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239: 都々 [×]
2017-02-10 02:29:50





■ William

( 学生で溢れ返る店内、喧騒から逃れるように奥へ奥へと進んだ先、窓際の席に二人はいた。贅沢にもテーブル席を陣取っているが、誰かに文句を付けられることもなければ嫌悪を含んだ視線が向けられることもない。己の向かい側に座る彼女は折角の休みだというのに羽目を外すでもなく、上品な仕草で紅茶の入ったカップを傾けている。きっとその二つを同時に受けたとしても彼女は動じることなく大好きなレディグレイを口に運ぶのだろう。カップへと伏せられていたその瞳がふと別の場所へ向けられ、つられて視線の先を追えば幾つか離れた席で黄色い声を上げる少女たちの姿。一つか二つ下の学年であろう彼女らは恋愛についての話題、所謂恋話というもので盛り上がっているらしい。彼に渡すクリスマスプレゼントは何が良いか、恋人でもない相手から手作りの物を渡されたら嫌だろうか。一度注意を向けてしまえば嫌でも耳に入ってくる声を聞いたところ、延々とそんな話を友人同士で相談し合っているようで。 )‥本人に聞けば良いんじゃないか。( 一ヶ月以上も先のクリスマスについて楽しげに話す少女たちの様子はとても悩んでいる風には見えず、思わずぽつりと本音を漏らせば目の前の彼女は此方へ視線を寄越し、数秒間見つめられたかと思うと態とらしく息を吐いた。その目は何か哀れなものを見る時のそれで、彼女にそんな瞳を向けられると何か可笑しなことを言っただろうかと此方が不安になってくる。しかしながら発言を振り返ってみても特に気になる点はなく、何が不満なのだろうと肩を竦めながら再び口を開いて。 )そうすればすぐに解決する。違うかい?



□ Raychell

( 目の前の男が口にした言葉に再度溜め息をつきたくなるが、今それをすれば先程よりも大きく息を吐き出してしまいそうで、あまり品が良いとは思えないその振る舞いをすんでのところでぐっと堪える。変わりに先程よりも容赦のない視線を向けながら、口元だけに笑みを作り緩やかに首を傾けて見せ。 )容姿端麗で成績優秀、箒の扱いもそれなりに上手な上に家柄も悪くない貴方が、どうして女の子と長続きしないか教えてあげましょうか?( そこまでを一息に述べるとまさかそんな言葉が返って来るとは思ってもみなかったのだろう、前の席に座る彼は意表を突かれたとでも言いたげな表情をしていた。此方とて最初からまともな回答など期待していない。そもそも彼自身がそれを自覚しているのなら最初の台詞が出てくることもなかったはずだし、恋人とももう少し上手くやれるに違いない。こと恋愛に関して彼は、本当に長続きしない男だった。しかしそれ以外の分野では頭の回転が早いと評価されることも多く、すぐに先日別れを告げられた元恋人に思い当たることだろう。余裕の笑みを隠そうともせずに中身が半分程減ったカップの縁をするりと撫で、けれど彼の歪む顔を見逃すことがないよう視線は決して逸らさずに。 )



■ William

( 次々と並べ立てられた言葉に瞬きを数度繰り返す。話が飛躍し過ぎて一瞬理解が遅れたものの、それが褒め言葉でないことは明らかだった。その唇は綺麗に弧を描き、指先は艶めかしくカップの縁を滑っている。正面以外の方向──そう、例えば先程から何度もちらちらと視線を送ってくる男の席からならば、彼女は酷く魅力的に映ったに違いない。しかし彼女の正面に当たるこの位置から見れば、その仕草は如何にも我が寮に相応しいものであることが分かる。計算高く狡猾で、どうすれば自分が美しく見えるか知り尽くした瞳。此方にのみ向けられるそれを見て己だけが気を許されているような錯覚に陥るも、それすら計算の内であるような気がして視線から逃れるように紅茶を口に含む。たっぷりと溶かした砂糖の甘い風味が口内に広がり、同時に冴え始める頭。すると脳内に浮かんだのは一人の女生徒で、一週間程前唐突に告げられた別れの言葉が思い出される。彼女が何故このタイミングでそれを指摘したのかは不明だが、まだ傷が癒えきっていない己からすればそれは触れられたくない話題だった。けれどその一方で何度考えても全く思い当たらないその理由を知りたい気持ちも確かにあり、ちらりと再び合わせてしまった視線を恥じるように慌てて窓の外へ向けながら、それでも話題を変えることはなく。 )まるで君は知っているとでも言いたげな口ぶりだ。



□ Raychell

( 逃げるように紅茶を飲み始める彼は一見何でもない風を装っているものの、木製テーブルの模様を行ったり来たりと見つめる瞳からは困惑と動揺が見て取れる。思わず声を出して笑ってしまいそうになるのを口元にそっと手を添えることで誤魔化した。彼がこうして何かを飲んでいる時、彼の好みを知らない人の多くはブラックティーかブラックコーヒーを連想する。一般的に甘いものを好む女性ですら少し引いてしまう程の甘党だとも知らずに。大好きな糖分を取って漸く正常に頭が働き出したのだろう、分かり易く顰められる眉にまだ彼が別れを引きずっていることを知った。一瞬だけ交わる視線。その様子を見るに、やはり自覚はないらしい。窓の外は未だ賑やかな声が行き交っており、自分たちと同じ学生が思い思いに休暇を楽しんでいる。 )勿論よ。それとも、私が知らないとでも思ったの?( 答えが気になって仕方がないと言っているようにしか聞こえない言葉に迷いなく即答する。驚きに満ちた瞳が勢い良く此方へ向けられ、先程彼がやって見せたのと同じ動作で肩を竦める。彼は知らないだろうが、彼の歴代の恋人たちが相談相手に選んだのは大抵自分だった。愚痴やら悩みやらを散々聞いてきたのだから、別れるに至った詳細な理由も彼女たち個人個人の言い分も、全部知っていて当然だ。しかしそんなことを正直に打ち明けてやる気は更々なく、にっこりと笑みを深くしてはテーブルに頬杖を付き距離を僅かに縮めて。 )ウィル、貴方は女心が全く分かっていないのよ。全く、ね。



   

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