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冒険者ギルドの日常/1035


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1016: ザルヴァド・レティシア [×]
2025-10-07 07:39:47

過去編「戦場の花嫁」

(政変から半年、共和制へと移行した反動でフリード共和国の国内情勢は混迷を極めていた。噴出した国民の不満を外へ向けるべく「王家に弾圧されている民衆の保護」なんていう大層な建前を掲げ、共和国首脳部が王国に対し宣戦布告を宣言したのがつい三日前である。初日こそ不意打ちじみた侵攻で優位に立っていたが、やはり兵力・経済力ともに勝る王国に分があり、たったの数日で共和国軍は王国の地を追いやられ、逆に越境される始末であった。そして今まさしく、ザルヴァド・ライデン率いる一団が国境付近の共和国の地方都市「ヴァルモン」を包囲していた。)

ハァ…いつかはこうなるとは思ってましたが、案外早かったですね。

始まってしまったものは仕方あるまい。我々がすることはただ一つ、勝利を決定的なものとして敵の戦意を挫くだけだ。

(都市を一望できる丘の上で、ザルヴァドと副官は攻撃準備が整うまでの間雑談に興じていた。ヴァルモンの街並みは辺境の都市ということもあり閑散としており、聖教会の立てた一際大きな教会だけが異様な存在感を放っている。今回の戦に聖教国は中立を表明しているが警戒するに越したことはない。介入の口実を作らない為にも教会への被害を最小限に抑えるべきだろうと、雑談の傍らにザルヴァドが作戦を思案していると、風に乗せられて、耳触りの良い鈴のような声色の歌が聞こえてきた。古代語で紡がれるその歌が何を意味しているかはまるで分からないが、不思議と耳をすまさずにはいられない魅力が感じられる。名残惜しくも歌声が聞こえなくなった頃、上空に都市を覆う程に巨大な魔法陣が現れ、そこでようやくその場の全員が、歌の正体が魔法の詠唱であったことに気付かされた。)

伏せろッ…!

(ザルヴァドは叫ぶ。それと同時に魔法陣から剣を模した光の雨が降り注ぎ、都市諸共王国の軍勢を一掃した。攻撃が止み、舞い上がった砂塵が落ち着いた頃に姿を見せたのは瓦礫の山と化した都市と、無数の死体と負傷者。今この都市周辺で立っているのは二人だけ、並外れた反射神経で攻撃を躱したザルヴァドと、崩れた教会の中から姿を現した女の司教。魔法の発動者は此奴に違いない…そう確信すると、少なくない仲間を失った怒りに拳を握り締めて司教を睨み付け、司教もまたこちらに気が付いたのか振り返ってザルヴァドに視線を向けた。その瞬間ザルヴァドの中の怒りは消え去り、代わって初めて抱く感情を自覚する。神々しさすら感じる白い祭服に同系色の白髪。日差しを遮る建物が全て倒壊したことでそれらは一層輝いて見えた。「天使が…舞い降りた…」そう呟くと、ザルヴァドは丘を下り、一心不乱に彼女目掛けて走った。なぜ教会が攻撃に踏み切ったのか、本国の意思が働いているのか、考えるべきことは山ほどあるのだが、今はそんなものはどうでもいい。ただ彼女と言葉を交わしたい。溢れんばかりの気持ちを胸に、ものの数十秒で教会の跡地に辿り着くと、ついに二人は対峙することとなる。)

まだ動ける人間がいたとは…恐れ入りました。王国の野蛮人ともなると生命力もお強いのですね。

結婚しよう。

(仕立ての良い祭服に、身に纏う魔力の性質。彼女こそがこの国の枢機卿であることをザルヴァドは一目で見抜くが一切動じることはない。しばらくの見つめ合いの末、先に口を開いたのは枢機卿ことレティシアであった。穏やかな口調とは裏腹に、心底軽蔑した眼差しを向けて皮肉交じりの賞賛を述べる。彼女は聖教の信徒である前に一人の共和国人であり、王国へ恨みや偏見を抱いているのは当然であろう。今回聖教国の意思に反して攻撃に踏み切ったのも彼女の独断であった。そんな敵愾心丸出しのレティシアを前にして、ザルヴァドは片膝を着き、真剣な面持ちで衝撃の一言を放つ。)

……え?は…?い、意味が分かりません…!なぜそうなるのですか…!?

結婚とは男女が生涯を共にする契りを交わすことで…

そんなことは知っています!そういうことではなくてっ!今しがた私は貴方の仲間を大勢手にかけました。そんな相手に求婚するなどとても正気とは思えません!

(初対面、敵同士、それも第一声でプロポーズするなど正気の沙汰ではない。ある種の狂気すら感じる行動を前に枢機卿たる威厳はどこへやら、レティシアはすっかりたじたじになっていた。意味が分からないという言葉を文字通り受け取ったザルヴァドは表情を変えず淡々と結婚の意味を説明するが、彼女が言いたいのは当然そういうことではない。首をぶんぶんと振って、仲間の仇に結婚を申し込むなど有り得ないと、至極真っ当なツッコミを入れた。)

ならば失った命の数だけお前が産めばいいだろう。

なっ…!?そんなに産めるわけないじゃないですか!野蛮人は発想も野蛮なのですねっ!私の身体が目当てなんですかっ…!?

一目惚れだからな、突き詰めればそうなる。で、何人なら産めるんだ?

二人くらいなら…って何を言わせるのですか!そもそも私の純潔は神に捧げるものであって、断じて貴方などに…

そうか…じゃあ信仰を捨てろ、そして結婚しよう。これで解決だな。

(尚もザルヴァドは臆することなく常軌を逸した発言を続ける。奪った命の数だけお前が産めなど、到底まともな倫理観を持った人間からは出ない言葉であろう。恋は盲目と言うが、ここまで来ると狂信の域である。狂信者と狂信者、後のおしどり夫婦なのだから皮肉にもこの時点で既に相性は良かったと言える。ザルヴァドが運命を感じたのも必然であった。瓦礫と死傷者が散乱する凄惨な戦場の真ん中で、その場に似つかわしくない漫才はしばらく続いた。)

あぁ…もうっ!埒が明きません。分かりました…どうせ今日が貴方の命日となるのです。その戯言を聞き入れましょう。貴方が勝てたらですけどねッ…!

(どこまで行っても平行線…というよりは話が通じないことに痺れを切らしたレティシアは実力行使に打って出た。元より王国の軍勢など一人とて生かすつもりはなかったのだ。戯言など適当に流して最初からこうすれば良かったと、無駄な時間を浪費したことに苛立ちを感じながら無詠唱で魔法を放つ。先程の大魔法の簡易版、しかし規模こそ小さいとは言え数百の光の剣がノータイムでザルヴァドに降り注いだ。並の人間であれば為す術なく細切れになることであろう。枢機卿たる超越者にのみ許された理不尽。レティシアは勝利を確信して微笑んだ。舞い上がった砂塵が次第に落ち着きを取り戻し、その先には肉塊…となっている筈のザルヴァドがなんの気なしに立っていた。手には剣が握られており、それは即ち数百発の光の速さの攻撃を全て見切った上で捌いたことを意味する。その現実を見てレティシアは「は…?」と再び間の抜けた困惑の声を漏らす。)

話が早くて助かる。では、次は俺の番だな。

…ちょっ…まっ……うぐっ…!

(勝てば結婚。随分とシンプルに話が纏まったものだと、ザルヴァドの脳内は歓喜に支配されていた。口角を二ッと吊り上げ、ここで初めて笑顔を見せる。まるで獲物を前にした捕食者のような顔に、レティシアは恐怖して半歩後退った。ザルヴァドは傷付けることなく花嫁を迎える為に剣を鞘に収めると、瞬く間に距離を詰め彼女の腹に目掛けて拳を突き出す。これにさすが枢機卿、未だたじろいでいるもののしっかり攻撃に間に合わせ、生み出した魔力障壁で攻撃を受け止める。しかし、既に大魔法の発動で相当量の魔力を消耗しており、目の前の捕食者を止めるには強度が不足していた。バリンと音を立てて障壁は砕け散り、拳が腹にめり込むとその衝撃から痛みを感じる間もなく気を失った。)

うむ、実に清々しい気分だ。まさかこんな場所で運命の出会いを果たすとは。失った同胞達には申し訳ないが…俺は俺の幸福を追求するとしよう。元よりあのような攻撃、防ぎようがないのだ。こうなる運命だったのだと割り切るほかにあるまい。それに、無礼を承知で言うならば失った戦力は彼女一人で十分に補完できる。否、補完どころではないな…払い値の倍額で釣りが来るようなものだ。しかし、気持ちが昂るあまりすっかり失念していた。まだ彼女の名を聞いていないではないか…帰ったらまずは互いに名乗ろう。

(レティシアが倒れる前に先回りして、お姫様抱っこで迎え入れる。ザルヴァドは己が腕に天使を抱いているという事実に、まるで天井知らずの高揚感に浸っていた。そのまま後方部隊と合流すべく歩みを進めながら、報告を取り纏める為に此度の損失について思考する。ハッキリ言ってしまえば失ったものよりも得られたものの方が遥かに大きい。個人的な感情を抜きにして、戦力的な一面だけを見ても枢機卿クラスの大司教というのはそれ程の価値があるのだ。人の上に立つ者としての冷酷な勘定を終えると、ザルヴァドはハッとした表情で天を仰ぐ。ザルヴァドは気持ちが昂るあまり、レティシアは勝利を確信するあまり、方向性は違えど、どちらも目の前のことのみに気を取られて名乗っていなかったのである。斯くして、互いに名前も知らぬまま、ここに一組の夫婦が誕生したのであった。)

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