へと移動した事で掌に規則正しく刻む鼓動を感じる事が出来た。その鼓動はまるで体内を流れる血液の如く静かに上へと昇りやがて己の心臓に届いた__気がした。釣られて頭を持ち上げ握られていない方の手を相手の顔の前へ。「…血……、血が…っ、止まらないの……!私、血液型が同じだから…早く、ッ、」幾ら止血する為傷口を圧迫しても流れ出る血は止まらず、相手の命の光すらも流れ出る。自身の手は真っ赤に染まり鉄の重い匂いが鼻腔から消えない。何もかもが幻覚であり記憶なのに、錯乱したまま“相手”に“相手”を助ける様にと言うのだが。揺らぐ緑眼に褪せた碧眼が映ったその一瞬、動きが止まった。そうして緑の虹彩に光がちらつく。“思い出せる”とは。「__エバンズ…さん……。」自然と唇を震わせたのは相手の名前。先程の過去の相手への叫び声では無く、目の前の相手を呼ぶ名前。そのまま荒い呼吸を繰り返しながらも、至近距離で真っ直ぐに見上げ続けて )






4466: アルバート・エバンズ [×]
2024-10-11 18:55:03

 





( 自分が撃たれて意識を失っていた時。相手は今と同じような事を救急隊員に告げていたのか、或いはそんな気持ちを抱えたまま無事を願っていてくれたのか。相手の“恐ろしい”と感じる記憶の中に自分が居るからこそ、大丈夫なのだと安心させたかった。ふと視線が重なった瞬間、相手の瞳に宿る色が確かに変わった気がした。いつも自分が相手の緑色の瞳を道標に意識を引き戻されるように、自分の瞳もまた、きっとそれと同じ役割を果たしたのだろう。自分の名前を呼ぶ声に頷くと相手の瞳を見つめたまま「______あぁ、俺は此処に居る。大丈夫だ、何も心配しなくて良い。」と答えて。背中を摩る手は止めぬまま、相手が落ち着くのを待った。 )







 

4467: ベル・ミラー [×]
2024-10-11 20:10:55





( __暗い空の下でも何故かわかる相手の瞳の色。その色を認識した途端に脳内を支配していた“記憶”がまるで突風に吹かれ散ったかの様に綺麗さっぱり無くなった。そうして己を安心させようとする声が届く。背中を擦る手の温もりも、寒くない様にと掛けてくれた上着の優しさも、全て。力の入らぬ腕を持ち上げ今一度相手の頬に震える指先を触れさせる。自身の手も、相手の頬も、寒空の下に在った為冷たく熱を感じる事は出来なかったが今はそれに恐怖したりはしない。べったりと塗れていた真っ赤な血も勿論無い。「……エバンズさん…、」再度相手の名前を呟き、此処に確りと存在していると言う事を自身の胸の内に落としてから「…ん、」大丈夫と言う合図か、相手の言葉に対する頷きか、小さく声を漏らし額を相手の肩口に、今度は自らくっつけては徐々に身体から力を抜いていき、それと同時に長い時間を掛けて震えが治まっていき )






4468: アルバート・エバンズ [×]
2024-10-11 21:24:53

 





( 相手が少しばかり落ち着いた事に安堵すると、僅かにずり落ちた上着を再び肩に掛け直しスマートフォンを取り出す。何かあれば連絡して構わないと言われておきながら一度も掛けた事のなかった番号______アダムス医師へと電話を掛けた。遅い時間の為一度掛けて出なければ別の手段を探そうと思ったものの、数コールのうちに彼の声が聞こえた。深夜の突然の電話に対する謝罪と共に現状を伝えれば、“日常的に薬を飲むなどしておらず薬剤自体にあまり耐性のない人の場合、薬が効果を発揮しやすい事があるため念の為病院で経過観察を行うのも一案だ”とアドバイスを貰う。必要であれば病床は手配すると伝えられ、この後向かう旨を伝えて電話を切った。床に落ちたままの拳銃を拾い上げ、「立てるか?」と相手に尋ねる。そして相手の身体を支えながら立ち上がると相手と共に屋上を後にした。相手から鍵を受け取り、相手を助手席に座らせると自分は運転席へと回る。車のエンジンを掛けると「病院に向かう。辛くなったら言ってくれ、」と告げて相手の冷えた手の甲を一度優しく撫でて。 )







 

4469: ベル・ミラー [×]
2024-10-11 21:51:40





( 車内、普段ならば自分が運転席で相手が助手席なのだが今は逆だ。こんな指先の震えた手でハンドルなど握れる訳も無いし、足にもまだ確りとした力が入る訳じゃない。けれど何故かその反対の場所が無性に不安になり思わず細く息を吐き出す。理由など無い。もしかしたら普段何とも思わない事に妙に敏感になり、感情が揺れるのは未だ体内に残るあの謎の薬物のせいなのかもしれない。相手からの気遣いの言葉に小さく頷きシートベルトを締めるのだが、車が走り出してから数分も経たずして呼吸に僅かな乱れが混じり始めた。窓の外の暗い空、一定間隔で流れる街灯の明かり、時折擦れ違う対向車__何も怖い事は無い、普段見慣れた筈の景色。過去の嫌な記憶が呼び覚まされている訳でも無いのに胸の奥が嫌な熱さを帯び、それとは逆に指先は冷たくなる。「っ、エバンズさん…!」思わずシートベルトから身を乗り出して隣の相手に縋る様に手を伸ばせば、「入院は嫌、っ、」と、まだ医者と会ってそう言われた訳でも無いのに拒絶を表して )






4470: アルバート・エバンズ [×]
2024-10-11 22:39:20

 






( 胸の内を掻き乱す恐怖心に波がある事は知っていた。だからこそ相手に名前を呼ばれると、近くにあったコーヒーショップの駐車場へと車を一度停めた。当然店は既に閉まっていて駐車場は暗い。入院は嫌だと言う相手に視線を向けると、少しでも落ち着くならと伸ばされた手に自分の手を軽く重ねた。「…お前はどうしたい?医者は経過観察の為に病床を用意する事は出来ると言っていた。薬がどう作用するか分からない。病院に居た方が安心出来る、」万が一の事を考えて数日であっても入院した方が良いのではないかと言いながらも「嫌なら無理に入院しろとは言わない。」と付け足して。ただ自分が居ない間、相手を1人にしておくことが不安だったのだ。 )






 

4471: ベル・ミラー [×]
2024-10-11 23:00:43





( 車が停まったのは暗いコーヒーショップの駐車場。此処へは捜査の合間の休憩にも訪れた事のある場所で、重なった相手の手の仄かな熱にほぅと安堵の息を吐き出す。たったそれだけ、たったそれだけの事で酷く安心出来た。此方の意思を尊重してくれるその問い掛けに暫し俯き答えるまで時間を要する。何故かはわからないが入院と言う響きには恐怖があるのだ。しかし、だからと言って家に戻り何かをしたい訳でも無い。「__エバンズさんは?」たっぷりの時間の後、顔を上げての第一声は相手への問い掛け。足りない言葉を付け足す様に「エバンズさんは、病院に居る?」と。それは些か幼くも感じられる問い掛けだっただろうか。ただ、今は相手が視界に映らない所に行ってしまうのが無性に恐ろしかった )






4472: アルバート・エバンズ [×]
2024-10-11 23:47:10

 






( 相手の問い掛けに頷くと「…お前が眠るまで、側にいる。」と答えて。相手が眠りに落ちるまでは側にいるつもりだったが、その後にはやらなければならない事が山積している。相手の事を警視正に報告し、逃げた2人について調べなければならない。電話が鳴るまで自分たちがやっていた仕事も早めに終わらせる必要があった。相手が何も気にせず、怖がる事なく身体を休める事ができるようにやるべき事があるのだ。「ずっと病院に居る事は出来ないが…見舞いには行く。」と、相手が不安にならないように告げて。 )






 

4473: ベル・ミラー [×]
2024-10-11 23:58:02





( “眠るまで”の後は__一瞬眉が下がるのだが
、続けてお見舞いには来てくれるとの言葉に静かに頷く。恐怖や不安が無くなった訳では無くただ単に影を潜めているだけであっても、今この瞬間は少し落ち着いていた。だからこそ刑事としてこの後相手がやらなければならない様々な事があるのも当然理解出来て。「…なるべく早く寝る、」と、ほんの僅か、口角が緩む程度の微笑みではあるがそう答え。それは暗に入院に同意すると言う事。今一度自身を落ち着かせる様に深呼吸をした後は背凭れに体重を掛け座り直し、病院に着くまでの道すがら、時折隣で運転をする相手に視線を向けて )






4474: アルバート・エバンズ [×]
2024-10-12 00:54:12

 






( 僅かながら相手が微笑みを浮かべたのを見ると、少し表情を緩めて頷いて。医療体制が整った場所で信頼出来る医師が側に居る状態であれば、あの恐ろしい薬に対する不安も幾らばかりか拭う事が出来る。自分の所為で辛い思いをさせている相手が“守られている”状態であって欲しいと思った。赤信号で車が止まると助手席の相手に視線を向け様子を確認していたものの、此方を見る相手と視線が重なると前方に視線を戻す事が何度か繰り返され_____病院に着くと、当然時間外ではあるもののアダムス医師の診察室に通された。首筋の針の痕を確認すると、軽く消毒をして「…薬物の影響には波があります。特に恐怖心を増大させたり、過去の記憶を強制的に引き出すような強い効果は、薬が薄まっても些細な事がきっかけで引き起こされる事がある。自分では大丈夫だと思っても、完全に薬が抜けるまできちんと様子を見た方が良いでしょう。」と告げて。「薬の併用で思わぬ副作用が起きる事があるので、鎮静剤や睡眠薬は使えません。何かあればナースコールで知らせてください。」注意事項を伝えると、空いている個室へと案内されて。相手が看護師に連れられて着替えなどを済ませている間、1人病室の椅子に座って屋上での出来事を思い返す。中年の男と女、2人の関係性は分からないが自分に対する恨みを持っている人間_____” あの時の絶望を思い出せ。お前は“また”救えなかった。“と男は言った。アナンデール事件の関係者である事は間違いないが、何処から2人を特定するべきか。薬はクラークに使われた事もあるものの為、ある程度流通している薬物の類だろう。この時既に、その考え自体に蓋をしていたものの、自分は相手の側に居るべきではないという思いは心の片隅に生まれていた。 )







 

4475: ベル・ミラー [×]
2024-10-12 01:31:49





( 病院着に袖を通しながらアダムス医師からの薬物の説明について考えた。睡眠薬を飲む事が出来ないと言う事は、夜中にあの恐怖が襲って来ても通り過ぎるまでひたすらに耐え抜くしか方法が無いと言う事。どれ程で恐怖から解放されまた眠りにつけるのかがわからない。例えナースコールを押した所で鎮静剤も使えない以上看護師にはどうする事も出来ないだろう。__それは酷く絶望的な事のように思え、背中に嫌な汗が流れたのを感じた。けれどこの恐怖を相手は経験し、そうして眠れない夜の日々を過ごしている。己を安心させようと微笑みながら『きっと直ぐに元に戻れます。』と、励まし病室を出て行った看護師に軽くお礼を言い、相手の傍に歩み寄ると「__エバンズさん。」と名前を呼ぶ。まさか自分から離れる事を考えているなど、想像出来る筈が無かった。「…眠るのが怖い、」先程は早く寝ると言ったが、医師の説明を聞き、真っ白の病室に来れば心細さは再び顔を出すもので、素直なまでに恐怖を訴えつつ、それでもその身はベッドに横たえて )






4476: アルバート・エバンズ [×]
2024-10-12 02:08:54

 





( 相手に名前を呼ばれると思考を止めて顔を上げる。紡がれたのは素直な恐怖心だった。自分ではどうしようもないあの感覚______まるで蛇が首を擡げるかのように突如として沸き起こる恐怖心。一度記憶の渦に突き落とされて仕舞えば自分で感情をコントロールすることはできない。その恐怖を知っているからこそ、相手の気持ちはよく分かった。「____なるべく気持ちが落ち着く事を考えて寝た方が良い。…お前はそういうのが得意だろう、」暫し考えた後に紡いだのは、1つの小さなアドバイス。心配せず眠れと言う事は出来るが、薬を打たれている相手に対してそれは余りにも無責任だ。それなら、今相手が出来る、なるべく心を穏やかに休む事が出来る提案を。相手は感受性が豊かだ。美しい物や楽しい事、日常の中に潜む些細な喜びを見つけるのが人一倍得意ならば、これまでに重ねて来た”其れ等“を、今自分の為に使って欲しい。相手の気分が和らぐ事を、と考えたものの何せ自分は感受性など持ち合わせていないに等しい。何が綺麗だとか、楽しかったとか、そういった話題は一向に思い付かない上に話し下手なのだ。「………まだデスクには、シャチの人形を飾ってるのか、」かなりの間を置いて尋ねたのは、いつだったか相手がデスクに飾ると言っていたぬいぐるみの話題。唐突にそんな問い掛けをすると、自分で言っておきながら曖昧な表情を浮かべて。 )







 

4477: ベル・ミラー [×]
2024-10-12 10:27:26





( 真っ白の掛け布団をお腹の位置まで引き上げ、軽く身体を横にして相手の方を見る。相手は己の恐怖心に“大丈夫”とは言わなかった。そう言わずに小さな解決への糸口を口にし夜の恐怖に向き合う術を提示してくれる。「__此処は病院じゃなくて私の家で、私が眠った後、隣でエバンズさんも一緒に寝てくれる。それで、朝起きたら2人でコーヒーを飲んでから海を見に行くの、」“気持ちが落ち着く事”と考えて、浮かんだのは、現実的に有り得る事ではあるものの、今この瞬間を切り取れば妄想のそれ。楽しいも、幸せも、落ち着くも、何時だって相手が側に居る時だった。__ふいに突拍子も無い話題に一度瞬く。その話題を出した相手は、相手自身が何とも曖昧な表情を浮かべていて、別にこの話題を話したかった訳でも、勿論シャチのぬいぐるみが欲しい訳でも無いだろう。きっと己が不安にならない様に、悪い事を考えない様に、そんな不器用な優しさから話し下手にも関わらず出してくれた話題。胸の奥が暖かく幸せに包まれた。「…飾ってるよ。疲れたなって思った時、あれを触ると癒されるんだ。」小さく首を縦に肯定を表してから、「私が職場に戻るまでの間、エバンズさんに貸してあげる。」相手は絶対にシャチのぬいぐるみに癒しを求めたりしないだろうが、そう言いながら少し笑って )






4478: アルバート・エバンズ [×]
2024-10-12 11:39:00

 





( 相手が口にしたのは、何気ない日常だった。相手の家に泊まることも、一緒に出掛けることも、この2年の間に気付けば自然な事になっていた。この場所が心地良くて、相手の優しさに寄り掛かり過ぎていたのかもしれないと、病室の白いベッドに横になる相手を見て、頭の片隅にそんな思いが芽生えた。ぬいぐるみの話をわざわざ持ち出したのは、相手が嬉しそうに其れを見せて来た記憶があったから。おしゃれなカフェの彩りの良いサラダやケーキに海、_____相手の好きな物は少ししか知らないが、笑顔の記憶ばかりなのだ。相手が笑顔になっていたものの話をしようと思った。相手の返答には軽く頷いただけでそれ以上話を膨らめようとする訳でもなかったが、続いた言葉には怪訝な表情を浮かべ「俺には必要ない、」と答えて。ぬいぐるみをデスクに飾って仕事をするなんて、周囲から気が狂ったのかと思われても可笑しくはない。それでも相手の表情が和らぐのを見ると少しばかり安堵して。 )







 

4479: ベル・ミラー [×]
2024-10-12 11:57:08





( 案の定相手は怪訝な表情で拒否を示した。元から答えはわかっていたのだからそれ以上押す気は無く、ただ、他の人が見れば機嫌を損ねてしまったのか、或いは怒らせてしまったかとも取れるその眉間に少し皺の寄った表情が不思議と好きだと、今何の脈略も無しに感じた。呆れた様な表情も、少しだけ微笑む様に緩まる表情も、寝起きの何処かぼんやりとした表情も、見慣れている筈の数々が何故か頭の中に浮かんでは消え、浮かんでは消え、__やがて薬の影響で錯乱状態にあった疲労も相まって瞼が重く落ちる感覚に、数回抗うのだが、意識は眠りの底に追いやられる。無意識の内に伸ばした手は勿論相手に届く筈は無く、再び白いシーツの上に落ち、それと同時に瞼も完全に閉じられた。最後に見えたのは此方を見る褪せた碧。その色がやけに濃く残った気がしたが、そのまま静かに寝息をたて始めて )






4480: アルバート・エバンズ [×]
2024-10-12 12:48:48

 





( 相手が眠りに落ちても暫くは、真っ白なベッドの中で寝息を立てる相手の姿を椅子に座ったまま見つめていた。十数分後、ようやく立ち上がると布団越しに相手の肩を軽く撫で、静かに病室を後にした。---とっくに日付を跨いだ深夜だったが、警視正に報告のメールを入れるとそのままの足で暑へと戻る。真っ暗な執務室に明かりを灯し、まずは現場に残された注射器の指紋照合と薬物特定の為、鑑識への依頼の手配を。そしてあの2人を特定するため、遺族として取材を受けるなどして過去の新聞や記事に顔写真が載っていないかを照合する。あのビルの監視カメラの映像は日中に______と作業をしているうちに外が明るくなり、夜が明けた事に気付く。長時間同じ姿勢でいた為肩が重たく、眼鏡を外して一度立ち上がり身体を軽く動かすと、眠気覚しにコーヒーを淹れようと給湯室に向かい。早朝のフロアはシンとしてひんやりとした空気が感じられる。熱いコーヒーを手に、ブラインド越しに窓の外を見ると朝焼けと共にちらほらと犬の散歩をする人やジョギングをする人の姿が見えた。それは余りにも穏やかで平和な光景に思えた。______相手は、こう言う日常を生きるべきなのだ。明るく穏やかな場所で日常を紡いで行く、あの笑顔を誰にも奪われる事なく。昨晩のように、暗闇の中で恐怖にもがくのはあまりにも酷だ。コーヒーをひと口啜り、やけに凪いだ心は”相手を此方側に引き摺り込むべきではない“と訴える。あれは、自分と行動を共にしていなければ起きなかった悲劇。初めて彼女に過去を打ち明けた時には、寄り掛かり過ぎるのが怖いと言った筈なのに、いつしか支えて貰う事が当然のように彼女に身を預けていた。薬を打たれ、錯乱して恐怖に怯える相手の姿を思い出すと胸が締め付けられる。彼女が危険に晒されるまで決断出来なかったのは、おそらくあまりにこの場所が_____相手の側にいる事が心地良かったからだ。これ以上の危険が及ぶ前に全てを本来あるべき均衡に戻さなければならない。マグカップを持ったままデスクに戻ると、再びパソコンへと向かい。 )







 

4481: ベル・ミラー [×]
2024-10-12 13:24:47





( __唐突に意識が引っ張られ、布団を跳ね除ける様にして目を覚ましたのは夜中の2時過ぎの事。夢を見た。辺りは暗闇に染まっていて、己から数メートル離れた所に相手が立って居る。互いに向き合う形なのに何故か相手の表情は霞み上手く認識が出来ない。“エバンズさん”そう名前を呼ぶのに相手はその場に立ち尽くしたまま。もう一度名前を呼び近付こうとするのだが何故か相手との距離は離れる一方。相手はその場から動かず、己は確かに歩み寄ってるのに少しも近付けないのだ。病室は暗く、眠る前迄確かに話をしていた筈の相手は居ない。“眠るまで側に居る”と言われていたのだから今の状況は当たり前と言えば当たり前なのに頭の天辺から爪先までを支配する恐怖心が正常な思考も、今と夢の境も何もを奪い去る。「__何処、っ…!」ベッドから転げ落ちる形で床を這った丁度その時、巡回に来ていた看護師が己の姿を発見した。ナースコールが押され数人の看護師が来るが勿論鎮静剤は打てず、最早拘束にも似た形で再びベッドに戻され__そこからの意識は無い。次に目を覚ましたのはカーテンから光が射し込む時間帯。頭も身体もやけに重いが波は今おさまっているのだろう、酷い恐怖心は無く少しの喉の乾きを感じながらもぼんやりと天井を見詰めて。__出勤して来た警視正が相手の元を訪れたのは午前9時過ぎ。執務室の扉を開け、パソコンを見詰める相手に『昨晩はご苦労だった。』と声を掛けて )






4482: アルバート・エバンズ [×]
2024-10-12 13:57:55

 






( 相手が夜中どんな恐怖を味わったか、離れている今感じ取る事はできなかった。不意に執務室のドアが開き顔を上げると警視正の姿。夜中遅い時間帯に連絡した事を謝罪しつつ「少しの間の入院で、薬が完全に抜けるまでの経過観察をすると聞いています。______このような事態を招き申し訳ありません。」と告げて。そして一瞬の間を空けた後に「…折り入ったご相談があるのですが。」と言葉を続けて。---警視正と共に会議室へと移動して扉を閉めると、向かい合って座り、本部へと異動ができないかと切り出した。「…過去の事件の所為で、ひとつの場所に長く留まり過ぎると色々な弊害がある。今回の犯人も然り、記者たちもそうです。今が潮時だと考えました、」昨日の一件で、本部に戻るなら今がそのタイミングだと感じた。「レイクウッドを離れて……本部で、刑事としての職責を果たしたいと考えています。」本部からもかつて異動の打診があった事を思えば、役職に拘らなければ不可能ではない筈だ。異動できるのならば一刑事としてでも構わない、と。 )






 

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