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8057：
ロジャー・チェイス [×]
ID:abc583d49 2020-06-10 21:59:55
>8004
>8037 ターナ
【キース／ノア】
普段あわただしく日々を過ごしていると、つい足もとばかり見て生きるようになる。夜空に目をやることさえ忘れてしまっていたがその日はあきらめて空を見上げる。ぎらぎらと満天の星が、月明りの中にも星を銀砂のようにこまかくきらめかせて地上の人生とはいかにも関係なさそうに超越的に輝いていた。星に一々こんな意味深い色のあることを始めて見た。
その光景に誰もが息を飲んでいることは確かであった。突然大きな揺れがこようが、足元が崩れようと、悠々としてセッションを続けていた演奏者が手を休めてしまうほど見事な夜空なのだから。
これは危うく正道から足を踏み外しかけたキースにとって最大のチャンスなのかもしれない。この機に乗じてターナにひっそりと近寄り手をそっと握る。夜空の光景に誰もが息を飲んでいることを利用するだなんてまだまだ邪な心が残っているからかもしれない。
急に手を握られ、ターナは今、どんな顔をしているのだろう。軽蔑の目かもしれないと思うだけで彼女の顔を素直に直視する事が出来ずにずっと夜空ばかりを眺めていた。
＊＊
朝の明るさが加速度を増して広がる。気づいた頃にはすっかり朝になってしまった。
キースは今、真剣な表情をしながら心の中で葛藤を繰り広げ、「あ・な・た」と呼ばれれば顔の緊張が緩み言葉の重みを素直に受け止める。謝まるチャンスはあの時であったのではないかという気もするが、そんな思考は頭から締め出しておこう。今はまだ。
「ぅ……うむ。……そうであるな。」
言葉を一通り聞き終え、「帰りますよ？」の一言に再び顔の緊張が緩むが今度こそ、相槌を打って短くそう応えた。そう返答はしたものの豊満な胸とボディラインのせいで話の後半あたりから殆ど内容が入っていこなかったのはここだけの秘密。
立ち去るターナの後を追うが、今まで一緒にいたはずのロジャーがいつ頃からいなくなったのかは誰も知らない。
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