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16: 都々 [×]
2016-06-22 00:48:22





▽ 硝子の涙


特殊な酸性雨が降り注ぎ、海も大地も汚染された世界。作物が育つ自然の土は消え去り、数々の建物やシェルターは雨によって少しずつ削られていく。浄化装置の開発が間に合わないままやがて飲み水も底をつき、人類は絶滅するかと思われた。
しかしそんな中、1人の科学者が『傘』の開発に成功する。それはどんな技術を持ってしても防ぐことができなかった特殊な酸性雨を完全に無効化させるという代物だった。世界中の生き残った人間が協力し、遂に以前1つの街だった場所をドーム状の『傘』で覆うことに成功する。だがその直後、『傘』の開発者である科学者が謎の死を遂げた。『傘』の仕組みや制作方法の全てを知るのは彼1人だけ。世界の中で唯一安全な場所はたった1つの街、人々はそこで暮らす権利を争い合い、やがて生き延びた人間たちは荒廃したその土地に新たな街を築いた。

それから何年もの時間が過ぎ、かつて酸性雨によって崩れ去っていたその場所には高層ビルが建ち並んでいた。長い時の流れの中で人間の身体は世界に起こった異常に対応し、水も食料も必要としないものへと進化を遂げた。彼らに必要なものは小さなガラス瓶に入れられた薬品のみ。現在、この薬品はかつての食品や飲料のように店に並び、人々はこれを買うことで安全な生活を送っている。

これは、命すらも金で取引されるようになったこの世界で生きる、彼らの物語。


( 真実 )
人間は遙か昔に滅亡している。現在生きているのは人間によって生み出されたロボット。ロボットたちの殆どは自分を人間だと思いこんでおり、食料を必要としないことに疑問すら持っていない。売り買いされている薬品はロボットの動力源。( 因みにこの薬品を入れる小瓶が題名の由来。小瓶はガラス製で5cm程の細長い滴型。 )
真実を知っている一部の政治家や研究者は『傘』の研究を行い、人間が生きていた頃より遙かに進んだ科学でその仕組みを探ろうとしたものの、どうしても理解することができなかった。発展した技術で駄目ならば、何が足りないのか。彼らは『傘』の原理を全て理解するために、まず人間の心理を理解しなければならないと考え、多くのロボットに自分たちが人間であると錯覚させるシステムを埋め込んだ。現在の社会は人間の心をロボットが持つように仕組まれ用意されたものであり、彼らの生活は常に監視されている。( 『傘』は半透明の固形物質。街には薄く伸ばされたそれが覆い被さっている。スノードームのようなイメージ。 )


 
   

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