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Petunia 〆/853


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自分のトピックを作る
141: ギデオン・ノース [×]
2022-08-07 15:15:11




(不満げな声を聴き流しつつ、広い背中を彼女に向けて。荷物脇に再び屈み、布に砥石、ドリアードの油といった手入れ道具を淡々と片付けていく。その間、寝台が軽く軋む音やら、しゅるしゅると袖を通す衣擦れの音やら──何故か真逆の動作にも聞こえたが、気のせいと思うことにした──妙に宜しくない物音のせいで、秘かに落ち着かない気分を味わい。どうにか上手くやり過ごそうと気難しい顔でため息をつけば、眉間の皺を強く揉み解すことで、堅い精神統一に努める。しかし、声をかけられたからとやおら立ち上がり、彼女のほうに向き直れば。この部屋を初めて見た時と全く同じ反応、すなわち、涼しい顔を崩さぬまま数秒固まる様子を見せた。──いっそあまりに見事な墓穴だ。風呂上がりのヴィヴィアンに、自分が愛用する普段着なんぞを着せてしまったものだから。少なくとも肌面積で言えば先ほどよりマシなはずなのに、先ほど以上に強烈に煽情的で、ないはずの独占欲やら庇護欲が無理やり掻き立てられてしまう。おまけにここはふたりきりの部屋、夜の薄暗い部屋を燭台のオレンジの明かりがゆらゆらと妖しく照らす、追い打ちのような環境で。焦点を定めぬまま「…………、」と口を開きかけるも、結局何も出てこなかったのは、これ以上あれを着ろそれはダメだとうるさく言い募ろうものなら、逆にそんなにも邪な目で見ているのかと訝しがられる気がしたからだ。別に先刻の“お父さんみたい”の殺傷力をまた向けられたりしたらと考えたからではない、違う、断じて違う。結局右手を顰めた顔に、左手を腰に当てて俯き、返事のないまま数秒間沈黙してから。顔を上げた時にはもう思考をすっきり切り替え、相手の問いかけを露骨に流しながら小机のほうを指さし。今夜はもう用事を済ませてさっさと寝てしまおうと、今度は自分が寝台に腰を下ろして。)

……治療を頼む。それと、女将がさっき差し入れてくれた葡萄がそこにある。





142: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-08-07 23:24:29




( あ、また固まっちゃった。確かにギデオンにとって戦況はこの2ヶ月の中でも最悪に厳しいかもしれないが、流石に処理落ちしすぎじゃなかろうか。やっぱり疲れてるんだなあと心底同情しながら、診察に向けて邪魔な腕を捲って。その間に復活し、それでも言葉を紡げずに沈黙するギデオンを鑑みれば、納得したような生暖かい視線と微笑みを浮かべ。ああ、男の子は好きよね──と、縫製のラインが余って落ちた自身の肩を見つめると、相手にも正攻法(と言うにはあまりに邪道だが)の誘惑が効きそうなことには一先ず安心した。それなら矢張り早く元気になってもらわなくては。此方は別に相手を都度フリーズさせたい訳ではないし、寧ろ辛抱堪らなくなっていただかないと困るのだ。そのためにも今晩は早く寝かせてあげようと、思惑はさっぱり違えども、計らずも2人の意向が一致して。「わぁ、急に来たのに優しい!終わったらいただきます」と早速自身の陣地に向き直った背後で、自分のより重く響いたそれが、やけに大きく聞こえた。サラマンダーの尾やマンドラゴラから抽出した軟膏を片手に振り返れば、寝台に腰を下ろしたギデオンが目に入る。その倒錯的な光景に押し倒すどころか腰が引ける辺りが、お嬢さん育ちといったところ。何か小さな拍子で今にも限界を迎え、逃げ出したくなってしまいそうな脚に内心喝を入れ、狭い室内では殆ど無かった距離を半歩詰めれば。密室で2人きり、患部を見るためとはいえ、寝台に座ったギデオンを脱がせて、その肌に触れるなんて──なんか、そんなの、駄目じゃない?相手から数周遅れの危機感に、そろそろ冷めつつあった顔色をぼぼぼっと赤に戻して深呼吸を。ただの治療行為に何を考えているんだ、男の上半身など幾らでも見てきたじゃないかと唾を飲み込もうとするも、口がカラカラに乾いて叶わない。彫りの深い甘く垂れた目元、高い鼻、経験豊かな年季を感じさせる顔立ちにかかる影が、燭台のせいでいつもよりしっとりと濃く見えて、何か見てはいけないものを見てしまった気がして思わず視線を逸らす。先程までの余裕はどこへやら、心臓はバクバクと主張し、ギデオンの顔を真っ直ぐみることすら出来ない。それでもヒーラーとして腹を括れば、ベッドの上に片膝を乗せ乗り出すも、先程もたてたはずの寝台が軋む短い音が、やけにいたたまれなくて、顔を真っ赤にしたまま、傷口の魔素を診るために、無言でシャツの上からそっと手を患部に這わせる。自分にはない筋肉の隆起にさえ動揺し、泣きそうな気持ちになりながら意識を集中させれば、良くも悪くも想像通りの残留魔素量に小さく息を吐き。患部の確認を済ませ、ふと顔を上げた瞬間、やっとその距離の近さに気がいてしまえば、他意の無い自分の指示さえ意味深に聞こえるようで、掠れてきていく語尾が余計その空気を悪化させ。 )

──……シャツ、自分で脱いでください、




143: ギデオン・ノース [×]
2022-08-08 00:55:24




────…………、

(きしり、とまた発条の縮む音。見れば、あの能天気な無防備ぶりはどこへやら、明らかに今更恥じらいだしたらしい真っ赤な顔のヴィヴィアンが身を乗り出している。そのまま肩口に伸びた指先は、躊躇いが乗るからだろうか、酷くしおらしい這わせ方。かえって面映ゆいその感触に、呼び覚まされそうなものもあったが。目を閉じるだけでやり過ごせたのは、こうなったら何事もなく朝を迎えてみせようと、先ほど腹に据えたから。だから、取り立てて深い意味などないはずの作業を、蚊の鳴くような掠れ声で、語弊を孕ませて請われたときも。一瞬の間の後、ごくゆっくりと瞼を開いただけで。曖昧に投げた青い視線、薄く開いた口からは何も発さず、ただ首元に両手をやり、釦をひとつひとつ外していく。これでいい、?まれるな。ただ無心でいればいい。──そう自分に言い聞かせながらさらけ出されたギデオンの上半身は、蝋燭の揺れる明かりに照らされ、いくつもの陰影を描く。若者の瑞々しさには流石にいくらか劣るものの、日々鍛錬を欠かさぬおかげでしっかりと張りがあり、肉らしい肉などその体重の一割もない。自分たちのような職種は、鍛え上げた筋肉そのものがいちばん大事な鎧なのだと、かつて師匠に教わっていた。……その娘にこうして傷を診てもらう日が来るとは因果だな、と微かな感慨を覚えながら、相手が診やすいように上半身だけ緩くそちらに向ける。レイケルに貫かれた肩の傷は、腕のいいヒーラーのおかげでとうに穴こそ塞がった。しかし呪いのせいで治りは遅く、三つ並んだ傷口と周辺の肌はまだ青黒く変色したままだ。そこに軟膏を塗るだけなら自分でもできるはずだが、「せっかく相性の良い聖魔素の持ち主がいるんです、それごと塗りこんで貰いなさいね」とはあの意地悪な医者の助言。それを素直に実行するのは、今宵この場が初めてとなる。……しかし、初回がこんなに緊張した雰囲気では、いずれ来る二回目以降も変な空気になりかねない、それは御免だ。そう考えてふと切り出したのは、他愛もない雑談。低く落ち着いたトーンの声で、相手の緊張をほぐすべく、されど治療の邪魔にならぬよう、大した意味もない呟きを落として。)

……そういや、川の水位がおかしいくらいに下がっていたな。船員の話じゃ、こんなことは初めてで、それらしい気候の異変も全く見当たらないらしい。原因、何なんだろうな。





144: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-08-08 09:53:40



──ッ、

( 無理!無理!絶ッ対無理!!自分から脱ぐように指示したにも関わらず、目の前の引き締まった上半身を前に、脳は必死に即時撤退を要求する。自分とは違う一切無駄のない美しい肉体は、まるで写本で見る古代の戦神のよう。豊かに盛り上がった胸筋は、直線的な影を鳩尾に落とし、腹もまた複数の硬質な影が、ギデオンの呼吸と、燭台の光の揺れに合わせて震えている。手から何から、全てが自分より大きくて、今この状況が許されているだけで、相手の気が変われば直ぐにでもねじ伏せられてしまうことが一目で分かる厚みの差。何より首や鎖骨、手首の発達した筋が、ギデオンの動きに合わせて、まるで精巧な機械のように浮き沈みするのが目の毒で、釦を外して袖を抜くだけの何気ない動作でさえ、癖になったらどうしてくれるんだと理不尽な八つ当たりさえ頭に浮かぶ程。熱に浮かされたような座った目で、無自覚にシャツが脱がれていくのをじっと見つめていると、緩く向けられた上半身にさえビクッと大袈裟に反応し。それでもグッと腹に力を込めて、痛々しい傷跡に視線を集中させれば、素直な心配と共に幾分か冷静さも取り戻されるようで、大分手遅れだが「ありがとう、ございます」と平静を装いながら、作り方とともに医師から手渡された軟膏の蓋を開け。その透明のスライムのようなテクスチャに、サラマンダーの魔素がオレンジ色に煌めく軟膏を指にとったところで、また問題がひとつ。この魔導性軟膏を塗り込む際に、あとから流し込む魔力の馴染みを良くするために、極小量の魔力を流し込むのだが、今この不安定な精神状況で上手くいく気がさらさらしない。そもそもこの手の調整は不得手で、そんな面倒なことをしなくても火力で流し込んだら、と言って医師からそれは冷たい視線を向けられたビビである。またシルクタウンの時のように、木造の宿に花のサークルか新芽を芽吹かせるのが関の山だ。とろみのあるそれを指で弄びながら、どうしたものかと薄目で時間稼ぎに徹していれば、ふと振られた話題にパッと顔を上げ。得てして各地の治安維持組織の管轄外の困り事を解決している冒険者は、何でも屋になりがちで。今回の異変について振られれば、流石の話題センス、寝台の上、至近距離という状況は変わらないものの、先程までの艶っぽい雰囲気は霧散して。ビビの表情も普段通りの爽やかなものに戻れば、無事右手の軟膏もサラマンダーの魔素がキラキラと金色に変色し。ギデオンに上手くやられていることに気づかないまま、傷口に伸ばす手つきは完全に事務的な、けれども心配の伝わる湿り気のない暖かなものに戻っていた。 )

……前例がない、となると確かに不安ですね。
天候に問題がないなら人為的なものか……明日以降もダメなら調査でも提案してみましょうか。
危険なモンスターだったら困りますし……あ、触りますね。染みたりしないですか?




145: ギデオン・ノース [×]
2022-08-09 04:18:05




(相手がほっと緊張を緩める気配、次いで幾分冷静さを取り戻した声。気を逸らすためにとりあえずで振った雑談は、どうやら無事功を奏したらしい。人肌程度に温められた黄金色の軟膏を、労わりの宿る手つきでてきぱきと擦り込まれつつ。患者を思い遣るヒーラーの問いかけには、「大丈夫だ」と唸り声を返す。実際、魔素が溶け込む独特の感触はあるが、嫌な感じはまったくしない……どころか、うっすら纏わりついていた重い痛みがすぐさま和らぐ気さえしていた。おそらくこの一週間以上の日々で、呪いのもたらす状態異常に下手に慣れ過ぎていたに違いない。甲斐甲斐しい手当てに感謝の念を覚えながら、ようやく落ち着いて目を合わせ、相手の提案に賛同を示しつつ。背面の傷痕も診て貰うべく、再び体の向きを変えて。)

……ロビーで聞いたんだが、上流を調べに行く話は船乗りたちの間ですでに出ているらしい。それについていってみるか。

(──責任感の強い船乗りたちは、自分たちの客に不便な思いをさせることが心底申し訳ない様子だった。いかつい見た目で言葉遣いもガラが悪いが、仕事においては誠実そのものな連中なのだ。カレトヴルッフの冒険者にもそういう人種はたくさんいる。なら、彼らはいわば同業者のようなもので、そうとなれば手を貸さぬ道理もないだろう。相手に身を任せながらも、もともとベッドに投げだしていた羊皮紙の束をふと左手で引き寄せると、相手が容易に手に取れる位置にぽんと置く。グランポートでの依頼をこなすにあたり、水妖の仕業の可能性を想定してキングストンから持ってきた資料だ。セイレーンやセルキーなど、特に海辺に棲む魔物についてが主だが、うっかり視野を狭めぬようにと、それ以外の水棲モンスターや、或いは水際で起こる怪奇現象などの類も含まれている。とはいえ、この中に正解があるとは限らないし、今は手掛かりもほとんどないので、適当な予習程度にはなるだろうが。そうしてあくびをひとつかみ殺す、正式な依頼ではないため呑気な構えがありありと出ていた。)

こいつらに目を通しておけば、現場に行ったときに何かしら気づくかもしれん。……ま、眠くなるのにもうってつけだろう。






146: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-08-10 10:51:07




……そうですね、お願いしてみましょう

( 軟膏越しに触れた傷口は、想像以上に魔素の再生が早い。気丈な返事をするギデオンの体の、嫌な強ばりが解れるのを見逃さず、無言で患部を労わるようにそっと手の体温で傷口を温めて。薬は滲みなくてもこれでは普段が辛いだろう、キングストンに帰ったら診察の頻度について魔法医に相談すべきか──兎に角、今そのことを患者に話して無駄に不安にさせるのは得策では無いと判断すれば、いつも通りの明るい表情を意識して浮かべ。身体の向きを変えたギデオンへの返事が少し遅れたのは、船から部屋までずっと同行していたにも関わらず、ビビの知らない情報を依頼中でなくともきちんと収集しているギデオンに驚いたためだ。素直な尊敬の滲む視線をギデオンに向けて、自分も相手の役に立ちたいという気持ちの湧き上がるままに、新鮮な気持ちで羊皮紙に目を向ける。軟膏で汚れた手で触れる訳にもいかずに上半身を乗り出せば、ギデオンの背中に一瞬柔らかいものを押し付けたのも無意識で。生まれも育ちもキングストンのビビには、あまり馴染みの無い魔物や話達に強く興味を惹かれるが、此方が乗り出す直前、欠伸を噛み殺したギデオンを思い出せば、その人間味に少し安心して小さく笑い、頼もしいはずのギデオンを甘やかしたくなる衝動は、どうやらこの時点で既に生まれていたらしい。もう片方の脚も浮かせて、完全に寝台に乗りあげれば、モゾモゾと正座の姿勢をとって相手の左肩をつつく。膝枕での治療は、同性の冒険者たちから、よく眠れると非常に評判が良い。『魔法も気持ちいいけど、枕の弾力が最高なんだよ。頼むから絶対痩せないでくれ』と腹に顔を埋めた女剣士のカトリーヌに言われた際は流石に複雑だったが、ギデオンが癒されるなら自分の贅肉も本望だろう。相手が振り返るのを待って、どうぞ、とばかりに両手を広げれば、小さく首を傾げて。 )

──アハハッ、あと魔素取り除くだけなので寝ちゃってもいいですよ
体制変えましょうか




147: ギデオン・ノース [×]
2022-08-11 00:36:36




(青い視線を、またしても何も無い一箇所に据えてしまう。原因はただひとつ、ぽふりと無邪気に触れていった彼女の柔らかな感触で。相手が興味津々で魔物の資料を覗き込む一瞬、顰め面を片手で覆い隠しながら密かに諸々押し込める。いつものハニートラップか、あるいは全くの偶然か──今回は、おそらく後者なんだろう。何となく読める程度には、相手のことがわかるようになってきた。……なったところで、純真なたちの悪さに参ることには変わりないし、己だけが翻弄されてばかりいるのも──実はそんなでもないのだが──そろそろちょっと腹立たしくなってくる頃だ。そんな心中でいたものだから、ころころ笑った相手に可愛らしくつつかれながら不穏な提案をされようものなら、露骨に胡乱げな目を向けて。いつのまにか寝台にちょこんと乗っている相手、あざとく小首を傾げながら、まるでギデオンが身を委ねるのを待つように細腕を広げてみせている。何とは言わないが、仕草のせいで柔く寄せあげられたものがシャツに濃い影を落としているし、眩しいほど白い太腿に至ってはほぼ根元から生肌だ。それらをじろっと一瞥した目付きにはしかし、ここに来る前にギルドで見せたような、反射的疚しさはなく、むしろ妙にむすっとした色合いで。いつだったか、普段は気高い女である剣士仲間のカトリーヌに惚気られたことがある、あの子の膝枕は人をダメにする枕だと。要するにそういうことなんだろう、理解してしまえばますます、ギデオンの顔色は渋いそれへと変化していく。いっそ脅しで押し倒してやろうかとも思ったが、肩の治療はまだ終わっていない、本当に観念させねばならない時まで我慢するべきだろう。年の功の忍耐力をため息ひとつに収束すれば、とうに乾いた金色の横髪をがしがしと掻き。相手のそば、器に入ったオレンジの煌めきを指さすと、冷静を装った声でもっともらしい断りを入れて。)

……いや、このままでいい。そいつを背中にも塗ったばかりだ、シーツでうっかり拭ったら元も子もないだろ。





148: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-08-11 12:22:25



はぁい。じゃあ失礼しますね。

( 素直に乗っては来ないだろうと思っていたが、困るでも叱るでもなく、大人な対応をされてしまえば、流石に諦めて小さく肩を竦める。ギデオンとじゃれあって(ビビとしては本気だったわけだが結果として)いた間に、軟膏もしっかりとなじんだのを確認すれば、患部にそっと手を当て、魔素に集中するように目を閉じて。『丁度良い練習台もいるんですから、この期にもっと魔力効率の良い方法も学んだら如何です。長生きしたいならですがね。』とは、大きなお世話ですが、と始まった意地悪な医者の言である。そうでなくとも以前から師や父、魔法使いやヒーラーの先輩から散々言われ続けて来たことで、そろそろ引き伸ばしてきた年貢の納め時だろう。普段はその精霊に愛されたかのような豊満な魔力を利かし、一気に治療するばかりで、あまり行わない繊細な調整は別の神経を使う。執拗い闇の魔素の分布を3分ほどかけて根まで辿り、聖の魔素を最低量流し込み終わった時、入浴後にも関わらず額の生え際にはうっすらと汗が滲んで、その柔らかい産毛を額に張り付かせていた。無意識に寄せていた眉間の皺をゆっくりと解せば、手の軟膏を布で拭いながら、不安そうな心配そうな、これでもかとギデオンへの愛が詰まった表情で張本人の顔を覗き込んで。 )

──うん、いかがですか?
大方取り除いたと思うんですけど、変なところはないですか?




149: ギデオン・ノース [×]
2022-08-11 13:39:57




(すんなり聞き入れてくれた相手は、打って変わって真剣な表情を帯び、薄い手を傷にかざして魔素を探知しはじめる。そうして彼女の意識が逸れているときのほうが、こちらも自分のペースでいられるからだろう、間近にいる相手を何とはなしに見つめることにして。若葉色の瞳に影を落とす長い睫毛、化粧を落としてうっすらと星の散った頬、普段よりどこか幼く和らいで見える素顔。普段とちがって結われていない温かな栗色の髪は、つむじの位置に不思議な懐かしさを覚えた──ああ、あのひととまったく同じだ。視線を外してほんのかすかに口の端を緩めたのは、皮肉に思ったからか、それとも切なくなったからか。あのひとの娘を自分なりに大事にしようと適切な距離を置いてきたつもりが、今はこんなにも間近に接してしまっている。師ははたしてどう思うだろう、ギデオンなら道を過たないと信用を置いてくれるだろうか。しかし彼女は空にいる、尋ねようにももう叶わない。……そうこうするうちに無事治療が終わったらしい、凝らしていた表情をようやくほぐして手元を拭うヴィヴィアンに、不安そうに尋ねられれば、遠くにやっていた心を目の前の彼女にきちんと戻して。安心させるような笑みを浮かべ、軽く肩を回して実際に調子を確かめる。疲労もついでに癒してくれたのだろうか、随分と軽くなったと実感すれば、そばに置いていたシャツを引き寄せて再び袖を通しつつ、感謝のこもった声を返して。)

ああ、大丈夫だ。……利き腕側の負傷だから、医者の爺さんの話を聞いたときは正直どうなるかと思ってたんだが。これならたぶん、何も心配はいらなそうだな。





150: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-08-11 18:14:41



よかった、
でも、絶対無理はしないこと……なんて、少しでも違和感あったらすぐ教えてくださいね。

( 優しい笑みと返答に心から安心し、惜しげもなく大輪の笑顔を咲かせると、柔らかいベッドの上に膝立ちし腰に手を当て説教臭いことを述べてみる。柄じゃない忠告に我ながらおかしくなってすぐ破顔すれば「ギデオンさんが怪我すると皆さん悲しみますから」と、どこか自分を大事にしないきらいのある相手をさらりと嗜めたのは、治療中の相手の思考を読み取ったわけではなく、疑いようもないただの偶然。相手の胸中にいるビビとも縁深い女性との関係を知って、愛しい想い人かつ世界一大切な相棒を、二度と一人ぼっちにはさせないと心に決めるのはもう少し先の話。今はただ良くなった相手の顔色に安心すれば、あふ……と大きな欠伸を漏らして。水位が戻ればまた船旅の後ギルドへの報告作業に追われ、戻らなければ上流へ調査に行くこととなる。そんな明日のことを思えば、そろそろ休んでも早すぎるということはないだろう。ギデオンの用意してくれた資料には非常に後ろ髪を引かれるが、早起きして読んだ方が効率も良い。下敷きにしない様にテーブルの上に寄せるついでに、瑞々しい葡萄を一粒だけつまんでから保存魔法をかけようとすれば、既にかかっていたようではじかれた。そのまま綺麗にベッドメイクされたデュヴェイを引いて丁度良い余裕を作り、獲物がある冒険者達は意外とこだわるそれを確認しながら、重たい瞼に従って潜り込もうとした瞬間、ふとギデオンの顔をまじまじと見つめて。今回のダブルベッドはビビにとっても予想外の事故だったが、それをビビが受け入れた後もまだ悪あがきしようとしている節のある相手に、まさかこちらが寝た後深夜に出ていくようなことはすまいなと、普段の瞳に溢れる100%の信頼は何処へやら、信用のない視線で一瞥し、既に眠気で鈍りつつある思考で相手のシャツの裾をキュッと握って。 )

そろそろいい時間ですね、葡萄は朝ごはんにしましょう
ギデオンさんベッド右と左どちらが……どちらがいいですか?




151: ギデオン・ノース [×]
2022-08-11 21:53:21




(いつかの船上同様に眩くはにかむ姿を見やり、こちらも口許を緩めていたが。さりげない一言を耳にした途端、表情がかすかに失せる。……なにか、言葉通り以上に大切なことを云われた気がしたのは何故だろう。揺れた視線を曖昧に落とす間にも、相手は身の回りの物をこまごまと片付け、今宵の寝支度を始めていて。何も考えずただぼんやりとその様を眺めていると、不意に振り返った相手から、今度は猜疑心も露わな表情を向けられてゆっくりと目を瞬く。どうやら、強情なギデオンが本当に体を休めるか、真面目に危ぶんでいるらしい。魔力を繊細に操作した反動で疲れも出てきたのだろう、既に少しずつ眠たげになってきたのに、ご丁寧にもこちらの裾を捕まえていると気がつけば、淡い苦笑を取り戻す他なく。──ヒーラーの休息命令に戦士がきちんと従わなければ、ヴィヴィアンの立つ瀬もなかろう。どのみち、諦めるほかなかったのだ。そう状況を受け入れて穏やかな息をひとつ吐けば、「右にする」と言質を与えて立ち上がり。出窓、次いで部屋の扉の施錠を今一度確認すると、燭台の明かりは真ん中の大きな一本を残し、息を吹きかけて消してしまう。途端に光量を大きく落とした室内は、夜独特の青い闇に沈み込み、静寂も増して感じられた。一日の疲れを洗い流し、バディによる初めての診察も終えた、これであとはもう眠るだけ。部屋の中央にゆっくりと戻ってくると、寝台の片側に乗り上げ、相手が程よく崩してくれた上掛けのなかに下半身を滑らせる。せめてもの妥協案として、無駄に四つもある羽毛枕のひとつを相手との間に置き、顔が間近に見えないように隔てさせると、ようやく上体も深々と横たえ。わざわざ近づかない限りは触れ合わずに済む寝台の広さに安心し、目を閉じて深呼吸する。まんじりともせずに夜を明かすかと思っていたが──意外にも、自分も随分眠くなってきた。相手の眠気が移ったのだろうか。)

…………、明日には……キングストンに帰れるといいな。





152: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-08-12 00:24:50




( 相手から得た言質にほとんど開いていない目をもにょもにょと瞬かせると、立ち上がる相手を強く止めもしないが裾を離すこともないまま、戸締りをするギデオンの背後をハルピュイアの雛の様についていく。寝台に入り込むギデオンに安心したのか、再び小さく欠伸をすればやっとその手を放し。約束通り左側のスペースに潜り込み、即柔らかな枕に顔をうずめると、スイッチが切れたかのようにピクリとも動かなくなっていたから、ギデオンの涙ぐましい工作には反応することはなく。それでも相手に声をかけられれば、必死に脳に酸素を取り込む音をさせてから、健気に絞り出した返事は明らかに寝入る寸前の物で。聞くものの眠気まで誘うような規則正しい寝息を立て始める寸前、やけに暖かくはっきりと呼んだのは何百回も繰り返してきた相手の名で。 )

──あい、みなさんと、久しぶりに、会えるの……たのしみ、です……ね。……おやすみなさい、ギデオンさん。

( それは100年寝ていたような、かと思えば意識を失った次の瞬間には目覚めたような、不思議な感覚と軽い体の調子から、質の良い睡眠がとれたことを感じながらの起床で。寝汚いのは酒が入っていなくても変わらない。まだ若い体には朝は辛いもの。かすかな小鳥の声と、うっすら開けた瞼から差し込んだ光の色を見るに、もう少し寝ていてもかまわないだろうと瞼を閉じれば、グランポートの気候になれつつあった体にうっすらと肌寒さを感じて。太陽の匂いがするデュヴェイをきつく巻き込もうとすると、半身程先に何か温かい物があるようだ。夢うつつの脳みそが出した答えは、知らない土地の初めて泊まった宿にあるわけもない、キングストンの自室に十数年、ビビの安眠を見守り続けた不死鳥を名乗るには間抜け顔のぬいぐるみ。その温もりにすり寄り額をこすりつければ、その非常に安心できる香りに再び健やかな寝息を立て始めるだろう。 )




153: ギデオン・ノース [×]
2022-08-12 11:31:22




……おやすみ。

(暗闇のなか、隣からぽそぽそ返ってきた呂律さえ怪しい声に、最後にちらりとだけそちらを見遣る。そこには当然、自分の設けた枕の壁があるのだが、奥にいる娘がすぐさま寝息を立てはじめた気配は柔らかに伝ってきて。思わず音を立てずに小さく笑い、しばらく枕越しに眺めてから、低い小声で挨拶を返す。この糸が切れたような寝つきの良さといい、先ほどギデオンの裾を掴んだままふらふらついて回っていたことといい。ヴィヴィアンは眠くなると、普段も垣間見えるあどけなさが格段に増す性格らしい。それでいて、どんなに限界でもこちらの名前はしっかり呼ぶのだから可笑しなものだ。随分妙なのに懐かれてしまった。……それを決して嫌とは思わぬ自分がいることに薄々気づきながら、体勢を戻したギデオンもまた目を閉ざし。穏やかな暗がりの中へと、意識を手放すことにして。)

(──翌朝。窓の外の小鳥がまばらにちゅんちゅんさえずる声に、ごく自然と瞼を開ける。大抵は夜明け前に目が覚める習慣なのだが、案外深く眠り込んでいたらしい。明らかに疲労から回復し、生き返ったような新鮮な感触。かしそれは普段に比べてであって、それなりに歳を重ねた体には朝特有の心地良い気怠さが新たに纏わりついていた。深呼吸しながらそれとなく顔を巡らせ、眩しそうに細めた目で窓の方角を確かめる。紗越しに差し込む陽射しの角度からして、今は朝の七時過ぎといったところか。船乗りたちが上流調査に出かけるまで、あと一時間半ほどだろう。鬱蒼と茂る森を抜ける気ならば、夜行性の凶暴な魔獣たちが巣に帰るまで、充分時間を置かねばならない。もう朝も迎えたことだし、軽く柔軟してからいつもの素振りをしに出掛けようかと、上体を起こそうとして。そこで初めてそれに気が付き、ぴたりと凍り付いた。……ゆっくりとそちらを見下ろせば、そこには存外寝乱れている若い娘。どういうわけか、それなりに距離を置いてんていたはずが、今やギデオンに寄り添うようにぴったりとくっつき、何ならギデオンの腕にその細腕を絡みつけている。自分自身それをあまりに自然に受け入れていたことに謎の衝撃を覚えつつ、いや、これはまずい、と腹を焼くような焦燥感が芽生えだして。──男と女で、朝は少々勝手が異なる。こんな早朝から疚しい下心など湧くわけもないが、それはそうと、今のギデオンはそれに気づかれれば誤解されかねない状態にあるのだ。同室以上に同衾を避けたかったのはそういう理由もあったというのに、相手は呑気に、何故かやたら幸せそうに惰眠を貪っている有様。そんな場合じゃないと振りほどきたいが、自分の体の具合やら、相手が朝の光になかにさらけだす化粧っ気のない安らかな寝顔やらを思えば、下手に起こすのも憚られ。結局中途半端に半身を起こしかけたまま、早くも片手で顔を覆い、いつもの苦労性に陥り。……どれほどそうしていただろうか、いろいろと落ち着いたころになって、ようやくそっと手を伸ばし、相手の肩を揺り動かす。できれば相手が寝ぼけているうちに腕を引き抜いて、何もなかったことにしたい。上手いこと寝起きが悪いように祈りながら、「ヴィヴィアン、」と何度か穏やかに呼びかけて。)

……ヴィヴィアン、朝だ。起きろ。






154: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-08-14 00:27:30




……う、おはよ、ございます

( 誰かの己の名を呼ぶ優しい声に呼ばれて、ゆっくり意識を浮上させる。瞼越しの朝日に顔を顰めると、目元を隠すために片手をギデオンから離して。尚繰り返される名前にやっとモゾモゾと起き上がるが、開けていない目とやけに深い呼吸音を聞けば、まだ覚醒しきっていないのは明らか。残りの片手からも、簡単にその腕を引き抜けるだろう。 )

んー、洗面所お先に失礼しますねぇ

( そのまま時間にして一分ほど、ぼんやりと尾を引く睡魔に頭を揺らしていたかと思えば徐に立ち上がり。口調こそ幾分かハッキリしたものの、普段のビビであれば朝準備の順番など些細なことこそ気を使い、最終的な順番こそ前後することはあれど、まず譲る句を口にするはずだ。まだどこか夢うつつな表情で、そんな実家の父にするような淡白な甘えを見せながら、ローブ以外の着替えを一式手に取れば、さっさと浴場の扉を閉めてしまい。たっぷりの冷たい水で寝起きの顔を清めると、ようやく意識も安定してきたようだ。小さくもよく磨かれた鏡を覗き込めば、今まで父以外の異性に見せたことのないはしたない格好に、思わず顔を背けて赤面し。──昨晩は本当にどうかしていたに違いない。こんな格好でよくギデオンに迫って、しかもその隣で熟睡出来たものだ。昨晩のことに加え連鎖的に、腕に残る逞しくも安心出来る感触を思い出せば、叫び出したい衝動を抑えるのに大変苦労する羽目となって。それでも元々いつ飛び出すことになるか分からない冒険者稼業、一般的な女性よりは素早く着替えを終えると、どんな顔を合わせれば良いのかと扉を開けるのを一瞬躊躇う。それでもギデオンだって準備があるのだ、調査について行くのであればあまり時間に余裕がある訳でもなく。覚悟を決めて扉を開けば、へらりと笑ってギデオンに投げかけた声が若干上ずって、どこか白々しく響いたのは許されたいところ。 )

失礼しましたー
昨晩はよく眠れました?……シ、シャツは洗って返しますね、




155: ギデオン・ノース [×]
2022-08-14 07:04:26




(気の抜けた様子で洗面所に消えていく背を見送れば、乱れた前髪を掻き上げながら小さく安堵のため息を漏らす。次いで、薄い無精髭の生えた顎を撫でながら思考の切り替えに努め。彼女の身支度を待つ間、猪毛の歯ブラシや髭剃りのほか、念のため戦士服や装備の類も引っ張り出すことにして。)

……そうしてくれたら助かる。

(やがて、眠気を完全に振るい落としたらしいヴィヴィアンがおずおずと顔を出したころには、差し込む朝陽に白く眩くなる寝台の上、魔物の資料に目を通している最中。存外出てくるのが早かったな、と、紙面から顔を上げたことで、相手のぎこちない様子に気づく。格好こそいつものそれに戻ってはいるが、どこか気まずそう、というよりも気恥ずかしそうな面持ちだ。……昨夜の自分が如何に大胆な乙女だったか、今朝になって自覚が追いつき始めたのだろう。あんなに積極的だったくせに、妙なところでまったくの初心なのか。いじらしいギャップに思わず苦笑を漏らつつ、シャツの件を承諾すると、手荷物を持ち自分も洗面所へ。正直なところ、洗おうが洗うまいがこちらは大して気に留めないが、若い女性であるあちらには気持ちの問題というものがあろう、それを汲めぬほど朴念仁でもない。「別に急ぎじゃない、好きな時に返してくれ」と言いながら彼女の横を通り過ぎようとしたところで、不意にほんの少しだけ声を落とし。一言二言、耳打ちというほどの距離ではないが、ささやかな意趣返しを付け加えることにした。──ちらとだけ向けた横目には、笑みの気配こそないものの。昨夜や普段の過剰な防衛ぶりはどこへやら、昨夜の向こう見ずを揶揄う、意地悪な色がかすかに乗って。)

幸い、ぐっすり眠れたよ。……役得な思いをしたからな。



(/たびたびのご相談失礼いたします。ダブルベッド事件の一夜が終わりましたが、この後の展開についてご希望等ありますでしょうか? この後の討伐をひとつの事件として丁寧に追うのでも、飛ばし飛ばしで何か美味しいところだけ拾っていくのでも、或いは終わりに向けてまとめていき、後日談的にさくっと描写するにとどめて次の話に移るのでも、主様の好みの方向にさせていただければと思います。)






156: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-08-14 12:16:18




わ、わかってて言ってるでしょう!意地悪……!!

( ──う、今日もカッコイイ…。浴場からそっと伺ったギデオンが、寝台の上で真剣な眼差しを書類に向ける横顔に胸がキュンと鳴る。そこへ朝の準備に声をかけるなんて新婚さんみたい──と浮ついた余計なことを考えるものだから、声が上ずったりするのだ。ギデオンのスマートな返答に無意識に助けられながら、咳払いをして自身を戒めるように腹に力を込めたにも関わらず、取ってつけたような平静の仮面は、揶揄われてしまえば直ぐに剥がれてしまう。役得なんて心にもないことを、と昨晩全くつれなかった相手に怒りさえ覚えるが、今回ばかりはあまりの自業自得ぶりに、真っ赤になって縮こまるしか無かった。 )

( そんな朝の一幕を乗り越えて。葡萄と共に女主人が必死に人数分用意してくれた朝餉に舌鼓を打てば、調査を手伝いたいという2人の申し出に、プロ意識の高い船員たちは最初こそ渋ったものの、最後はビビらの熱意に負け快諾してくれた。否、2人が冒険者と知ってもなお「でもお客様に手伝って貰うわけにゃぁ…」と渋る船員を、面倒になったビビがハニートラップで沈めたとも言う。昨晩寝る直前、珍しく早く帰りたいという趣旨の言葉を漏らした相棒の望みを叶えたかっただけなのだが、どうしてこれが本命のギデオンにできないのかは、本人のビビが一番知りたい。ともあれ、屈強な船員達と共に水かさの減った川を遡り、2、3時間も歩いた頃だろうか、どうしても先頭は譲らなかった船員達にどよめきが走って。ギデオンの方を一瞬見やり、大柄な船員達と鬱蒼と茂った木々の間を縫って川辺に顔を出せば、その巨大な建造物──荒く加工された人の丈もありそうな流木が幾つも積み上がり、その隙間に詰め込まれた泥と藁の混ぜ物が、作成主の知能の高さを知らしめているそれを見上げれば、既に真上に近くなった太陽が目に入る程。こんなものが水を堰き止めていたのだから、水量が減るのは当たり前だ。これほど巨大では無かったものの、見覚えのあるそれに確認するように相棒の名を呼んだのは、彼が用意してくれた書類で出発の直前に見たそれに、目の前の建造物がよく似ていたからで。 )

ギデオンさん、これってアーヴァンクの……


( / お世話になっております。ダブルベッド事件ありがとうございました。ギデオン様とのやり取りが非常に楽しく、思ったより長編となってしまいました。甘さやビビの性格など、今回少々天然っぽい言動が気になったので、少し引き締めていこうかと考えておりますが、他にも気になる点があれば教えていただけると幸いです。
展開については折角素敵なご提案を頂いたので、程よくダイジェストしつつ、アーヴァンク討伐を楽しめればと考えておりますが、前譚が長くなりましたので背後様が早く進めたいということであれば、後日譚という形でまとめさせていただきます。どうぞよろしくお願い致します。 )




157: ギデオン・ノース [×]
2022-08-15 04:20:54




──巣だな、間違いない。……道理でこの辺りがぬかるむわけだ。

(ヒーラーの真剣な声に確信を込めて頷くと、足元の泥に目を落とし、やや忌々しそうに踏みつける。あたりの土がやたら水っぽくなってきたと思ったが、アーヴァンクのダムに堰き止められた運河の水が、両脇の森の土壌に染み込んでいるのだろう。ギデオンがそうして周囲を観察する一方、ヴィヴィアンの見事な手管で瞬時に絆され、道中やたら振り返っていた純情な船乗りたちは、行く手に広がる異常な光景を今や呆然と眺めていたが、これは無理もない話。何せ、昨夜までは問題なく航行できていたことを思えば、運河を弱らせた正体たるこの巨大なダムは、おそらく半日かそこらで一気に築かれたはずなのだから。これはまずいことになった、と顔をしかめると、「一旦作戦会議をしよう」と調査隊一同に声をかけ、足元の悪さから自然とヴィヴィアンの手を取りつつ、広い岸辺の乾いた岩場にしばし腰を落ち着ける。そうして、女将の持たせてくれたパンや干し肉を昼食として腹に詰めながら、まずは自分たちが知る限りの、基本情報の共有を始めて。──アーヴァンクという魔獣は、人と関わらずにただ生息する場合、別にそこらにいる動物とさして変わりない。川に棲みつき、巣を作り、狩りをし、繁殖し、いずれは怪我や病で死ぬ。しかし、その営巣活動が人里に影響を及ぼすので駆逐せねばならないとなると、魔獣の端くれという性質上、ものすごく厄介なのだ。理由は簡単、奴らはただシンプルに強い。ドラゴンのように火を噴くわけでも、ゴルゴンのように視線で石化させるわけでもないが、アーヴァンクの場合、全身そのものが強力な鎧かつ武器である。強靭な膂力は自らより大きな岩をも軽々と持ち上げ、オレンジ色の鋭い前歯は大木すら噛み砕く。魔力を込められない普通の太刀なんぞでは、奴らの毛皮に傷ひとつつけられやしない。そして水中の彼らは、まさしく水を得た魚のように、恐ろしく速く泳ぎまわる。アーヴァンクの十倍は大きなワニでも、ひとたび奴らの群れに囲まれてしまえば最後、半刻と経たず八つ裂きになるだろう。要は、普通の人間や普通の武器ではまるで歯が立たず、手練れの冒険者を十人以上編成してようやく制圧できるであろう、とびきり凶暴な害獣。それがアーヴァンクである──何か、あの資料には書かれていなかった大事な習性を忘れているような気もするが、今は頭に上らななかった。さて、そこまで伝えたところで。じゃあどうすりゃいい、近日中に解決できないんじゃ商売あがったりだ、大事なお客様がたを預かってるのによ、と悲愴感を漂わせ、頭を抱える船乗りたち。しかし、あくまで正面突破が得策ではないだけで、運河に水を取り戻す方法はあると説明する。必要なのは、この辺りの森にもたくさん実っているであろう、熟したテッポウブドウの房だ。一見普通の葡萄だが、たとえ少量であれ、自然界にない水の魔素を無理やり注入すると、拒絶反応で数秒後に大爆発する性質を持つ。目の前の船乗りたちはとは魔法で船を動かしている、その手の工作は任せられよう。作戦自体は至極単純。まずは、少数の船乗りによる水魔法の操作で、アーヴァンクどもが泳げるほどの水量はない川床を、下流に人工的に作り出す。広さはそんなに要らない、剣を振るえるほどでいい。次に、爆弾代わりのテッポウブドウを、他の多数の船乗りたちがダムに投げ込み、少しずつ破壊。怒って飛び出してくるであろうアーヴァンクたちを、ヴィヴィアンの閃光弾で足止め、誘導──ヒーラーである彼女には、船乗りたちが負傷しないかにも気を配ってもらう必要上、できるだけ安全地帯にとどまって状況を俯瞰してもらう。そして、唯一の魔剣持ちであるギデオンは戦闘を担当。船乗りたちが乾かし続ける川床で魔獣を迎え撃ち、一匹ずつ斬り伏せていく──というのが、今思いつく最善の策である。船乗りたちにテッポウブドウを収穫してもらう間は、ギデオンとヴィヴィアンで更なる下調べにあたり、アーヴァンクは何匹いるのか、ボスはどいつか、ダムの構造にどこかしら弱点はないか、そういった諸々を突き止めていけばいい。他に考えがあれば、もちろんそれも検討したい、と、まずは屈強な船乗りの面々を。次いで、シルクタウンにグランポート、二度に渡り背中を預けてきた相棒の顔を、真剣な表情で見据えて。)



(/こちらこそ、コミカルな大事件を伸び伸び堪能させていただきました! ビビの天然具合について、こちら側ではまったく問題ありません。ギデオンともども、振り回されたり魅せられたりを存分に楽しんでおります。ギデオン側においても、むっつりというかポンコツな一面が頻繁に散見されたと思っているので、アーヴァンクと交戦する際、本来の戦士らしい凛々しさを描写できればと考えています。
別の方面で、一点だけ懸念事項が。日々のお返事に際し、主様の方で何かご無理はなさっていませんでしょうか……? 時折句読点の感じが変わるので、もしやご多忙やお疲れの中で書いていらっしゃる説もありえるのでは、と少しだけ心配しておりまして。とはいえ、完全にこちらの杞憂でしたら、その際は笑ってご放念ください。
今後の展開についてですが、こちらも内心同様の塩梅をイメージしておりました。なので是非とも、程よくダイジェスト進行でお願いいたします。作戦について長々細々書いてしまいましたが、こちらはそれっぽい雰囲気づけのためですので、適当に扱っていただいて大丈夫です。また先述のように、ギデオンにおいては精悍な一面を再び印象付けられればと思っていますが、それでもあくまで、グランポート編よりは日常めいた平和路線という想像をしております。主様の側においても、ビビや船乗り、アーヴァンクたちを、お気に召すまま楽しく動かしていただければ幸いです。)






158: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-08-17 00:46:55




──やっぱり、一晩でこれって……どれだけの水が堰き止められてるんでしょうか。

( ぬかるんで安定しない泥道をものともせずに、男性陣よりは多少ヒールのある靴で歩きのける。その上何気なく片足を尻の脇に上げ泥を嘆く姿は、よく鍛えられた体幹の賜物。差し出された手を「ありがとうございます」と迷いなくとって見せた笑顔は、自分では何気なく微笑んだつもりだったが、先程までチラチラと振り返る船員達に返していたそれとは明らかに違う、恋情からくるあどけなさと、ギデオンへの信頼で溢れていた。岩場についた船員たちが我先にと、万年ポケットに入れっぱなしのハンカチーフを木陰に敷くうちのひとつにありがたく腰かけると、干し肉を噛みちぎりながら、ギデオンの作戦に無表情で耳を傾ける。シルクタウン、グランポートに続き、またしても相手ばかり危険な役を担う作戦は不本意だが、良い代案を思いつかない自分を一番不甲斐なく感じて、そっと瞼を伏せる。それでも冒険者なれば、1番可能性の高い作戦にかけるべきだろう。船員達にも妙案がないことを確認してから、ギデオンの真剣な表情に応えて頷けば、周りの士気を上げるように明るく微笑み立ち上がり。──数刻後、バディと共に大まかな下調べを終えて岩場に戻ると、既に船員たちはテッポウブドウの収穫を終えた様だ。口々に俺が1番たくさん採っただとか、俺のが大きいと主張してくる青年達(中にはいい歳した者もいるが)を、代わる代わる褒めてやれば、やっと本番にとりかかろう。一人ダムの全貌が見渡せる高台に登る関係で、別行動となる寸前に「ギデオンさんちょっと…」と真剣な表情でバディの袖を引いて、耳うちする様に背伸びを。船員たちに聞かれたくないといった調子で、長身の己より更に大柄なギデオンの影になる死角に入れば、近くなった横顔に耳打ちする振りをして唇を寄せたのは、今朝揶揄われた仕返しで。艶のある唇に自身の人差し指を乗せ、くすっと悪戯っぽく笑い声を漏らし、語尾にハートのつきそうな雰囲気で踵を下ろせば、怒られる前にと身を翻す仕草こそ小悪魔的だが、ほんのり頬が染まっていることには無自覚らしい。それから身の丈程の岩を身軽に登りこえ姿を消せば、何処からか感心した口笛が上がるのに応えて、少し離れた位置から大きく手を降る指先だけ覗かせた。 )

怪我をしないおまじない、なぁんて。
……それじゃあ、皆さん気をつけてくださいねー!


( / いつも暖かいお言葉ありがとうございます。そう仰っていただけると非常に心が救われます。真っ直ぐで真面目ではあるものの、年相応に大人で強かなヴィヴィアンが、ギデオン様の前では真剣故に子供っぽくなってしまったり、信頼ゆえに無防備になるイメージなのですが、あまり普段の方を描写する機会が少ないため、後者の面ばかり目立ってしまうのが気になっておりまして……少しずつ普段の冒険者としての強かさを描写できればと考えておりますが、相性にご不安を感じさせてしまっているやも、とご報告まで失礼いたしました。
背後様によるギデオン様の活躍シーンの描写については、本当に毎回素晴らしく今回も非常に楽しみにしております!!そこへ繋げられるるようロルを意識しましたが、お返事され辛いなどございましたら仰って下さい。また、ダイジェスト進行も同じご意見ということで安心致しました。今回も大変読み応えのある骨太なロルを楽しませて頂きありがとうございます。ギデオン様のご活躍の後、このままビビが攫われる描写に入るようでしたら、離れた位置にいるギデオン様に伝わるよう声を上げたり、魔法で花火を上げたりなど適当に描写して頂いても結構ですし、勿論そこまで進めなくても大丈夫ですので、背後様のやりやすいように、ご負担ない形でお返事頂けるのを楽しみにしております!
最後に此方の返信速度について、ご心配をお掛けしてしまい申し訳ございません。実はリアルの方が繁忙期でして、背後様の仰る通りの状況でお返事を用意している回も少なからずございます。無理をしているつもりは決してなく、寧ろこのトピックが日々の潤いでして、負担は感じていなかったのですが、お恥ずかしながらご指摘いただくまで、ロルに影響を出してしまっていた事に気づいておりませんでした。ご迷惑をお掛けしてしまうのは不本意ですので、少し返信頻度を落とさせていただこうかと考えております。言い辛い内容にも関わらず、ご指摘ありがとうございました。日々の潤いと申し上げましたが、お返事を急かしたり、緻密な描写を強要する意図はございませんので、これからもまったりと無理せずお付き合いよろしくお願い致します。長文となってしまい大変失礼いたしました。ご要望やご連絡がなければお返事には及びません。 )




159: ギデオン・ノース [×]
2022-08-17 16:13:17




(何か懸念でもあるのだろうか、と、何ら疑わずに身を屈めたのは、ここ二週間密に接してきたこのヒーラーが、非常に鋭い着眼点の持ち主であると知っていたからで。至って真面目に寄せたその横顔にはしかし、柔くしたたかな唇が、ふわりと軽く触れられる。何が起きたのかすぐには理解が追いつかず、瞬きしながら立ち尽くすも、どうにか相手に目を向けたときには、殺し文句まで落としながら既に軽やかに逃げられた後。「…………、」と言葉もなく相手を見送っていたギデオンの背に、「そういう関係なら最初からそうと言っとけよ……」と恨みがましい声がのしかかり、ぴくりと振り返る。そこにはたまたま居合わせたらしい四人の船乗りたちの姿。グールのようなおどろおどろしい目つきをギデオンに向ける者、収穫を取り落とし灰になったように虚ろな表情で固まる者、そんな仲間を見てげらげら笑い転げる者と三者三様だが、「誤解だ」と力なく否定するギデオンには、口笛を吹いた男から「ほざきよる!」と乱暴な野次が飛ばされる始末。……いや、本当に誤解なのだと、そんな関係にあるわけじゃないと。今度は自分自身に注意深く言い聞かせながら、頬にまだ残る感触を忘れ去るべく、無理やり気持ちを切り替え定位置へ向かうことにして。──その後、主に約二名の船乗りによる異常に猛烈な投擲の甲斐あって、テッポウブドウの奇襲工作は開幕してすぐ華々しい戦果を上げた。たかが植物の自爆反応だが、それでも威力は充分だったようだ。強固に組まれたダムが徐々に打ち壊されるにつれて、堰き止められていた白い水流が一筋ずつ解き放たれ、一部の船乗りの水魔法によってギデオンをしっかり避けながらも、下流の勢いをしっかりと取り戻していく。当然、これに怒って飛び出してきたのはダムの主である青黒い魔獣、アーヴァンクだ。下流にただひとり佇むギデオンを敵と見定め、巨大な牙を剥いて襲い掛かってくるが、いくつも支援を得たギデオンは既に魔剣を構えた姿。ドッと全体重をぶつけてくるモンスターを剣身でしっかり受け止め、川床に叩きつけるようにして斬り伏せる。なかなかどうして、シルクタウンで対峙したワーウルフ並みに厄介な凶暴さだ、それでも捌けない相手ではない。怒り狂う猛獣を一頭、また一頭と確実に倒し、ヴィヴィアンの巧みな閃光弾にも幾度となく助けられていたのだが──程なくして、事件が起こった。知能が高いアーヴァンクは、ギデオンが強力な後方支援を得ていることに気が付いたらしい。ならばその元を断とうと、崩れ行くダムの上から辺りを見回して──十頭が十頭、まるで雷に撃たれたように、盛大におののきながらびしりと固まった。何事かと奴らを注視してみれば、何故だかやけに、人間並みに表情豊かに……まるで女神の降臨を見たかの如く、夢見心地な顔つきに変わって見えるのは気のせいか。突然攻撃する気配のなくなった魔獣が不可解な様子を見せるので、顔の汗を手の甲で拭いながら(なんだ……?)と眺めていたのが、ギデオンの最大の油断。次の瞬間、いきなり統率の取れた動きで散らばった魔獣たちは、ヴィヴィアンの立っていた大岩のそばに泳いでいったかと思うと、根元から丸ごと、ものすごい勢いでひっくり返した。そうして大きく宙に浮き、落ちていく華奢な体を、ラッコ宜しく仰向きに浮かんだ一頭が、ダムの上流地点でしっかり抱き留め、大きな腕の中に捕えて。他の九頭が護衛のようにざっと周りを囲んだかと思うと、凄まじい水しぶきを上げ、一気にどこかへと退避し始める──あまりに突飛な事態に、致命的な後れを取ってしまった。アーヴァンクは人肉を食らうという、まさか若い雌であるヴィヴィアンに目をつけ、上流にあるダム湖のどこかの巣に連れ込んで皆の兵糧にするつもりか。ぞっと冷える思いをして、本気の焦りが滲む声で相手の名を大きく叫ぶと。船乗りに命じて運河の水を更に避けさせ、自分もダムを駆け上り。後に続く、こちらも必死の様子の船乗りたちに湖水を無理やり避けさせながら、遠くなる姿をもどかしい思いで追いかけて。)

────ッ、ヴィヴィアン、ヴィヴィアン!!



(/ご丁寧なお返事をありがとうございます。以下の一点のみ、緩めの相談事項となっております。
相手の前だからこそ、本来意図する在り様とは違った姿ばかりを見せがち……というのはギデオンもまた同じですので、その辺りについて不安は一切ございません、ご安心くださいませ! そうしましたらひとつ提案で、今の話がひと段落ついた後、「カレトヴルッフの有能な冒険者」としての二人の活躍がメインとなる新ストーリーに入るのは如何でしょうか。花火デートの際に関係性をしっかり深めたことですし、「依然猛アタックするビビと、それを狡くかわしつつクソデカ感情を拗らせるギデオン」という基本要素はもちろんしっかり外さぬまま、互いの本来のかっこよさを存分に発揮できればと。そこで冒険者としての相手への信頼を再強化した後で、また甘酸っぱい雰囲気(いつぞや主様とお話した、「ずっと暖簾に腕押しだと思って油断していたビビ相手に、ギデオンが不意打ち気味にクソデカ感情を発露して周囲共々戸惑わせる」といった要素など)を堪能する……といった緩急をつけられたら、程良いメリハリになるのではないかと思っております。決定を急ぐような話ではありませんが、各キャラクターの性格描写の悩みを解決する案としてご検討いただけると幸いです。また、現時点で具体的なバックストーリーを思いついているわけではありませんので、その辺りも主様側で何かイメージが湧いた場合、是非ご共有くださいませ。

以下に関しては、ざっくりとお返事なので読み流していただいて大丈夫です。
展開についての誘導もありがとうございました。お言葉に甘えて、かなり強引ではありますが展開を進めさせていただきました。本来、敵意あるモンスター相手ならビビは決して後れを取らないと思うのですが、ビビ相手には敵意どころか好意しかないアーヴァンクたちだからこそ不意を突かれた、というようなことにしていただければ……! また、毎度長文になってしまっておりますが、文量や展開の進み具合など含め、主様がご無理をなさらず楽しく綴れる範囲で、お好きなように続けてくだされば幸いです。
返信速度についても把握いたしました! 迷惑とは全く感じておりませんが、ひとえに主様の身が心配でしたので、余裕を設けるとのお話に大きく安心しております。是非のびのび休息できる時間を確保してくださいませ……! この物語が大好きだからこそ、自分の至らぬ点の多さを反省する日々を送っておりますが、それでもこうして主様とのご縁を続けさせていただけること、背後にとってはこの上ない幸福です。このため、こちらは変わりなく返信するかと思いますが、急かしたり強要したりする意図は同様に全くございませんので、どうかお気遣いなく。いつも本当にありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。)






160: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-08-19 15:24:05




うっ……このっ──……?

( 巨大な巣の完成度を見ればもとよりわかっていたが、青黒いアーヴァンクの屈強なうえになんて知能の高いことか。後方支援に気付いたらしい一匹の鳴き声で、他の仲間たちも一斉に頭を擡げる光景にぞっとして息をのめば、効率も何もなくがむしゃらに杖を振るう。その杖先、風魔法が当たって落ちた木の枝で、船員たちの姿を隠すことには成功したものの、その代わりアーヴァンク達の視線が自分に集中するのを感じれば、冷や汗とともに上がる口角を感じて、逃げずに杖を握りなおしたのがまずかった。一斉に向かってくるアーヴァンク達に、とっておきの魔法を叩きこんでやらんと杖を握りなおしたところで、その動線が不意に直接ビビでなくその足元に向かえば、あっけなく崖先から宙に放り出されてしまう。幸か不幸か大きく投げ出されたおかげで、なんとか体勢を立て直し、水辺の生物特有の筋肉の上に脂肪の付いた丸い腹目掛け、苦し紛れに踵を振り下ろすも──(?何で直接攻撃してこないの?) 拭えない違和感を抱いたその瞬間、まだ南国の気配が残る青い空と真っ白な入道雲、先程まで自分が立っていた大岩のえぐれた崖先、枝の隙間から覗く船員たちの慌てた表情──ギデオンの表情は死角で見えなかったが、真っ逆さまに落ちていく視界が、やけにゆっくりとはっきり見えた。その状態で足元の魔獣を見やれば、そのあまりの敵意のなさに慌てて脚を引っ込める。ビビを受け止めた逞しい体躯からはやはり、筋肉に全く力を込めていない最低限の衝撃だけが、臀部から全身に伝わって。一連の行動の不可解さに一瞬呆けてしまえば、瞬く間に四肢を抱き込まれてしまい。しまったと慌ててもがけば万力の様な力で手足を絞められるも、ビビが思わず苦痛から小さく声を漏らすと、それ以上ねじられるどころか少しだけ緩められ、キュウゥッと申し訳なさそうな鳴き声をかけられる始末。幸い杖も一緒に抱き込まれているため、逃げ出そうと思えばできなくもなさそうだが、水中に落とされてももう一度捕まるだけ、何より敵意のなさそうな相手を攻撃するのは気が引けて、 戸惑っている内にアーヴァンク達は飛沫をあげて泳ぎ始めてしまう。その時背後から聞こえた必死な声に、唯一動く頭を振り仰ぎ、珍しく余裕のないギデオンの姿に、やっと追いついてきた恐怖が心臓をバクバクと高鳴らせるも、震える手で杖を握りなおし何とか打ち上げた花火の色は赤。情報伝達魔法が発達してからは廃れゆくばかりの古臭い手法だが、赤い狼煙の意味は“問題なし”。流石にこの状況に問題がないとは言えないが、すぐに捕って食われることはなさそうだと、冒険者として最低限の安否を相棒に伝えようとして。 )

……これ、くれるの?ありがとう。

( そうして連れてこられたのはかなりの上流、最早キングストンからも遠くないダム湖に作られた古く小さなアーヴァンクの巣。その中で一番立派な流木の上にそっと降ろされれば、ずぶ濡れになった体と杖をかき抱き周りを見回す。その間、元凶のアーヴァンク達といえば、先程までの勢いは何処へやら、こちらを襲うでも興味をなくして捨てたという感じでもなく、遠巻きにもじもじと時たまこちらを見つめる姿は、午前中の船員たちの姿を彷彿とさせる。流石に出入り口の警備は固そうだが、ビビが半歩近づけば半歩後ずさり、それでも執拗に視線は外さないアーヴァンク達に、先程は強がり半分で赤い花火をあげたものの、本当にとりあえず差し迫って危害を加える気はなさそうだと判断すれば、ポニーテールとローブの裾を絞りつつくしゃみをひとつ。それを見ていたうちの一頭がおずおずとビビに近づいて、寝床にしているらしい敷き藁を差し出してくれるのに何気なくお礼を伝えれば、嬉し恥ずかしといった様子で顔を隠した前脚の、真新しいやけどの跡から自分の魔素を感じて瞬きを。どうやらこの個体は先程下流でビビを受け止めた個体らしい、やけどの跡はその時の魔法の花火がかすったのだろう。一種のストックホルム症候群といわれればそれまでだが、申し訳なさを感じてその前脚に手を当て軽く治療してやれば、当の本獣は嬉しそうにその場でぐるぐると回りだし、遠巻きに見ていた連中も羨ましそうにいなないたり、期待の眼差しと共に魚やら野花やらをビビに差し出して来たりと、巣の中全体が上を下への大騒ぎとなって。違いといえば人間が魔獣に代わっただけで、大いに見覚えのある光景に、段々状況の把握ができて来ると思わず小さく吹き出して。──あんまり悪い子達じゃなさそうね、という感想は後程船員たちに大いに渋い顔で否定されることになるわけだが、いつまでもここにいるわけにもいかないだろう。どうやって状況を治めようかと苦笑しつつ首をかしげたところで、にわかに巣の外が騒がしくなる。見張りのアーヴァンクが下流で対峙した時の様なおぞましい鳴き声をあげ、周りの数頭がビビを守るように覆いかぶさるのに、半ば押しつぶされる形で流木に押し付けられれば、自らも状況を把握しようと顔をあげて。 )


( / こちらこそご丁寧なお返事ありがとうございます。こちらの悩みをくみ取っていただいた素敵なご提案に、なんとお礼を申し上げればよろしいか……いつも本当にありがとうございます。至らないどころか、これ以上なく素晴らしい背後様の細やかなお気遣いのおかげで、大変楽しませていただいております。
「カレトヴルッフの優秀な冒険者」としての二人が活躍する新ストーリー、考えるだけで非常に楽しみです!以前お話させていただいた、ギデオン様の若気の至りがバレるストーリーについて、すこしだけ考えていた展開がございまして、もしかしたらうまく同時進行できそうなので、少々お時間いただいてもよろしいでしょうか。これまた長文になりそうでして、この返信と一緒に乗せるとまた数日返信が遅れそうですので、まとめ終わりましたら後程伝えさせてください。勿論、ギデオン様の過去が関わる展開ですので、今背後様の方で検討されている展開があれば是非お聞かせください。
くどいようですが重ね重ね本当にお世話になっております。引き続きどうぞよろしくお願いします。 )




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