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愛しきプシュケの式日に、ルサンチマンは嘯いた__指名式、BNL/560


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539: ハーシェル [×]
2022-02-02 13:20:38




>>リヒャルト様(>>537



(其方の薔薇の向こうにも、彼方のダリアの隣にも、目的の人物は見付けられず、さて参ったと首を捻って唸った所に声が掛かる。その事に寄り下がった眉はぱっと和らぎ、声の方向を見る前に口を開く。「ええ。どうも思いの外ざっくり、と……」溜息と些かの喜色が混じった言葉で答えながら、爪先を声の主へと向けた瞬間、視界に入った金糸に思わず喉に音が詰まった。「…リヒャルト、皇子。」――この国の誰もが知る彼の姿、名前。それは己も例外ではなく、だからこそ呟く色には尚更狼狽が混じる。しかしそれも、見開いた目を一度緩やかに瞬かせた後には消え失せて、次に表情に湛えたのは口の端を引いた真摯さ。「これは失礼。無礼をお詫びします。」とん、と一歩だけ、彼の引いた警戒線を踏み越えて踵を揃え、怪我の無い片手を胸に当てて一礼する。「それから、貴方の御言葉に感謝を。」続け様に顔を上げ、風に揺らいだ髪の合間から覗く橙をまろやかに細めつつ、彼の空色を確と見詰めて明朗に謝意を告げる。「――さて。」それらを終え、胸にある手を垂らして漸く、未だ破けたシャツの袖を染めていく傷に、ちらと視線をやる。「ええ。貴方の御言葉通り、傷の止血をしなくてはならないのですが…如何せん、今この場にあるのは己の身一つでして。治療に必要な道具は持ち合わせておりませんし、裂けた服の布地も、既に使い物にはなりそうもありません。」自らの現状に呆れたような苦笑で肩を竦めた後、ほんの数秒沈黙を置いて、再び彼を見る。「……ですので。もし、もしもご迷惑でなければ、貴方に助けを願わせて頂けますか?」助けてほしい、と本心半分。彼ともう少し話がしたい、と好奇心半分。二つの感情を織り、困り顔に笑んだ表情と同じく柔らかに問うその言に合わせ、ゆるりと首を傾げつつ相手の答えを待ち。)





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