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1対1のなりきりチャット
自分のトピックを作る
122:
常葉 悠 [×]
2025-11-05 02:05:48
そうですね。ありがとうございます。日程変更しなくて良いように、頑張りますね……!
(自分の答えを聞いた途端に、彼の表情から不安が消えたのを見て一安心する。今度から考え込む前に一言差し挟むことにしよう。三週間後の水曜日。この日を良い日として迎えられるように、明日からの仕事は今まで以上にハードなスケジュールで、しかも効率的に熟さなければならない。今以上に疲労も溜まるし、食事や家事も疎かになるだろう。だが、そんなものは彼と同じ時間を共有することの喜びの前では塵も同じだった。今までの仕事は何のやり甲斐も、感動もなく、ただ単に自分に与えられた職責を全うしていた無味乾燥なものだった。だが今は違う。彼と一緒の時間を過ごすために乗り越えるべき壁に変わったのだ。壁はどんなことをしてでも乗り越える必要がある。例え自分のライフワークバランスが崩壊しようとも、彼と一緒に居れればそれで良い。自分の仕事に色が付いたのだ。具体的な計画は恐らく彼がやってくれるだろうが、不安は一切ない。彼と一緒ならばどんな場所でも構わない。もはや、自分は彼がいなくては生きられなくなっているのかもしれない)
お粗末さまでした。ふふ……君の作ったクッキーも美味しかったですよ。ありがとうございました。さて、帰りはどうしますか。タクシー、呼びますか?
("ご馳走様"彼の言葉が耳に入ると、胸がきゅうとした。コーヒーを飲み終わったら、もうここに彼がいる理由は無い。彼にも仕事があるだろうし、ここら辺で帰してあげるのが良いだろう。胸の中に広がる寂しさを押し殺して、口角を上げて彼にクッキーのお礼を述べる。と、ここで気になったことがある。来る時は自分とタクシーに乗ってきたから良いが、帰りはどうするのか。生憎自分は車を持っていない。彼の住まいは分からないが、駅まで歩いたとしても15分程度は掛かる。帰りまで想定して招くべきだったと後悔しながら、タクシーを呼ぶことを提案してみる)
123:
宮村 湊 [×]
2025-11-05 08:19:19
お口に合って本当に良かったです。あ、気候も悪くないので散歩がてら歩いて帰りますよ。またここに来れるように、道も覚えておきたいですし。あ、洗い物は任せてください。それだけやって帰ります。
(帰りの手段について深く考えてはいなかったものの、タクシーに乗っていた分数から推測するに、駅まではそう遠く離れていないのだろう。また彼の家を訪れることを信じて疑っていない様子でそう付け加えて朗らかな笑みを向けると、軽く腕まくりをしてテーブルの上の空になった食器を全てキッチンへと運ぶ。シンクに置かれていたドリッパーと共に2人分の食器を丁寧に、しかしながら手馴れた様子で手際よく洗うと、水切りにそれを綺麗に並べて濡れた手をタオルで拭いた。そうしていよいよ帰宅の時間が近づくと、今まで一切感じたことの無い、後ろ髪を引かれるようなモヤモヤとした感情に襲われて、それが"寂しさ"だと気づくまでには少々時間を要した。とは言え、それを口にしてこれ以上彼を困らせるわけにはいかない。部屋の端に置いていたバッグを手に取って彼の方へと視線を遣ると、静かに唇を結び、軽くその端を上げて微笑みを形づくる)
それじゃあ、俺はこれで。今日はすごく楽しかったです。…3週間後にまた会えるのを楽しみにしていますね!
(ひらりと軽く右手を振り、瞳を細める。離れ難く思う寂しさを、次の約束がほんの少しだけ補ってくれるような気がして、最後にそう付け加えた)
124:
常葉 悠 [×]
2025-11-06 23:48:41
(折角提案したタクシーだったが、彼は徒歩で帰るという。洗い物をしてくれている彼を見ながらぼうっと考える。徒歩15分。今の自分にとっては翌日が怖くなる数字だ。これが若さか。たった10歳違うだけで、こうも意識が変わるものか。10年前はバイタリティに溢れ、全能感が全身を覆っていた。終電まで酒を飲んでも、8時には出社し、問題なく仕事を熟すことができていた。当時はこの若さが永続するものだとばかり思っていたが、10年経っただけで消えた感がある。そして不意に彼の若さを目の当たりにすると、一つ疑問が生じる。彼は自分に好意を抱いてくれていて、そして自分も彼のことを好いている。だが自分と彼は釣り合うのだろうか。10歳の差は、こと色恋においてはかなり大きい。自分が20歳だった時、彼は小学生だったことになる。あまりに大きな年齢差を、彼は気にしないのだろうか)
……ええ。3週間後にまた。私も楽しみにしています。また何かあったら連絡してください。じゃあおやすみなさい。
(やや慣れないが手を振り返しながら、玄関で彼を見送る。扉が閉まり、完全に一人になると深く息を吐く。初めて人を家にあげ、コーヒーを振舞った。しかも相手は心から一緒にいたいと思える人。緊張したが充実した時間だった。だが一度考えてしまった不安事は瞬く間に思考を支配する。自分と彼の年齢差に彼は何も思っていないのだろうか。そもそも彼は本当に自分が好きなのか。自分の思い込みではないのか。理由も不明だから、特に恐れを抱いてしまう。3週間後の外出の時に、それとなく詮索してみようか。そんなことを考えながら、明日から効率的なハードワークをするため、出社の準備をする)
125:
宮村 湊 [×]
2025-11-07 00:40:37
……はい、計画は順調です。かなり警戒心が強いタイプのようなので、未だ情報を得られる段階にはありませんが、今日は家に招かれたので徐々に打ち解けてはいます。怪しまれないよう、今回の標的に関してはゆっくりと時間をかけて距離を縮めるプランで進める方針です。……また連絡します。
(帰り道、静かな路地を歩きながら報告の連絡を入れる頃には、その表情は再び能面のような無機質さへと様変わりしていた。嘘の報告をする経験はほぼ無かったが、この組織で得た演技力は組織に対して牙を剥く時でさえも変わらず、定例の報告をする声色に感情のひとつ滲まないようにすることは容易なことだった。これで暫くは時間稼ぎができるだろう。通話ボタンを押して電話を切りスマートフォンをポケットへと戻すと、到着した自室の部屋の鍵を片手で開き中へと体を滑り込ませた。仕事の方は、自分が上手く組織を欺けば良い。暫くはゆっくり任務を進めているという体で押し切って、それすらも難しくなってきた場合は、彼や彼の会社にインパクトの少ない情報を横流しにすることで時間を稼ぐつもりだ。今の自分にとっての大事は3週間後の彼との約束、ただ1点だった。バッグを部屋の隅に置いてすぐにシャワーを浴びつつ、先程の幸福な時間を思い出すと、無機質な表情が徐々に緩み人間らしさを取り戻していくのを感じる。誰かとの勝負に夢中になったのも、共に食卓を囲んで笑いあったのも、自分の作ったものを受け入れてもらったのも、自分のためにとコーヒーを淹れてもらったのも、その一つ一つが全て初めてのことで、自分を真人間に戻してくれるような錯覚にすら襲われた。彼以外のことに対しては依然冷淡な自分はきっと真人間になどなれないのだろうが、彼と居る時だけはそれを忘れられる気がする。シャワーの湯の温度だけではなく心の奥底の方から湧き上がるような温かさに頬を弛めつつ、脱衣所に戻るとタオルで水気を拭き取って清潔なパジャマに着替え、礼の連絡を彼に送ってからその日はすぐに眠りに就いた。翌日からは、3週間後に向けて様々な準備を行うことになった。彼の好きだというスイーツの店の調査、あまり遠すぎず日帰りで行くことが出来るような癒しスポット。所謂デートプランと書かれたページを参考にしながら、その言葉にややむず痒さを覚える。同時進行で菓子作りの腕を上げることにも余念は無い。マカロンをリクエストされた日からマカロンの猛特訓を繰り返しているせいで、日々の食事がマカロンだらけになっていたものの、練習の甲斐もあってか最初のうちはひび割れが入ったり表面に気泡が入ってしまったりして見栄えが宜しくなかったものが、いつの間にか店頭に並べられると自負できるほどの完成度まで変化していた。そんな日々を重ねている内に気付けば予定の前日まで時は進んでおり、彼の仕事の忙しさに懸念を抱きつつ翌日の待ち合わせ場所について連絡を送ることにした)
お疲れ様です。明日ですが、電車で40分ほどの距離にある駅まで出かけようと思っています。集合はいつもの駅でも良いですか?ご都合は大丈夫だったでしょうか…?……と。
126:
常葉 悠 [×]
2025-11-08 20:51:54
(彼と外出の約束を取り付けた翌日から、会社も自分も変わった。非効率で非生産的な会議をやめさせ、会議は絶対的に必要事項のみを議論することにした。従来の会議には役員たちの結束を強めるための雑談の時間も設けていたが、それを廃止し、会議の時間も縮小させることにした。この時点で役員たちは露骨に不満そうな態度を見せていたが、最も反対されたのは自分の労働時間だった。朝の4時から出社し、スケジュールの確認や決裁を求められている案件資料の読み込み、工場の視察や外部イベントへの出席、会食を済ませ、また会社に戻ってきて書類の読み込みを行い、日付が変わってから帰宅する。時には会社に泊まり込むこともある。自分が動けば、当然秘書も行動を共にする訳で、秘書のライフワークバランスを考えていないスケジュールだと非難された。だがおかげで稟議の決裁は従来よりも早く進み、会社としては多くの物事が動き出すようになった。少ない睡眠時間と過剰な労働。それが寿命を縮めていることや、他社員にまで皺寄せがいっていることは重々承知だが、全ては彼と充実した時間を過ごすためだった。あの甘美な時間を過ごせるのであれば、自分の身体を酷使することなど屁でもない。そんな過労死ラインギリギリを飛行しているかのようなスケジュールを続け、気が付けば外出前日になっていた。決裁も会議も万事乗り越え、早めに帰宅してコーヒーを飲んでいると彼から連絡が来ていた。仕事に忙殺され、すっかり連絡を取るのを忘れていたことを申し訳なく思いつつも、すぐに返信する)
仕事の方は順調に進みましたので、明日は無事に行くことができます。集合もいつもの駅で大丈夫です。……もっと明るい文面の方がいいか……?
(文面の明暗について5分程悩んだが、結局上記の文章を送信する。その後は集合時間などの事項を共有して、明日の外出への連絡を終える。連絡を終えると、遠足前日の小学生のように胸を踊らせながら、食事や入浴を済ませていそいそとベッドに潜り込む。日頃の疲労からか目を閉じてすぐに意識が無くなった。そして外出当日、集合時間の3時間前に起床すると、これまたいそいそと私服を選び、朝食を取り、家を出る。あまり早く行って待っていても彼に気を遣わせてしまうだろうから、いつもよりゆっくりと駅まで歩く。完全な休日で彼と会うのは初めてのことだから些か緊張する。特に自分は私服がシンプルだから、ネクタイで個性を出せるスーツ姿と比べると、没個性に思われてしまうのではないだろうか。こんなことなら白いTシャツにデニムではなく、もっと流行りの服を新調するべきだっただろうか。そんなことを考えながら歩みを進め、待ち合わせの時間の5分前に駅に到着する)
127:
宮村 湊 [×]
2025-11-08 22:35:42
(約束の当日。普段はラフな格好を意図的に選択する自分だったが、今日ばかりは服装選びに随分と難儀した。いつもの服装だと、最初に彼に会った時のように学生に間違えられることも多かったが、今日は歳上の彼と並んで歩くことを考慮して、少し大人っぽい服装をチョイスする。深めのチャコールグレーの開襟シャツはリヨセル地で少し光沢がある。オフホワイトのスラックスに裾をタックインして、黒の細いベルトでウエストを軽く絞った。胸元には細いシルバーのチェーンネックレスを忍ばせて、いつもは抜け感を出すためにしっかりとしたセットはしない髪も、今日は少しだけワックスをつけてふんわりと遊ばせた。普段よりは少し気合の入ったファッションで、しかし余り気取っては居ない絶妙なラインを目指した───つもりだ。全身鏡の前で入念にチェックをすること15分。今日という今日こそは彼よりも先に集合場所で待機しようと考えて、20分前から待ち合わせ場所で待機していた。その間もどこか気持ちは落ち着かず、今日のために計画したプランを何度も何度も読み返していたため、時間はあっという間に過ぎていく。約束の時間の5分前になって現れた彼の姿を発見し、スマートフォンをポケットにしまうと、小走りで彼の傍まで駆け寄り、笑顔で声を掛けた)
悠さん、こんにちは。お忙しいのに、今日はありがとうございます。私服、ラフなんですね。いつもスーツ姿を見ていたのでちょっと新鮮です。今日はレアな悠さんですね。
(彼の私服は普段の彼の姿から想像がつかないラフなもので、その自然体な姿に思わず頬が緩むのを感じる。休日に彼を独占しているという事実も、少しずつ気を許して貰っている事実も、どちらも喜ばしいことだ。何なら寝ぐせもそのままに会いに来てくれるくらい気を許して貰えたら良いのに、等と内心考えながら瞳を細めると、ゆっくりと駅構内から改札、そしてホームへと歩みを進め始めた)
少し遠出になってしまってすみません。折角なら静かでゆっくり出来る場所が良いかな、と思って。都心からちょっとだけ外れたところに水族館があって、抜群の癒しスポットって話題なんですよ。今日はそこに行こうと思っています。
128:
常葉 悠 [×]
2025-11-09 13:33:37
こんにちは。ふふ……新鮮でレアなのはお互い様ですよ。君のそういうファッション、初めて見ました。なんだか、綺麗ですね。
(彼と会話をしていると自然と口角が上がる。事前に思っていた不安も、彼の"新鮮"という一言と彼の私服に目を奪われたことで、すっかり消えてしまった。頭から足に至るまで、全てが洒落ていてフィクションの世界の住人かと錯覚してしまう。自分は一言で"綺麗"と形容したが、本当はそんな言葉では言い表せない程、エモーショナルな感情を彼のファッションに抱いていた)
水族館、ですか。いいですね……そういう所へ行くのは10年ぶりくらいですから楽しみです……!
(ホームに向かいながら彼の話を聞く。そして久しぶりに水族館なんて単語を聞くと、年甲斐もなくテンションが上がってきた。学生時代にほんの一瞬だけ付き合っていた恋人と行った唯一のデートスポットが水族館だった。彼が連れて行ってくれる所とは別の場所だろうが、学生時代の苦い記憶が一瞬、脳を過ぎる。今となっては取るに足らない思い出だが、当時はとても苦労したことを覚えている。そんな記憶がありながらテンションが上がったのは、偏に彼と一緒だからという理由があるからだろう。件の水族館は癒しスポットになっているとのことだが、彼と一緒ならばどんな場所も、自分にとっては癒しになるに違いない。ホームで暫く待っていると電車が滑り込んで来たので、他の乗客に続いて乗車する。電車が動き出すとゆるゆると首を動かして、隣の彼に話し掛ける)
色々計画してもらってありがとうございました。いやぁ……楽しみですね。今日行く水族館は行ったことあるんですか?
129:
宮村 湊 [×]
2025-11-09 16:56:23
……ありがとう、ございます。そんな風に言って貰えたら、一生懸命選んだ甲斐があったかも。
(昔から容姿を褒められることは多い方だった上に、今、彼は服装を褒めてくれたのだと頭では理解していたものの、何故だかそれが無性に嬉しく、そして同時にむず痒くてはにかんだような笑顔を浮かべて冗談交じりに言葉を返す。褒め言葉は珍しくもなかったのに、こんな気持ちになるのは初めてだ。思わず頬がゆるゆるになってしまいそうになるのを堪えつつホームへと上がると彼に続き電車へと乗り込んで、横並びに連続して空いている2つの席を見つけ、そこに腰掛けた)
いえ、俺の方から誘ったので当然ですよ。俺はこの水族館は初めてで……あ、でもしっかり調べてきました!
(顔にかかって視界を妨げる横毛を鬱陶しく感じて耳に掛けると、緩く首を横に振りつつ、相手の顔をちらっと窺い見る。無理やり誘ってしまっただろうかという不安が一瞬で吹き飛ぶほど、彼の表情は今まで見たどの時よりも明るく見えて、安堵したように小さく息を吐く。思い返せば、彼の家に上がった日から今日に至るまで、いついかなる時も彼のことが思考の中心にあった。同時進行で進めている他の案件の対象と出会っている時ですら考えているのは彼のことばかり。今まで生活の中心だった任務のことすら気付けば自分の中では隅の方へと追いやられていた。最早、彼の居ない生活は考えられない。そんなことを考えながら彼の横顔を見詰めて瞳を細める。漸く出逢えた、素の自分をさらけ出せる貴重な人。きっと後にも先にも彼が唯一だ。そんな重い感情を隠すように穏やかな微笑みへと表情を変化させ会話をつづけていれば、40分という移動時間すらあっという間に過ぎ去っていた)
あ、もう次の駅ですね。悠さんと居ると時間があっという間に過ぎますね…少し勿体ないくらい。駅からは歩いてすぐみたいですよ。
130:
常葉 悠 [×]
2025-11-09 22:42:29
(横毛が視界を妨げ邪魔なのか、それを振り払おうとする仕草すら愛おしく思う。その仕草を見て微笑みながら、彼の話に耳を傾ける。彼の一挙手一投足が自分の心を掻き乱す。かつて自分が、これ程までに他人に心を乱されたことはなかった。今までは自分に好意を持っているとして近付いてくる人間たちは、全員敵で警戒するべき相手という認識だった。自分と繋がることで何かしらの利益を得ようとする敵。そういう人間たちが見ているのは自分がもたらす利益で、自分という個人ではない。そういう人間の卑しさにうんざりしていた。だから色恋の気配を感じると、すぐに上辺だけの対応をしてきた。仮面を被って相手の好意をやり過ごしてきた。だが彼と出会ってからは違う。彼は純粋に自分のことを好いてくれているのだ。そこに何の打算も計算もない。自分から利益を引き出そうとして近付いてきているのではない。ようやく出会えた、素の自分をさらけ出せる貴重な子。きっと後にも先にも彼が唯一だろう)
そう言ってくれると嬉しいですが、ふふ、でも自分より10も離れている男と話すのは、苦労しません?
(彼と話しをしていると、既に次の駅で到着というところまで来ていたことに気付く。彼の言う通り、勿体ないくらいに早く過ぎてしまう。次の駅のアナウンスを聞きながら、ふと思っていたことを聞いてみる。本当はもっと佳境になってから聞くべきなのかもしれないが、我慢できずに聞いてしまった。別に彼の好意を疑っている訳ではない。だが10歳も年上の自分としては、年下の彼にどう思われているかが不安なのだ。彼のことだから正直なところを聞かせてくれるだろう。返事を待ちながら、電車が目的の駅に着いたため、席を立つ)
131:
宮村 湊 [×]
2025-11-10 12:39:06
え?ああ…いえ、話しづらいと思ったことは全く無くって。歳下の俺が言うのは烏滸がましいのかもしれないんですけど、良い意味で歳の差を感じないと言うか。今、言われて10歳差があったことを思い出したくらいですよ。
(駅を降りてからの水族館への道順を頭の中で描いていると、投げ掛けられた不意の問いかけに思わず目を丸くして相手を見詰めてしまう。釣られるように立ち上がり電車からホームへと降り立ち改札へと向かう道すがら、自分の考えを纏めて口にした。言葉に嘘偽りなく、自分の方は彼との歳の差を気にしたことがなかったが、彼は自分との歳の差を気にしているのだろうか。仕事の時はどれだけ年齢差があろうと相手を落とすことが任務であったし、どんな年齢の相手だとしても上手く取り入って距離を詰める能力には長けている自負があったので全く気にしたことが無かったが、世間一般的に見れば10歳差というのは大きいのかもしれない。それだけで彼の恋愛対象から外れてしまう、ということもあるのだろうか。途端に今まで感じたことの無いような不安と焦燥を感じ始め、改札を抜けると彼の隣を付かず離れずの距離で歩きながらちらりとその表情を窺うように見詰めた)
悠さんは…俺と、話しづらかったりします?10歳歳下の男って…………
132:
常葉 悠 [×]
2025-11-10 23:14:28
歳の差を感じない……なるほど。それは安心しました。はは、そうですか。歳の差を感じませんか。
(彼の言葉を一言一言噛み締めるように頷きながら繰り返す。一瞬彼が目を丸くしたことからも、この発言は偽らざる本音だということは明白だった。心から安心した。返事を聞くまで緊張で固まっていた足取りが、この上なく軽く感じられる。このままなら水族館まで、まるで鳥のように飛んでいけるような軽さだった。これから観に行くのは飛ぶ鳥とは真逆の、泳いでいる魚なのだが。と、軽やかな足取りで彼の歩調に合わせて歩いていたが、ふと彼から此方を窺うような視線が伸びているのを察知した。何か言いたいことがあるのかと彼の方を見ると、目が合った。そして不安げな声色での質問を受けて、しまったと思った。自分は無邪気に質問をしたが、それは彼にとっては余計な不安を抱かせる愚問だったことに漸く気付く。自分の発言で彼がどう思うのかについて、もっと考えを巡らせるべきだった。普段から他人に余計な詮索をされない為に、表情と発言には最大限気を付けており、プライベートでも気を付けていると思い込んでいた。だが彼の前ではそんな事をしなくても良いという甘えが、彼に無用な不安を抱かせることになってしまった。彼の疑問に対して、首を横に振りながら、慌てて言葉を告げる)
話し辛いと思ったことなんて、全くありませんよ! 10歳歳下の子とプライベートで話す機会なんて滅多にないので良い刺激にもなりますし。それに君となら、どんな話も楽しくできると思っています。
133:
宮村 湊 [×]
2025-11-11 08:31:17
…!…良かった。
(すぐに返された力強い言葉には嘘も偽りも無く、少なくとも年齢での足切りは無いようで、安堵したように柔らかな笑みを浮かべると短く息を落とした。そして、同時に彼の質問の意図に思い至る。自らの返答に対して酷く安堵したような様子を見せていた彼の姿が今の自分に重なり、彼もまた自分と同様の心配をしていた可能性が導出された。あまりに己に都合の良い解釈だろうか。それでも、その根拠も無い可能性に対してそうであれば良いと願ってしまわずには居られないほど、今の自分は彼に対して純粋に想いを寄せていた。駅から歩いてすぐというホームページの表示には嘘偽りは無く、程なくして水族館に行き着くと、平日ということもあってかごった返してはおらず、親子連れをメインに若いカップルや老夫婦の姿もちらほら見える程度だった。この分であれば中も混雑しているということはなく、比較的落ち着いてゆったり見て回れるだろう。予めホームページを読み込んで中の展示物についてしっかり押さえていたものの、念の為手近にあったパンフレットを手に取りぱらぱらと捲りながら内容に目を通す。後ろ表紙に記載されているイルカショーのタイムテーブルを見付けると、そっと隣の彼に距離を寄せて指で指し示して見せた)
イルカのショーがこの水族館の目玉みたいで……後で一緒に見に行きましょうね!
134:
常葉 悠 [×]
2025-11-12 22:27:15
イルカショーですか。楽しそうですね。絶対行きましょう!
(無用な心配を抱かせてしまうアクシデントはあったが、彼は自分の言葉で安心してくれたようだった。その様子を見て自分も安堵する。言葉は時として強力な武器になる。一つの失言で関係が壊れることはよくあることだ。折角築いた彼との関係は壊したくない。今後は発言にも気を付けなければと、身を引き締める。水族館は自分が思っていたよりも人が少なく、ゆったりとした時間を過ごせそうだった。彼の持っているパンフレットを隣から覗きながら、イルカショーの案内をまじまじと見つめる。普段からこういう場所に縁がなく、またイルカショー自体初めてなので、一体何をするのか想像できない。が、きっと面白いものが観られるのだろうと期待に胸を膨らませる。タイムテーブルを見ると、開催まで時間があるようだ。中の展示を見ながら時間を潰すことになるだろう。受付で料金を支払い、中へと足を踏み入れる。中は仄暗く、海の中を思わせる色をしていた。だが何より目を引いたのは大きな水槽だった。水槽の中には様々な魚が遊泳しており、本当に海の中にいるような感覚に陥りそうなくらい臨場感があった。自分の記憶の中の水族館とは大分異なるので、少々戸惑いを覚える。自分の記憶が曖昧なのか、この水族館が特異なのか。いずれにしても、10年振りに入場した水族館に、目を奪われてしまった)
湊くん……! ここはすごい場所ですね! 見たこともない魚がいっぱい泳いでいますよ!
135:
宮村 湊 [×]
2025-11-13 08:19:19
……ふ、あはは!ですね、ここの水槽は国内最大級だって書いてありました。迫力ありますよね~。
(相手に続き水族館の中へと足を踏み入れると、一際目を引くのが継ぎ目のない巨大なアクリルガラスを用いた大きな水槽、なるほどこれは人類の叡智の結晶だな、と感嘆しながらそれを眺めていると、隣から上がった無邪気な声に思わず瞳を丸めてそちらへ視線を滑らせるように移動させる。瞳を輝かせ純粋に水槽に目を奪われているその横顔があまりにも綺麗で、一瞬言葉を失った。すぐに込み上げてくる笑いをそのまま隠すことなく零すと、同意するように言葉を返しながら柔らかく目尻を下げる。彼と出会った日からいつもこうだ。彼の感情表現があまりにも真っ直ぐなので、気付けばつい自分もそれに引っ張られている。彼もまた、仕事から離れ肩の力が抜けている様子で、無理に時間を取って貰った自覚がある身としてはその様子に深い安堵を覚えた。漸く笑いが収まり小さく息を吐くと、巨大水槽の前まで歩みを進めて、自分の背丈の数倍ほどあるそれを見上げた。中には大小様々な魚が自由にゆったりと泳いでおり、その様子はただ眺めているだけで人間に癒しを齎す。他の誰かと水族館に来る時はほぼタスクとしてこなしている節があったので、まじまじと中を眺めるのは初めてで、中でも一際目を引く大きなジンベエザメを指さして、つい子供のようにはしゃいだ声を上げた)
見て、悠さん、あのサメすっごく大きい!あんなに大きくて強そうなのに周りの小魚を食べたりはしないんですね。凄いなあ……。
136:
常葉 悠 [×]
2025-11-13 23:04:22
(国内最大級という彼の言葉に得心がいく。やはりここは自分が想像するよりも、遥かに凄い水族館だったのだ。水槽の中を優雅に泳ぐ魚たちは、まるで各々の存在を見て見ぬふりをしているかのように他の魚に干渉せず、群れで泳いでいる。その中でいくつか単独で泳いでいる魚もいる。今までであれば、その単独で泳いでいる魚を、自分と重ねていたことだろう。だが今は、二匹で並んでゆっくりと泳いでいる魚に自分を重ねていた。忙しなく群れで泳いでいる魚達の傍を、二匹の魚は我関せずといった様子で遊泳している。周囲を気にすることなく、相手と時間を共有している。まさに今の自分と彼を象徴する光景だろう)
おお、ジンベエザメですね!実物は初めて見ましたが、大きいですね……!何かの本で読みましたが、ジンベエザメはプランクトンが主食のようですね。海水ごとプランクトンを飲み込み、海水だけをエラから排出して口の中に残ったプランクトンを食べているそうですよ。
(他の魚に目を奪われていたので、彼のはしゃぎ声で初めてジンベエザメの存在に気が付く。本や動画でしか見たことがなかったが、間近で実物を見ると、その巨体に目を見開く。咄嗟に本で読んだ雑学を披露してみたが、すぐに後悔する。こういった所で自分の知識をアピールしてしまうのは、営業の癖が抜けていない証拠だった。すぐに反省して、黙ってジンベエザメを眺める。きっと閉館までこの水槽の前にいても飽きないが、折角来たのだから、彼ともっと色々見て回らなければ損だろう。キョロキョロを辺りを見回すと、深海魚コーナーの案内看板を発見し、隣の彼に声を掛ける)
湊くん、あっちで深海魚の展示をしているみたいですよ。行ってみませんか?
137:
宮村 湊 [×]
2025-11-14 19:52:50
器用…………。
(声を上げてから自分があまりに子供地味た言葉を紡いでいたことに気づき羞恥心を感じていたものの、彼の説明を聞いている内に羞恥心は薄れ、純粋に感心したようにポツリと声を漏らす。しかし、途中まで少年のように瞳を輝かせて嬉々として説明をしていた彼の言葉が突然止まってしまったことに気づき不思議そうに視線をそちらへと移すと、その表情がやや曇っていることに気づいた。それを見て柔らかく瞳を細めると微笑みを浮かべながら唇を開く)
博識なんですね、悠さん。
(自分の前ではもっと彼らしいありのままの姿でいて欲しいと願ってしまうのは、やや出過ぎた願いだろうか。彼が見せるふとした時の力が抜けた笑顔が、はしゃぐ声が、その全てが自分は好きなのだから。口をついて出てしまいそうになるのを堪え、相手に促されるまま次のコーナーへと口の代わりに足を動かしていく)
良いですね、深海魚。俺、結構好きなんですよ。冷たくて暗い海の底でも生きてる魚が居るんだなって。すごい生命力ですよね。
(どんな環境に身を置いてもそこに適応して生き延びていく。光も差さない海の底で生きる深海魚を見ていると、親近感を感じるのか心が安らぐのを感じる。訪れた深海魚のコーナーの隅の方でじっと止まって動かない深海魚をぼんやりと眺めながら口元をゆるめた。忙しなく動く他の魚とは違い、深海魚の動きはゆっくりなので、釣られるように歩みもやや遅くなる。人も疎らなため、一つ一つの水槽をじっくりと観察しつつ、ふとひとつの小さな水槽の前で歩みを止めた)
あ、クリオネ。…へえ、こんなに小さくて可愛いのに水深600mのところで暮らしている子もいるんだ。なんだか、ちょっと意外ですね。
138:
常葉 悠 [×]
2025-11-16 00:48:50
("博識なんですね"なんて褒められると、照れから首を無言で横に振ったが悪い気はしなかった。自分としてはまずいと思っていたが、彼の表情や声の調子からして、それ程気にしている風ではないことが分かると安堵する。そしてふと気付く。自分は彼の前だと何かと不安になり過ぎている。自分の言動の一つ一つが彼を不快にさせないかと思い過ぎている。実際のところはきっと彼は寛大なはずなのに。あまりに度が過ぎた用心は自分も他人も傷付ける。そろそろ勇気を出す時かもしれない。そんなことを思いながら深海魚のコーナーへ足を進める)
不思議な生き物ですよねぇ……暗い世界で生きるというのはどういう気分なんでしょうね。
(彼の言葉に返事をしながら、まじまじと奇抜な見た目の深海魚達を見つめる。彼がこんなにも珍妙で奇怪な生態や姿をしている魚が好きだというのは些か意外に思ったが、ぼうっと見ていると分かる気がする。暫く深海魚コーナーを楽しんでいたが、ふと彼が何かに惹かれるように歩みを止めたので、視線を向ける。視線の先にはクリオネがいた。天使ともいわれる深海魚。実際泳いでいる姿は実に可愛らしい。クリオネに関してもいくつか聞きかじりの知識を持っていたので、試しに披露してみようか)
可愛いですねぇ。クリオネは流氷の天使と呼ばれているみたいですが、食事をする時は頭が割れて触手が出てくるので、その姿は"悪魔"と呼ばれていますね。ふふ……可愛いところは君に似ているなんて思いましたが、君は"悪魔"とは程遠い善人ですからね、クリオネと一緒にするのは失礼ですね。
139:
宮村 湊 [×]
2025-11-16 11:45:51
……あははっ、天使だなんて、買い被りすぎですよ。でも、ありがとうございます。
(先程のフォローは少しでも彼の肩の力を抜くことに成功したのか、再び知識を披露してくれるその様子を眺めて嬉しそうに瞳を細めて耳を傾けていたものの、自分の本質を突くようなクリオネの説明に、一瞬固まってしまった。"天使の皮を被った悪魔"。自分の所業が露見した相手に、かつてそう罵られたことがある。そもそも騙される方が悪いと思っていたのでその時は何も思わなかったが───もし、彼にそう罵られたら?考えるだけでズキン、と胸が痛む。自分を善人だと信じて疑わない様子の彼を見ていると、騙してはいない筈なのに騙してしまっているような心持ちになった。それでも純粋に褒めようとしてくれている彼まで不安な気持ちにはさせたくなくて、はにかんだような笑顔を浮べて人さし指で軽く頬を掻いてみせる。自分の本質は善人とは程遠い薄汚れた悪魔のようなものだとしても、少なくとも彼の前でだけは善人でありたい。彼の傷付く顔だけはどうしても見たくなかった。再びクリオネへと視線を移すと、相変わらず愛らしい容姿をしてふわふわと海中を漂っている。そっと視線を逸らすと、気持ちを切り替えるように歩き出し、道中様々な展示を眺めながら、気づいたら一度屋外のエリアへと出ていた)
悠さん、ちょうどいい時間なのでお昼にしますか?ご飯食べてからイルカショーに行ったら時間的にもちょうど良さそうですよ。
140:
常葉 悠 [×]
2025-11-16 23:18:42
(買い被りだなんて謙遜をする直前、彼の表情が凝固したのが目に入った。いきなり自分が披露した雑学の内容が気になったのか、それとも何か別の理由があったのか──詮索したい気持ちが頭を擡げてきたが、すぐにそれを振り払う。その部分は触れてはいけない気がした。理由を知れば意外と大したことの無いものかもしれない。だが彼が固まった理由を知っていけない。そこに踏み込むと良くないことが起きる。人生の経験値というよりかは、社会性を持つ人間としての本能がそう警告している気がした。だから彼の言葉に笑みを返して、思考に蓋をした)
ああ、もうお昼ですね。良い時間ですし、食事にしましょうか。
(彼からの食事の提案を受けて、身に付けていた腕時計に視線を落とす。時刻はランチに丁度良い時間を指していた。先程まではまだ10:00程度だったはずだが、時間の流れがかつてないほど早く感じられる。普段の激務よりも余程時間が短く感じられるというのは、一体どんな意地悪なのだろうか。彼の提案を諾うと、少し先のレストランに向かう。水族館本館の人混みを考えると、レストランの方も混雑しているとは考えづらい。そう見当を付けて向かったレストランは、予想通りの混み具合だった。それなりに客はいるが、平日のランチタイムにしては少ないといえる。入店すると難なくテーブル席に案内され、メニュー表に視線を遣るが、自分は優柔不断だ。先に彼にメニューを決めて貰った方がいいだろうと、メニュー表を彼の前に置いて告げる)
私は優柔不断ですから、湊くん先にどうぞ。
141:
宮村 湊 [×]
2025-11-17 18:50:14
わあ……結構種類があるんですね。子供向けから大人向けまで幅広く揃えられてますね。俺は……オムライスのドリンクセットにします。
(待ち時間も無く程よく空いているレストランに入り案内された席へと腰をかけると差し出されたメニューを手に取りパラパラとページを捲りながら一度中身を確認する。親子連れが多いからなのか、そのバリエーションはかなり多岐にわたっており、思わず休日の混雑時のキッチンの心配をしてしまう。そう時間を要することなく自分の分のメニューを決定するとぱたりと表紙を閉じて再び机の上へと置いて相手の前へと差し出した。ふと、息をつく間が出来て、思わず先程のやり取りのことが頭を過ぎる。咄嗟のことで最初の反応は素が出てしまったが、彼に見られては居なかっただろうか。深く追求されなかったということは、あの一瞬の表情に彼は気づかなったのか。薄暗い場所であったし、十分その可能性はある。そうだと信じたい。どの道確かめるすべもないのだ。モヤモヤとした感情を誤魔化すように笑みを浮かべると、眼前の相手へと再び視線を移し僅かに首を左へと傾げる)
優柔不断、なんですね。これだけあると迷っちゃいますよね。……あ、そうだ。じゃあ俺が決めましょうか。悠さんの食べたいもの当てゲーム。
(思い返すと確かに彼の家を訪れた日もコーヒー豆を選ぶ際に呼ばれたものだったか。あれも優柔不断ゆえなのだろうかと思うとどこか愛しく感じて思わず目許が緩む。じっくりと悩んでいる彼を眺めているのもそれはそれで楽しかったが、ふと思い至ったように提案をひとつ。恐らく早く選ばねばと焦ってしまうであろう彼への配慮だったのも確かだが、純粋に彼の好きそうなものを当てるのは面白そうだという気持ちも強く、反対側からメニューを眺めながら口元に弧を描いた)
まずは嫌いなものを選ばないようにしないと。悠さんが食べられないものはなんですか?どんな食べものが好みですか?
142:
常葉 悠 [×]
2025-11-17 22:43:40
食べられないものですか……。そうですね、この中だと……エビのサラダとかカニクリームコロッケとかがダメですかね。私、甲殻類アレルギーなんですよ。加工してあってもエキスが入っているとダメなんです。
(唐突にゲームなどと言うので、言われている意味を推し量るように目を瞬く。何をするのかと思ったが、どうやら一緒に料理を決めてくれるらしい。彼はとっくに決めているというのに、自分の優柔不断さのせいで時間を取らせて、申し訳ないと些か思ったが、彼と一緒に"ゲーム"ができるのが嬉しさを感じた。ページを繰り、メニュー表を眺めながら食べられないものを探す。そしてふと自分が甲殻類アレルギーであることを思い出す。しかも割と重度のアレルギーだ。なぜこんなに大事なことを今まで忘れていたのか。自分でも不思議だったが、考えてみれば、これまで他人と食事をする機会がなかったからに違いない。自分一人で食事を済ませることが殆どだったので、無意識のうちに甲殻類を使用していない料理を選んでいたのだろう。仕事柄会食は多いが、先方が気を利かせて甲殻類を全く使用しない店を選んだり、甲殻類を使わないコース料理を注文しておいてくれたりしているので、自分でアレルギーを自覚する瞬間はないに等しかった。思い出せて良かったと胸を撫で下ろす。彼との外出のおかげで思い出せた。仕事一筋の機械的な生活に、人間味が加わったようだった。誰も信じられず、交友を断ち切ったはずの自分が他者と交流し、社交的な営みをしている。彼のおかげで些かでも自分は変わることができた。その事実に胸が高揚する。食べられないものを申告した次は、好きな食べ物を考え始め、暫く悩んだ後に口を開く)
好きなものは……私は和食が好きですねぇ。洋食とかよりは和食の方を好んで食べるような気がしますね。
143:
宮村 湊 [×]
2025-11-17 23:25:05
アレルギーは気をつけないとですね…。アレルギー情報があるタイプのメニューで良かったです。
(苦手な食材を聞くつもりではあったものの、返って来たのはより重い内容で、左手を口元へと添えて真剣な表情でアレルギー情報へと視線を落とす。自らにはアレルギーは無いものの、食物アレルギーは命に関わる場合もあるため、用心しなければならないという知識はある。明らかに入っているものならば分かりやすいものの、練り込まれていたり、彼の言うとおりエキスが入っていたりするものはぱっと見では分かりづらいため、より神経を配る必要がある。好き嫌いよりも重要なその情報を知ることが出来て良かったと感じつつ、和食を好むという情報を思考に加えつつメニューをじっくりと眺め)
和食、美味しいですよね。作るのは手間がかかりますけど…その分ほっこりします。…ふふ、悠さんのこと、またひとつ知れました。
(甘いものが好きで、コーヒーが好きで和食が好き。甲殻類はダメ。徐々に彼に関する情報が自分の中でアップデートされて行く。良いように彼に取り入るためではない。純粋に彼に喜んでもらうために、彼を幸せにするために必要な情報だ。返ったらメモしておこうと考えながらメニューを眺めていると、ふとひとつのメニューが目に留まりページを捲る手が止まった。アレルギー情報をしっかりと確認するが、甲殻類の表記は無い。これならば、と提案するこちら側にも若干の緊張が走る。彼が気に入るものを選べているだろうか。自分が提案したゲームなのにこんなにも緊張するとは。少し思案したあと、決心したようにメニューを指さして)
これ、どうですか?マグロのちらし寿司セット。見た目も凄く華やかですし、小さいひじきの煮物の小鉢も付いてますよ!
144:
常葉 悠 [×]
2025-11-19 20:35:55
(どうして彼はこんなにも人懐こく笑うのだろう。自分のことを知れたと喜ぶ彼の表情を見て、そう思った。発言も表情も、全てが魅力的に思える。同時に自分も彼のことをもっと知りたいとも思った。これまであまり自分から彼のことを詮索しようとしなかったが、今度からはこちらから色々と質問をしたりしてみようか。この昼食をその機会にしてみよう。メニュー表のページを繰る彼をじっくり見つめながら、そう思い立つ)
これはいいですね! 湊くんのチョイスですから、きっと美味しいと思いますし。これにします。選んでくれてありがとう。
(彼が提案したメニューをじっくりと見つめる。確かに見た目も華やかで、美味しそうだ。何よりひじきの小鉢が嬉しい。ここ最近は肉を食べる機会が多かったので、久しぶりの海鮮に胃袋をくすぐられた。だがそれより何より彼が薦めてくれたものだからというのが最大のポイントだった。迷うことなく快諾すると、呼び出しボタンを押して店員を呼ぶ。オーダーに来た店員に彼の注文──セットのドリンクは彼に任せたが──を言い、自分の注文を言い渡す。店員が去り、料理の到着を待つだけの時間になると、メニュー表を片付けながら彼に問掛ける)
湊くんは、どういう料理が好きですか? オムライス頼んでましたが、好きなんですか?
145:
宮村 湊 [×]
2025-11-20 17:26:15
あはは、気に入って貰えて良かったです。……俺の好きな料理ですか?そうですね……
(自分の決めたメニューに対する相手の反応が肯定的だったことに安堵して気が抜けたように笑っていると、不意に自らへと返された質問に咄嗟に解答が出て来ず、考えるように軽く首を傾ける。今までもこの類の質問をされたことがなかった訳では無いが、返す答えは全て任務を円滑に行うようにするためのものだった。それは相手によるものの、相手の好きな物に寄せたり、あるいは意外性を持たせたり。自分の本当の好きな物ではなく、都合が良い物を答えていたので、本当の意味で自分が好きなものについては、実際のところそこまで深く考えたことがなかったことに気づく。"宮村湊"では無く、"自分"は何が好きなのか。よく考えると、彼の言う通り、無意識のうちにオムライスは注文することが多かった、かもしれない。オムライスという料理は、それぞれの店の個性が出る。卵ひとつとっても固めな店、ふわふわな店、半熟の店とあり、かけてあるソースもデミグラスの場合もあればシンプルにケチャップのパターンもある。家で料理をする時も、割と簡単に作れることもあってか、他のメニューに比して作る回数が多かった。そこまで考えてから、小さく、あ、と声を零す。他の料理に対してここまで色々と考えたことは無い。そうか、これが"好き"ということなのかもしれない。)
…好きです、オムライス。店によって色んなバリエーションがあって飽きなくて。卵でクルッと巻かれてるタイプの、ケチャップが掛かってる、割とスタンダードなやつとか特に好きで。
(自分の内面を晒しているような感覚が未だ慣れなくて、少しこそばゆさを感じたものの、話し始めると存外にすんなりと言葉が出てきた。素の自分を出さないことを徹底していた自分にとっては全てが新鮮だ。しかし、決して悪い気分ではなく寧ろ───彼に本当の自分を少しずつ知っていって欲しいと思わずには居られなかった。作り物の自分ではなく、本当の自分のまま対峙したい唯一の人。それこそが彼なのだから。そこまで言い終えた時、ウエイターが料理を運んできたため、一度そちらへと意識が逸れる。自らの前に置かれたオムライスからは美味しそうな香りと共に湯気が立っていて、食欲をそそるには十分だった)
そうそう、ちょうどここのオムライスが正に王道って感じで………やっぱりすっごく美味しそうです!
146:
常葉 悠 [×]
2025-11-21 20:19:41
確かにオムライスには、色々な形がありますね。色々食べても、やはり最後にはスタンダードが一番になるんでしょうね。
(少しの空白の後、オムライスが好きと彼は言った。しかも形まで教えてくれた。きっとこれまで様々な種類のオムライスを食べてきたのだろう。王道はやはり王道。シンプルなものほど、他を寄せ付けない魅力を持っている。自分にもいくつか覚えがある。どんなに良い物を食べても、結局はシンプルな料理に惹かれるのだ。そこでふと思った。彼は普段どのような物を食べているのだろう。ベンチャー企業のエンジニアというのはどのくらいの収入で、彼の生活レベルはどのくらいなのだろうか。次々と知りたいことが湧き出てくるが、詮索する前にウェイターの方が早かった)
ふふ……湊くんはシンプルなオムライスが好きなんですね。覚えておきます。
(目の前に料理が運ばれてくると、手を付ける前に彼に一言告げる。"覚えておく"と意思表示したのは、君に興味があるということをアピールするためだった。高校時代に友人に言われたことがある。他人に興味が無さそうに見える、と。その時は何とも思わなかったが、彼にそういう風に思われたくない。予防線を貼った後に、彼がおすすめしてくれたマグロのちらし寿司に箸をつける。一口、口に運ぶとマグロや酢飯の旨味が溢れてきた。特にマグロは新鮮そのもので、水族館のメニューだけある)
湊くんおすすめのちらし寿司、とっても美味しいですよ!
147:
宮村 湊 [×]
2025-11-22 20:01:14
(覚えておくという彼の言葉に、オムライスへ落としていた視線を思わず上げて眼前の彼を見つめた。興味の無い人間の好きなものなど覚えても仕方が無い。彼がわざわざ"覚えておく"と伝えてくれたのは、期待してもいいのだろうか。心臓が高鳴るのを感じつつそのまま彼を見詰めていると、自らが指定したちらし寿司を頬張り無邪気な笑みを零す相手の姿が視界に入った。自分の選択はどうやら誤りでは無かったらしい。思わずほっと安堵の息を零しつつ、美味しいと伝えてくるその様子に愛しさが溢れ静かに瞳を細めた)
…良かった。悠さんのお口に合ったみたいで。俺も、いただきます。
(軽く手を合わせてからスプーンを握ると、自らも目の前のオムライスを1口ほどすくって口へと運んだ。卵にはしっかりと火が通っていて、中のトマトライス部分は甘みと酸味が絶妙にマッチしている。どちらかと言うと子供向け寄りのメニューかもしれないが、やはりシンプルでとても美味しい。中にゴロゴロと混ざっている鶏肉も柔らかく、噛み締めるように咀嚼すると幸せそうに一度小さく息を吐いた)
ん…こっちも凄く美味しいです!水族館の中のレストランと言うと出来合いのようなイメージが強かったんですが、ちゃんとひとつひとつ丁寧に調理されてるんですね。…俺、悠さんとご飯を食べてると、普段より美味しく感じるんですよ。
(ぽろりと、本音が漏れる。少しずつ、少しずつ、彼への好意を感謝と共に伝えていきたい。二口目、三口目と口に運びながら相手の反応を窺うようにちら、と視線を軽く上げた)
148:
常葉 悠 [×]
2025-11-22 23:12:12
んぇ……? あ、ああ、そうですか。それは……嬉しいですね。
(彼の何気ない一言に思わず顔を上げて反応してしまった。しかも間の抜けた声と共に。一瞬、おわれた意味が理解できなかったが、"そういうこと"だと理解すると、間の抜けた声で応答してしまった羞恥心と、彼にそんな風に言ってもらえた嬉しさにより、アタフタとしながらも返事をする。10も歳上なのにスマートに返事の一つもできなかった自分を恨みながら、恥ずかしさを紛らわせるように小鉢からひじきを摘む。そこからはもう無言で、ただひたすらに箸を動かすことしかできなかった。まるで授業中の失敗を気にして周りと目を合わせないようにしている中学生かのように、彼の方を向くこともできずにちらし寿司を口に運ぶ。相変わらずちらし寿司は美味い。だが敏感に味を感じ取れるほど、今の自分には余裕がなかった。30過ぎてこんな稚拙な対応しかできない自分が情けなくて仕方ない。普段ならばもっと円滑に解決できるはずだが、彼絡みのこととなると途端にどうしたらいいか分からなくなってしまう。自分の頭はポンコツになってしまうようだ。そうして黙々とちらし寿司とひじきを平らげてしまうと、お冷を一瞬で飲み干し、コップを机に置いて呟く)
……美味しかったですね。その……私も同じように思っていましたよ。君と食べると、美味しく感じると。
149:
宮村 湊 [×]
2025-11-23 09:19:32
(焦りと誤魔化しの混在した反応を見せる彼の様子を見て、自分の意図するところが伝わったのだと確信すると、口元に引かれた笑みをより深いものに変えて、黙々と食事を食べ進める彼を眺めつつ、それ以上言葉を掛けることは無くオムライスを口へと運んでいく。どこか初心にも見えるその反応のいじらしさに愛でたくなる気持ちをぐっと堪え、その代わりに咀嚼を繰り返した。そうして食べ進めたオムライスの最後の一口へと運んだ正にその時、先に食べ終えた相手から告げられた言葉にその動きがぴたりと止まる。彼は確かに自分の言葉の意図するところを理解していたはずだ。その上でこの言葉を返していたということは、つまり。そこまで考えた瞬間、一気に顔に熱が集中するのを感じる。少しの間スプーンを片手に固まっていたものの、内から溢れるような幸福感に自然と瞳を細め笑顔を浮かべながらオムライスを噛み締めるように咀嚼してから一度大きく頷いた)
あはは、良かった。……そろそろちょうどイルカショーの時間みたいですし、行きましょうか。
(コップに残ったお冷を飲み干し、紙ナプキンで軽く口元を拭いてから再びパンフレットを取り出しイルカショーのタイムテーブルを眺めると、30分後から始まる回を発見した。ここから移動することも考えれば、タイミング的にはちょうど良いだろう。彼にも見えるようにパンフレットを指し示しながら徐に椅子から立ち上がった)
150:
常葉 悠 [×]
2025-11-23 18:33:57
ああ、もうそんな時間ですか。じゃあ行きましょう。
(言われて思い出した。この後イルカショーが控えているのだった。先程の失態による羞恥心のせいで、大事なイベントがすっかり頭から抜けてしまっていた。彼が見せてくれたパンフレットと時計を確認すると、確かにもうすぐ始まる。ゆっくりと席を立つと、手早く会計を済ませレストランを後にする。それなりに腹が満たされると、先程の失態を引きずるよりも彼と一緒にイルカショーを楽しんだ方がいい、と幾分かポジティブな思考ができるようになった。イルカショーが行われる会場へ向かう道すがら、隣を歩く彼へ話し掛ける)
イルカショーなんて初めて観ます。イルカは賢い哺乳類といいますが、どういうショーを見せてくれるんでしょうね。
(動物を使ったショーは、サーカスぐらいしか見た事がない。イルカは哺乳類とはいえ、海中に住む動物だ。そんな動物を使って一体どのような催しをするのか。初めての体験に胸を躍らせる。やがて歩いているとイルカショーを行う会場に着いた。会場は既に入場を許可しており、それなりに人が入っていくのが見えた。入口から中へ入ると、想像よりも会場が広く思わずキョロキョロと辺りを見回してしまう。そしてショーを行うであろう水槽と客席の距離が近いのが気になった。これでは水が掛かってしまうにではないだろうか。見たことがないから何とも言えないが、これが標準的な距離なのだろうか。とりあえず真ん中くらいがいいのかもしれないと思い、近過ぎず遠過ぎずの位置にある客席に腰掛ける)
151:
宮村 湊 [×]
2025-11-25 00:23:29
あれ、悠さん、イルカショー初めてなんですか?すごく利口ですよ、トレーナーさんの指示に従って芸を披露するんです。それにビックリするくらいかなり高く飛ぶので……でも、ここなら水飛沫の心配は無さそうですね。
(先を進む彼に続くような形で会場内へと入ると、さすがに人気の催しであるだけあって、親子連れを中心に会場内は多くの人で賑わっていた。水で濡れる可能性が高い席と濡れない席はベンチの色が分かれており、彼が選んだ席は水がかかる席の最後尾から三列ほど後ろの席だったので、余程上振れが無い限りはこちらまで水が飛んでくることは無いだろう。開演時間が近づくにつれて次第に席は満席になり、座りきれなかった人は最後方で立ち見をするほどの賑わいになっているようだった)
見てのお楽しみですね。あ、もう始まりますよ。
(会場内に警戒な音楽が流れ始め、トレーナーらしき女性が複数人ステージへと上がると、水中に合図を出す。瞬間、イルカがその合図に従って軽快に泳いでいくのが見えた。最初は簡単な技から、軽く飛んで頭上にぶら下げられたボールを軽く突いたり、タイミングを揃えて3匹のイルカが飛び跳ねたり。芸を成功させる度に褒美として餌を与えられているイルカを見て───よく飼い慣らされているな、と思った。与えられた指示に従い、報酬を得る。そうすることで自然の中での競争を経験することもなく餌を得られるのだから、当然と言えば当然かもしれない。しかし、イルカの姿はそれでもどこか楽しげに映った。狭い水槽の中で、人間の指示に従ってパフォーマンスをしているのに、その泳ぎはどこまでも自由で、くるりと回転しながら高くジャンプをするその姿が眩しく見える。無意識下で口元を軽く緩めながら、隣の彼は楽しめているだろうかとちらりと静かに視線を送った)
152:
常葉 悠 [×]
2025-11-27 15:03:30
(彼の説明を聞いて一応は納得したが、どうにも解せなかった。イルカにできるパフォーマンスといえば、精々飛び跳ねることぐらいしかないだろうと思っていたからだ。彼の言葉に頷くと、どうやらショーが始まったようで視線を前へ移す。係員の合図に従って3匹のイルカが軽快に泳ぎ、ボールを突いたりしている。思ったよりスムーズにショーが進み、関心が高まる。イルカ達はタイミングを揃えて同時にジャンプしたり、螺旋を描くように泳ぎ、また同時に飛び上がる。ご褒美に餌が貰えるからとはいえ、ここまで一糸乱れぬ動きが出来るものなのか。百聞は一見にしかずとはよく言ったもので、実際にショーを目の当たりにすると、目の前の光景に圧倒され、前のめりでイルカショーを見ている。途中で彼の視線を感じて、視線を彼へ戻す。そして彼へ今の興奮を伝えようと口を開く)
湊くん、湊くん! みんな乱れることなく動いていますね! あっ、ほら。またジャンプしましたよ! 凄いですね!
(普段ならばもっと語彙を余すことなく使い、この光景を形容しようとするだろう。だが今の自分はそんなことも忘れてしまうぐらいに、イルカショーに夢中だった。幼い頃から人並み以上の娯楽は与えてもらってきたが、そのどれも今となっては思い出として記憶にすら残っていない。今までは単に激務がそうさせたのだと思ったが、どうやら違うらしい。ずっと独りだったからだ。楽しい時間を共有できる存在がいなかったから。だが今は違う。彼という何者にも代え難い存在が傍にいてくれるのだ。そんな自分の喜びを代弁するかのように、イルカたちは楽しそうに水中を泳ぎ、飛び跳ねる。リングをくぐったり、係員を背に乗せたり──イルカたちの一挙手一投足に目を奪われ、こんなに楽しい時間がもっと長く続けばいいのにと心の中で思う)
153:
宮村 湊 [×]
2025-11-27 19:59:58
っ、……はは、あはは!そうですね。きっとたくさん訓練したんだろうなあ……
(盗み見たつもりだったのだが、こちらの視線を感じたのか彼と瞳が合いぱちりと一度瞬きをする。次の瞬間、興奮を隠さず目の前のイルカショーへの感動を伝える彼の姿に、思わず笑みがこぼれた。片手の甲を口元に添えながら笑い声を上げると、同意するようにこくりと一度頷いてみせてからぽつりと呟く。彼と共に見る景色はその全てが鮮やかで驚きに満ちている。資料の写真の中の社長としての顔でも、初めて会った時の他人行儀な大人びた雰囲気を纏った表情でもなく、ただ純粋に子供のように燥ぐその姿が嫌に幸福そうで眩しくて、どうしようもなく大切なもののように思えてひどく胸がかき乱された。ただひたすらに、この笑顔を守るためならば何だって出来るとすら思う。それ程までに幸せにしたいと思うような相手が自分のような人間に出来ることになるとはつい少し前まで可能性としてすら考えても居なかったが───彼と出会ってから、自分という存在が少しずつ、しかしながら着実に変化しているのを感じていた。情など不要だと教えられてきて、それを忠実に守ってきたが、今ならなぜそう教えられてきたか分かる。余りに幸せだからだ。その幸せを知ってしまえば、二度と手放せなくなる。組織のことすら裏切ってでも守りたいと考えるような危険思想の素になる───今の自分のように。再びショーへと視線を戻すと、1頭のイルカが最後の大技として、遥か上空にぶら下がるボールを突くという。いやいや、それはさすがに無理だろう…………と思いながらその様子を見守っていたものの、高く高く飛んだイルカがボールを揺らすその姿には心を動かされるものがあり、思わずバッと彼の方を向き、興奮そのままに気づけば彼の手を取っていた)
悠さん!すごい、あんな……あんな高いとこまで水中から飛び上がれるんですね!どうなってるんだろ、水の抵抗とかもあるだろうに……すごいなあ……!
154:
常葉 悠 [×]
2025-11-28 23:11:05
え、あ……そうですね、凄いですね……!賢い上に身体能力も優れているとは、想像以上に凄い動物ですね!
(最後の大技が決まると思わず"おお"と歓声を上げた。だが長く続けるはずの歓声は最後まで続かなかった。不意に柔らかい感触がし、チラと見てみると、彼が自分の手を取っているではないか。一瞬、声も動きも止まってしまい、彼に話しかけられてようやく我に返るも、その返答は間抜けにもしどろもどろになってしまった。彼の様子からして意図せずに手を取ったものだと思われた。さりげなく手を離すか、勇気をだして握り返してみるか。悩みまでもなかった。彼の手をゆっくりと握ると、興奮気味の彼に合わせるように、テンション高く返答する。このままずっと握っていたい。できれば離したくない──そう思ったが係員が終了を告げ、周囲の観客がぞろぞろと立ち上がり出口へと移動をし始めると、自然と手を離してしまった)
いや面白かったですね。こんなにはしゃいだのは本当に久しぶりですよ
(出口へと歩みを進めながら隣を歩く彼に話し掛けるが、頭の中では別のことを考えていた。彼の手を握った時、心の底から身体が温かくなった気がする。身も心も熱が入った感覚がした。そして充足感が全身を包んだ。もっと触れていたい。ずっと彼と一緒にいたい。そんな欲求が抑え難いほどに膨れ上がっていくのに、時間は掛からなさそうだった。だが今日、その欲求を叶えようとしてはいけない。そんな気がした。きちんと言葉に出来なさそうだったから。この身を落ち着けてゆっくりと考える必要がありそうだ。イルカショーの会場を出て、腕時計に目を落とすと時刻は夕刻に差し掛かるところだった。彼のことだから、水族館の後のプランも考えてくれているかもしれない。もっと一緒にいれるかもしれない。そんな期待を胸に、彼の方を向いて問い掛ける)
そろそろ夕方ですが、どうしますか。なにかプランがあれば、いつまでも、どこまででも、お付き合いしますよ。
155:
宮村 湊 [×]
2025-11-29 11:19:40
(握り返される手のひらの感触に、その瞬間になって漸く自分が彼の手を無意識で掴んでしまっていたことに気づき、思わず繋がれた手へと視線を落として瞳を見開く。無意識とはいえ何をしているのかと自分でも思うものの、握り返された手のひらの温度は温かく、離すことは到底出来なかった。このままずっと───そんな思いがふつふつと胸の内から湧き上がってくるのを感じるものの、観客たちが退場していくのを見て自分たちも続く形になり、その際に自然と離れてしまった。それでも未だ熱の余韻の残る手のひらに意識をどうしても奪われてしまい、彼から掛けられる言葉にも生返事になってしまう。もっとしっかり段階を踏むはずだったのに、こんなに自分が抑制出来ないのは初めてだ。こんなものでは到底満足できない、もっと触れたい。もっと触れて欲しい。もっと近くにいたい。もっと、もっと、もっと───。彼に触れた事で欲は収まるどころか増幅していくばかりで、どうしようもない。もっと理性的でありたいのに。そんなことを考えつつイルカショーの会場を出ると、隣の彼から掛けられた言葉に漸く意識を引き戻した。多忙な日々の隙間で時間を取ってくれていることは理解していたため、勿論一日のプランは考えていたものの夜前に解散した方が良いのだろうか、等と少々悶々としていた部分もあったため、その心配を払拭するような彼の言葉に自然と表情が綻び)
本当ですか?…実は考えてきてるんです。悠さんが疲れていたら申し訳ないかなと思ったんですけど……それならこれは俺の我儘です。もう少し付き合ってください。
(再びマップを取りだすと、進路をお土産ショップの方向へと向かう。夕方時と言うこともあり存外小さなショップの中は賑わっており、ゆっくりとショップの中を見て回りつつ、キーホルダーが並ぶ店の一角で足を止めた。数あるキーホルダーの中で、銀で象られたイルカのキーホルダーを2つ手に取ると、彼の方を振り返り少し考え込むように瞳を細める。お揃いで持って欲しい、…だなんて、もはや友人としての枠組みを超えてしまっているかもしれない。迷いはあったものの、それでも今日の思い出を忘れないように形にしたい、あわよくばそれが彼と同じものであれば彼と離れている時も彼を近く感じられるだろう───そんな思いが強く、ふたつのキーホルダーを掌に載せた状態で彼に見せるように示した)
悠さん。……あの、……これ、俺が買ってくるので、片方悠さんにプレゼントしてもいいですか?今日の思い出、みたいな…………
156:
常葉 悠 [×]
2025-12-02 00:44:13
(表情が綻んだ彼の表情に、またしても胸が鳴った。時折見せるそういう表情が、自分にはとても魅力的に映るのだ。マップを見ている彼の隣を歩きながら、頭の中ではどのようにして想いを告げるべきかを考える。このままずっと想いを隠すなんて器用なことは出来そうにない。とにかく彼に聞いて欲しい。自分という人間が、人並み以上の幸福を手に入れられたのは君のおかげだと知って欲しい。君は魅力的な人間だと自覚して欲しい。そして、それを告げるのはもっと気持ちの整理がついてから。次回会う時に伝えるのがいいだろう。今のうちから、言うべきことを考えておかなくてはならない。と、そこまで考えたところで、どうやら目的地に着いたようだった。そこはお土産などを売っているショップだった。小さなショップながらバリエーション豊富な店内を興味深く観察する。ぬいぐるみやお菓子、そしてキーホルダー。彼がキーホルダーのコーナーで足を止めると、自分もその隣に立つ)
……なるほど。お揃いですか。ふふ、良いですね。じゃあこういうのはどうですか。お互いがお互いにキーホルダーを買ってプレゼントするというのは。だから君が持つキーホルダーは、私が買います。思い出の共有ですよ。
(彼の言葉に目を細めながら、掌に乗せられたキーホルダーをまじまじと見つめる。そして片方のキーホルダーを掌から持ち上げると、彼の目の前に掲げる。些か重い提案だっただろうか。だが自然と提案をすることに緊張や不安はなかった。むしろ、当然だと言わんばかりにスマートに提案できたと思う。自分の提案に彼はどう返事をするのか。ゆっくりとゆらゆら揺れるキーホルダーは、まるで今の自分の気持ちを表しているようだった。ゆったりと彼の返事を待つ。"どうですか?"と言う代わりにぴくりと眉を上下させる)
157:
宮村 湊 [×]
2025-12-02 12:07:50
……共有……
(思いがけない提案に思わず瞳を瞬かせつつ口の中で復唱する。未だ関係性としてはただの友人のはずなのに、少し重かっただろうか、という内心での懸念を払拭するような彼のその提案に表情を緩め、直ぐに賛同するように大きく頷いてみせた)
良いですね。その方がずっとずっと大切な思い出になるでしょうし。じゃあ俺は悠さんが持つものを。これを買ったら夜ご飯にしましょうか。
(掌に一つだけ残されたストラップを優しく包み込むように握り締め、二人で会計の列へと並び、それぞれがそれぞれへのプレゼントとなるストラップを購入し終えたところで、お土産ショップから外へと出ると綺麗に袋に包まれたストラップを交換した。自宅に戻ったら直ぐにどこかに付けよう、なんてやや浮き足立つような気持ちで考えながら、すっかり暗くなった周囲を見渡しつつ閉館時間の迫った水族館を後にする。ちょうど時刻も夕食時、頃合かと水族館からさらにもう少し駅から離れた方面へと歩いていくと、隠れ家的なこじんまりとしたイタリアンレストランへと到着した。今日の計画を立てる際、その前に解散になる可能性はあるものの念の為にとディナーに良さそうな店まで調べておいたのが功を奏したようだ。訪れたことの無い店ではあったものの、ネットの評判と写真で見た雰囲気がよく目星を付けていた店で、中に入るとすぐに席まで案内された。席に着くとパラパラとメニューを捲りつつ、事前に仕入れておいた前情報から彼の興味を引きそうなものを取捨選択していく)
ここ、パスタもピザも凄く美味しいみたいなんですけど、デザートのイタリアンプリンがすごく絶品みたいで。悠さん甘いものお好きだって聞いてたのでちょうど良いかなと思って目を付けていたんです。
158:
常葉 悠 [×]
2025-12-04 22:27:28
(自分の提案が重いことを知ってか知らずか──彼のことだから自分の思っていることなど見透かしているだろうが──快く諾う彼にほっと胸を撫で下ろす。会計を済ませ、彼へ紙袋を渡し、引き換えに彼から同じ紙袋を受け取る。初めて友人とこんなことをした。何物にも代え難い思い出となるだろう。死ぬまで絶対に忘れないような──そんな思い出に。ストラップとしてはどこかに付けるのが良いのかもしれない。だが自分は別の使い道を考えていた。肌身離さず持ち歩きたい。だが他人の目には触れたくない。ジャケットの胸ポケットや内ポケットに仕舞ってお守り代わりにしよう。そんなことを考えていた。水族館を出ると、既に夕刻で辺りは暗くなりかけていた。暫く歩いていると、隠れ家を思わせるようなイタリアンレストランに到着した。思わず"すご……"と声が出た。シンプルな内装でありながら、洒落た雰囲気。照明のおかげだろうか、それとも壁や床の材質のおかげだろうか)
イタリアンプリンですか……!それはぜひ食べてみたいですね! と言っても……ううむ。困りました。イタリアンはあまり馴染みが無くて。パスタの種類もよく分からないんですよねぇ……。
(ペラペラとメニュー表を捲る彼の言葉に、少し腰を浮かしかける。イタリアンプリン。濃厚で固めの食感が特徴的なプリン。卵の濃厚な味わいが楽しめる、魅力的なプリン。これまで食べる機会がなかったので、これはぜひ食べてみたい。だがあくまでデザートだ。デザートは最後に食べるから特別感がある。だが困ったことにイタリアンに関してはよく分からない。会食でもあまり来たことがない。ここは本格的なイタリアンレストランのようだから、初心者である自分には尚更分からない。こういう所の知識が豊富そうな彼へ助けを求めるように不安げな視線を向けながら、眉を下げて恥ずかしそうに告げる)
159:
宮村 湊 [×]
2025-12-05 07:49:20
あはは、分かります。パスタもピザも横文字が並んでて、どれが何だったか分からなくなっちゃうんですよね。パスタと一概に言ってもショートパスタ、ロングパスタとありますし、太さもまちまちですし。ソースはソースでクリーム系、オイル系、トマト系とか幅広く分かれてて目移りしちゃいますね。甲殻類が入っていないものとなると……例えば王道のカルボナーラとか、辛いものが得意であればペペロンチーノ、ラグーソースのパスタなんかも美味しそうですね。和食が好きだときのこの和風パスタなんていうのもさっぱりしてて良いかもしれません。
(右手で軽く横髪を耳にかけつつ、何例か示すようにメニュー表のパスタを指さしていく。あまり食べ慣れていない様子だったので、万人受けしそうな王道なものを紹介しつつ、彼の好みに寄り添えそうなものも併せて提案をしてみる。メニューには写真が載っておらず、メニュー名と中に入っている食材のみが羅列されているのも選びにくい要因の一つかもしれない。更にページをめくると今度はピザのページへと移行した。こちらもまたクリーム系、トマト系と別れている上に2ページにわたって横文字が並んでおり、これでは彼が迷ってしまうかもしれない。少し悩んでから相手を見つめるとにこりと口元に笑みを引きつつ、一つ提案をした)
じゃあ、こうしませんか?今日は俺がオススメのものをチョイスするので、一緒にシェアして食べましょう。そしたらパスタもピザもアラカルトも色んな種類が食べられますし。あ、ドリンクだけ選んでくださいね。俺、スパークリングワインにしようかな。
(通常のメニューの下から細い縦長のドリンクメニューを取り出すと、パラパラとアルコールドリンクのページをめくりつつ自分の分の目星をつけて眼前の彼に手渡してから、再度通常メニューの方へと視線を落として吟味するように顎に指を添えて)
160:
常葉 悠 [×]
2025-12-05 23:06:38
オイル系……ラ、ラグー?
(彼の言っていることは概ね理解できたが、それでも聞き馴染みのない単語が飛び込んで来ると、首を傾げてしまう。カルボナーラやペペロンチーノはさすがに分かるが、ラグーソースとはなんだろうか。折角彼が提案してくれたのだから、さっさと決めなければとメニュー表と睨めっこするが、生憎とメニュー表には写真が載っていないではないか。しかも──当然のことなのだが──横文字ばかり。ビジネス用語ならまだしも、イタリアンの横文字は見ても解読できないのが辛い。そんな自分を見かねてか、彼は自分に提案をしてくれた。シェア。なんて良い提案だろうか。彼の発想力に目を輝かせながら、大きく頷く)
それは助かります。君の選ぶものに興味がありますから! そうですね……ああ、お酒なら横文字でも分かりますよ。うーん、アペロール・スプリッツにしましょうか。
(パスタやピザ選びは彼に任せて、自分はアルコールドリンクのメニュー表を受け取り、視線をそこへ落とす。ドリンクのメニュー表にも横文字がズラリと並んでいたが、幸いにも酒の横文字ならば知識もある。しかもメニュー表に載っている銘柄は、どれも一度は試したことのある酒ばかりだった。折角イタリアンを食べるのだから、食前酒の定番である"アペロール・スプリッツ"に決める。スパークリングワインとソーダでアペロールを割ったものだ。ドリンクを決めると彼へと視線を戻す。顎に指を添えて真剣にメニューを見る様に、つい口角が緩んでしまう。イタリアン慣れしていない自分でも楽しめるように、甲殻類アレルギーの自分でも食べれるように、真剣に吟味してくれている。その表情があまりにも綺麗で、もっと悩んでいてくれないかななんて一瞬思ってしまったが、どうやら決まったようでメニュー表から顔を上げた彼に声を掛ける)
すみませんね。選んでもらって。今度来る時はイタリアンの知識を詰め込んで、全部理解できるようにしますから。
161:
宮村 湊 [×]
2025-12-06 14:54:31
あはは、真面目ですね。良いんですよ、俺も完全に理解している訳じゃないですし、大事なのは共に過ごすこの時間を楽しんでもらうことですから。
(メニュー表を閉じたタイミングを見計らってオーダーを取りに来た店員に対してグリーンサラダとカプレーゼ、タリアテッレを使用したボルチー二のクリームパスタとオルトラーナピザを1枚、最後にスパークリングワインとアペロール・スプリッツをオーダーしてから、柔らかな笑顔を正面の彼へと向ける。彼に対して以外では個人的な情を挟んだことがないため、自分にはよく分からないが───歳下の手前、少しバツが悪いという感情もあったりするのだろうか。自分からすれば彼は十分に博識で、自分だけが知っている知識より彼だけが知っている知識の方がずっと多いのだろうという想像は容易くつく。水族館での説明然り、コーヒーの知識然り、重ねてきた人生経験の重みの差に焦りを覚えるのは寧ろこちらの方だ。それでも彼の前では余裕があるように振る舞いたくて、少しでも年齢の差を埋められるような、対等に見て貰えるような存在になりたくて、机の上で重ねた自らの左右の手に軽く力を込めて本心を伝える。──少し格好をつけすぎたか。父のジャケットを借りて背伸びをする子供のように彼の目に映っていたらどうしよう。僅かに顔に集中する熱は橙色の柔らかな間接照明のせいにすることにして、唇を引き結んだちょうどその時、タイミングよく先程頼んだドリンクが運ばれてきた。自らが注文したスパークリングワインを手に取り、中に入った黄金の液体を軽く揺らすとそっとグラスを掲げ)
───乾杯しましょう、悠さん。あなたと過ごす、素敵なこの夜に。
162:
常葉 悠 [×]
2025-12-08 05:45:13
確かに、それが一番大事ですね
("真面目"と表現されたことに少なからず疑問を抱いたが、彼にしてみれば時間を共有できるだけで十分なのだろうか。自分としてはもっとスマートにコミュニケーションが取れるようになりたいのだが。だが彼があまり気にしないというのであれば、今のままで良いかなんて思う。彼がメニュー表を閉じると、見計らったかのように店員がオーダーを取りに来た。グリーンサラダとカプレーゼまでは聞き取れた。だが、"タリアナントカ"や"オルトカントカ"など全く理解できない単語をスラスラ羅列する彼を見て今しがた思ったことを撤回する。少なくとも今日のメニュー位は理解できるようにしよう──そうでなければ今後に差し障る。そう思って頭の中に今の単語を記憶しておく。そうして暫くするとドリンクが運ばれてくる。アペロール・スプリッツのステムに指を添えると、彼と同じようにそっと掲げる)
はい。二人の夜に、乾杯。
(思わずグラス同士を当て合いたくなったが、店の雰囲気からしてイタリアン式の乾杯が適切だろうと思い、グラスを目の高さまで上げるだけに留めておく。柑橘のほろ苦さとフルーティーな甘みがバランスよく口の中に広がる。すっきりとした爽やかな味わいは食中酒としても飲めるのではないかと思う。彼は自分と過ごす夜を素敵だと言ってくれた。そのおかげだろうか。やたらとアペロールが美味しく感じられる。何度かアペロールのグラスを傾けると、ふと思っていたことを彼に訊ねてみる)
先程の注文はとても手馴れていましたね。こういう所たくさん来たことあるんじゃないですか? 湊くん、友達も多そうですし。
163:
宮村 湊 [×]
2025-12-09 16:31:18
───そうですね、"仕事関係の人"とは良く行ったりしますよ、イタリアン。
(彼がグラスに口をつけたのを見て、自らもスパークリングワインに口をつける。爽やかな炭酸と共に口の中に華やかな風味が広がるのを愉しんでいると、不意に投げかけられた質問に一瞬また返事が遅れた。イタリアンはお洒落で尚且つ格式ばりすぎず、またメニュー数も豊富で苦手な食材がある人でも必ず何かしらは食べられるメニューがあるため、"仕事"で女性と共に食事を摂る時はよく重宝していることを思い出す。言葉を濁して返答をするものの、それと彼を同列に並べることは躊躇われた。彼をここに連れてきたかったのは、『とりあえず手頃』だからではなく、『ここのイタリアンプリンを食べて欲しい』という明確な理由に基づくものなのだが、それを上手く表現できず僅かに口ごもってしまう。──いつまでこんな誤魔化しを続けなければいけないのだろうか。彼に抱く好意は最早疑う余地の無いものであるものの、彼と出会うきっかけが"仕事"だったことは否めない。最早彼を騙すつもりは微塵も無いが、このまま秘密を抱えて彼と過ごして行って、万が一にでも彼にその秘密を握られることがあるとしたら?彼を深く傷つけてしまうことは容易に想像が着いた。それならば、早めの段階で彼にしっかりと事実を伝え、その事については謝罪を済ませた方が良い。未だ何も彼から情報を得ていないのは彼自身も恐らく理解してくれているだろうし、正直に自分から話せば彼も耳を傾けてくれるかもしれない。そんな、あまりにも浅はかな───甘い考えを抱きながらゆっくりと唇を開く)
……あの、悠さん、実は、俺………
(ちょうどその時、ウエイターがサラダとカプレーゼを運んできたため、言葉が途切れてしまった。そして、同時に思い至る───自分から打ち明けたから、何だ?そもそもそんな仕事をしていたという事実だけで彼にとっては許容出来ない存在になる可能性が高い。彼が思い浮かべている宮村湊の人間像と、本物の自分の乖離を彼が知れば、もう二度と会って貰えないかもしれない。そんなことは耐えられない。開きかけていた唇をそっと閉じて、無言で小皿にサラダを取り分けていく。やはり彼に打ち明けるべきではない。そう判断してにっこりと笑顔を浮かべると綺麗に盛り付けたサラダを何事も無かったかのように彼へと差し出した)
はい、どうぞ。美味しそうですね!
164:
常葉 悠 [×]
2025-12-11 05:59:35
ああ、お仕事でよく来るんですね。こういった所で会食なんて、ふふ。お洒落で良いなぁ。
(友人とではなく、仕事で来ることが多いのだろうか。普段から料亭で会食することが多い自分にとっては、こういう所での会食は羨ましい限りだ。おまけに彼は色々と知識もある。この歳になっても西洋文化への憧れは、やはり捨てきれない。スラスラと横文字を読むことができれば、格好もつくだろう。そんな幼い内心と、羨望の眼差しを彼へ向ける。実の所自分は体面を気にする方だ。それは社長という肩書きも然ることながら、幼少の頃に身に付けてしまった癖だった。自分は周囲とは違う。だから常にどう見られるか、どう思われるかを気にして生きてきた。今まではそんな癖を持っている自分がたまらなく嫌いで、悪癖だと思っていた。それが今では"彼に"どう思われるかを気にして、イタリアンの用語を覚えようと躍起になっている。そんな自分は割と嫌いではない。彼と出会ってから、心の氷が解けてきた。そんな感覚がする。そんなことを思っていると、彼の唇が動いた。視線を遣ると、彼は何かを伝えようとしているようだった。彼の表情はどこか緊張しているようだった。何か言いづらいことだろうか──そう思って姿勢を正した所で、ウエイターがサラダとカプレーゼを運んできた。彼もそれに合わせて口を閉ざしてしまった。表情と声色から何か大事なことを伝えようとしていたに違いない。彼が言いやすいように、こちらから切り出してみようと思ったが、彼が何事も無かったかのようにサラダを差し出したので──しかも眩しい位の笑顔と共に──咄嗟に礼を言って受け取ってしまった。完全にタイミングを逃したが、そもそも自分の思い違いかもしれない。今は詮索しない方が無難だろうと、サラダを口に運ぶ)
ん。美味しいですね。ドレッシングも濃すぎない味で。カプレーゼも……チーズと相性がいいですね……!
(サラダとオリーブオイルの入ったドレッシングはとても相性が良い。さっぱりとした味付けで、前菜としては丁度良いバランスだった。カプレーゼも、もっちりとした弾力とクリーミーな口どけのおかげで、濃厚な味を楽しむことができる。普段食べていないということも相俟って、前菜の時点でその美味しさに心動かされていた)
165:
宮村 湊 [×]
2025-12-11 23:35:00
……好きですか?こういうお店も。それなら俺とまた行きましょう。たくさん調べておきますから。
(彼の口から零れる言葉にはどこか憧憬の色が滲んでいるように感じた。社長という身分で会食ともなればイタリアンでは軽すぎるのだろう。肩肘張らずに純粋に食事を楽しめる場所───例えば先日の定食屋やこのイタリア料理店のような───を求めているのかと理解し、心に刻んでおく。自分の分もサラダを取り分けてフォークを手に取ると、レタスとトマトを纏めて口へと運んで咀嚼した。自分が何かを切り出そうとしたことに当然相手は気づいていたはずだが、それを追及してくる気配の無いことに僅かに安堵してしまう。これは自分の"罪"だ。彼に話して救済を乞うこと自体が烏滸がましい──自分一人で抱えたまま、彼には気付かれないように墓場まで持って行くしかない。もし万が一にでも、彼に露見したとしたら、その時は───そこまで考えていた時、向かいに座る相手からこぼれた明るい舌鼓を打つ声に意識を引き戻される。目の前で溢れる純粋な笑顔に、思わず釣られるように頬が緩んでいくのを感じる。この笑顔を守るためならば何だって出来ると、真剣にそう思わずには居られなかった。フレッシュなトマトとモッツァレラチーズに手を伸ばし、それを味わいながら同意するように頷く)
ほんとだ、ここのカプレーゼ美味しいですね。…というか、トマトが美味しい。凄く甘いトマトですね。
(先程から使用されているトマトは酸味がごくごく少なく、果実のような甘みのあるトマトで、それが他の食材の味を引き立てているようだった。暗い考えを頭から振り払うようにして料理を味わっていると、サラダとカプレーゼが空いたタイミングで今度はメインのパスタとピザが運ばれてきた。熱々の湯気が立っている料理を見て瞳を細めつつ、再びパスタを小皿へと取り分けて、綺麗な皿の方を相手に差し出した)
タリアテッレと言って、少し平麺のようなパスタなんですけど、きのこのソースがよく絡んで美味しいんですよ。僕は結構こういうパスタが好きなんです。ピザもちゃんと切れてるみたいなので、そちら側半分お好きなタイミングで取ってくださいね。
166:
常葉 悠 [×]
2025-12-14 00:50:08
ええ。好きですよ。ふふ、君と行くイタリアン、楽しみですね。
(”俺とまた行きましょう”なんて言葉が耳に入ると、思わず顔を上げる。そしてふっと頬が緩み、大きく頷く。頭の中で何度も彼の言葉が響き渡る。俺と、俺と、俺と。そうだ。自分は普段行かないイタリアンに心踊っている訳ではない。彼と共に来ていることに心躍っているのだ。純粋に食事を楽しめているのは、彼と空間と時間を共有しているからに他ならない。これがいつも通りの会社の役員や取引先とであれば、自分はここまでイタリアンを楽しんでいる訳はない。仕事中はどんな時も無表情を心掛け、決して感情を悟られないようにしてきた。感情を表す器官は極力動かさないように意識をして、”彫刻”なんて陰口もたたかれている。そんな自分が、彼といる時は素でいられるのだ)
なるほど……これはタリアテッレと言うのですね。よしよし。覚えましたよ。湊くんが好きなパスタの味も。
(彼が取り分けてくれた皿を礼を述べてから受け取ると、彼の説明に耳を傾け、よくパスタを観察する。細長いリボン状の麺で、イタリアンに疎い自分でも見たことのある形状の麺だ。頭の中にパスタの名前と?の形状を記憶する。そして、彼の好きなパスタの味も。後者と結び付けておけば、よく記憶できるに違いない。彼のことは何だって知っておきたいから。パスタを一口食べる。コシが強い麺にきのこソースがよく絡み付いていて、とても美味だ。続いてピザにも手を伸ばし、一ピース取ると口に含む。咀嚼するとまず最初にトマトの甘みがした。続いて他の野菜が口の中で溢れる。野菜特有の甘みのおかげで、何個でも食べれそうなくらいだ。やはり彼の言う通りこの店はトマトがとても美味しい。口を拭いてアペロール・スプリッツを飲むと、彼へまた視線を戻す)
イタリアンとは、こうも美味しいものなのですね。今まで未開拓だったのが悔やまれますよ。でも、初めてが君とだったのはラッキーでしたね。
167:
宮村 湊 [×]
2025-12-14 10:35:10
俺もですよ。おかげで初めてのイタリアンを楽しむ悠さんの顔を沢山堪能できましたし。
(もちもちとしたタリアテッレに濃厚なきのこのクリームが絡んだパスタは非常に美味で、思わず舌鼓を打つ。念入りに下調べはしたとはいえ、当日現地でこうして自分の口に運ぶまでは本当に美味しい店なのかと不安に思う部分はあったのだが、やはりこの店は当たりのようだ。濃厚なパスタとは対照的にピザはあっさりとしたものを選んだのも良かったのかもしれない。トマトの甘味と酸味、野菜の瑞々しさが口をリセットしてくれる。眼前の彼もまた初めてのイタリアンを存分に楽しんでくれているようで、深い安堵と充足感に長い息を吐いた。ひとつひとつに感動するように料理を口へと運ぶ彼を眺め瞳を細めつつ、そろそろタイミングかと再びメニュー表を開きデザートのページへと移動する。今日の一番のお目当てとも言えるかもしれないイタリアンプリンがメニューにしっかりと記載されているのを確認してからドリンクのメニューを開くと再びそれを彼の方へと差し出した)
悠さん、そろそろデザート頼みましょうか。俺は食後のコーヒーを頼もうかと思うんですが、悠さんはどうしますか?
168:
常葉 悠 [×]
2025-12-15 22:19:22
いいですね。甘いものにはコーヒーが不可欠ですから。そうしたら……エスプレッソをいただきましょうかね。
(一頻りパスタとピザを堪能すると、早いものでもうデザートの頃合いとなっていた。先程まで皿に盛られていたはずのパスタやピザはすっかり胃の中に収まっている。これでデザートを頼み、コーヒーを飲みながらプリンを食べ、会計を済ませたら彼と別れなければならない。また明日から現実に戻らなければならない。辛く苦しい現実に。そう考えると気分が憂鬱になる。だが彼の声でふと我に返る。差し出されたメニューを受け取ると、食後のコーヒーという言葉に眉を微かに上下させる。てっきり食後酒を頼むものだと思っていたので、イタリアンプリンに合うような酒とはどういうものだろうかと悩んでいた。だが彼がコーヒーを頼むと言うのなら、自分もコーヒーを頼もう。別に強制されている訳でもないのに、自然とそういう思考になるのは、彼と何かを共有したいという思いからだろうか。メニュー表を見てコーヒーを探すと、カプチーノやカフェマキアートなど様々な種類があった。ここは厳格なイタリアンレストランという訳ではないだろうが、やはりエスプレッソを頼んだ方が良いだろうと思い、メニュー表の文字を指差す)
私はイタリアンプリンも一緒にいただきますが、湊くんはどうしますか。良かったら一緒にプリン、食べませんか。
169:
宮村 湊 [×]
2025-12-16 12:31:25
喜んで、俺も食べたいなって思ってたんです。
(ドリンクメニューを真剣な表情で眺めている彼の様子を見詰めながら幸福感に瞳を細める。この時間がずっと続けば良いと願ってしまうほどには今日一日はあまりに幸福だった。隣で笑う彼の表情が見られるなら、自分の持ち得る何を差し出してもいい───そう思うほどにはどろどろとした執着にも似た感情が生じていることを自覚はしている。今、この時間は他の仕事のことも、彼から引き出した情報の少なさに上層部から早く結果を出せとせっつかれていることも些事に思える。いっそ組織を抜け出してしまおうか。足抜けなど容易に出来るものでは無いと知っていながら頭によぎるそんな甘い考えも、今までの自分であれば考えられないことだった。彼が指さすエスプレッソの文字へと視線を落としながら、同時に示された提案へと賛成するように一度頷き再び店員を呼ぶと、目当てのイタリアンプリンを二つと彼のエスプレッソ、そして自分用にホットのブラックコーヒーをオーダーした。店員が席から離れ立ち去った後に残った静寂を破るように徐に唇を開くと少しバツが悪そうに軽く頬を人差し指で掻きながら眉を下げ)
あの……悠さんに謝らないといけないことがあって。頼まれていたマカロン、実はまだ完璧に納得のいく物が完成してなくて……今日は作って来れなかったんです。次、必ず完成させて持ってきますから、……また遊んでくださいね。
170:
常葉 悠 [×]
2025-12-18 20:52:47
ああ、気にしないでください。マカロンなんて難しいものを頼んだ私が悪いのですから。ふふ……湊くんは意外に完璧主義者なんですね。
(またしても彼と同じものを共有できることに大いなる喜びを感じる。できることなら、このまま時間も共有したい。自分の人生の時間だ。お互いに半分ずつ、お互いの時間を。そうすることで安らぎを得られる。そんな気がしている。だがあくまでも自分だけの想いだ。彼がそれを断る可能性もある。自分は彼が好意があると考えているが、この会話の中で彼の気持ちが離れていってしまったのではないか。そんな不安も心の片隅にある。またしてもネガティブ思考が頭の中を支配するかと思いきや、その思考は途中で遮られた。唐突に謝りたいことがあると言われたからだった。エスプレッソとイタリアンプリンに注がれていた視線が、思わず彼の方へ戻る。何を言うつもりなのか。些か緊張したが、聞けばマカロンの出来が芳しくないことだと言う。自然と身体の力が抜け息を吐くと、気にしなくて良いと本心をそのまま伝える)
それにね、湊くん。私は完璧なマカロンが食べたい訳ではないですよ。純粋に君の作ったマカロンが食べたいのです。完璧じゃなくて良いですから、次は食べさせてくださいね。うーん……そうですね。来月の13日なんていかがですか。平日なんですが、珍しくスケジュールが真っ白で。
(そうだ。自分は完璧なマカロンが食べたいわけではない。彼が作ったマカロンが食べたいのだ。例え、見てくれが悪くても味がイマイチでも、彼が作ってくれたものが食べたい。味覚の問題ではなく心が満足するかの問題だ。無論、そんな自分の自己満足とも言える欲求に付き合ってくれている彼には申し訳なく思う気持ちを持っている。この次は、自分が最上のもてなしをしなければ。頭の中でスケジュールを確認すると、来月の13日のスケジュールが全くないことを思い出す。確かこの日は前日に多数の会食やシンポジウムへの出席がある。新任の秘書が気を利かせてスケジュールを開けてくれたのだった。思い出すと、すぐに彼へ笑みを向けながら提案する)
171:
宮村 湊 [×]
2025-12-18 22:29:22
……悠さんに渡すものだから、ですよ。なるべく拘りたくて。でもそれで渡せなかったら本末転倒なので、次回は必ず。
(彼が完璧なものを求めているわけではないことは理解していたものの、そんな彼に贈るものだからこそ完璧に仕上げたいと思ってしまうのは矛盾だろうか。努力などせずとも手先はそこそこ器用な自負はあった。100点満点中90点のものを作り上げることは自分にとって造作のないことだ。素人が趣味で作るものならば十分すぎる出来だろうし、"宮村湊"として他の標的に同じことを頼まれていたら、あえて80点の出来のものを渡すかもしれない。少し抜けていた部分がある方が人間味があって取っ付きやすく親しみを持たれやすいからだ。だが、彼に対してはそんな計算など全て取り去って、自分の出来る最大限を提供したいという拘りが生じてしまう。そのリクエストが嬉しくて、それに応えるために本気になれることの、なんと幸せなことか。今までに生じなかった感情に心地よさそうに瞳を細めつつ相手を見詰めていると、不意打ちのような提案に細めていた瞳を見開き数度瞬きをした。忙しい彼のことなので、また暫く夜のみ会う生活が続くのかもしれないと考えていたが、杞憂だったようだ。スマートフォンを取りだしスケジュールを確認するものの、他の仕事は何も入っていない。密かにガッツポーズしたい気持ちを抑え口元を緩めてスマートフォンを閉じると、賛同するように頷いて)
大丈夫ですよ、13日なら会社休めますから。予定入れておきますね。…ふふ、貴重な休みなのに、俺と会ってくれるんですね。嬉しいです。
(スケジュールが詰まりに詰まっている彼のことだ、一日空いている休みは相当貴重だろうに、それを自分のために割いてくれると言われて喜びを隠さないことなど出来るはずもなかった。幸福そうに目尻を下げてからようやくテーブルに置かれた小さな銀のスプーンを手に持って少し硬めのイタリアンプリンに手をつけて)
……あ、すごい。固くてしっかり卵の味を感じるプリンですね。美味しい。
172:
常葉 悠 [×]
2025-12-21 00:06:18
ん……! これは……思ったよりも濃厚ですね。弾力もあってクリーミーですね!
(彼が食べたのを見てから自分もイタリアンプリンを一口口に運ぶ。一口食べると眉がピクリと上下する。口に中に独特の甘みが広がる。そして想像よりも濃厚な卵の味にこれまた驚く。ずっと食べたいと思っていたイタリアンプリンだが、いざ口にすると奥行きのある味に少しばかり感動を覚える。何度かプリンを口に運ぶと、エスプレッソを飲む。イタリアンプリンの甘みとエスプレッソの苦味が調和をして、口の中が落ち着く。大好きなスイーツとコーヒー。そしてそれを一緒に楽しんでいるのは心通じ合う友人。恐らく今自分は人生で一番幸福かもしれない。残りの人生、ずっとこうして過ごしたいと思うのは叶わない願いだろうか)
13日ですが、今度は私がプランを立てましょうか。ですが、私は君のように上手くプランを立てられる自信がありません。そこで直接お聞きしますが、君は何をしたいですか。
(エスプレッソを片手に彼へ訊ねる。今、自分はとてつもなくカッコ悪いことを言っている自覚はある。30を過ぎてプランの一つも満足に立てられないのだ。だが自分が自分の考えのみでプランを立てると、彼が微妙な気持ちになってしまうのは明白。それならば直接聞いてしまった方が安全だろう。自分がプランを立てると、最悪の場合自宅で映画鑑賞などになってしまう。さて、彼はこの問いになんと答えるのだろうか。エスプレッソを一口飲むと、彼へ視線を戻して答えを待つ)
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