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その血は華となり【途中参加 OK】/104


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29: 京王院 唯織 [×]
2023-02-28 23:12:04


>>栗花落

……キンモクセイ。

( 月が綺麗な夜。…とは言え見えていないので、これは家の従者の言葉なので正確には月が綺麗〝らしい〟夜。唯織からすれば普段とあまり変わりのない、強いて言えば冷えきった風が顕になっている首を冷たく撫でてひんやりとした夜。ふわりと鼻に届いた香りは甘い金木犀の香り、時期でもないのにどうして? どうやら瞳が疼いているような不思議な感覚がするのは、自分の御花が同族を見つけてさわざわとしている時と似ている。唯織はその匂いの主の姿を見えはしないもののクン、と何度か方向を変えて香りの元を辿ってみれば、ふと優しげで蕩けるような。美しい湖に反射する月のような男性の声が耳に届く。 「 どなた? 」声色からして、人に害を加えるような人間ではない。長年目を無くして生活しているうちに何時のまにか声色で人の善悪を、相手が余程の役者でなければ分かるようになってきた。唯織は声色から大体の彼の方角に目星をつけては、こてりと目元の御花を揺らしながら首を傾げて。 )






>>ALL様

……困ったわ。

( 盲目の人間の散歩というのは、記憶が大切となる。何歩進むとこの店があるだとか、ここを曲がると交差点があるだとか、ここはパン屋の前だからパンの匂いがするだとか、TVの音がする電気屋の前を曲がる、だとか。視覚に頼れない分、嗅覚や聴覚────無論手元の白杖、感覚にも頼るのだが。それらを頼りにして目的地や自分の位置を把握をしている。だがやはり視覚がない分、今まであった分かりやすいヒントが無くなってしまえば一気に自分の感覚を失ってしまう。正に今、唯織はその困惑の真っ只中であった。今までは今現在立っている場所にパン屋があり、ここを通れば甘い香りがするのであと何歩進めば…と計算ができたのだが、どうやらそのパン屋が潰れてしまったのか休業してしまったのか、いつも目印にしているそのパンの焼ける香ばしい匂いがいくら歩いても漂ってこない。今現在自分がどこにいるのかすら分からない状態に、桜華は御花で目元が隠れてしまっているにも関わらず困っているのが人目から見てわかる状態で。カツカツ、チリン、カランコロンと白杖でなんとか人の邪魔にならないようなスペースには移動し落ち着いたのだが、やはり金で雇われた護衛というのは〝有事の際〟にしか動かず、助けてはくれない。……どうしたものか。御花憑きであるためかはたまた単純に人に関心がないのか。桜華に足を止める人はいない。白状の手元についた鈴がチリン、と鳴れば目元の御花が桜華の不安を掻き立てるようにさわさわと感覚をふるわせて。 )




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