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 可愛いの魔法 (〆)/2070


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341: 赤ずきん( 逆巻 傑 ) [×]
2023-05-21 16:40:09



( 潜った扉の先は、人間一人が生活してゆくための必要最低限の部屋といった印象。元から無かったのか、それとも後に処分されたのか、目立った娯楽品も見当たらなければ、こんな森の奥深くに一人きりで暮らすのはどんな心地なのだろうかと想像するも上手く思い描けず。この場所の管理を担っているという相手も来客の想定のない閑寂な住居を持て余している様子で、しゅんと萎んだ表情に食器棚から不揃いのカップを二つ拝借すると、バスケットから葡萄酒の瓶を取り出して )
…そうだ、これ。狼さん林檎ジュースは飲める?




342: 狼( 永瀬ひな季 ) [×]
2023-05-21 19:49:58



( 何かおもてなしとして、鳥でも…魚、いや木苺でも取ってこようか。初めて客人が来たというのに何もないのはと、双眸を横線にしばし考え込んでいればカチャカチャと物音にぴくっと耳を立ててそちらに視線を向け。きょとんと数度瞬かせたのち相手のバスケットから出てくる品に興味津々に双眸を煌めかせると、相手の傍に駆け寄って動向を見守り )
うん、飲めるよっ。




343: 赤ずきん( 逆巻 傑 ) [×]
2023-05-21 20:47:41



良かった。昨日搾ったばかりの作りたてだから、狼さんも飲んでみて。
( 偽装のために詰め替えた葡萄酒の瓶の栓を抜くと、中身の林檎ジュースをゆっくりとカップへ注いでゆく。水面に向けた眼差しは返答を聞けば僅かに和らぎ、二つの容れ物が満たされると瓶の縁についた雫を指で掬って気軽な所作で舐め取り。本来はお裾分けとして別れ際にでも相手に渡すつもりだった物だが、今この仮の住まいに招かれている状況に準えて言うなれば、そう )
…俺からの手土産ってことで。




344: 狼( 永瀬ひな季 ) [×]
2023-05-21 22:00:26



すっごく良い匂い~…!嬉しい、ありがとう!
( 瓶の栓が開け放たれた途端から香る瑞々しく甘い匂いは、カップに注がれることで尚室内に広がり、開けた窓から蜂でも誘われてきそう。搾りたての芳醇な香りを胸いっぱいに吸い込むように深呼吸すると、ほわっと緩んだ表情を浮かべながらお礼を告げて。それから蜜色で満たされたカップを両手で持ち上げると、待ちきれない様子で尻尾をぱたつかせながら問い掛け )
ねえね、早速飲んでみてもいい…?




345: 赤ずきん( 逆巻 傑 ) [×]
2023-05-21 22:26:27



いいよ。
( 好奇と期待の目を向けながらも行儀良く許可を待つ相手の姿は、野生の狼というよりむしろ訓練された飼い犬のようで。自身もテーブルの上に残されたカップを持ち上げては、そんなに畏まるような代物ではないと示すようにリラックスした様子で口をつけ、森の澄んだ空気の吹き込む窓の方へとぼんやり視線を移して )




346: 狼( 永瀬ひな季 ) [×]
2023-05-21 23:06:21



いただきますっ!
( 許可を得れば早速カップを口に付けて一口、それから徐々に傾けながら流し込んでいけばみるみるうちに然程大きくもなかったカップの中は空になり。果物そのまま食べるよりも美味しさがぎゅっと濃縮された林檎の甘みに、ついあっという間に飲み干してしまった。空になったカップをことんと静かにテーブルの上に置くと、視線の先はカップの底から相手の端正な横顔に移る。大好きなお友達と美味しいジュース、窓から入る柔らかな風が心地良い。幸せな空間に満足気に表情を和らげながら、吐息混じりに感想を呟いて )
美味しかったあ…、えへへ、幸せだなあ…。




347: 赤ずきん( 逆巻 傑 ) [×]
2023-05-22 00:00:32



…狼さん、野生動物にあるまじき顔してるよ。
( 聞こえてくる風と葉擦れの音に耳を傾けていれば、すぐ傍で零れた声に視線を戻す。その先に警戒心の欠片もない弛緩した顔を認めては、口元には笑みを浮かべつつ眉尻を下げて。同時に視線もテーブルの上に落ちると少し目を離した間に空になっていたカップに「もう飲んだの」と喫驚し、徐に栓を抜いたままのボトルを持ち上げ )
おかわりする?




348: 狼( 永瀬ひな季 ) [×]
2023-05-22 00:31:45



えっ。…うん、おかわりする。
( 相手の言葉に耳をぴんと立てては、どんな顔をしてたっけと両頬に手を添えながら思い出そうとするけれど、相手の笑みを前にしてはなんだかどうでもよくなる。少し恥ずかしいけれど笑ってくれるならいいや、とぽかぽか温かい頬から手を離せば空のカップを両手で持って、〝お願いします〟と相手の前へすすっと差し出して )




349: 赤ずきん( 逆巻 傑 ) [×]
2023-05-22 08:40:09



( カップが自分の方へと寄せられると、ボトルを持ち上げた片手だけで器用に甘い果汁を流し入れ。それから再び満たされた容器を彼女の前へと戻すついでにちらりとその顔ばせを見遣れば、村の皆に黙ってこんな隠れ家めいた場所で、秘密の交流をしている事実も忘れてしまいそうで )
…狼さんも村で一緒に暮らせたらいいのにな。




350: 狼( 永瀬ひな季 ) [×]
2023-05-22 12:22:29



ありがとう!
( 再び満たされたカップを嬉しそうに煌めいた瞳で視認してから、こくんと一口。先程はほとんど一度に飲み干してしまったけれど、今度は大事に飲もうと新鮮で濃厚な林檎の味をゆっくり味わって。ぽつ、と呟くような言葉に視線を相手へ戻すと、眉を下げながら少し寂しそうに口元に弧を描く。〝そうだね〟なんて安易に同意できずに、人間から離れて代々狼が暮らしてきた森の風景を眺めて )
うーん、…わたしにはみんなを食べちゃいそうな牙もあるし爪もあるからね。…怖がらせちゃうよ。




351: 赤ずきん( 逆巻 傑 ) [×]
2023-05-22 20:01:30



でも、食べないのに。
( そんな心配をする狼が人喰いでなど有り得るだろうか。寂寥感を滲ませながら線を引こうとする相手に躊躇なく異を唱えたなら、村の中で自分だけが知る彼女の本当の姿を澄み切った両眼で捉え、無言のうちに何かを訴えるようにじっと見据えて )




352: 狼( 永瀬ひな季 ) [×]
2023-05-22 21:38:37



なっ…なんでそう、言い切れちゃうの。わかんないよ、君のことだって食べちゃうかもよ…。
( まるで射抜かれるような澄んだ瞳を向けられては、しどろもどろに視線をふらつかせながら手指をそわそわと動かす。相手のことは大好きだから、その美しさを失いたくないから絶対に手出しはしないけれど。なんでそんなに食べないことへの信頼を置いてくれるのか分からずに、ぎう、と双眸を瞑りながら白いワンピースの裾を握り締め )




353: 赤ずきん( 逆巻 傑 ) [×]
2023-05-22 22:17:13



なんでって言われると難しいけど…、
( 匂いを確かめる理由を問うた時とは逆で、今度は此方が目を瞬かせる番。直感的にそう感じるとしか言いようがなく、口元に軽く曲げた人差し指を当て、暫し目を伏せて思案すると、百聞は一見にしかずとばかりに腕を差し出してみて )
試しに噛み付いてみる?




354: 狼( 永瀬ひな季 ) [×]
2023-05-22 22:49:02



( 林檎ジュースを飲んだからか相手が話す度に甘い香りが立つと、その体も同じように甘そうに見えて。目の前に差し出された白い腕を見ては本能ゆえかごくりと生唾を飲み込んで、誘われるように唇を薄く開けてはゆったり近付いていくと尖った歯をそのまま突き立てる──なんてことはなく、かぷりと小さく甘噛みをしてみせては、まるで危機感のない相手をじいぃと双眸を細めて見つめ )
…そんなこと言って、ほんとに食べられちゃったらどうするの。
わたし以外にそんなこと言っちゃだめだからね!




355: 赤ずきん( 逆巻 傑 ) [×]
2023-05-22 23:55:14



分かってるよ。
( 噛み付かれた腕には痛みが走ることも、血が流れ出すこともなく。〝ほら、やっぱり食べない〟と心の中だけで呟けば、薄く笑みを広げながら小言に返答し。とはいえこれ以上種族間の棲み分けに駄々を捏ねるほど子供ではなく、腕を引っ込めると共に話題も取り下げると、あまりに長い外出に村の皆が探し出しても不都合だと席を立って )
…そろそろ帰らないと。




356: 狼( 永瀬ひな季 ) [×]
2023-05-23 11:08:53



それならいいけど…、あ、そっか。じゃあ送るねっ。
( 形の良い唇が弧を描けば見惚れながら、綺麗な白い肌に傷付けることも他の者に傷付けられることも、自分が許さないだろうとこの一連で改めて実感する。帰る頃合いだと知れば、まだ一緒にいたくはあるけれど相手の事情もあるから仕方がないと気持ちを抑え、同様に立ち上がると扉を開けてエスコートしては来た時のように手を差し伸べて )




357: 赤ずきん( 逆巻 傑 ) [×]
2023-05-23 12:53:30



( 林檎ジュースの分だけ軽くなったバスケットを抱え、手と手を握り合うと、足並みを揃えて森の奥の小屋を出る。牙と同様に彼女の鋭い爪も自身を傷付けることはなく、今は導くためだけに使われていて。村に戻るため行きと同じ険路へと分け入りながら、微かに息を弾ませては相手とのこの先を暗示し )
…狼さんがここに住むようになったら、ここへの道も覚えないとな。




358: 狼( 永瀬ひな季 ) [×]
2023-05-23 14:47:47



ふふ、わたしがいくらでも迎えに行くのに。
( これから先も遊びに来てくれることを示す言葉を聞けば、嬉しそうに尻尾を左右に揺らすけれど、道を覚えてしまえばこの導く手はいらないなあ、なんて少し寂しく思いながらあと何度手を繋いで歩くか分からない道を進む。やがて森の出口が見えてくると少し名残惜しくもその手を離しては、後ろで手の指を組みながらもの寂しさを隠すように笑みで飾って見送り )
出口だよ、…またすぐにおいでね、きっとだよ。




359: 赤ずきん( 逆巻 傑 ) [×]
2023-05-23 18:48:45



うん、またすぐに来るよ。…じゃあね。
( そっと手が離れる感覚に歩調を緩めると、くるりと半回転して向かい合う。毎度のことながらいつまでも慣れないこの瞬間は、森の静けさが余計に心寂しさを誘うようで。表情も言葉選びも彼女を真似ては一呼吸置き、沈黙が重くならないうちに別れの挨拶を口にする。そのまま再度半回転して進行方向へと向き直れば、振り返ることなく村へと戻って行って )

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(/ 一区切りついたかと思いますので回収させていただきます。赤ずきんパロ、存分に楽しませていただきました…!童話の牧歌的な世界観と、赤ずきんと狼ちゃんのハートフルな交流が非常に癒しでした…。素敵なご提案をありがとうございました! )




360: 永瀬ひな季 [×]
2023-05-23 19:30:32



( / 回収ありがとうございます!完全ノープランの進行は今回初めてでなんだか新鮮で、上手く進められるかどきどきしましたが癒しとなれたのなら良かったです*
赤ずきんくんが狼ちゃんを気に掛けて会いに来て、村で一緒に暮らせたらいいのにと呟く姿もとても尊かったです。大人になってからも変わらず森へ訪問してくれていても、いずれ村人達に受け入れてもらえて村で一緒に暮らしていても、森でひっそり二人で暮らしていてもとても素敵だろうなと思いました…。こちらこそ素敵な交流をありがとうございました…!

毎度のことながら感想が冗長的ですみません()読み流していただいて結構ですので…!早速ではありますが本編に戻り、相合傘イベの方を始めてしまいますか? )




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