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1449:
クォーヴ [×]
2024-08-31 10:31:16
>ニール(>>1446)
折角二人で来てるのに、水遊びするのが片方だけなんて寂しいでしょう?
(彼が感激するほど泉の水を冷たいと感じられないのは、文字通り死を顕現したような病的に白い足がそもそも低温だからなのだろう。人間と死神、埋めようのない種族の差異があるために同じ感覚を共有できない事に今更寂しさを感じはしないが、同じ体験を出来る機会にあってそれを放棄するのは寂しい。透き通った水を遊ばせる彼の爪先を穏やかな眼差しで眺めながら緩やかに流れる二人一緒の時間を味わうさなか、投じられた確かな一石に一瞬時が止まったような錯覚を覚えて「 ……ふふ。僕が食べたいのは―――― 」一度その瑞々しくも妖しい赤色の果実を受け取って、しかし手中のそれはまるで存在ごとどこかに飛ばされてしまうかのように頂点のヘタから下へ下へと消し去られる。それはまるで神が禁忌を冒した者を彼方へ追放するような所作、空っぽになった手で差し出されていた彼の手を捕まえて自らの口元にゆったりと引き寄せて「 君が僕だけのエデンの林檎ならいいのに 」真っ直ぐに目を見て、きっと様々な住人が取り合うであろう美味しそうな獲物に願っても仕様もない望みを穏やかに呟く。本来ならば捕食者が誘惑し獲物を追い詰める筈だが、正反対の倒錯感にざわりと黒煙が騒ぎ始める。近くの枝に留まり穏やかに囀っていた小鳥たちが複数の小さな羽音を立てて逃げるように飛び去ったのは、牙を隠していた捕食者が鎌首を擡げたからなのだろうか「 ごめんね、痛くはしてあげられない 」牙と爪で肉を切り裂くでも、皮膚を突き破り血を啜るでもなく、ただ手の甲に口付けて記憶を奪う際に痛覚は一切刺激されない。その条件が奏功する相手ばかりではないのだと、痛みを存在証明の一つに数える彼という奇特な獲物に出会って初めて知ったからこそ謝意を告げて――痛みの代わりに必ず流涙を促す死神の唇を彼の手の甲にそっと触れさせて。目線はじっと彼に合わせたまま、指定された記憶がきちんと彼の脳と心に存在するものだったからこそ口を伝って流れ込んでくる不可視のそれの味わいを噛み締めるように瞼を下ろして、ほんの十秒にも満たない間に緩やかに手の甲へ寄せていた顔を離し「 ああ…。いけない、もっとたくさん欲しくなってしまうね 」そのくらい美味しかったんだよ、そんな風に名残惜しそうな響きを持たせてふと彼に微笑みかけて)
***
矢継ぎ早にごめんね。宝箱に仕舞ってくれた十三番目の子との追いかけっこの記憶、大事に読ませてもらったよ。その報告だけ伝えておくね、僕が初めて食べる君の記憶に丁寧に味付けをしてくれて本当にありがとう。こちらにはお返事不要だよ、これからもよろしくね。
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