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1対1のなりきりチャット
自分のトピックを作る
30:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-07-15 21:28:09
( / お世話になっております!
師匠のお家については私もまだイメージが固まっていないので、考えていただけるのはむしろ非常に助かります!
ひとつ気になる点として、師匠は自家用車を持っていらっしゃるのかな~と疑問が浮かびました。もしあるならば一応免許持ちの浅木が運転して、一緒にスーパーに行く段取りにしようと思うのですが、どういたしましょうか?
こちらも特に萎えはなく、規約を遵守したうえでのスキンシップ大歓迎です!むしろ浅木の方からなかなか仕掛けられず申し訳ないほどで……ゆっくりペースではありますが今後BL的な絡みを増やしていけたらなと企んでおります。
また、当初の予定より浅木が劣等感や独占欲でモヤるようなネガティブ寄りな性格になっていて、解釈と違ったら申し訳ないと思いまして(汗) キャラの方向性もブレずに定めていければと……!
アトリエでの一幕、とても楽しくやりとりさせていただきましたので、次の買い出し編も引き続きよろしくお願いいたします!
……そのまま出るつもりですか。マジでやめてください。隣を歩くこっちが恥ずかしいんで。
( なんと、こんなもので釣られてくれるのかと師匠のちょろさに呆れる。やれやれと重い腰を上げるような言い草だが内心浮ついているのは火を見るより明らか。扱い易くて若干心配になりつつ「助かります」と感謝を伝え――軽く頭を下げた隙にずんずんと歩いて行き、汚れた格好のまま外に出ようとする師匠の背中にハッとして、慌ててその腕を掴む。なんで庭から出ようとするんだ。まさか裸足で行くつもりか。というか鼻も汚れたままだし。見れば見るほど顔も手指も足の汚れも全部気になって仕方ない。全身洗った方が手っ取り早いが、閉店時間も迫っているためとりあえず台所の流し台まで引っ張っていき、蛇口を捻って"洗え"と無言の圧。その横でタオルを濡らしながら「どうして汚れが気にならないんですか」と不機嫌そうに言いつつ、手つきだけは甲斐甲斐しく相手の鼻先をちょんちょんと拭いていく。せっかくの綺麗な体を汚したままでは勿体無い。素材は良いのだから、外に出る時ぐらい清潔にしてほしい。というのは、我儘ではないと思いたい。鼻の色が落ちると、今後は足に目を向けたがこれは自分でやらせるかとタオルを押し付け )
靴持ってますよね、あんた。この際スリッパでも草履でも何でもいいんで、外履きくらい履いてください。野生動物じゃないんですから。……ほら、足も拭いてください。
31:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-07-16 02:20:44
( / そう言っていただけてホッとしました……!祖父から日本家屋を譲り受けた経緯や冬嗣自身の背景も、少しずつ形になってきましたので、今後のやり取りの中で自然にお出しできればと思っております。
ご質問ありがとうございます。スーパーまでのドライブ、いいですね~!理玖くん頼もしい……。自家用車は持っております!
詳細の補足をしますと、日本家屋と一緒に祖父から譲り受けた、濃紺のボルボ240エステートという渋めの車です。祖父がヘビースモーカーだったため、車内には今でも煙草の匂いがほんのり染みついています(笑)整備は長年付き合いのある店へお願いしているので、古いながらも現役で元気に走れる状態です。
冬嗣も一応免許は持っていますが、運転中に景色へ気を取られかねない危なっかしさがあるので、理玖くんから運転を止められているといいな、なんて!
そして、スキンシップ大歓迎とのこと、とても嬉しいです……!
とんでもないです。むしろ、理玖くんなりのペースが自然に感じられましたし、触れ合いが貴重だからこそ、冬嗣の反応もいろいろと転がせて美味しいなと思っております。もちろん今後少しずつ絡みが増えていくのも、密かな企みも、今から楽しみです…。
そして、理玖くんの劣等感と独占欲、ネガティブ寄りについてですが、めちゃくちゃ良いです。もう、理玖くんの魅力にどっぷりハマっているので、ご安心ください。世話焼かれっきりの冬嗣としても、理玖くんの内面の支え、と言う形で年上ぶれるかも、と言うことで美味しいなと思ってました。
こちらも冬嗣が当初の想定より揶揄い好きだったり、世話を焼かれることに妙な喜びを見出し始めたりと、やり取りの中で新たな一面が出てきておりますので(笑)少しずつ輪郭を定めていけたら嬉しいです。
アトリエ編、私もとても楽しかったです。理玖くんの名言をたくさん頂いてホクホクです。買い出し編も楽しみです!よろしくお願いします。
背後文が長文となってしまい申し訳ありません。それでは、また何かございましたらいつでもお声掛けくださいませ。こちらは蹴っていただいて大丈夫です!
……恥ずかしい?なぜだ、浅木くん。さては、お師匠様と二人で出掛けるのが小恥ずかしいのだっ……え?
( 店までどれほど距離があるのか見当もつかず、ひとまずガレージへ向かおうと考えていたところ、腕を掴まれ、ぐんと身体が引き止められる。弟子から頭のてっぺんから爪先まで点検されているとは露ほども思わず、自分と並んで歩くのが恥ずかしいという言葉だけを都合よく解釈した。したり顔で見当違いも甚だしい台詞を口にした途端、どこかへ連行されていく。辿り着いたのは流し台の前だった。きょとんと弟子を見返す傍ら、蛇口から勢いよく注がれる水がシンクを叩く。そこへ無言の圧を浴びせられ、ようやく意図を察すると、大人しく汚れた両手をそろりと水へ差し入れた。指先を擦り合わせるたび、黒や青に染まった水が流れていく。その色を見て「あ」と眉を上げた。なるほど、たしかに結構な汚れだ。「気にならないのではなく、これが私の日常だからだ」と屁理屈を返しながら顔を向ければ、濡れたタオルが鼻先をくすぐる。優しく拭われる感触は思いのほか心地よく、自然と瞼を閉じた。大学生に大人しく鼻を拭かれるアラサーという構図には、この際目を瞑っておこう。汚れが落ちると、さっぱりしたと言わんばかりに目をぱちぱちさせる。「よし」と勝手に移動しかけたところで、今度は裸足を指摘された。やはり見逃してはもらえなかったらしい。また叱られ、果てには野生動物扱いまでされているというのに、口元には薄い笑みが浮かぶ。なんだか、この扱いも悪くない。差し出されたタオルを素直に受け取り、普段は花瓶を載せている椅子へ腰掛ける。まずは片足を丁寧に拭い、もう片方へ取り掛かろうとしたところで、ふと悪戯心が芽を出した。残る足をわずかに浮かせ、少しばかり調子に乗った顔で弟子を見上げて )
……文明に敗北するのは惜しいが、君に免じて譲歩してあげよう。……ところで、こちらは拭いてくれないのかい?
32:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-07-16 21:14:44
( / 返信不要とのことでしたがこれだけでもお伝えしたく……!車の知識がなくてネットで検索してみたのですが、ボルボ240エステート、すっごくかわいらしい車ですね!この車に乗ってドライブできるなんて素敵すぎます!車種まで教えてくださって一気に解像度が上がりました。ロルの参考にさせていただきますね!(こちらは返信には及びません!)
僕は弟子であって下僕ではないんですけど。……まあ、いいですよ。
( 師匠の面倒くさい思想家のような言葉を話半分に聞きながら、車の鍵は何処にやったかと思案していた、その瞬間。どうも聞き流せない要求が耳に入り、椅子に座る相手を見下ろす。彼の顔を見て、揶揄われていると直感的に気付いた。ここで嫌悪感丸出しの顔をすれば相手の思う壺。拒否する自分、へらへら笑いながら謝る相手、その後は何もなかったかのようにいつもの空気に戻る。そこまで予測して、少し、調子を狂わせてみたいと魔が差した。それならば、と徐に跪き、師匠の足首を持ち上げる。彼からタオルを奪うと、身長に見合った大きな足を、優しく拭いていく。いざ手を伸ばしてみれば鼻も足も変わらない。師匠の体の一部を綺麗に拭うのは、世話好きな性分も相まって、それほど悪い心地ではなかった。ふと祖母の家で飼われていた大型犬のことを思い出しながら、若干失礼なことを口走りつつ、ちらりと相手の表情を盗み見るように視線を向け )
こうしていると本当に犬みたいですね。
……あんたは猫っぽいところもありますけど。日向ぼっこしてましたし。
33:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-07-17 02:29:04
( / 返信不要とのことなので、私もこれだけ……!わざわざ調べてくださったことが嬉しいです~!ボルボを気に入っていただけて、こちらもにこにこしてしまいました。ありがとうございます!
( 無視か、はたまた侮辱か。さあ来いと、愚かな師匠は自分にとって美味しい展開を待ち構えていた。「下僕ではない」と聞こえたところで、ほら来た、と口元がにまりと緩みかける。ところが、その後に続いたまさかの承諾に、表情はそのまま固まった。え? 今、なんて?跪く彼を、信じられないものでも見るかのごとく目で追う。足首を持ち上げられると、幾度か瞬きを繰り返した。土間の薄暗い照明を受け、伏せられた弟子の睫毛が頬へ影を落とす。辺りが妙にしんとした。「……ええと、ありがとう」礼だけは素直に零れた。指先からタオルがするりと抜き取られ、予想に反して優しい手つきで足を拭われる。足裏を撫でる感触にむず痒さが込み上げ、目を細めた拍子、つま先がぴくりと揺れた。一度意識してしまえば、くすぐったさはなかなか消えてくれない。とはいえ、足を引っ込めれば、自分から仕掛けておきながらあまりにも格好がつかない。そんな葛藤の末、「ほう、師匠を犬猫に例えるか」と、ひとまず言葉を反復するだけの返事を寄越した。自分が観察される側へ回っているとも知らず、視線は照明の周囲へ集まった羽虫の辺りをうろうろと彷徨う。やがて椅子の縁へ片腕を預け、どうにか平静を取り戻すと、さも偉そうに声を整えて )
君には私がペットに見えているらしいが……せめて、主人と執事というのはどうだい?
34:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-07-17 10:19:22
……さあ。執事ってこういうこともするんですかね。
( 見上げた師匠の様子は――想像以上に動揺していて、無意識に強がるような態度がさらに嗜虐心を刺激する。そんなに目が泳いでるところ初めて見たかもしれない。なるほど、これはなかなか揶揄い甲斐がある。主人だか執事だかの話には適当に生返事をしながら、つい悪戯心でこちょりと足裏をくすぐって、一瞬くすりと笑ったかと思えば「終わりましたよ」と何食わぬ顔で手を離した。すっと立ち上がり、タオルを水で濯ぎながら彼の反応を思い返す。普段は悠長な雰囲気で、時に調子に乗ったり屁理屈を捏ねたりとそこそこ面倒くさいお人だが、どうやら相手から迫られると弱いらしい。少し可愛らしいとも思うが、尊敬する師匠を手玉に取って悦に入るなんて我ながら趣味が悪い。そこまで歪んだ性癖ではなかったはずと自分自身を疑いつつ。とはいえ、師匠の珍しい姿を見ることができた嬉しさもあり、心なしか機嫌の良さを隠しきれないままキュッと蛇口を閉める。これから車を運転しようかと計画しているが、肝心の鍵が見当たらない。その在り処を車の持ち主である相手に訊ねて )
あ、そういえば車の鍵どこにあるか知りませんか。この前師匠に預けたはずなんですけど。
35:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-07-17 13:15:52
( 足裏をくすぐられ、「ひっ」と情けない声が漏れる。いよいよ解放されたい気持ちでいっぱいになったところで、悪戯はすんと途切れた。誤魔化すように咳払いを一つ。彼が立ち上がる気配を察すると、反射的に両足をさっと抱え込み、威嚇する猫さながら恨めしげに見上げる。「どうもありがとう、執事くん」一語ずつ、やたらと明瞭な滑舌で言い放った。足を拭く執事はいても、くすぐる執事はきっといない。けれど、師匠は見逃していなかった。今度こそ、浅木くんが笑ったのをこの目で見た。自分の反応を面白がられたことは少し悔しい。それなのに、胸の奥にはざわつくほどの喜びも残っている。足を甲斐甲斐しく拭う姿と、最後に覗いたほんの僅かな意地悪さ。それらを反芻するうち、妙に落ち着かなくなった。椅子の足元には、いつからそこにあるのかも分からない、裏返しのサンダルが転がっている。せっかく綺麗にしてもらった足を再び土間へ触れさせまいと、爪先で器用に表へ返してから手繰り寄せ、そのまま引っ掛けて履いた。そこへ鍵の在り処を問われ、ひとまずチノパンの左右のポケットを探る。ない。「渡されたっけか……」ぶつぶつ呟きながら、もしやこちらでは、と弟子のポケットへ手を伸ばしかける。けれど、指が触れる寸前で思いとどまった。先ほどの何とも言えない余韻が、まだ指先に残っている気がしたからだ。なお、肝心の鍵は冷蔵庫の中にある。渡されたその日、弟子が大学へ行っているあいだに食べる作り置きの入ったタッパーと、鍵をそれぞれ手にしていた。食べ物へ気を取られたこの男は、どういうわけか両方まとめて冷蔵庫へ収め、そのまま忘れてしまったのである )
きっと、浅木くんのポケットに入っているよ。
36:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-07-17 15:23:04
……ありませんよ。どうせまた訳わかんないところに置きっぱなしにしてるんでしょう。捜索します。
( 背後から近寄る気配に振り返って首を傾げる。中途半端に手を伸ばしたままで変なポーズをしている師匠を見て、なんだ、まだ本調子じゃないのかと内心面白がりつつ、言われた通りポケットを探るもそれらしき物はない。家の鍵然り、車の鍵然り、この家の鍵が行方不明になる事案にはもうすっかり慣れてしまった。師匠の行動パターンを推測しようにも気まぐれであるためあまり当てにならない。故に手探り状態で、無難に机の上から、庭の鉢植えの下まで、隈なく捜索するしかないのだが、どうにも見当たらない。こういうのは灯台下暗しかと台所に戻り、電子レンジの中まで確認して、その流れで冷蔵庫を漁れば見事的中。奥に追いやられていたとはいえ、先ほど冷蔵庫を開いた時には不覚にも見落としていたらしい。異質な場所に置き去りにされていた鍵を発見したところで、もはや驚きもせず、"今回は"捜索時間を5分以内に収めることが出来てよかったと息を吐いた。長時間の放置でキンキンに冷やされた鍵を取り出し「キーホルダーでも付けておかないといけませんね」と肩を竦めながら言う。それを付けたところで師匠が鍵を失くすリスクを下げられるとは思わない。せいぜい捜索時の目印になれば良いか、程度の期待感で。それにしても時間を食ってしまった。そろそろ急がねばと、自分が履いてきたスニーカーがある玄関へ向かいながら )
**るにはまだ早いんですから、もっとしっかりしてください。ほら、今度こそ玄関から出ますよ。
37:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-07-17 16:27:33
>36
( / 今気付いたのですが文字化けしてますね……ぼ…け…で伝わるでしょうか?申し訳ございません……!
38:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-07-18 02:26:05
( / 補足ありがとうございます…!何となく読み解けてましたが、これでしっかりと伝わりました。助かります。まさかそのワードが伏せ字になるとは思わず、びっくりしました。個人的にも、冬嗣的にも、めちゃツボだったので、隠れてしまったのが残念です(笑)
ふむ、おかしいね。あの日は確か……ああ、いや、免許証を交番へ取りに行ったのは覚えているんだが。
( 変なポーズを誤魔化すように顎へ手を添え、考える素振りを見せたが、もう見られている。絶対に弟子のポケットへ入っているという謎の自信は、見事に外れた。挙げ句、車の鍵とは別に、免許証を馴染みの喫茶店へ向かう途中で落とした時の話をしている始末である。自分の代わりに探し回る弟子へ、眉を下げてへらへらと笑いかける。そんなところにあるわけが、と訝しげに見守っていたが、過去には鉢植えの土の中から出てきたこともある。根の形状を観察したくて掘り起こした際、書斎の鍵が勝手に飛び込んだのだ。あの時は三日かかったっけ。そう、鍵というものはいずれも、己の意志で棲みつきたい場所へ留まる。さて、車の鍵はどこを好むのか――もしや祖父に預けたのかもしれないと仏間へ向かおうとしたところで、冷蔵庫の閉まる音に振り向いた。そんな馬鹿なと思った矢先、弟子の手には年季の入った車の鍵が握られている。思わず目を丸くした。考えてみても、その経緯はまるで記憶に残っていない。それにしても、これだけ隠れ場所の多い家の中から五分で見つけ出すとは、我が弟子ながら天晴れだ。惜しみなく拍手を送りながら、「ふむ、キーホルダーは妙案だ。何せ、勝手にいなくなってしまうからね」と賛同する。玄関へ促されると、弟子の背中を追い越すように後ろ歩きをしながら、「たまにはドライブもいいね」と呟いた。そうこうしているうちに、すっかり調子を取り戻したらしい。玄関からガレージへ向かう途中、おっと忘れていたとばかりに「じいちゃん、行ってきます」と家の方へ声を掛ける。濃紺の愛車をひと撫ですると、当然のように弟子がロックを解いてくれるのを、にっこりと待って )
ああ、まだぴちぴちだからね。それにね、実は浅木くんの弟子力テストをしていたんだが……素晴らしい成績を収めてくれた。多忙な師匠の代わりに、君が覚えていてくれるから、いつも助かっているよ。
39:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-07-18 10:48:52
……そうですね、あんたの弟子が務まるのは僕くらいだと思います。
( 師匠は相変わらず自分の非を認める気がないらしい。もうすぐ三十路のくせに自認ぴちぴちはおかしいと思うし、出題者が答えを把握していない抜き打ちテストってどうなんだと怪しみつつ、合格点を出せたのは満更でもなく少しだけ得意げに。師匠が生活力皆無人間だと判明してからも尊敬の念を絶やさず世話を焼き続けている。師匠の好物も把握しているし、探し物だって五分で見つけられる。そんな自分の他に弟子の候補がいるなら教えてほしいくらいだ。分かりきった事なのだから、わざわざ試すようなことしなくても。今後はテストをするにしても探し物を見つけるだけの問題は勘弁してほしい。――車のロックを解除してドアを開けると、先ほど家に向けて挨拶していた師匠を見習うかのように「失礼します」と呟きながら運転席に乗り込む。かつて彼の祖父が大事にしていたという車はそれ相応に年季が入っていて、自分のような大学生風情が乗っていい物なのかと最初は躊躇したし、その後も度々運転しているがこの空間に入るだけで不思議と身が引き締まる。そういった点ではアトリエと少し似ているかもしれない。助手席に座る相手を確認しながら、シートベルトを締めて、いざ出発。目的地を知らない相手には「そこまで遠くないのですぐ着きますよ」と伝えておいて、ゆっくりとアクセルを踏んで発進する。古い車種だからだろうか、心なしか進みが遅くて坂道にも弱い。それでも、今はこれくらいのスピードがちょうどいいと思える。しっかりと両手でハンドルを握りながら「……というか免許証の話、初耳だったんですが」と一度聞き流した話を掘り返す余裕が生まれるほどには、心地良いスピード感だった。 )
40:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-07-20 04:42:05
ふふ、そうとも。……何しろ、僕に弟子入りできたこと自体が、なかなかの快挙だからね。
( 少し胸を張った返答が可愛らしく、自然と笑みが零れた。弟子を取るつもりなど微塵もなかったのだから、彼は紛れもなく例外である。カチリとロックが外れると助手席へくぐり込み、革張りのシートへ腰を下ろす。ドアを閉めれば、車内に染みついた煙草の残香が鼻をくすぐり、ルームミラー脇では色褪せた交通安全守の房が揺れていた。この慣れ親しんだ匂いは不思議と落ち着くが、決していい匂いではない。浅木くんが初めてこの車へ乗った日は、染みついた匂いを少々申し訳なく思ったものだ。それでも「失礼します」とひと言断って運転席へ収まる姿からは、祖父の気配を大切に扱ってくれているのが伝わってくる。窓枠へ肘を預け、「じいちゃんも、浅木くんに運転してもらえてホッとしているだろう。僕は何度も車輪を側溝へ落としているからね」と嬉しげに視線を向けた。弟子に倣ってシートベルトを締める。ふと、ミラー脇で揺れる古びた守りの房へ指先を伸ばす。そうだ、車の鍵には、新しい交通安全守をキーホルダー代わりにつけてもいいかもしれない。運転するのはほとんど浅木くんなのだから、今度一緒に選びに行こう。そう考えていると、目的地までは遠くないと声が掛かる。「抹茶ティラミスは、案外近くにいるんだね」と最大の目的が無意識に口から零れた。発進一つにも気を配る穏やかな運転は、瞼が落ちかけるほど心地いい。祖父の運転ではしょっちゅう吐いていたが、今日は酔う気配すらない。ゆとりのある座席へ身体を預け、足を組みつつ、ハンドルを握る弟子の横顔を眺める。彼よりもずっと年上の車を乗りこなす姿が妙に様になるのは、やはり青が似合うからなのだろうか。――そういえば、大学生活は順調なのだろうか。自分の世話にかまけて、彼自身の制作を疎かにしていなければいいのだが。その疑問を口にする前に、先ほど口を滑らせた免許証の件を掘り返され、瞬きを一つ。記憶を辿れば、ごく自然に彼のいる光景が浮かぶ。けれど、それはどうやら捏造らしい。内緒にしていたことを口走ったと今さら気づきながら、なぜか弁明するつもりで、さらなる余罪を重ねて )
あれ、浅木くん、いなかったんだっけ。一緒に珈琲を飲んだ気がするんだけど……。あ、ほら。駐在の黒田さんが「免許証を三度落として、その三度とも戻ってくるなんてすごいですね」って褒めてくれたじゃないか。
41:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-07-20 15:24:54
いや、全く記憶にないです。僕以外の誰かと間違えてるんじゃないですか。
( ヘッドライトで前方を照らしながら夜道を走り、大通りに出る。ちょうど信号が赤に変わったところでブレーキを踏み、ちらりと横を見て首を横に振った。お馴染みのあの人!みたいなテンション感で言われましても、自分は黒田さんという人物に会ったことすらない。警察官と顔見知りになるほど交番にお世話になっていて、それを恥ずかしげもなく発言できる図太さに思わず頭を抱える。「……ここが平和な町で良かったですね、本当に」と本心と皮肉を混ぜ合わせて溜息と一緒に吐き出した。――それにしても、誰と勘違いしているんだか。師匠と一緒に落とし物を探したり、喫茶店で珈琲を飲むような相手が、自分以外にも存在している。そのことに少しだけ嫉妬のようなものを感じている自分に気付き、ああまたか、と目を伏せた。……待て、記憶を混同させて間違える方も悪くないか。異性相手にやらかしたら確実に嫌われるぞ、これだからあんたって人は――と心の中で吐き捨てるが、そもそも前提として、"僕以外の誰かと間違えてる"というのは単なる思い込みと決めつけであって、今のところ真偽は不明だ。それでも勝手に悪い方向へ考えてしまうのだから、執着というのは恐ろしい。器の小さい自分に嫌気が差していると、信号が青に変わっている事に気付き、やや性急にアクセルを踏んで発進させた。心の乱れがもろに運転に出ている。これでは運転下手な師匠と同じじゃないかと、一度心を落ち着かせてからハンドルを握り直す。そして、珍しく素直に気持ちを吐露して )
……すみません。師匠が誰と出掛けようが僕には関係ないと分かってるんですが、少し引っ掛かってしまいました。
42:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-07-21 03:32:33
……君以外の?
( え?黒田さん知らないの?と言わんばかりに目を向けたものの、首を横に振る姿を見るに本当に面識がないらしい。「いい町だろう?拾得届の隅っこに"また落としましたね"と添えられていたよ」と、拾い主まで常連だった悲しい事実を付け加える。けれど、彼がいなかったのなら、あの日は一人だったはずだ。困った時にそばにいてくれることも、“これは浅木くんと行きたい”と思うことも、あまりに日常へ馴染みすぎている。どうやら記憶にまで、当たり前の顔をして座らせてしまったらしい。会話の途切れた車内をエンジン音が満たす。赤信号の光に染まった横顔を窺えば、黒い瞳は普段より険しく見えた。先ほどの言葉にも、ほんの少し棘があった気がする。まあ、あの喫茶店の珈琲とカツサンドは美味いからな。置いていかれたと思えば面白くないのも無理はない――などと見当違いな結論へ辿り着いた矢先、ぐん、と背中がシートへ押しつけられた。彼の運転が乱れるとは珍しい。謝罪には「なかなかスリルがあったよ」と普段と変わらぬ調子で返したが、そのあとに続いた素直な言葉には、思わず目を瞬かせた。喫茶店へ行けなかったことではなく、自分が誰と出掛けたのかが気になっていたのか。尊敬してくれているからこそ、師匠を独り占めしたくなるのだろうか。愛い奴め。笑う場面ではないと分かっていたが、込み上げたものを堪えきれず、肩が揺れる。運転中でなければ頭を撫で回していたところだ。まずは小さく詫び、それから答え合わせをするように告げる )
……すまない、浅木くん。あの日は一人だったよ。君に頼りっぱなしで、当然そばにいるものだと思っていたから、記憶の中にまで君を描き足してしまったらしい。……そうか。愛弟子は、師匠が誰と密会しているのか気になるのか。そうか、そうか……。
43:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-07-21 08:38:50
……は?なんですか、それ……。
( 直接言葉にした事を早々に後悔していると、師匠の口から予想外の事実が告げられた。……勘違いしていたのは自分の方だったらしい。淡々と事実を受け入れて、荒立つ心がすっと落ち着いたのも束の間。視界の端でくすくすと笑う相手の様子が見えて、まるで何かを噛み締めるような、愛おしげな口ぶりに顔が発火したように熱くなる。次の瞬間には羞恥心を誤魔化すように怒りが押し寄せ「僕はただあんたが人様に迷惑を掛けていないか心配だっただけで寂しいとか嫉妬とかそういうのではないですから、本当に。本当ですよ」と一息で捲し立てた。まだまだ言ってやりたい事だらけだが、さらに弁明を続けたところで、生温かい視線を向けられるのがオチだろう。いないはずの弟子をいるものだと思い込むだなんて、誰かと間違えるよりずっとタチが悪い。僕のこと好きすぎるんじゃないか、この天然人誑しめ。チッと舌打ちをして、行き場のない怒りを込めてアクセルを踏み込んだ。――とはいえ、すぐに冷静さを取り戻し安全運転で走ること数分。スーパーマーケットの看板が見えてくると「ほら、もう着きますよ」と声を掛け、専用駐車場に車を駐めた。完全に機嫌を直した訳ではないが、いつまでも拗ねているとまた子供扱いされて馬鹿にされかねない。平常心を取り戻すように努めて、エコバッグと財布を持って車から出れば、買い物の順路を説明して )
まずは卵を確保します。だいぶ出遅れたので残っているか怪しいですが、出来れば2パック。それから野菜と、ティッシュも買わないと。
44:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-07-22 00:04:02
おや、浅木くん顔が真っ赤……、……って、本当かい? 弟子の心象02が早くも描けそうなくらいに複雑──ッ!?
( みるみるうちに顔が赤くなったように見えて、やはり図星だったかといい気になっていれば、怒濤の返しに両手を身体の前へ挙げる。無意識に降参の態勢を取ったものの、寂しいだとか嫉妬だとか、僕が何も言っていないうちから自分で例に挙げるものだから、どうにも頬が緩んでしまう。昼間に一作描き上げたばかりだというのに、早くも創作意欲が湧いてくる。連作の名を口にしながらもう一撃加えようとしたところで、身体が大きくのけ反った。実に勢いのあるアクセル!「浅木くん!ゆっくり!」と思わず声が出る。揶揄いすぎると反撃が怖いし、この辺にしておいてやるか……。一瞬だけ乱れた運転も、すぐにいつもの安全運転へと戻っていく。その落ち着きを取り戻した走りに、不覚にも安心しきってしまったらしい。外の景色へ目を移せば瞼がほどなく重くなった。──弟子のパーフェクトな運転に身を任せ、看板が見える頃には背凭れへ頭を預けて眠っていたが、"もう着く"という声にぱちりと目を開ける。駐車も難なくこなす姿へ拍手を送り、「運転ご苦労様」と肩をぽんと叩いてから車を降りた。傍から見れば、すでにいつものクールな浅木くんへ戻っている。貴重な瞬間を見たな、と無意識に口角が上がった。そして軍師のごとく始まった、特売日を勝ち抜くための戦略。ここでは彼が導く側、いわば生活のアトリエ。こちらも身を引き締めて順路を復唱するが、途中で一つだけ内容がすり替わった。さらに面倒なことに、ご褒美が最後に回されていると気づいたのだ。眉を八の字に下げ、隣を歩きながら腕をつんつんと突いて持論を展開して )
まずは卵2パック。それから野菜、ティッシュ……卵2パック、野菜、ティラミス。浅木くん、なぜ抹茶ティラミスが最後なんだ?この中では一番人気だろう?
45:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-07-22 18:03:27
僕にとって甘味は優先順位低いんですよ。……約束は約束なのでちゃんと買いますけど。
( 復唱を聞きながら、今しれっとティッシュがティラミスに変換されたな、と気付くもツッコむのも面倒で冷めた視線を向ける。一番人気というのは師匠の中での話で、特別甘党ではない自分からすれば嗜好品の優先度は低い。それでも抹茶ティラミス×2の条件でここまで連れてきたのだから、しっかり約束は果たすつもりだ。突いてくる指をサッとかわしながら入口へと歩き、自動ドアを通ると外よりも涼やかな空気が肌に触れた。少し火照った顔が冷却されるような心地に息を吐きつつ、買い物かごを持って店内へ進む。夕方のピークは過ぎているが、この時間帯だと仕事帰りの客が多い。さて、お目当ての卵は――と陳列棚に目を向けると、幸いなことにいくつか残っていた。これで事前に下味を漬け込んでおいた鯵と合わせて卵とじを作ることが出来る……。晩御飯のメニューが決定したことで内心浮つきながらやや早足で棚に近づき、卵2パックを確保。『おひとり様1パックまで』の注意書きを見ながら「師匠が居てくれて助かりました。いつもはひとつしか買えないので」と表情筋は動かないがどこかほくほくとした様子で。そして、相手にとっては初めての場所であるということを失念したまま、せっかく二人いるのだから手分けした方が効率が良いかと提案して )
自分は野菜コーナーを見てくるので、師匠はティッシュを探してきてください。……ついでにティラミスも。
46:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-07-22 19:47:01
なるほど、また一つ浅木くんの生態を知ったな。……あ、でも別に釣られたわけではないからね。
( 優先度が低いと言いつつも確保して貰えそうでほっとひと息。つついた指が何度かスカる。まだ怒っていたりするかなと思いきや、塩対応は平常運転だった事を思い出し後ろ手を組み、彼に続いて店内へ。初めての戦地におお…と辺りを見渡せば、色々と注意を引く物がこちらに手招きしているようだ。まずは卵だったかな、と逸れないように着いていくと『おひとり様1パックまで』の注意文が見えた。もしや卵要員…とジリ、と弟子へ視線を落とすと、なんだか満足そうな気配。喜んでいるならこちらも嬉しい。「たまには着いて行ってもいいよ」と得意げに胸を張る。続いて浅木くんから指令を受ければ、「任せなさい」と、初めての店とは思えぬ頼もしさで請け負った。ティッシュと本命を探しに行く前に、ふと思い出して振り返る。「そうだ、浅木くん。好きな食べ物は?君のご褒美も買ってあげよう」と上機嫌に伺いつつ、返答を聞いてから今度こそ"どこか"へ向かって歩き出した──陳列棚の間を縫って進むこと、数分。棚越しに隣の通路まで見渡せる。視界は利くはずなのだが、目に入ってくるのは、注意を引く色彩の広告ばかりだった。なるほど。デザイン分野は専門外だが、客の視線や足取りを誘導するため、よく考えて設計されている。そして肝心のティッシュは、一向に見つからない。レトルトカレーの並ぶ通路から、あちらへ、こちらへ。そうしてたどり着いた先には、試食販売の一角があった。「美味しそうですね」声をかけると、販売員がにこやかに小さなトレーを差し出してくれる。焼きたてのはんぺんチーズを口へ運び静かに目を輝かせた。これは、美味い。「連れがいるので、もう一ついただけますか」販売員がわずかに目を見開いたが、二つ目のトレーを差し出してくれる。弟子の分の試食を手に、ティッシュ探しを再開する。ところが、次に足を止めたのは小さな玩具売場だった。子どもがレジのおもちゃで遊んでいる。しばらく眺めているうち、ごく自然な成り行きとして、その前へしゃがみ込んだ。「このお菓子を一つくださいな」玩具の商品を差し出す。途端、子どもの顔がくしゃりと歪んだ。次の瞬間、売場いっぱいに泣き声が響き渡る。えっ。……なぜだ?客として、正しい手順を踏んだはずなのだが。大男が「僕がレジをやるか?」などと困惑しながらあやしていると母親が駆け寄ってきて、お互いに頭を下げた。ここまでで別れてから10分以上は経過しているが、手には謎の戦利品だけ持っている。浅木くんが様子を見に来るのが先か、ティッシュを見つけるのが先か、ひとまずその場から離れようとして )
まずい…、今から本気を出さねば。晩飯が抜きになるかも知れない。
47:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-07-22 21:30:47
( 好きな食べ物は?と問われて、パッと頭に浮かぶのはラーメン、寿司、焼き肉。至って平凡な好物だがスーパーで気軽に買うような物でもない。よって「……さきいか、ですかね」と酒飲み親父のような返答をしたが、正直さきいかに特別な思い入れがある訳でもなく。ズレた回答を訂正しようとした時にはもう相手は歩いて行ってしまい、本当に任せて大丈夫だったかと今更不安を覚えながら、無駄に頼もしい大きな背中を見送った。――その後は野菜コーナーに向かい、値札と状態を見比べながらいくつか手に取ってかごに入れていく。春は野菜が美味しい上に値段も手頃で助かる。順調に事が進み満足していると、突然、遠くから子どもの泣き声が聞こえた。家族連れも多いスーパーならありふれた出来事だ。普段なら気に留めることもない。しかし、この時ばかりはビビッとアンテナが反応した。師匠が何かやらかしたような気がする。千里眼のような能力が発動して、泣き声が聞こえる方へ向かうと、玩具売り場の一角、涙目の子どもと母親、そして案の定、師匠の姿が見えた。「なにしてんですか」と背後から近づき、猫の首根っこをつまみ上げるようにしゃがんでいる相手の襟ぐりを後ろから掴む。「すみません、ご迷惑をお掛けしました」と親子に頭を下げながら、掴んだままの襟をぐいっと引っ張って師匠を立ち上がらせ、今度は腕を引いてその場を離れた。苛立った様子でずんずんと進んでいき「突然デッカい知らないおじさんに声を掛けられたら怖いでしょう、子供じゃなくても泣きますよ」と説教しながら、ふと師匠が謎のはんぺんチーズしか持っていないことに気付くと、さらに眉間に皺を寄せ、腕を掴む手に力を込めて )
……あんたを一人にさせてはいけないということがよく分かりました。今後は絶対に離れないでください。
48:
藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-07-23 14:53:54
( 背後から掛かった声に、まずい、と顔を上げるよりも早く、むんずと襟を掴まれる。途端に大人しくなった猫のごとく両腕をぴんと伸ばし、操り人形さながら彼と共にもう一度頭を下げた。抵抗する素振りすら見せずに立ち上がらされ、そのまま引き摺られながらも、未だ毛を逆立てている子どもへ小さく手を振って退場する。容赦なく前進していく背中に、「はんぺんが落ちてしまう」と焦った声を掛けていたところ、説教の途中で聞こえた言葉に「おじっ……」と目を見開いた。大きな男に声を掛けられて泣いてしまったのは――確かに、そうかもしれない。悪いことをしたと思う。けれど、子どもでなくとも泣くというのは、少しおかしい。浅木くんも泣くのかい?そんな疑問まで浮かんだものの、一番納得がいかないのは、そこではない。「おじさんじゃないもん、まだ二十代だもん!」拗ねた声を、そこそこの音量で上げる。浅木くんだって、さきいかとか、なんか、じじっぽいものが好きなくせに。せめてもの反撃を口にしようとした矢先、掴まれた腕にさらに力が込められ、はっと息を呑んで口を噤んだ。これ以上問題を起こさないための忠告として、彼はそう言ったのだろう。けれど、なんだかすごく良い。たとえるなら、独占欲の強い騎士が守ってくれそうな台詞だ。――いや、浅木くんは明らかに怒っている。とても眉間に皺が寄っている。やだ、イケメン。などと喜んでいる場合ではない。入り混じった情緒を処理するのに数拍を要してから、「……分かったよ」と伏せ気味の視線で殊勝に応えた。しかし、一人にさせてはいけない。今後は絶対に離れるな。……はて、これはスーパー以外にも適用されるのだろうか。今後どこかへ出掛ける際には、弟子へ一報入れたほうがいいのかもしれない。やや飛躍した解釈を広げていたところで、手にした戦利品を思い出す。掴まれた腕を振り払うこともなく、もう片方の手で爪楊枝を器用につまむ。はんぺんチーズをひょいと小さなトレーから持ち上げると、恥ずかしがる様子もなく彼の口元へ運び )
あ、待って、浅木くん。……美味しかったから、君の分も貰ってきたんだよ。はい、あーん。
49:
浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-07-23 17:11:16
( 想像以上に大きな反論の声に、そんなムキにならんでもと溜め息を吐く。何だよ「もん」って。確かに、師匠は老けているわけではない。男前ですよあんたは。しかしアラサーというのもまた決して覆らない事実だ。否定しても無駄である。それに、子どもというのは残酷で、父親以外の成人男性はみんなおじさんだと認識されるように出来ている。師匠がどうこうという話ではない。……それでも、まあ、流石に言い過ぎたと思う。しおらしくなる相手の様子に釣られて、こちらまで萎縮しかけた矢先――「あーん」の声と共に口元に差し出されたはんぺん。時間が停止したようにぴたりと全身の動きが止まり、爪楊枝の先の一点だけを見つめて、あ、これ深く考えたら駄目なやつだ、と思考を放棄。そして、勢いのままぱくりと口に入れて咀嚼し、少しだけ目を見開く。……美味い。空腹のせいか、はたまた師匠に食べさせてもらったおかげか、格別に美味く感じた。試食品を持ち歩きながら店内を徘徊していたおじ、否、お兄さんに対してドン引きする気持ちがない訳でもないが、何だか毒気を抜かれて「……美味しいです。これも買いましょうか」と結局あっさりと許してしまうのだった。――また目を離した隙に問題を起こされたら困る、という理由で師匠の腕を掴んだまま店内を見て回る。はたから見れば異様な光景かもしれないが、人目なんて気にしていたらこの人の弟子は務まらない。そんな中、師匠が10分以上かけても見つけられなかったティッシュを一瞬で見つけ出し、次いで抹茶ティラミスも約束通りふたつかごに入れた。報酬は報酬だ。卵要員としての役目は果たしているし、減額をしないのはちょっとした弟子のお情け。そして最後は先ほど試食したはんぺんだが……相手が売り場を覚えているか半信半疑で問いかけて )
さっきのはんぺん、どこで売ってたか覚えてます?そのトレーも返さなきゃいけないでしょう。
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