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師弟は赴くままに 〆 /281


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自分のトピックを作る
262: 浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-09-28 19:59:42




……ふ、……偉いじゃないですか。

( 見せびらかされた財布には紛失対策が施されていて、良い大人がドヤ顔で見せるもんじゃないだろと鼻で笑ってしまった。腰から伸びたチェーンはシティボーイというよりもおつかいに出掛ける子どものようだったが、忘れずに持ってきたなら咎める事はない。「ごちそうさまでした」と師匠と一緒に挨拶して頭を下げた瞬間、横から伸びてきた手に捕まって、自慢の弟子だと勝手に紹介された。大将が捻り出してくれた褒め言葉を受け取り、ほら聞いたか!?とでも言いたげに視線を向けてくる師匠を冷たい目で睨み返す。「……恥ずかしいからやめてください」と言いつつ、嬉しさを抑えきれなかった。胸を張って自慢の弟子だと言ってもらえるなんて幸せだ。……一途であり続けて良かったと思う、なんて内心浮かれたまま、店を出た後の行き先を聞いて )

……で、次は何処に行くんですか?




263: 藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-09-28 21:26:26




次はね…………師匠から弟子へ。日々の働きに感謝を込めて、なんと……リラクゼーションサロンへ招待しようと思う。

( 財布を持ってきたことを鼻で笑われて口がへの字に曲がったが、浅木くんに「偉い」と言われるのは妙に心地良くてドヤ顔を継続。恥ずかしいからやめろと睨まれようが、痛くも痒くもない。ようやく浅木くんを自慢の弟子だと人前でアピールできたところで、「僕は思ったことが口に出てしまうからそれは難しい」と言い返してやった。会計を終えた女将さんが戻ってきたところで浅木くんを解放してカードを受け取る。財布にカードを収納するところを彼に見せながら「ここに、入れたからね」と念を押し、彼にも確認してもらった。その後、次の行き先を問われて、すっかりちりめんのようになった地図を広げながら、目を細めて赤城が付けたマーカーを頼りに場所を指差して確認。次はあらかじめ予約していたリラクゼーションサロンだ。浅木くんをじっと見て、某クイズ番組のごとく無駄にたっぷり間を取ってから、ホントに特別だよと言わんばかりに潜めた声で告げる。ぱしぱしと背中を叩いて、退店を促しながら「ではまた」と大将たちに挨拶を済ませて店をあとにした。食べている間に雨が止んだようで、傘立てから傘を取り忘れたまま浅木くんの肩やら腕やらを、セクハラまがいにもみもみしながら )

こことか、こことか、制作や家事で凝っていないかい?





264: 浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-09-29 23:17:20




リラクゼーションサロン……?

( カードを財布に戻すところを確認した後、師匠はくしゃくしゃの地図を広げ始めたが、はたして本当に読めているのか分からない。すぐに返答は返ってこなくて、やけに溜めるな……ともどかしくなってきたところで、ようやくひっそりと行き先を告げられた。つられて声を潜めながら繰り返す。体を労わることを後回しにしがちな僕にとっては、当然行ったことがない施設だ。体を揉んでくる師匠の手をそれとなく振り払いながら「まあ、多少は凝ってますけど……本当にいいんですか?」と遠慮がちに首を傾げる。誕生日でも特別な日でもないのに、そんなご褒美を貰っていいのだろうか。折角の申し出に対して失礼だと分かっていても、何か裏があるのではないかと思わず疑ってしまう。傘の存在を忘れている師匠の代わりに傘を取ると、渡さずにそのまま持ちながら歩き出し )

……こんなに甘やかされると後が怖いっていうか……何か企んでます?




265: 藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-09-30 08:19:31




( さりげなく振り払う仕草が、浅木くんの今日のルックスと相まって、クール男子に相手にされない感じがとてもいい、と内心乙女嗣がきゃっきゃっしつつも、首を傾げた彼には「ああ。もちろん」と師匠然としてみせた。弟子が傘を二本持っていることには気が付かないまま、並木通りに向かって行く。何か企んでいるのかと問われて、また背筋に戦慄が走った。いや、僕としては、全然自分の身体を労わらない浅木くんには、ちょうどいいプレゼントだと思っていたのは間違いないのだが、別の理由もあったから、彼の推理はあながち外れていない。僕が消失しても彼はすぐに見つけるし、探偵に向いているのでは?と思いつつ。それにしたって、甘やかされると怖くなるというのが、僕にとっては不思議だった。企みは隠したい。一方で、なぜ疑うのかは本当に分からない。その二つが可笑しくて思わず笑いながら、「え?」と聞き返してから、視線を向けて )

なにもないよ。なぜ甘やかされたら怖くなるんだい?





266: 浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-09-30 22:57:59




……なんとなく嫌な予感がしただけです。
後から面倒ごとが起きそうな気がして。

( 何故怖いのかと聞かれても、野生の勘としか言えなかった。妙に引っ掛かるというか、胸騒ぎがする。甘やかされるのに慣れていないから、怖いと思うのだろうか。……いや、それはない。なんだかんだ、師匠には日頃から甘やかされている。ちょっとしたことで褒めてくれて、必要以上にお小遣いをくれて、ペンだこが治るまで手当てしてくれる。大分可愛がられているとは思う。時に冷たく当たっても笑って許してくれるのだって、師匠の甘やかしの一環だろう。それに、彼は年上ぶって格好つけたい、師匠らしいことがしたい、と常々思っているようだから、今日のこれも、そんな願望の表れなのかもしれない。たまにはこういう日もあっていいか。「……まあ、杞憂ですよね」と自分自身にも言い聞かせるように呟く。そして、何気なく質問して )

その、リラクなんとかって師匠も一緒に施術を受けるんですか?





267: 藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-10-01 00:01:37




なるほど?君は制作においても直感が冴えているように感じるから……予想外のことは起きるかもしれないね。

( 怖さの正体はシックスセンスによるものだと言われて、浅木くんの色の捉え方を思い返してみても、妙に納得してしまう部分があった。一瞬だけ、好意をそのまま受け取ることに慣れていないのかとも考えたが、どうやらそういうわけでもないらしい。少しホッとしながらも、こうした些細な反応も、見落とさないようにしておきたいと密かに思う。誤魔化したいくせに、ほんの少し彼を揺さぶってみたくなり、胸騒ぎを肯定するようなことを低く耳打ちしておき。僕も施術を受けるのかという質問には、ギリギリで動じなかった。今回の僕は一味も二味も違うのだ。浅木くんセンサーの作動には細心の注意を払っている、はず。それに、リラクなんとかというのには「ふっ」と吹き出して、聞き取れないようにわざとネイティブ発音で差し込んでおいた。財布を持ってきたのを鼻で笑われた、ささやかな仕返しだ。隣を歩きながら並木通りを抜け、有楽町方面へ。ブランドショップの並ぶ華やかな街並みから少しずつ喧騒が遠のき、やがて重厚なエントランスを構えた高級ホテルが点在する一角へ差し掛かる。そのうちの一棟へ向かって何食わぬ顔で足を進めながら、ついでに館内のサロンについて軽く説明しておいた上で、期待を滲ませた視線でじーっと見つめて問い掛けてみて )

relaxation salonかい?もちろん、師匠も毎日頑張っているから自分へのご褒美さ。
プライベート空間にこだわっているそうだから、それぞれ個室になってしまうけどね。……寂しい?





268: 浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-10-02 21:23:40




……故意的に起こすのは勘弁してくださいよ。

( わざと脅すように耳元で囁かれて、思わず背中がぞくりとした。面白がっているだけとは分かっていても、心臓に悪い。何だ、また失踪事件でも起こすつもりなのか。それともドッキリか。サプライズゲストでも出てくるのか? とにかく警戒しておくに越したことはなさそうだ。師匠の無駄に良い発音を真似しようとしたが「リラクゼッ……っ……」と途中で噛んでしまい、萎えて諦めた。それから寂しいかと問いかけられると、呆れたように顔を顰める。別室になるだけで寂しがるような性格ではないことくらい、師匠だって分かっている筈なのに。わざわざ聞いてくるんだからタチが悪い。何だか妙に熱い視線を向けられているような気もするが、それも無視して、正面を向いたまま言い返し )

僕が寂しいなんて言うと思います? 子供じゃないんですから。





269: 藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-10-03 02:24:41




ふふふ、冗談冗談。杞憂だよ、浅木くん。

( 故意に引き起こすなと言われても、もう盤上にいるよ、君は。作戦が成功した暁には「チェックメイト(イケボ)」なんて言ってやりたい気持ちは胸の内に留めて、浅木くんの警戒レベル上昇と引き換えに、僕の脅し文句を気に掛けた反応まで拾えて上機嫌に笑った。煽り散らかしたリラクゼーションサロンの発音に食いついたのも嬉しい誤算で、思わずその口元をじっと見つめる。そもそも日本独自の呼び方に近いのだから、英語らしく発音しようとすれば難しいのは当たり前なのだが、途中で噛んで諦めるところまでしっかり見届けてしまい、やるなら『師匠の真似します』くらい一言宣言して欲しかった、と今更ながら思う。さっきのは絶対に録音案件だった。惜しいことをした、と悔しさときゅんが同時に込み上げて眉間を押さえる。一方、僕が期待を込めて投げた質問に分かりやすく顔を顰めたのには、つい笑いそうになった。寂しいなんて言わないことくらい、分かってはいたのだが。そうこうしているうちに、入口のスタッフがホテルの大きなガラス扉を開けてくれ、軽く会釈を返しながら中へ入る。正面にはフラワーアーティストが花々を活けた大ぶりの花瓶が置かれ、高い天井には繊細で品のあるシャンデリアが吊られ、足元には磨き上げられた大理石が広がっている。ホテルらしい華やかなラウンジを横目に、弟子の背へそっと手を添えて進行方向を示し、ホテルのフロントはそのまま素通りして左へ折れ、館内に併設されたサロンの受付へ向かい )

なに……? 最近、仲良し度が上がったから、もしかしたらと思ったんだが……。








270: 浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-10-04 06:25:02





僕が寂しがることなんて今後一切ないので期待しても無駄ですよ。

( 成人済みの男に何を期待しているのかとツンとして答える。あの夜、連絡もなしに師匠の帰りが遅くなった時は、確かに少しだけ落ち着かなかったけれど、寂しさとはまた違う。あれは師匠が僕の知らないところで何かやらかしているのでは、という不安に近い感情であって、別室で施術を受ける分には、師匠が何処かに行く心配もない。だから大丈夫だろう、という理屈を自分に言い聞かせた。そうしているうちに目的地のホテルに到着し、その高級感あふれる雰囲気に一瞬だけ尻込む。師匠に導かれるまま建物内に入るが、日頃の感謝の形とはいえ、僕には到底見合わないような空間に連れ込まれると途端に萎縮してしまった。師匠の裕福さや立場の違いをこんな場面で痛感するとは。一般庶民の僕には気が重い。思わず肩を竦めながら、本当にここまでしてもらっていいのかと確認して )

……あの、リラックスどころか緊張してきたんですけど……本当にいいんですか?





271: 藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-10-04 15:13:26




ほう……0を1にするのが天才というものさ。

( 今後一切ないと言われた瞬間に目を丸くして「そんな……!」と衝撃を呟いたが、立ちはだかる壁を壊してきた自分にとって、移ろいやすい感情を今の時点で断定するとは甘いな、浅木くん、と結論付け、自己肯定感たっぷりに返しておいた。サロンの受付の前で一度立ち止まり、緊張しているという弟子に向き直って、じっくりと顔を観察してから「いい反応だね浅木くん」と興味深そうに目を細める。リラックス出来ないのは、リラクゼーションを受ける上で邪魔になりそうではあるが、僕が忘れてしまった、あるいはそもそも体験し得ない感覚を、浅木くんを通して知れるのは貴重なのだ。そして萎縮する必要もないと言わんばかりに両肩をパンと強めに叩きながら、将来的にもっと凄い世界を見せるのだと告げるように続けて。サロン受付の女性に「こんばんは。予約していた藍原です」と声を掛けると、『藍原様、お待ちしておりました。2名様でご予約を承っております。内容を確認させていただきますね』と、完璧な笑顔と所作で案内が始まり。 )

君を労うためのプレゼントでもあるけれど、それと同時に、様々な経験を積んでもらいたいという私からの課題でもあるよ。……ああ、君にはそのうち海外遠征にも連れて行くから、ラグジュアリーな空間に慣れるための予行演習だと思って楽しんでくれ。





272: 浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-10-06 09:10:52




( / 一日一度は返信できるとお伝えしていたにもかかわらず、遅れてばかりで申し訳ございません……!一週間以上返信が遅れる場合は必ず連絡いたしますので、どうか気長にお待ちいただけますと幸いです。



そんなところで天才を発揮しなくていいですから。

( 諦めてもらうつもりが逆に火をつけてしまったらしい。僕を寂しくさせるためにどんな手を打ってくるのかと不安を覚えつつ、こちらの顔を興味深そうに覗き込んでくる師匠から目を逸らした。時折こうして観察するような視線を向けられることがあるが、居心地が悪くて仕方ない。職業病のようなものだから気にしなくていいと分かっていても、心の奥底にある感情まで見透かされそうで、勝手に気まずくなってしまう。両肩を叩かれると反射的に視線を戻し、突然飛び出してきた海外遠征の話には「そんなの聞いてないんですけど」と困惑した。課外授業として各地に出掛ける予定があるとはいえ、海外にまで行くつもりだなんて知らなかった。もちろん嫌ではない、むしろ行きたい。けれど独断で決めすぎじゃないか。僕に拒否権は無いんだろうけど。緊張を解く為の言葉にかえって頭を抱えつつ、受付の女性と話す師匠の後ろで立ちすくんで )





273: 藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-10-06 22:15:18




( / お疲れ様です。とんでもないです!私も返信に時間を頂くことは過去にもありましたし、こちらは気長にお待ちしておりますので……!冬嗣も縁側で大人しくさせておきます。一週間以上返信が遅れる場合はご連絡頂ける旨も承知しました。ありがとうございます。私としては、ご負担にならない程度に今後もお付き合いして頂ければ嬉しいです。なお、相変わらず楽しませて頂いております。セットアップ理玖君、非常に良いですね。引き続きよろしくお願いします……!



( そんなの聞いてないと言われても、僕の弟子なら決定事項である。受付で先に会計を済ませている間、振り返ってまた下手くそなウインクをお見舞いしておいた。――受付を終えると、担当のセラピストが男女一名ずつ奥から現れた。柔和な女性が浅木くんの前へ来て『お連れ様の浅木様ですね。120分、ヘッドスパ付き全身コースで承っております。お部屋に入りましたら、こちらの施術着に着替えてお待ちください。着替えが終わりましたら、お声がけください』と、個室の方を手で示しながら案内を始めている。開いたドア越しに見える室内は、落ち着いたナチュラルカラーでまとめられていて、ウッディ系のアロマが仄かに香っている。中央には清潔なシーツが敷かれた施術台が一つ。うつ伏せでも苦しくないよう、顔を伏せる部分に穴が開いたタイプのようだ。――対して僕の方は、同い年くらいの男性だった。女の人が良かったな、なんて淡くよぎったが、足裏まで触ってもらうコースだと思うと女性相手には少し申し訳ない気もするので、むしろこれでよかったかもしれない。というのも今回、浅木くんの120分コースに対して、僕は20分で終わる膝下から足裏までのフットコースだ。ヘッドスパ単品も同程度の時間で終わるのだが、髪を弄られたくないのと、寝落ちる可能性があったから候補から外した。そして、浅木くんが施術を受けている間に、僕はスーツの採寸のためここを抜け、何食わぬ顔で舞い戻る――。しめしめと頭の中で計画内容を反芻していたが、担当の男性が『こんばんは。藍原様は……』とコース確認をしようとしたところで、「よろしくお願いします」と食い気味に被せた。男性もすぐににっこりと応じてくれたので、僕も浅木くんと同様に施術着を受け取り、個室に入る直前で振り返って小さく手を振り )

それでは浅木くん。120分後にまた会おうね。ボンボヤージュ。





274: 浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-10-09 17:47:33




( / こちらも師匠の企み(?)の真相が見えてきてわくわくしております!
いつも冬嗣さんにリードしていただいてばかりなので、いつか浅木が計画したデートプランでお出掛けもしてみたいな~とも思っております!ぜひ、今後ともよろしくお願いいたします!(何もなければ返信不要です!)



……はい、また。

( 師匠と別れてから、セラピストの女性の案内に従い、個室に入る。照明が落とされた薄暗い室内と、漂うアロマの香り。いかにも"癒されてください"とお膳立てされたような空間に、天邪鬼な自分はむしろ肩が強張った。用意された施術着に着替え、ベッドにうつ伏せになる。空いた穴に顔を埋めると、『それでは、初めていきますね』と女性に声を掛けられて「……お願いします」と返したが、思ったよりも緊張していたのか硬い声が出た。女性の手が肩口に触れて、状態を確かめるようにゆっくりと圧をかけられる。『凝っていらっしゃいますね~』と穏やかながらも手応えを感じているような声色が降ってくると、適当に相槌を打って目を閉じた。ちなみに、今でもドッキリを疑っている。いつ師匠がテッテレーとネタバラシしてくるのか分からない。見知らぬ人に体を触られるのも苦手だし、師匠には悪いが、心の底から癒されるのは難しいかもしれない……。――そう思っていたのも束の間。眠るつもりなんて微塵もなかったのに、ぼんやりと意識が遠のいていく。日々の疲労の蓄積と、プロの手腕を甘く見ていたようだ。施術が始まって五分も経たないうちに、寝息を立てていて )





275: 藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-10-10 12:17:06




( / 大学でのテッテレーのためにずいぶんと仕込んだようです(笑)
わ!理玖君のデートプラン絶対に喜びます!味をしめて「師匠を連れ出せ!」という課題を出し始めそうです(笑)今からとても楽しみです……!
では、また何かあった時はいつでもお気軽にお呼びくださいませ!失礼します~。 



( 浅木くんが個室に入るのを見届け、案内通り施術着に着替えた。施術台にぎしっと腰掛けて室内を見渡し、環境チェック。ふむ……出発前に弟子のリラックスレベルを確認する必要がありそうだ。そんなことを考えていると、扉をノックする音がして『お支度はお済みでしょうか?』と担当の男性の声が聞こえた。……いけない、彼を待たせていた。「準備万端です」と告げ、促されるままうつ伏せになる。『では、オイルを使っていきますね』と声を掛けられ、すんと鼻を鳴らせば、仄かにジャスミンが香った。そして、ふくらはぎに掌が当てられたまではよかった。足首から膝裏へ手が滑り始めた途端、「ひっ、ひゃはは」と擽ったさに吹き出し、慌てて口を塞いだ。もし弟子が眠っていたら台無しじゃないか!「ちょ、ちょっと待ってみよう」と小声で相談すると、触れ方が合わないらしいと察した男性の提案で、座って足裏中心の施術を受けることになった。ついでに少しだけ様子が気になって「浅木くーん?寝た?」と個室越しに声を掛ける。始まってまだ数分程度だから寝ていない気もするが、念のためのリラックスレベルの確認だ。――その間にも足つぼが始まり、『ここは胃腸の反射区ですね。痛みはありませんか?』と尋ねられたが、少し擽ったい程度でなんともない。質の良い手作りご飯を頂いているのでね、と自慢している最中に指が別の場所を捉え、「く……っぃぃい゛!」と歯を食いしばった。『あ~、ここは目の反射区ですね。酷使されていませんか?』と尋ねられる。最後まで話を聞きなさい!……いや、それどころではない。あと15分もこの拷問が続くのか?もちろん彼は仕事をしているだけだが、浅木くんになら百歩譲って、初対面の君にここまでいいようにされるのは納得がいかない!と独自理論を展開しているところへ、さらなる激痛が襲う。「もぁ゛ぁ゛嫌だっ」と足を引っ込め、困惑する男性に「いやぁ、すっきりしました」と礼を告げた。残りの施術は辞退したいと申し出ると、幸いにも意向を汲んでもらえた。こうして予定の半分、たった10分でフットコースを切り上げた。そそくさと私服に着替え直し、浅木くんに気づかれないよう退室すると、受付に一声掛けてサロンを後にした。今度こそ本来の目的を果たすべく、採寸を予約している仕立て屋へと足早に向かって )






276: 浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-10-11 08:43:27




( ――隣の個室から苦痛を訴える声が聞こえた途端、パッと目が覚めた。何回か瞬きをして、朦朧としながら現在の状況を思い出す。寝落ちなんて有り得ないと高を括っていたくせに、いつのまにか意識を手放していたらしい。そして、隣で施術を受けている師匠の声で起こされた。普通、ただのマッサージであんなに絶叫するだろうか。僕と同じコースを受けていると思っていたが、もしかして違うのか。それにしても声がでかい。「……すみません。うるさくて」と師匠の代わりに謝ると、『大丈夫ですよ』と朗らかに笑ってくれた。僕の担当スタッフは女性だが、師匠の方は男性だった。性別によって力加減が違うのだろうか。そんな考えが過ったが、プロならそのあたりはうまく調整するだろうとすぐに思い直した。隣の個室でいったい何が行われているのか。どうしても気になってしまうが、確認する術もなく、その興味は不安へと形を変える。……師匠は今、僕以外の男に触られてるのか。そんなことを考えて何だか面白くない気分になっていると、体を起こすよう指示されて、ついでに『お連れ様は、ご友人ですか?』と問いかけられた。どうやら僕と師匠の関係が気になるらしい。元々師匠のことを知っているなら、予約の名前を見た時点で察するはずだから、わざわざ僕から言う必要はないと判断して「……まあ、いつもお世話になってる人で」と適当に濁した。お世話になってるというか、お世話しているというか。師弟の一言で片付けてしまえば簡単な話だ。けれど、それ以外に僕達の関係を表す言葉がないことに気付いて、少しばかりもやもやした。そうして、師匠がサロンを抜け出したことには気付かないままで )





277: 藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-10-12 02:16:29




( 一方、サロンを無事に抜け出した僕は、仕立て屋での採寸を終え、試着用のスーツを身に纏って鏡の前にいた。ウエストの絞りが強く、腰から臀部にかけてのラインまでよく分かる。レセプションパーティーには映えるだろうが、大学の講師としてはどうだろう。鏡に向かって身体を捻り、角度を変えてはグラビアさながらのポーズを取ってみる。動きに伴う布の張りや皺を確かめるには、こうした姿勢が一番手っ取り早い。少なくとも、美術解剖学的には合理的なのだ。(※冬嗣論)「ふむ……随分と身体の線が出ますね。講義にはどうでしょう」と神妙な顔で尋ねると、口元を軽く押さえていたテーラーから『講義の場でしたら、クラシカルな仕立てがおすすめです』と助言をもらい、その方向で話がまとまった。注文書に必要事項を書き込みながら、せっかくなら浅木くんがカッコいいと思う方を選べばよかったな、とふと思う。師匠たるもの、弟子の憧れでありたい。普段は気弱で頼りない父も、スーツに袖を通せば妙にカッコよく見えたものだ。あの頃の僕がそうだったように、浅木くんにもそんなふうに思ってもらえたら嬉しい。そう考えると、出来上がりが少し楽しみになった。――やがて『完成しましたらご連絡します』と丁寧に見送られ、店を後にする。まずはミッション達成。腕時計を確かめれば、浅木くんの施術終了まであと五分ほど。思ったより時間が掛かったが、ホテルは目と鼻の先だ。この立地だからこそ、あのサロンを選んだのだから。小走りに来た道を戻っていると、仕立て屋へ向かったときと同じように、ぽつぽつと雨が降り始めた。まずい、髪が濡れる!慌てて傘を探したものの、手元にはない。どうやら仕立て屋に置いてきてしまったらしい。仕方なくハンカチを頭に乗せながら、ふと疑問が浮かぶ。そもそも一人で銀座に来れば、こんな苦労をせずに済んだのでは?そこで、不意に赤城の言葉が蘇った。『てゆーか、お前一人で銀座に行って採寸しろよ。こんな面倒なカモフラせずによ』――ああ、ようやくあいつの言っていた意味が分かった。いや、本当は初めから分かっていたのだ。手間をかけてでも、浅木くんを銀座へ連れて行きたかった。そうして自分の気持ちを改めて確かめると、なんだか可笑しくなって、ひとり頬を緩めた。まあ、多少雨に打たれたって構わないだろう。そんな満ち足りた気分でサロンへ戻ったのは、ちょうど浅木くんの施術が終わる頃で )





278: 浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-10-13 10:30:00




( 次はヘッドスパを行うらしい。他人に頭を触られるなんて普段なら少し躊躇するが、すでに全身の力が抜けてぼんやりしていたせいか、それほど嫌悪感は無かった。リクライニングチェアに座り、ゆっくりと指圧で頭を押される。頭皮から与えられる刺激がそのまま頭の中まで伝わって、脳みそを直接ほぐされているような感覚だ。凝り固まった脳みそのしわが伸ばされて、どんどん、何も考えられなくなっていく。『髪の毛さらさらですね~』と頭上から聞こえる囁き声も、こんな状況では睡魔を誘発する材料にしかならない。結局、ヘッドスパでも睡魔には抗えず、いつのまにか微睡んでしまい、20分が体感数十秒で過ぎていった。頭を包み込んでいた手が離れていき、優しく声を掛けられると全ての施術が終わったことを告げられる。120分なんて長すぎると思っていたのに、いざ終わると呆気なく感じてしまう自分に少し驚いた。――それにしても凄かった。思考のもやが晴れて、体まで軽くなったように感じる。意外と悪くなかったと思いながら元の服に着替え、個室を出ると師匠の姿を探し )





279: 藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-10-13 19:18:18




やあ、浅木くん、おかえり……。

( ラウンジを抜けてサロンへ戻ると、まだ浅木くんの姿はなかった。受付で「連れが終わるまで待っていていいですか?」と尋ねれば、快く受付前の椅子へ案内してもらえた。時計を眺めながら、あれから彼はリラックスできただろうか、と考える。施術が始まった頃に声を掛けても返事はなかった。まさか、あの時点でもう眠っていたのか?いや、防音がしっかりしていて聞こえなかっただけかもしれない。それなら、僕の苦悶の声も届いていないといいのだが。――雨でほんのり湿った髪が気に入らず、眉を寄せて手櫛で払っていると、個室から浅木くんが出てきた。すかさず軽く手を振る。よし、どうにか間に合った。あとは何食わぬ顔で迎えるだけだ。下手に躊躇えば怪しまれそうだからね。……ところが、近づいてきた彼の顔を見るなり、別のことに気を取られた。……何か、いつもと違う。おかげで「おかえり」の語尾が妙に歯切れ悪くなってしまう。小さく首を傾げ、「メイクしてる?」と呟いた。もちろん、そんなわけはない。ただ、いつにも増して肌が明るく見えるのだ。立ち上がって、今度はつむじもチェック。僕の気に入っている形はそのままなのに、髪の根元がいつもよりふわっとしている。おまけにアロマのいい香りまで漂ってくるものだから、気づけば両手が髪へ伸びていた。左右からそっと掬い上げ、さらさらとした感触をちゃっかり堪能しながら、肝心の感想を尋ねてみて )

リラクゼーション体験はどうだった?それにしても君の髪の毛がいつもよりサラサラしてる気がする。





280: 浅木 理玖 [×]
ID:04240c48b 2026-10-14 17:43:58




……メイク?……なんで、ですか?

( 薄暗い個室から出ると、明るい照明が視界を眩ませた。ただでさえ普段から開ききっていない目をさらに細める。かろうじて目の前が見える程度にしか瞼が開かない。そんな視界の中でこちらに手を振る師匠の姿を見つけると、顔を合わせるや否や、突然身に覚えのないメイク疑惑をかけられて一瞬思考が止まりかけた。眠気の残る頭でしばらく考えても意味が分からず、ワンテンポ遅れて聞き返す。髪の毛をいじられても抵抗することなくされるがまま。いつもだったら手が伸びてきた時点で身構えたり避けようとしたりするところを、全く警戒せずに受け入れている。感想を聞かれると「……寝るつもりなかったのに……気付いたら寝てました」と片目をこすりながら答えた。改めて師匠の顔を見上げ、そちらはどうだったのかと問いかける。師匠の髪が湿っていることには気付かないままで )

……というか、最初の方、ずっとうるさかったですけど何してたんですか。途中から急に静かになりましたし。師匠も寝てたんですか。




281: 藍原 冬嗣 [×]
ID:035733254 2026-10-14 20:42:40




顔色の明度と彩度がアップしているからだ。すごいな、綺麗だ。血流が巡ったのかもしれない。

( 眩しそうに目を細める浅木くんが、なんだか眠たげな猫のように見えて、「おやおや、目が開いてないじゃないか」と眦を下げて微笑んだ。僕の問い掛けへの反応もどこかぼんやりしているし。僕が触ろうものなら『やめてください』とか、無言で避けたりしそうなのに無抵抗だし。おまけに、寝落ちしたとぼんやり報告してくる始末。……これはもしや、おねむモードなのか?「引き続き師匠の腕の中で眠るかい?」と口走りそうになったが、浅木くんの鋭い眼差しを思い出してぐっとこらえた代わりに、「こんなにリラックスしている君を初めて見たよ」と少し興奮気味に目を輝かせた。もっとよく見たい気持ちが勝り、髪に触れていた両手を頬へ伸ばす。けれど、包み込もうとしたところで彼が顔を上げたものだから、ぴたりと手を止めた。どうやら施術中の僕の声が聞こえていたらしく、うっ、と目を細め「聞こえていたのか……」とぼそり呟く。それにしても、続けて投げかけられた質問が鋭い。いや、ただ、起きたことを確認しているだけなのだ、浅木くんは。全く、おねむのくせに侮れない。不自然な間を作らないように出来る限り多くの事実を並べていく。くすぐったさと痛みがあったことに関しては眉を寄せて声を落としたが、ちらっと受付の方を見てからフォローも入れる。そして空白を埋めるためにほんの少しだけ嘘を混ぜておいた。いや嘘ではない。痛すぎて、サロンから召されたということにしよう、と慎重に回答を重ねて )

実は、僕はヘッドスパが嫌だったから、代わりにフットコースをお願いしていたんだが……、くすぐったいし、痛いし、……いや、師匠には合わなかったみたいでね。腕前は素晴らしかった。ただ、刺激が強すぎて、そのあとは召されたというわけだ。まあ寝ていた状態とも言えるだろう。





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