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愛の報いは愛(〆)/151


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自分のトピックを作る
101: 宮村 湊 [×]
2025-10-18 09:56:45

マンデリン…トラジャ…どちらも飲んだことがないので楽しみです!

(彼の口からすらすらと出てくるコーヒー豆の名前はどれも耳馴染みのないもので、興味深そうに耳傾けていると、電車はあっという間に目的地に到着した。相手の後を追い改札を出てタクシーへと乗り込むと、その膝の上に大切そうに置かれた紙袋を見て少し気恥しさと同時に嬉しさを覚え、口元が緩む。その時、不意にポケットの中に入っていたスマートフォンがマナーモードで振動した。定例の報告を求める組織の上長からの電話だろう。夢見心地から一気に現実に引き戻されたような気がして、そっとスマートフォンを取り出すと、すぐに通話終了ボタンをタップする。これで電話に出れない状態であることは上司にも伝わっただろう。後で纏めて報告すれば良い──正しい報告をするとは限らないが。彼の大きな不利益にならないことを掻い摘んで、怪しまれない程度に報告を繰り返せばいい。今までかなり真面目に仕事に取り組んできた自負がある。暫くはきっと露見することもないだろう。そんな策謀を頭のなかでめぐらせつつ、再びスマートフォンをポケットにしまい込むと軽く頭を下げて謝罪してすっとぼけたような声を出し)

…すみません、迷惑電話みたいでした。最近すごく多くて。どこかで俺の電話番号漏れてるのかなぁ。

102: 常葉 悠 [×]
2025-10-18 23:15:04

情報はいつ漏れるか分かりません。細心の注意を払わないといけませんよ。……ああ、そうそう。前にこういう話を聞いたことがあります。

(タクシーが発車して間もなく、彼の携帯が鳴った。だが画面を見たと思ったら、すぐに切って仕舞った。電車なら分かるが、タクシーで電話に出ないというのは何故なのか気になっていたところ、迷惑電話の件を聞いた。自分も仕事用の電話に迷惑電話が来たことはないが、プライベート用のものならば何度かある。だが彼の口ぶりからして、頻繁に来ているらしい。そしてふと、以前知り合った他企業の社員から聞いた話を思い出して、彼に聞かせる)

大手の化粧品会社の女子社員が、バーで人懐こい好青年と知り合ったそうです。社員は青年と友達になり、知り合って半年ほどで二人は男女の仲になりました。ある日、社員は青年の自宅にスマホを忘れてしまいました。青年はすぐに届けに来てくれたのですが、実は青年は裏社会の工作員で、スマホから仕事の情報を全て抜き取ってしまいました。不用心にもスマホには、会社の社運を賭けた大型取引のプレゼン資料が入っていたそうです。もちろん社外秘の機密情報です。その情報を競合の会社に売られてしまい、取引は横取りされました。会社は倒産は免れましたが、業績は悪化して大規模なリストラを実施せざるを得なくなってしまったそうです。自分の軽率な行動で仲間を路頭に迷わせてしまったこと、信頼を寄せた青年に裏切られたことに絶望して、社員は自ら命を絶ったそうですよ。
情報は命そのものです。番号が漏れている疑いがあるのなら、すぐに対応した方がいいと思いますよ。……なぁんて、エンジニアの湊くんには、釈迦に説法でしたね。

(聞いた話を思い出すかのように宙を睨みながら、口を動かす。多少記憶が曖昧なところがあるが、概ねの説明は合っているだろう。説明を一頻りすると、彼の方を向いて眉間の皺を寄せながら助言をする。釈迦に説法だし、余計なお世話だと分かっていたが、彼にはそういうトラブルに巻き込まれて欲しくないので、一応伝えておきたいと思ったのだ。そんな話をしていると、あっという間にマンションに到着した。いつものように素早く財布を取り出し、クレジットカードで支払いを済ませると、タクシーを降りる)

103: 宮村 湊 [×]
2025-10-19 09:10:22

…ええっ…、怖いですね。電話番号くらいなら大丈夫かなと思ってましたけど…対処しておきます。

(掛かってきた電話が迷惑電話でないと気づかれるはずも無いので、この話はここで終わるだろうと考えていたものの、話が思わぬ方向へと展開されて行き、正直内心では冷や汗をかいていた。自分の正体がバレたのかと一瞬疑ったものの、相手の言葉のニュアンスを汲み取るにそういう訳でもないようで、静かに息を吐き出しながら瞳を細める。──3個ほど前の案件だったか、確かにそんなことがあった、気がする。細かいところは少し事実とズレがあったものの、そこは噂話として伝わっているもの、多少歪んでいてもおかしくはないのだろう。自分の仕事は機密情報を抜き取ることで終わっていたため、その後彼女がどうなったかまでは知らなかったが、命を絶っていたとは。気の毒そうな表情を作って心を痛めたような声音でそう返したものの、心の中は恐ろしいほどに冷めていた。全てを仕事と割り切っていたためだ。いちいち標的のその後を心配して心を痛めているようではこの世界では生き残れない──そう教わってきた。だから、唯一の例外は隣に座る彼だけだった。仮面を外した本当の自分は、自分が間接的に死に追いやった人間の死すら悼むことのできない非情な人間だと、もし彼が気づいたとしたら。そこまで考えて仄暗い気持ちが浮かんでくるのを隠して停車したタクシーから降車する。純粋に心配してくれて話してくれたのであろう彼の善意が、自分は彼の隣に並ぶべきではないと突きつけてくるようで、振り払うように軽く首を横に振り、静かに深呼吸をすると見慣れぬ光景にそわそわとするようなふりをして辺りを見渡し)

104: 常葉 悠 [×]
2025-10-20 00:15:48

どうしたんですか、そんなにキョロキョロして。 まあマンションばっかりですから、あんまりこの辺は来ないですよね。さあ、行きましょうか。

(タクシーを降りると何やら彼がそわそわとしていたので、クスッと笑いながら声をかける。見回せばマンションばかりの光景が珍しいのだろうか。地方出身と言っていたし、まだ都会の光景に慣れていないのかもしれない。不安げにも見える彼の表情に、和ませてあげなければと思い立ち、マンションの中に入りながら言葉を続ける)

ここは分譲マンションでしてね。友達とか恋人とかと過ごしやすいようにと、大きめの部屋をウキウキで購入しました。しかし買った後で友達も恋人もいない事に気付きましてね。ふふふ……誰かを部屋に招いたのは君が初めてですよ。

(入口にあるパネルを操作しながら、冗談を交えながら言う。部屋にゆとりを持って暮らしたかったことと、オートロックの解錠方法が顔認証なのでセキュリティがしっかりしていることが、このマンションを選んだ本当の理由だが、多少冗談ぽく伝えた方が、彼も気が楽になるかもしれない。無論、自分の拙い冗談が伝わればの話だが。パネルに部屋番号を入れた後、顔認証でエントランスのドアを開ける。エントランスに入ると、エレベーターで自分の部屋のある階のボタンを押す。自分は最上階に住んでいるので、20階のボタンを押す。所謂タワーマンションと呼ばれる物件だが、実のところあまり気に入っていない。窓からの景色は良いものに違いは無いが、自分の会社のビルが見えてしまうのだ。気が付けばそこばかりを見てしまう。だから自室にいても仕事のことを考えてしまい、身体が休まらないのだ。だから一日中カーテンを閉めて生活している。だが今日は折角の来客だ。夜景は綺麗な部屋だから彼に見せてあげたい。今日くらいはカーテンを開けてみよう。そんなことを考えていると、目的の階に着いた。エレベーターを降り、部屋の前まで来ると、部屋の横に備え付けられているパネルに顔を見せ、顔認証でドアを開ける)

さあ、どうぞ入って。

105: 宮村 湊 [×]
2025-10-20 18:36:10

あ…、いえ、凄く大きくて綺麗なマンションだったのでびっくりしちゃって!…っ、あはは!じゃあ俺、悠さんにここに招いてもらう初めての人なんですね。なんだかとっても嬉しいです。

(相手の後に続きエントランスへと入りながら無邪気な声を上げる。彼がどこに住んでいるかなど報告書でとっくに知っていたのに知らないようなふりをして笑顔を浮かべた。かつて仕事をする中で同じようなタワーマンションや豪邸に案内されたこともあったが、皆一様に聞いてもいない自分の住居についての自慢話を聞かせてくるものだった。彼の住む部屋も都会の一等地のタワーマンション、加えて最上階ともなれば相当値が張っているのは想像に難くない。彼にも自慢話のひとつやふたつくらいあるだろうかと考えながら背後に控えていると、彼の口から掛けられた言葉は落ち着かない様子を見せている自分への配慮のようで、一瞬拍子抜けしたように目を丸めたあと、思わず吹き出した。その気遣いが彼らしいな、と口元を弛めてエレベーターへと乗り込む。灯った最上階のランプを眺めながら、ぼんやりと先程の彼の言葉を考えていた。実際、自分以外のプライベートの彼の交友関係は本当に狭いものらしい。自分が関わりを持った同じような立場の人間の中では彼が一番根が優しく、真面目なのに、少し不器用なところが災いしているのか──難儀な話だ。とは言え、正直に言えば彼に交友関係が少ないことを喜ばしく思ってしまっている自分もいた。自分が彼に惹かれたように、彼の本質に惹かれる人間はきっといる。そのようなライバルが目下存在しないというのはそれだけで安心できた。タクシーの中で彼の話を聞いた時もそう、自分の考え方はあまりに合理主義的で非人道的だとはわかっていた。彼のような人間に相応しくないのは自分であると理解していながら、尚手を伸ばそうとしてしまう浅ましさも。それら全てを隠すように静かに瞳を伏せ、程なくして最上階へと到着したエレベーターから降りると、開かれた扉の中におずおずと足を踏み入れる)

お邪魔しまーす…

(広々とした玄関で靴を脱ぐと丁寧に揃えて端に寄せる。彼が入って来れるように廊下を少し先まで進んでから、部屋の主たる彼を待つように立ち止まった)

106: 常葉 悠 [×]
2025-10-20 20:43:44

(丁寧に靴を脱いで揃える彼に好感を持ちつつも、内心は些かの不安と緊張に苛まれていた。まずここ最近はまともに家の掃除をしていない。元々家事能力が低く、放っておくとすぐに散らかり放題の部屋になっていた。だから定期的に部屋の掃除をするように意識していたのだが、最近は業務が多忙を極め、家に帰ると死んだように眠り、早朝に出社する生活を繰り返していた。家の様子など気にする余裕はなかったし、そもそも最後に掃除したのがいつなのかも覚えていない。だからリビングがどういう状態なのかも分からない。廊下で待っている彼に失望されないかと不安になりながらも、ドアを閉め靴を脱いで玄関に上がる。意識的にゆっくりと歩きながら、彼を追い越しリビングのドアノブに手を掛ける。ギィィ……とドアの開く音が聞こえるくらいにゆっくりと、ドアを開ける。ほんの少しドアを開けて、中の様子を伺ってみる。暗くてよく分からないが、少なくとも物が散逸しているということは無さそうだ。それを確認すると、ようやく緊張が解け、勢いよくドアを開け、リビングの電気を付ける)

ソファでも椅子でも、お好きな所に座ってください。すぐにコーヒー淹れますからね。

(彼に声を掛けながら、スーツの上着とカバンを置きにウォークインクローゼットへ向かう。いつもなら書類などはカバンから出してから仕舞うのだが、来客中であるし、今日はもう書類に目を通す気になれなかった。スーツの上着とベスト、ネクタイを脱ぎ、ハンガーに掛ける。彼から貰ったクッキーの入った紙袋を片手にリビングへ戻る。キッチンに入ると紙袋を置き、手を洗って棚からいくつかコーヒー豆の入った瓶を取り出す。どれがいいだろうか──テーブルに並べた瓶を前に、腕を組みながら小さく唸る。だが考えていても埒が明かないと思い、ここは彼に直感で選んでもらうことにする)

湊くん。この中からどれか一つ選んで頂けますか? どれも苦味が強い傾向にある豆ですが、私一人では決められないので、君に直感で選んで欲しい。

107: 宮村 湊 [×]
2025-10-20 21:12:05

わぁ…広いですね。じゃあ、ソファお借りしますね。

(相手に続いてリビングへと足を踏み入れて辺りを見渡す。確かに少しばかり出しっぱなしになっているような物がところどころに置かれている様子はあったものの、"散らかっている"と形容されるほどの状態では無かった。ここ最近は多忙を極めていた様子であったし、整理する時間も無かったのだろうと考えてそれ以上まじまじと眺めることはせずに促されるままにソファへと腰掛けた。広々とした部屋故に却って掃除も億劫になってしまっているのだろうか。一人で疲労困憊の中、何部屋も掃除をするのはやはり大変なのだろう。そんなことをソファに体を沈めつつぼんやりと考えていると、キッチンの方から聞こえた自分を呼ぶ声にすぐに反応するように立ち上がり、声のする方へと歩みを進めた。テーブルの上に並べられた瓶の中にはコーヒー豆がぎっしりと詰まっているようだったが、当然の事ながらそれを見てもどれが何なのか自分には全く想像がつかない。少し考えるように顎に指を添えていたものの、その後すぐに自分から見て1番右の瓶を選び指さした)

苦味が強い豆だけでこんなに種類があるんですね。うーん…そしたら、これにします!どんな豆ですか?

108: 常葉 悠 [×]
2025-10-22 21:47:30

これはインドネシア原産のコーヒー豆で「マンデリン」といいます。シナモンのような風味でありながら、重厚なコクと苦みが楽しめる豆ですよ。

(彼が直感で選んだ豆を説明しながら、ドリップの準備を進める。IHクッキングヒーターのスイッチを入れ、ドリップケトルのお湯を沸かす。沸くまでの間、豆を挽きながら考え込む。コーヒーの味は豆の質にも左右されるが、最も味を左右するのは淹れ方だ。どのくらいの深さでドリップするか、湯の温度、湯量、時間。これらが完璧で美味しいコーヒーを淹れる事が出来る。無論、彼のことだからきっとどう淹れても美味しいと褒めてくれるに違いない。だが、想いを寄せる人に出すコーヒーだ。完璧なものを出したい。出せなければ罪悪感が暫く纏わり付きそうだ)

誰かに飲んで貰うとなると、少しばかり緊張しますねぇ……ふふ、上手く淹れられるといいんですが。

(やや粗めに豆を挽くとドリップケトルを持ってゆっくりとお湯を入れ始める。一回目は蒸らしという工程だ。豆をお湯で全体的に濡らし、1分程待つ。お湯が完全にドリップされると、ゆるゆるとケトルを傾けながらお湯を入れる。小さく円を描くように、ゆっくりと。お湯を入れながら、緊張を和らげるように彼へ声を掛ける。緊張している時は、敢えて緊張していることを認めるのがいいと言う。どこかで聞き齧った知識を実践してみたが、声に出したことでより緊張したきらいがある。ケトルを持つ手が僅かに震えてしまう。一湯目を淹れ、しばらく待ってから二湯目を淹れる。そうして同じことを繰り返して、お湯が落ちきったところで、ドリッパーをシンクへ移す。予め用意していた二人分のカップに淹れたてのコーヒーを入れる。片方のカップにはガトーショコラを、もう一方には彼お手製のクッキーを付け合せにする。お盆にカップと付け合せを乗せ、ソファへ運ぶ)

お待たせしました、マンデリンの深煎りコーヒーです。……口に合うといいんですがね。

109: 宮村 湊 [×]
2025-10-22 22:53:16

マンデリン…初めて聞きました。でも、とっても美味しそうです。

(コーヒー自体は愛飲していたものの、その種類についてはごくごく有名どころを多少齧っている程度なもので、初めて耳にするそのコーヒーの名前を復唱するように口の中で小さく呟いた。コーヒーと言えば苦いか酸っぱいか程度しか気にしたことが無かったが、思っていたよりも随分と奥が深いらしい。実際に豆を挽くところを生で見るのも初めてで、興味深そうにその様子をじっくりと眺めていたものの、そうしている内にふと次第に自分のクッキーが相手の口に入る時間が近づいていることを意識してしまい、徐々に緊張で胃が痛んできた。なぜ手作りなどしてしまったのだろう、近場の店で美味しそうな既製品でも買っておけば良かったのに、と今更後悔しても時すでに遅く、同時に手渡した時の彼の表情を思い出すとやはり手作りを用意しておいて良かったのかもしれない、と複雑な想いだ。そんなことを悶々と考えてしまっていたせいで、非常に神妙な面持ちになってしまっていたことに彼は気付いただろうか。しかし、暫く彼がコーヒーを淹れる様子を眺めていると、その手が小さく震えていることに気付いて、その瞬間、彼もまた緊張しているのだと理解する。人を招くのは初めてだと言っていたので、このように誰かにコーヒーを振る舞うことも初めてなのだろう。自分が、自分の作ったクッキーを彼が食べることに対して緊張を覚えているように、彼もまた彼が淹れたコーヒーを自分が飲むことに対して緊張を覚えているのかもしれない。そう思うと次第に緊張も解けてきて、辺りに漂う芳醇なコーヒーの香りを楽しむ余裕も出てきた。いくつもの手順を重ねて出来上がったらしいコーヒーを追うように自分もソファに戻ると、再びソファへと腰を掛けてからガトーショコラの乗った方を受け取り、早速カップを手に取った。挽き立ての豆を使っているからなのだろうか。普段飲むコーヒーよりも既に香りが強いように感じる。少しの間、その豊かな香りを楽しんでいたものの、せっかくならば温かい内に飲みたいという気持ちもあり、断りを入れてから軽く息を吹きかけた後に口をつけた)

ありがとうございます、頂きますね。…!これ…

(口に入れた瞬間に、普段飲んでいるコーヒーとは明らかに違う、強めの苦みと同時に華やかなスパイスの風味を感じる。豆の種類、挽き立ての豆であること、淹れ方、それぞれに要因はあると思うが、ここまで違う味になるのかと思わず素で驚いたようにカップを見つめてしまい、唇からは感嘆の息が零れた。軽んじていたわけでは当然無かったのだが、こんなに美味しいコーヒーを口にすることになるとは思っておらず、やや興奮したように瞳を輝かせて相手を見つめると、おそらく今も不安に思っているであろう彼に対して率直な感想を述べ)

…美味しい、こんなに香りがしっかりしたコーヒーは初めて飲みました。コーヒーってこんなに美味しくて幅がある飲み物だったんですね…。苦みはしっかりしているんですけど、スパイスの風味が豊かで…凄く俺の好みの味です。ありがとうございます、悠さん。

110: 常葉 悠 [×]
2025-10-24 23:53:15

よ、良かったぁ……。いや、そう言って貰えてすごい嬉しいですよ。ああ、安心しました……!

(彼の隣に座って、コーヒーが彼の喉へ流れていく様を緊張しながら見ていた。コーヒーを飲んだ彼は顔を輝かせながら、感想を言ってくれた。表情を見れば単なる社交辞令などではなく、本心から言っていることが充分に伝わってきた。自分にとってはそれが最大級の賛辞のように感じられ、嬉しさと同時に緊張の糸が切れたような感覚が全身を包み込む。ソファの背もたれに勢いよく身体を預けると、深く息を吐く。緊張で手が震えてしまい、正直なところ美味しいコーヒーを淹れることができたのか疑問だった。怖くてテイスティングもできなかった。だが上手くいったことに安堵し、自分も飲んでみようかとカップを持ち上げる。しかし、そこで気付いた。自分は猫舌ゆえ、淹れたてのコーヒーを飲むことができない。もっと時間を置いてからでないと。彼と同じタイミングでコーヒーを楽しめないのは、残念に思ったが致し方ない。あと数分待つしかない。と、思ったところで彼の手作りクッキーに目を移す。先にこちらを頂こうかと、クッキーを手に取って一口齧る)

んっ! このクッキー、美味いですね! サクサクだし、程よく甘みもあるし、既製品もいいですが、こっちは絶品ですね!

(クッキーを齧った瞬間、衝撃を受けた。コーヒーの付け合せとして、普段からよく食べているが、今まで食べたクッキーより遥かに美味しかったからだった。通常自分はこういってシチュエーションに出くわした時、あまり感想を言わないようにしている。相手の意図したことと違うことを言って不興を買うのが怖いからだ。だが事このクッキーに至っては、迷わず素直な感想を伝えることが出来た。普段絶対に出さないような声量で、彼にクッキーの美味しさを伝えたいと思った。きっと今の自分はコーヒーを飲んだ瞬間の彼と同じ顔をしていることだろう)

111: 宮村 湊 [×]
2025-10-25 10:16:01

本格的に淹れるところを見たのも初めてで………コーヒーってこんなに美味しいんだ……

(舌鼓を打ちながら、更にもう一口口に運んで彼を見遣れば、その表情が安堵へと弛緩していく様子が目に入り、自然とこちらの表情も緩む。手間隙かけて淹れられたコーヒーの、機械で淹れたものとは全く違う深い味わいに感動を覚えつつすっかり気が抜けた様子でいると、あまりに自然に自分のクッキーへ彼が手を伸ばすので、思わず一瞬反応が遅れ、気づいた瞬間には手製のクッキーが彼の口へと運ばれており、思わずカップを片手に硬直してしまった)

は………、……あ、……良かっ、た………。お口に、合いましたか?

(不安そうに其方を見つめていると、しっかりとした口調で告げられたのは賛辞の言葉で、押し寄せてくる安堵にそれだけを口にするのがやっとで、それでも彼の表情を見れば自分の作ったものが受け入れて貰えたという確信に幸福感を覚えずにはいられず、表情を綻ばせて少し照れくさそうに頬を軽く掻きながらそう問いかけた。今この時ばかりはお菓子作りを趣味にしていて本当に良かったと心底思う。同時に、作り上げたものではない自然体の自分をまたひとつ彼に受け入れて貰えたような感覚に、静かに胸の奥の方が熱を帯びた。カップを静かにテーブルに一度戻して相手の方へと顔を向けると、瞳を細めながら相手の視線を絡め取るように目を合わせて小さく息を吐き出し)

悠さんの口に合うかずっと不安だったんです。自分が作ったものを他人に食べてもらうのは初めてでしたし…。せっかくなので美味しいものを食べて欲しくて、本当は既製品にしようかとも思ったんですけど…… こうやって目の前で食べて貰えて、美味しいって言って貰えるのって、こんなに嬉しいんですね。悠さんのためならまた幾らでも作りますよ。好きなものを教えて貰えたら練習してきます。

112: 常葉 悠 [×]
2025-10-26 21:11:51

ええ、とっても美味しいですよ。ふふ……私のためにありがとうございます。じゃあまた今度、なにかお願いしてしまいましょうかね。

(クッキーを口に運び、ゆっくりと咀嚼する。その度に口の中が幸せで満たされていくような感覚だった。彼のクッキーがそれ程までに絶品なのか、それとも彼の作ったものだからそう感じるのか。あるいは両方なのか。"悠さんのためなら幾らでも作る"という言葉に、小さく笑うと彼の目を見ながら感謝を口にする。だが心の中は別のことを考えていた。これは最早、自分の気持ちを伝えるべきではないのかと。彼の表情の意味も、わざわざ自分のためにと付けた意味も、いくら自分にだって理解できる。彼が自分をどう思っているのかも、自分が彼をどう思っているのかも。全て理解できる。だが過去の経験が自分の足を止めさせる。それに、まだ彼には自分の全てを知って貰っていない。自分のことをもっと知ったら、気持ちも変わってしまうかもしれない。だが、彼だからこそ色々知ってから、自分の言葉に返事をして欲しい)

私はね、ずっと仕事一筋でここまで来ました。……トキハ食品ホールディングスってご存知ですか。私、そこの代表取締役でしてね。同族企業で、子供の頃から誰も彼も利益が目当てで、本当の友達も、安心できる恋人もできたことがない。……だから君という楽しみを一緒に共有できる友人ができて、とても、とても嬉しかった。

(すっかり温くなったコーヒーに恐る恐る口を付けて、一口飲む。猫舌の自分でも充分に飲める温度だった。コーヒーを一口飲むと、意を決して自分の身分を明かす。一瞬、躊躇してしまいそうになったが、一度切った言葉の堰は幸いにも止まることなく、自分の口からはスルスルと言葉が出てきた。一度言葉を区切って再びコーヒーを飲む。そして、彼の目を見て暗に問い掛ける。"君は、私を純粋に友達としてカテゴライズしてくれるだろうか"と)

113: 宮村 湊 [×]
2025-10-27 15:46:47

……えっ?

(気付けば生まれてこの方経験したことの無いような幸福感に支配され、頭からは完全に任務のことなど消えかけていた。まさにそんな時、不意打ちのような彼からの告白に、まさかこのタイミングで打ち明けられると思っておらず、驚きの色を浮かべた瞳を2,3度瞬かせる。しかし、その告白は彼自身の立場を自慢し誇示するような類のものではなく、寧ろその立場を知って尚、自分が変わらず彼と接することが出来るのかを問うているように見えて、返すべき言葉を探すことにそう長く時間はかからなかった。)

もちろん知ってますよ、俺もよく食べてますし。あんな大企業の代表取締役って……、凄く忙しそうだったのも納得です。でも、それを俺に打ち明けてくれたのは、だから、つまり───変に畏まって欲しいとか、そういうことじゃないんですよね、きっと。

(温度を警戒しながらコーヒーに口をつけているその仕草にすらもどうしようもなく掻き乱される。今までとは何もかもが違う。偽りの自分ではなく本当の自分で受け入れられることの穏やかさを知ってしまえば、どうしても本当の自分を受け入れられたいという欲が出てしまう。正しい解答を機械的に選択していくだけだった頃とは違う、確実に体温がある言葉。それが正解かは分からないが───どれだけ遠回りになっても、彼との間にこれ以上の嘘は差し挟みたくない。)

自惚れみたいで恥ずかしいんですけど、…悠さんに信頼、して貰えたのかなって。なんだか俺もすっごく嬉しくなりました!また俺のこと、ここに呼んでください。美味しいお菓子を作って、手土産に持ってきますから。そのために広い部屋、借りたんですもんね?

(先程彼が口にしていた冗談を拾うようにして、肩を竦めて悪戯っぽく笑顔を零す。初めて会った日に浮かべていたような、人好きのするような笑顔からは少し離れてしまったかもしれないが、自然体のままで口元が綻んでしまう。それが無性に心地よくて、彼を害する全てから彼を守りたいと──あまりに軽率にもそう思ってしまった。)

114: 常葉 悠 [×]
2025-10-28 23:49:17

(彼の一挙手一投足が自分の心を乱していく。2、3回繰り返された瞬きも、驚きの色をした瞳も、全てが不安要素となって心を徒に刺激してくる。彼の返事を今か今かと待つ一方で、聞きたくない、聞かない方がいいのではないかという思いが強くなっていく。彼が口を開くまでには実際のところ数秒程度の時間しか掛かっていなかったのかもしれない。だが、今の自分にはそれが果てしなく長い時間に思えた)

…え、ええ! 君のこと、信頼しているんです!自惚れなんかではありませんよ!

(彼の言葉はどれも自分が思っていたことだった。自分の意図を理解してもらえるか些か不安だったが、彼はまるで自分の心を見透かしているかのように、欲しい言葉を的確にぶつけてくる。だがそれは決して打算的に出力している言葉ではなく、本心からのものだと分かる。だから前のめりになって、自分が信頼していることを彼に伝える)

そうですね、ふふっ……君が居てくれたら、少しは狭いと思えるかもしれませんね。ああ、そうだ……じゃあ早速リクエストしてしまおうかな。次はマカロンを作って貰えませんか?

(自分が適当に言った冗談を拾われると、一瞬面食らった顔をしてしまうが、すぐに彼の笑みにつられるように、こちらも笑みを浮かべる。初対面の時の笑顔とはまた違った魅力的な表情だった。恐らくはこちらが自然体なのだろう。だがどんな表情をしていても、その笑顔が自分にだけ向けられているという事実が、気分を高揚させる。そして早速、お菓子のリクエストをする。しかしリクエストして暫くしてから、少しだけ後悔する。我ながら思い上がっていて、そして気持ちの悪いリクエストだと思う。彼の気を知っていながら、マカロンをリクエストしてしまったのだから。自分としては単純に彼の作ったお菓子が食べたいと思ってのリクエストだったが、賢しい彼のことだから別の意味に捉えるかもしれない。あるいは単なるリクエストの一つとして捉えるかもしれない。いずれにしても彼に"重い"とかマイナスのイメージを持たれて仕舞わないか、些かの不安が包み込む)

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一旦、背後から失礼します!
悠と湊くんの関係は、ここら辺で1段階上に行くのが良いと思いますか? 此方としては、もう少し引っ張るのも良いかななんて思っているのですが、どう思いますか?

115: 宮村 湊 [×]
2025-10-29 13:04:29

……それなら、その信頼を裏切るわけにはいきませんね。

(やや食い気味に向けられた信頼に、応えたいと強く思った。冷徹で非情なだけが自分の本質の全てだと理解していたが、今は胸の内側に確かな熱があるのを感じる。最初から自分にあったものなのか、それとも彼に当てられたのかは分からないが、いずれにせよこの熱を見なかったことにはもう出来なかった。自分が彼に近づいた目的が任務だなどと彼に知られることがあれば、その後の自分の感情がどうであれ彼を深く傷付け、この信頼を裏切ってしまうことになる。それだけは避けなければならない。あらゆる手を尽くして、彼をその事実から遠ざけようという強い決意とともに、テーブルに置いたフォークに手をつけると、添えられていたガトーショコラに一口分の切込みを入れた)

マカロン、ですか?……もちろん、喜んで。

(ガトーショコラのほろ苦い濃厚な甘みを堪能していると、早速のリクエストを聞いて少し思考に邪念が混じる。バレンタインやホワイトデー、様々なイベントを仕事としてこなしてきた身としては、当然贈り物を選ぶ際にその贈り物が持つ意味合いについては深く吟味してきた。それ故にマカロンを贈ることが持つ意味を当然理解しているが、彼はそれを知ってて言っているのだろうか。友人や恋人には縁遠いと話していたため、単純にマカロンが好物である可能性も否定出来ず、一人悶々としてしまったが、すぐに笑顔に戻ると頷いて了承を示した。と言うのも、考えながら窺った彼の表情がわかりやすいほどに不安でいっぱいになっていたためだ。計算も駆け引きも彼の前では無意味だと肩の力が抜けたような気がして、カップに口を付けてコーヒーを一口飲んでから、事も無げにさらりと言葉を付け足した)

俺も作ろうと思ってましたから。悠さんに、マカロン。

─────────

お世話になっております。ご相談ありがとうございます!
そうですね、私もお互いに自分の感情に気付いてからくっつくまでのモダモダがもう少しあっても楽しいなぁと思います…!
展開としては次か、次の次会う時くらいで段階を進めるのが良いかと思いますがいかがでしょう?休日に二人で出かけたりする展開も入れてみても良いかな、と思っておりました!

116: 常葉 悠 [×]
2025-10-30 21:52:39

え、ああ、そうだったんですか。じゃあ……ちょうど良いですね。

(予想よりもあっさりと彼がマカロンを承諾してくれたので、自分の不安が杞憂だと安心する。安心した途端、何枚か残っているクッキーを一枚手に取り、口に運ぶ。口内に残った甘みをコーヒーでミックスする。マンデリン独自の苦味にクッキーの甘味がマッチして、大変に美味しい。そうしてまったりとティータイムを楽しんでいると、彼の付け足された言葉に動揺をする。作ろうと思っていたとはどういう意味だろうか。言葉通りなのか、それとも自分の意図を汲んでの返しなのか。意味深とも取れる発言に少しあたふたとしてしまうが、ここは素直に受け取るのがいいと思い、会話を続ける)

クッキーがこれだけ美味しいのですから、きっとマカロンも絶品なんでしょうね。どうやったらこんなに美味しくお菓子を作れるんです? なにか秘密があるんじゃないですか?

(クッキーを齧りながら、純粋な疑問をぶつけてみる。今までクッキーは個人店のオリジナルも、スーパーで売っているものも問わず様々口にしてきた。だがこんなにも美味しいものは食べたことがなかった。手作りを軽視するわけでは無いが、職業柄、既製品でも最近では専門店レベルの味を再現できる水準にまで達していることを知っている。低価格で高品質なものを作ることができるようになったことを知っている。だからこそ不思議なのだ。科学の粋を集めて作られたクッキーよりも、彼の手作りのクッキーの方が遥かに美味しく感じられることが)

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ご返信ありがとうございます!
そうですね、では次の次くらいに会った時に関係を進めることにしましょう!そして、その間に休日でお出かけの展開を入れましょうか!

117: 宮村 湊 [×]
2025-10-31 08:20:07

本当にお菓子作りは自分の趣味でやっていただけなので、他の人に食べてもらうのは初めてで……こんなに褒めて貰えるとは思っていませんでした。クッキーは何度か今までも焼いたことがあったので、焼く度に自分でレシピを少しずつ改良して……後はやっぱり、悠さんに差し上げるものだったのでいつもより丁寧に作りました、し。

(我ながら悪趣味とは思うものの、彼の慌てる反応を楽しむように密かに瞳を細めつつコーヒーに口をつける。お世辞抜きにクッキーを心から気に入ってくれたらしい彼からの質問に少し考えるように緩く首を捻った。個人の趣味の範疇からは出ていないため、特別なことをした覚えは無かったものの、考えられそうな要因についてぽつりぽつりと挙げながら、ふと思い至る───『隠し味は愛情』だとよく言うことに。が、それは言葉に出さないまま飲み込んで柔らかく微笑んだ。)

マカロンは、実は作るのが初めてなので、お店のものより美味しく出来るかと言われると少し不安がありますが……相手にとって不足なしです。楽しみにしていてくださいね。

(マカロンと言えば作るのが非常に難しいと言われている菓子のひとつである。手順の多くにおいて繊細な加減が求められ、分量通り混ぜて焼けば大体美味しく出来上がるクッキーと比較し格段に難易度が上がる。メレンゲクッキーを以前に焼いた際もメレンゲの泡立て不足や乾燥不足で何度か失敗を繰り返したことがあるが、マカロンは恐らくその比では無いだろう。難しければ難しいほど燃え上がる性格故に作りがいがありそうだと考えつつ、ガトーショコラを口に運んだ。そしてふと思い至ったように手を止めて相手を見詰めると、一瞬言葉にするのを躊躇するように唇を引き結んだものの、考え直したのかすぐにその唇を緩めて軽く首を傾げて)

…そうだ、俺からも一つ我儘言って良いですか?

─────────

かしこまりました!
それでは、次のお出かけは湊の方からお誘いさせて頂きますね…!
引き続きよろしくお願いいたします!(蹴可)

118: 常葉 悠 [×]
2025-10-31 21:13:56

君の作ったものならきっと美味しいと思いますので、楽しみにしていますね。

(結局クッキーの美味しさの秘密は経験と丁寧さとして納得することにした。シンプルな回答だが、このシンプルさが重要になることもある。大手会社では大量生産体制でお菓子を作るところが大半なので、機械が素早くクッキーを作ってくれる。最近では緻密な作業ができる機械なんて常識だが、人手と機械の緻密さは違う。きっと彼は手先が器用だから緻密にクッキーを作ることができたのだろう。そんな彼だからマカロン作りが未経験だと聞いても、マイナスイメージを抱くことはなかった。むしろ彼の作ったマカロンを初めて食べるのが自分だという事実が、気分を高揚させた)

我儘? なんですか。何でも言ってください。君のお願いならできる限り力になりますよ。

(マカロンに浮かれていると、唐突に彼から視線を感じた。何か言いたげに唇を動かしたので、続きを促そうとするも、その前に彼が口を開く。内容を聞いて今度はこちらが小首を傾げる番だった。改まって我儘とはなんだろうか。彼のことだから自分にとっては何の煩わしさもないことを我儘と形容しているのだと思うが、いずれにしても初めてのことだったので、キョトンとした顔を彼に向ける)

119: 宮村 湊 [×]
2025-10-31 22:49:58

…悠さんが忙しいのは重々承知の上なんですけど…今度休日が被ったら一緒にゆっくりお出かけしてみたいなって。

(促されるままに紡いだのは、本心からの我儘。今まで自分の心からの願望というものを口に出したことは一度もなかった。優先されるのは自分の感情ではなく任務ただ一点。口にする願望は全て任務を上手く運ぶためのものに過ぎない。彼は多忙な人だ。仕事で疲れている彼に、休日に一緒に出かけて欲しいなどと言うのはあまりに自分勝手な我儘かもしれない。もっと傍に居る時間が欲しい等と思うのは、自分の過ぎた願いであり、彼を困らせてしまう危険性すら孕んでいると理解していたのに。普段の自分ならば絶対口にしないような言葉が、彼といる時ばかり口を突いて出てきてしまう。それ程までに彼が自分にとって特別な存在となっていることは疑いようもない事実だった)

…悠さんと過ごす時間が凄く楽しくて、こうして夜会うだけじゃ物足りなく感じてしまって。あ、もちろん、無理強いをするつもりは全然ないので!…もし、良かったら。どこか少し遠いところに一緒に行ってみませんか?

(今までのどの時よりも慎重に言葉を選んだ。相手の返答を聞くまで、心臓の鼓動は早まったまま落ち着きそうにない。優しい彼のことなので、断るとしても無下にしたりしないだろうとは理解していたものの、こんなに緊張する誘いは経験したことがない。相手の様子を窺うようにちら、とそちらを見遣ると返事を待つように唇をきゅっと結んだ)

120: 常葉 悠 [×]
2025-11-02 19:53:45

……お出かけ、ですか。

(どんな我儘でも聞くと言ったが、まさか"お出かけがしたい"なんて言われるとは思わなかったので、返事に窮する。ぽつりと呟くように言うと、考え込む。自分の方に否はない。本当は今すぐにでも"行きましょう!"と言うべきなのだろうが、下手に返事をして後から都合が悪くなりましたでは彼に申し訳ない。だから今、頭の中でスケジュールを思い出している。今月は工場の視察や同企業の社長との会食が多い。また決済すべき案件も多い。労働基準監督署が真っ青になって止めに入るようなスケジュールで仕事をこなさなければならない。尤も自分には労働基準法は適用されないのだが。それにお出かけともなれば、一日フリーにしておく必要がある。食事程度ならば、その時間だけ抜け出すといったことも無理矢理ではあるができる。ベンチャー企業のエンジニア職がどの程度休みを取りやすいのかは、あまりピンとは来なかったが、いずれにしてもこちらが先に休みの日を申し出た方が、合わせやすいだろう。そう思ってあれこれと考える。そうして考えた結果、日程を変更できる会議がいくつかあることに気付く。優先順位の低い──もっといえば非効率で非生産的な会議だが──会議ならば、別にこの日でなくても良い。そしてその日までにあらかた決済を終えてしまえば、休日にすることができる。そして考えが固まり、彼に話そうと顔を上げた時には、彼の不安そうな表情が目に入り、しまったと思う。随分と長く無言の時間を作ってしまった気がする。彼にネガティブな想像をさせてしまっただろうかと後悔しながら、口を開く)

すみません、予定を思い出していて……ええと、三週間後の水曜日か、来月の第二火曜日であれば一日開けることができますが、どうですか。

121: 宮村 湊 [×]
2025-11-03 20:56:37

!…ありがとうございます、俺はどちらでも大丈夫なので、そしたら一応三週間後の水曜日で決定して、来月の第二火曜日を予備候補日にしておきましょう。もし都合が悪くなったらいつでも言ってくださいね、また日程を調整したら良いですから。

(返事を待つ時間は実際はほんの一分ほどだったのだろうが、永遠に感じるほど長く思われた。相手を困らせてしまっている気がして、やっぱり今のは無しで、と取り下げようと唇を開こうとしたその瞬間、返ってきた返事に思わず僅かに瞳を見開く。今の一瞬の内に、相当頭の中で予定を調整してくれていたのだろう。無理をさせてしまったのではないかという不安は過ったものの、それでも自分との時間を作ろうとしてくれた彼に対してこれ以上不安そうな素振りを見せるのは却って良くない気がして、謝罪の代わりに心から礼を告げた。そもそも本当は会社で働いているわけではない自分の方は幾らでも時間の融通を利かせることが出来たので、相手に負担をかけないようにそう付け加えると、漸く安心したように少しだけ頬を緩める。忙しい中彼が時間を空けてくれると言うのであれば、折角ならば彼が仕事のことを忘れて癒されるような、そんな時間にしたい。いつに無く真剣に計画を練らなければと心の奥底で決意を固めつつ、ガトーショコラの最後の一口を口に運び、ブラックコーヒーで口の中に広がった甘味をきっちりと締めた)

ご馳走様でした。コーヒー、すっごく美味しかったです。

122: 常葉 悠 [×]
2025-11-05 02:05:48

そうですね。ありがとうございます。日程変更しなくて良いように、頑張りますね……!

(自分の答えを聞いた途端に、彼の表情から不安が消えたのを見て一安心する。今度から考え込む前に一言差し挟むことにしよう。三週間後の水曜日。この日を良い日として迎えられるように、明日からの仕事は今まで以上にハードなスケジュールで、しかも効率的に熟さなければならない。今以上に疲労も溜まるし、食事や家事も疎かになるだろう。だが、そんなものは彼と同じ時間を共有することの喜びの前では塵も同じだった。今までの仕事は何のやり甲斐も、感動もなく、ただ単に自分に与えられた職責を全うしていた無味乾燥なものだった。だが今は違う。彼と一緒の時間を過ごすために乗り越えるべき壁に変わったのだ。壁はどんなことをしてでも乗り越える必要がある。例え自分のライフワークバランスが崩壊しようとも、彼と一緒に居れればそれで良い。自分の仕事に色が付いたのだ。具体的な計画は恐らく彼がやってくれるだろうが、不安は一切ない。彼と一緒ならばどんな場所でも構わない。もはや、自分は彼がいなくては生きられなくなっているのかもしれない)

お粗末さまでした。ふふ……君の作ったクッキーも美味しかったですよ。ありがとうございました。さて、帰りはどうしますか。タクシー、呼びますか?

("ご馳走様"彼の言葉が耳に入ると、胸がきゅうとした。コーヒーを飲み終わったら、もうここに彼がいる理由は無い。彼にも仕事があるだろうし、ここら辺で帰してあげるのが良いだろう。胸の中に広がる寂しさを押し殺して、口角を上げて彼にクッキーのお礼を述べる。と、ここで気になったことがある。来る時は自分とタクシーに乗ってきたから良いが、帰りはどうするのか。生憎自分は車を持っていない。彼の住まいは分からないが、駅まで歩いたとしても15分程度は掛かる。帰りまで想定して招くべきだったと後悔しながら、タクシーを呼ぶことを提案してみる)

123: 宮村 湊 [×]
2025-11-05 08:19:19

お口に合って本当に良かったです。あ、気候も悪くないので散歩がてら歩いて帰りますよ。またここに来れるように、道も覚えておきたいですし。あ、洗い物は任せてください。それだけやって帰ります。

(帰りの手段について深く考えてはいなかったものの、タクシーに乗っていた分数から推測するに、駅まではそう遠く離れていないのだろう。また彼の家を訪れることを信じて疑っていない様子でそう付け加えて朗らかな笑みを向けると、軽く腕まくりをしてテーブルの上の空になった食器を全てキッチンへと運ぶ。シンクに置かれていたドリッパーと共に2人分の食器を丁寧に、しかしながら手馴れた様子で手際よく洗うと、水切りにそれを綺麗に並べて濡れた手をタオルで拭いた。そうしていよいよ帰宅の時間が近づくと、今まで一切感じたことの無い、後ろ髪を引かれるようなモヤモヤとした感情に襲われて、それが"寂しさ"だと気づくまでには少々時間を要した。とは言え、それを口にしてこれ以上彼を困らせるわけにはいかない。部屋の端に置いていたバッグを手に取って彼の方へと視線を遣ると、静かに唇を結び、軽くその端を上げて微笑みを形づくる)

それじゃあ、俺はこれで。今日はすごく楽しかったです。…3週間後にまた会えるのを楽しみにしていますね!

(ひらりと軽く右手を振り、瞳を細める。離れ難く思う寂しさを、次の約束がほんの少しだけ補ってくれるような気がして、最後にそう付け加えた)

124: 常葉 悠 [×]
2025-11-06 23:48:41

(折角提案したタクシーだったが、彼は徒歩で帰るという。洗い物をしてくれている彼を見ながらぼうっと考える。徒歩15分。今の自分にとっては翌日が怖くなる数字だ。これが若さか。たった10歳違うだけで、こうも意識が変わるものか。10年前はバイタリティに溢れ、全能感が全身を覆っていた。終電まで酒を飲んでも、8時には出社し、問題なく仕事を熟すことができていた。当時はこの若さが永続するものだとばかり思っていたが、10年経っただけで消えた感がある。そして不意に彼の若さを目の当たりにすると、一つ疑問が生じる。彼は自分に好意を抱いてくれていて、そして自分も彼のことを好いている。だが自分と彼は釣り合うのだろうか。10歳の差は、こと色恋においてはかなり大きい。自分が20歳だった時、彼は小学生だったことになる。あまりに大きな年齢差を、彼は気にしないのだろうか)

……ええ。3週間後にまた。私も楽しみにしています。また何かあったら連絡してください。じゃあおやすみなさい。

(やや慣れないが手を振り返しながら、玄関で彼を見送る。扉が閉まり、完全に一人になると深く息を吐く。初めて人を家にあげ、コーヒーを振舞った。しかも相手は心から一緒にいたいと思える人。緊張したが充実した時間だった。だが一度考えてしまった不安事は瞬く間に思考を支配する。自分と彼の年齢差に彼は何も思っていないのだろうか。そもそも彼は本当に自分が好きなのか。自分の思い込みではないのか。理由も不明だから、特に恐れを抱いてしまう。3週間後の外出の時に、それとなく詮索してみようか。そんなことを考えながら、明日から効率的なハードワークをするため、出社の準備をする)

125: 宮村 湊 [×]
2025-11-07 00:40:37

……はい、計画は順調です。かなり警戒心が強いタイプのようなので、未だ情報を得られる段階にはありませんが、今日は家に招かれたので徐々に打ち解けてはいます。怪しまれないよう、今回の標的に関してはゆっくりと時間をかけて距離を縮めるプランで進める方針です。……また連絡します。

(帰り道、静かな路地を歩きながら報告の連絡を入れる頃には、その表情は再び能面のような無機質さへと様変わりしていた。嘘の報告をする経験はほぼ無かったが、この組織で得た演技力は組織に対して牙を剥く時でさえも変わらず、定例の報告をする声色に感情のひとつ滲まないようにすることは容易なことだった。これで暫くは時間稼ぎができるだろう。通話ボタンを押して電話を切りスマートフォンをポケットへと戻すと、到着した自室の部屋の鍵を片手で開き中へと体を滑り込ませた。仕事の方は、自分が上手く組織を欺けば良い。暫くはゆっくり任務を進めているという体で押し切って、それすらも難しくなってきた場合は、彼や彼の会社にインパクトの少ない情報を横流しにすることで時間を稼ぐつもりだ。今の自分にとっての大事は3週間後の彼との約束、ただ1点だった。バッグを部屋の隅に置いてすぐにシャワーを浴びつつ、先程の幸福な時間を思い出すと、無機質な表情が徐々に緩み人間らしさを取り戻していくのを感じる。誰かとの勝負に夢中になったのも、共に食卓を囲んで笑いあったのも、自分の作ったものを受け入れてもらったのも、自分のためにとコーヒーを淹れてもらったのも、その一つ一つが全て初めてのことで、自分を真人間に戻してくれるような錯覚にすら襲われた。彼以外のことに対しては依然冷淡な自分はきっと真人間になどなれないのだろうが、彼と居る時だけはそれを忘れられる気がする。シャワーの湯の温度だけではなく心の奥底の方から湧き上がるような温かさに頬を弛めつつ、脱衣所に戻るとタオルで水気を拭き取って清潔なパジャマに着替え、礼の連絡を彼に送ってからその日はすぐに眠りに就いた。翌日からは、3週間後に向けて様々な準備を行うことになった。彼の好きだというスイーツの店の調査、あまり遠すぎず日帰りで行くことが出来るような癒しスポット。所謂デートプランと書かれたページを参考にしながら、その言葉にややむず痒さを覚える。同時進行で菓子作りの腕を上げることにも余念は無い。マカロンをリクエストされた日からマカロンの猛特訓を繰り返しているせいで、日々の食事がマカロンだらけになっていたものの、練習の甲斐もあってか最初のうちはひび割れが入ったり表面に気泡が入ってしまったりして見栄えが宜しくなかったものが、いつの間にか店頭に並べられると自負できるほどの完成度まで変化していた。そんな日々を重ねている内に気付けば予定の前日まで時は進んでおり、彼の仕事の忙しさに懸念を抱きつつ翌日の待ち合わせ場所について連絡を送ることにした)

お疲れ様です。明日ですが、電車で40分ほどの距離にある駅まで出かけようと思っています。集合はいつもの駅でも良いですか?ご都合は大丈夫だったでしょうか…?……と。


126: 常葉 悠 [×]
2025-11-08 20:51:54

(彼と外出の約束を取り付けた翌日から、会社も自分も変わった。非効率で非生産的な会議をやめさせ、会議は絶対的に必要事項のみを議論することにした。従来の会議には役員たちの結束を強めるための雑談の時間も設けていたが、それを廃止し、会議の時間も縮小させることにした。この時点で役員たちは露骨に不満そうな態度を見せていたが、最も反対されたのは自分の労働時間だった。朝の4時から出社し、スケジュールの確認や決裁を求められている案件資料の読み込み、工場の視察や外部イベントへの出席、会食を済ませ、また会社に戻ってきて書類の読み込みを行い、日付が変わってから帰宅する。時には会社に泊まり込むこともある。自分が動けば、当然秘書も行動を共にする訳で、秘書のライフワークバランスを考えていないスケジュールだと非難された。だがおかげで稟議の決裁は従来よりも早く進み、会社としては多くの物事が動き出すようになった。少ない睡眠時間と過剰な労働。それが寿命を縮めていることや、他社員にまで皺寄せがいっていることは重々承知だが、全ては彼と充実した時間を過ごすためだった。あの甘美な時間を過ごせるのであれば、自分の身体を酷使することなど屁でもない。そんな過労死ラインギリギリを飛行しているかのようなスケジュールを続け、気が付けば外出前日になっていた。決裁も会議も万事乗り越え、早めに帰宅してコーヒーを飲んでいると彼から連絡が来ていた。仕事に忙殺され、すっかり連絡を取るのを忘れていたことを申し訳なく思いつつも、すぐに返信する)

仕事の方は順調に進みましたので、明日は無事に行くことができます。集合もいつもの駅で大丈夫です。……もっと明るい文面の方がいいか……?

(文面の明暗について5分程悩んだが、結局上記の文章を送信する。その後は集合時間などの事項を共有して、明日の外出への連絡を終える。連絡を終えると、遠足前日の小学生のように胸を踊らせながら、食事や入浴を済ませていそいそとベッドに潜り込む。日頃の疲労からか目を閉じてすぐに意識が無くなった。そして外出当日、集合時間の3時間前に起床すると、これまたいそいそと私服を選び、朝食を取り、家を出る。あまり早く行って待っていても彼に気を遣わせてしまうだろうから、いつもよりゆっくりと駅まで歩く。完全な休日で彼と会うのは初めてのことだから些か緊張する。特に自分は私服がシンプルだから、ネクタイで個性を出せるスーツ姿と比べると、没個性に思われてしまうのではないだろうか。こんなことなら白いTシャツにデニムではなく、もっと流行りの服を新調するべきだっただろうか。そんなことを考えながら歩みを進め、待ち合わせの時間の5分前に駅に到着する)

127: 宮村 湊 [×]
2025-11-08 22:35:42

(約束の当日。普段はラフな格好を意図的に選択する自分だったが、今日ばかりは服装選びに随分と難儀した。いつもの服装だと、最初に彼に会った時のように学生に間違えられることも多かったが、今日は歳上の彼と並んで歩くことを考慮して、少し大人っぽい服装をチョイスする。深めのチャコールグレーの開襟シャツはリヨセル地で少し光沢がある。オフホワイトのスラックスに裾をタックインして、黒の細いベルトでウエストを軽く絞った。胸元には細いシルバーのチェーンネックレスを忍ばせて、いつもは抜け感を出すためにしっかりとしたセットはしない髪も、今日は少しだけワックスをつけてふんわりと遊ばせた。普段よりは少し気合の入ったファッションで、しかし余り気取っては居ない絶妙なラインを目指した───つもりだ。全身鏡の前で入念にチェックをすること15分。今日という今日こそは彼よりも先に集合場所で待機しようと考えて、20分前から待ち合わせ場所で待機していた。その間もどこか気持ちは落ち着かず、今日のために計画したプランを何度も何度も読み返していたため、時間はあっという間に過ぎていく。約束の時間の5分前になって現れた彼の姿を発見し、スマートフォンをポケットにしまうと、小走りで彼の傍まで駆け寄り、笑顔で声を掛けた)

悠さん、こんにちは。お忙しいのに、今日はありがとうございます。私服、ラフなんですね。いつもスーツ姿を見ていたのでちょっと新鮮です。今日はレアな悠さんですね。

(彼の私服は普段の彼の姿から想像がつかないラフなもので、その自然体な姿に思わず頬が緩むのを感じる。休日に彼を独占しているという事実も、少しずつ気を許して貰っている事実も、どちらも喜ばしいことだ。何なら寝ぐせもそのままに会いに来てくれるくらい気を許して貰えたら良いのに、等と内心考えながら瞳を細めると、ゆっくりと駅構内から改札、そしてホームへと歩みを進め始めた)

少し遠出になってしまってすみません。折角なら静かでゆっくり出来る場所が良いかな、と思って。都心からちょっとだけ外れたところに水族館があって、抜群の癒しスポットって話題なんですよ。今日はそこに行こうと思っています。

128: 常葉 悠 [×]
2025-11-09 13:33:37

こんにちは。ふふ……新鮮でレアなのはお互い様ですよ。君のそういうファッション、初めて見ました。なんだか、綺麗ですね。

(彼と会話をしていると自然と口角が上がる。事前に思っていた不安も、彼の"新鮮"という一言と彼の私服に目を奪われたことで、すっかり消えてしまった。頭から足に至るまで、全てが洒落ていてフィクションの世界の住人かと錯覚してしまう。自分は一言で"綺麗"と形容したが、本当はそんな言葉では言い表せない程、エモーショナルな感情を彼のファッションに抱いていた)

水族館、ですか。いいですね……そういう所へ行くのは10年ぶりくらいですから楽しみです……!

(ホームに向かいながら彼の話を聞く。そして久しぶりに水族館なんて単語を聞くと、年甲斐もなくテンションが上がってきた。学生時代にほんの一瞬だけ付き合っていた恋人と行った唯一のデートスポットが水族館だった。彼が連れて行ってくれる所とは別の場所だろうが、学生時代の苦い記憶が一瞬、脳を過ぎる。今となっては取るに足らない思い出だが、当時はとても苦労したことを覚えている。そんな記憶がありながらテンションが上がったのは、偏に彼と一緒だからという理由があるからだろう。件の水族館は癒しスポットになっているとのことだが、彼と一緒ならばどんな場所も、自分にとっては癒しになるに違いない。ホームで暫く待っていると電車が滑り込んで来たので、他の乗客に続いて乗車する。電車が動き出すとゆるゆると首を動かして、隣の彼に話し掛ける)

色々計画してもらってありがとうございました。いやぁ……楽しみですね。今日行く水族館は行ったことあるんですか?

129: 宮村 湊 [×]
2025-11-09 16:56:23

……ありがとう、ございます。そんな風に言って貰えたら、一生懸命選んだ甲斐があったかも。
(昔から容姿を褒められることは多い方だった上に、今、彼は服装を褒めてくれたのだと頭では理解していたものの、何故だかそれが無性に嬉しく、そして同時にむず痒くてはにかんだような笑顔を浮かべて冗談交じりに言葉を返す。褒め言葉は珍しくもなかったのに、こんな気持ちになるのは初めてだ。思わず頬がゆるゆるになってしまいそうになるのを堪えつつホームへと上がると彼に続き電車へと乗り込んで、横並びに連続して空いている2つの席を見つけ、そこに腰掛けた)

いえ、俺の方から誘ったので当然ですよ。俺はこの水族館は初めてで……あ、でもしっかり調べてきました!

(顔にかかって視界を妨げる横毛を鬱陶しく感じて耳に掛けると、緩く首を横に振りつつ、相手の顔をちらっと窺い見る。無理やり誘ってしまっただろうかという不安が一瞬で吹き飛ぶほど、彼の表情は今まで見たどの時よりも明るく見えて、安堵したように小さく息を吐く。思い返せば、彼の家に上がった日から今日に至るまで、いついかなる時も彼のことが思考の中心にあった。同時進行で進めている他の案件の対象と出会っている時ですら考えているのは彼のことばかり。今まで生活の中心だった任務のことすら気付けば自分の中では隅の方へと追いやられていた。最早、彼の居ない生活は考えられない。そんなことを考えながら彼の横顔を見詰めて瞳を細める。漸く出逢えた、素の自分をさらけ出せる貴重な人。きっと後にも先にも彼が唯一だ。そんな重い感情を隠すように穏やかな微笑みへと表情を変化させ会話をつづけていれば、40分という移動時間すらあっという間に過ぎ去っていた)

あ、もう次の駅ですね。悠さんと居ると時間があっという間に過ぎますね…少し勿体ないくらい。駅からは歩いてすぐみたいですよ。

130: 常葉 悠 [×]
2025-11-09 22:42:29

(横毛が視界を妨げ邪魔なのか、それを振り払おうとする仕草すら愛おしく思う。その仕草を見て微笑みながら、彼の話に耳を傾ける。彼の一挙手一投足が自分の心を掻き乱す。かつて自分が、これ程までに他人に心を乱されたことはなかった。今までは自分に好意を持っているとして近付いてくる人間たちは、全員敵で警戒するべき相手という認識だった。自分と繋がることで何かしらの利益を得ようとする敵。そういう人間たちが見ているのは自分がもたらす利益で、自分という個人ではない。そういう人間の卑しさにうんざりしていた。だから色恋の気配を感じると、すぐに上辺だけの対応をしてきた。仮面を被って相手の好意をやり過ごしてきた。だが彼と出会ってからは違う。彼は純粋に自分のことを好いてくれているのだ。そこに何の打算も計算もない。自分から利益を引き出そうとして近付いてきているのではない。ようやく出会えた、素の自分をさらけ出せる貴重な子。きっと後にも先にも彼が唯一だろう)

そう言ってくれると嬉しいですが、ふふ、でも自分より10も離れている男と話すのは、苦労しません?

(彼と話しをしていると、既に次の駅で到着というところまで来ていたことに気付く。彼の言う通り、勿体ないくらいに早く過ぎてしまう。次の駅のアナウンスを聞きながら、ふと思っていたことを聞いてみる。本当はもっと佳境になってから聞くべきなのかもしれないが、我慢できずに聞いてしまった。別に彼の好意を疑っている訳ではない。だが10歳も年上の自分としては、年下の彼にどう思われているかが不安なのだ。彼のことだから正直なところを聞かせてくれるだろう。返事を待ちながら、電車が目的の駅に着いたため、席を立つ)

131: 宮村 湊 [×]
2025-11-10 12:39:06

え?ああ…いえ、話しづらいと思ったことは全く無くって。歳下の俺が言うのは烏滸がましいのかもしれないんですけど、良い意味で歳の差を感じないと言うか。今、言われて10歳差があったことを思い出したくらいですよ。

(駅を降りてからの水族館への道順を頭の中で描いていると、投げ掛けられた不意の問いかけに思わず目を丸くして相手を見詰めてしまう。釣られるように立ち上がり電車からホームへと降り立ち改札へと向かう道すがら、自分の考えを纏めて口にした。言葉に嘘偽りなく、自分の方は彼との歳の差を気にしたことがなかったが、彼は自分との歳の差を気にしているのだろうか。仕事の時はどれだけ年齢差があろうと相手を落とすことが任務であったし、どんな年齢の相手だとしても上手く取り入って距離を詰める能力には長けている自負があったので全く気にしたことが無かったが、世間一般的に見れば10歳差というのは大きいのかもしれない。それだけで彼の恋愛対象から外れてしまう、ということもあるのだろうか。途端に今まで感じたことの無いような不安と焦燥を感じ始め、改札を抜けると彼の隣を付かず離れずの距離で歩きながらちらりとその表情を窺うように見詰めた)

悠さんは…俺と、話しづらかったりします?10歳歳下の男って…………

132: 常葉 悠 [×]
2025-11-10 23:14:28

歳の差を感じない……なるほど。それは安心しました。はは、そうですか。歳の差を感じませんか。

(彼の言葉を一言一言噛み締めるように頷きながら繰り返す。一瞬彼が目を丸くしたことからも、この発言は偽らざる本音だということは明白だった。心から安心した。返事を聞くまで緊張で固まっていた足取りが、この上なく軽く感じられる。このままなら水族館まで、まるで鳥のように飛んでいけるような軽さだった。これから観に行くのは飛ぶ鳥とは真逆の、泳いでいる魚なのだが。と、軽やかな足取りで彼の歩調に合わせて歩いていたが、ふと彼から此方を窺うような視線が伸びているのを察知した。何か言いたいことがあるのかと彼の方を見ると、目が合った。そして不安げな声色での質問を受けて、しまったと思った。自分は無邪気に質問をしたが、それは彼にとっては余計な不安を抱かせる愚問だったことに漸く気付く。自分の発言で彼がどう思うのかについて、もっと考えを巡らせるべきだった。普段から他人に余計な詮索をされない為に、表情と発言には最大限気を付けており、プライベートでも気を付けていると思い込んでいた。だが彼の前ではそんな事をしなくても良いという甘えが、彼に無用な不安を抱かせることになってしまった。彼の疑問に対して、首を横に振りながら、慌てて言葉を告げる)

話し辛いと思ったことなんて、全くありませんよ! 10歳歳下の子とプライベートで話す機会なんて滅多にないので良い刺激にもなりますし。それに君となら、どんな話も楽しくできると思っています。

133: 宮村 湊 [×]
2025-11-11 08:31:17

…!…良かった。

(すぐに返された力強い言葉には嘘も偽りも無く、少なくとも年齢での足切りは無いようで、安堵したように柔らかな笑みを浮かべると短く息を落とした。そして、同時に彼の質問の意図に思い至る。自らの返答に対して酷く安堵したような様子を見せていた彼の姿が今の自分に重なり、彼もまた自分と同様の心配をしていた可能性が導出された。あまりに己に都合の良い解釈だろうか。それでも、その根拠も無い可能性に対してそうであれば良いと願ってしまわずには居られないほど、今の自分は彼に対して純粋に想いを寄せていた。駅から歩いてすぐというホームページの表示には嘘偽りは無く、程なくして水族館に行き着くと、平日ということもあってかごった返してはおらず、親子連れをメインに若いカップルや老夫婦の姿もちらほら見える程度だった。この分であれば中も混雑しているということはなく、比較的落ち着いてゆったり見て回れるだろう。予めホームページを読み込んで中の展示物についてしっかり押さえていたものの、念の為手近にあったパンフレットを手に取りぱらぱらと捲りながら内容に目を通す。後ろ表紙に記載されているイルカショーのタイムテーブルを見付けると、そっと隣の彼に距離を寄せて指で指し示して見せた)

イルカのショーがこの水族館の目玉みたいで……後で一緒に見に行きましょうね!

134: 常葉 悠 [×]
2025-11-12 22:27:15

イルカショーですか。楽しそうですね。絶対行きましょう!

(無用な心配を抱かせてしまうアクシデントはあったが、彼は自分の言葉で安心してくれたようだった。その様子を見て自分も安堵する。言葉は時として強力な武器になる。一つの失言で関係が壊れることはよくあることだ。折角築いた彼との関係は壊したくない。今後は発言にも気を付けなければと、身を引き締める。水族館は自分が思っていたよりも人が少なく、ゆったりとした時間を過ごせそうだった。彼の持っているパンフレットを隣から覗きながら、イルカショーの案内をまじまじと見つめる。普段からこういう場所に縁がなく、またイルカショー自体初めてなので、一体何をするのか想像できない。が、きっと面白いものが観られるのだろうと期待に胸を膨らませる。タイムテーブルを見ると、開催まで時間があるようだ。中の展示を見ながら時間を潰すことになるだろう。受付で料金を支払い、中へと足を踏み入れる。中は仄暗く、海の中を思わせる色をしていた。だが何より目を引いたのは大きな水槽だった。水槽の中には様々な魚が遊泳しており、本当に海の中にいるような感覚に陥りそうなくらい臨場感があった。自分の記憶の中の水族館とは大分異なるので、少々戸惑いを覚える。自分の記憶が曖昧なのか、この水族館が特異なのか。いずれにしても、10年振りに入場した水族館に、目を奪われてしまった)

湊くん……! ここはすごい場所ですね! 見たこともない魚がいっぱい泳いでいますよ!

135: 宮村 湊 [×]
2025-11-13 08:19:19

……ふ、あはは!ですね、ここの水槽は国内最大級だって書いてありました。迫力ありますよね~。

(相手に続き水族館の中へと足を踏み入れると、一際目を引くのが継ぎ目のない巨大なアクリルガラスを用いた大きな水槽、なるほどこれは人類の叡智の結晶だな、と感嘆しながらそれを眺めていると、隣から上がった無邪気な声に思わず瞳を丸めてそちらへ視線を滑らせるように移動させる。瞳を輝かせ純粋に水槽に目を奪われているその横顔があまりにも綺麗で、一瞬言葉を失った。すぐに込み上げてくる笑いをそのまま隠すことなく零すと、同意するように言葉を返しながら柔らかく目尻を下げる。彼と出会った日からいつもこうだ。彼の感情表現があまりにも真っ直ぐなので、気付けばつい自分もそれに引っ張られている。彼もまた、仕事から離れ肩の力が抜けている様子で、無理に時間を取って貰った自覚がある身としてはその様子に深い安堵を覚えた。漸く笑いが収まり小さく息を吐くと、巨大水槽の前まで歩みを進めて、自分の背丈の数倍ほどあるそれを見上げた。中には大小様々な魚が自由にゆったりと泳いでおり、その様子はただ眺めているだけで人間に癒しを齎す。他の誰かと水族館に来る時はほぼタスクとしてこなしている節があったので、まじまじと中を眺めるのは初めてで、中でも一際目を引く大きなジンベエザメを指さして、つい子供のようにはしゃいだ声を上げた)

見て、悠さん、あのサメすっごく大きい!あんなに大きくて強そうなのに周りの小魚を食べたりはしないんですね。凄いなあ……。

136: 常葉 悠 [×]
2025-11-13 23:04:22

(国内最大級という彼の言葉に得心がいく。やはりここは自分が想像するよりも、遥かに凄い水族館だったのだ。水槽の中を優雅に泳ぐ魚たちは、まるで各々の存在を見て見ぬふりをしているかのように他の魚に干渉せず、群れで泳いでいる。その中でいくつか単独で泳いでいる魚もいる。今までであれば、その単独で泳いでいる魚を、自分と重ねていたことだろう。だが今は、二匹で並んでゆっくりと泳いでいる魚に自分を重ねていた。忙しなく群れで泳いでいる魚達の傍を、二匹の魚は我関せずといった様子で遊泳している。周囲を気にすることなく、相手と時間を共有している。まさに今の自分と彼を象徴する光景だろう)

おお、ジンベエザメですね!実物は初めて見ましたが、大きいですね……!何かの本で読みましたが、ジンベエザメはプランクトンが主食のようですね。海水ごとプランクトンを飲み込み、海水だけをエラから排出して口の中に残ったプランクトンを食べているそうですよ。

(他の魚に目を奪われていたので、彼のはしゃぎ声で初めてジンベエザメの存在に気が付く。本や動画でしか見たことがなかったが、間近で実物を見ると、その巨体に目を見開く。咄嗟に本で読んだ雑学を披露してみたが、すぐに後悔する。こういった所で自分の知識をアピールしてしまうのは、営業の癖が抜けていない証拠だった。すぐに反省して、黙ってジンベエザメを眺める。きっと閉館までこの水槽の前にいても飽きないが、折角来たのだから、彼ともっと色々見て回らなければ損だろう。キョロキョロを辺りを見回すと、深海魚コーナーの案内看板を発見し、隣の彼に声を掛ける)

湊くん、あっちで深海魚の展示をしているみたいですよ。行ってみませんか?

137: 宮村 湊 [×]
2025-11-14 19:52:50

器用…………。

(声を上げてから自分があまりに子供地味た言葉を紡いでいたことに気づき羞恥心を感じていたものの、彼の説明を聞いている内に羞恥心は薄れ、純粋に感心したようにポツリと声を漏らす。しかし、途中まで少年のように瞳を輝かせて嬉々として説明をしていた彼の言葉が突然止まってしまったことに気づき不思議そうに視線をそちらへと移すと、その表情がやや曇っていることに気づいた。それを見て柔らかく瞳を細めると微笑みを浮かべながら唇を開く)

博識なんですね、悠さん。

(自分の前ではもっと彼らしいありのままの姿でいて欲しいと願ってしまうのは、やや出過ぎた願いだろうか。彼が見せるふとした時の力が抜けた笑顔が、はしゃぐ声が、その全てが自分は好きなのだから。口をついて出てしまいそうになるのを堪え、相手に促されるまま次のコーナーへと口の代わりに足を動かしていく)

良いですね、深海魚。俺、結構好きなんですよ。冷たくて暗い海の底でも生きてる魚が居るんだなって。すごい生命力ですよね。

(どんな環境に身を置いてもそこに適応して生き延びていく。光も差さない海の底で生きる深海魚を見ていると、親近感を感じるのか心が安らぐのを感じる。訪れた深海魚のコーナーの隅の方でじっと止まって動かない深海魚をぼんやりと眺めながら口元をゆるめた。忙しなく動く他の魚とは違い、深海魚の動きはゆっくりなので、釣られるように歩みもやや遅くなる。人も疎らなため、一つ一つの水槽をじっくりと観察しつつ、ふとひとつの小さな水槽の前で歩みを止めた)

あ、クリオネ。…へえ、こんなに小さくて可愛いのに水深600mのところで暮らしている子もいるんだ。なんだか、ちょっと意外ですね。

138: 常葉 悠 [×]
2025-11-16 00:48:50

("博識なんですね"なんて褒められると、照れから首を無言で横に振ったが悪い気はしなかった。自分としてはまずいと思っていたが、彼の表情や声の調子からして、それ程気にしている風ではないことが分かると安堵する。そしてふと気付く。自分は彼の前だと何かと不安になり過ぎている。自分の言動の一つ一つが彼を不快にさせないかと思い過ぎている。実際のところはきっと彼は寛大なはずなのに。あまりに度が過ぎた用心は自分も他人も傷付ける。そろそろ勇気を出す時かもしれない。そんなことを思いながら深海魚のコーナーへ足を進める)

不思議な生き物ですよねぇ……暗い世界で生きるというのはどういう気分なんでしょうね。

(彼の言葉に返事をしながら、まじまじと奇抜な見た目の深海魚達を見つめる。彼がこんなにも珍妙で奇怪な生態や姿をしている魚が好きだというのは些か意外に思ったが、ぼうっと見ていると分かる気がする。暫く深海魚コーナーを楽しんでいたが、ふと彼が何かに惹かれるように歩みを止めたので、視線を向ける。視線の先にはクリオネがいた。天使ともいわれる深海魚。実際泳いでいる姿は実に可愛らしい。クリオネに関してもいくつか聞きかじりの知識を持っていたので、試しに披露してみようか)

可愛いですねぇ。クリオネは流氷の天使と呼ばれているみたいですが、食事をする時は頭が割れて触手が出てくるので、その姿は"悪魔"と呼ばれていますね。ふふ……可愛いところは君に似ているなんて思いましたが、君は"悪魔"とは程遠い善人ですからね、クリオネと一緒にするのは失礼ですね。

139: 宮村 湊 [×]
2025-11-16 11:45:51

……あははっ、天使だなんて、買い被りすぎですよ。でも、ありがとうございます。

(先程のフォローは少しでも彼の肩の力を抜くことに成功したのか、再び知識を披露してくれるその様子を眺めて嬉しそうに瞳を細めて耳を傾けていたものの、自分の本質を突くようなクリオネの説明に、一瞬固まってしまった。"天使の皮を被った悪魔"。自分の所業が露見した相手に、かつてそう罵られたことがある。そもそも騙される方が悪いと思っていたのでその時は何も思わなかったが───もし、彼にそう罵られたら?考えるだけでズキン、と胸が痛む。自分を善人だと信じて疑わない様子の彼を見ていると、騙してはいない筈なのに騙してしまっているような心持ちになった。それでも純粋に褒めようとしてくれている彼まで不安な気持ちにはさせたくなくて、はにかんだような笑顔を浮べて人さし指で軽く頬を掻いてみせる。自分の本質は善人とは程遠い薄汚れた悪魔のようなものだとしても、少なくとも彼の前でだけは善人でありたい。彼の傷付く顔だけはどうしても見たくなかった。再びクリオネへと視線を移すと、相変わらず愛らしい容姿をしてふわふわと海中を漂っている。そっと視線を逸らすと、気持ちを切り替えるように歩き出し、道中様々な展示を眺めながら、気づいたら一度屋外のエリアへと出ていた)

悠さん、ちょうどいい時間なのでお昼にしますか?ご飯食べてからイルカショーに行ったら時間的にもちょうど良さそうですよ。

140: 常葉 悠 [×]
2025-11-16 23:18:42

(買い被りだなんて謙遜をする直前、彼の表情が凝固したのが目に入った。いきなり自分が披露した雑学の内容が気になったのか、それとも何か別の理由があったのか──詮索したい気持ちが頭を擡げてきたが、すぐにそれを振り払う。その部分は触れてはいけない気がした。理由を知れば意外と大したことの無いものかもしれない。だが彼が固まった理由を知っていけない。そこに踏み込むと良くないことが起きる。人生の経験値というよりかは、社会性を持つ人間としての本能がそう警告している気がした。だから彼の言葉に笑みを返して、思考に蓋をした)

ああ、もうお昼ですね。良い時間ですし、食事にしましょうか。

(彼からの食事の提案を受けて、身に付けていた腕時計に視線を落とす。時刻はランチに丁度良い時間を指していた。先程まではまだ10:00程度だったはずだが、時間の流れがかつてないほど早く感じられる。普段の激務よりも余程時間が短く感じられるというのは、一体どんな意地悪なのだろうか。彼の提案を諾うと、少し先のレストランに向かう。水族館本館の人混みを考えると、レストランの方も混雑しているとは考えづらい。そう見当を付けて向かったレストランは、予想通りの混み具合だった。それなりに客はいるが、平日のランチタイムにしては少ないといえる。入店すると難なくテーブル席に案内され、メニュー表に視線を遣るが、自分は優柔不断だ。先に彼にメニューを決めて貰った方がいいだろうと、メニュー表を彼の前に置いて告げる)

私は優柔不断ですから、湊くん先にどうぞ。

141: 宮村 湊 [×]
2025-11-17 18:50:14

わあ……結構種類があるんですね。子供向けから大人向けまで幅広く揃えられてますね。俺は……オムライスのドリンクセットにします。

(待ち時間も無く程よく空いているレストランに入り案内された席へと腰をかけると差し出されたメニューを手に取りパラパラとページを捲りながら一度中身を確認する。親子連れが多いからなのか、そのバリエーションはかなり多岐にわたっており、思わず休日の混雑時のキッチンの心配をしてしまう。そう時間を要することなく自分の分のメニューを決定するとぱたりと表紙を閉じて再び机の上へと置いて相手の前へと差し出した。ふと、息をつく間が出来て、思わず先程のやり取りのことが頭を過ぎる。咄嗟のことで最初の反応は素が出てしまったが、彼に見られては居なかっただろうか。深く追求されなかったということは、あの一瞬の表情に彼は気づかなったのか。薄暗い場所であったし、十分その可能性はある。そうだと信じたい。どの道確かめるすべもないのだ。モヤモヤとした感情を誤魔化すように笑みを浮かべると、眼前の相手へと再び視線を移し僅かに首を左へと傾げる)

優柔不断、なんですね。これだけあると迷っちゃいますよね。……あ、そうだ。じゃあ俺が決めましょうか。悠さんの食べたいもの当てゲーム。

(思い返すと確かに彼の家を訪れた日もコーヒー豆を選ぶ際に呼ばれたものだったか。あれも優柔不断ゆえなのだろうかと思うとどこか愛しく感じて思わず目許が緩む。じっくりと悩んでいる彼を眺めているのもそれはそれで楽しかったが、ふと思い至ったように提案をひとつ。恐らく早く選ばねばと焦ってしまうであろう彼への配慮だったのも確かだが、純粋に彼の好きそうなものを当てるのは面白そうだという気持ちも強く、反対側からメニューを眺めながら口元に弧を描いた)

まずは嫌いなものを選ばないようにしないと。悠さんが食べられないものはなんですか?どんな食べものが好みですか?

142: 常葉 悠 [×]
2025-11-17 22:43:40

食べられないものですか……。そうですね、この中だと……エビのサラダとかカニクリームコロッケとかがダメですかね。私、甲殻類アレルギーなんですよ。加工してあってもエキスが入っているとダメなんです。

(唐突にゲームなどと言うので、言われている意味を推し量るように目を瞬く。何をするのかと思ったが、どうやら一緒に料理を決めてくれるらしい。彼はとっくに決めているというのに、自分の優柔不断さのせいで時間を取らせて、申し訳ないと些か思ったが、彼と一緒に"ゲーム"ができるのが嬉しさを感じた。ページを繰り、メニュー表を眺めながら食べられないものを探す。そしてふと自分が甲殻類アレルギーであることを思い出す。しかも割と重度のアレルギーだ。なぜこんなに大事なことを今まで忘れていたのか。自分でも不思議だったが、考えてみれば、これまで他人と食事をする機会がなかったからに違いない。自分一人で食事を済ませることが殆どだったので、無意識のうちに甲殻類を使用していない料理を選んでいたのだろう。仕事柄会食は多いが、先方が気を利かせて甲殻類を全く使用しない店を選んだり、甲殻類を使わないコース料理を注文しておいてくれたりしているので、自分でアレルギーを自覚する瞬間はないに等しかった。思い出せて良かったと胸を撫で下ろす。彼との外出のおかげで思い出せた。仕事一筋の機械的な生活に、人間味が加わったようだった。誰も信じられず、交友を断ち切ったはずの自分が他者と交流し、社交的な営みをしている。彼のおかげで些かでも自分は変わることができた。その事実に胸が高揚する。食べられないものを申告した次は、好きな食べ物を考え始め、暫く悩んだ後に口を開く)

好きなものは……私は和食が好きですねぇ。洋食とかよりは和食の方を好んで食べるような気がしますね。

143: 宮村 湊 [×]
2025-11-17 23:25:05

アレルギーは気をつけないとですね…。アレルギー情報があるタイプのメニューで良かったです。

(苦手な食材を聞くつもりではあったものの、返って来たのはより重い内容で、左手を口元へと添えて真剣な表情でアレルギー情報へと視線を落とす。自らにはアレルギーは無いものの、食物アレルギーは命に関わる場合もあるため、用心しなければならないという知識はある。明らかに入っているものならば分かりやすいものの、練り込まれていたり、彼の言うとおりエキスが入っていたりするものはぱっと見では分かりづらいため、より神経を配る必要がある。好き嫌いよりも重要なその情報を知ることが出来て良かったと感じつつ、和食を好むという情報を思考に加えつつメニューをじっくりと眺め)

和食、美味しいですよね。作るのは手間がかかりますけど…その分ほっこりします。…ふふ、悠さんのこと、またひとつ知れました。

(甘いものが好きで、コーヒーが好きで和食が好き。甲殻類はダメ。徐々に彼に関する情報が自分の中でアップデートされて行く。良いように彼に取り入るためではない。純粋に彼に喜んでもらうために、彼を幸せにするために必要な情報だ。返ったらメモしておこうと考えながらメニューを眺めていると、ふとひとつのメニューが目に留まりページを捲る手が止まった。アレルギー情報をしっかりと確認するが、甲殻類の表記は無い。これならば、と提案するこちら側にも若干の緊張が走る。彼が気に入るものを選べているだろうか。自分が提案したゲームなのにこんなにも緊張するとは。少し思案したあと、決心したようにメニューを指さして)

これ、どうですか?マグロのちらし寿司セット。見た目も凄く華やかですし、小さいひじきの煮物の小鉢も付いてますよ!

144: 常葉 悠 [×]
2025-11-19 20:35:55

(どうして彼はこんなにも人懐こく笑うのだろう。自分のことを知れたと喜ぶ彼の表情を見て、そう思った。発言も表情も、全てが魅力的に思える。同時に自分も彼のことをもっと知りたいとも思った。これまであまり自分から彼のことを詮索しようとしなかったが、今度からはこちらから色々と質問をしたりしてみようか。この昼食をその機会にしてみよう。メニュー表のページを繰る彼をじっくり見つめながら、そう思い立つ)

これはいいですね! 湊くんのチョイスですから、きっと美味しいと思いますし。これにします。選んでくれてありがとう。

(彼が提案したメニューをじっくりと見つめる。確かに見た目も華やかで、美味しそうだ。何よりひじきの小鉢が嬉しい。ここ最近は肉を食べる機会が多かったので、久しぶりの海鮮に胃袋をくすぐられた。だがそれより何より彼が薦めてくれたものだからというのが最大のポイントだった。迷うことなく快諾すると、呼び出しボタンを押して店員を呼ぶ。オーダーに来た店員に彼の注文──セットのドリンクは彼に任せたが──を言い、自分の注文を言い渡す。店員が去り、料理の到着を待つだけの時間になると、メニュー表を片付けながら彼に問掛ける)

湊くんは、どういう料理が好きですか? オムライス頼んでましたが、好きなんですか?

145: 宮村 湊 [×]
2025-11-20 17:26:15

あはは、気に入って貰えて良かったです。……俺の好きな料理ですか?そうですね……

(自分の決めたメニューに対する相手の反応が肯定的だったことに安堵して気が抜けたように笑っていると、不意に自らへと返された質問に咄嗟に解答が出て来ず、考えるように軽く首を傾ける。今までもこの類の質問をされたことがなかった訳では無いが、返す答えは全て任務を円滑に行うようにするためのものだった。それは相手によるものの、相手の好きな物に寄せたり、あるいは意外性を持たせたり。自分の本当の好きな物ではなく、都合が良い物を答えていたので、本当の意味で自分が好きなものについては、実際のところそこまで深く考えたことがなかったことに気づく。"宮村湊"では無く、"自分"は何が好きなのか。よく考えると、彼の言う通り、無意識のうちにオムライスは注文することが多かった、かもしれない。オムライスという料理は、それぞれの店の個性が出る。卵ひとつとっても固めな店、ふわふわな店、半熟の店とあり、かけてあるソースもデミグラスの場合もあればシンプルにケチャップのパターンもある。家で料理をする時も、割と簡単に作れることもあってか、他のメニューに比して作る回数が多かった。そこまで考えてから、小さく、あ、と声を零す。他の料理に対してここまで色々と考えたことは無い。そうか、これが"好き"ということなのかもしれない。)

…好きです、オムライス。店によって色んなバリエーションがあって飽きなくて。卵でクルッと巻かれてるタイプの、ケチャップが掛かってる、割とスタンダードなやつとか特に好きで。

(自分の内面を晒しているような感覚が未だ慣れなくて、少しこそばゆさを感じたものの、話し始めると存外にすんなりと言葉が出てきた。素の自分を出さないことを徹底していた自分にとっては全てが新鮮だ。しかし、決して悪い気分ではなく寧ろ───彼に本当の自分を少しずつ知っていって欲しいと思わずには居られなかった。作り物の自分ではなく、本当の自分のまま対峙したい唯一の人。それこそが彼なのだから。そこまで言い終えた時、ウエイターが料理を運んできたため、一度そちらへと意識が逸れる。自らの前に置かれたオムライスからは美味しそうな香りと共に湯気が立っていて、食欲をそそるには十分だった)

そうそう、ちょうどここのオムライスが正に王道って感じで………やっぱりすっごく美味しそうです!

146: 常葉 悠 [×]
2025-11-21 20:19:41

確かにオムライスには、色々な形がありますね。色々食べても、やはり最後にはスタンダードが一番になるんでしょうね。

(少しの空白の後、オムライスが好きと彼は言った。しかも形まで教えてくれた。きっとこれまで様々な種類のオムライスを食べてきたのだろう。王道はやはり王道。シンプルなものほど、他を寄せ付けない魅力を持っている。自分にもいくつか覚えがある。どんなに良い物を食べても、結局はシンプルな料理に惹かれるのだ。そこでふと思った。彼は普段どのような物を食べているのだろう。ベンチャー企業のエンジニアというのはどのくらいの収入で、彼の生活レベルはどのくらいなのだろうか。次々と知りたいことが湧き出てくるが、詮索する前にウェイターの方が早かった)

ふふ……湊くんはシンプルなオムライスが好きなんですね。覚えておきます。

(目の前に料理が運ばれてくると、手を付ける前に彼に一言告げる。"覚えておく"と意思表示したのは、君に興味があるということをアピールするためだった。高校時代に友人に言われたことがある。他人に興味が無さそうに見える、と。その時は何とも思わなかったが、彼にそういう風に思われたくない。予防線を貼った後に、彼がおすすめしてくれたマグロのちらし寿司に箸をつける。一口、口に運ぶとマグロや酢飯の旨味が溢れてきた。特にマグロは新鮮そのもので、水族館のメニューだけある)

湊くんおすすめのちらし寿司、とっても美味しいですよ!

147: 宮村 湊 [×]
2025-11-22 20:01:14

(覚えておくという彼の言葉に、オムライスへ落としていた視線を思わず上げて眼前の彼を見つめた。興味の無い人間の好きなものなど覚えても仕方が無い。彼がわざわざ"覚えておく"と伝えてくれたのは、期待してもいいのだろうか。心臓が高鳴るのを感じつつそのまま彼を見詰めていると、自らが指定したちらし寿司を頬張り無邪気な笑みを零す相手の姿が視界に入った。自分の選択はどうやら誤りでは無かったらしい。思わずほっと安堵の息を零しつつ、美味しいと伝えてくるその様子に愛しさが溢れ静かに瞳を細めた)

…良かった。悠さんのお口に合ったみたいで。俺も、いただきます。

(軽く手を合わせてからスプーンを握ると、自らも目の前のオムライスを1口ほどすくって口へと運んだ。卵にはしっかりと火が通っていて、中のトマトライス部分は甘みと酸味が絶妙にマッチしている。どちらかと言うと子供向け寄りのメニューかもしれないが、やはりシンプルでとても美味しい。中にゴロゴロと混ざっている鶏肉も柔らかく、噛み締めるように咀嚼すると幸せそうに一度小さく息を吐いた)

ん…こっちも凄く美味しいです!水族館の中のレストランと言うと出来合いのようなイメージが強かったんですが、ちゃんとひとつひとつ丁寧に調理されてるんですね。…俺、悠さんとご飯を食べてると、普段より美味しく感じるんですよ。

(ぽろりと、本音が漏れる。少しずつ、少しずつ、彼への好意を感謝と共に伝えていきたい。二口目、三口目と口に運びながら相手の反応を窺うようにちら、と視線を軽く上げた)

148: 常葉 悠 [×]
2025-11-22 23:12:12

んぇ……? あ、ああ、そうですか。それは……嬉しいですね。

(彼の何気ない一言に思わず顔を上げて反応してしまった。しかも間の抜けた声と共に。一瞬、おわれた意味が理解できなかったが、"そういうこと"だと理解すると、間の抜けた声で応答してしまった羞恥心と、彼にそんな風に言ってもらえた嬉しさにより、アタフタとしながらも返事をする。10も歳上なのにスマートに返事の一つもできなかった自分を恨みながら、恥ずかしさを紛らわせるように小鉢からひじきを摘む。そこからはもう無言で、ただひたすらに箸を動かすことしかできなかった。まるで授業中の失敗を気にして周りと目を合わせないようにしている中学生かのように、彼の方を向くこともできずにちらし寿司を口に運ぶ。相変わらずちらし寿司は美味い。だが敏感に味を感じ取れるほど、今の自分には余裕がなかった。30過ぎてこんな稚拙な対応しかできない自分が情けなくて仕方ない。普段ならばもっと円滑に解決できるはずだが、彼絡みのこととなると途端にどうしたらいいか分からなくなってしまう。自分の頭はポンコツになってしまうようだ。そうして黙々とちらし寿司とひじきを平らげてしまうと、お冷を一瞬で飲み干し、コップを机に置いて呟く)

……美味しかったですね。その……私も同じように思っていましたよ。君と食べると、美味しく感じると。

149: 宮村 湊 [×]
2025-11-23 09:19:32

(焦りと誤魔化しの混在した反応を見せる彼の様子を見て、自分の意図するところが伝わったのだと確信すると、口元に引かれた笑みをより深いものに変えて、黙々と食事を食べ進める彼を眺めつつ、それ以上言葉を掛けることは無くオムライスを口へと運んでいく。どこか初心にも見えるその反応のいじらしさに愛でたくなる気持ちをぐっと堪え、その代わりに咀嚼を繰り返した。そうして食べ進めたオムライスの最後の一口へと運んだ正にその時、先に食べ終えた相手から告げられた言葉にその動きがぴたりと止まる。彼は確かに自分の言葉の意図するところを理解していたはずだ。その上でこの言葉を返していたということは、つまり。そこまで考えた瞬間、一気に顔に熱が集中するのを感じる。少しの間スプーンを片手に固まっていたものの、内から溢れるような幸福感に自然と瞳を細め笑顔を浮かべながらオムライスを噛み締めるように咀嚼してから一度大きく頷いた)

あはは、良かった。……そろそろちょうどイルカショーの時間みたいですし、行きましょうか。

(コップに残ったお冷を飲み干し、紙ナプキンで軽く口元を拭いてから再びパンフレットを取り出しイルカショーのタイムテーブルを眺めると、30分後から始まる回を発見した。ここから移動することも考えれば、タイミング的にはちょうど良いだろう。彼にも見えるようにパンフレットを指し示しながら徐に椅子から立ち上がった)

150: 常葉 悠 [×]
2025-11-23 18:33:57

ああ、もうそんな時間ですか。じゃあ行きましょう。

(言われて思い出した。この後イルカショーが控えているのだった。先程の失態による羞恥心のせいで、大事なイベントがすっかり頭から抜けてしまっていた。彼が見せてくれたパンフレットと時計を確認すると、確かにもうすぐ始まる。ゆっくりと席を立つと、手早く会計を済ませレストランを後にする。それなりに腹が満たされると、先程の失態を引きずるよりも彼と一緒にイルカショーを楽しんだ方がいい、と幾分かポジティブな思考ができるようになった。イルカショーが行われる会場へ向かう道すがら、隣を歩く彼へ話し掛ける)

イルカショーなんて初めて観ます。イルカは賢い哺乳類といいますが、どういうショーを見せてくれるんでしょうね。

(動物を使ったショーは、サーカスぐらいしか見た事がない。イルカは哺乳類とはいえ、海中に住む動物だ。そんな動物を使って一体どのような催しをするのか。初めての体験に胸を躍らせる。やがて歩いているとイルカショーを行う会場に着いた。会場は既に入場を許可しており、それなりに人が入っていくのが見えた。入口から中へ入ると、想像よりも会場が広く思わずキョロキョロと辺りを見回してしまう。そしてショーを行うであろう水槽と客席の距離が近いのが気になった。これでは水が掛かってしまうにではないだろうか。見たことがないから何とも言えないが、これが標準的な距離なのだろうか。とりあえず真ん中くらいがいいのかもしれないと思い、近過ぎず遠過ぎずの位置にある客席に腰掛ける)

151: 宮村 湊 [×]
2025-11-25 00:23:29

あれ、悠さん、イルカショー初めてなんですか?すごく利口ですよ、トレーナーさんの指示に従って芸を披露するんです。それにビックリするくらいかなり高く飛ぶので……でも、ここなら水飛沫の心配は無さそうですね。

(先を進む彼に続くような形で会場内へと入ると、さすがに人気の催しであるだけあって、親子連れを中心に会場内は多くの人で賑わっていた。水で濡れる可能性が高い席と濡れない席はベンチの色が分かれており、彼が選んだ席は水がかかる席の最後尾から三列ほど後ろの席だったので、余程上振れが無い限りはこちらまで水が飛んでくることは無いだろう。開演時間が近づくにつれて次第に席は満席になり、座りきれなかった人は最後方で立ち見をするほどの賑わいになっているようだった)

見てのお楽しみですね。あ、もう始まりますよ。

(会場内に警戒な音楽が流れ始め、トレーナーらしき女性が複数人ステージへと上がると、水中に合図を出す。瞬間、イルカがその合図に従って軽快に泳いでいくのが見えた。最初は簡単な技から、軽く飛んで頭上にぶら下げられたボールを軽く突いたり、タイミングを揃えて3匹のイルカが飛び跳ねたり。芸を成功させる度に褒美として餌を与えられているイルカを見て───よく飼い慣らされているな、と思った。与えられた指示に従い、報酬を得る。そうすることで自然の中での競争を経験することもなく餌を得られるのだから、当然と言えば当然かもしれない。しかし、イルカの姿はそれでもどこか楽しげに映った。狭い水槽の中で、人間の指示に従ってパフォーマンスをしているのに、その泳ぎはどこまでも自由で、くるりと回転しながら高くジャンプをするその姿が眩しく見える。無意識下で口元を軽く緩めながら、隣の彼は楽しめているだろうかとちらりと静かに視線を送った)

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