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1対1のなりきりチャット
自分のトピックを作る
41:
常葉 悠 [×]
2025-09-16 19:25:09
やぁ、お久しぶりですね。はは……いえ、最近少し夜更かしをし過ぎてしまいましてね
(約束の時刻より少し早く彼が到着した。彼の姿を認めると、自然と笑みが零れる。以前危惧したようなリセットは起きていないとみえ、安心する。さて、今日は何の話をしながらダーツをしようか──そんなことを考えていると、彼から疲れているのではと指摘された。瞬間、少しだけ動揺する。ここ最近疲労が溜まって不眠であるのは確かだが、社内で身体の不調を指摘されたことは無い。幼少の頃より、熱を出しても気付かれにくい体質だったので、彼にあっさりと見破られて、動揺してしまったのだ。自分はそんなに分かりやすい顔をしているのか。これは早晩他の社員にも見抜かれてしまう。そろそろメンテナンスが必要だろう。そして同時に彼に仕事の悩みでも打ち明けてしまおうかとも考える。だがすぐに嘘の理由を彼に告げる。不眠ゆえに夜更かしをしているので嘘とも言いきれないが、そんなものは詭弁に過ぎない。まだ出会ってすぐだし、そもそも彼はダーツをやりに来ているのだ。10も歳上の同性の仕事の話なんて聞きたくもないだろう。愛想笑いを浮かべながら、マティーニを傾ける)
42:
宮村 湊 [×]
2025-09-16 21:59:12
夜更かし? そっかあ……どんな理由であれ、寝不足ってけっこう堪えますよね。俺も最近、やらかしちゃって……期日までに送らなきゃいけなかったお客さんへのメールを、うっかり出し損ねたんです。もう、上司にすんごい勢いで怒られて。あの日は頭が冴えちゃって、全然寝れませんでしたね~。
(軽く肩をすくめて、照れ隠しのように笑う。誤魔化されたのはわかっている。彼が口にした夜更かしが、ただの不眠の裏返しであることは疑いない。だが、それを正面から突くのは愚策だ。むしろここは、自分から失敗談を差し出すことで空気を和ませる方が効果的。対等に見える位置に自分を置くことで、相手の肩に入り込む隙を作る。指先でグラスの表面をなぞり、水滴の冷たさを感じながら、ゆっくりとカシスソーダを口に含む。視線を上げて彼の方へ向けると、わざとらしさを消した柔らかな笑みを浮かべた)
……何か悩み事でもあるんじゃないかって、ちょっとだけ心配で。……あ、でも、こんな若造に言われても困りますよね。
(前半は真剣に、しかし後半は声のトーンを和らげて冗談めかす。相手に圧を与えないよう、絶妙な力加減で。眉を下げて見せ、にっこりと笑顔を添える。相談するかどうかの選択肢は常に相手の手に委ねる──それが警戒を和らげ、信頼へと繋がる一番の近道だからだ)
でも俺、こう見えて友達の愚痴とか聞くの得意なんですよ!何かあったら、いつでも壁だと思って何でも話してくださいね。
(軽く胸を叩いて見せ、明るい調子を取り戻す。その動作に合わせるように、氷が溶けて澄んだ音を立てた。距離を縮めるのは焦らず、けれど確実に。笑顔を崩さぬまま、彼が次にどんな言葉を返すのかを見極めるように静かに待った)
43:
常葉 悠 [×]
2025-09-16 23:21:01
(彼の失敗談に笑いながら耳を傾ける。この青年でもミスはする。当然のことだがいまいちイメージができなかった。それに普段から足の引っ張り合いの世界にいるので、自分のミスをこんなにも楽しげに話す彼が新鮮に映った。だが自分には分かる。彼は自分が誤魔化しをしたことを見抜いて、あえてそういう話をしているのだ。そう見当をつけた傍から"悩み事があるんじゃないか"とか"なんでも言って"とか、こちらを気遣ってくれる発言をした。その厚意に甘えて今すぐ全てを吐き出したい気分になったが、グッとこらえる。自分の方が歳上なのだからという一種の痩せ我慢と、会社の内部情報に関わることを誰が聞いているかも分からない場所で喋っていいのだろうか、というリスクの問題。天秤に掛ければ当然話さない方がいいに決まっている。だがこのまま彼の厚意を無駄にもしたくない。それで彼が傷付いてしまうのも嫌だ。どうすればいいか考えている内に、ふと一つのアイデアが思い浮かんだ)
湊くん、ありがとう。私のことを気遣ってくれたんですね。……ねぇ、こういうのはどうですか? 今から301点のゼロワンゲーム……先に持ち点を0点にした方が勝ちというゲームですが、これをやって負けた方が今の悩み事を話すというのは?
(唐突な提案に思われるかもしれないが、今回の集まりの趣旨はダーツで、自分の悩み事なんて二の次だ。だが彼は悩み事を聞く準備をしてくれている。この方法ならば、彼のその準備も無駄にせずに済むかもしれない。勝つか負けるかは実力と時運が決める。果たして彼はこの提案を受け入れてくれるだろうか、と僅かばかりの不安を胸に彼の瞳を見つめる)
44:
宮村 湊 [×]
2025-09-17 07:40:21
ゲームですか?あはは、良いですよ!驚かせようと思ってこの1ヶ月、めっちゃ練習したんです。悠さんには敵わないかもしれないですけど…。
(一瞬、純粋に驚いたように目を丸くしたものの、すぐに屈託のない笑みを浮かべると了承を示すように大きく一度頷いてみせる。純粋に、面白いと思っていたのも事実だ。闘争心を隠すように瞳を細めると、遠慮がちに人差し指で頬を掻く。上手くなりすぎていてもいけないし、下手すぎても情報を引き出せない。ただの素人を演じればよかった前回に比べて演技の難易度は上がっているが、問題は無いだろう。標的が提案してきた以上、この条件はむしろ自分にとって好都合。遊びの形にかこつけて、彼の胸の内を引き出すチャンスになるかもしれない。右手に持っていたカシスソーダのグラスをテーブルの上に置き、矢へと持ち替えるとスローラインに前回教わった通りの姿勢で立ち、深呼吸ののちに矢を構える。肘を固定し、腕を伸ばすようにして放たれたダーツは、中央近く、20のシングルに真っ直ぐに刺さった。ブルにはわずかに届かないが、初回の惨憺たる結果から見れば大きな進歩だ。ぱあっと表情を明るくして彼の方を振り向き、軽やかな足取りで歩み寄り、期待に満ちた視線を彼へと送った)
…あ!惜しいなあ、ブル行けたかと思ったんですけど、そんなに上手くいかないかあ……。悠さん、俺、前回よりマシになってますか?
45:
常葉 悠 [×]
2025-09-17 22:38:12
(自分の提案を彼が快く受け入れてくれたので安堵する。そして彼の無邪気な張り切りように、頬を緩める。一ヶ月練習したという彼の腕前を見るのが楽しみでソワソワしていた矢先だった。彼の放った第一投が20のシングルに真っ直ぐに刺さったのだ。思わず二度見する。たって一ヶ月で上達するのが早すぎる。これは自分にとって想定外。早くも自分の腕を凌駕した可能性が出てきた)
いや……これは相当お上手ですね。前回よりも遥かに。ははは……これは私の方が危ないですね。一つ、良いことを教えてあげます。ブルを狙うのも一つの手ですが、実はブルより20のトリプルの方が得点は上です。ですので、そこを狙うのもアリですよ。尤も、ブルより面積が狭いので、中々当たりませんがね。
("マシになっていますか"なんて控えめな聞き方をする彼に成長を実感して欲しくて、大きく褒めてみる。もちろん全部本心からの言葉だ。そして経験者としての威厳を保つために、ダーツの知識を教える。これで負けた時、自分は最低限のことはしたと言い訳を作ることができる。そしてふと思い出す。自分も初めての頃はあんな風に楽しげに遊んでいたことを。自分は全て独学だったが、こんな風に共にプレーをする相手がいれば、また違っただろうか)
さぁ、ダーツは1ラウンドにつき3投。あと2投残ってますよ。頑張って。
-------
背後、失礼します。ダーツ勝負ですが、勝敗はどちらがいいでしょうか? なにか希望があれば遠慮なくどうぞ!
46:
宮村 湊 [×]
2025-09-18 07:52:28
へへ、悠さんに褒めて貰えるなら頑張った甲斐がありました!あ、そっか!ダブルブルでも50点、20のトリプルなら60点ですもんね!よーし、頑張るぞ!
(驚いたように目を見開く相手を見て、心から嬉しそうに破顔し、グッと拳を握って見せる。その姿は子供じみて無邪気に映るだろうが、心の奥底では冷静に打算を巡らせていた。毎週のように暇さえあれば通ってたんですよ、なんて言いながら二投目と三投目用のダーツを器用に指の間に挟む。ボードを確認するようにじっと見据え、一度深く頷いてから笑顔を取り戻し、気合を込めるように短く息を吐いてスローラインへと戻る。矢を構えた腕は、先程の一投目よりもわずかに力みを含んでいた。もちろん、狙って外す。初手で与えた鮮烈な印象を打ち消さず、それでいて急に上達しすぎて怪しいと思わせないための調整。ピンポイントに狙った場所に投げることまではできないものの、大まかにでも中央から逸らすことが出来れば十分だろう)
……あれっ、20点を狙ったのに……やっぱりトリプルは難しいなあ……
(放たれた二投目は9のシングル、続く三投目は11のシングル。いずれもボードの中央から外れ、決して悪くはないが褒めるほどでもない結果だ。わざとらしさを悟らせぬよう、肩をすくめて小さく首を傾げ、気まずそうに眉を下げながら振り返る。頬を掻きながら苦笑を浮かべ、ゆっくりと彼の方へ戻っていく。その口調は悔しさよりも楽しげで、失敗さえもゲームの一部として受け入れているようだった)
まだたまーにしか思ったところに投げられなくって。奥が深いですね、ダーツって!
──────
そうですね……どちらでも面白い展開になるかとは思うんですが、良い試合をして最後は湊側が負けるのが良いかな、と思ってます!途中から本当にゲームに没頭してしまうのも良いかな、と思っておりまして……!
47:
常葉 悠 [×]
2025-09-18 20:24:19
(苦笑を浮かべる彼を鼓舞するように告げる。失敗すらゲームの一部と考えているかのように、彼の口調は爽やかだった。今どきこんなにもダーツで楽しげに遊ぶことの出来る若者がいるとは──別に自分が作ったゲームでもないのに、何だか自分まで楽しくなってくる。彼が投げ終わると立ち上がり、マティーニをテーブルの上に置き、矢を持つ。スローラインの前に立つと、彼に教えたのと同じ構えを取る。彼は20、9、11のシングルに当てたので、残りの得点は261点。まだまだ勝負は始まったばかりだが、ここで差を付けておくのも戦略として一つの選択だ。一呼吸置いてから腕を伸ばしきって投げる。矢はやや上ながらも真っ直ぐに飛んでいき、20のダブルに刺さる。続いて間を置くことなく、二投目を投げる。矢は今度は少し左にずれ、5のダブルに刺さる。そして三投目。今日は調子が良さそうだと思いながら、今度は少し力を抜いて投げてみる。矢は今度こそ真っ直ぐに飛び、ボードの中心──ブルに刺さる。これで自分は40、10、50の得点を得たことになるので、持ち点は残り201点。幸先のいいスタートに満足げに頷くが、大切なことを思い出した。自分は勝負事においては、細かいところで勝ち、肝心なところでポカをする傾向にある。あまり嬉しさを噛み締めると、今日もそうなるかもしれない。ここは努めて冷静に振る舞う必要がある。矢を回収し、彼の元へ戻りながら、冷静な口調で言う)
今日は少し調子がいいかもしれません。しかしあまり序盤で点数を稼いでしまうと、クリア目前でバーストしてしまうかもしれませんからね。そういうことも計算に入れなくてはいけませんね。
-----
承知しました!では互いにゲームに没頭し、接戦の末、常葉社長が勝つ展開にしましょう!
48:
宮村 湊 [×]
2025-09-19 00:32:12
すっ……ごい!いきなりブルじゃないですか!やっぱり悠さんはすごいなぁ……。俺も頑張らないと!
(カシスソーダのグラスを手にしながら彼の一投一投を見守っていたが、やはり場数を踏んできた人間の投げ方は違う。フォームに無駄がなく、矢が放たれるたびに吸い込まれるように良い位置へと収まっていく。最初はある程度差をつけられることは想定内だった。だが、予想以上の精度に内心舌を巻く。盤面に刻まれた差は既に60点。悠長に構えていれば、このまま突き放されてしまうのは目に見えていた。驚きと尊敬を織り交ぜた声で賛辞を送りつつ、その裏で冷静に打開策を探る。標的を追い詰めるはずの自分が、今はゲームに追い詰められている──その皮肉に気付いても、口元の笑顔は崩さない。ダーツを三本手に取ると、軽く肩を回してからスローラインへ進み出る。片足を前に出し、深く息を吸い込む。まずは一投目、狙いは20のトリプル。だが放たれた矢はわずかに逸れ、15のシングルへと突き刺さる)
……っ、惜しい。
(小さく呟き、すぐさま二投目に移る。狙いは変えず、だが今度は力が足りず、6のダブル。気を抜けば、焦りが顔に出そうになる。最後の三投目──ここで食らいつけなければ勝機は見えない。無意識のうちに瞳を細め、矢先を真っ直ぐに見据える。耳の奥で鼓動が早鐘を打つ。求めているのは情報だったはずなのに、今はただ勝ちたいという一心で手が伸びていた。放たれた矢は鋭い軌道を描き、盤面へと突き刺さる。18のトリプル。狙いから少しずれたが上々の結果だ。喜びを隠すことなく両手を軽く掲げ、子供のように声を弾ませる。当然、大半は大袈裟な演技ではあったが、心からの高揚が含まれていたのもまた事実。隣の彼の方へ振り返ると、頬を紅潮させた笑顔のまま勢いよく歩み寄って行った)
やっ……たー!悠さん、トリプルですよ!俺、初めてトリプル刺さりました!
49:
宮村 湊 [×]
2025-09-19 00:33:11
──────
展開について、かしこまりました!よろしくお願いいたします…!
50:
常葉 悠 [×]
2025-09-20 00:32:22
18のトリプル……! 刺さったじゃないですか! すごいですよ湊くん! こんなに早く当ててしまうとは思いませんでしたよ……!
(勝負には勝ちたい気持ちもあるが、それ以上に彼の腕が気になった。15のシングルと6のダブル。どちらも狙いはいいが、力が強かったり足りなかったり、思うような結果が出ていないのは表情からも明白だった。だからつい、手を貸してしまいたくなるが、あいにく折角の真剣勝負。ここで助け舟を出すのも憚られる。だから今度こそ彼が狙っているところに刺さって欲しいと強く念じていた。その矢先、彼の放った三投目が18のトリプルに刺さったのだ。18とはいえ、トリプルに刺さっただけですごい進歩だ。思わず、声が出てしまっていた。そして高揚している彼につられるかのように、自身も気分が高揚していた。その弾みで彼の肩に手を置き、顔を寄せて賛辞を送る。そしてふと、思い出す。これは勝負。彼が投げ終わった後では自分が投げなくてはならない。彼から離れると矢を持って、ラインの前に立つ。先程の三投で彼の得点は残り180点。自分とは21点差となった。点差は僅かだがリードされているのは事実。息を吐いて一投目を投げるが、1のダブル。次いで二投目は5のトリプル。三投目に至っては9のシングルだった。彼の躍進に未だ気持ちが落ち着かず、狙いはことごとく外れたが、自然と悪い気はしなかった)
ははは、酷い点数です。立場が逆転してしまいましたね。これは湊くんに色々と教えてもらわないとですね。
51:
宮村 湊 [×]
2025-09-20 08:49:32
…っ、へへ、ありがとうございます!悠さんにどうしても上達したところ見せたくて……。
(肩に置かれた体温、不意に近付いた彼の顔には自分とは全く違う、計算など1ミリも混ざっていない純粋な喜びと賞賛が浮かんでいて、一瞬言葉を失い瞳を見開く。直ぐに我に返り満面の笑みで喜びを伝えつつ、その内心は穏やかでは無かった。何をしている──情報が賭かっているとはいえ、ゲームにムキになったり、標的の反応に動揺させられたり。静かに自分を叱咤しつつ、スローラインへと向かった彼の背中を見詰め、すっと瞳を細める。まだほぼ見ず知らずの他人の成功を心の底から喜べるような愚直な男を騙すのに良心が痛んだか?否、そんなものはとうの昔に捨てている。自分の仕事は対象が誰であれ、相手がどんなに善人だったとしても関係は無い。先程とは打って変わって乱れた彼の矢の軌道を眺めながら小さく息を吐く。彼の合計得点は26点。点差は5点まで縮まった。彼が振り返るまでに人畜無害なえがおで表情を塗り替えるとぶんぶんと首を大きく横に振り、ダーツを片手に入れ替わるようにスローラインに立つ)
そんな、本当にたまたまですよ!じゃあ次、俺行きますね!
(再びダーツ盤と対峙し、心を落ち着かせるように一度息を吐く。今回こそ彼の得点は伸び悩んだものの、ここで手を抜けば先程のように一気に点差を突き放されることも十分に考えられる。そもそも、恐らく自分より彼の方が実際にダーツの腕は上回っているだろう。ある程度こちらも真剣に投げなければ勝負にならないかもしれない。そんな邪念が入ったからか、一投目は下に大きくずれ、7のシングル。二投目、それを修正するように12のトリプル。3投目はブルを狙ってみたものの、そう上手くは事は運ばずに狙いがずれ、19のシングルという結果に落ち着く)
ブルはやっぱり難しいなあ……。でも、トリプル取れるようになってきました!やっぱり悠さんのフォームは綺麗だから、近くで見てると勉強になるなあ…。
52:
常葉 悠 [×]
2025-09-20 22:57:42
ふふ……私のフォームばかり見ていると変な癖がついてしまうかもしれませんよ。私のフォームは、あまり綺麗だとはいえませんから。
(トリプルに刺さるようになってきた彼に些か脅威を覚える。彼は未だブルを狙っているようだが、自分にしてみればブルより遥かに面積の小さいトリプルに当たる回数が多くなるのは、脅威に他ならなかった。トリプルに当たり続ければ、自然とコツを掴む。そしてより当たる回数も増える。彼は飲み込みが早いから、あっという間にダーツをコントロールする術を学んでしまうだろう。ひょっとしたら既に無意識下で会得しているのではないか。そんな邪推が頭の中に過ぎる。何はともあれ、ここで点差を離して置く必要がある。自分の中の闘争心が頭をもたげてきた。久しぶりの感覚だった。スーツの上着を脱ぎ、ネクタイを緩める。上着を先程まで座っていた椅子に掛ける)
湊くんには悪いですが、ここで一気に巻き返してみせますよ。私は遊びを本気でやるタイプですから。
(ダーツ盤の前に立ち、彼の方を振り返って宣戦布告をする。大人げないと思われるだろうか。だが勝負事はいつだって真剣に行わなければならない。投げるフォームを構え、一気に腕を伸ばす。一投目はダーツ盤の中心──ブルに突き刺さる。次いで間を置くことなく、二投目を投げる。矢は真っ直ぐに宙を走り、再び中心に突き刺さる。これで二連続ブル。このままハットトリックを狙おう──そう決めて三投目を構える。既に二本の矢が突き刺さっているので、それらに当たらないように投げなければ弾かれてしまう。狙いを定め、投げる。だが、ほんの少しだけ力加減を誤ってしまった。しまったと思ったが、時すでに遅く中途半端な力で投げてしまったがために、矢は失速していく。狙いを大きく逸れ、14のシングルに刺さった。これで自分の残り点数は61点になった)
ハットトリックを狙ったつもりでしたが、残念でした。しかしこれで私が優勢。ここからどうしますか? 湊くん。
53:
宮村 湊 [×]
2025-09-20 23:57:16
うっ………………そ………………
(彼が謙遜をしている時には、そんなことないですよ、と快活に笑いながら否定する余裕があった。真正面から突き付けられた宣戦布告に対しても、やや闘争心を煽られ負けず嫌いが表情に出そうになったが、彼がすぐにダーツ盤へ向き合ったことで事なきを得ただろう。しかし、その後が問題だった。彼が放つダーツが真っ直ぐ盤の中央に刺さった瞬間、思わず目を見開く。続く二投目がほぼほぼ同じ軌跡を描いたのを見た時には思わず、と言った風に声が零れていた。一気に114点を獲得したことで、せっかくのリードも全て帳消しになった上、50点ほどの差を付けられている。我に返り、直ぐに彼に対して賛辞の言葉を送りつつ、彼を見つめる)
すっ……ごいです!二回連続だって、俺からしたら有り得ないですよ!……うー、でも、負けません!俺、悠さんに頼られたいんで!
(口を開く頃にはすっかりいつもの調子を取り戻していたものの、内心は挑発に乗り闘争心が燃え盛っていた。単純に───最早、情報など一切関係なく負けたくない。スローラインに立ち、再び盤と向かい合う。力みすぎてはいけない。静かに深呼吸を繰り返し、矢を構えると、先程彼が投げていたのをイメージして真っ直ぐ矢を放つ。一投目は先程の彼と同じような軌道を描いたが、中央より僅かにずれシングルブルの25点に留まる。続く二投目、少し考えて軌道を変える──5のシングル。そして、ラスト三投目。修正されたその軌道は、真っ直ぐに20のトリプルへと突き刺さった)
…や、……やった!悠さん、20のトリプルです!俺、あと28点です!終わりが見えてきたかも……!
54:
常葉 悠 [×]
2025-09-21 00:48:24
えっ? ああ……中々やりますね……!湊くん……!20のトリプルは私も一度しか当てたことがありません。本当は君、自分の実力を偽っているんじゃないですか?
(自分が二回連続でブルを取ってから、彼はさすがに呆気にとられたようだった。しかしすぐにいつもの調子に戻ったようだった。少しやり過ぎたか、なんて上から目線で反省していると、彼の放った矢が20のトリプルに刺さったのを見て、思わず二度見してしまった。ブルを取るよりも難しく、最も点数の高い20のトリプル。それを見事に命中させた。きっと先程までの彼もこんな感じで呆気にとられたのだろう。すぐに我に返ると、再び賛辞の言葉を送る。そして彼に冗談めかして疑いの目を向ける)
あははは、なんて言ってても始まらないですね。ここがお互い勝負どころです。
(彼は28点。自分は61点。このラウンドで確実に勝つには50と11点取ればいい。つまり、一回はブルに、もう一回は11のシングルに当てればいい。とはいえ、自分もこんなに白熱した戦いになるとは思わず、自然と指が小刻みに震えるのを自覚する。落ち着け、先程と同じように真ん中に当てればいい。ブルに当てたら、もう自分の勝ちは決まったも同然だ。そう自分に言い聞かせ、一投目を投げる。矢は左に逸れ、11のシングルに当たる。あともう少し右にズレていればブルという微妙な位置だった。狙いは外れたが、11のシングルは当てなければならないところだったので、手間が省けたと自分に言い聞かせる。あとはブルに当てればいいだけ。二投目を投げる。これで勝つ──それで投げた矢だが、ブルの少し上の20のシングルに刺さった。残り30点。15のダブルか、10のトリプルを狙えば勝てる。まだ勝機はある。だが、逸る気持ちを抑えて投げたはずの三投目は、全く見当違いの17のシングルに当たってしまった)
残り13点ですか。ははは、これは負けたかもしれませんね。湊くんは残り28点ですから、14のシングルに二回当てるか、14のダブルを一回当てれば勝ちです。さぁ、どちらでもお好きな方で勝ってください。
55:
宮村 湊 [×]
2025-09-21 10:08:42
……いやいや、ビギナーズラックですよ!もう出来る気がしませんし!そんなに狙ったところにピンポイントに当てるのは……
(彼からの指摘に、胸の奥が冷えるような心地を感じる。声色は冗談めかしていたので、彼とて本当に自分のダーツの腕に疑いを持っているわけではないと思うが、勝負に熱中しすぎてダーツをはじめて1ヶ月の初心者である、という設定を失いそうになる。再びダーツ盤へ向き合った彼の中を見て小さく溜息をひとつ吐くと、人さし指でリズムを取るようにとん、とんと机を軽く叩く。ゲームに熱中しすぎて、注文したカシスソーダの氷はすっかり溶け、薄まってしまっていた。このターン、彼は上がれる可能性がある。先程の精度であれば次ターンが回ってくることはないかもしれない。そんな事を考えながら彼の投擲を眺めていたが、僅かに集中力を欠いたのか、狙いがズレたのが分かった。思わず心臓が早まってしまうのを感じつつ、一方で冷静になれ、と警鐘を鳴らす自分もいる。ダーツの矢を手に取り、入れ替わるようにスローラインに立つ。14のシングルを2回か14のダブル。もしくは28点になる組み合わせであればなんでも良い。14のダブルを狙って外にずれて0点になるくらいなら、ここは14のシングルを狙う方が確率が高い。静かに計算を巡らせると、最初の一投を放つ──14のシングル。狙い通りだ。あともう1回、14のシングルに刺されば、このゲームは獲れる。気分が高揚するのを感じつつ、もう一度深呼吸をする。先程と同じように投げればいい、それだけだ。静かに投げた二投目は、しかし放つ瞬間に指が残ってしまい僅かに軌道がズレた──16のシングル。バーストだ。心の底から湧き上がる悔しさを必死に堪え、落ち込んだように肩を落として笑みを浮かべながら彼の元へと戻る)
あちゃ~…やっちゃいました…。やっぱり、狙ったところに何回もちゃんと当てるのは難しいですね…。悠さん、次どうぞ。
56:
常葉 悠 [×]
2025-09-21 14:58:35
ああ……少し指がくっついてしまったんですね。ダーツあるあるですから、あまり気にしない方がいいですよ。
(彼を励ますように言うと、入れ替わるようにダーツ盤の前に立つ。そして矢を構えると、あっさりと13のシングルにダーツを当てる。先程まで白熱していた勝負はあっさりとケリがついてしまった。13は裏切りの数字。そんな数字で勝ってしまうというのも、不吉の前兆のように思えるが、勝ちは勝ちだ。勝敗が確定すると、どっと疲れが押し寄せてきた。こんなにも熱中してプレーしたのは久しぶりだ。先程までずっと肩の力を張っていたため、それが一気に弛緩する。すっかり常温に戻ってしまったマティーニを飲み干す。カウンターに行き、おかわりを注文すると、椅子に置いたスーツの上着を羽織り、緑色のペイズリーネクタイを締め直す。再びグラスを片手に彼の元へ戻る)
しかし湊くん、お上手でしたよ。とても最近始めたとは思えないくらいに。ビギナーズラックという一言では片付けてはいけないくらいに、いいプレーでした。
(彼の元へ戻ると、マティーニを一口飲みながら賛辞を送る。ビギナーズラックと彼は言っていたが、自分にしてみれば、才能のようなものだと思う。きっと彼は器用なのだ。吸収が早いので、何でもすぐにコツを掴むことができる。要領がいいのだろう。そしてふと疑問に思う。彼のように優秀な人材が普段どこで何をしているのか。聞いてみたい気もするが、あまり唐突に詮索するのは昨今のコンプライアンス遵守の世情に相応しくない。もし後で自分の素性がバレた時に問題がある可能性がある。だが自然な流れで聞くことが、今の自分にはできる。会話の自然な流れであれば彼も不快感を抱かないだろうか)
確か負けた方が今の悩み事を話す、でしたね。湊くんはなにか悩み事はありますか。プライベートのことが話しづらかったら、仕事のことなどで構いませんよ。
57:
宮村 湊 [×]
2025-09-21 22:49:55
さすがですね、俺の負けです。あはは!じゃあ勝負には負けちゃったけど、通い詰めて練習したかいはあったかもしれないですね。
(彼の最後の一投が決まった瞬間、思わず感嘆の声を漏らし、軽く拍手を送った。負けたことに悔しさを滲ませる素振りは一切見せず、素直に賞賛の笑みを浮かべる。その方が場の空気を壊さず、むしろ自分の印象を良くすることを分かっているからだ。水滴がしたたり落ちるカシスソーダのグラスを持ち上げ、すでに炭酸の抜けきった液体を一息で飲み干す。口内に残る甘さと僅かなアルコールの余韻を感じながら、グラスをテーブルに戻すと、ゆるやかに瞳を伏せた。勝負の約束──負けた方が悩みを話す──を思い出し、少しだけ逡巡するような間を置く。もちろん正直に話すつもりはない。だがここで軽く弱みを見せておくのは悪い手ではないだろう。自然に心を開いているように見せかければ、彼の心もまた緩むはずだ)
……そうですね。仕事のことなんですけど。俺、この近くの小さなベンチャーでエンジニアをやってるんです。自分ではそれなりに得意だと思ってたんですけど……どうも、それを面白く思わない先輩がいるみたいで。些細なことですけど、わざと情報を回してくれなかったり、報告の場で揚げ足を取られたり……。大袈裟に言えば嫌がらせ、ってやつかもしれません。
(声の調子を少し落とし、眉を下げて困ったように笑う。決して深刻すぎない、けれど“若者らしい弱音”として受け止められる分量を計算して吐き出す。そして、ほんの一瞬だけ相手の表情を窺ってから、恐る恐る尋ねるように言葉を続ける)
悠さんも…そういう風に、人から疎まれたりしたことって、ありますか?
58:
常葉 悠 [×]
2025-09-22 22:45:38
ふむ……それは典型的な嫌がらせですね。今時そんな人がいるとは、驚きですね。
(マティーニを飲みながら、彼の話を傾聴し、苦笑を浮かべる。昨今はたとえ同僚の間柄であっても、コミュニケーションには気を付ける時代だというのに、先輩社員がそんなことをしているとは。自分が社長になってからの自社ではコンプライアンスに厳しくなり、そんなことをすればすぐに処分の対象になるようになった。どこも同じようなものだと思っていたが、ベンチャーではまた事情が変わってくるのだろうか)
……私はたくさんありますよ。あまり人から好かれるような人間じゃないですから。ただ……私は私を嫌っている人間の失敗や弱みをフォローしたり、相手に手柄を譲ったりして、恩を売ってました。ほら、そうすれば相手は自分に少なからず貸しができる。嫌いな人間に借りを作られたことで相手は反感を持ちますが、でも手柄は譲って貰えた。大抵の相手は、それで露骨な嫌がらせができなくなります。
(話しのボールが早くも自分の方に回ってきて、少し間を置くがすぐに答える。直接的な彼の問いにどう答えようか迷ったが、正直に話すことにする。現場で働いていた頃はよく陰口を言われたものだ。あいつは社長の息子だからいい仕事を取ってこれる、不公平だ、七光り社員──自分としては他の社員同様に仕事に打ち込んでいただけだったが、周囲から見ればそんな認識だったことにショックを受けた。だから積極的に敵を減らそうと思った。他の社員とコミュニケーションを取り、自分を嫌っている相手とこそ関わりを持った。そしてその相手が失敗したら、誰よりも早くフォローした。チームで仕事があれば、自分の手柄の一切合切を譲った。そうやって自分に逆らえなくして、つまらない陰口を減らしていった。だから社長になってからも、同じことをやっていけば良いと思っていた。しかし上の世界は思った以上に足の引っ張り合いが横行していたり、自分と同じことを考えている人間が多くいたりして、到底通用しなかった。だから今のような独裁的な組織体制になってしまったのだが)
59:
宮村 湊 [×]
2025-09-23 09:37:06
……すごいな、それ。俺、正直……自分が嫌われてるって分かると、どうしても距離を置いちゃう方なんです。向き合うんじゃなくて、避けちゃう。だから悠さんみたいに、相手をフォローしたり、手柄を譲ったりなんて……ちょっと想像できないです。
(感嘆の声を零しながら自然と目を丸くしてしまう。両手で包み込んだグラスの冷たさが、火照った掌にじんわりと沁みていく。演技のつもりで驚きを見せたはずなのに、胸の奥で本当にすごいと思ってしまった自分に気付き、その事実が一瞬だけ困惑を呼ぶ。標的を観察するはずの自分が、尊敬に似た感情を抱いている。そんなはずはないと言い聞かせても、さっきから目の前の男が語る一つひとつの言葉が、自分の心の深い部分に触れてしまう)
……でも、そうやって自分のことを嫌いな人にまで手を差し伸べられるのって、すごく格好いいなって思います。もちろん、それが引いては自分の得になるからだとしても。俺も……少しは見習わないとなあ。
(軽く笑い、わざと肩をすくめてみせる。計算と偽りで彩られたこの場で、ふと本心が滲むのが怖い。けれど、同時にその感覚をどこか心地良いとも思ってしまう。視線を移した瞬間、袖口に刻まれた皺と、目の下に薄く影を落とす疲労が目に入り、胸の奥がざらついた。これが彼の戦いの痕跡なのだと知って、思わず眉を寄せそうになったが、すぐに柔らかな笑顔を取り繕い、無邪気な後輩の顔を崩さずに見上げた)
60:
常葉 悠 [×]
2025-09-24 20:42:40
無理に見習おうとしなくていいんですよ。やり方は人それぞれですから。湊くんには、湊くんのやり方がきっとあるはずです。それに私は、あまり仕事ができませんから。
(思ったよりも彼がこちらへ尊敬の眼差しを向けてくるので、困惑しながら忠告をしておく。彼のことが知りたいと思って話題を振ったのだが、分からなくなってしまった。なぜ自分なんかをそんな目で見るのか、なぜ自分なんかに感嘆するのか。大した人間では無いというのに。だから少し目線を落としても自分は出来の良くない人間だと暗にアピールしておく。卑下するのは良くないとか、ネガティブすぎるとか、自分の人柄を知る者はよく言うが、これは自衛なのだ。誰であっても自分に対して尊敬の念を抱いて欲しくない。本当に尊敬できる人間であれば、会社内のトラブルを快刀乱麻のごとく解決できるからだ。相手が持つイメージと本当の自分のギャップに挟まれるのは辛く苦しい)
最近の若い子は素直さと、したたかさを併せ持っています。湊くんも実はそういうタイプなんじゃないですか? 私のやり方なんて見習わなくても、人間を動かすことくらい簡単にできそうなものですけどね?
(最近の若い子と一括りにすると、主語が大きいとクレームがつくかもしれないが、素直に思っていることを言う。こちらの言ったことは何でも素直に聞き、スポンジのように吸収する。一方で自分の気に入らないことは頑として突っぱねる。そしてそれを同じトーンでできてしまう。だからつい要求が通ってしまう。そういう意味でのしたたかさだ。彼には素直さがあるが、そういう一面もあるのではないか──単純な疑問から彼に問うてみる)
61:
宮村 湊 [×]
2025-09-24 23:09:19
え、俺ですか?うーん……したたかっていうのはどうだろ。俺、そんなに器用じゃ無いですよ。
(相手が自分を過大に評価していることに、思わず肩を竦めて小さく笑った。素直さ、したたかさ──まさに狙って使っている部分でもあったが、それを正面から指摘されると一瞬だけ動揺が走る。胸の奥で見抜かれたか、という警戒がかすめたが、表情は崩さない。困ったように眉を下げ、人差し指で頬をかく仕草は、自然体を装うためのものだった)
あんまりこういう経験ってなかったので、地味にショック受けちゃって。でも、会社の人の愚痴ってなかなか同僚にも言いづらいじゃないですか。俺以外には普通にいい先輩なんです。だから、余計に。
(グラスを両手で包み、指先で水滴をなぞる。吐き出す言葉とは裏腹に、頭の中では別のことを考えていた。──目の前の男は、やはり普通の経営者とは違う。若くして社長という重責を背負い、誰にも見せられない重圧と孤独に押し潰されそうになっている。それが滲む表情を何度か目にしてきた。任務のために観察するはずが、気付けばその"痛み"に無意識に引き寄せられてしまっている自分がいることに気付き、誤魔化すようにパッと笑顔を作り直すと相手を真っ直ぐに見詰める)
でも……逃げ続けてても何も変わらないですしね!だから、少しずつでも向き合わないと。こうして言葉にしてみたら、ちょっとだけ気持ちが軽くなりました。
62:
常葉 悠 [×]
2025-09-25 20:52:59
(器用ではないと聞くと意外そうに"そうですか"と声を漏らす。ただの謙遜だろうか、それとも事実なのだろうか。一見器用そうに見えたが、自分の思い込みだったのだろうか)
逃げても変わらない……確かにそうです。でも一度立ち止まって様子を見るのもいいんじゃないですか。湊くん以外には対応の良い先輩なんだったら、尚更。人間関係で辛く苦しい思いはしたくないでしょう?
(笑顔で真っ直ぐに見つめられると、少したじろいでしまう。なぜ彼は、こんなにも屈託のない笑顔と真っ直ぐな瞳を向けることができるのか。心が和らぐも、少しだけ危機感を覚える。この真面目で純朴な青年が、人間関係で傷付く様を想像すると胸が痛む。何にも傷付かない、誰も傷付けない、そんな人生は欺瞞だ。しかしつまらない出来事で彼が傷付くのならば、なるべくリスクとなるようなものは避けて欲しい。縁もゆかりも無い赤の他人になぜここまで肩入れするのか、自分でも分からなかった。だが不思議と彼は放っておけない、彼のことをもっと知りたい──そんな想いが胸の中を渦巻いている。こんな感覚は生まれてこの方初めてだった。その感覚に戸惑いつつも、口はしっかりと彼に無理に立ち向かわなくていいと告げる。だが告げた後、我に返ったようにハッとし、彼から目線を逸らす。人間関係で辛く苦しい思いをしたくないのは自分だ。彼がどう思っているかなど彼にしか分からない。自分が勝手に思っていることを、彼に肯定させようとしてしまった。"○○でしょう?"と聞かれて、面と向かって否定できる人間は少ない。ましてや相手が年上ならば、尚更だ。少し一個人の領域に踏み入り過ぎたかもしれない。反省と後悔の念に胸の中が荒れる。そして気まずさを払拭しようと、再び口を開く)
まぁ……ここまで話しておいてなんですが、酔っ払いの戯言だと思って聞き流してください。
63:
宮村 湊 [×]
2025-09-25 22:59:29
(不意に、相手の言葉に芯のような強さが宿ったのを感じた。ほんの一瞬だけ、彼の中の何かがこちらを守ろうとする方向に働いたのが分かる。自分はまだ彼にとって特別な存在ではないはずだ。それでも彼からは、余計なトラブルに巻き込まれそうな自分を止めようとする、その意志が言葉の端々から確かに伝わってきた。けれど、それはほんの一瞬のこと。合わせていた視線をすぐに逸らし、取り繕うような調子で自ら打ち消してしまう。その姿に、根本的に彼は善良な人間でありながらも、どこか不器用なのだと感じる。あるいは、彼の双肩にのしかかる余計な重圧が、そうさせているのかもしれない。彼の会社の業績や立場を思い返せば、若くして社長に就きながらも堅調な経営を維持している。だからこそ、ライバル企業は危機感を覚え、組織にハニートラップの依頼をしたのだろう。だが当の本人は、自分の優秀さに無自覚なままだ。その事実に気付いた瞬間、思わず胸の奥の緊張がふっと緩み、抑えていた笑いが零れてしまった)
……っふ、あはは!あ……ごめんなさい。こんな大事な話をしてくれてるのに、笑っちゃって……でも、なんかすごく嬉しくて。
(慌てて人差し指で目尻を拭う。こんなに素で笑ったのはいつぶりだろう。というか、こんな場面で笑ってしまっては、標的の機嫌を著しく損ねる恐れがあるのに。感情のコントロールを芯まで叩き込まれた自分らしからぬ振る舞いに、自分が一番異常を感じ取ってはいたが、その異常の原因が何であるかももう理解していた。笑顔のまま息をひとつ吐いて相手を見上げ)
ありがとうございます、悠さん。"心から"元気が出ました。酔っぱらいの戯言だなんてとんでもない。
64:
常葉 悠 [×]
2025-09-27 21:56:25
嬉しい……? ああ、そう捉えていただけたのなら良かった。ふふふ……心から、ですか。そんな風に感謝されたことはなかったので、尚のこと嬉しいですね。とにかく、元気が出たのなら良かった……。
(急に彼が笑い出すものだから、一瞬何が起きたのか分からず、目が点になってしまった。笑いには二通りある。相手の言ったことや自分の行動に面白さを見出し、笑うパターン。そして怒りを通り越して笑うパターン。父親が後者だったため、他人の笑いには敏感になっているきらいがある。だが暫く笑った後の彼の口調からして前者なのだろう。そして"嬉しい"という彼の言葉を聞くと、胸に安堵感が広がる。良かった。自分の言ったことが彼の地雷を踏むような結果にならなくて幸いだった。そして安堵するとこちらも自然と笑みが零れる。なんだか彼の"素"が垣間見えた気がした。別に今までの彼が自分を偽っていたと思っているわけではない。ただ人間、知り合って間もない他人と完全に打ち解けられるわけではない。相手の反応を見ながら徐々に自分を出していくものだ。今日はその彼の見えていなかった部分が見えた気がする)
君の力になれたのなら良かったです。そうですか、湊くんは、そういう顔で笑うんですね……ふふ、もっと君のことを知りたい。君さえ良ければ、今度食事でもいかがですか?
(予想もしていなかった彼の心からの笑顔を目にすると、心に張り詰めていた緊張の糸が切れたように感じる。そして思い切って正直な気持ちを伝えてみる。別に劣情を抱いて誘ったわけではない。単純に一人の人間として、彼と接してみたい。心からそう思った。普段ならばそんな誘いは自分からしないのだが、彼の笑顔が妙に印象に残り、拒否されるんじゃないかなんて余計な予想は、微塵も頭を過ぎらなかった。ただ感じたことをそのまま口に出した。こんな風に何の思惑もなく他人とコミュニケーションを取りたいと思ったのは、何年ぶりだろうか)
65:
宮村 湊 [×]
2025-09-27 22:40:05
食事ですか?喜んで!俺もちょうど誘おうと思ってたんです。
(まさか先に声をかけられるとは思わず、瞳が自然に見開かれた。驚きは一瞬、すぐに胸の奥でじわりと温かいものに変わっていく。任務のことが完全に消え去ったわけではない。背中の奥深くに重石のような影がまだ横たわっている。だが、その重さを抱えたままでも心はゆっくりと別の方向へ引かれていく。理由は分からない。ただ彼の前に立つと、鎧の隙間から空気が流れ込むように、自分の内側が自然と剥き出しになっていく。長年、獲物と自分を隔てる壁を築くことだけを教え込まれてきたというのに。標的に肩入れすることは、決して許されない。幼い頃から幾度となく、情を持つことは破滅だと教えられてきた。それなのに、いまここで胸に芽生えているものはなんだろう。まるで凍った水面にひびが入るように、冷たく均衡していたはずの心が音もなく揺らいでいく。ミイラ取りがミイラになる、そんな陳腐な比喩がふと頭をかすめる。それでもなお、この感情を手放せば大切な何かを失うのではないかという、かすかな危機感が心の底で芽吹いていた。危ういのは分かっている。理性は必死に危険信号を灯しているのに、心はどこか安らぎに似たぬくもりを求めて手を伸ばしてしまう。ふと、彼の顔に視線を向ける。光を受けた輪郭は穏やかで、けれどどこか孤独を孕んでいるようにも見える。その影の気配が、知らず胸の奥をかき乱す。もっと知りたい──この人の歩んできた時間を、背負ってきたものを。単なる情報としてではなく、人として触れたいという衝動がじわじわと膨らんでいく。任務と自分を繋いできた鎖が、音を立てずにほつれ始めるのがわかる。次に彼と食事へ行く時は、もうただの仕事の顔ではいられないだろう。任務の線を断ち切り、対等な一人の人間として語り合いたい。そんな危うい望みが、胸の奥で静かに芽吹いてしまっている。気づけば、目元がふっとゆるんでいた)
俺ももっと悠さんのこと、知りたいです。
66:
常葉 悠 [×]
2025-09-27 23:46:00
では、また都合のいい日、連絡しますから。……ああ、もういい時間ですね。今日はお開きにしましょうか。
(食事を快諾してくれたことに、喜びを隠しきれず喜色満面といった風な表情を無意識に浮かべる。年上らしく、努めて冷静に日程調整を連絡したいのだが、彼の言葉がずっと胸に広がっていた。"もっと悠さんのことを知りたい"。それは自分が喉から手が出るほどに欲しかった言葉の一つだった。今まで自分と関わりを持とうしてきた人間は、誰も彼もが自分を見ていなかった。自分の持つ財産やコネクションが目的だった。利害関係を否定するつもりはない。世の中は綺麗事だけでは動いていかない、利益があるところに人は集まる。それは分かっていた。だがたった一人でもいいから、純粋に交友関係を続けられる友人が欲しかった。趣味の話をしたり、くだらない話に花を咲かせたり、それだけで良かった。だから彼の言葉を聞いた時、本当に嬉しかった。長年待ち望んだ言葉を聞けたことが、隠しきれない喜びとなって表情に現れる)
ああそうだ。食事の場所ですが、どこかおすすめの場所はありますか? 湊くんの馴染みの店などがあったら、ぜひ行きたいですね。
(カバンを手に持ちながら彼に問い掛ける。どうせなら彼が落ち着いて話ができる店にしたい。それに彼がどのような店を選ぶのか、どのような店に行っているのか興味がある。思えば誰かと食事なんて久しぶりだった。他社の経営陣や各界の有名人たちと、会食でレストランに赴くことはあれど、あのような場で料理を楽しめたことは一度もない。料理を楽しめなければ食事とは言えない。今度は何も不安に思うことなく、楽しめそうだ。期待に胸を膨らませながら彼の返答を待つ)
67:
宮村 湊 [×]
2025-09-28 09:26:19
はい、待ってます!俺の方は合わせられると思うんで。
(即座に返しながらも、胸の奥がわずかに熱を帯びていくのを感じた。彼の顔にふいに浮かんだのはあまりにも無垢な笑顔で、作為も計算もなく、ただ心からの喜びが零れ落ちたような笑顔だった。思考の隙間をこじ開けるようにその光景が入り込み、胸の奥の静かな場所を乱暴に掻き混ぜる。これまで"宮村湊"という役を丁寧に設計し、相手が欲しがる言葉を選んできた。だが今の笑顔は、仮面越しの自分ではなく、自分の奥に眠っていたほんのひとしずくの本音に触れて生まれたものかもしれない──そう気付いた瞬間、喉の奥で音のない息が詰まり、慌てて笑顔を作り直す。震えかけた心を必死に整えるように、わざと大きく頷いてみせた)
俺の、おすすめですか?……ちょっとここから二駅くらい離れちゃうんですけど、すごく美味しい定食屋さんがあって。悠さんさえ良ければ、どうでしょう?
(おすすめの店を聞かれた瞬間、様々な考えが頭をよぎる。いつもの自分ならば、相手が安心して足を運べそうなお洒落なビストロか、若い社会人が選びそうなカジュアルイタリアンを選ぶはずだった。安全で、嘘をつくにも都合のいい場所。けれど、唇からこぼれたのはまるで違う答えだった。駅から少し外れた裏通りの小さな定食屋。古い木の引き戸と擦り切れた暖簾、店主である年配の女性が一人で作る家庭料理。味は素朴だが心をほどく温かさがある。何度か独りで足を運んで、忙しさの合間に小さな救いをもらった場所だ。自分の素の行動範囲を晒すことは、この仕事において致命的なリスクだ。標的に自分を結びつける手掛かりを渡すようなものだと知っているのに。それでも今、彼とその店に座り、同じ湯気を分かち合いながら笑う未来を想像してしまった。その想像が、任務で培った冷たさをほんの一瞬だけ裏切ったのを自覚する)
68:
常葉 悠 [×]
2025-09-28 22:05:04
定食屋ですか。いいですね、普段中々そういった所へ外食に行きませんので、新鮮で面白そうですね。それに湊くんのおすすめならば、とても楽しみです。
(定食屋と聞いて眉が微かに上下する。人生で数える程しか行ったことがなかったので、どういった場所かを思い出すのに若干の時間を要した。だが彼のおすすめとあれば期待できる。どういうところなのか想像するだけでも胸が踊るような気分だった。同時に意外にも思う。彼だったら、イタリアンのレストランなど洒落た店はいくらでも知ってそうなものなのに、敢えて定食屋を選んでくるとは。"まだ"親しい訳でもない年上の人間を連れて行くのだから、レストランが無難に思われる。だが敢えて定食屋。そういう所へ連れて行ってくれるということは、少なからず自分に心を開いてくれている証拠なのだろうか)
私は場所を知りませんので、当日はここの駅に集合しましょう。では追って連絡しますね。おやすみなさい、湊くん。
(そう言って彼に微笑みながら一礼すると、店員に声を掛け会計をする。この時、彼が飲んだ酒も一緒に会計しておく。稀に見るダーツの勝負で自分を楽しませてくれたことと、短期間で上達したことへの敬意を込めての行動だった。やや足早に店を出たのは、内ポケットのスマホが振動していたからだった。店を出て暫く歩いた後、スマホを取り出す。画面には秘書の名前が表示されていた。用件を尋ねると先程までの時間が夢に思えるくらい、現実的な業務連絡だった。いつも通り感情を殺した声で指示を出す。しかしその表情は彼と過ごした時間がまた暫く来ないことに寂しさを感じていた)
69:
宮村 湊 [×]
2025-09-28 23:20:15
わかりました、じゃあ連絡待ってますね。おやすみなさい、悠さん。
(少しだけ柔らかい声色を混ぜて言葉を返すと、軽く会釈してその背中を見送る。去っていく姿が店のドアの向こうに消えるまで、無意識のうちに視線を追っていた。他人に対して、ましてや標的に対して、必要以上に知りたいという感情をここまで強く感じたのは初めてだった。それがどれ程の禁忌であるか、当然理解していないわけではない。こんなことが組織に露見したら、忠告程度では済まないかもしれない。今ならまだこの気持ちに蓋をして、冷静に任務を進めていくことが出来るだろうとも思う。だが、この胸に残った、初めて感じた温かさを知ってしまったら、元の冷たいだけの世界に戻ることは酷く辛いことのように感じてしまった。誤魔化すように店員を呼び止めて会計を済ませようとしたとき、告げられたのは彼がすでに支払っていったという事実だった。その一言が、胸の奥を不意にかき乱す。嬉しいはずのささやかな優しさが、計算の上に立っていたはずの自分を不意打ちで揺らす。親しみを示す何気ない行動一つで、こんなにも心が乱されるとは。次に会う時は何か礼になるようなものを持参した方が良いだろう。それは相手に取り入りたいという打算ではなく、純粋に彼の好意に返したいと思う、ただそれだけの発想だった。程なくして帰宅した後、暗い部屋の灯りを点けると、スマートフォンを取り出して組織への定例の報告を始める)
もしもし、宮村です。──はい、作戦は順調です。食事の約束を取りつけることに成功しました。継続して信頼を得て、情報を引き出すフェーズへ随時移行します。
(淡々と、いつものように。本当は胸の奥で様々な感情が渦を巻いている。だが、感情を封じ込める訓練を受けてきた自分にとって、それを表に出さずに言葉を並べるのは容易い。いや、今ほどこの訓練をありがたいと思ったことはないかもしれない。電話を切ると、机の上にスマートフォンを置き、深く息を吐く。この仕事を何度も繰り返してきた。次は距離を詰め、信頼を餌に心を揺らし、恋情を匂わせながら相手を絡め取っていく、いつものパターン。だが、今回はその未来がどうしても想像できなかった。今回はその未来がどうしても想像できなかった。右手で前髪をかきあげ、天井を仰ぐ。たったひとつの笑顔に、計算を狂わされた自分がいる。再度小さく息を吐いた後再びスマートフォンを手に取ると、今日の礼と会計の礼を手早く彼に送信し、瞳を閉じた)
70:
常葉 悠 [×]
2025-09-30 21:39:41
(彼と食事の約束を取り付けた翌日から、心落ち着かない日々が始まった。毎日スケジュール帳に書かれたタスクをこなし、それが終われば次のタスクへ──そうやって仕事に終われる日々を過ごす。そしてようやく食事の時間を確保できる日程を見つけることができ、彼へ連絡を取る。前回の約束から時間が経ってからの日程調整だったが、彼は快諾をしてくれた。丁重にお礼のメールを送り、スケジュール帳に赤字で○をつけておく。それからは彼との食事の日を心待ちにし、その日を無事に迎えるために仕事をこなす。今まで無味乾燥としていたプライベートに、花が咲いたかのように鮮やかな色がついた。仕事から解放されると、毎日彼のことばかり考えて、次は何を話そうか、何を聞いてみようか──そんなことばかり考えている。だが何の因果かプライベートが充実してきたと思った矢先、仕事の方は徐々に暗雲が立ち込めていた)
……今日、楽しめるかな
(食事会当日。待ち合わせの時間より15分ほど早く到着し、彼が来るのを待つ。腕時計に目を下ろしながら、不安げに呟く。この日までに自分は仕事でのトラブルを多く抱えていた。一つは役員の一人が自分の解任動議を提出しようとしたということ。これは本人に人望がなかったがために、自滅という形に収まった。問題はもう一つの問題だった。秘書が辞職したのだ。ただの辞職ではなく逃亡同然の辞職。自分が社長になった当時から働いてくれていた秘書だったので、それなりに情もあった。だが秘書には自分の感情は伝わっていなかったようで、電話で辞職の意思を伝えた後、一切連絡が取れなくなった。今は他の課から緊急で人を回して貰っているが、いずれ近いうちに正式に秘書を再雇用しなければならない。彼との約束の前に、自分のせいで問題を起こしてしまったことに対する申し訳なさ、洞察力のある彼に見抜かれてしまわないかという不安が、胸中に広がる)
71:
宮村 湊 [×]
2025-09-30 22:15:33
あ、悠さん!こんばんは、お久しぶりです!お待たせしちゃいましたか?
(食事会当日。二人でダーツの対決をした日から食事の日程調整の連絡が来るまではかなり時間が空いていたが、相手の多忙な様子については調べがついていたため、あまり不安は無かった。直近の調査から窺うに、社内の彼を取り巻く環境はあまり芳しくないらしい。もしかしたら今日も直前に断られてしまうかもしれないと考えもしたが、そんな多忙な中でも時間を割いて来てくれるというのだから、少し浮ついてしまっても仕方ないだろうか。前回は自分より彼の方が早く着いていたので、今日こそはと意気込んで10分前に駅に到着したものの、既に彼の姿が待ち合わせ場所にあるのを見て、瞳を一度瞬かせてからすぐに人懐こい笑顔を浮かべて早歩きで彼の元へと歩み寄る。相変わらず───いや、ダーツバーの暗い照明の下で見た時よりほんの少し疲労が色濃く見えた。本当は彼の仕事のことについて探りを入れないといけないのだが、今日は出来るだけ仕事のことを思い出さずに楽しんで帰って欲しいという思いもあり、敢えてその点には触れずに謝罪をひとつ。右手に持った紙袋を後ろ手に持ち直しつつ、空いている左手で1番線のホームに続くエスカレーターを指さした)
1番線から出る電車で2駅です。今だったら……あ、3分後にはもう電車が来るみたいです。行きましょうか。
(スマートフォンで乗換案内アプリを起動して素早く電車の時刻を調べると相手の方へと視線を投げて先導するように歩き始める。こじんまりとした個人経営の定食屋なので、ちょうど夕食どきに差し掛かってはいるものの、満席で入れないということは無いだろう。どちらかと言えば、彼はあまり定食屋などに足を運んだことが無さそうだったので、驚いてしまわなければ良いが、と思いつつも、あの店主の作る優しい味は疲れている彼にこそ食べて欲しいという気持ちの方が強い。近くに少し広い公園もあるので、帰りにちょっとだけ歩いて帰るのも良いかもしれない。そんなことを考えながらホームの乗車列に並ぶと彼の方へ視線を送りほほ笑みを浮かべた)
…今日、すごく楽しみにしてました!今週一週間はほとんど悠さんとのご飯のために乗り切ったみたいなものですよ。
72:
常葉 悠 [×]
2025-09-30 23:30:34
湊くん、お久しぶりですね。私も今来たところです。待ってなんていませんよ。
(彼の姿を認めると、自然と口角が上がり笑顔で対応する。先程までの不安はどこへやら、彼と少し言葉を交わしただけで、胸の中に充足感が広がった気がした。ふと、視線を下にやると、彼の手に何かが握られている気がしたが、詮索するのも野暮だと思い、気のせいにしておく。電車の待ち時間を事前に調べたりはしなかったため、どれくらい待つのか、待っている間に何を話そうか考えていたが、待ち時間がわずか3分と知って拍子抜けする)
私もとても楽しみでした。一週間どころか、湊くんと約束した翌日から、ずうっと楽しみでしたよ。ふふ……君のおすすめですから、きっととても美味しいんでしょうね。
(少なからず同じ思いだということを再確認することができると、いつもよりも少しテンションの上がったような声色で返答する。自分だけが盛り上がっているのではないかと、心のどこかで不安に思ってもいたのだが、それは杞憂だったようだ。そしていまだ馴染みのない定食屋というものを想像してみる。彼がわざわざ指定した店なのだから、きっと自分が想像するよりも魅力的なところなのだろう。彼がおすすめしているという情報だけで、十分に信頼できそうに思う。本人に言ったらあまりハードルを上げないで欲しいと謙遜するかもしれないが、事実自分はそう思っている。時には正直な気持ちを伝えなければ、彼も秘書のように離れていって──そこまで考えて思考を強制的に止める。仕事のことは、今は忘れろ。自分に必死で言い聞かせ、電車の到着を待つ)
73:
宮村 湊 [×]
2025-10-01 00:17:39
あ、ずるい!俺もですよ!…俺の好きなお店なんです。今流行りの映えるような華やかさがあるわけじゃないんですけど……どこかほっとする味っていうか。だから、悠さんにも食べてみて欲しくて。
(声をかける直前まで相手の瞳はどこか鋭く、未だ職場という戦場に立つ者のそれだったが、こちらを向いた瞬間その双眸がふとやわらぐ。細く、やさしく笑うように細められた瞳が自分を捉えている、その事実だけで胸の奥がじんわりと満たされるのを感じた。口から零れたのは、もはや"宮村湊"という仮面のための台詞ではなかったのかもしれない。いつの間にか、演じているはずの無邪気さと本当の自分の境界があやふやになっているのを自覚する。仕事の一環として選んだ笑顔のはずが、今はただ心の底から湧いてしまう。彼といると、なぜかいつもそうだ。そんなことを考えながらふと視線をやると、彼の表情がほんの一瞬だけ翳る瞬間を捉えてしまった。きっとまた仕事のことが脳裏をかすめたのだろう。プライベートの時間にさえ入り込んでくる責任や重圧、孤独。芳しい状態とは言えないと分かっているからこそ、今日くらいはそれを追い出したいと思った。任務としても、そしてそれ以上に、個人的な願いとして。タイミングよく、ホームに滑り込んできた電車が夜気を揺らす。車両に乗り込み、反対側のドア付近で手すりを軽く握った。車窓の外で左から右へと流れていく街の灯りを眺めながら、視線をそっと彼の方へ戻す。仕事の重圧を少しでも遠ざけるために、ふと気になっていた問いを相手にぶつけてみる)
今日は俺が勝手に店選んじゃいましたけど……悠さんって、好きな食べ物、ありますか?
74:
常葉 悠 [×]
2025-10-01 12:16:40
……ほっとする味、ですか。なるほど、それはいよいよ楽しみですね。
(ずるいと抗議する彼に目を細めていると、聞き慣れない言葉に眉を僅かに上下させる。"ほっとする味"というのは、どういう味なのだろうか。ほっとするというのは、安心する様を言うが、食事においてそれはどういう状態なのだろうか。家庭的ということなのだろうか。しかし別に自分の家庭はトラブルを抱えていた訳でもない。父親は厳しい人間に違いなかったが、理不尽な人間ではなかった。母親も同様だった。だから家庭は安らぎの場であることに違いなかった。しかし自分には、ほっとする味が分からない。なぜ? どんどん広がっていく疑問を解消するためにも、彼の定食屋に行くのが俄然楽しみになってきた。気分は新しいゲーム機を買いに行く道中の小学生のようだった)
ううん……好き嫌いが全くないので、これといって好物もありませんね。何でも美味しく頂きますよ。……ただ私、甘いものに目がなくて。休日は……スイーツ巡りなどしたり、三食を疎かにしてケーキとか、そういうものばかり食べてます……ははは。三十過ぎて子供っぽいですよね。
(彼からの問いに少し悩む。好きな食べ物を意識したことは全くない。幼い頃から出されたものを何でも食べていたので、特定の好物がない。嫌いなものもなければアレルギーもないので、何でも食べることができる。元々食に興味が薄いのかもしれない。だがそんな自分でも病的なまでに好きなものがある。スイーツだった。なにかきっかけがあった訳ではないが、幼い頃から甘いものばかり欲しがっていた。自分で自由に金銭を使えるようになったら、多くはスイーツに費やした。だがそれをそのまま伝えるのは気恥しく、少し歯切れ悪く、照れながら彼に告げる。顔が熱くなるのが伝わる。恥ずかしさを紛らわせるように愛想笑いをしてみるが、顔の熱さは中々収まらなかった)
75:
宮村 湊 [×]
2025-10-01 18:25:21
甘いもの………………
(彼の好物についての情報は組織のデータベースにも載っていなかったので、単純に興味本位ではあったのだが、返ってきたのは予想だにしていなかった返答で思わず瞳を瞬かせる。だが本人はそれを気恥ずかしく思っているのか、見る見るうちに頬が赤く染まっていく。その様子があまりに無防備で、思わず「可愛い」と零しそうになった唇を、辛うじて噛んで堪える。年下の男にそんなことを言われたら、余計に羞恥心を感じてしまうのが分かっていたからだ。思わぬギャップに動揺を覚えつつも、直ぐにパッと表情を明るくして相手を見つめるとぶんぶんと音が出そうなほど大きく首を横に振ってみせた)
そんなことないですよ!俺もスイーツ好きです!甘い物食べてる時って幸せな気分になりますよね。それにしてもスイーツ巡りかぁ……悠さんがカフェでケーキを食べてるところ、見てみたいかも。
(実のところ、自分も嘘偽りなくスイーツは好きだ。ケーキのために3食を抜くという彼ほどでは無いが、たまの甘味というのはやけに美味しく感じる。そして、同時にふと一つの光景を思い浮かべてしまう。小さなカフェの窓際で、静かにケーキを選んでいる彼。ナイフを入れるときの慎重さや、口元にこぼれるかすかな笑み。そんな想像が胸の奥をやわらかく撫で、無意識に口端がほころんだ。もし美味しいカフェを見つけたら彼は一緒に来てくれるだろうか。そんな淡い期待を胸の片隅で転がしているうちに、車内アナウンスが流れた。やや小さめの駅は人も疎らで、すんなり改札から外へと出ると、夜風を含んだ静かな空気の中を二人並んで歩き出す。彼も少しは落ち着いただろうか、とちらりと覗き見るように視線を送った)
76:
常葉 悠 [×]
2025-10-01 21:15:56
はははは、三十路過ぎた男がケーキを食べているところを見たいなんて、存外湊くんも物好きですねぇ
(彼の反応が一拍遅れたので、もしや引かれたかとギョッとしたが、すぐにそれが面食らっていただけだと反応し、内心胸を撫で下ろす。そして彼の一言に思わず声を出して笑ってしまう。自分がケーキを食べているところが見たいなどと、どのような物好きなのだろうか。どんな意図があるのか聞いてみたくなる。彼は自分が思っている以上に変わった人間なのかもしれない。むしろ、自分は彼のような華のある若者がオシャレなカフェで優雅にケーキを頬張っているところを見てみたい。きっととても画になるだろう。それに「可愛い」とも思う。だが年上の男にそんなことを言われたら、きっと軽蔑の目で見るに違いないだろう。ここは胸の奥にしまっておく方が良い)
うん……ここら辺は静かで気持ちがいいですね。普段はずっと周りが煩いので、たまにこういう所へ来るとすごく落ち着けますね……。
(車内アナウンスが流れ、彼の後に続いて電車を降りる。どうやらあまり人が多くない駅のようで、疎らになった駅を進むと解放感が身体を包む。改札を抜け外へ出ると、今度は夜風が身体に触れてくる。丁度いい風と静かな空気。それらを身体で存分に感じ、深く深呼吸をする。そして彼からの視線を感じると、彼の目を見て微笑みながら言う。なんてことの無いただの道を二人で歩いているだけなのに、何故か心が癒されていく感覚がある。まるで温泉に入った時のように疲労が癒えていく感覚に似ていた。自分は彼と一緒にいることで安らぎを感じているのだろうか)
77:
宮村 湊 [×]
2025-10-01 22:25:27
この駅って各駅停車の電車しか止まりませんし、乗り換える路線とかもないので、利用者が少ないんですよ。都会の喧騒から少し離れると落ち着きますよね。
(視線に気づいたのか、こちらを見つめ返す表情は穏やかで、張り詰めたものが解ける瞬間の柔らかさがあり、胸の奥でそっと安堵した。周りを見渡しても、会社帰りのサラリーマンや学校帰りの男子高校生がちらほらと点在して歩いているくらいだ。日々仕事に追われている彼にとっては、この駅の空気感すらも心地よいものなのかもしれない。やはり、今日は都会のオシャレなレストランよりもこちらを選んで正解だったかもしれない、と思いつつ道なりに少し歩いていくと、その食堂はすぐに姿を現した。古い木造家屋の一階を店舗にした小さな定食屋で、年季の入った暖簾が風に揺れている。白熱灯のあたたかな明かりが格子窓から漏れ、外の暗がりにぽうっと浮かんでいた。引き戸をがらりと開けると、どこか懐かしい匂いが鼻先をかすめる。煮物と焼き魚、味噌汁の湯気が入り混じった匂いだ。店内にはスーツ姿の先客がひとりだけ。奥では腰の曲がった年配の女性が黙々と仕込みをしており、顔を上げると柔らかな笑顔でこちらを迎えてくれた。テーブル席へ通されると、肩からバッグを外して脇に置き、座席の古びたクッションに体を預けながら少し年季の入った手書きのメニューを手に取った。黒々とした墨字の書体にどこか人の温もりが宿っていて、それだけで心がほどけていくようだ。ふと厨房の方を見やると、腰が曲がった店主が水を汲もうとしているのが目に入り、すぐに立ち上がって声をかけた。手際よくグラスを受け取り、二人分の水を注いで戻る。)
どれも美味しいんですよ!俺もどれにしようか迷っちゃうなあ……
(テーブルにコップを一つずつ置きながら、自然に笑みがこぼれる。以前は脂ののった鮭の塩焼き定食に舌鼓を打った。ふっくらと焼き上がった身に箸を入れた瞬間、湯気の奥から香ばしさが立ちのぼったのを今も覚えている。その前は旬の野菜の煮物を選び、じんわりと染み込んだ出汁の味に舌鼓を打った。今日は野菜炒めを頼んでみようか。そんなことを思いながら、目の前の相手をそっと窺う)
悠さんはどれにします?
78:
常葉 悠 [×]
2025-10-02 21:13:16
(暫く歩いていると目的の店が見えてきたようで、ほんの僅かだけ彼の後ろに下がる。全く初めての店なので一抹の不安があった。だが店内に入ると、想像よりも穏やかな空気に驚く。店はもっと混雑していると思っていたが、彼と自分の他に客は一名だけのようだ。ずいぶんと風情のある店だった。目に映るもの全てが物珍しく、視線を忙しなく移動させる。定食屋とは、こんなにも落ち着けるところなのか。自分が知っている世界とは全く違う世界に、興味がどんどん湧いてくる。仕込みをしていた年配の女性の反応と彼の行動から察するに、ここは彼にとって馴染み深い店なのだろう。確かに彼のような純朴な青年にぴったりな店だ。彼の後に続き、カバンを脇に置いて彼の向かい側に着席する)
おお……定食屋とは存外メニューが多いのですね。ううん……色々あって迷ってしまいますね。
(元来優柔不断なところがあるので、予想よりも豊富な品数にたじろいでしまう。腕を組んで虚空を睨みながら、どれを食べるべきかと頭の中で何度も自問自答する。こんなことで思考を働かせるのはどうかとも思ったが、折角彼と来たのだからじっくり悩んで決めたい。料理は美味しいか否かで決めるものだ。だが彼がどれも美味しいと言うので、優柔不断が発症してしまった。そうして悩むこと数分。いい加減彼も痺れを切らしてくるだろうからと、そろそろ決めろと自分を叱る。そして一つのメニューが目に止まった。唐揚げ定食だった。最近は健康を気にして、脂っこいものは控えていたが、せっかくの機会だから、久しぶりに食べても大丈夫だろう)
じゃあ私は、唐揚げ定食をいただきましょうかね。
79:
宮村 湊 [×]
2025-10-02 22:20:33
(彼が思案に沈んでいる間、メニューの端を指先でそっと撫でながら、その様子を横目で盗み見る。普段は決断力のある大人という印象だったのに、こうして「何を食べるか」で真剣に悩んでいる姿がどこか愛おしく映る。仕事の世界では即断即決を求められる立場の人間が、たかが夕食のことで数分も逡巡している──その小さなギャップに心惹かれている自分がいることに気づき、僅かに瞳を細める。ずっと眺めていたい、と思った矢先に彼がようやく決断を下したのを察し、名残惜しさを押し隠すように微笑みを整えた)
唐揚げですか、良いですね!それ、俺も結構前に頼んだんですけど、すごく美味しかったです。ここの唐揚げは衣がカリッとしていて、中はびっくりするくらいジューシーなんですよ。初めて来るなら絶対に外さないと思います!
(声に自然な弾みを乗せながら告げる。自分が通う場所で、彼が初めての一皿を選んでくれたことが、なぜだか妙に嬉しかった。まるで自分の小さな世界に彼を招き入れたような感覚が胸の奥を温める。距離が、ほんの少しだけ近づいたような錯覚さえした。ちょうど手が空いた様子の店主に片手を軽く上げて合図を送り、唐揚げ定食と野菜炒め定食をひとつずつ頼む。厨房から聞こえてくる油のはぜる音やまな板の軽やかな音に耳を澄ませながら、使い込まれたお品書きを丁寧に端へ寄せた。自分の知っている温かい世界を、いま彼と少しだけ共有できている──そんな実感が、ひどく心地よかった)
悠さん、普段は定食屋さんとかはあまり行かないんですか?
80:
常葉 悠 [×]
2025-10-03 23:05:23
それはいい注文をしましたね。とても楽しみです
(声を弾ませて説明してくれる彼に自然と笑顔が浮かび上がる。同時に空腹も意識した。健康面を考えて肉類はあまり食べないようにしていたが、今日は朝からろくに食事を取っていないため、小さく腹が鳴った気がした。最近は一日一食で、しかもカップ麺を啜る生活が続いていた。何が健康面を考えてだ──なんて思われそうだが、仕事を終えて帰宅すると途端に身体が脱力し、カップ麺に熱湯を注ぐことすらも重労働のように感じてしまうのだ。それに元々小心者なので、仕事がある日はあまり食欲が湧かない。高級なマンションに住んでいても、どんなに良いブランドのオーダーメイドスーツを着ていても、自分の内面は所詮そんなものだ)
そうですね。外食に行くことはあっても、こういったお店にはほとんど行ったことがありません。それに食欲も忘れて仕事をしてしまいますから、あまり食事にもこだわることもないですね。
(厨房から聞こえてくる調理の音や、それに伴って漂ってくる香りに体をリラックスさせながら、彼の質問に答える。あくまでも仕事熱心で食事を疎かにしているので定食屋には行かないという設定で話す。彼には悪いが、自分がどういう立場の人間なのかは気付かれたくない。だが彼とは腹を割って話せる友人になりたい。この二つの願望を叶えるために、あえて嘘の理由を告げる。ポジティブな内容に変換したのは、後ろめたさを緩和するためだった)
81:
宮村 湊 [×]
2025-10-04 08:55:49
そう…でしたか。
(彼の食生活については報告書にも記載が無いため、その言葉を疑うことなく鵜呑みにして捉え、少し思案するように瞳を伏せる。確かに彼の多忙さならばそう言った生活になっていたとしてもおかしくないが、単純にしっかり食事を摂れているのだろうかと憂慮してしまう。拘りは無くともしっかり食事を摂れているのならば良いのかもしれないが、食欲を忘れるほど仕事にのめりこんでいるという言葉から察するに、食事をすっぽかしてしまうこともあるのでは無いだろうか。自分の食生活は棚上げにしてそんな心配が頭を過りつつも、しかしながら漸く仕事のことから解放され安らいでいる様子の彼に余計な負荷は掛けたくないと考え、すぐに人懐こい笑みを浮かべると一つ提案をする)
あ、じゃあ美味しいお店見つけたらシェアするんで、また一緒に行きましょう!俺、大学が地方で、就職の時にこっちに来たのであまり近くに友人がいなくて…。一人でご飯食べるの、寂しいなって思ってたんです。お忙しいと思うので、悠さんが一緒に食べたいな、と思ってくださった時にぜひ。一人で食べるより二人で食べた方が美味しいですから。
(半分嘘で半分本当だ。大学など出ていないし、地方から上京してきたわけでもない。だが、後半部分に関してはほぼ偽りのない本音だった。人と食卓を囲む温もりを知らずに生きてきたのは事実だ。任務を理由に人と関わったとしても、心を開いたことなど一度もない。だと言うのに、彼に素の顔を引き出されたあの日から、あまりに固く、重く閉ざされていた心の扉が軋む音を立てながら徐々に開き始めているのを確かに感じていた。危険な感情であることも、それが任務を成功から遠ざけることも、自分を破滅へ導く可能性があることも理解していてなお、止めることが出来ない衝動に近い。そうして出てきた言葉は、表向きにはこれまで通り、信頼をつなぎ、距離を縮めるための誘いに見えるのかもしれない。けれどその本質は、これまで自分が積み上げてきた冷徹な計算とはまるで別の場所から生まれていた。ちょうどその時、厨房の奥から店主が盆を抱えて姿を現した。ゆっくりと近づいてくる湯気の帯に自然と目が引き寄せられる。差し出された盆を丁寧に受け取り、礼を述べて卓上へとそっと置いた。並べられた二つの膳からは、揚げたての香りや温かな味噌の匂いがふわりと立ちのぼり、湯気が柔らかく宙を漂う。鼻先をくすぐるその匂いに、思わず口元がほどけるように緩んだ。)
さ、温かいうちに食べちゃいましょうか!
82:
常葉 悠 [×]
2025-10-04 22:47:39
ふふふ……ありがとうございます。確かに皆で食べた方が楽しいですしね。私で良ければいつでも行きますよ。それに君が選ぶお店にも興味があります。
(彼の話を聞いて意外に思った。最近の若者はタイムパフォーマンスを重視し、自分より年齢が上の人間とは積極的に関わりを持ちたがらない傾向にあると聞いていたからだ。だから彼が食事の誘いをしてくれた時、嬉しさが押し寄せた。学生時代は特に気付かなかったが、父親がこの世を去り、何となく母親とも連絡を取ることが少なくなった今では、やはり侘しさを感じている自分がいる。普段から良くない食生活を送っているので、たまには彼と食事をして気分転換するのもいいだろう。そう考えて、彼の誘いを快諾する)
そうですね。いただきます……。
(そんな話をしているうちに注文の品が来た。盆を受け取り、店主の目を見て一礼する。唐揚げの揚げたての香りが鼻腔をくすぐる。久々の湯気のある食事だった。そして久々に食事の挨拶を呟く。箸で唐揚げを持ってみると、ずしりと重たい感覚がした気がした。ここ半年唐揚げを食べてこなかったせいか、それともこの定食屋の唐揚げが特殊なのか判然としなかったが、期待と共に唐揚げを一口齧る。カリッと小気味よい音がしたかと思ったら、肉汁が口の中に溢れてきた。生姜とニンニクの効いたパンチのある味に全身が包み込まれるような感覚だった。事前に聞いていた彼のレビューを遥かに凌駕した味だった。あまりにも衝撃的な出会いに、暫時咀嚼以外に身体を動かすことができなくなってしまった。唐揚げを皿に置き、白米を頬張る。それを飲み込むと、今度は味噌汁を一口啜る。どれを取っても、自分が今まで食べたことがないくらいに美味だった。感嘆が大きな溜息となって出る。そして長く息を吐いたあと、彼を見つめて告げる)
この値段で、こんなにも美味しいものを食べられるとは……定食屋というのは恐ろしいところですね……!
83:
宮村 湊 [×]
2025-10-05 07:52:14
(提案を受け入れられたことに、思わず小さく安堵の息が零れる。ほんの数ヶ月前まで、任務として口にする誘い文句には感情など一切伴わなかったはずだ。次に相手がどう返すか、その返答によってこちらのカードをどう切り替えるか、それだけを冷静に考える作業だったのに。今は受け入れて貰えなかった場合を考えて、恐れで体が少しだけ強ばってしまう。今はもし断られたらと想像しただけで、体がわずかに強ばるようになっていた。安堵の余韻にひたる間もなく、視線は自然と向かいへ引き寄せられた。唐揚げを箸でそっと持ち上げ、ゆっくりと口へ運ぶ彼の仕草、そのひとつひとつを息を詰めて見つめてしまう。自分が料理したわけでもないのに、自分が勧めたものを食べている姿を見ると、審査されているような緊張感に襲われる。唐揚げをひと口噛んだ瞬間、彼の表情がふっと緩むのが見えた。驚きが混じったような、解けるような表情だった。何度か咀嚼を重ねながら夢中になって食べていくその姿は、どこか少年めいていて愛おしいほどだ。自分の世界の一片を受け入れてもらえることは、こんなにも心を温めるものなのか。その事実が、ゆっくりと胸の内を満たしていく。そしてふと、彼の視線と自分の視線が交わった。次の瞬間、投げかけられた素直な感嘆の言葉に、思わず堪えきれず笑みが弾ける)
あっ、はは!お口に合ったみたいで、良かったです。ここは格別ですよ。
(そう返す声には、仕事としての均衡も計算も混じっていなかった。ただ、胸の奥から温かなものがあふれて自然に笑みを形づくっていく。作業的に最適解を選んでいた時には味わうことの出来なかったような感情だ。リスクを承知でこの店を選んだことへのわずかな迷いが、今はすっかり霧散しているのを感じる。遅れて自らも箸を手に取って野菜炒めを口に運ぶ。シャキシャキとした野菜の食感が程よく残っていて、塩味も野菜本来の甘味を打ち消さない適度な加減。相変わらずの店主の料理の腕に感嘆しつつ、白米と一緒に掻き込む。いつも美味しいその料理が、更に美味しく感じるのも気の所為では無いのだろう。混じり気無く、至って純粋に頬が緩みきってしまっていることに気付かないまま相手に再び顔を向けて、ぽつりと一言零す)
悠さんと一緒に来れて、良かった。
84:
常葉 悠 [×]
2025-10-05 21:53:40
(年甲斐もなく料理に純粋に感動してしまった自分を見て、彼が吹き出すと羞恥と同時に充足感を感じた。彼と同じテーブルで恐ろしい程に美味な料理を突いている現実が、こんなにも幸福な気持ちをもたらしてくれるとは思わなかった。そしてようやく気付く。これが食卓なのかと。自分はこれまで食事を機械的に捉えていた。それは幼少期にこうした経験が少なかったからだろう。父親は激務で家にいなかったし、母親も社長秘書を務めていて父親と行動を共にしていた。家では家政婦の作った料理を食べ、時間が来たらベッドで就寝する日々だった。だから自分は食卓の温かさを知らなかったのだ。だが今は違う。彼が食事の温かさを教えてくれたのだ)
うん? ふふ……はははっ! そんな風に思ってくれているとは嬉しいですね。私も湊くんと来れて良かったですよ。君のおかげで食事を楽しいと思えましたから。
(一個、二個と唐揚げを頬張り、白米と共に咀嚼する。そうして料理を楽しんでいると、彼の呟きが耳に入る。顔を上げると、そこには頬が緩みきった顔があった。その瞬間"可愛い"と思ってしまった。自分より年下の若い男性にそのような感情を抱くのは、些かいけない気がしたが、まるで少年のようなあどけない顔に愛おしさを感じていた。そうか、彼はこんな顔をするのか。初めて会った時、彼を"魅力的"だと思った。だが今の雰囲気はまるで違った。こちらが彼の素の姿なのだろうか。あの時とはまた違う雰囲気に、彼の多面性を感じた。そして今度は自分が堪えきれず笑みを弾けさせてしまった。こちらからも混じり気のない本音を添えておく)
85:
宮村 湊 [×]
2025-10-06 09:54:03
(今まではただ効率よく、冷静に、与えられた指令を遂行するだけでよかった。感情を殺すことは生き延びるための術であり、何も感じないことこそが武器だった。けれど今は違う。向かい合う彼の笑顔を見ていると、どこかで固く凍りついていたものがじわりと溶け出していく。知ってしまった。知らなければ、きっと何も揺るがなかったのに。迂闊にも眼前の彼のこの笑顔を、共に居ることで楽しいと言われるこの幸福を守りたいと思ってしまったとしたら、どうしたら良いのだろう。どうしたら、任務とこの気持ちの両方を持ったまま進めるのだろう。そんな問いが、初めて胸をよぎった。)
……悠さん、俺………………
(もう、このまま晒け出してしまおうか。思わず口を開きかけて言葉を止める。喉の奥にまでせり上がった言葉が、熱を持ったまま凍りつく。胸の内で暴れるものは、これまでの人生で感じてきた恐怖や不安とはまるで質が違った。任務の失敗を恐れているのではない。ただ、目の前のこの人を失うことが怖かった。彼に拒絶された瞬間に、自分の中に築いた世界が一瞬で崩れ落ちてしまうのが、あまりにも鮮明に想像できてしまったからだ。静かに一度口を閉じると、いつもの人懐こい笑顔をゆっくりと被せ直す。醜い告白のかわりに、せめて素直な好意だけを差し出す。)
……悠さんと過ごす時間がすごく好きです。ダーツも、食事も。あなたとなら何をしてでも楽しいって思うのかも。
(普段から計算ずくで好意を伝えているためなのか、素直な好意を伝えることにもそこまで抵抗は無かった。ただ、ほんの少しだけ気恥しさが残り、それを誤魔化すように箸を手に取り直すと残りを口に運び、やがてすっかり空になった食器を前に両手を合わせてにっこりと微笑んだ)
ご馳走様でした!
86:
常葉 悠 [×]
2025-10-07 17:34:36
(味噌汁を啜りながら、彼への違和感を抱いた。口火を切ったきり、次ぐ言葉がないのだ。何でも明快に返事をする彼らしくない現象だった。言葉を選んでいるようには見えない。単に言葉を選んで喋ろうとしているのなら、そういった悩みの表情が出るはずだ。だが今の彼はもっと深刻なことを、大事なことを言おうか逡巡している。そういう表情に見えた。実際にはたった数秒の間のことなのだろうが、その時だけはとても長い時間のように感じられた。暫くしてようやく彼が言葉を続けた。きっとそれは本来彼が言いたかったことではなかったのだろうが、少なくとも嘘を言っているようには見えなかった)
ふふ……30年以上生きてきて、そんなこと言われたのは初めてです。
(彼の言葉に微笑みながら返す。彼が本当は何を言いたかったのかは詮索しないでおく。彼のことだから然るべき時が来たら改めて伝えるはずだ。だがそれよりも看過できなかったのは、彼の発言がこちらへの好意を感じさせるニュアンスを含んでいたことだった。社交辞令を言っているようには思えなかったので、本当にこちらに好意を抱いているのだろう。だが真正面から受け止める勇気はなかった。だから笑って誤魔化してしまった。他人から好意を向けられるのは嬉しいが、如何せん受け止め方を知らない。気まずさを誤魔化すために、残った唐揚げや白米を口に運び、黙々と食事をする。そして彼が食べ終わって暫くしてから、ようやく食べ終わる)
ご馳走様でした。いや……こんなに美味しい食事は久しぶりでした。
87:
宮村 湊 [×]
2025-10-07 19:08:33
(きっとこれは一種の職業病なのだろう。自分の言葉が本来告白しようとしたものではなかったと分かっていながら、彼がそれをあえて深く追及せず受け止めてくれたことも、こちらの差し出した好意を理解していながら誤魔化したことも、その一瞬の内に理解してしまった。だが、存外それを理解しても尚、自分の胸中は凪いだ海のように穏やかだった。いつもなら次の一手を探るために総動員される脳も、それ以上の手を探ろうとはしない。気まずそうに食事を続ける彼を前にそれ以上余計な言葉をかけることなく、ただ静かにその姿を眺める。それは諦めとも違っていて、むしろ、不思議な充足に近いものだった。自分の差し出した好意に対して戸惑いを見せるその姿すらも余計に愛しさを募らせる一因へと変化していく。程なくして食事を終えた相手に柔らかな笑みを向けひとつ頷くと、財布を取りだしながらふと考え込む。先日、ダーツ代を支払って貰っていたので、ここは自分が、と言おうとしたが、歳上の人間を前にそれを言うことで、かえって気を悪くさせてしまわないだろうか、と初めて小さな迷いが胸を掠めた。普段であれば、相手の出方を見て判断をしていたので、こんなことで悩むのは初めてだ。───でも、ここで何もせずに終わらせたくない。そんな衝動が胸の奥で静かに疼く。手にした財布をテーブルに置き直すと、ふっと笑ってから、できるだけ自然に口を開いた。)
俺の一番お気に入りのお店なので、悠さんにも気に入って貰えて良かったです!……あの、もし良ければ今日は俺に払わせてもらえませんか。今日、凄く幸せだったので。
(言いながら、自分でも驚くほど心が軽くなっていくのを感じた。打算や計算ではなく、ただ今日の幸福に何かひとつ返したい──そんな衝動が、自然に言葉へ変わっただけだった。相手が断れば素直に引くつもりだし、受け入れてくれるならそのまま感謝を込めて支払えばいい。そう思えること自体が、これまでの自分にとってはあり得ない変化だった。彼がどんな反応を見せるのか。困惑したように眉を下げるのか、それとも笑って受け止めてくれるのか。財布を握る指先に自然と力がこもる。相手がどんな表情を見せるのか、まだわからない。その一瞬を待つ時間が、計算で導いたどんな駆け引きよりもずっと胸を高鳴らせていた。)
88:
常葉 悠 [×]
2025-10-07 23:04:41
(彼が向けてきた好意をどうするべきか。頭の中はそれでいっぱいだった。嫌悪感がある訳では無い。彼が自分に対して直截に想いを告げてきたら、恐らくそれを受け入れるだろう。だが自分の過去の経験が後ろ髪を引く。そして"上手くいくわけが無い"と囁くのだ。彼が人によって態度を変えるような人間であると疑っているわけではない。しかし自分の立場が彼に嫌な想いをさせてしまうかもしれない。今までもそうだった。だからきっとこれからもそうに違いない)
……分かりました。ではここのお支払いは、湊くんにお願いしますね。
(彼の好意をどうすればいいのか──そんなことに思考を巡らせていると、彼が意外な提案をしてきた。元よりここの会計も自分が済ませようと考えており、それが既定路線だと思っていたので、戸惑いつつ彼の申し出を断ろうと口を開きかけた。しかし、よく考えてみれば自分は頼まれもしないのに支払いをした。それによって彼に一種の罪悪感が芽生えてしまってはいけない。それにわざわざ支払いを申し出ているのだから、あまり無下に断るのも彼の心を傷付けてしまうことになるのではないだろうか。考えすぎかもしれないが、人間の心は読むことができない。だからこそよく思いを馳せることが大事だ。特に彼には。言いかけた言葉を飲み込み、彼の申し出を受け入れる)
89:
宮村 湊 [×]
2025-10-08 08:11:46
(返ってきた答えに、胸の奥がふっと緩むのを感じた。口元に柔らかな弧を描き、ひとつ大きく頷くと財布を手に立ち上がり、店主へ視線を送りながらレジへと向かう。手早く支払いを済ませ、財布をポケットに戻して笑顔で「ご馳走さまでした」と告げたそのとき「まぁまぁ、お兄さん。今日はなんだか、いつもよりずっと楽しそうなお顔ねぇ」と年季の入った声色で、店主の女性がにこやかに笑いながらそう言った。柔らかく皺を刻んだ目元が、まるですべてを見透かしているかのように温かい。思いもよらぬ言葉に、短い沈黙が落ちる。頬の奥から熱がこみあげ、じわりと顔全体が赤く染まっていくのをはっきりと自覚した。普段は任務のために感情を制御することなど造作もないはずなのに、こうして無防備に微笑んでいた自分を指摘されると、まるで心の奥を覗かれたようでたまらなく気恥ずかしい)
……そ、……そうですかね。美味しくて、つい。
(努めて平静を装いながらも、声の端がわずかに震えた。照れ隠しに頭をかきながら会釈をして、そのまま席へ戻っていく。背中越しに、店主の穏やかな笑い声が追いかけてきた。彼に聞かれていないと良いが、と思うものの、この狭い静かな店内、聞かれていない方が無理があるだろう。頬を掻きつつ席に座り直すと、鞄と紙袋を手に取りながら相手に声を掛け)
あの、……この後、少し時間ありますか?近くに公園があるので、ちょっとだけ散歩して帰りませんか?
90:
常葉 悠 [×]
2025-10-09 20:00:12
……ふふっ。
(彼が戻ってくるのを待っている間、二人の会話が耳に入り、和やかな気持ちになると共に頬が緩んでしまう。まるで本当の祖母と孫のような会話だと思った。馴染みの店だけあって、親しげな会話に、ここはやはり彼が大事にしている店なのだろうと改めて思う。そういう場所に招待してくれたということは、やはり彼は自分に何かしらの思いがあるのだろうか。しかし、なぜ? たった二回ダーツをプレーしただけだというのに。そんなことを考えていると、こちらへ戻ってきた時の彼の照れ顔に、胸が高鳴ってしまう。こんな表情もするのか──今までとはまた違う彼の素の部分に、思わずドキッとしてしまった。もっと色々な表情を見たい、なんて一瞬だけ考えてしまうが、すぐに振り払う。彼相手にそんな気持ちを抱いてはいけない。そんな気がした)
それはいいですね。いや、歳をとると消化が遅くて、ゆったりとした時間が欲しくなりますから。
(散歩の提案をされると、すぐに快諾する。理由は我ながら情けないと思ったが、本当のことなので仕方がない。若い彼は大丈夫だろうが、自分としてはゆったりと過ごす時間が丁度欲しかったので、渡りに船の提案だった。欲を言えば普段から食後はそういう時間が欲しい。仕事中は特に。だが社長という立場ゆえのスケジュールがそれを許さない。普段得ることのできない時間を、ここで確保しておかなければ、そろそろストレスでどうかしてしまいそうだった。こういう所で、自分と彼は波長が合うのかもしれない。互いの欲しいものを補完し合えるのかもしれない、なんて大袈裟に考えすぎだろうか。彼の提案を快諾すると、ゆっくりと立ち上がり、店主に一礼する)
91:
宮村 湊 [×]
2025-10-09 23:19:40
良かった。ちょうど今の時期なら気候も良くて気持ちいいと思いますし!じゃあ、行きましょうか。
(漸く火照りが収まった顔を上げると、安堵したように微笑を浮かべて鞄の肩紐を整える。もう一度店主へ丁寧に礼を伝えてから、静かな夜の空気の中へと足を踏み出すと、昼の名残をまだほんの少しだけ残した柔らかな風を感じて心地良さそうに瞳を細めた。駅前から少し離れたこのあたりは、昼間でも人が少ないが、夜は尚のこと静まり返る。静寂の中、二人の足音が響く心地よい音に耳を傾けつつ、並んで歩く歩幅を意識しながら歩みを進めていくうちに、自然と視線が隣を歩く彼の横顔へと惹き付けられていく。街灯に照らされたその表情を眺めながら、ふと思い立ったように口を開いた。)
また近いうちに一緒にダーツもしたいですね。負けたのがちょっと悔しくってまた練習したんで、次こそ負けませんよ!
(実際、あの夜からというもの、何度か一人でダーツバーに足を運んでいた。何でもある程度そつなくこなせる自分が、何かに本気で打ち込むことなど滅多にない。それでも、真剣に戦った上で彼に完敗したあの瞬間だけはどうにも忘れられなかった。何度も練習を重ねたことで、前回よりは投げられるようになっているという自負もあり、朗らかな笑顔と共に挑戦的に口角を上げると宣戦布告をし)
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