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360: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-16 22:03:38




( / 度々失礼致します。
ビビの最後の台詞『雪"もう"一晩止まないみたいですよ』についてですが、本来意図していた『朝まで止まない』以外に、『明日の夜も止まない』方にも読み取れてしまうことに、後から気が付きまして……分かり辛い文章大変失礼いたしました。
タオルについても、新しいビビの物をという意味です。
度々申し訳ございません。ご確認よろしくお願い致します。/蹴可)



361: 匿名 [×]
2023-02-17 10:55:09



…………

(熱い湯を浴びるついでに邪心も鎮め、心身共にさっぱりすると。厚手の寝間着に着替えた姿で、濡れ髪にタオルを掻き込みながら浴室の扉を引き開け──思わず、ぎょっとする羽目になった。そこにいたのは、あからさまに外出帰りといった様子のヴィヴィアンだ。しかしながら、例のふわふわパジャマにバロメッツの外套だけ、なんていうあまりにあられもない恰好。無論、ぴちぴちした太ももも眩しいほどに丸出しである。ギデオンの目が思わず釘付けになったのも、今回ばかりは何も疚しいそれによるものではない。こんな姿で外を出歩くなんておまえは正気か、襲ってくれとアピールしているようなものだろう──そう本気で肝を冷やしたからだ。故に、頓珍漢な反応を示す相手を、ぎろりとおっかない目で睨みつけたものの。先ほどの珍事件の手前、少なくとも今夜ばかりは自分がうるさく言うのも少し筋違いだろうか、と弁えてしまえば。結局顔を片手で覆い、深々と呆れのため息を零すに留めて。)

いや、手持ちで充分だ。……しかし困ったな、そうなると明日は帰りの馬車が出ない可能性もある。

(そうして平静な会話に切り替えれば、首周りのタオルを横髪にわしゃわしゃさせつつ、相手とともに暖かい部屋の奥へと。かと思えば、ベッドの上から毛布を乱暴に引き?がし、そちらを見もせず相手に放り投げ、ぼふんと強引に被せてしまう。さながらお化けのような格好にさせてしまったが、さあ貪ってくれと言わんばかりの恰好で外を出歩いた怒りは、それはもう強いのだ。このくらいの仕打ちはされて然るべきだろう、とむすっとした顔でそれを見やり──その奥。ベッドボードの辺りに、連れ込み宿ならどの部屋にも備えてあるいかがわしい小袋が置いてあるのにふと気が付くと。未だ毛布を被っている相手を、凍りついた顔で振り返り──そこからまさに電光石火。大股でそちらに回り、それをガッとひっ掴めば、また大股で窓のほうへ回り、二重のそれをがたがたと喧しく押し開け。それから渾身の、歴戦の戦士の肩を奮いまくった膂力を活かし、激しい吹雪の中に大暴投をぶちかます。──先ほど邪欲は振り払ったつもりだが、あんなものが傍にあっては、一線を越える言い訳を己に与えてしまいかねない、故に及んだ奇行である。それをどうにか誤魔化せたろうか、相手にはどこまで見られずに済んだろうか。いずれにせよ、冷静な顔を今一度取り繕うと、暖炉に薪を足しながらしれっと先の会話を続けて。)

……この町も、明日は人手が足りないだろう。雪掻きの手伝いのためにもう一泊することもあり得るな。



(/ご丁寧な補足をありがとうございます。諸々伝わっておりましたのでご心配なく!
今回返信が遅れたのは偏に背後事情ですので、その辺りどうかお気になさらず。(余談ですが、いつにないラブコメっぷりに笑いっぱなしとなっております。いつも楽しい小話をありがとうございます……)/蹴り可)





362: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-18 23:59:11




それは困──わっ、ぷ……!? なに、何!?

 ( ギデオンの気持ちが、少しは此方へ向くようになったと思っても、その過保護なところはちっとも変わらないらしい。深い深いため息と、目尻の吊り上がった一睨みを、えへ、と肩を竦めることでやり過ごし──……過ごせたと。少なくとも個人的にはそう思い込みながら、明日の懸念に振り返ったところで。立ち上がり際、飛んできた毛布をまともに喰らってしまい。とはいえ、相手のその怒りの表し方には慣れたもので。全く意に介さない調子で、きゃあ、とはしゃいだ声を出しかけた寸前。突如ガタガタガタッ!と上がった異音に、混乱の声を漏らしながら、毛布の海をたっぷりもがくと。なんとか顔を出した頃には、何事もなかったかのように窓を閉めている相棒に、あちこち元気よく跳ねた頭を、不思議そうに捻って。しかし、ギデオンの奇行をそれ以上問い詰めなかったのは、当の相手がその先に漏らした言葉の方がより問題だったからだ。そもそもが便利屋と並べられることも少なくは無い冒険者稼業、雪掻きについては問題どころか、丁度よく力自慢の揃っているタイミングに降った雪(因果関係的には逆なのだが)には、この街の人々を助けられることに喜びさえ感じるのだが──しかし。薪を焚べる背中に視線を向けたかと思うと、次第にジワジワと赤くなっていき、終いには抱き締めるように抱えていた毛布に、ぽふりと顔の下半分を埋め、大きな背中へ困ったような、どこか期待するような視線を向けて。 )

雪掻き!は、いいんです、けど……も、もう一泊って。その、また……同じお部屋ですか……?




363: ギデオン・ノース [×]
2023-02-19 00:50:03




それは────それは、……俺にも、わからん。
まあ、地元の連中が自宅に帰る可能性だってあるわけだし……様子見になるんじゃ、ないか。

(わかりやすく恥じらう声がなんとはなしに気になって、そちらを振り返った瞬間。がちん、と不自然な硬直を晒したのは、しかし必然だったろう。──何故この若い相棒は、毎度毎度、そうも的確にあざとい仕草をしてみせるのだ。おそらく本人は無自覚にやってのけているのだろうが、それにしてもだ。毛布をぎゅうと抱きしめ、耳まで真っ赤にしながらも、こちらに感情たっぷりの上目遣いを寄越してくるなど。年頃らしく羞恥に困りながらも、どこか期待のこもったような、なんともいえない甘い声を、か細く聞かせてくるなど。──なんというか、駄目だろう。あまりに卑怯が過ぎるではないか。いきなりの破壊力に、いっそ理不尽に機嫌を悪くしたいほどであったのだが。しかし実際のギデオンはといえば。相手から外した視線を数秒揺らした挙句、ふいと真横に顔を逸らし。落ち着いた無表情だけはどうにか皮一枚保てたまま、冷静な意見を述べる、という、わかりやすいんだかわかりにくいんだか、微妙な具合の反応ぶりで。
……と、その先に窮していた矢先。こんこん、と控えめなノック音が聞こえてきて、ぱっとそれまでの空気感をかき消し。相手とちらと目をかわしてから、まだ下げていた腰の剣の柄に一応は手をかけつつ、己が素早く出迎えに向かう。はたしてこの夜半、ふたりの部屋を訪ねてきたのは、なんと先ほどの女将であった。出てきたギデオンに一瞬びっくりした様子を見せたが、「あのっ、そのっ、先ほどお嬢さんが身体を冷やしてらしたので……」と、持ってきたものを差し出す。どうやら、完全な厚意によるルームサービスらしい──生姜湯のポットなり、軽食と小型湯たんぽの入った籠なり、連れ込み宿のそれにしては妙に家庭的で手厚すぎる気もするが。とはいえ、貰えるものは貰う主義だ、ありがたく淡々と礼を述べると。女将はギデオンの目をやけにまっすぐ見つめてから、今度は身体を斜めにして、部屋の奥にいるヴィヴィアンのほうを気遣わしげに覗き込む。そして何やらほっと胸を撫で下ろすと、もう一度ギデオンを見上げ──露骨に悩ましそうな、心配そうな、微妙そうな。でもぎりぎり、無理矢理になら納得はできるというような。そんな妙な表情をころころ繰り広げてから、「うん、まあ、この人なら良いかしらね!」と、今度はやけに晴れ渡った様子を見せ、結局大人しく引き上げていった。……妙に手厚いサービスも、今の愉快な百面相も、最後の言葉の意味も。いまいちさっぱりなギデオンは、なんだか狐につままれたような顔で首を捻りながらも、差し入れを手に室内へと戻ってきて。)

よくわからんが……女将からの差し入れだ。今晩、おまえが身体を冷やさないように、だとさ。





364: ギデオン・ノース [×]
2023-02-19 02:20:17



(/※入浴後なので剣の装備は解いているはずでした……些細なことですが、そちらの描写はなかったことにしてお目通しくださいませ!/蹴り可)




365: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-21 14:46:51




あ、ああ、女将さん…………んんっ!えっと、その、さっきお会いした時に、ご心配おかけしてしまったのかも、なんて……

 ( 手厚い差し入れを手に、不可解そうな表情で戻ってきたギデオン本人を目の前にして。先程の事件を未だ気にしているであろう相手に、ありえない嫌疑がかけられていたなど──ましてや、まさか普段の三倍は自制心を欠いた惚気話を披露してきましたなど、とても言えるわけがなく。部屋の奥からでも微かに聞こえた『この人なら良いかしらね!』というソレにも合点がいくと、その温かくもお節介な気遣いに、感謝やら間の悪さやら色々入り交じった、なんとも言えない表情を両手で覆い隠して。そうして空いた不自然な間を、小さな咳払いで誤魔化してはみたものの、その嘘の下手さには我ながら驚くばかりで。すぐに顔の手を下ろすと、抱き締めていた毛布を愛しそうに肩から羽織ってから、空いたそれを差し入れの方に伸ばす。その時──くすり、と無邪気とは言い難い微笑みを浮かべて見せると、今度はわざと。その鮮やかな瞳を上目遣いに揺らして、精一杯甘えた様子で小首を傾げたのは、自分の整った容姿を自覚している、あまりにも露骨な確信犯で。とはいえ、あくまでこの目も当てられない状況を鑑みなければ、ではあるが。他の誰でもない愛しい相手と、ゆっくり過ごせること自体は非常に魅力的で。仕方なくという体でもなんでも、目の前の相棒が肯定的な反応を見せれば、それは無防備な笑みを、また満面に綻ばせて見せるだろう。 )

──ね、折角ですから。冷めちゃう前にギデオンさんといただきたいな……駄目?


( / 帯剣描写について承知致しました。
前回はお返事出来ず大変失礼いたしました。完全にこちらの描写ミスが気になっただけでして、返信速度については本当にお気になさらず……!!
寧ろこのとおり、完全にこちらがお待たせしてばかりで、いつも誠に申し訳ございません。背後様のおかげで、本当に負担なく楽しませていただいております。今回のラブコメイチャイチャ回、ギデオン様の糖度に悶え、やりたかったことを全部やらせていただいて、当方も何度も読み返してはずっと笑っております。引き続きどうぞよろしくお願い致します!/蹴可 )




366: ギデオン・ノース [×]
2023-02-21 17:31:21




………………

(最近わかってきたことであるが、ヴィヴィアンは嘘や誤魔化しが下手だ。『シャバネ』で魔力切れを隠そうとしたときもそうだし、今だって如何にも、“実は内緒でやらかしてました”と言わんばかりの口ぶりである。故に、露骨に胡乱げな目を相手にじとっと向けたものの。まあ、あの女将に会うことは今後そうそうないだろうし……と。こちらもまた、相手と同じ思考回路によって、細かくつつかないことにして。
しかしそれは、未だギデオンに貪欲である娘の気を大きくさせてしまったらしい。衣擦れの音がした後、不意に妖艶な気配が匂い立ったかと思えば。先ほどの瑞々しいそれとは全く異なる──魔花のように婀娜な仕草をたっぷりと見せつけられ、思わず真顔で静止する。先ほどのように、単に動揺したのではない。……あざといとわかっていて、ギデオンが多少疎んだり呆れたりすると重々わかっていて。それでも尚、己の武器を使って誘惑しにかかる“女”のしたたかさに、心の奥底でかすかに舌を巻いたのだ。──以前までのヴィヴィアンに、こんな色香はなかった筈だ。ハニートラップなら最初から仕掛けていたが、あの頃のそれに奥深さは感じなかった。だれか年長の女に仕込まれたのだろうテクニックを、ただ体当たりで実践するだけ……だからギデオンも、ため息交じりにいなしていられた(認めよう、一瞬反応することはあった)。それがどうして、今宵はまるで別人だ。ギデオンの性格も、紳士としての自制心も、男としての愚直なさがも。そういった奥深い部分をすべてわかりきった上で、状況や建前、そして己自身を武器に。欲しいものを勝ち取ろうと、甘く嫋やかに絡めとってくる。──格段に、手ごわくなっている。
……結局、数秒の空白を落としてから、目を閉じてため息を吐き出した。駄目と言って何になる。どうせ今夜はここにとどまるほかないし、この寒い夜、せっかく貰った女将の心遣いは享受した方が良い。とはいえ、相手の誘いに乗る形になるのはどうにも癪である。故に素直な返事はせず、不機嫌そうなしかめ顔で相手に籠を突き出して、中のパンをぶっきらぼうに視線で示す。一緒に入っている干し肉は先にギデオンが炙っておくから、パンと飲み物の手配を頼むという意味だ。脂の染みたサンドイッチは、野営の戦士が好む王道の夜食である。……まさか相手と、よりによって連れ込み宿なんぞで作ることになるとは、夢にも思っていなかったが。)

……俺の背嚢に小刀が入ってる。そいつで、真ん中に切り込みを入れておいてくれ。





367: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-22 23:57:41




──やったあ! ギデオンさん大好き!

 ( 強請ったのは、寝る前の一時。寝物語ですらないただの健全で、温かな夜食の時間。確かに女将とのやり取りへの追求から逃れるため、ちょっとした"ズル"はしたものの。それに対する相手の内心の評価などまるで思い至らぬまま、乱暴に突き出された籠に、心底嬉しそうな満面の笑みを零すと、その大きな拳を、白い両手でしっとりと包み込む。そうして受け取ったそれを片手に、背嚢を探る行為にさえ、相手からの信頼を感じるようで、単純な思考は浮き立つばかり。それにちょっと──彼女みたいじゃない?なんて。あまりにささやかな幸せに、いつにも増してにこにこと、上機嫌に指定されたそれを取り出せば。暖炉の揺れるオレンジに顔を染めながら、柔らかな敷物の上に両膝を下ろし、その滑らかな腿の上に、例の白いハンカチをふわりと広げる。その膨らみに沿って小刀を入れた白パンは、まるで雲のように柔らかく、まだほんのりと温かい。微かに広がる好ましい香りに眦を更に緩め、手馴れた様子でサクサクと切れ目を入れ終わった辺りで、とある記憶に思い当たって。おもむろに自分の鞄を探り出すと、取り出したのは手のひら大の油紙の包み。パリパリと音を立てながら包みを開けば、クリームチーズの酸味と香ばしい香りが一体に広がって。クエスト中の補給用に作ったもののあまりではあるが、肉との相性もバッチリだ。そう最近また穏やかな雰囲気を纏い始めた自身の腹部のことは考えぬ振りをして、にまりと悪戯な笑みを相棒に向け。 )

……そうだ! ちょっと悪いこと、しちゃいません?
刻んだガーリックとバジルが入ってるんです……この時間に、すっごく背徳的でしょ?




368: ギデオン・ノース [×]
2023-02-23 01:31:57




(相手の無邪気な物言いにやれやれとかぶりを振りながら、一対の火掻き棒を拾い上げ。穂先を水で軽く洗ってくると、ふたつの干し肉をぶすりと突き刺し、暖炉の前へ移動する。その奥まった空間を利用して、うまく斜めに立てかければ、あとは焦がさぬよう繊細な世話をするだけだ。炎の舌に程よくねぶられるうちに、分厚い肉はその表面をてらてらと輝かせはじめた。見たところ、脂の多いバラ肉の部位である──あの気立ての良い女将は、冒険者が好む夜食も、それに最適な具材は何かも、よくよく心得ていたのだろう。もしかすると、殉職した冒険者の未亡人なのかもしれない。だから今夜のような団体客も、気持ちよく引き受けてくれたのだろうか……などなどと。傍らでるんるん浮かれるヴィヴィアンとは反対に、ギデオンのほうは至って淡々と、明後日の方向の思索に耽るぼんくらぶり。ジュナイド辺りがこの場にいたら、いやそれどころじゃないでしょうが! 隣の天使なビビちゃん拝みなさいよ勿体ない! とギデオンの頭を引っ叩いたに違いないう。──しかし、今宵覚醒の止まらないヴィヴィアンの手にかかれば。ギデオンの関心を自然に引き寄せるのも容易いことだ。最初に彼女の悪戯っぽい声が聞こえてきても、なんとなく億劫だったギデオンは、「ん?」としか返さなかったのだが。次いでふわりと漂ってきた香りに、「……!!」と非常にわかりやすい反応の気配を立ち昇らせ、思わずといった様子で振り向いて。ただでさえ滋養のつくガーリックに、まろやかな逸味をもたらすバジル──そんなものを贅沢にも練り込んだ、チーズだと……? と、相手が差し出すそれを黙って見つめたまま、しかしその薄青い目は、雄弁に高揚を物語る。カレトヴルッフ上層部には聡明と評されるギデオンだが、これで結構根は単純だ。今この瞬間、今宵この状況について悩ましかったはずのあれこれが、一切合切吹き飛んでしまって。)

……悪魔の囁きだな。

(相手とようやく目を合わせるなり、落とした声でにやりとそう笑み返したのは。だれにとはなしに、相手との悪巧みを秘密にしておきたかったからで。仕草でパンを要求すると、引き寄せた穂先の、良い具合にこんがりと焼けた肉を、それに挟みこみ。次いで、相手の持ち寄った練り物入りのクリームチーズもその上にたっぷりと伸ばせば。サンドごともう一度突き刺し、先ほどよりも急勾配で暖炉の手前に立てかける。あとは回転させるだけで、ものの数分もすれば食べられるようになるだろう。ベッドの上で食べるのも何だし、このままここに腰を下ろせば良いだろうか。そこらにあった敷布を適当に床に広げると、相棒のほうを振り返り、「枕を取ってくれ。どうせいくつもあるだろう」と、寛いだ様子で頼み。)





369: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-24 17:16:20




 ( 此方の誘いに返ってきたのは、少し眠た気な気配も感じるような、どこか面倒臭そうな短い返答。しかし、相手の塩対応に慣れきっている身としては、全く堪える気配もないまま、愛想良く続きを言い募ったのだが。そう油断しきったところに、大きく響いた身動ぎの気配へ目を見開くと、こちらの手の内を凝視する相手をまじまじと見つめ返して──かっ……可愛い……!!漸く此方へと向けられたアイスブルーに浮かぶ、あまりに素直な興奮と、年相応の魅力が刻み込まれた美貌に滲んだ、どこかあどけなささえ感じさせる少年のような輝き。その後すぐに浮かべられた、色っぽい表情にすら、その悪巧みの対象とのギャップを思えば、その小さくない胸が、ズキュンと一気に貫かれる音が聞こえて。パンを要求する仕草を受けると、その可愛らしさに緩む頬や、濃密な愛しさに蕩ける眼を、堪えきれているつもりで全くそうでもないまま、はるかに年上である相手を抱き締め、撫で回したい衝動に耐えつつ、相手の興味の対象であるそれも一緒に差し出した。 )

……えっへへ、これで共犯ですね!

 ( そうして、暖炉の前にしゃがみこむギデオンの肩へ、背後から手をかけると、「そんな少量でいいんですか?たっぷり乗せた方が美味しいですよ?」と、穏やかな笑みで、相手のナイフ捌きに口を出す。その給餌欲求とも、母性本能ともつかない其れを好きに満たす行為は、果てしなく甘美な喜びを脳に直接もたらしてくるようで。癖になりそうな快感に程々で口を噤むと、その顔の下。乾き始めてほよほよと揺れる金髪だけに、堪らずそっと唇を寄せてから──また何か作ってきたら食べてくれるのかな。と、早速中毒になりつつあるそれに次回を企みつつ、一旦ナイフを洗いにその場を離れて。普段ことある事に、無防備だなんだと、此方へ苦言を呈してくるギデオンに対して。今までは、ならさっさと手を出してくれれば良いのにとさえ、理解できない不満を抱いて来たものだが──今なら、その気持ちが少しだけ分かってしまう。此方の気持ちも知らずに、と理不尽に曇る胸のモヤ付きを、大きく深呼吸し霧散させたのも束の間。手を拭きながら戻って来た此方を、寛いだ様子で振り返る相手に、ムッと唇を尖らせれば。その要請通りにとった枕のひとつを、ぎゅむと相手に押し付け。その隙間から眉を下げ仕方なさそうな笑みを覗かせると、口調こそ冗談めかしたものの、共に漏れたため息は割と真剣味を帯びていて。 )

ギデオンさんって……たまにすっっっごく可愛くて、心配になります。
ご飯につられて悪い人について行かないでくださいね。




370: ギデオン・ノース [×]
2023-02-25 01:23:15




はぁ……?

(慈愛に満ちたヴィヴィアンにまんまと促されるがまま、素直(かつ真剣)にチーズを塗り重ねていたギデオンは。背後の彼女の蕩けるような笑みや、こっそり注いでくれた優しい愛情表現にさえ、まるで気づかぬ有り様だった。──故に、その後の相手の発言が。あまりに突拍子もなく、藪から棒に聞こえたのだ。押し付けられた枕を下ろしながら、思わず異議の声を上げ、盛大なしかめ面で相手を訝しく見つめ返す。──重戦士ほどごつくはなくとも、己とて体格はかなり良いほうだ。というかそもそも、もうすぐ四十に届こうかという中年の男である。こんな野郎のどこをどう見たら、「可愛い」なんて言葉で形容する気になるのだろうか。だがしかし、相手がそこそこ本気でそう言っていることは、その様子からわかる……わかるからこそわからない。結局枕を床に置き、さらにもう一度暖炉のほうに身を屈め。「眼科に診て貰った方がいいんじゃないか」と呆れ気味にため息を零しながら、火掻き棒をくるくると回して。相手の言葉に不貞腐れたい気持ちはあるが、こうしている間にせっかくの夜食を黒焦げにでもしてしまったら台無しだ。火加減は命より大事である。はたして、相手に何事か言われればそれに適当に答えつつ、焼き具合を確かめてみれば。きつね色になったパンの表面を、溶けたチーズが今にもとろりと流れ落ちそう、という芸術的な塩梅──いよいよもって食べ頃だ。先ほど浴室から拝借した塵紙に、熱々のパンをひとつずつ挟み込んで抜き取ると、立ち上がって相手の方へ。……と、向かい合ったはいいものの、ヴィヴィアンの分のパンを、何故か差し出すそぶりがない。そのまま、ほかほかの湯気や胃袋をくすぐる匂いを、辺りにふわふわ漂わせつつ。ただじっと──含みのある目で相手を見下ろしたかと思うと、不意に片眉をぐいと上げて。)

……飯につられて、悪い人について行くな──だったか?





371: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-02-28 14:09:40




──ちょっと!!

 ( それを伝えた時点で、素直に頷くとは思っていなかったが、言うに事欠いて此方の視力を疑ってくる相棒に、その相手が敷いた敷物の上、複数の枕を良い感じに敷き詰めながら、此方も短い非難の声を上げる。心底不満そうな表情を浮かべて尚、真剣に暖炉へ向き直る背中の愛らしさといったら。この姿をよりはっきり目に焼き付けられるのなら、寧ろ喜んで眼科に通いたいくらいなのだが。とはいえ、相手を不愉快な気持ちにさせるのは本意ではなく、その険しい眉間の皺に口を噤むと、それ以上の後追いは控える。そうして自分で作った居心地の良いスペースに腰を下ろして、長い脚を邪魔そうに抱え込むと、体育座りの要領で白い爪先をそっと揃える。そして内腿から15cm程、場所こそ違えど、冒険者なら珍しくもない古傷の残る膝に顎を乗せ、真剣な表情で火掻き棒回す相棒の背中をぼんやりと認めているうちに、昼間の疲れが押し寄せて来たらしい。うとうとと薄い瞼を半分程閉じながら、心地よい眠気に時折、ぐらりと頭を揺らしてはなんとか立て直すこと数回。ギデオンが立ち上がった気配に、慌てて目を瞬かせながら、膝立ちでその手の内のパンを受け取ろうとして──一瞬不自然に空いた間に、無防備に首を傾げると、微塵の警戒も含まぬ瞳をぱちぱちと瞬かせ、遥か高い位置にある相手の顔を見上げて。 )

…………? はい、……怒りました?




372: ギデオン・ノース [×]
2023-03-03 02:52:40




──……、いや、そんなわけがないだろう……

(こちらを見上げるエメラルドグリーンの瞳には、どこか眠たげな気配こそあれど、微塵の警戒も、妙な反応を示されたことに対する不快の色も浮かんでいない。そのあまりの純真さに、一瞬呆気にとられたような間を空けたかと思うと──がくり、と脱力したように項垂れて。ちょっとした悪戯心で、意地悪の一つでもしてやろうかと画策していたのだ。“悪い人”の差し出す飯は受け取れないだろうと、相手を揶揄う一幕で溜飲を下げる腹だった。しかし悔しいかな、遥か歳下のヴィヴィアンは、ギデオンより遥か格上。元々そう高いわけでもなかったこちらの毒気をあっさり抜き、一瞬で戦意喪失させるときた。つくづく己は、ヴィヴィアンには敵わないのだ。そう認めざるを得ず、俯いたまま緩くかぶりを振ると。白旗を上げるが如く、両手のパンをもう一度掲げ、そのまま彼女の隣、自分も先ほど枕を整えた位置に腰を下ろして落ち着き。不思議なもので、三十九の自分が十六も下の娘とふたりきりでこう居並ぶのは、かなりおかしな状況のはずなのだが……なんだか妙にしっくりくる。小さな吐息でその感傷をやり過ごすと、塵紙に挟んだ炙りたてのパンを相手に渡し。空いた片手でベッドの上のブランケットを引き寄せ、相手の膝にかけてやる。白い内腿に傷が見えたが、それを率直に話題にするのはいささかこう、アレだろう。自分のパンの包みを食べやすいようめくりながら、穏やかに無難な声をかけ。)

……疲れて食べきれなかったら、残りは朝に焼き直すのでもいい。無理はするなよ。






373: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-04 12:47:42




……っ、……?

 ( 力なく項垂れた相棒を目の前にして、流石のビビも何かを間違えたらしいということに気がつくと、なんとか挽回しようと口を開いてみるものの。未だ微睡み残る思考は非常に横着で、一向に真相へとたどり着く気配のないまま、パクパクと唇を震わせるだけ。とはいえ、対するギデオンの方もまた、追って追われて半年以上の関係になるのだ。そもそもの前提が違っていることに気がついても良い頃ではなかろうか。他でもないギデオンが"悪い人"と銘打った時点で、ビビの脳内からは"ギデオン"という選択肢が消え去るのだから、己の揶揄が成立しようがない、ということに。かくして、暫くの気まずい沈黙を経て、ゆるゆると首を振った相棒へ、バツが悪そうに肩を竦めはにかんで見せると、半身を逸らして相手が座りやすい様スペースをあける。その際場に浮かんだ感傷など知る由もなく、ちゃっかりと半身を戻して、至近距離から見上げた端正な顔立ちの目元、少し油の抜けた皮膚の薄い部分に、微かな皺が寄るのに初めて気がついて。その皺さえも愛しいような、埋められない距離を突きつけられているような、なんとも言えない気持ちに瞼を伏せ、お礼を言いながらパンを受け取ると、火傷しないよう塵紙だけの部分を摘むように頭上に掲げ、ブランケットを引き寄せる相手のされるがまま、分厚い手が満足するのをじっと待つ。しかし、結局ブランケットがかけられたのは、己の膝だけで。相変わらず自分のことを忘れている相棒ににじり寄ると、相手の遥か長いそれにも半分分けてやる。決して小柄とは言えない二人が使うには、そのブランケットは少々小さくて。いい大人が二人、広い部屋でぎゅうぎゅうにくっついている状況と、あちこち触れ合う部分から伝わる熱の多幸感に──今はそれで良いか、と自然と楽しげな笑い声が漏れた。そうしてやっと、パンの塵紙に手をかけたところで、ギデオンの穏やかな声がけに恥ずかしそうに肩を竦めると、その割に気持ちよくホットサンドにかぶりつく。その途端、口の中でパリッといい音が響いて、香ばしい香りが鼻に突き抜ける。咀嚼に忙しい口の代わりに、「んーっ!」と目を輝かせ、その興奮をギデオンに伝えると、幸せそうに相好を崩して、その白い頬に手のひらを寄せ。やはり、なんの無理もなく食べられてしまいそうなのは、ギデオンこだわりの焼き加減が素晴らしいのであって、自分の食い意地が酷い訳では無い……と思いたいところ。 )

うん、ちょっと多いかも……とか、言えたら可愛いんですけど、多分余裕です……
うぅぅ、だって美味しそうなんですもん! すっごくいい色……ありがとうございます、いただきます!




374: ギデオン・ノース [×]
2023-03-05 03:15:32




(ギデオンが何の気なしにかけた膝掛けを、しかしヴィヴィアンは、ただで使う気にならなかったらしい。とん、と寄ってきた感触に一瞬静止してからそちらを見れば、ただでさえ小さな面積の布が、己の膝上にも半分分け与えられていた。……いや、駄目だろう。ヴィヴィアンひとりで使えば充分だろうに、これでは半端にしか暖をとれないではないか。第一、こんなにぴったりと隣り合うのは流石にどうなのだ……等々と。かすかに顔をしかめて口を開きかけたものの。無邪気にこぼれる笑い声と、すこぶる健やかな返事を聞けば、虚を突かれたような表情を。次いで目を閉じ、嘆息をひとつ。そうして相手の“いつもどおり”に降参し受け入れれば、己もようやく、相手と同時に夜食にかぶりついて。)

食えるなら、それはそれで良いことだ。
……、…………。
……???

(──そして、その一口で目を瞠り。混乱したような表情で、齧ったパンを見下ろした。──なんだ、これは。美味すぎる。いや、冬の夜の温かい軽食は臓腑に沁みるに決まっているが、そういう次元の話ではない。優しく殴られたような衝撃だ。一口食べただけで、塩気と風味、歯応えと舌触り。そういった味わいすべてが、今まで自分が作ってきた“戦士の夜食”とまるで違う。だが見たところ、宿の女将が差し入れてくれた食材自体はありきたりなものだったはず。……と、そこまで考えを進めてから、ふと今回のトッピングに思い至り。隣を向いて、ご機嫌な彼女の表情にまた一瞬狼狽えつつも、どうしても尋ねずにいられないといった声音で質問を。)

……なあヴィヴィアン、このチーズは……いったいどこで?





375: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-06 00:00:47




 ( 美味しい食事に温かな微睡み。隣には最愛の人がいて、これ以上の幸せがあるだろうか。溶けたチーズが口の端から溢れそうになるそれに、舌鼓を打ちながら、ギデオンの一口と咀嚼を特等席で見つめる視線は、普段の熱に浮かされたそれと言うよりも、ギデオンが時たま浮かばせる静謐なそれに近いもので。サンドイッチにかぶりつき、みるみる見開かれていくアイスブルーに、ゆっくりと眦を蕩けさせると、上半身を倒してギデオンを覗き込む。"良かったら"──また、作って来ましょうか。若しくは、作りに行きましょうか。そう次の約束を取り付けるのも、今なら出来たかもしれない。しかし、ここまで分かりやすい表情を、それも他でもないギデオンに向けられてしまえば、強かになりきれない己の甘さに、苦笑するように目を細めた。 )

……ん、美味しいですか?
私が和えたんです。良かったら……今度、分量お教えしましょうか?

 ( ──えてして、幸せな時間は早く過ぎ行き、腹が満たされれば眠くなるのもの。サンドイッチをぺろりと軽く平らげる頃には、昼間の疲れも相まって、耐え難い睡魔が、瞼に重しをつけたかのようにビビを取り巻いていた。生姜湯の効果も相まって、ポカポカと乾ききった手足が心地よくて。最初は羞恥の方が強かったこの夜を、もう少しギデオンと過ごしていたい気持ちはあるのだが、徐々に五感へと靄がかかっていく感覚がもどかしい。以前一度、夏前に、やはりこうして同じ部屋に泊まった際は、同じベッドを使ったものの──先程の珍事件を思い出せば、おそらく宜しくないだろう、と判断できる程度の理性は残っている。眠たげな視線をベッド向けてから、もそもそと無言で頭を振ると、先程ギデオンが女将から借りたのを、勝手に拝借していた毛布を手に取って、猫のように丸まりながら身に纏う。この時のビビの脳内には、広い寝床は身体が大きい相手が使った方がいい、というひたすらシンプルな結論しか無く。くあ、と音もなく欠伸を漏らして、大きくゆっくりと伸びをすると、殆ど目の開いてない顔をうっそりとギデオンに向け。 )

──んぅ、…………。……眠くなって、来ちゃいました。……今日、昨日? は、お疲れ様、でした……ベッド……使ってください……私、ここで寝ますから……。




376: ギデオン・ノース [×]
2023-03-06 00:47:41




……ああ、頼む……本当に美味いな。

(やはり眠気が少しずつ忍び寄っているのだろう。まさかの手作りだと教えてくれたヴィヴィアンは、穏やかにぽんやりとしている。いつもなら明るい獰猛さが宿るであろういらえも、今宵はどこか控えめだ。となれば、ギデオンの返事や称賛も、自然と声量が落とされる。とはいえ、引き出された感心や関心は、そう容易く失せるものではない。パチパチと爆ぜる暖炉の手前、ヴィヴィアンと並んで座り、ありきたりなそれから化けた夜食を心行くまで味わいながら。窓の外を低く轟く吹雪の唸りをよそに、オレンジ色の暖かな火影を眺めつつ。ぽつりぽつりと交わす会話は、彼女の料理の腕前について聞き知り、驚嘆する時間となった。
──それからほんの少しの後。渇いた喉を生姜湯で潤わせ、手足の末端までぬくまるころには、相手はかなりうつらうつうらしはじめていた。夜もだいぶ更けたし、そろそろ寝入る頃合いだろう。毛布にくるまりだした相手をよそに、紙屑やコップを片付け、扉や窓の施錠を今一度確認し、暖炉の前には燃え移りを防ぐための柵を立てておく。そうして相手のもとに戻れば──もうほとんど寝落ちる寸前のヴィヴィアンから、耳を疑うような話が。途端にぐっと目を細め、その傍にしゃがみ込み。ごつごつした掌を伸ばし、シャワーを浴びていつもより柔らかくなった髪を梳くように撫でてやる。ヴィヴィアンには好ましいだろうその仕草も、続いて落とした“冒険者理論”も、妙なところで頑固な相手を、手っ取り早く説得するための手段だ。一緒に寝ると言いださなかったのは幸いだな、と思いながら、促すようにその小さな──ギデオンに比してだが──手をとって。)

馬鹿言え。ヒーラーの調子が悪いと、戦士職まで終わるだろう。
俺は昼間に回復を貰ってるから、ベッドはお前が使え。……ほら、立てるか。





377: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-07 00:47:16




んんー…………

 ( ギデオンの言葉が客観的にも正論なのか、はたまたいつもの過保護なそれなのか。健康的な睡魔に浸された思考では判別しかねて、いやいやと深い呼気と共に眉間に皺を寄せるも。しかし、気づいた時には既に、心地よく甘やかな触れ合いに絆されるまま、素直にその手を取って立ち上がっている始末なのだから、相手からすればさぞ扱いやすくて良いことだろう。手を引かれるままベッドの右側に周り、シーツの海に腰を下ろすと、少し不満げな表情で見上げた相棒は、今日も変わらず格好よくて。それだけで絆されてしまう自分が悔しい。──そもそも、この人を本気で困らせたい訳ではないのだ。けれども、下がらない溜飲があるのもまた事実で。絡めた手を解かぬまま寝具の間に潜り込むと、そのままベッドの左側に転がるようにして、相手の腕を強く引く。二人で使うには意図的に狭いベッドに、腰を掛けなければ辛い体制だろう。そしてもう一度、ふわりと欠伸を漏らしながら、恋人繋ぎの要領で繋ぎ直すと、「……寝るまでに離したら、誤魔化されてあげません」と、自身の胸と掛け布団の中へがっちりと抱き込んでしまう。なに、ギデオンがその気になれば、簡単に振り解けるのだ。……というのを言い訳にして、優しいこの人が、ビビが寝た後に起こさないよう解くのに苦心するのを知っていて──少しだけ、苦労すればいいと思ってしまった。そうして片手ではし辛い、布団を引き上げるのもそこそこに、ぷいと顔を逸らすと、すぐにでも規則正しい寝息を立て始めるだろう。 )

──……ギデオンさん。……おやすみなさい、愛してます。




378: ギデオン・ノース [×]
2023-03-07 02:56:28




(少なからず情を抱く身としては、それが女の力と言えど、離してくれないヴィヴィアンの手を無理に振り払えるはずもない。故に、逡巡する間も得ないまま、ぎしり、と発条を軋ませて、傍らにそっと腰掛ければ。ヴィヴィアンはあろうことか、ふたりの掌を甘い形に絡め直し、布団のなか──胸のあたりにぎゅうっと抱き込んでしまった。……いや、待て。流石に待て、とギデオンの顔に焦りが浮かぶ。無論、さっきの今で変に反応することは最早ないが──名誉にかけて、それは絶対抑え込むが。とはいえ場所が場所だ、少々どころではなく具合が悪い。ただでさえ彼女の胸元は、女性の中でも実り豊かなほうである。ふわふわもこもこした寝間着越しの柔らかな弾力を、否が応でも手の甲に感じてしまえば、大変気まずいこと極まりない。しかもたぶん、今回のこれは無意識だ──眠たいせいで自覚がないのだろう、だから余計に遠慮なく押し付けてくる始末である。ならば代わりに状況を収めるべく、口を開きかけたものの。……どこか、拗ねたように。しかしある意味、素直な声で。就寝の挨拶と、これまで何度も告げられてきたストレートな感情表現が、ギデオンの耳を打てば。男の浮かべる表情は、ごく静かなそれに変わり。ぎこちなく強張っていた片手からも、余計な力が自然と抜け落ちた。目を伏せて相手の顔を見下すころには、ヴィヴィアンは安らかな顔で寝入ってしまっている有り様だ。こちらの返事も聞かずに。つくづく、幼子のような寝つきの良さである。そう思いながらただ眺めるギデオンの横顔を、横の暖炉の火灯りだけが、複雑に浮かび上がらせる。
……長い、夜だった。とはいっても、ひとりそれを選んだのは、ほかならぬギデオン自身の意志によるものであったが。胸に抱き込む彼女の手から力が抜けて、ゆるりとほどけかけてからも、何とはなしに繋いだまま、その傍を長いこと離れず。相手の安らかな寝顔を見つめて、ひとり考え事をしていた。──ヴィヴィアンが、すぐに寝付かなかったとして。ならば彼女の最後の言葉に、己は何と答えたのだろう。己の胸深くにある感情は、既にいつしか自覚している。一方で、それを真に伝えてはならないという、戒めのような理性もある。今のギデオンには、自分の言葉に行動を伴わせることができない。口先だけの返事など、余計にこの娘を傷つけるだけだ。春からずっと、しゃにむにギデオンに纏わりついては顔を綻ばせる、この風変わりな娘の心を……悪戯に振り回すだけなら、それなら余程、伝えない方が良い。だが、もし懸念がなかったら。今なお贖罪の件がなかったら。己は、何と答えるのだろう。何と、答えたいのだろう。……そのために、何ができるだろう。
そんなことを考えているうちに、いつしかギデオンの瞼も、覚束なくなっていたらしい。心地良く爆ぜる火の粉の音や、潮騒にも似た吹雪の唸り、暖気に満たされた仄暗い室内といった環境も、意識を曖昧にするには充分だったろう。そしてそこに来て、深く眠ると寝相の変わるヴィヴィアンが、たまたま向こう側に寝返ったと同時、ほんのかすかにギデオンの手を引いた。ほんのかすかにだ。だというのに、なんだか促されたように体が錯覚して、何も考えずそれに任せた、ような気がする。正直、その辺りのことはほとんど記憶がない。目を閉じれば、暖かい闇がそこに広がっていて。そしてすぐそばにある何かのぬくさを、より一層感じられて。ろくに布団も被らぬまま──というより、その上に寝転がったまま。隣で穏やかに上下する小山に、太い腕を回しかけ。ほとんど無意識に、栗色の髪に鼻面をうずめるようにして、自分も深い眠りに落ちた。)





379: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-08 10:16:11




…………、っ、

 ( ビビのこれまでの人生で、これ程すっきり目が覚めた朝はなかっただろう。鳥の囀りに意識を浮上させられると、何やら背面が非常に温かく、上半身に乗る適度な荷重が心地よい。──もう少しだけ、と瞼も開けないまま寝返りをうち、その温かい何かにすりよろうとするも、上から潰されている布団のせいで上手く近寄れずに、それは億劫そうに、糸より薄くその瞳を覗かせた瞬間。視界いっぱいに飛び込んできた、朝から刺激の強い美形に、思わず声を漏らさなかった自分を褒めてやりたい。口元を両手で覆い──そっか、昨日……と、すっかり眠気の吹きとんだ脳内に思い出されるのは、ギデオンの優しさに甘えまくった己の醜態の数々。声を出して悶えたくなるのを必死に堪えて、相手の分厚い胸板に顔を埋めようとしたところで、相手との間に押し潰され薄くなった掛け布団があることに気がつくと、そういえばこの人は何故ここに、と控えめに身動きをとり、現在の体勢を把握する。どうやらビビの被る布団の上に横たわっているらしいギデオンが、いつベッドの上に来たのかまでは分からないが、こんな真冬に体調を崩したらどうするつもりだろう。昨晩だって、人に対してはあれ程過保護なくせに、自分のことになると全く無頓着で。寧ろ態と自分から傷付きにいくような節さえある、ビビはギデオンのそういうところが好きじゃない。ギデオンに包まれ、温かく安心できる布団の中、仕方なさそうに冷めた吐息を漏らすと。ギデオンにもかけてやるべく、下敷きにされている布団を引っ張るも、筋肉質な大男の質量が相手では、微かに衣擦れの音が響いただけで、肝心の掛け布団はびくともしない。これはもう小手先ではなく、布団の外から引っ張らないとどうにもならないだろう。そう力を込めて白くなった指先を離すと、無防備に眠る相手への呆れと愛しさを、その可愛いこめかみへ、控えめなリップ音と共に落としてから、温かな腕と布団の中からモゾモゾと抜け出そうとして。 )




380: ギデオン・ノース [×]
2023-03-08 12:56:49




……ん゙……

(こちらもぐっすりと安眠したギデオンだが、無茶な寝方に及んだせいで、未だ夢うつつの状態にあった。それだから、相手の口づけを許してしまうほど無防備な寝顔を晒したくせして、少しずつ抜け出そうとする身じろぎをいざ感じ取れば、どこか嫌そうにくぐもった唸り声を。目を閉ざしたまま顔をしかめ、回しかけた腕をぐ……と狭めて、行くなと意思表示してしまう。実際のところそれは、共寝した女を逃したくないという甘い雰囲気のものなどではなく、生ける温もりを手放したくないという動物的な反射に過ぎなかった──傍目にはどうかわからないが。いずれにせよ無自覚なまま、うっそりと駄々をこねるようにして、未だ惰眠を貪ろうとしていたものの。自然にか、それとも相手に促されてか、意識がゆっくりと泥濘から浮上し。眠たげに開いた青い瞳を薄ぼんやりと投げかけて、ようやく相手の姿を見留めれば。数秒ほどぼうっとしていたが、やがて非常に鈍足に、困惑の色が差しはじめ。寝起き特有の掠れ声で、まだ寝惚けているのがありありと見て取れる、頓珍漢な問いかけを。)

………………。
……? なんで……おまえが……ここで寝てる……





381: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-10 10:58:00




ごめんなさい、起こすつもりは──

 ( 冬本番も始まって長い吹雪の晩に、毛布一枚もかけずに寝ていたのだ。そりゃ人の体温が恋しくもなろうと、すっかりギデオンの意味深な行動には期待しない癖がついている。しかし、起こしてしまっては本末転倒ゆえ、強く回された腕の中息を潜め、どうしたものかと逡巡しているうち、薄い皮膚に閉ざされていた薄花がゆっくりと顔を覗かせると。顔も洗っていない寝起きの様を間近で見られるのを嫌って、相手の鎖骨の辺りへ額を寄せる。そうして申し訳なさそうに眉を八の字に歪め、表情にあった声音を漏らしかけた時だった。頭上から上がった頓珍漢な質問に、思わずと言った調子で訝しげな──見方によっては、どこか悲しげにも見えなくは無い表情を相手に向けると、相手が寝惚けているのだと気づいたのは、その無意識に誤解を招きかねない発言を完遂した後で。 )

──えっ、ギデオンさんから……のに、覚えて……ないんですか?




382: ギデオン・ノース [×]
2023-03-10 12:41:23




……俺……から……
…………──ッ!?!?

(相手の悲哀の表情を不可解そうに眺め、ぼんやりと鸚鵡返しに呟いた、その数秒後。青い目を突然大きく見開いたかと思えば、大きく仰け反るようにして上半身を跳ね起こし。デュベの上部を彼女の背中側からいきなり乱暴に引っぺがしてしまう。そうして相手に構わず、なりふりも構わず、手っ取り早い目視確認に及んだところ。──いや、どうやら違う、恐れていた事態ではない。ヴィヴィアンは昨夜の寝間着を、ちゃんと纏ったままでいる。過去の無数の経験からして、自分が一線を踏み越えたならこのままではいられていないはず。つまり、その、セーフらしい。そうとわかれば、今度はあからさまにがっくりと脱力し。再びベッドに仰向けになると、片手で顔を覆いながら、「脅かすな……」と呻き声を。無論、今も今で、常識に照らせば由々しき事態ではあるはずなのだが。“若い後輩に手を出しておいてその記憶もない”という最悪の筋書きは杞憂だった、という安心のほうが、遥かに大きく働くようだ。そうして人心地ついてくると、顔を合わせづらいのか、窓の方に視線を投げかけ。断熱効果のある魔法植物で編まれたカーテン越しに、雪の照り返しで明るくなった外の気配を眺めながら、また見当違いな心配を投げて。)

悪かった……寝苦しかったろう。





383: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-10 15:23:14



──ッ! 最ッ低!!

 ( 頭上から振るたどたどしい鸚鵡返しに、ああ、寝ぼけてるのね、と一人納得したのもつかの間。物凄い勢いで起き上がったかギデオンに、心地よいデュベを容赦なく引き剥がされ、きゃあッ、と惨めな悲鳴をあげる。そうして白いシーツの上、不躾な視線に可哀想に丸まって、何事かと目を白黒させていたものの。何かを確認したらしい相棒が、力なくシーツに沈みこんで行くと、今度は逆に起き上がって心配そうな表情で覗き込む。そうして一瞬、ギデオンの呻きの意味を理解できずに目を丸くするも、一拍遅れて自分が何を疑われていたのか気づいた途端。そばかすの浮かぶ頬をカッと赤く染め、下ろされている方の腕へ、堪らずぺしっといつぞやの猫パンチを繰り出したのは許されたいところ。──そうして、早朝から騒がしい一悶着を終え、態とらしく顔を逸らすギデオンに呆れたような溜息を漏らすと、先程彼に剥かれたそれを拾い上げ、戯言を吐いて横たわる仕方の無い生きものに掛けてやる。覆い被さるようにして体重を乗せ、ぐりぐりと尖った顎をその筋肉に食い込ませながら、この機会を逃すことなく、追い打ちとばかりに彼の無茶を窘める表情を見つめる勇気があったなら、いつになく真面目で、真摯な心配が滲んでいることだろう。 )

……本当に、いつからこっちで寝てたんです?
こんなことなら、最初から一緒に寝てたら良かったでしょうに。まったく、布団もかけずに……体調管理は基本じゃないんですか?



384: ギデオン・ノース [×]
2023-03-10 16:00:04




寝落ちたんだ……世話のかかる奴をあやしてるうちに。

(相手が爆発させた憤慨も、真剣な声音の指摘も、いずれももっとも極まりない。故に今ばかりは、彼女の密な戯れを跳ねのけることもできず、されるがまま横たわっていて。とはいえ決まりの悪さから、素直な受け答えがどうにもしづらく、顔を背けたままぼそりと呟く。……世話のかかるも、あやすも何も。そんなものが必要ないくらい相手の寝つきが良いことは、二度の相宿で既によくよく知っているはずだ。そのためギデオンの声音には、責任転嫁の卑怯さに対する自覚が、それはもうありありと滲んで聞こえることだろう。
と、言い訳はそのくらいにして。「結果論だが、実際体調は問題ない。……大丈夫だ」と、ヒーラーである相手に冷静に申告しながら起き上がり、億劫そうに寝癖を掻いて整える。ふと窓の日差しの角度を確かめるに、今は朝飯時のようだ……やはり相手を抱き込んで眠った日は、どうにも寝坊がちになるらしい。そうしてひと息ついたところで、不意に外が騒がしくなる。「雪だ雪だ雪だ──!!」とはしゃいでどたどた駆けていく、良い歳をした野郎どもの声。次いで、「うるっさい! ほかの部屋にご迷惑でしょうが!!」と追っかけていく女たちの声。どうやら、同じ宿に泊まった他の冒険者たちも、活動を始めたようだ。呆れたように目を狭めてから、ようやく相手と顔を合わせると。首の後ろを掻きながら、ようやくベッドから降りて。)

……俺たちも朝食にあずかろう。そのあとは、パーティーリーダーに指示を仰いで……大方、まずはこの町の手伝いだな。
具合が良ければ、昼にはここを引き上げられるかもしれん。





385: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-11 09:31:07



……ん、それなら一番です!

 ( されるがままにぐったりと横たわっている相手が漏らしたのは、不貞腐れた子供のような軽口。しかし、その声音があまりにも分かりやすく罪悪感に濡れているものだから、常に冷静な大人である相手の珍しい姿に、つい愛しさが勝って、呆れた溜息ひとつで許してしまう。起き上がる直前の相手を、布団越しにぎゅっと抱き締めると、相手に合わせて起き上がり、その冷静な申告に頷く頃には、いつも通りの真っ直ぐな笑みを取り戻していた。
そうして、相手と同じ側から床へ降り立つと、野放図になった毛先をあちこち元気よく揺らして、大きな伸びを。完全にいつもの冷静さを取り戻した相棒に頷きながら、その整った横顔を見あげれば。自分だけではきっと手が届くのにもっと時間がかかっただろう、一昨日からの素晴らしい経験。焦燥にかられたビビにかけられた何処までも優しい言葉と、言葉だけでなく一晩誠実に果たされた約束。その他沢山の気持ちが込み上げて、いてもたってもいられなくなってしまう。既に朝の準備にかかろうとしているだろう相手を驚かさないように、中身に触れないように気をつけながら袖を引くと、満面の笑みを浮かべて、心に浮かぶまま素直な気持ちをぶつけるのだった。 )

女将さんに夜食のお礼もしないとですね!
……ギデオンさんも、ありがとうございました。早く終わらせて一緒に帰りましょう!


( / お世話になっております。ダブルベッド編のお付き合い誠にありがとうございました!
もう完ッ全に甘々のラブコメで、ギデオン様の愛情故の誠実さに惚れ直したり、奇行にお腹を抱えて笑ったりと非常に楽しませていただきました。
今後の展開について相談させて頂きたく声をかけさせていただいたのですが、事前の計画通りこのまま『黒い館編』に突入という形で宜しいでしょうか?
とうとうギデオン様の辛い過去をビビが知ることになるということで、今から非常にドキドキしております。
しばらくは、春の新人歓迎会ということで、仄々イチャイチャ回が続くとは思いますが、引き続きよろしくお願い致します。 )




386: ギデオン・ノース [×]
2023-03-11 12:13:54




(/お世話になっております! こちらの次ロルに次章への繋ぎを盛り込みたい関係で、一旦背後会話のみ失礼します。

まずはこちらこそ、第二次ダブルベッド編ありがとうございました。前回より格段に親密度の増したふたりがてんやわんやしている様を、こちらも大いに楽しませていただきました。ビビの深度を増したしたたかな魅力や、愛情に満ちた仕草のひとつひとつがたまらず、何度も読み返しております。

次章より、満を持して『黒い館編』に向かっていく形で相違ありません。それにあたり、年末→春の歓迎会、ということで最低でも3カ月ほど飛ばすことになるかと思うのですが(日本式に倣う場合は4月下旬まで=4カ月?)、「その間の出来事でこんなことがあったことにしたい」というようなお考えなどありますでしょうか?

この辺り、後程『黒い館編』があった以前の小話に興じたくなった時に便利な空白期間になるだろうと思いつつ、飛ばす月日が長いので、ある程度は認識を共有しておきたいなと。

こちら側としては、クリスマスや年末年始はワーカーホリックなギデオン側が普通にクエストの予定を入れていたせいで一緒に過ごせなかった事情があったり、それでも年明けのどこかで何だかんだふたりでクエストに出かけてそのことが解消されたり、建国祭編よろしく聖燭祭・謝肉祭の裏方に駆り出されたり……というようなイベントがあったことにできればいいなと思います。
また「黒い館編」に備え、歓迎会が開かれる数カ月前に人事異動が行われた関係から、ギデオンの過去の噂(あれだけ功績を出してるのに昇格できないのは、昔不祥事をやらかしたかららしいぞ)(子供が死んだって聞いたぜ)が再び囁かれるようになった、だとか。出世街道でギデオンに対抗したい冒険者が噂を膨らませた、なんてこともあり得るかもしれません。

毎度毎度ややこしい相談を持ち掛けてしまい恐縮ですが、その辺りの状況認識について、主様のやりやすい案をお聞かせくださればと思います。)





387: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-12 12:00:59




( / ご確認ありがとうございます。

現状大きなイベントについては、背後様にご提案いただいた形が素敵だと考えております。それから、バレンタインは恋人に贈り物をするイベントとのことで、実在世界のイギリスやドイツの感覚に近い感じかと認識しております。であれば、現時点で2人は恋人ではありませんが、ギデオン様を好きと公言して憚らないビビは、ギデオン様にお花かお菓子辺りをプレゼントしていそうかなと。

それから日常的には、ビビは今回の件を受け、断られなそうなタイミングを狙って、ギデオン様へちょこちょこ差し入れや、補給食など手作りのご飯で胃袋を掴みにいきそうです。

我ながらほのぼの食い気路線ばかりですが、こんな感じで大丈夫でしょうか。ビビはギデオン様の悪い噂等はそもそも気にしないか、ギデオン様が気にするようであれば、それに対しては憤慨する程度かなと。相変わらずめげずに懲りずにアタックし続ける日々です。
もしもっとシリアスに振りたいということであれば、調整可能ですので、よろしくお願い致します。 )




388: ギデオン・ノース [×]
2023-03-12 20:53:19




(/バレンタインイベントや、今回をきっかけとした胃袋懐柔作戦について、いずれもかしこまりました!
実のところ、背後もこのほのぼの食い気路線を大いに楽しんでおりまして……主様的にも問題なければ、寧ろ大歓迎です。
また、ともに冬生まれのふたりは飛ばした数カ月の間に誕生日を迎えるかと思うので、その辺りもいつか楽しめればとぼんやり考えております。

ギデオンの過去の噂については、「館編の導入を不穏に彩る前提情報として小出ししたい」という意図ですので、ビビの様子は主様の思い描くもので全く問題ありません。
周りのギデオンに対する目が少しざわついていることを感じ取ってなお変わらぬ様子は、ビビの愛情深さの演出にもなるのではないかなと。
また、肝心の黒い館編についてでsyふぁ、背後同士がラブコメ好きである以上、あまりシリアスが長くなっても、計画遂行ばかりに気をとられ本末転倒になってしまう……という懸念が見込まれますので、適宜簡素な方向に調整できればと考えております。

以上、特に問題なければ、お返事には及びません。
いつも通り、盛り込みたいように盛り込んでしまった結果非常に長大なロルになっておりますが、主様におかれましては、ご無理のない範囲で綴ってくだされば幸いです。また、確定が多々ございますが、どうしてもこうがいいというわけでは全くございませんので、次でも後でも、お好きな方向に改変していただいて構いません(その際はご迷惑をおかけします……)
引き続き、館編のプロローグである小話・新人歓迎会編も、よろしくお願いいたします。)





……ああ。
カレトヴルッフの名が廃らないよう、しっかり活躍してやろう。

(うら若いヒーラー娘は、いかにも幸せでたまらないといった様子で、こちらに明るく笑いかける。朝日の差す部屋で見るその姿は、やはりどこまでも清らかで、目を細めてしまうほど眩しい。……だが、いつぞや船上で見たあの時より、純粋さは残したまま、どこか深遠さを増しているように感じられるのは、はたしてギデオンの気のせいだろうか。それとも、彼女は何も変わっておらず、ギデオンのほうの見方が──心境が──変化しただけなのだろうか。
ふと控えめに引かれた袖に目を落としてから、数秒後。結局、半ば諦めるように緩む形で、仕方なさそうな笑みを漏らす。思えば、シルクタウンでのあの夜から半年以上が経った今も。結局己は、彼女は一緒にクエストに出かけている。共に過ごしながら時が経てば、変わるもの、進んでいくものもあるだろう。それを認めないのは愚かだ。……けれど、少しだけ癪だ、だから。相手の促すまま朝支度にとりかかる直前、不意にもう片方の手を伸ばし。あちこちぴょんぴょん跳ねている相手の栗毛を、一度だけくしゃりと掻き撫でて。その緑色の目を、しっかりと見つめながら、こちらも笑み返すことにした。)

(──やはりその後の雪かきは、精気に溢れる冒険者たちが何十人もいたため、順調に完遂し。雪の名所の宿場町を、当日中にに発つことができた。しかし、いざカレトヴルッフに帰還すれば、今度はまた別の光景がギデオンたちを出迎える。ギルドの内装だけでなく、外装、そもそも東広場一帯まで、樅の樹や赤い蝋燭、作り物のトナカイといった聖誕祭の装いに、がらりと様変わりしていたのである。宿の女将も言っていたが、そういえばもうそんなシーズンなのだった。まじない捜査に忙しくて思い出す暇もなかったが、中央広場では数週間前から、クリスマス市をやっているはずである。昨日迎えた冬至より先は、国民的な年末休暇だ。街行くキングストン市民の人々も、どこか楽しそうに浮かれた様子が見て取れる。
しかし、元から仕事を詰め込みがちなギデオンには、この雰囲気も関係なかった。無事に延泊せずに済んだのだから、予定通り、明日から始まる中期クエストに参加申請したのである。無論、常日頃ギデオンにアタックしてやまないヴィヴィアンは、これを聞いて大いに落ち込んだ。しかしすぐに、巨人狩りの後に一緒に宿に泊まったことを、クリスマスの前払いと思うことにしたらしい。それでもしょんぼりした様子が拭いきれないものだから、流石に良心が咎められ。イヴもまだ明日という段階のうちに、マーケットで見繕った赤いマフラーを贈っておいた。……あのバロメッツの外套に、よく映えると思ったのだ。まかり間違っても、かつてヴィヴィアンに贈られたカイロの小袋と似た色合いをしていると思ったからではない、断じてない。無論、これは個人的なプレゼントというよりも、今年相棒だったヴィヴィアンを労う意図のものであり、それにしては少々雑なプレゼントだったと言わざるを得ないだろう。それでもヴィヴィアンの喜ぶ顔を見られたから、それを密かに目に焼き付けて、翌朝すぐにキングストンを発った。──彼女の顔を見たのは、その年はそれが最後になった。)

(王都に帰ってしばらくの後、ヴィヴィアンと数週間遅れの新年の挨拶を交わしてから、すぐに魔花狩りに出ることになった。そのままカレトヴルッフ湾岸支部の応援で暫し滞在した後、ようやく本部に戻ってからも、次は聖燭祭の日の観測協力が待っている。合間に魔獣狩りを果たせば、その先にはキングストン謝肉祭の警備、冬眠しているノームたちの保護、湖を荒らすケルピー狩り、人食いフェンリルの大規模討伐……と、結局休まる暇がない。それを見かねたヴィヴィアンに、誕生日だバレンタインだだと、イベントという名の休息をとらされ、事実ギデオンもそれでようやく疲れを癒しているうちに。長く続くの冬は、いともあっさりと過ぎ去っていった。雪が融ければ、新芽が萌え出る。訪れたるは春の始まり、ペチュニア最初の開花時期。──焼け落ちたはずのあの館の蕾も、再び妖しく綻びはじめる。)

(しかし、不穏の足音が聞こえてはいないギデオンも、この時期が近づくと少し心が重くなっていた。ヴィヴィアンに未だ話せていない、己が昔招いた事件。あれから、じきに13年目を迎えるせいだ。13年。13年。そんなにも長い間、あの子どもたちは、人生を奪われ続けている。……そしてなお悪いことに、秘されていたはずのそれが今更、カレトヴルッフの冒険者たちの噂にのぼるようになりはじめている始末だ。──聞いたか? ──聞いた、聞いた。魔剣使いのギデオンって、昔、不祥事やらかしてたんだろ。──それってやっぱり、女関係? ──いや、それがどうも違うみたいで。子どもを死なせたらしいんだ。しかも、何人もなんだとよ
暗い誹りというほどではなく、囁き合いにとどまっているが、事実に限りなく近くはあるだけに、否定しきれず気が重い。その一方、今更話題になっている原因にのほうは、あっさりと想像がついていた。春から新人冒険者を迎えたカレトヴルッフでは、熟練冒険者たちの間で、しばしば新人の奪い合いが繰り広げられる。自分のシンパをどれだけ得るかで、その後の人事異動に大きく響いてくるからである。このタイミングで、野心家のきらいがある魔剣使いのジャスパーが、功績やキャリアが同格……つまりライバルになり得るギデオンの過去を、嗅ぎまわる様子があった。だからおそらく、あの男の差し金だろう。そんなことをしなくとも、ギデオンはこの先昇格がないのだから、奴の脅威になり得ないというのに。しかし確たる証拠がないままでは、何を咎めるわけにもいかない。マリアはジャスパーに腹を立てていたが、彼女の情報網をもってしても、ジャスパーの非を突き止めることや、流出した情報を操作することは、なかなか難しいらしい。組織に大量の新人が入れば、彼らが上手く馴染むまで、周囲も多少流動的になるからである。……人の口に戸は立てられない、それはもう仕方がない。であればギデオンは、いっそうギルドに貢献して、その忠誠心や能力を証明し続けるのが一番良い。結局成果がものを言うはずで、若手もそれを見てくれるだろう。幸い、新人たちの噂話を否定してくれる友人たちや後輩が何人かいる。何より、相棒のヴィヴィアンの態度は、全くもって変わりない。彼女も噂を小耳に挟んでいるに違いないが、いつもどおり明るく、したたかで、懲りずにギデオンに求愛してくる有り様だ。いつまでも応えないくせして、その変わらぬ日常ほんの少し心が救われる日が来るなどと、思ってもみなかった。)

(──そんな、嵐のような春が始まり、3週間ほど過ぎたころ。カレトヴルッフで毎年恒例の、春の新人歓迎会の日がやってきた。ギルドロビーが宴会会場に様変わりし、隣のマーゴ食堂が貸し切りの厨房となって、大量の酒や馳走を用意してくれるという、なかなか大掛かりな催しである。職種関係なく皆集う上、多くの連中が典型的な冒険者気質であるから、その騒ぎは大変賑やかなものになる。ギデオンもできる仕事は担おうと、各種調整を繋いだ後は、事務方の手が回らない買い出しを引き受けていた。今や夕方、あと1時間ほどで開宴の時間だろう。自分の受け持った仕事がきちんと果たされているのを確認すると、物品の一時置き場になっている募集掲示板付近なり、備品が眠っている地下倉庫なり、あるいはギルドエントランスなり、仕事があるだろうあちこちに向かう。まだ時間も余裕も残っているのだ、今日が非番であるために宴会準備に回されている若い冒険者を手伝おうか。)





389: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-13 21:07:31




( / 温かいお言葉の数々ありがとうございます。そう仰っていただけて非常に安心致しました。
お伝えするのが遅くなってしまい、非常に反省しておりますが、ビビの誕生日は12/26から30のどこか辺りを検討しておりまして。ギデオン様からのマフラーはビビにとって、人生で一番嬉しい誕生日の贈り物になったと思います。
いつか初めてのギデオン様の誕生日、当方も非常に楽しみにしております!

返信不要との事でしたが、ひとつ思い出しましたのでご連絡をば。
この空白期間内に、いつか仰っていたペドロ君との擬似家族回が来るものと認識しております。そこで初めてギデオン様のビビ呼びが登場するかと思われますが、
当初、ギデオン様にもいつか愛称で呼んでもらうつもりでいたビビですが、最近は唯一 正しい名前を呼んでくださる声に、特別感を覚えていそうだなと。一日ビビと呼ばれた最後に、何かしらの形で『ギデオン様にヴィヴィアンと呼ばれるのが嬉しい』旨を伝えたということにしてくださいませ。

黒い舘編前の演出についても確認致しました。
読み応えあるプロローグ、心より楽しませていただきました。改変点など全くございません、ことある事にギデオン様を休ませたがるビビが、背後ながら凄くありそうだなあと、光景が目に浮かびます。
本日はロルにまで返信が及ばず、ご連絡だけで失礼致します。こちらこそ今後ともよろしくお願い致します! )




390: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-14 16:37:16




 ( クリスマスを境に、ギルドのマドンナの首元に揺れるようになった鮮赤は、ほかの冒険者達の脳内へ一斉に同じ人物を思い起こさせたらしい。すわ首輪かマーキングかとどよめく彼らと対照に、ビビの喜びようは凄まじく。このマフラーの話題になると、顔の下半分を温かそうに埋め、ほこほこと幸せそうに微笑む彼女の耳に、その心無い謗りを入れられる者などカレトヴルッフにはいないのだった。
さて、そんな白い外套と共に、今年ビビのトレードマークとなったマフラーも、いい加減季節外れになってきた3月も終盤。とっておきのお洒落洗剤でマフラーを洗い、来年へ向け泣く泣く終い込んだヴィヴィアンの耳にも、ギデオンの不穏な噂は届いていた……と言うよりは、未だ諦め悪くビビを付け狙っている連中によって嬉々として、それはそれは早い段階で届けられていた。──まったく、馬鹿馬鹿しい。その噂が嘘か本当か、自分もまた判断する術を持ち合わせていないものの。そんなことがある訳が無いと言い切れるほど、呑気な稼業でないことも重々承知した、その上で。ちゃんとギデオンを見ていれば、仮に噂が本当だとして、彼が望むべくして子供たちを害した訳がなく。寧ろ、救うために最善を尽くしたろうことは、容易に推測できるだろうに。噂している連中のうち、果たして何人が、ギデオンが全力を尽くして救えなかったものを、救える実力があるというのか問い詰めてやりたい程だ。いつしか「何人もの人生を壊してしまった」と、暗い顔をして打ち明けてくれたギデオンを思い出し、それと今回の事が関係しているのだとしたら──ギデオンの心の傷は、ビビの想像するよりはるか深いのかもしれない。それでも、正義の味方のような振りをして、本人のいない所で噂し合う連中と、ギデオンの心の安寧、どちらを優先すべきかなど天秤にかけるまでもないことだった。 )

──あ! ギデオンさん!

 ( 新人歓迎会開宴があと一時間ほどに迫ったギルドロビーにて。会場の設営を担うのは、自分達もここ数年のうちに此処で祝ってもらったばかりの若手連中だ。邪魔なカウンターやテーブル、酔っ払い達に破壊されては困る装飾品の類を運び出し、その代わりに、神木ガオケレナや、冒険者達の守り神アテナのタペストリー、色とりどりのキルトが繋ぎ合わされたテーブルクロス、飲食に適したマーゴ食堂のテーブルや椅子が運び込まれたギルドロビーは、ご馳走の並んでいない今でさえ非常に心躍る空間と化しており。これから数年、未だ依頼や仕事への恐怖心が募る新人達が、少しでも前向きな気持ちでロビーを訪れられられるように、そんな願いがたっぷり込められている。既に大物の搬入は終わったとはいえ、あとは時間が許す限りたっぷりの装飾と、後片付けが残る会場にて。重い扉が開いたかと思うと、その奥から顔を出したギデオンをいち早く見つけて、その長い脚をゆったりと投げ出すようにして脚立へと腰掛けていたビビの表情に、みるみると明るい華が咲く。ビビにいい所を見せようと、さりげなく周辺に固まって作業をしていた青年達を素通りし、ギデオンの方へ飛び付くような勢いでかけよれば、溢れんばかりの期待が煌めく瞳でギデオンを見上げて。 )

……お疲れ様です!
リズから買い出しだって聞いてたんですけど、……もしかして、一緒に飾り付けしてくださるんですか?




391: ギデオン・ノース [×]
2023-03-14 19:56:20




(/ビビの誕生日、名前の呼び方に関するビビの心境変化について、かしこまりました! 完全な余談ですが、マフラーでご機嫌なビビがあまりに破壊力高すぎて……心底癒されまくっております……
一点、ごく些細な修正の共有を。ビビのカイロについてなのですが、赤いのは小花の刺繍部分であるのを記憶違いしてしまっておりました。また同時に、中期クエストに発つギデオンの無自覚マーキング説に大爆笑させていただきました。なので、ギデオンが例のマフラーを選んだ理由も、是非そちらの無意識によるものということにさせてください。こちら本当にささやかな変更ですので、お返事には及びません。
常日頃より温かくお気遣いいただき、本当にありがとうございます。また何かあればお気軽にお声がけくださいませ……!/蹴り可)



ああ、そっちもお疲れさん。

(耳慣れた歓声に呼ばれ、ギデオンもぴくっと振り向き。駆け寄ってくる相手を見留めると、春用のそれに衣替えした長い脚衣を捌いて、こちらからも歩み寄る。そうして応対する表情や言いぐさは、天真爛漫な彼女に比べれば、一見事務的に、淡々として見えるだろう。しかし、熟練戦士と若手ヒーラー、年代も職種も大きく異なるはずの彼らは、会話の呼吸がすぐさま自然に溶け合っているし、顔色を見ればいくつかの確認も省けたらしい。そんな熟した親密さを眺め、密かに打ちひしがれる青年たちもいれば、遠くでにまにましながら顔を寄せ合う若い女性陣も多々いる。しかし、戦闘中は視野が広いはずのギデオンも、そんな周囲にはさっぱり気づかぬままでいて。「生憎、手持無沙汰でな」と、笑顔の相手とは反対に、小さなため息を落としてみせる。もっとも、他人の分の仕事も片付けてきた後であるから、生憎というのは冗談だ。故に、薄青い瞳の奥に戯けの色をちらつかせたまま、ごく緩く首を傾げ。いつぞやと似た言い回しを用いて、この場で作業して長い彼女に命令を仰ぎ。)

小難しい魔法の要る作業はできないが……適当な仕事をくれ。“指示されたことはする”。





392: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-15 21:46:42




……あら。"言いましたね?"

 ( 二人が初めて共闘することとなった、かの魔獣討伐依頼。今まさに当時と同じ季節がまた始まらんとしている。明らかに戯れの色をのぞかせたギデオンの発言に、ビビの表情にもまた楽しそうな、可笑しそうな微笑みが宿り──それでは!と、相変わらずテキパキと飛ぶ、情け容赦のない指示の甲斐あって、今年の新人歓迎会は無事定刻通りに開催されたのだった。 )

 ( この春の大宴会は例年、一部野心溢れるマメな連中も中にはいるものの、大多数の冒険者たちにとっては、体良く酒の飲める大宴会である。ただでさえ力自慢の大男が集まっている上、箍の外れた彼らがご馳走を平らげ、酒を飲む勢いと言えば牛馬の如し。マーゴ親子が食堂の威信と今後の宣伝を兼ね、次々と繰り出す皿の数々は、自分の分を皿にとり、次にテーブルを見る頃には同じ料理は二度とない程である。当然酒も各種樽単位で容易される有様で、とにかく量を確保するためだろうか。ビビが酒に詳しくないということもあるだろうが、ここで初めて見る酒に出会うことも少なくない。ビビがギルドに所属する数年前、その年の歓迎会では、名はなんだったか……東洋のとんでもなく酒精の強いそれが混ざりこみ、異例の速さで会がお開きになったという噂も聞いたことがあるが、果たして真偽は定かでは無い。あちこちで調子にのった者が噴出しては、物凄い勢いで制圧のプロ達に鎮圧される、なんてことを繰り返しながら、宴もたけなわ。ビビはと言えば、女冒険者の固まる辺りで、先程カトリーヌに注がれた酒に凝っていた。それは花のような、果実のような、華やかな香りが心地よく、味も甘すぎず辛すぎず、すっきりと口当たりの良いそれで。あまり酒に強くないビビもすいすい飲むことができ、普段尊敬して止まない彼女たちに、飲む量だけでもついていけるのが嬉しくて仕方がなかったのだ。比較的グラスを割らない女性陣達に廻される華奢なグラスを握りしめ、真っ赤な顔をして、にこにこと頭を揺らすビビの焦点は、明らかにぼんやりと何処にもあっていなかった。最早何を言っているかよく分からないが、賑やかに上がる大好きな人達の歓声と、美味しい食事、お酒も美味しくて──楽しいなあ、嬉しいなあと、小さなしゃっくりに肩を揺らしながら、次々グラスを煽る今のヴィヴィアンには、酔っ払いにありがちな無根拠な無敵感が漂っていて。 )

──ん、く……っ、……っ……?




393: ギデオン・ノース [×]
2023-03-16 00:46:23


(※背後は津軽弁ノンネイティブです、不正確な点はどうかお見逃しくださいませ!)



(『聖ゲオルクに──乾杯!』『乾杯!!』と、お決まりの音頭を口火に、いよいよ始まった歓迎会。主役である新人たちをもてなそうという和気藹々とした雰囲気は、しかしほとんどすぐに喧騒で塗り潰された。何せ、酒精の回りやすい野郎どもに限って、初っ端から勢い任せにガンガン杯を干していくのだ。そうすることで気遅れがちな新人たちが飲みやすい雰囲気を作る……というの意図もあろうが、自分らが酔いどれたいのが九分九厘だろう。そうして開宴から1時間も経つ頃には、やれもっと肉を寄越せだの、やれ樽ごと持って来いだの、野太い声での言い合いへし合いが、ホールじゅうにわんわんこだますようになり。これが2時間目に差し掛かると、上を下への大騒ぎは当たり前。調子の良い奴らは千鳥足で開けた場に繰り出し、決闘に興じはじめる。小突き合い程度ならきりがないので周りもとやかく言わないが、如何にも調子に乗り過ぎていたり、下手に実力の高すぎる者同士であったりすると、皆示し合わせたように、てんでにふん縛りにかかり。
そうして3時間、4時間──と、時間がどんどん進むにつれ、辺りはどんどんカオスな様相を呈していく。熊のように大柄な重戦士たちと単身飲み比べを挑み、ぶっちぎりの優勝を勝ち誇るカトリーヌ。新たな娘を誑し込み、絢爛な美女たちの剣呑極まりない視線をその背に突き刺されているデレク。クエストにおいて高い危機察知力を誇るアリスは、悪酔いした輩がその顔色をうっぷと変える数分前には、さらりとその場を離れるから、彼女の様子を見て席替えする女性陣も後を絶たない。そのひとり、“氷の受付嬢”と呼ばれるだけあって普段恐れられがちなエリザベスは、その鉄壁のガードが酔いで緩んだのを良いことに、結構な数の青年たちに口説かれまくっているようだ。しかし如何せん、本人の応じる言葉は北国訛りが全開で(「わのあんこァなじょしてあんサあったらに知きやんぷりばすらはんですだなァ? たげだばかちゃくちゃねぇはんで、もうえへでまってぇっきゃァ──」)、彼女が何を言っているのかまるでわからない男たちは、皆どうにもこうにも攻めあぐねている様子。そんな有り様をにこにこと──もとい、目を離さずに眺めているのがバルガス。先ほどから同じ槍使いの先輩のホセに「もっと飲めよオラァ!」などとダル絡みされまくっているが、それにほどほどに付き合いつつ、上手くいなしてしまう術まで心得ているらしい。「この青年は間違いなく大成する」と言わんばかりに周囲が大きく目を瞠るが、当の本人ははたして気付いているのかいないのか。その巧みなホセ捌きも、同郷の幼馴染を見守り続けるためだろうか。そのホセは五十路がらみのくせして盛大にはっちゃけており、後輩男子たちにさっそく尊崇されていたジャスパーの顔面に、魔法で蘇らせた煮魚をびちょっとけしかけたため本気でブチギレられていた。彼らの応酬のあおりを受け、ホセの呪いの流れ弾を受けてしまった不憫なジュナイドは、その服がパーン! と千々に弾け飛ぶ。途端、乙女宜しく両腕を交差させて汚い胸元を隠す相棒を見て、すかさず激高したドニーが長椅子の上に立ち上がったはいいが、短足な小男なので大した迫力は出ず、おまけに足元が思い切りふらふらだ。中年どもが揉み合うその後ろでは、レオンツィオが新人の少年を口説こうとしてアランに必死に止められており、そのアランの頭を、おうおう号泣するスヴェトラーナが執拗に撫で繰り回している。マリアは最初のうちに安全な席に避難して、セオドアやアリアといった若手と穏やかに話していたはずだが、今はとっくに、息子のペドロを迎えるべく引き上げてしまっていた。故に、新人へのだる絡みを注意されて不貞腐れた野郎ふぉも(と一部のお姉さまがた)が、ギルドに入って数年目の彼らに目をつけるのは必然のこと。そんな彼らを守るべく、酒の強さを武器に盾役を引き受けていたのが、その頃のギデオンの様子──というわけだ。)

(宴も五時間目に突入したころには、騒ぎまくっていた連中もようやくあちこちで潰れ始め、喧騒がほんの少し落ち着いてきた(マルセルとフェルディナンドは空き樽に逆さに突っ込んだか突っ込まれるかしており、「こいつは東洋由来の犬神家という亜人一族が現れる時の出で立ちだ」と、真面目腐った顔のホセが新人たちに教育していた)。とはいえ、元から体力のある冒険者どもだ、肝臓の強い連中はまだまだ元気ぴんぴんである。そのうち「席替えしようぜ!」と言い始め(かれこれもう七度目だ)、やいやいと移動し始めた様子だ。先ほどセオドアとアリアを逃がしたギデオンは、そのまま気の合う連中と静かに飲んでいたかったのだが、目敏く発見した同僚は、どうもそれがつまらなかったらしい。有無を言わさぬ雰囲気で「おまえはあっち!」と激しく追い立てられ、仕方なく向かった先は──なんと相棒のいるところ。というか、その周りにいる同席者の男女は皆、年代を問わず独身、しかももしかすれば片想い先の相手が同卓にいるような者たちである。先ほどまでそこは華やかな女性冒険者だけの空間だったはずであるが、恋人や夫のいる者は皆、席替えを機に気を利かせていなくなった様子。どうやら暗黙の見合い席、の皮を被った、じれったい一部に対する焚きつけの席であるらしいそこに己まで突っ込まれるのは、つまりそういうことだろう。振り返って同僚を睨むが、良い仕事をしたと言わんばかりのドヤ顔を返されてうんざりする結果に終わり、仕方なく空いた席に──ヴィヴィアンからやや遠い席に落ち着こうとしたものの。一部の青年の恨みがましい目を笑顔でガン無視した女弓使いに、「あんたはこっち!」とこれまた強引に引き立てられ、仕方なく相棒の隣の椅子を引く。自然、当人の様子を確認してみたところ、一年前のあの件で随分深酒を警戒していた筈の彼女が、結構しっかり酔っているらしいことにぎょっとして。……まあ、今宵はそういう席ではあるが、普通に体調面も心配だ。故に、周囲が盛り上がっていてほとんどこちらを見ないのをいいことに、マーゴ食堂のアルバイトに冷や水をひとつ持ってこさせると、それを相棒に差し出して。)

……随分飲んだみたいだな。ほら、こいつも少し呷れ。





394: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-17 00:39:04




──……っ、ギデオンさん!

 ( 人の脳は得られる情報の全てに対して、ただ平等に振舞っている様で、割と重要な情報とそうでない情報を取捨選択している。あちこちで実に面白いことになっている会場の光景など、酒精に侵され何もまともに捉えちゃいなかった視覚が映した、ギデオンの画質の良さたるや。その瞼の薄い皺の一本まで、世界一愛おしく大好きな相手の登場を、元々緩みきっていた表情を更に溶かしてで迎えれば。ギデオンの隣にいることが嬉しくって堪らないといったいつもの表情が、いかに理性的で抑えられた物だったのか思い知らせるかのごとく。熱く潤んだ瞳は、色んな角度からのギデオンを楽しむかのように、ずっと相手を捉えて解放する気配がない。それでもグラスを差し出す相手の要請へ、「はぁい!」とお利口に見えたのはそこまで。両手でそれを受け取ったまでは良かったが、なんたって比喩でもなんでもなく、その双眸はギデオンしか捉えていないのである。元気よく煽った水は大いに的を外れて、赤い唇、尖った顎、白い喉や豊かな胸をこれでもかと濡らしながら、びたびたと勢いよく流れ落ち。…………そして、余程"そこ"しか見てなかったのだろう。隣のテーブルに腰掛けた──後に剣聖と呼ばれる大天才──今は、まだあどけなき少年である今年の新人君から。本来重力の速度に従って溢れ落ちるべき水分が、その豊かな起伏に一瞬とどまった後、たっぷりと深い谷間に吸い込まれていく光景へ、「……すっげぇ」と生唾を飲み込むような音が上がって、漸く隣のギデオンに気付いたらしい少年は、そそくさとその席から逃げるようにして離れていく。その衝撃的な瞬間を見逃した後さえ、濡れたシャツが張り付く胸元はごく普通に扇情的にも関わらず。当の本人と言えば、想像以上に口を潤してくれなかったグラスに首をかしげて。ふに、と不満げにその唇を中指で押し上げている有様で。次にそのグラスを追いやるようにして手放した酔っぱらいは、しゃっくりも止まらぬまま、懲りずに次の花酒へ手を伸ばそうとしていて。 )

…………?……っ、く!




395: ギデオン・ノース [×]
2023-03-17 03:41:31




おま、バッッ……!!

(こちらにふわんと向き直ったヴィヴィアンの微笑みは、砂糖を加えた蜂蜜よろしく、どろどろに甘い蕩けよう。そんな殺人的な代物を、ギデオンはたったひとり、真正面かつ至近距離でぶっ放されてしまったわけで。見事なまでの処理落ちで、びしりと硬直してしまったのが、今宵初めての大きな失敗。次の瞬間、目の前でへにゃへにゃ笑う件の娘が、冗談かと疑うほど衣服をびちゃびちゃに濡らすのを見れば、さすがに焦った声をあげ、グラスを揺らす細い手首を、空に縫い留めるようにして捕まえる。──そこまでは、まだよかったはずだ。
問題は、彼女の現状を確かめようと巡らせた青い視線が、とある一点に滑った瞬間。ミルクのような柔肌の丘、その深い影の部分へ、きらめく水晶が転がり落ちていく様を、追わずにいられなかったこと。掴む手首を思わず離し、「…………」と押し黙るギデオンを、しかし見咎める者がどこにいよう。幸か不幸か、周囲は周囲で楽しく盛り上がっている真っ最中。先ほど不貞腐れた青年たちも、目の前で見せつけられてはたまらないとでも思ったのか、とっくに離席した後である。故に今のふたりは、宴のど真ん中にいながら、ふたりきりに近い状況──というより、たちまちそういう空気に入れる程度に親しいのを、当人たちだけがまるで自覚しておらず。それを生温い目で見抜いた周囲も、すぐさま示し合わせたように放っておいてくれているだけだ。ともかくこのときのギデオンは、眼前の桃源郷に、ともすれば暫くは目を吸われていたかもしれない。だが実際は数秒と経たず、間近に上がった少年の、いっそギデオンより潔い歓声ひとつで、我に返ることができ。しかし反射でそちらを睨み、若い雄を威迫する虎のような目で追い払うや否や。今度は相手から顔を逸らして、ひとり深々とため息をつく。……今宵のここは宴会場。先ほどのようなクソガキもいれば(普段のギデオンは別にここまで乱暴な物言いはしない筈である)、酔いに酔った野獣どもだっている。そんな奴らに、今のヴィヴィアンを見られてはたまらない。そんなのは絶対にごめんだ、これを見ていいのは己だけだ──と、妙な方向に突っ切った思考に、強い独占欲が駄々洩れている自覚がはたしてあるのかどうか。冷めたおしぼりをかき集め、それで相手を拭おうとして、すぐにその犯行に気づき、顔をぐっとしかめてみせて。)

……おい。おい、もう駄目だ、こら。
悪いことは言わないから、今夜はもうこの辺にしておけ。

(と、彼女の背中から腕を回し、その右手を同じ右手で捕まえる。ついでに左手もそれに倣い、ヴィヴィアン自身に椅子の上で身じろぎさせて上手いこと落ち着けば、彼女を斜め背面から抱き込む形の完成だ。──これでいて、往年のギデオンもデレク並みの誑しだったのを、見る者が見れば思い出したかもしれない。しかし平然とした顔の本人としては、こうして両手を後ろから捕まえておけば、悪さをせずに大人しく眠くなるだろうと、ズレた論理によるものでしかなく。己のそれと重ね合わせた彼女の手を操縦し、おしぼりのひとつを掴ませれば。それを緩く引き寄せさせ、「ほら、濡れたところをこいつで拭いとけ」と後ろから雑に促して。)


 

396: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-18 01:11:59




 ( 後ろから伸びた邪魔な手に、いやいやと藻掻いていたヴィヴィアンが、まんまとその腕の中にすっぽりと収まった途端、その変わり身の早いこと。ギデオンの温もりに心底幸せいっぱい微笑んで、その触れ合いが取り上げられぬよう、形だけは「えー?」と不満の声を上げてみせるものの、緩みきった口からは無邪気な笑い声が漏れるだけ。そのままかわい子ぶって、相手の肩へと後頭部を擦り付けた瞬間、不自然に回った視界と、胸元へせり上がった違和感さえスルーせずに、自分の脚で御手洗に向かう等していれば、その後の惨事にギデオンを巻き込むことだけは免れたのだろうが。──ともかく、明らかに二人だけの世界に入り始めたバカップルに、「何アレ酔ってんの?」「知らね、見るな伝染るぞ」という周囲の温かい言葉が届くことは無く。幸か不幸かギデオンの望み通り、砂糖を吐くような光景からは目を逸らす連中が殆どで、ビビのあられもない姿を直視したのはごくごく一部の冒険者に限られたのだった。 )

 ( さて、背後からその手を器用に操って、おしぼりを手に取らせることが出来たくらいだ。その感触だって手に似とるように掴めただろう。これに関してはビビは悪くない……──少なくとも、その判断が出来なくなるくらい泥酔していたことを覗いては、あまり悪くなかったはずだ。何せギデオンが拭けと言ったのだ、濡れたところを。その忠告に素直に従って、シャツのへばりついて気持ちが悪い胸元を拭いもするし、雫の転がり落ちる感触がこそばゆい渓谷を浚いもするだろう。予定調和。そうしてギデオンの腕の中、それなりに真剣な顔でむいむいと拭っていたビビだったが、そうはいっても酔っぱらいの手つきなどたかが知れている。20秒もしないうちに、未だべったりとシャツを張り付かせたまま、飽きたかのようにおしぼりを取り落とすと、小さく欠伸をひとつ。諦めたようにギデオンへ寄りかかり、ゆっくりと瞼を伏せると、そのまま寝に入ろうとするそれはそれは自由な有様で。 )

はぁい、ありがとう、ございます、…………、……




397: ギデオン・ノース [×]
2023-03-18 02:38:51




(犬猫が甘えるように、栗色の柔らかな髪をくしゅくしゅ擦りつけられる感触。それはちょうど半年前、あの舞踏会の夜にも味わったことがあるはずだ。あの時は深刻な状況下だったが──対する今宵は、春真っ盛りの陽気な酒宴。しかも相手はご機嫌な酔っ払いという、平和極まりない状態。その条件で再度向けられた親愛の摩擦は、まさかここまで印象が変わるのかと狼狽えるほど、あまりに浮ついて感じられるものだから、それはそれは落ち着かない。故に、あからさまに気まずそうな顔を横に逸らし、彼女におしぼりを掴ませ次第、手をほどこうとしたのだが。──へにゃへにゃしたヴィヴィアンのどこに、そんな力があったのだろう。彼女の手を操縦すべく、ギデオンが上から指先を差し入れていた、彼女の指同士の隙間の部分。そこををきゅっと狭めることで逆に捕まえられてしまえば、「……おい、」と動揺した声で抗議するも、当然聞き入れられなくて。それからというもの、重なり合ったふたりの手をふわふわ動かされたかと思えば、ヴィヴィアンの堂々たる曲線をなぞるように這わされたり、或いは隙間に近づかされたり──といった、煩悩に対するまさかの攻撃第2弾に。背後のギデオンは完全に顔を伏せきり、今起きている出来事を自覚せぬよう、必死に意識を噛み殺す。因みにそのわずかな数十秒間、顔を伏せた無言のままで、何度か脱出を試みたものの、酔拳でも使っているのかと思うほど酔いどれ娘の防御が固く、結局まったく叶わなかった。そうして、平和で不埒な公開処刑がようやく終わった気配に、疲れ切った顔を上げ。「待て、寝るな」と、自らの体ごとヴィヴィアンを軽く揺り動かす。──今夜に限り、酔いつぶれた冒険者どもはここで寝ていいという許可は、開宴前にも知らされていた。とはいえ、酒の入った男女が万一風紀を乱さぬよう、女性冒険者の寝る場所は二階一帯と決められている。もちろん上に行く階段には、男性冒険者が通ろうとすればたちまち簀巻きの刑に晒す防衛魔法が、ガチガチにかけられている。つまり、ヴィヴィアンがこのまま寝入ったとして、ギデオンがそれを送り届けるということはできないということである。かといって、ここで無防備に眠るのを見逃すのは絶対にごめんだし、さりとてこのままギデオン自身が寝袋代わりになるつもりない。爆睡してしまう前に、彼女には己の脚で、二階に上がってもらわねば。──そういった善意やら心配やら保身やらに囚われていたため。彼女をどうにか起こすべく、腕の中で無理やりこちらに向かせながら、再度揺り動かしたのは……完全なる事故だったわけで。)





398: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-18 11:51:58




 ( 最初の波は、落ちかけているビビに気がついたギデオンが、その逞しい体ごとビビの上半身を揺すった時だった。腹の底がひっくり返るような不快感に眉をひそめるも、歯を食いしばって小さく唸ることでその波を乗り切り、あたたかな胸に落ち着きかけたと言うのに──ぐりん。と、突如回った視界にサッと顔色が青ざめる。──まずい、"それ"だけは駄目だ。絶対に、駄目。せめて、ギデオンさんのいない所で……口内に甘い唾液がぶわりと湧いて、食道の弁が逆流する。もんどり打つ頻度が早まってきた胃袋の感覚に、慌てて重い腰を上げかけるも、酒浸りになった平衡感覚が邪魔をして、追い討ちのように回り始めた視界がこれまた最悪に気持ちが悪い。極めつけに、少し落ち着くまで──そう悪酔いしか引き起こさない視界を遮断したタイミングが最悪だった。分厚い掌が両肩に添えられたかと思うと、僅かに力が込められる。一瞬遅れてその意図に気がついた時には既に手遅れで。ぐわん、と体ごと視界が揺れ、胃酸に焼かれる痛みが喉奥に走る。口元を抑えようとした手は間に合わず、好きな人の目の前どころか、当人の腕の中で、喉奥だけでなく、ビビの尊厳も焼き切れることとなるのだった。 )

……?、!……ギデ……ンさ、……っぷ、ゃめ──…………

 ( ──……最悪だ。あれからどこをどうやって逃げ出したのか、気がつけば喧騒から程遠い、ギルドの医務室にただひとり。簡易ベッドの毛布を頭から被って、部屋の角と薬棚の隙間に蹲る体勢は、傍から見ればグズグズと泣き声をたてながら震える饅頭スタイルで。医務室と言っても医者がいる訳でもなく(寧ろビビが看護する側の人間だ)そこまで本格的に体調が悪い訳でもない。ギデオンが手でも洗いに行ったのか、何かしらの事情で席を外した瞬間に、無我夢中で逃げ出して、よく使う自分のテリトリーにたどり着いただけ。酔っ払いの相手をさせて、その上……あんな、あんな醜態を晒して迷惑をかけ、更に後片付けを押し付けられて帰ってくれば、何処にも当人が見当たらないなんて。何処まで厄介になれば気が済むのだという話だ。酔い潰れている者も多々いたとはいえ、ギルドに関わる面子がほぼ揃った席で醜態を晒したことが大して気にならない程、脳裏に浮かぶのはギデオンのことばかり。やっと最近、本当にちょっぴり、ほんの少しだけ……好きになって貰えたんじゃないかと、思ったのに──そう思うと涙が溢れて、再び子供のような嗚咽が漏れた。 )

──絶対、嫌われちゃった……




399: ギデオン・ノース [×]
2023-03-18 13:40:49




(まずい、と気づいた時には既に遅く。彼女がもどす深酒の代償すべてを、その胸に受け止めきったギデオンは。しかし顔色ひとつ変えず、悲鳴ではなく心配の声を漏らす周囲に手を借り、(なんだか妙になれた様子で)起きた出来事の処理にあたった。だがその途中、青褪めた顔をくしゃくしゃに歪めたヴィヴィアンが、ひとり飛び出してしまったのだ。迷惑を残さぬ程度に後片付けを終えてから、周囲に「悪い」と断りを入れ、ギデオン自身も席を立った。流石にそれを囃し立てる者はなく、皆気がかりそうに見送るのみ。ちなみにその後、一部の連中がてきぱきと手伝う様は、異性の胸をきゅんきゅんときめかせたらしい。卓はそこから再び盛り上がり、甘い発展を遂げたそうだが、これはまた別のお話。
さて、ギデオンがヴィヴィアンを探す道すがら。ギルドの私物置き場を通りがかったため、そこに置いてある予備のシャツにさっぱりと着替えてから、まずは近場にある女性用の手洗い場をあたってみた。しかし出入りする女性冒険者によれば、中にヴィヴィアンはいないという。……どこに行ったのだろう、あんなに具合が悪かったくせして。そもそもあれは、思えば自分が無神経を働いてしまったせいだというのに。と、ふとなんとなく勘めいたものが起こり、その足を医務室に向ける。建国祭の頃にも世話になったその場所は、しかし今は無人のはずだ──悪酔いした連中を介抱するための場所は、ホールの近くに移動している。
はたして扉を開けてみると、どこからかひっく、ひっくとすすり泣く声。そっと奥を窺ってみれば、なんだか部屋の隅の方に、可哀想なほど震えている饅頭がある。僅かにはみ出ている髪が栗色をしているのを見て、まずはほっと胸を撫で下ろし。わざと軽い足音を立てて歩み寄ると、その傍にしゃがみこんでから、頭の辺りを毛布越しに軽く撫でてやる。これまで何だかんだ、何度も彼女にこうしているのだ、だれの手つきかはわかるだろう。そうしてあやすようにしながら、穏やかな声で話しかけ。)

……さっきは気づいてやれなくて、本当に棲まなかった。今は……具合は収まったか。





400: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-20 01:23:26



…………。

 ( その気配に息を殺したビビの隣へしゃがみこむ、そのあたたかな気配の正体なんて。穏やかな声どころか、優しく添えられる手よりも前に、軽やかな足音だけで十分だ。何せ一番見られたくない相手だと言うのに、ビビが弱っている時にいつも隣にいるのはこの人だから。──……でも、こんなところまで探しに来てくれるんだ……。そう我ながらこんな時でさえ、呑気に増長する甘い思考が煩わしくて。許されたくて顔を出す、醜悪な希望を付け上がらせる、優しい触れ合いにも首を竦めると、僅かに覗いていた栗毛も毛布の中へ引っ込めてしまって。調子に乗ってはいけない。どこまでも優しいこの人は、自分の限界さえ把握出来ない子供にも博愛なだけ。そう己に言い聞かせるビビの思考をリズが覗いたならば、一刀両断いつかのように、「謙虚もそこまで来ると嫌味なんですよ」とばっさり切り捨て。ホセやドニー、レオンツィオなどには、聖人君子と成り果てている古馴染みの姿に、大いに首を傾げさせただろう。一向に進まない二人の関係を、ギルドの面子はギデオンばかり責め立てるものの、ビビとてかなり強情で。教会で過ごした一晩の後でさえ……寧ろその経験が、より強くそう思い込ませるのだろうか。どこかまだ相手を目の前にして、都合の良い女でいなければという思いが勝る。清廉潔白で完璧な、絶対に迷惑をかけない強い女。そんなありもしない者を夢想しては、未だ歪む視界に、気を許せば再びひっくり返りそうな胃袋。先程は本当にどうやって逃げ出したのか、一向に力の入る気配がない足腰を気取らせないように、毛布の奥へと引っ込めて。その代わりに、浅くないショックに色濃く濡れた、やけに彼女が強情な時に見せる、気の強そうな双眸だけを光らせると。穏やかな声に首を振り、相変わらず下手くそな嘘を硬質な声音で響かせて。 )

いえ。こちらこそ本当にごめんなさい。シャツは弁償します。
……私は、大分治まったのでギデオンさんは歓迎会を楽しんできてください。




401: ギデオン・ノース [×]
2023-03-20 03:27:47




(身じろぎする気配を感じ、てっきりいつもの安心した顔を出してくれるものと思ったが。どうやら実際のヴィヴィアンは、むしろ警戒するアルマジロよろしく、さっと身を縮こまらせてしまったらしい。その予想外の反応に、はていったい……と目を瞬いていると。今度は毛布の下から、やけに張りつめた声と言葉。それらをすぐに理解できず、薄暗い医務室を一瞬静寂で浸したのちに。「……ん……??」と、大変わかりやすい困惑の唸り声を落として。
これはどうしたというのだろう。この毛布の下に隠れているのは、本当にヴィヴィアンだろうか。いや、今聞こえてきた声も、そもそも最初に撫でた時の感触も、間違いなく彼女なのだが。いつもギデオンにしゃにむに構うヴィヴィアンが、こんな突き放すような物言いをするだろうか。……どうして、何をいったい、固く気を張っているのだろうか。しばし考えあぐねたものの、結局結論を得られないまま。とりあえず、壁にとんと背を預け、彼女の隣に腰を下ろす。立てた片膝に片腕を乗せる、その寛いだ体勢は、すぐにここを離れる気がないことをありありと語っていて。反対の手はなんとなく彼女のそばに下ろすものの、再びむやみに撫でようとはしない。──が。しばし薄闇を眺めていたのち、けれどやっぱりもう一度。彼女の被っている毛布に、手の甲を緩やかに添える。普通に会話を切り出すよりも、そうしてから話しかけるほうが、なんとなく良い気がしたのだ。)

あれはもう、随分長く着古してるやつだ。洗えばまた着られるさ。
……それよりも。俺は、具合の悪い相棒を忘れて楽しめると思われるほど……薄情に振る舞ってきたつもりはないんだが。





402: ギデオン・ノース [×]
2023-03-20 03:48:46




(身じろぎする気配を感じ、てっきりいつもの安心した顔を出してくれるものと思ったが。どうやら実際のヴィヴィアンは、むしろ警戒するアルマジロよろしく、さっと身を縮こまらせてしまったらしい。その予想外の反応に、はていったい……と目を瞬いていると。今度は毛布の下から、やけに張りつめた声と言葉。それらをすぐに理解できず、薄暗い医務室を一瞬静寂で浸したのちに。「……ん……??」と、大変わかりやすい困惑の唸り声を落として。
これはどうしたというのだろう。この毛布の下に隠れているのは、本当にヴィヴィアンだろうか。いや、今聞こえてきた声も、そもそも最初に撫でた時の感触も、間違いなく彼女なのだが。いつもギデオンにしゃにむに構うヴィヴィアンが、こんな突き放すような物言いをするだろうか。……どうして、何をいったい、固く気を張っているのだろうか。しばし考えあぐねたものの、結局結論を得られないまま。とりあえず、壁にとんと背を預け、彼女の隣に腰を下ろす。立てた片膝に片腕を乗せる、その寛いだ体勢は、すぐにここを離れる気がないことをありありと語っていて。反対の手はなんとなく彼女のそばに下ろすものの、再びむやみに撫でようとはしない。──が。しばし薄闇を眺めていたのち、けれどやっぱりもう一度。彼女の被っている毛布に、手の甲を緩やかに添える。普通に会話を切り出すよりも、そうしてから話しかけるほうが、なんとなく良い気がしたのだ。)

あれはもう、随分長く着古してるやつだ。洗えばまた着られるさ。
……それよりも。俺は、こんな状態の相棒を忘れて楽しめると思われるほど……薄情に振る舞ってきたつもりはないんだが。



(/ささやかながら修正しました。また、ビビはギデオンの離席中にいなくなったという点を見落としてしまい、食い違う描写をしておりました。申し訳ありません……!/お返事不要)





403: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-20 15:11:37




 ( 静かな医務室に、何とも言えない間を持って響いた困惑の声。この時のギデオンと、この世の終わりが如く沈みきったヴィヴィアンの温度差といったら、キーフェン砂漠の昼夜のそれより酷いものがあった。徐ろに隣へと腰を下ろし直した相棒に、びく、と些か過剰に反応してしまった己が恥ずかしくて。白い毛布の中、ショックと困惑と羞恥に濡れる相貌とは裏腹に、カサ……と微かな衣擦れだけを響かせて、僅かに傾ぐ饅頭の奇妙な様よ。普段自分から詰め寄るばかりで、こうして相手から距離を詰められると、どうしていいのか分からなくなってしまうのだ。それでも暫く、強情に決め込んでいた強情な沈黙の構えを、思わず解かざるを得なかったのは、再びその温かな手を翳した相手の切り出した言葉が、あまりに聞き捨てならなかったためで。 )

ちが……っ、違い、ます!!
ギデオンさんが薄情だなんてありえません……!

 ( 結局どこまでも気になってしまうのは、己の羞恥心より、うんと価値ある相手の名誉の方で。先程までの強情ぶりはどこへやら。ギデオンの方へと乗り出すように膝立ちになると、被っていた毛布が音を立て床に落ちる。涙や擦った痕の痛々しい目元は、今もたっぷりと涙をたたえているし、ここに逃げ込む前に濯いだ口元は口紅が剥げ、普段の自然な血色も今は青白く失せてしまっている。その上、酒浸しになった平衡感覚では、起こした上半身さえ支えられずに、くらっとギデオンの方向へ倒れ込もうとして。その寸前、何処までも強情に薬棚へと腕をつけば、何処までもみすぼらしい己の成りを、自嘲するようにくしゃりと顔を歪めて。 )

……ごめん、なさい。こんな、幻滅したでしょう……?


( / お世話になっております。各所で温かい反応をいただいているにも関わらず、お返事できておらず申し訳ございません。いつもありがとうございます。描写については、あの状況でギデオン様が席を外すことは無い、という形で認識しておりましたのでお気になさらず。/蹴り可 )




404: ギデオン・ノース [×]
2023-03-21 03:00:44




…………

(慌てて跳ね起きたヴィヴィアンの顔、それが随分酷いことになっているのを見て目を瞠る。見目がどうという話ではない──随分辛い思いをしていたことを、その痛ましい痕が如実に物語っていたせいだ。だというのに、それなのに。すぐに危うくふらついた体を、ヴィヴィアンはしかし己で支え。あまつさえ、聞き捨てならない自虐の台詞を吐き落とすような有り様だから。瞬間、ギデオンの表情が抜け落ち、医務室の時間が静寂に凍りついた。そうして数拍置いた後、ゆっくり立ち上ったのは──しかしなんだか、妙に憮然とした気配。別に、腹の底からの怒りというわけではない、それほど冷え冷えしたものではない。しかし今のギデオンが、迷走するヴィヴィアンを見て腹を立てたのも事実。ゆえに、無言で眉間に険を宿すと、不意にヴィヴィアンのほうに迫り──文字通り、絡めとった。。その腕を取り上げ、背中に大きな掌を添えて、こちらにしなだれかかるように。暗澹たる囚われの蜘蛛の巣から、ギデオンの体温と鼓動をじかに感じられる空間へ。無論、今度はいきなり揺さぶったりしないよう、問答無用のなかに気遣いも忘れない。そうして再び、妙な表情で彼女をすっぽり抱き込み。何気にがっちりと両腕で閉じ込め、何なら長い脚でも退路を塞ぎ、逃げられないようにしてしまってから。真下に見慣れたつむじに、あからさまに不機嫌そうな声を落として。)

どういうつもりか知らないが。──俺が今更、おまえを嫌うわけがないだろう。
何を思いつめている? ……酒で羽目を外すくらい、誰にでもあることだろうが。






405: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-22 21:01:02




──だって、だってぇ…………あんなところ……大好きな人に、見られたく、ないじゃないですか、
ギデオンさんに、嫌われたら……ッ。私、生きていけないもの。

 ( ギデオンの逞しい腕の中、うぅう──と、か細く震える頼りない泣き声が上がる。未だその腕に捉えられる直前、その憮然とした険しい表情を初めて見た際は、内心深く傷ついた癖をして、それを押し殺せているつもりになった、無感動な表情を浮かべていられたというのに。温かな檻に捉えられ、必死にもがいても逃げ出すことも許してもらえぬまま。至近距離でぶつけられた不機嫌な声に、これでもかと溶け込んだ心配を捉えてしまった途端、再び涙が溢れるのを止めることが出来なかった。──ああ、また迷惑をかけちゃう……でも、この人がそうしろって、本当にそう言っただろうか、もう分からない。いまだアルコールも抜けきらぬ、混乱しきった脳は頼りになる物を求めて、相手の分厚い半身に全力で縋り付き、硬い肩に顔を埋めると、冷えきっていた身体がじわじわと温まり出す。そうして肩肘を張っていた力が緩めば、未だ血色悪い唇から漏れ出るのは、我ながら幼稚で耳を塞ぎたくなるような言い訳で。そうして何度もしゃくりあげながら、ひんひんと栗色の頭から全身を震わせ、最後の一言を今にも消え入りそうな囁き声で漏らせば。暫く啜り泣く音をギデオンの肩に吸い込ませてから、彼が介抱に慣れる次第となった存在など知らぬまま、大分遅れて先程相手が落とした言葉に反応して。 )

それに……誰でもって、殿方はそうかも知れませんけど……




406: ギデオン・ノース [×]
2023-03-22 23:32:29




(己の腕の中、ぐしゃぐしゃに崩れはじめたぬくい生きものの咽びを聞いて。仕方なさそうな──だがどこか安心めいた──ため息をついたかと思うと。腕の力を緩めた代わりに、彼女の後頭部にそっと手をやり、彼女の柔らかい栗毛をあやすように撫ではじめ様々な酔っ払いを眺めてきた自分からすれば、ヴィヴィアンの失敗など、こんなに絶望するほどではない、まったく可愛いレベルのそれだ。しかし、酔うと誰しも感情的に取り乱すもの。それがその当時の本人には真剣な問題であるのも、どことなく知っている。ゆえに、ひっくひっくとしゃくりあげるヴィヴィアンが、未だにギデオンに嫌われることを想像してしまって震えようと、それ以上咎めることはなく。代わりにただただ、相手が縋りついている己の胸に深い呼吸を取り込みながら、相手の頭を撫で続け。ほら、こうして胸を貸しててやるから、ここで好きなだけ泣けばいい──と、この態度によって言い聞かせられているだろうか。
そうして、ほんの少し落ち着いたころ。未だ落ち込むヴィヴィアンが、乙女らしい思考回路で尚も言い募るのを聞けば、「ほう?」と愉快気に異論を唱える。「言っておくが、俺はお前よりよっぽど酒癖の悪かった女を知ってるぞ」と。それで相手が顔を上げようものなら、目尻の涙を拭ってやりながら、「おまえの母さんだ」と穏やかに微笑むだろう。──思い返せば、夏の建国祭以来、シェリーについての話は、結局ほとんどしたことがない。最初にギデオンが拒絶した時とは違い、今はもう禁句にしていないつもりだが……それでも思えばどことなく、不自然にならない程度に腫物扱いをしていたのだろう。それはかつて己が秘めていたシェリーへの想いが原因だが、今は不思議と──もう、この話をしても大丈夫だ、という深く静かな確信がある。だから懐かしむように天井を仰ぐと。再び相手を見下し、可笑しそうに目を細めながら。初めて共有する思い出話を、撫で続けながら語りはじめて。)

……俺は14の頃、あの人の弟子になって、身の回りの世話をしたわけだがな。シェリーの酒癖と言ったら、そりゃあもう、とてもお前の比なんかじゃなかったぞ。
酒場で酔っ払った日には、そこらの梁の上によじ登って寝て、夢を見ながら下にゲロを降らせるなんてのが当たり前。せっかく稼いだ難易度Ⅶの報酬を、一晩で全部酒樽に替えたことある。「つまみが欲しい」と言って聞かずに、酒瓶片手に山まで行って、ドラゴン狩りをおっぱじめることも、数えきれないほどあった。それで本当にしとめてくるから、誰も何も言えなくてな。
ああ、それから。そういう風に、なまじ剣の腕だけは絶対落ちないもんだから……本人は酒場で楽しく振り回しただけのつもりが、あわや大惨事になんてことも、珍しくなかったぞ。ロビーの奥の大きな柱、二本くらい木材の色が違うところがあるだろ。あれはシェリーがやらかした痕だ。本人は覚えてなかったが……人には絶対怪我をさせないくせして、ものは器用に壊すんだ。
こういう話はまだあるが、多分、何百枚という始末書を書いたおまえの父さんのほうが詳しい。そのくらいすごい女だったぞ、シェリーは。だからおまえのこれなんて、随分行儀が良い方だ。





407: びびはいご [×]
2023-03-24 01:03:20




──母が?

 ( 不意にギデオンから上がった、場違いに明るく、楽しげな声。思わずつられるようにして顔をあげれば──どきん、と。視界いっぱいに映った、優しい微笑みに見惚れて、かさついた指先の感触に、恥じらいの表情を浮かべるのが一瞬遅れた。その間に母シェリーとの思い出を語り出したギデオンに、零れ落ちんばかりに見張っていた瞳を、おっとりと伏せると、少し恥ずかしそうに俯いて、相手にされるがまま。優しく撫でられている頭を、相手の上半身に委ねる。ビビもまた夏の建国祭以来、相手が触れないものを態々掘り返しこそしないものの、誠実に向き合ってくれる相棒を心の底から信頼しているし、相手の口から出る母の話題も、今や心穏やかに聞くことが出来る。それを証明するかのように身体の力をすっかり抜いて、相手の肩口にあたたかく擦り寄ることで、その信頼を伝えることはできているのだろうか。そうして、大好きな唇から紡がれる偉業の数々に、先程まで泣き濡れていた女はどこへやら。居心地のよい胸の中、時に吹き出し、時にクスクスと口元を抑えながら、再び睡魔に溶かされ始めた瞳で、ギデオンをうっとりと見上げて──気づいてしまった。ずっと、この人だけを見つめて来たのだ。その双眸に浮かぶ、少年のような輝きに、温かな含みのある声の響き甘さに、気づかないはずもなかった。……不思議とショックも、不安も何も湧き上がない。ただ未だ楽しそうに昔話を続けている、在りし日の少年の頬へと手を添えると、慈しむような微笑みをギデオンへ向け )

ギデオンさんは──母が、好きだったんですね。


( / 大変お世話になっております。歓迎会シーン誠にありがとうございました。ギデオン様の糖度についてですが、全く問題ないどころか、毎度予想を飛び越えてくる愛の深さに悶えっぱなしでございます!
以前お話していた、ギデオン様にシェリーへの気持ちを知ってしまうという展開ですが、あまりに楽しげに愛しげにギデオン様が話すものですから、彼女が気づかないわけが無いなと思いまして、以上の形にさせて頂きました。
もし背後様の中で、ビビがギデオン様の初恋を知ることで怒る事件を、何か考えているということであれば、このまま酔っ払いには記憶を飛ばして貰いますので、お申し付けください/蹴り可 )




408: ギデオン・ノース [×]
2023-03-24 13:07:14




………………。


……手の、届かないひとだったよ。

(相手が頬に手を添えてくる仕草には、最早動じる様子さえ見せない。なんだかんだこの一年で、そういった触れ合いにすっかり馴染んでいたからだ。──だが、その後優しく続けられた言葉には。……嫌だとか、警戒だとかではなく、優しく虚を突かれた……というべき静止をあらわにして。相手の慈愛のまなざしに見守られるまま、彼女を撫でていた手をそこに留めたまま。無自覚に甦っていた少年の瞳は、かすかに、ほんのかすかに揺れている。決して気まずくはない長い長い沈黙を下ろしたのち、ようやくぽつりと落とした答えは、ごく迂遠ながら、決して偽らぬ正直なもの。だがその台詞は、ヴィヴィアンの手が己の頬に、己の手はヴィヴィアンの頭に触れながら発しているのを、まだ自覚していないだろう。)

……いつも、めちゃくちゃなことをやるくせして……太陽みたいに明るく笑うもんだから。あのひとを好きにならない人間はいなかった。
……俺も、おまえの父さんも。あのひとの世話を焼くうちに、絆されたようなクチだ。

(そうして再び、習慣めいた手つきで相手の慰撫を再開しつつ。視線は虚空を静穏にさ迷いながら、口にする言葉をゆっくりと手探りしていく。隠し立てをするつもりはないことのあらわれか、ついには自然と、彼女の緑色の目と視線を溶け合わせて。──相手に請われたわけでもないが、何故か自然と、シェリーについてを素直に語るときだと感じている。ヴィヴィアンの記憶にない、たったひとりの母親。己の記憶に今も残る、たったひとりの……初恋の恩師。思えば、彼女が大切な存在であることが、ヴィヴィアンと自分は共通している。いっとき、たったいっときだけれども、シェリーのそばで生きた記憶を持つ者として。相手の母がどれだけ大切に愛された人だったか、分かち合いたかったのだろう。)



(/いつもお世話になっております! そう伺えてほっとしました……
シェリーへの想いに気づくことに関して、今回いただいた形で全く問題ございません。その件をどう処理するか全く考えていなかったのですが、今回のこれがいちばん幸せかつ心の通じ合う形に違いなく、寧ろ感謝し倒しております。それ以外にも、シリアスな「黒い館編」に入る前に、例えば事件だとかシェリーだとか魔力切れだとか、何かしらの大事な話をして絆を深めておきたいな……と思っていた次第ですので、これ以上ない最高のタイミングでの挿入です。ありがとうございます。

こちらからも一転確認を。舞台が「黒い館」に物理的に移る経緯について、主様の中で何かお考えはありますでしょうか? こちらは全く考えておらず、ライブ感でアドリブして楽しむもよし……整合性をしっかり考えてやるのもよし、というくらいでして。後者の場合案出しの必要があればしっかり捻りだしますので、主様のご意向もお聞かせくだされば幸いです。)






409: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2023-03-26 01:10:40




──はい、

 ( 後頭部に沿わされた硬い温もり。それがピタリと固まって──余計なことを口走っただろうか、その心配は、相手の顔を見上げることですぐに霧散した。ビビの言葉をゆっくりと消化しているらしき男の腕の中、そっと相手に向き直ると、もう片方の手も相手の頬を包むように沿わせて。自分の体温を分け与えるかのように、その少し油分の抜けた滑らかな肌の上、ゆっくりと親指を滑らせる。ぽつり、と。空気を震わせた第一声のそら寒さに、かけられる言葉を持ち合わせていないことがもどかしくて。既に触れていた両手を無意識に、少しでも相手との距離を埋めるかのように、更にその頬へと吸い付かせ。膝立ちだった腰を相手の膝に下ろすと、否応なく高さの揃った視線が絡み合う。常に誰より冷静で、ずっと自分の感情を押し込ている静かなアイスブルー。それをこんな熱烈に染め上げているのが、自分の母親なのだと思うと、少しの嫉妬が湧かないでもないが、それ以上にどうしようもない誇らしさが満面に滲み出てしまう。それは、幼かった娘への気遣いでもあったのか、滅多に母のことを話したがらない父がたまに零した彼女の話。勿論、娘の教育に適さない不健全な箇所は、綺麗さっぱり割愛されていた代物だが、その中でシェリー以外に唯一登場した──彼女が可愛がって止まなかった愛弟子を。思い出話をする時でさえ、どこか自虐的な言い回しの抜けない男を目の前にして。思わず──アンタはアタシにゃ勿体ほど出来がいい、自慢の弟子だわねぇ、と。いつか酔っ払った彼女がそうしたように、(尤も当のシェリーは直後、その状態でリバースした前科があるわけだが)膝立ちになって正面からゆっくりと腕を回し、その背中を擦りながらも痛いほど強く抱きすくめ、はっきり彼女の"自慢"だと口にしたのは単なる偶然に過ぎないはずだ。 )

──……だから。……そんな母が、"自慢する貴方"だから。きっと……こんなに素敵なんですね。


( / 暖かく寛大なお言葉ありがとうございます。あとから読み返して、諸々強引かつ雑だったかなと反省しておりましたので、そう仰っていただけて安心しております……

「黒い舘」に映る経緯としては、こちらもざっくりとアドリブで楽しむイメージでおりました。導入は歓迎会が終わった翌日等に2人でクエストに出かけ、その際に雨宿りやら、怪しい影を追ってやら。何がしかの理由で館に迷い込む感じでしょうか。
かなり漠然としたイメージで申し訳ございません。設定置き場の方の更新もありがとうございます。現状としてはあちら以上の構想はございませんが、何か思いつき次第提案させていただきます。 )




410: ギデオン・ノース [×]
2023-03-26 04:30:34




…………、

(あのひとと同じ瞳が、こちらを見つめて誇らしげに微笑んだ。それだけで既に揺らぐものがあり、ギデオンは思わず言葉を失ったというのに。その隙を突くかの如く、不意にヴィヴィアンがこちらに腕を回しかけてきた、その感触、その強さ、その温もり。そしてギデオンの耳朶を打つ──シェリーにとって、己は自慢の存在なのだと愛おしむ声。もたらされたその数々は、あまりにも奇跡と祝福に満ちていて。淡い月光の差し込むなか、ヴィヴィアンに抱かれるまま一瞬呆然としたギデオンは。大きく瞠っていた青い瞳を、やがてくしゃりと歪めてしまった。
──ヴィヴィアンは、きっと知らないはずだ。13年前、あの事件を引き起こしてしまって以来。事件そのものに対する激しい呵責の念に押し潰されそうになりながら……そして、シェリーの遺したあの言葉にそぐわぬ己を思い、かえって深く苦しみながら。それでももう一度、あのときシェリーが言ったとおりの自分を少しでも取り戻そうと。ギデオンには、あの抱擁の記憶を頼りに、必死に己を奮い立たせてきた過去がある。あの暗く苦しい日々の中、何度も何度も、かつてシェリーに与えられた温もりを密かに握りしめてきたのだ。その記憶がすっかり擦り切れるまで、古びてぼやけてしまうまで。──だから、ちょうど1年前のあのとき。獰猛なワーウルフの群れから、シルクタウン市民たちを見事救ったヴィヴィアンを、帰りの馬車で労ったあのとき。この誇らしい熱が支えになればいい、シェリーが自分に与えてくれたように、自分も与えられればいい……そう祈ったギデオンは。かつてあんなにも大事に握り込んでいた熱を、しかし自ら、思いがけず自然に手放した。受け継いだものを受け継がせる、その流れに己が汲み込まれたことで、ひとつの役目を果たせたような気がしたからだ。それで己の中のシェリーの記憶が遠くなっても、それで良いのだとさえ思えた。その頃にはギデオンもようやく、事件の重みから自力で立ち上がれるようになっていたし。何よりとうに、壮年も過ぎようという枯れた大人になっていたから。──だが、ああ、どうして。もはや四半世紀もの月日が過ぎ去った今になって、どうして。もう二度と得られぬはずのシェリーの熱を、再び力強く与えられる日が来るなどと、どうして想像できるだろう。自分はまだ与えられているのだと……今も尚、シェリーに見守られているのだと、どうして思わずにいられるだろう。
様々な感情に眉根を寄せた目を閉じて、ヴィヴィアンのほうに頭を寄せ。何も答えられぬまま──与えられたものがあまりに大きすぎて、何をどう言えば良いのかわからないのだと伝えるべく──ただただ無言で、彼女の温もりに身を委ねる。……だが、そうしたからこそ、不意に新しく気づくものがあった。自分を抱きしめている相手は、呼吸をしている。脈もとくとくと打っている。──記憶、ではない。今ここにいる存在だ。同じ時間、同じ空間を生きている人間だ。……ならば、ならばそうだ。今の己を抱きしめているのは、娘の体を借りて甦ったシェリーなどでは決してない。もちろん、ヴィヴィアンの瞳も顔立ちも、声や仕草や体温だって、彼女に生き写しだけれども。それはあのひとの血を継いでいるからであって、シェリーの代わりをしているのではない。ギデオンを抱きしめているのは、……今ここにいる、ヴィヴィアンだ。今の己を救っているのは、ヴィヴィアンの愛情だ。とうに死に別れたシェリーをもう一度強く感じられたのも、娘の彼女が、自分を過去に繋ぎ直してくれたからだ。──時を超えたこの幸福は、ヴィヴィアンがくれたものだ。ようやくそう悟ったギデオンは、ふ、と静かに顔をあげると。緩く身をほどき、相手と視線を合わせ。ひどく穏やかに微笑みながら、彼女の頬に武骨な掌を添え返して。)

………………。
……つくづく感じることだが。
俺はたぶん、おまえには一生敵わないだろうな。



(/諸々かしこまりました! 漠然としているのはこちらも同じですので、細部がどう転ぶかわからない感触を一緒にわくわく冒険できればと思っております。設定置き場のあちらも、リマインド程度の者ですので、これまで通りの雑談などもお気兼ねなく。これにて背後はいったん下がりますが、何かあればまたお声がけくださいませ。)





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