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ROSARYー変わり果てた世界で戦い続ける者たちー/1276


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1238: リナ・クロムハーツ [×]
2023-09-06 23:04:37



『ヒストリー』
ROSARY活躍編その2
>>601
>>840まで


ROSARYの面々が殺伐とした世界の中にいながらも束の間の幸せを噛み締める折、下層には不穏な動きがあった。怪しく忍び寄る邪悪ーージェリス・ヒックスの率いるDOGMAの先行部隊は明確な殺意を持って1人、また1人と水面下でROSARYのメンバーを暗殺していた。これに気づいたリナ・クロムハーツは自身が率いるアジトの構成員に警鐘を鳴らすも被害の拡大は防げず次第に焦燥に駆られていく。
時を同じくしてG区域を彷徨う影、ケラ・ボールシャイトの出現。故郷であるヘーベルン諸島をDOGMAに滅ぼされ、囚えられた同胞たちの解放を条件にDOGMAの捕虜兵として扱われる彼女は、慣れない地域の案内役として近くを通りかかった子供を利用しようと企む。図らずともそれはG-23区アジト所属のフティーであり、言動の端々から覗く教養が、それを施したリナの意に反してケラが彼女をROSARY所属だと特定してしまう原因となった。思わぬ収穫を得たケラはフティーに「ROSARYへの参加を考えている」と嘘を吐き、様々な情報を引き出してしまう。「その時は友達に…」そんな無邪気なフティーとの約束がケラの淀んだ瞳にはどう写ったのだろうか。

それから数刻……

ケラ・ボールシャイトはROSARYが、G?23区アジトが一筋縄ではいかないことを実感する。得体の知れない男、隙だらけに見えて隙のない異質な雰囲気を持つ男の存在を認め、彼もまたROSARYだと見破ったためだ。セリア・メイナードの持つ独特の空気感は腹の探り合いでケラを一手上回った。下層で唯一、DOGMAからの情報を受信する巨大なスクリーンの下でケラの正体を暴いた彼は自暴自棄となったDOGMAの傭兵を制圧する。元の仕事の性かケラの背景までを見通してしまったセリアはお互いの情報交換を条件に休戦を申し出る。家族を人質に取られ、その解放を主目的としているケラはこれに同意。一時のROSARYとDOGMAの衝突は秘密裏に隠蔽されることとなった。
その後、帰路につくケラの正体に迫る切れ者がもう1人。狙撃手として細かな環境の変化にも過敏なレイ・ロバーツもまたケラを怪しむが、その表情から単純な悪意以外のモノを感じ取りリナ・クロムハーツへの報告は伏せたまま警戒することを決める。

セリアとの密約、レイの目が光る中、一時はROSARY狩りの頻度も落ち着いたかに見えたが、それに反比例して燃え上る業火であったのがジェリス・ヒックスだ。自身の命をこなし倦ねるケラに苛立ちを募らせ、それは暴力。そしてケラが何よりも恐れる人質の命を脅かす方向へと向けられていく。大切な人々を守るため、再始動したROSARY襲撃にG区域に戦慄が走る。
悲鳴と泣き声とが日常的に聞こえてくる下層で、それでも子供の泣き声は胸が潰れそうになるだろう。マリンはROSARY狩りとは違った方面で戦慄していた。眼の前で泣きじゃくる子供の対応が分からず困惑しているのだ。理由を聞いても泣いてばかりの子供に、安心させるよう目線を合わせ落ち着かせたのは皮肉にも敵対する相手であるケラであった。彼女はそもそも人質の解放が目的であり、ROSARYの襲撃は過程、もともとが残虐な性格であるわけではない。共に子供の悲しむ原因が"飛んでいってしまった風船"であることを突き止め、解決の兆しが見えればマリンはケラへと名を名乗ってしまう。狩り殺す対象のROSARY、それを知った瞬間に繋がりかけていたマリンとケラの関係は崩壊した。子供を人質に取り、マリンから武器であるレイピアを取り上げる彼女にマリンはそっと目線を合わせる。

今まで、脅され、不安な中1人で戦ってきた彼女から不安を取り除けるように、と……
その感覚は先日、マリンがアジトでアリシア・ウォーカーと読書をした温もりの時間を彷彿とさせていて。マリン自身が欠如してしまった物語の解釈をアリシアが補填し、補い合って答えを出したように、マリンもまたケラと…と考えて。
僅かに近付いた二人の心を繋ぐべく、橋をかけるのに使われたのは以前セリアがマリンへと渡した飴玉であり、他者を思いやる気持ちのバトンが繋がっていく。

その気持ちを受け取ったケラは、マリンを殺したくない気持ちと、しかしそうしなければ家族が殺されてしまうという葛藤を抱える。悩むケラへ、手を差し伸べると決めたマリンは一先ず自身が"殺された"ことにするべく髪を切り、フードで顔を隠して名を変えることを提案する。戦利品として手足の機械部品を外し、ケラに持たせようとするマリン特有の常識の欠如はケラを困惑させたが、一先ずここでマリンは死に、セグレートという別の名を名乗ることで場は収まった。

しかし、それに甘んじるほどジェリス・ヒックスは甘くなかった。1人では足りない、もっと殺せと暴力性を剥き出しにして、望む戦果を上げてこなかったケラへと拳を振るう。気絶するまでいたぶられたケラは下層の目立たぬ物陰へと捨て置かれてしまうのだった。


一方でリナ・クロムハーツはROSARY狩りの根源を断つため単身無防備に下層を出歩き、自身を囮に使っていた。中々尻尾を出さない相手に根比べを仕掛けていると、物陰に倒れるケラを発見する。
どこか自身と似た雰囲気を持ち、友人として親しくできると思っていた彼女の凄惨な姿に奥歯を噛み締め、応急の手当をするがその中でケラのドッグタグが目に触れてしまう。認めたくなくて、考えないようにしていた可能性の的中。ケラ・ボールシャイトがDOGMAの人間であることにリナは心を痛め、制裁を行うも引き金を引くことを躊躇ってしまう。
だが、それは図らずとも後に良い結果を齎すのだった。

リナ・クロムハーツとの戦闘後、憔悴した身体を引き摺り歩くケラはマリンと再開する。ROSARYのメンバーでありながら敵であるケラのことを報告していないことは、先程のリナの言動からも察しがつき、マリンの感情を抑制されても優しくあろうとする様に心から信頼を寄せたケラはジェリス・ヒックスから離反することを決意する。
ROSARYからの特定を恐れアジトを転々と変えているジェリスたちの行動を逆手に取り、移動直後の体制を整えきれていない隙を突くことにした二人は、迫る時間の問題からリナ・クロムハーツへ報告を行わず作戦を決行する。途中、最低限の補給のためにマリンがかつて助けられた男であるジョネスの下へ立ち寄り、ケラは怪我の手当てを行うことなったのだが、そこで彼女は久し振りの温もりと僅かばかりの安息を得る。
DOGMAの暗殺者として感情を殺されていたマリンを人として受け入れたジョネスの優しさ、そしてリナの激情を感じたケラの心の中には確かな決意があった。
その決意の下、ケラは彼女が中々アジトに戻らないことに痺れを切らし「人質を殺す」と宣言してきたジェリス・ヒックスのもとに"帰る"のではなく"復讐"に向かうのであった。
ジェリス・ヒックス率いるDOGMAの部隊は手強く、二人の襲撃を予測していたかのような対応に苦戦を強いられるも、死線を潜り抜けてきたマリンの剣技と、怒りを爆発させたケラに押し切られ、ついにジェリス・ヒックスは絶命する。
戦利品、そして復讐として、ジェリスが愛用していた武装をジェリスの意に反して使おうと奪い取ったケラは、別所に収監されているだろう故郷ヘーベルンの仲間を解放するためROSARYへと加入する。

仲間を殺めたケラ・ボールシャイトを笑顔で歓迎はできないだろうROSARYメンバーの中で、償いながらも戦い続ける覚悟を決めた彼女にリナ・クロムハーツは彼女自身が殺めた隊員たちの墓参りを提案する。
決して許されぬ業の中、眠りについた魂の風が優しく頬を撫でたのは思い込みかもしれない。しかし、それでもリナ・クロムハーツはそれを切っ掛けとしケラに仲間として手を差し伸べるのだった……。


こうして下層を騒がせたROSARY襲撃事件は沈静化した。
だが、それと同時期にDOGMAの強大な戦力が示し合わせたかのように、されど別々の意図を持って下層へと進軍を始めていた。
戦いは更に苛烈になっていくことをこの頃のROSARYメンバーは知る由もなかったのである。




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