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【 指名制 】香撫町の住人。【 リメイク / 日常 / 考察 】/71


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41: 睡 / スイ [×]
2021-02-28 23:57:29



>月


 【 冬 / ゲームセンター / >40 】


 ……そう。
 ( 小さく呟いて、また微笑む。今度は純粋な喜びと安堵の思いで。それだけ、と、簡単なことのように彼女は言うけれど、他愛もない話をするというのは存外簡単ではない。殊に、社会性というものがあまり必要とされないこの町では。もし、仮におれが來にふざけた話題を振ったりしようものなら、どれだけ良く見積もっても怪訝な表情しか返って来ないだろう。下手をすると今以上に避けられるかもしれない。それ程のことを、彼女はいとも簡単にやってのけるのだから頭が下がる。彼女と一緒に居る時だけでも、來が本当の意味で笑えているのなら良かった。彼女がこの町に来てくれて良かった。そう、心から思う。彼女も何か事情を抱えてここに来たのだろうから、そんなことは口が裂けても言えないけれど。「ありがとう、月」代わりに、在り来りな感謝の言葉だけを彼女に伝える。「月さえ良ければ、これからも來と一緒に居てあげて」続く言葉は、祈るように響く。彼女に頼りきりで申し訳ないとは思うけれど、今のところ來が一番心を許しているのは彼女だ。おれには祈る他何も出来ない。断られてしまったらどうしようか、と少し考えるけれど、何故だか断られる気はしなかった。おれが大量のメダルに目を奪われていると、それに気が付いた月によってあれよあれよという間に遊ぶ準備が整えられてゆく。その動作は、早く遊びたくて仕方がない子どもと言うより、世話を焼いてくれるお姉さんのようで、そういえば月はおれ達より年上だったかな、と、ここにきてやっと思い出す。双子とはいえ弟しか居なかったから、ちょっと変な感覚だ。備え付けの椅子に座ると、早速隣からメダルの落ちる音が聞こえてくる。ちらりと様子を伺うと、月が呆然とした顔で台を見つめていた。おれも一瞬動きを止める。興味を引かれるままに選んでしまったけれど、元々はメダルを消費するためのゲームを探していたのだ。もしかしたら、選ぶゲームを間違えたかもしれない。 )






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