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1対1のなりきりチャット
自分のトピックを作る
290:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-10-20 20:40:11
……これでも一応尊敬してますから。
友達みたいに接するのは難しいですけど……考えておきます。
( 雨音に混じって聞こてくる師匠の声に、耳を傾ける。大前提として尊敬しているし、年上だし、それこそ黄原みたいに粗雑に扱うことなんて出来ない。それでも、師匠が対等を望んでいるなら、そんな関係も悪くないと思えた。しかし「おきに同士」と聞こえた瞬間、どきりと心臓が跳ねた。ちゃんと意味を理解して言ってるのか?と傘の柄が軋むほど強く握り込み、じわじわと顔が熱くなっていく。気温に反比例して体温は上がっていく一方だ。ああ、考えないようにしていたのに、どうしても意識してしまう。師匠はきっと純粋な気持ちで、僕との距離を縮めたいと思ってくれている。だけど僕の方は、下心が無いとも言い切れない。仮にもあんたのことをどうにかしようとしている男に対して無防備ではないか、なんて師匠を責めたくなったが、僕の気持ちはまだ整理がついていないし、師匠にもしっかりと伝えられていない。それで警戒しろなんて言うのも自分勝手な話だ。しかし、今の距離感はあまりにも近すぎる気がする。師匠の背丈に合わせて傘を高く上げ続けるだけでも大変なのに、肩を掴まれたままでは歩きにくい。くっつかれたままだと心臓が暴れているのに気付かれるのも時間の問題だと、僅かに耳を染めながら離れようとして )
……そろそろ離してください。歩きづらいです。
291:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-10-21 03:22:42
( / お世話になっております!そろそろ銀座デート編の締めに入ろうかなと思っておりますが、やり残したことがあれば何なりとおっしゃってください……!
今回もとてもとても楽しかったです。小綺麗にしているのが珍しいのかと尋ね、肯定されて悶々としている理玖君が可愛すぎ案件でした(笑)リラックス理玖君も拝めたので、リラクゼーション体験させてよかった……!と心から思いました。今後のイベントにつながりそうな伏線もたくさん出てきて、ほくほくです……。
……本当かい?
まあね、黄山くんのような接し方じゃなくてもいいんだ。わがままの一つや二つ言ってみたりね。
( 彼の友人に、僕らの仲の良さを自慢して欲しいなんていうのもおかしな話ではあるが、おきに……、つまり大切な存在である以上その程度の願望は抱くものだ。浅木くんの反応を待つ間も肩に触れる指先でぱたぱたと小気味よいリズムを刻んでいると、一応尊敬していると言われて、ぱたっと指の動きが止まった。普段は世話を焼かれてばかりだが、彼の言動の端々から尊敬の念は感じ取っている。それでも、やはり嬉しさは隠せず、真意を確かめる言葉にもそれが滲んでしまう。だからこそ、友人のように接するのは難しいという返答には頷く。遠慮のない関係なら、泰雅との腐れ縁が分かりやすいが……、あれは幼馴染特有の雑さもあるだろう。第一、あいつを可愛いと思った事はない。結局、しっくりくる例えは思い浮かばなかったが、考えておくと言ってくれた浅木くんには満足げに笑った。ーー並木通りに再び差し掛かり、駅前周辺の活気が少し戻ってきたところで、離れたそうな声にふっと振り向き「おや、歩きづらかったか」と、ようやく手を退けた。暗がりの中、行き交う車のヘッドライトが彼の顔や耳元を照らしていく。やけに血色がよく見えるが、施術の効果が出ているのだろうか。色々理由はあったにせよ、連れてきて本当に良かった。駅へ続く階段が見えてきたところで「傘のエスコートありがとう」と微笑んでから、何かを思い出したようにはっとして )
あ、そうだ。聞きたいことがあったんだ。
寿司屋で気安くファンサするものじゃないと教えてくれただろう?
君に握手を求められた時に、ハグもするかい?って尋ねた気がするんだが、ブランディングとして軽率だったかい?
292:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-10-21 20:30:40
( / お世話になっております!今回も楽しくやりとりさせていただきました~!
師匠のためにおしゃれしてきたのに女子ウケのためだと勘違いされたりと見事にすれ違いコントしてましたね(笑) 浅木は師匠の顔が(もちろんそれ以外も)好きなのでなんでも許しちゃうんですけど……。
ギャラリーを隠して僕のことだけ見て!!状態の師匠もめちゃくちゃ可愛かったです。ありがとうございます……!
晩酌も海外遠征も楽しみすぎます!ぜひ人生経験が少ない浅木にいろんな世界を見せてやってください(泣)
さて、次はいよいよ臨時講師の話になると思うのですが、そこで一つ相談させていただきたいことがありまして……。
浅木の同級生として女子生徒を出そうと思うのですが、女子生徒はスキンシップが激しいタイプで、浅木に対して特別な感情はなく友人として接しているだけなのに、はたから見ると勘違いしてしまうかも……?という距離感で動かしてみようかなと思っています。
その女子生徒と浅木が話しているところを見た冬嗣さんが少しもやもやしたりしてくれたらいいな~という魂胆もあるのですが、展開的に問題ないでしょうか……?
( 「わがまま……」と呟きながら師匠の言葉を反芻する。そもそも人に何かを要求すること自体に慣れていないし、家庭環境の影響もあって昔から遠慮しがちだったから、わがままなんて言ってこなかった気がする。それを師匠の前なら言ってもいいと許可された。しかし、僕から何かしたいと言い出す前に、師匠がいろんな場所へ連れ出してくれるから、わがままを言う隙も無い。それに、僕の立場で言えるようなわがままなんて高が知れてる。おきに同士とはいえ、師弟関係である以上、師匠を独占したいという最大級のわがままは胸の奥に秘めておくしかない。それさえも受け止めてくれると期待するほど無謀にはなれなかった。――駅の入り口が見えてくると、屋根がある場所に着いてから傘を畳んだ。師匠からのお礼に軽く頷き返したところで、続けざまに問いかけられて数度瞬きをした。何かと思えば、初対面の時の話か。結局、あの時は流されるままハグしたような記憶がある。僕は嬉しかったけど、やっぱり他の人には気安くそういうことをしないでほしい。思わずわがままの片鱗を見せながら忠告して )
……ハグもダメに決まってるじゃないですか。僕はいいですけど、他の奴にはしないでください。
293:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-10-22 00:59:12
( / すれ違いコントはもはや師弟のお家芸となってきましたね(笑)それは絶対に冬嗣に知られてはならない情報ですね……!(笑)冬嗣、程々にしろ!と言いたいです。いつも冬嗣のお世話までしてくださって、本当にありがとうございます(深々)
ギャラリーの件、楽しんでいただけて嬉しいです~!銀座のルートを確認していた際、偶然思い出して取り入れた甲斐がありました(笑)余談ですが、今回集合した出口、実は改装工事中なんです……!開始早々、一人でワタワタしていました(笑)
理玖君には、これからも色んな世界を見せてあげたいです!今回、幼少期の背景を新たに知れたので、もう、より一層……!(泣)
そして、素敵なご相談ありがとうございます……!
ぜひぜひ、大歓迎でございます!冬嗣サイドで決めているのは講義の構成くらいなので、何も問題ありません。女子生徒の危うい(?)距離感を目にして、冬嗣がどんな反応を見せるのか、ぜひ楽しんでいただければと思います。
今回は理玖君の生活圏にお邪魔することになるので、大学での交友関係や、彼を取り巻く人間模様が見られるのを楽しみにしていました。本当に嬉しいです、ありがとうございます!
ちなみに冬嗣は、講義が始まるまで校内を散策したり、理玖君を探しに行ったり(バレないように)すると思います!(笑)
長くなって恐縮ですが、私からも冬嗣について一つ共有させてください……!
冬嗣は美術界隈では世界的に知られる画家ですが、本人の顔はあまり知られていない想定です。本人曰く「どんな人物が描いているか分かったらつまらなくないかい?」とのことで、画集や展覧会の紹介にも基本的に顔写真を掲載していません。
ただ、顔出し自体を嫌っているわけではなく、過去には画集発売時のサイン会も開催しています。自分の作品に興味を持ってくれた人には、冬嗣自身も興味津々。直接会ってみたいという好奇心から参加している感じです(笑)
そのため、関係者やサイン会に参加したファンなどを除けば、名前と顔が一致する人は意外と少ない、という設定で考えていますが、問題ないでしょうか……?
そして、銀座デート編はこちらで締めさせていただきました……!
毎度のことながら、萌えポイントを全部お伝えしようとすると読書感想文並みの長さになってしまうので、泣く泣く諦めています(笑)
臨時講師編の開始ロルをお任せする形になりますが、お好きな場面から始めていただければ幸いです……!
ちなみに冬嗣は、おめかしに気合を入れて、理玖君より後に大学へ到着する予定です! )
……おや、ファンサの手段がなくなってしまいそうだ。……ふふ。……まぁ、善処しようじゃないか。
( 浅木くんは僕のファンサをどう受け取っていたのか未知数だが、サインも握手もハグも軽率にしてはいけないらしい。これも弟子による藍原冬嗣のブランド戦略……なのか?それにしては、自分はいいけど他の奴にはしないで、という言い方は実に私情が漏れ出しているように感じて、ちらりと横目に見ながら一緒に階段を降りていく。一つはブランディング、もう一つは愛弟子による師匠独占欲。心が二つあったっておかしくない。憶測に過ぎないが。どちらにせよ、浅木くんのことはちゃんと特別扱いしなければならない。……君は全部貰ったのにね、とつついてみたくなったが、浅木くんなりの"わがまま"を受け取ったような気もするから、揶揄うのはやめて、善処すると笑った。──さて、僕がサプライズゲストで講義に現れたら彼は一体どんな反応をするだろうか。大学で僕がうっかりファンサをしてしまったら、浅木くんはどうするのだろうか。また意地悪嗣が芽を出したが、彼といるのが楽しくて仕方ないようだ。一人で妄想に浸ったあと「ところで今日のデザートは何かな?」と締めの甘味を強請るのだった。 〆 )
294:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-10-22 07:32:26
( / 私も銀座駅について調べた時に改装工事で閉鎖中と知って驚きました(笑) お話の中では問題なく使えてよかったです……。
冬嗣さんの顔出し事情についても相違ありません! 今回大学に来ることによって冬嗣さんのビジュアルの良さが広まってしまう可能性が……!?これは浅木も気が気じゃない……!!
素敵な〆もありがとうございます!ほんとに「おきに同士」という響きが最高すぎて……これからもどんどん擦り倒していきたい所存です。
それでは、さっそく女子生徒(桃乃(ももの)といいます!)を登場させつつ、講義が始まる少し前あたりで開始してみました。今回もよろしくお願いいたします~!
( 長い梅雨が明け、すっきりと晴れる日が増えてきた初夏。今日は臨時講師による特別講義があるらしい。しかし、講師が誰なのかというのは、未だに知らされていなかった。大学側の意向なのか、それとも講師側か。真意は分からないが、ようやく今日、その正体を拝む日が来た。――そろそろ講義室に向かおうかと思った矢先、誰かにぽんっと肩を叩かれて、反射的に振り向いた。そこにいたのは同学年の女子、桃乃だった。ギャルっぽい見た目で、人は良いのだが個人的に少しだけ苦手意識がある。『やっほー。りっくんもこれから講義?』と身に覚えのないあだ名で呼ばれて、それが自分を指していることに気付くまで数秒を要した。「……ああ、うん」と曖昧に頷くと『えっ、じゃあ一緒に行こー!』とにこりと愛想の良い笑顔を返された。普通だったら、こんな場面でドキドキしたり、脈ありだなんて期待したりするのだろうか。しかし、勘違いしてはいけない。桃乃は誰に対してもこんな感じだ。それほど仲良くもない僕にも気軽に声を掛けてくる。師匠と同じで、人類皆兄弟タイプ。どうやら同じ学科にいるというだけで友達認定されているらしい。陽キャすぎて怖いと感じる僕とは違い、隣にいた黄原はデレデレしながら桃乃に話しかけていた。おい、彼女がいるくせに他の奴にデレていいのか。黄原のこういう軽薄なところが僕は気に食わない。――それはそうと、特別講師というくらいなのだから、きっと著名人が来るのだろう。知っている画家が来たら嬉しいけれど……。と、知らぬ間にフラグを立てまくりながら、二人を連れて講義室へ向かい )
295:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-10-23 02:57:31
( / ですよね(笑)改装が終わったら、晴れて第二の聖地になりそうで密かな楽しみです……!
ご承諾ありがとうございます!理玖君、ただでさえSNSでの顔出しに過敏になっていたのに(笑)これは楽しみですね……。
実は、冬嗣がちょっとした炎上騒動に巻き込まれる事件があっても面白いかもと、ぼんやり考えていて。SNSでトレンド入りしてしまうような、スリルとハプニングのある展開で……。面白くなりそうだったら、いつかやってみたいなぁと!(笑)理玖君の護衛ムーブ見たさに思いついた、完全に私得な妄想ですが、忘れないうちにお話しさせてもらいました……!
嬉しいです……今の二人の関係を表すのに丁度良い言葉ですよね……!理玖君の言葉の破壊力が強くて、冬嗣もついつい絆されます。
素敵な開始ロルありがとうございます~っ!!
桃乃ちゃん!名前までギャルギャルしてて可愛いです!まさか冬嗣とギャルに通ずる特性が、理玖君の中にあるとは面白すぎます(笑)理玖君が少し苦手意識を持っているのも、なんとも可愛い。
とてもいい距離感で……、冬嗣に目撃させるのが楽しみでなりません。
講義の少し前というのも承知しました……!始まる前に、どこかで目撃させようと思います。
臨時講師編もぜひ、よろしくお願いします!
( 今日も今日とて、弟子に教わってセットしたアラームは鳴らなかった。彼曰く鳴っているそうだが、僕は一度も聞いたことがない。梅雨が明け、日当たりのよい縁側は日向ぼっこには少々暑い。それでも、じめじめした日々とおさらばできたのは喜ばしい。『弟子の心象01』も再び日の目を浴び、青空の下で悠々とたなびいていた。――さて、いよいよコイツの出番だ。事情を話して白戸さんに預けていたスーツを、居間の全身鏡の前で身に纏う。深い紺色のウール地は光を受けて青みを帯び、ゆとりのあるジャケットとすらりと落ちるスラックスが長身を引き立てる。淡いブルーのシャツに濃紺のタイを締めれば、鏡には普段と打って変わって堅苦しい紳士が映った。仕立て映えに満足し、鼻歌交じりに洗面台へ。珍しく前髪をラフに上げてみたが、……ふむ。少し冷たく見えすぎるか?昔、じいちゃんに「お前の目は志恵(ゆきえ)さんに似ている」と何度も言われたっけ。確かに、黙っていると気難しい母さんによく似ている。そう思って、にっと笑ってみた。――大学の最寄り駅からタクシーに乗り込む。窓の外を眺めるうち、浅木くんを驚かせる嬉しさと、かつて憧れた美大への好奇心が膨らんでいく。同じ志を持つ者たちが芸術に打ち込む場所。懐かしい憧れが鮮やかに蘇った。大学に到着したのは講義開始まで少し余裕のある時間。もっとも、集合予定には三十分ほど遅れている。正門前へ滑り込んだタクシーを出迎えたのは、僕を招いてくれた品の良いおじ……否、緑間教授だ。『藍原君……!相変わらずヒヤヒヤさせるね!』と息を切らす彼に、「すみません。財布やスマホが逃げ出すもので」と頭を下げた。忘れ物を何度も取りに戻ったと白状すると、教授は呆れてため息を吐きつつも、笑って許してくれた。さて、まだ時間はある。せっかくの美大、ぜひ見学したい。そう申し出ると、教授は渋々了承してくれた。浅木くんをこっそり見つける下心は伏せたまま、ウキウキと校内散策に繰り出して )
296:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-10-23 17:22:09
( / 炎上騒動……!?それは穏やかじゃない……!けれど展開としては楽しそうです!以前浅木がインターネットの恐ろしさを注意したところで伏線的なものが張られてましたし、回収してみたら面白いと思います!
SNSの炎上はさすがに浅木も手に負えないかもしれませんが、徹底的に師匠のメンタルサポートに回りそうな感じがします(笑)
冬嗣さんも距離感バグ発生しがちですからね(笑)そんな共通点もあるので、桃乃ちゃんとは一悶着あった後に仲良くなってくれたら嬉しいなと思います!
それでは、また何かあればいつでもお声掛けください!
( どうやら桃乃は、いつも一緒に講義を受けている友達が休んでいるため、その代わりとして僕達を誘ったらしい。唐突に立ち止まると『あ、ちょい待って。飲み物買うわ』と自販機に向かい出すマイペースっぷりだ。置いて行ってやろうかとも思ったが、ギャルに逆らう勇気は出なかった。しばらくして、戻ってきた桃乃が『はい、二人の分もどーぞ』と飲み物を差し出してきた。自分では絶対買わないような甘いカフェオレ。『……え、いいの?』と受け取るのを躊躇っていると『いいのいいの!』と半ば強引に押し付けられた。甘いものは苦手だと文句を言えるはずもなく「……ありがとう」と口だけの感謝を述べた。表情筋が硬いと本心を隠しやすくて便利だ。――波長が合うのか、楽しそうに話している黄原と桃乃の一歩後ろを歩いていると、黄原のスマホが鳴り出した。電話がかかってきたらしく、先に行ってて、と身振りで伝えてきたので、不覚にも桃乃と二人で講義室に向かうことになった。……気まずい。女子相手に何を話したらいいのか分からない。さっきまで黄原と何を話していたんだ。二人のすぐ後ろを歩いていたのに、まともに聞いていなかった。話題に困って沈黙を貫いていると『りっくんって大学以外だと普段なにしてんの?』と桃乃の方から話題を振ってきた。「……普通に、家事とか自炊とか」と答えると『えらすぎっ!?』と驚かれた。何が偉いんだ、と思わず眉を寄せながら視線を向ければ『ねえねえ、得意料理は?』と問いかけられる。よほど興味があるのかぐいぐいと距離を縮めてきて、いつのまにか体が密着していた。なんだこの距離感。師匠ならいいけど、やっぱり他人に触られるのは不快だ。嫌悪感を隠しきれず、すっと顔を背けて「和食」とだけ答えると『えーかっこいー!』とさらにテンションを上げてばしばし背中を叩いてきた。……ああもう、どうして講義室までこんなに遠いんだ。一刻も早く解放してほしいと祈りながら、小さく溜息を吐いた )
297:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-10-24 01:24:33
( / 興味を持って頂けて嬉しいですっ!インターネットのくだりを覚えていてくれてびっくりしました……さすがです……。
図太い冬嗣は、自分が炎上したことには案外あっけらかんとしていそうなのですが、理玖君にも影響が及ぶかもしれないと気づいた瞬間、メンタルをやられそうなので、サポートしてもらえる展開は美味しいかもしれません……!(笑)
炎上騒動のきっかけになる、冬嗣のかつての同期をサブキャラとして出そうかなぁ……なんて目論んでおります。
ホントに優先度は低くて大丈夫なので、刺激が欲しくなったらぜひ(笑)
絶賛もやもや中ですが、ぜひぜひ仲良くさせてくださいっ!(笑)
いつもありがとうございます。私も失礼いたしますね……!
( 講義資料の入ったトランクケースを手に校舎へ足を踏み入れると、自宅のアトリエと同じ、テレピンやペトロールの匂いが鼻をくすぐった。嗅ぎ慣れているはずなのに、妙に胸が躍る。フリースペースの机や椅子まで洒落ていて、壁に並ぶ学生作品には思わず吸い寄せられた。浅木くんの作品なら筆遣いで分かる自信がある。もっとも、僕の知らない挑戦をしていたら、それは天晴だ。キャンバスを眺め、念のためキャプションまで確認する。浅木……浅木……と探していると、後ろから『藍原君……!離れる時は一声掛けておくれ』と緑間教授が息を切らして追いついてきた。「失礼しました。ついつい……」と苦笑する。ちょうど個性豊かな学生たちが、ちらちらとこちらを見ながら同じ方向へ歩いていく。『今の子たちも、藍原君の講義を受ける学生たちだよ』と教授。つまり絵画科か。……浅木くんも、あの中に?ここで鉢合わせたらサプライズが台無しだ。なるべく学生とすれ違わない道をお願いすると、教授は少し遠回りの通路へ案内してくれた。僕の顔を見て気づくのは浅木くんくらいだろうが、ターゲットは彼ただ一人。……あ、黄山くんにもバレるかな。――そうして床まで届く大きなガラス窓の前を通りかかった時、向こう側の通路に見慣れた灯台頭を見つけた。浅木くんだ!大学で見る彼の姿はなんと誇らしいことだろう。ぱあっと顔を明るくした矢先、派手な女の子が彼に飲み物を差し出した。……おや、お友達かな。ラベルにはカフェオレ。視力には自信がある。しかもあれは甘いやつだ。以前、近所を散歩した時に自販機で買って飲んだものと同じ。甘いものが苦手な浅木くんは、あの時も一口も飲まなかった。……なのに、今日は受け取っている。……気を遣った?いや、彼ならきっぱり断りそうなものだが。気づけば壁伝いに通路の角まで近づいていた。そっと顔を覗かせると、会話の詳細までは聞き取れないものの、『りっくん』という呼び方だけははっきりと耳に届き、思わず真顔になる。そのうえ女の子がぴたりと密着して、どきりとした。……なんだ、今の。『かっこいー!』と弾む声。浅木くんも離れる様子はない。……まんざらでもないのだろうか。――そっと顔を引っ込め、壁に背を付けた。眉間に皺が寄る。……そうだ。彼はとてつもなく、モテるんだった。今のはアプローチされていたに違いない。しばらく白い床を見つめ、「りっくん……」と誰に言うでもなく呟いたところで、とんと肩を叩かれた。またも汗だくの緑間教授だ。どうやら無意識に置いてきてしまったらしい。教授は先に講義室の準備をするから、この辺で待っていなさいと念を押し、足早に去っていった。……さて、どうしたものか。もはや講義どころではないというか……、もう一度だけこっそり顔を出して、浅木くんたちのいた方を見ようか悩んで )
298:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-10-24 18:26:26
( 少しずつ距離を取っていることに気付いているのか否か、桃乃は遠慮なく顔を覗き込んでくる。ぱっちりとした大きな瞳を見下ろしながら「あの……顔、近い」と指摘すると『あーごめん!』とすぐに離れていった。意外と聞き分けが良くて助かった。その後も、無愛想な態度を取りすぎたせいか『りっくん、うちの反抗期の弟に似てる』なんて好き勝手言われる始末。それから、桃乃の話術に乗せられるまま、つい口を滑らせて師匠の存在を教えてしまった。あまり言いふらすことではないからなるべく隠しておきたかったのに。桃乃は『え!?藍原冬嗣!?ヤバすぎ!!』と今までにないほど興奮を見せている。他の友達に師匠のことを話した時も同じような反応をしていた。流石、師匠は知名度が高い。一瞬自分のことのように誇らしい気持ちになったが、その後が大変だった。『どんな人なの?』『イケメン?』『師匠の家って広いの?』と質問の嵐。当然答える気にもならず「……師匠のプライバシーに関わるから言えない」と、すべて却下して藍原冬嗣ブランドを守った。――そうこうしているうちに、ようやく講義室に辿り着いた。すでにそれなりの人数が集まっていたが、前方には空席があり『あそこ座ろ~』と桃乃に腕を引かれるまま席に向かった。講義が始まるまで、残り数分ほど。期待感を膨らませながら、開始時間を待って )
299:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-10-25 03:17:09
( もう一度壁の陰から顔を覗かせ、すぐに後悔した。二人の距離はキス三秒前。反射的に顔を引っ込め、壁に背を押し付ける。……していないよな?ほんの一瞬しか見ていないが、第一、浅木くんは紳士だ。公共の場でキスなどしない!いや、あくまで浅木くんの場合、だから……あの子はどうだろう。でも、案外お似合いかもしれない。少し強引なくらいの彼女なら、控えめな浅木くんを引っ張ってくれる場面もあるだろう。将来はああいう子と結ばれるのかな。そして、僕もいずれは。……でも今は、今だけはおきに同士でいたっていいじゃないか。――そんなことを考えているうちに、いつの間にか二人の姿は消えていた。講義開始も迫っている。慌てて講義室へ向かうと、『藍原先生、本日補佐を務めさせていただきます』と女性スタッフが声を掛けてくれた。プロジェクターの操作を手伝ってくれるらしい。PCは持参したものの、投影の最終確認には少々手間取り、とうとう開始時刻になってしまった。こちらの様子を窺っていた緑間教授が、心得たように紹介を始める。『皆さん、お待たせしました。本日は特別講師として、画家の藍原冬嗣先生をお招きしております。藍原先生は、若手作家の登竜門として知られるVORA賞を受賞され、独自の心象表現で高い評価を得られました。現在は国内外で幅広くご活躍されています』――入口脇でスタッフから準備完了の合図を受けた頃、教授の紹介はまだ続いていた。『また、そのご経歴も非常に異色で、東◯大学医学部医学科に在学中から画塾で研鑽を積まれ、卒業後は医師として臨床研修に従事されました。その間にも初の画集《MEMENTO MORI》を発表されています。実は私も、当時その画塾で指導にあたっておりましてね。こうしてお迎えできることを、大変嬉しく思います。それでは、藍原先生。よろしくお願いいたします』汗を拭う教授のもとへ歩み寄り、差し出されたマイクを受け取って一礼。教壇に立ち、改めて学生たちを見渡すと、真っ先に飛び込んできたのは浅木くんの姿だった。おや、こんなに前の席に座って熱心だ。感心すると同時に、ドッキリ大成功。してやったりと目を細めたが、その隣には例の女の子。……りっくん。いや、私は今、講師なのだ。浅木くんが自慢できる師匠として、気持ちを切り替えなければ。普段通りの笑顔で口を開く。ところが、教授の経歴紹介に引っ張られたのか、登場早々退場しそうな言い回しになってしまい )
どうも、皆さんこんにちは。藍原冬嗣でした。……あ、失敬。藍原冬嗣です。
( / 念のため補足ですが、今回初めてお出しした医学部卒業や医師としての経歴は、プロフィールにも未記載だった設定です。冬嗣自身も理玖君にはこれまで話していないので、今回が初耳という想定です……!事後の補足になってしまいすみません(汗) )
300:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-10-25 15:49:49
( ついに講義が始まった。緑間教授がマイクを持ち、臨時講師の紹介をする。そして、その名前が告げられた瞬間、頭が真っ白になった。――……今、藍原冬嗣って……。状況を処理できずに固まっていると、『りっくんの師匠じゃん……!来るって知らなかったの?』と桃乃が耳打ちしてきた。放心状態だったがハッと我に返り、無言で頷く。『え、なんで?』と言われても、僕だって分からない。藍原冬嗣って、僕が知ってる藍原冬嗣でいいんだよな。藍原冬嗣という名前が頭の中でぐるぐると回り始めた頃、師匠の経歴が次々と明かされていき、更なる混乱に陥った。東大医学部、って……師匠は美大出身じゃなかったのか。それに医師だった時期もあるなんて、全く知らなかった。まさかこんな形で師匠の経歴を知ることになるとは。師匠の口から直接聞きたかったなんて、今更どうしようもないことを考えてしまう。――そして、いよいよ師匠が登場した。……うわ、本物だ。本当に僕が知っている藍原冬嗣が来た。見たことがないスーツに身を包んでいる。何だ、あのスーツ。新品か? いつのまに仕立てたんだ、と目を凝らしてると『顔、良っ……』と隣から感嘆の声が聞こえた。……右に同じく。師匠はすっかり雰囲気が変わり、凛とした佇まいを見せている。前髪も上げていて、デキるビジネスマンみたいで格好良い。見慣れない姿に少し緊張したが、話し始めればいつも通りの天然っぷりを発揮していて、ガクッと拍子抜けする。……この人が医学部卒ってマジか。未だに信じられない。どうして、臨時講師になることを教えてくれなかったのか。いたずらにしても度を過ぎてる。僕を驚かせるためだけに、どれだけ手間をかけているんだ。少し前からどこか違和感がある言動が多いと思っていたが、これが原因だったのか。諸々言いたいことはあるが、講義中であるため、ぐっと堪えて師匠に視線を向ける。心情としては、呆れ九割、嬉しさ一割ほど。藍原冬嗣の講義が受けられるという、高校時代の僕なら手を叩いて喜ぶようなシチュエーション。折角なら真面目に向き合いたい。一つ一つ感情を整理して、ようやく落ち着きを取り戻すと、改めて師匠の話に耳を傾けて )
( / 東大!?医学部!?医師!?と新情報だらけで、めちゃくちゃ驚きました……!!同時に、そりゃ英語がペラペラなわけだ……と納得感もありました(笑)
あらためて冬嗣さんのスペックの高さを実感しました……浅木も釣り合うように頑張ります……!
冬嗣さんの過去について個人的に考察していると、新情報のおかげでいろいろ見えてくることもあって……。まだまだ知らないこともたくさんありますが、少しずつ知っていけたら嬉しいです。
余談ですが、300レス突破しましたね!これからも末長くよろしくお願いいたします。
301:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-10-26 03:52:16
さて、今回の僕の講義で皆さんに考えていただきたいのは、「絵の才能ってなんだろう?」ということです。
( 言い間違いを訂正して教室を見渡せば、再び浅木くんへ目が留まる。教壇からは少し距離があるため表情までは読み取れないが、どうやら先ほどの驚きも落ち着いたらしい。今は真っ直ぐこちらに目を向けている。ふふ、仕掛けた甲斐があった。どうやら講義も真面目に聞いてくれるようだし、僕も張り切らなければね。口元が緩むのを抑え、ホワイトボードへ向き直った。題目を書き記し、隣には首を傾げて考え込む猫の顔を添える。なかなか愛嬌のある仕上がりに満足すると、学生たちへ向き直った。「皆さんご存じか分かりませんが、藍原先生は稀代の天才とよく言われます。絵の才能があると。……私もそう思います」と、さも他人事のように紹介してみせる。謙遜するつもりはないが、時々考える。絵の才能とは、一体なんだろう。「皆さんは、なぜ美大を目指したのでしょうか。才能があるから? それとも、才能が欲しいから? ……どちらでもないという人もいるでしょうね」と教室を見渡し、猫の頭上に疑問符を書き足した。「それらしい答えに辿り着くには、少し例題が必要かもしれません。あ、ええと、1ページ目をお願いします」と女性スタッフに声を掛ける。やがてスクリーンには、人物画、宗教画、風景画、日本画と、題材も技法も異なる四枚の作品が並んだ。「僕は一応、心象画家を名乗っていますが、結構ジャンルを問わず描いています。……では、順番に見ていきましょうか」と、まずは宗教画を拡大してもらう。「こちらは僕なりに解釈した《最後の晩餐》です。宗教画ってちょっと面倒でね、少しお勉強が必要なんです。知識のある人には誤魔化せませんし、西洋美術では、宗教画を含む歴史画が高く評価されてきた時代もあります。……もっとも、僕はそういう理由で描いたわけではないんですが」と笑ってみせる。古典的な図像や構図にはそれぞれ意味があり、知らずに描けば意図しない解釈を招くこともある。だからこそ、調べることも制作の一部になるのだ。「知らないことを知るのは面白いですよ。描けるものが増えますからね」と付け加え、次の作品へ。画面に現れたのは、古い日本家屋のアトリエで制作に没頭する青年だった。窓からの光が筆を握る指先や肩を照らし、俯いた横顔は金色の前髪に隠れている。表情こそ判然としないが、手元や衣服の皺、身体の傾きは精緻に描き込まれていた。対して背景は、人物を引き立てるように描写の密度を抑えている。ただし、室内の間取りや画材の配置は忠実に写し取られており、その場所を知る者ならば見覚えのある景色だと気づくだろう。スクリーンに目を向け、口元を緩める。描きたかったのは、目の前の制作にひたすら集中する、一人の人間の姿だった。自画自賛もほどほどに、学生たちへ顔を向けて )
これは《絵に魅せられた人》。比較的最近描いた人物画ですね。絵を描く人を描くのって面白いんですよ。……ほら、こんなに夢中になって描いている。なかなかいい絵でしょう?
( / 背後様にもドッキリ大成功(?)だったようで嬉しいです!!実はこれまで随所に伏線を散りばめていたものの、いざ明かすとなると、盛りすぎ設定だと思われないかドキドキしていました……(笑)
とんでもないっ!本当に才能が偏りすぎていて、それ以外は原始人なので!理玖君はすでに十分素敵で立派なお方です……!!でもでも、理玖君の裏背景が明かされるのは、私もめちゃくちゃ楽しみにしています!
なんと……考察までしていただけて感無量です……。冬嗣を大切にしてくださって、本当にありがとうございます(泣)
理玖君との関係性が変化するたびに、少しずつ明かせることもあるかもしれませんし、物語の良いスパイスになれば嬉しいなと思っています……!
本当ですね、気が付けば300レス……!(拍手)嬉しいです。こちらこそ、末永くよろしくお願いいたします~!
しばらく講義は冬嗣のターン盛り盛りになってしまいますが、お付き合いいただけると嬉しいです……! )
302:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-10-26 20:10:49
( ――絵の才能。講義の題目が発表され、頭の中でその言葉を繰り返す。日々、師匠との才能の差を痛感している僕にとっては、興味深いテーマだ。ホワイトボードに描かれたあの猫の絵は、度々目にしている気がする。絵が上手い人がさらりと描いた絵は、なんというか、グッとくるものがある。隣のギャルからも『かわいい~』と好評だ。こちらに向き直り真顔で自画自賛をする師匠だが、実際、才能があるのは間違いないので、認めざるを得ない。しかし、才能を持たない学生の反感を買いかねないのであまり言い過ぎないようにしてほしい。……僕自身も、どちらかといえば才能が無い側の人間だと思っている。技術面は努力でどうにかしてきたものの、一方で発想力や独自性は乏しくて、どこまでいっても凡人でしかなく、個性がない。それでも、僕は絵を描くことしか好きになれなかった。食にも服にも色恋にも関心が薄い僕が、唯一夢中になれるものだから。この大学に現役で合格できたのも、奇跡のようなものだと思っている。……藍原冬嗣の弟子になれたのだって、奇跡だった。師匠は僕の何を見て、弟子に迎えてくれたのだろう。便利な世話係としてそばに置かれているだけだったらどうしよう、と思うこともあるが、流石にそれはない。師匠は僕が絵を描いてると、なんとなく嬉しそうにしているから。僕を一人の画家として尊重してくれていることも伝わってくる。――ノートを取りながら、普段とは打って変わって随分と教育者らしい真面目な発言をするものだな、と若干失礼なことを考える。次の瞬間、新しい作品がスクリーンに映し出された。目に入った瞬間、思わず背筋がぞわりとした。何も恐ろしい絵という訳ではない。絵を描いている青年をモデルにした人物画だった。しかし、どこか見覚えがあるような風景で……いや、あれはどう見ても……。桃乃も察したのか『……あれ、りっくん?』と問われたが、返事をする気力も湧かずに聞こえないふりをした。別の席にいる黄原も、今頃もしかしてと思いながら面白がっていることだろう。その様子を想像するだけで辟易とした。……本当に全く気が付かなかった。いつのまにかモデルにされていたなんて。モデルになってもいいと言ったことはあるが、何も言わずに描かれたら良い気持ちはしない。一声掛けてくれたら、普通に協力したというのに。師匠をじーっと見つめる視線が、不満を訴えるように段々と鋭さを増していって )
( / 冬嗣さんの講義、本格的ですごくって……!講義を受けている一員になったつもりで勉強させていただきます……!
それでは、引き続きよろしくお願いします!(蹴可です!)
303:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-10-27 14:27:53
( 学生たちの表情を辿っていると、ふと一人と視線がぶつかった。いや、浅木くんである。細かな表情までは見えないが、どうも……睨まれている?あの絵に何か問題でもあっただろうか。あとで聞いてみよう。軽く首を傾げ、スタッフに合図を送った。スクリーンに映し出されたのは日本画。墨と岩絵具で描かれた一幅の掛け軸。山間に浮かぶ白い月へ、茶褐色の虎猫が逞しい胸を反らせて吼えている。ところが、腰から下には人間の骨格と筋肉が備わり、全身は猫の被毛に覆われた半獣の姿をしていた。その首には、愛らしい鈴付きの首輪が下がっていた。「こちらは《愛猫記》。皆さん、中島敦の『山月記』はご存じですか? 実は近所に、りちょうという名前の茶トラがいましてね」と、作品の由来を紹介する。李徴が虎へ変貌する過程で、人間の身体が残っていたら。そんな発想から半獣の姿にしたことも説明したが、モデルの本人はいたって気ままに暮らしている。「そういえば、これは未発表だったかな。りちょうの飼い主さんにプレゼントした気がします」と、記憶を辿りながら付け加える。「岩絵具は粒子の粗さによって発色や質感が変わりますし、墨も水加減一つで表情が変わる。油絵具とは随分勝手が違うんですよ」と、細部を拡大して見せた。ーー続いて現れたのは、夜明けの都市風景画。路上にはゴミが散乱し、黄色みを帯びた靄が、昨夜の熱気や臭気を閉じ込めるように街を覆っている。「これは《水曜日の新宿》。学生時代に描いたものですね。……汚いだろう?」と、楽しそうに笑った。続けて、大学の同期たちと飲み明かした水曜日の朝、街の惨状に驚いたこと、それなのに日中には何事もなかったかのように整えられていることを話し、「……さて、皆さん。一体、誰が綺麗にしているんでしょう?」と問いかけながら学生たちを見渡す。「気になったので、待ってみたんですよ。寝ないように、近くにいたホームレスの方に構ってもらいながらね」と、何気ない調子で続けた。そうして目にしたのは、区の清掃員だけでなく、店の人やボランティア、早出の会社員までがゴミを拾い、傍らではカラスやネズミが残飯を漁る光景だった。その一部始終を、答え合わせのように語った。「実は、この絵には新宿の遺物も使っています。水彩とアクリルの併用でね。廃棄予定の絵具を譲ってもらい、画面の凹凸や、この青空にも使いました。綺麗な青だよね。……僕はこうして、素材そのものに意味を持たせることもあります」スクリーンに映る、白く霞んだ空を指し示す。「……東の方は、もう青空だったんですよ。大学には見事に遅刻しましたけどね」あの景色を見なければ、きっと知らずに過ごしていただろう。「フィールドワークは面白いですよ。皆さんにも、ぜひ自分の足で歩いて、色々なものを体験してもらいたいですね」そう勧めたところで、改めて学生たちへ問いを投げかけて )
さて、才能があると言われる僕の絵を見てもらいましたが……はたして、絵の才能とはなんでしょうね。今回紹介した作品には様々な技法や画材を使っていますし、題材も宗教や文学から、身近な日常まで多岐にわたります。
才能とは、技術でしょうか。それとも、題材を見つける力でしょうか。……ふふ、少し考えてもらいながら、次へ進みましょうか。
304:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-10-27 21:39:45
( 師匠の方を睨むのもそこそこにスクリーンに目を向けると、次の絵が映し出された。山月記と近所の猫をモチーフにしたという日本画。モデルになったりちょうとは、何度か会ったことがある。あの絵に描かれた半獣とは似ても似つかない可愛らしいフォルムの猫だ。少し目が合うだけでしゃーしゃーと威嚇されるので、僕はあまり好かれていないのかもしれないが。山月記も高校生の時、授業で習った記憶がある。確か、あの話も才能について書かれていた。李徴は才能を持っていたが、自尊心の高さと臆病さゆえに、自らの才能を十分に磨くことができなかった。……あれは詩の話だったが、絵にも通ずるところがある。このタイミングで紹介するということは、きっとこれもヒントになるのだろう。――次の絵は風景画だった。朝の新宿の荒れた様子が描かれている。誰が片付けているのかと気になって、ホームレスと一緒に待っていたという話には、一瞬ぴくりと眉が動いた。しかしその後に続いた『綺麗な青だよね』という言葉には無意識に頷いていた。こうして見ると、師匠の視野の広さと並外れた好奇心の強さが分かる。興味を持つ対象が広いというか……この世の全てを絵の題材にしてやろうという気概を感じる。きっと全てに色が見えるんだろう。人の感情にも、物にも、景色にも、僕には見えない色が見えている。そして、それを絵にする技術もある。……これが師匠の持つ絵の才能なのだと、個人的に思っている。けれど、師匠が求めている答えには、まだ辿り着けていない気がした。 )
305:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-10-28 17:00:37
……あ、そうだ。皆さんは作品を展示したことはあるかな。グループ展とか。……どれくらいいるんだろう。
自分の作品を客観的に見る、いい機会ですよ。良くも悪くも批評されるので、覚悟は必要ですが。
( 次の作品を映すまでの間、展示の話題を挟む。浅木くんには出展経験があっただろうか。まだなら今度勧めてみたい。思わず彼を見ると、隣の女の子まで視界に入ってモヤんとする。……いけない、今は気にするな、冬嗣。気を取り直して、19歳の頃のエピソードを話し始めた。「知らないおじさんに、良い作品だけど技術面では荒削りだ、って言われてね。カチンと来て、意図的なんだけど、と反抗したんです。……けれど、自分の表現を技術的に説明できなかった」知らないままにしていた自分を恥じ、それを機に画塾へ通い始めたのだと。「では、学んだ技法を思うままに活かした作品を観てもらおうかな」と、スタッフへ合図を送る。現れたのは、画集《MEMENTO MORI》の表紙を飾った聖母像。バロック絵画を思わせる劇的な明暗と精緻な人物描写。その端正な像を崩すように、毒々しい青が花弁となって咲き広がり、湿り気を帯びた赤が侵食している。輪郭には幾筋もの傷が走り、厚く盛られた絵具が生々しい軌跡を残していた。「19の頃の僕には到底思いつかなかった題材で、扱えなかった技法です」と、画材の特性や技法を選んだ意図にも触れる。「僕はね、聖母像を見ていると、少し考えてしまうんです。マリアの処女性には、信仰上の大切な意味がある。けれど、僕らはその姿に、いつの間にか『女性は清らかであるべきだ』という理想まで重ねてはいないでしょうか。……その理想を掲げる僕ら自身は、愛情も欲望も抱えた人間だろう?」と、問いを投げかける。「青には静寂や神聖さを。赤には、もっと肉体的なものを込めました。愛情や欲望、そして死。人間は理性によって本能を制御できると考えたがるけれど、その裏に隠しているものも、僕自身の内側も……暴いてやる、って感じでね」ふと当時の衝動が蘇り、目をわずかに見開いて、口元を歪めた。「この傷はナイフでスクラッチしています。自分の爪でも引っ掻きましたよ。……もっとも、爪を綺麗にするのが大変なので、あまりおすすめはしないかな」と、いつもの調子に戻る。「……つまり、これはパンクなのですよ。僕は絵筆を破壊したりしないけど」とへらついた。ーーさて、次の作品はどうだろう。スクリーンに現れたのは、幾層もの青を重ねた大画面の油彩画。海と夜空の境界は溶け合い、細部には人の手や腕、沈みゆく人工物の輪郭が浮かぶ。指紋や血管、葉脈を思わせる線は、転写ではなく一筋ずつ丹念に描かれたもの。所々に施された金箔が微かな光を返し、失われたものの面影を青の奥に留めているようだった。「こちらは《記憶の轍》。VORA賞をいただいた作品です」と紹介し、二枚を並べてもらう。「……不思議でしょう。同じ人間が描いているのに、随分違う。前の絵では、もっと切実な衝動に突き動かされていたように思います。でも、この頃は、失われたあとに何が残るのかを考えるようになったんです」人間の感性は、一つの場所に留まらない。誰かと出会い、別れ、同じ景色にも違うものを感じるようになる。作風の変化を否定的に捉える人もいるだろう。けれど、目の前の学生たちには、変わることを恐れてほしくなかった。「人生と共に、作風はいかようにも変化していきます。どちらも、その時の僕にしか描けなかった絵です。……僕にとって絵は、言葉よりも等身大の自分を表しているのかもしれませんね。感性という言語で」一度学生たちを見渡し、ホワイトボードに書いた題目へ目を向ける。バァン!とボードを叩き、「さて!才能について考察してもらいましたが、ずいぶん寄り道をしました!」と声を張る。思いがけずマイクの音が割れてしまい、小さく「失敬」と詫びてから )
今日、僕の絵を見てもらったのは、学びや経験によって発想の幅が広がり、技術も伸びて、表現の可能性が増えていくことを知ってほしかったからです。
もちろん、生まれ持った感性や得意不得意もあるでしょう。けれど、僕はそれだけで才能を決めたくありません。
絵の才能とは、『絵が好きなこと』だと僕は考えます。
306:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-10-30 01:05:51
( ノートが埋まってきたので次のページを捲りながら、作品展示の話に耳を傾ける。思い返してみれば、大学の外で作品を発表する機会は無かった。批評を受けるのも覚悟の上で、そういう場に出展するのも良いかもしれない。大学で講評される時も褒められることの方が少ないから、厳しい意見には慣れている。画塾に通い始めたきっかけのエピソードの後、スクリーンには何度も読んだ画集《MEMENTO MORI》の表紙が映し出された。……当時の師匠はどんな想いで作品を生み出していたのか、ずっと気になっていた。ようやく本人の口から、その話が聞けるのだろうか。そう思うとつい前のめりになってしまう。――しかし、その姿勢は長く続かなかった。話を聞いているうちに、何だか圧倒されてしまった。やはりあの人は、僕が憧れた藍原冬嗣なんだと思い知らされた。師弟関係になって一年ほどが経ち、師匠との距離も縮まったと思っていた。それでも僕が知っているのは、藍原冬嗣の中のほんの一部分でしかない。師匠の過去を、僕は全くと言っていいほど知らない。……そう思うと、少し寂しかった。彼の存在の大きさを改めて思い知るのと同時に、自分がどれほどちっぽけな存在なのかも痛感した。僕は絵と向き合う時、あれほど感情的になれるだろうか。みるみるうちに自信が萎んでいく。次の作品は、前の作品と比較すると穏やかな印象だった。作風が変わったとしても藍原冬嗣の魅力が消えることはなく、結局、僕はどんな絵であろうと彼が描いた作品が好きなんだと実感した。――そして、突然鳴り響いたホワイトボードを叩く音にびくりと肩を跳ねさせた。師匠に視線を向け、ついに告げられた答えに、思わず首を傾げた。『絵が好きなこと』……それだけ?……そんな、単純なことでよかったのか。その答えを当てはめたら、僕にも才能があるということになる。絵が好きだから、この道を進んでいる。雲上人のような藍原冬嗣に対して、勇気を出して頼み込み弟子入りさせてもらったのも、本気で絵と向き合いたかったからだ。……僕に足りないのは才能ではなく、もっと他のものだったのだろうか、と自分なりに師匠の言葉を咀嚼して )
307:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-11-01 13:53:34
( 数学の問題とは違い、明確な正解のない問いに、『絵が好きなこと』という結論を渡した。生徒たちの反応もさまざまだろうと思いながら、講義室をじっくりと見回し、最後に浅木くんを視界に収めると、にこりと微笑んだ。「単純すぎて拍子抜けした人のために、お金で例えてみようか。お金が欲しいと思ったとき、本当に欲しいのはお金そのものなのかな」と、身近なものに置き換えてみる。欲しかった物を手に入れる喜び、暮らしの安心、誰かと過ごす幸福な時間。お金を増やすこと自体が好きな人だって、そこには達成感や安心、集める楽しさがあるだろう。つまり、お金そのものを求めているようでも、その奥には何かを得たいという動機があるのではないか、と続けた。「そう考えると、お金はある種の『手段』と言えるね。絵の技術も似たところがあると思うんだ。上手くなりたいと思ったとき、何のために上手くなりたいのか。描きたいものを描くためかもしれないし、技術を磨くこと自体が楽しいのかもしれない。どちらも素敵なことだよ。では、そもそも描きたいものが思い浮かばない人はどうすればいいだろう? そんなときは、経験を増やしてみるのもひとつの方法だね。知らない場所へ出かけたり、誰かの話に耳を傾けたり、いつもの景色を違う時間に眺めてみたり。そこで何かに心が動けば、それが発想の種になるかもしれない。技術を学ぶことも、経験を重ねることも、自分の表現を広げるための手段になり得るんです」ホワイトボードに向き直ると、題目の下に矢印を伸ばして【結論のようなもの】と書き足した。そこから『問い→行動原理→結論』と繋ぎ、先ほどの猫に続けて、心を弾ませたり、しょんぼりしたりする猫を描き足しながら再び口を開く。「なぜ、僕がその結論に至ったのか。僕自身がそうだったから。今、この瞬間の出来事に心が動く。こんな絵が描きたいと思う。けれど、上手く描けない。だから技術を学ぶ。それをずっと繰り返していると、時には絵に裏切られたような気持ちになることもある。それでも、また描きたいと思う。この行動原理は何なのか。考えてみると、結局は『絵が好きだから』という根本的な動機に辿り着いてしまうんだよね。僕は。好きだからこそ、学び、描き続けようとする。だから僕は、その気持ちも立派な才能だと思っているんです」改めて生徒たちの方へ向き直る。さて、講義もそろそろ終盤だ。僕が今日一番渡したかった言葉を、最後にそっと添える。全員に渡したいけれど、思いついたときに浮かべていた顔は、たった一人だ。「そして、制作に悩んだり、自分が何を描きたかったのか見えなくなったときは、『絵が好きだから描いている』という気持ちを、戻れる指標のひとつとして持っておくといいかもしれません。……というお話でした」――緑間教授が拍手を送ってくれる中、「それから、最後に『藍原冬嗣テスト』も配ります~」と告げ、女性スタッフへ「……プリントの配布をお願いします」と小声で合図を送った。ほどなくして、事前に用意してもらった大量のプリントが前の席から順々に配られていく。実際には講義のアンケートなのだが、どうにも出題者の主張が強い内容だった。緑間教授も一枚手に取ると、何やら目を落としていたが、やがて気を取り直したようにマイクを握る。『それでは、最後に質疑応答の時間を設けます。藍原先生に質問のある方は、挙手をお願いします』 )
別紙:講義で配布されたプリント
藍原冬嗣テスト
(アンケートです)
問1 講義は面白かったですか?
普通以下の人はちょっと来なさい。
問2 絵を描き始めたきっかけを教えてください。
因みに藍原先生は初恋がきっかけです。
問3 猫派? 犬派?
因みに藍原先生は黒猫とハスキーが好きです。
問4 藍原冬嗣の好きな色は?
これはクイズです。答え合わせはできませんが。
問5 あなたにとって絵とは何でしょう?
因みに藍原先生にとっては理想の恋人です。
問6 君の目にしか見えていない◯◯がある。
虫食い問題です。◯に好きな言葉を入れて遊んでもいいでしょう。
308:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-11-03 19:17:57
( 絵の技術は手段でしかなくて、他に目的があるから技術を磨く。……確かに、その通りだ。周りと比べて劣っているから、上手くなりたい。追いつきたい。そんな焦燥感に駆られることもあるが、どうしてこんなに焦るのか、と初心に立ち返ってみれば、絵が好きだからこそ誰にも負けたくない、という結論に辿り着く。結局のところ、ただの負けず嫌いだ。絵が好きだから、本気になる。本気だから負けたくないと思う。それだけの話。我ながら意外と泥くさい思考をしているものだと内心呆れたが、これが何も取り繕わない本来の自分なのだろう。最初は、留守番中の暇つぶしとして何気なく始めたことだったが、まさかここまで真剣になるとは思わなかった。それもすべて藍原冬嗣に出会ったおかげだ。彼の絵に喰らって、この人みたいな絵が描きたいと思って、暇つぶしの娯楽が、真剣な夢に変わった。僕は師匠のように好奇心旺盛でもなければ、人生経験が豊富でもない。だからこそ、卒業制作に悩んでいると話した時、師匠はいろんな場所に行こうと課外活動を計画してくれたのだろう。そのおかげで、今は少しずつイメージを膨らませることができている。そして『指標のひとつとして持っておくといい』という師匠の言葉が、じんわりと胸に響いた。……好きという気持ちは、ずっと抱えておくにはあまりにも重苦しい感情だから、見て見ぬふりしたくなる時もある。けれど、描き続けるためにも、大事にしておかないといけない。そのことに気付かされた。――張り詰めていた息をゆっくりと吐きながら目を閉じていると、プリントが配られると聞いて一瞬息が止まる。……プリント? と疑問を抱いた頃にはもう手元に紙が配られていて、軽く目を通す。講義のアンケートにしては関係ない質問が多いような気もするし、師匠の一言コメントで初恋や理想の恋人といった恋愛絡みのワードが書かれていることに不覚にもドキッとしてしまう。師匠の初恋、気になるな……と悶々としながらも答えを記入していく。そして、質疑応答の時間を迎えると、隣の桃乃がものすごい勢いで手を挙げた。思わず呆気に取られて出遅れたが、自分も静かに挙手して )
問1 講義は面白かったですか?
はい。とても興味深く、勉強になりました。
今回学んだことを活かして、今後も絵と向き合っていこうと思います。
問2 絵を描き始めたきっかけを教えてください。
一人で留守番をすることが多かったので、暇つぶしとして絵を描いていました。
問3 猫派? 犬派?
猫派です。あまり動物には好かれませんが。
問4 藍原冬嗣の好きな色は?
青。今は違いますか?
問5 あなたにとって絵とは何でしょう?
僕が唯一夢中になれるものです。
問6 君の目にしか見えていない◯◯がある。
虫食い問題です。◯に好きな言葉を入れて遊んでもいいでしょう。
師匠は"世界"とおっしゃっていましたが、僕は"色"だと思います。
309:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-11-04 14:11:31
( 『藍原冬嗣テスト』に取り組む学生たちの姿をにまにまと教壇から眺めた。満点を取れるのはうちの弟子だけであるという密かな優越感に浸りながらも、同志たちが絵を描き始めたきっかけやら、彼らにとって絵とは何かを知れるのはまたとない機会だ。読むのは帰宅後の楽しみにとっておこう。ああ、でも浅木くんが何を書いているのかとても気になる。そこで集中の糸がぷつりと切れ、講義中とは打って変わって、教壇の周りをふらふらと歩き回る。実に窮屈な靴だ。裸足になりたい。しかもスーツが暑い。脱ぎたい。一度気になり始めると、もう我慢が利かない。とうとう足が浅木くんの席へ向きかけたところで、緑間教授の声が講義室に響いた。――質疑応答が始まるや否や、前方の席から勢いよく手が挙がった。おや、あれは浅木くんと良い感じの子じゃないか。積極的で実に素晴らしい姿勢だと素直に感心したものの、君とはちょっとした因縁があるんだよね、と胸の内で小さく唸る。すると、すぐ隣から一拍遅れて、もうひとつ手が挙がった。……浅木くん! 思わず「おお!浅っ」と名指しで当てようとした刹那、『桃乃さんが一番早かったですね』と緑間教授の声が重なった。教授は意図的ではなかったにしろ、全聴衆の前での師弟バレを防いだようだ。別に僕が浅木くんの名前を知っていたところで、大問題にはならない気もするが、「朝が来た~希望の朝だ~」と、誰にも届かないほどの小声で歌って誤魔化しておく。『それでは、桃乃さんどうぞ』と教授がマイクを渡しに行った。次は浅木くん、次は絶対に浅木くん!と念を送りながら“桃”と言われたその子をじっと見据えて待ち )
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