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冒険者ギルドの日常/712


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711: クレア/ルミナ [×]
2025-05-14 00:29:32

過去編「最後の命令」

毎日毎日ご苦労なことねぇ。そんなに書類との睨めっこは楽しいかしら?

ハァ…断じて好きでやっている訳ではありません。

(場所は騎士団の執務室。机の上に山のように積み上がった書類の向こうからニマニマとクレアの顔を楽しそうに覗き込んでいるのはルミナ・シャルロッテ・フィリア、この国の第一王女だ。騎士団の実情を知った上で投げかけられた意地悪な質問に、クレアはジト目と溜め息で返す。)

ふふっ、そうでしょうね。ごめんなさい、貴方のその顔を見たかっただけなのよ。悪気はないわ。

それを悪気と言うんです…まったく…そんなことよりも、このような場所で暇を持て余していて良いのですか?明日には王国を発つと伺っておりますが。

(普段は聡明で慈愛に満ちた王女として振舞っているルミナだが、クレアには二人きりになった際に偶にこうしてちょっぴり意地悪な冗談を言ったり友達のような距離感で接している。態度には出さないものの、騎士団に入ってから周囲を中高年に囲まれていたクレアにとってこの関係は束の間の休息のような尊いものであった。しかし、そんな関係も今日でお終いだ。王位継承権争いで白旗を揚げたルミナは他国の王家に嫁ぐこととなり、いよいよ明日にはこの国を発つ。)

他の用は済ませてあるわ。私を支持してくれた人間の所は全て回ったし、最後に私の騎士様とお話をしておきたくて此処に来たの。

最後が私…ですか。なんだか申し訳ないような…

私が決めたんだから文句ないでしょ…!素直に喜びなさい!

えーと…こ、光栄です…

(第一王女の派閥には現職の大臣や騎士団長など錚々たる面子が名を連ねている。それらを差し置いていとまの挨拶回りの大トリを飾るのが自分であることを忍びなく思ったクレアは困り顔で頬を掻いたが、その様子を見てルミナはプクッと頬を膨らませて喝を入れた。勿論、最後に自分が選ばれたことをクレアも本心から嬉しく思ってはいるが、縦社会である騎士団に属している性から、困り顔のままなんとも締まらない様子で「光栄です」と述べるに留めた。)

分かればよろしい。………それで、最後だから…改めて貴方に謝るわ。私を信じて着いてきてくれたのに、このような選択をしてしまいごめんなさい…どんな罵倒も受け入れるわ。好きに罵ってちょうだい…

(一応はクレアが自分の順番を受け入れたことを確認すると一呼吸置いて、おちゃらけた態度から一転してルミナは神妙な面持ちで頭を下げた。これから先、第一王子が王位に就くことになれば、かつて自身を支持していた者達は不穏分子として冷遇されることであろう。王族が頭を下げる意味は重く、己が心の弱さ故に王位継承権を放棄し、多くの従者の期待を裏切り未来を奪ったことに対する誠心誠意のケジメであった。明日には追放され、もはや何の権力も持たぬ身。罵倒で済むとは思っていない…殴られる覚悟で頭を下げたルミナであったが、クレアの口からは予想外の言葉が紡がれた。)

……どうか頭をお上げください。怒りなど抱いている筈もありません。ルミナ様に忠誠を誓ってから三年、貴方様と過ごした時間は私にとって心の支えも同然でした。腐らずに今の地位まで登りつめられたのも全て貴方様のお陰なのです。だからどうか、これ以上ご自身を責めないでください。

そう……やっぱり私の騎士様は優しいのね。ありがとう…

(クレアは照れくさそうに頬を赤く染めてルミナに対する自らの心情を語る。若くして高位の騎士にまで登りつめたクレアの心労は計り知れないもので、今までに何度も心が折れそうになった。けれど、その都度冗談交じりに気さくに接してくれたルミナのお陰で正気を保てていたことは紛れもない事実であり、そういった胸の内を全て曝け出す頃にはクレアは柄にもなく柔らかくも温かい、そんな笑みを浮かべていた。初めて見るクレアの表情と明かされた心情にルミナは思わず涙を流すと、暫しの後に顔を上げ、袖で涙を拭いながら「ありがとう」と心からの感謝を告げる。)

礼を言うべきは私の方ですよ。それに…人生に於いては時に逃げることを選ぶ必要に駆られることもあるでしょう…なにも常に勇ましく在ることが正しいとは限りませんから。

そうかもしれないわね…ただ、貴方のその言葉はまるで自分に掛けてほしいようにも思えたわ。

そ、それは……

(ルミナの選択を肯定する意味で、逃げることも人生に於いて必要なことだと説くクレアであったが、この言葉は自分に言い聞かせたものでもある。今までルミナの存在で首の皮一枚で繋がっていたものの、高位の騎士としての重圧はゆっくりと確実にクレアを蝕んでいた。それを見透かしていたルミナの指摘にクレアは言葉を詰まらせ視線を逸らした。)

ふふっ、じゃあ私からの最後の命令よ。心の底から辛くてどうにも立ち行かなくなったなら、その時は逃げなさい。私はもう自分の命令に責任を持てる立場にいないけれど、そうね…もし貴方が逃げた先の未来で後悔することがあれば、せめて恨まれてあげるわ。

ふっ…あははっ…もう、なんですかそれは。まあでも…そのご命令、然と賜りました。貴方が老いて亡くなるまで精一杯恨ませていただきますからね。

(最後は本調子でと言ったところか、ルミナは不敵に微笑むとなんとも風変わりな命令を下した。辛くなったら逃げてもいい、後悔したら好きなだけ恨めと滅茶苦茶な内容であったが、その命令はクレアのツボを捉えたらしく、クレアは口元を抑えて笑い声をあげた。この命令を実行に移すことがあるかはまだ分からない。けれど、今日を思い出せばしばらく頑張れそうだ…なんて思いつつ、クレアは緩んだ表情のまま丁寧な仕草で胸に手を添えて命令を賜った。)

最後に貴方のそんな顔を見れて良かったわ。それじゃ達者でね、私の騎士様。

ご武運を祈ります、私のお姫様。

(最後にはお互いに憑き物が取れたような、屈託のない笑顔ではなむけの言葉を送りあった。お互いの未来がより良いものであることを信じて…)

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