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その血は華となり【途中参加 OK】/104


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27: 栗花落 [×]
2023-02-28 21:15:47

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薄雲がかった偃月が静かに輝く頃。
シャリ、シャリと水を含んだ湿っぽい地面をブーツで踏みしめる。
月見酒でも楽しもうかと外に出てきたはいいが、どうやらタイミングを間違えたらしい。
冷えた風が剥き出しになった肌を撫でる度に、そわりそわりと背中が浮き立った。
無意識に冷え切った左肩に触れれば、御花から『困ったやつだな』という呆れを感じたのは気のせいではないと思う。

「ん~。良い酒をもらったから弄月でも……と思ったけど、日が相応しくないかもねぇ。でも、こんな日はどうしようもないヒトが転がっているものだろう?」

ついでに拾おうと思ったんだけどねぇ、と善意でコーティングしたその悪意に、自分のことながら酷いヒトがいたものだと口端が歪む。
歪んだ口元を隠すように手を当て、くつくつと肩を震わせる。
一頻り笑いを噛み締めた後に歩みを進めれば、ゆっくりと腰を据えられそうなベンチが目に入った。
休憩がてら月見酒を楽しもうかと、素朴なベンチに腰をかけて月夜を眺める。

「…いやぁ、良い酒はどんな場面でも美味しいものだねぇ。もう少し雰囲気とタイミングを大事にすれば、さらに美味しくなるのだろうけど……ねぇ、俺の御花」

何杯目かの酒を口につけながら御花に話しかければ、御花とは異なる場所からかさり、と音が聞こえた気がした。
人気の少ない場所だから動物でも歩いているのだろうと意識の外に追いやろうとしたが、どうやらそうもいかないらしい。
御花が警戒しているような、正体を探ろうとしているようなそわそわとした不思議な感覚が伝播する。
寒さとは異なる背中の感触に、久方ぶりの珍しい御花の反応。
これは面白いことになりそうだ、と御花を撫でつつ音の主に声をかけてみることにした。

「なぁ、そこの君。一緒に酒でもどうだ?花憑きとこの寒さが嫌いでなければ、だけど」

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