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Petunia 〆/852


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自分のトピックを作る
846: ギデオン・ノース [×]
2024-11-27 02:33:22




(皿の水気を切りながら、「うん?」だなんて肩越しに軽くとぼけるも。近頃すっかり板についたヴィヴィアンの甘えぶり、そのぐっとくる近しさに、つい口元を緩めてしまい。ぴかぴかの陶器類を網棚に仕舞い込み、濡れた両手をタオルで拭えば。背後にある流し台にもたれかった格好で、ようやく相手に向き直る。こちらを見上げる無垢な恋人……そのまろやかな額をそっと撫で上げる男の手つきの、如何にも愛おしそうなこと。)

ああ、もちろんいいとも。そう嵩張るもんじゃないし……だが、そうだな。
他にも多少用があるから、ここに戻ってくる前に、一瞬だけ俺の家に寄り道させてくれ。

(「ああ、別に大したことじゃない。引っ越しまでの数日だけ私物を置かせてほしいから、そいつを回収したいんだ」と。意味ありげな表情をわざとらしく気取ったものの、たまらずふっと破願してから、きちんと注釈も言い添えた。──こまごました移動の手間を省きたいんだ。そうしたら、それだけおまえといる時間が長くなるはずだろう……?
こんな甘い台詞を吐けるようになったくらいだ、時の流れとは実に早いものである。実際、あの一軒家を内見したあと、申し込みやら審査やら契約やら入金やら……入居にあたって必要な諸々の手続きは、ギデオンが全て怒涛の勢いで果たしてしまった。となると次は、いよいよ夢の引っ越しだ。それぞれの古い住居をしっかりと引き払いつつ、同時に新居の環境も整えていかねばならない。どんな豪邸であろうとも、まずは最低限、食事と寝起きをするための家具や道具が必要だろう。だからまず、キングトンの東にあるあの街に出掛けよう──と。懐かしの市街馬車に再び並んで乗り込んだのが、相手の下宿でいちゃついた翌日のことである。)


おお、これはまた……
随分良いタイミングだったな。

(──あくる朝。爽やかな初夏の風が吹き渡る空の下、駅に降り立ったギデオンは、辺りの見違えた様子を前に感嘆の声を上げた。無理もない──このキングストン職人街は、つい五ヵ月前にも来たから未だ記憶に新しい。しかし、ヴィヴィアンと共に装備探しをしたあの頃は、もっと下町風情溢れるセピア色をしていたはずだ。
それが今やどうだろう。『ペンテコステ・フェア!』なる横断幕を派手に掲げた通りの向こうは、眩しい陽光を浴びて煌めく、浮かれたお祭りムードであった。どこを見ても人、人、人、そして家具に道具に発明品。そういえば毎年この時期、ここら一帯の職人たちは、聖霊降臨日が近いことにかこつけて大売り出しにかかるのだ。遡ること数十年前、今日のかれらと変わらぬ商魂逞しい職人が、“神は細部に宿る”という匠の世界の信条と、ロウェバ教の説く“聖霊の働き”をものの見事に結び付け、企画を打ち出してみたところ大ヒットしたんだとか。兎にも角にも、要はこのフェアで買った家具にはご加護がついてるなんていう、聖燭祭商戦や復活祭商戦とそう変わらないアレが掲げられているらしく。とはいえまさにそれらと同じで、客にしろ職人にしろ、何かの折に良い売買がしたい、という点で一致するのに変わりなく。元からお祭り騒ぎが好きなトランフォード人たちだ、ペンテコステ本番までの前夜祭と言わんばかりに盛り上がっているわけである。
──ギデオンとヴィヴィアンが家具探しにやって来たのは、実は全く偶然で、そういえばそんなのがやっていたな、という感じなのだが……しかしこれに乗じないなどという手はないだろう。早速辺りのバザールへ繰り出していくその前に、まずは間近なジューススタンドにその足を向けてみる。……そうやらそれそのものが職人と一体化したひとつの発明品らしく、あちこちの魔導具を忙しなく動かしている八面六臂の老人にセールストークをかまされながら、しかし実に美味しそうな果実水を受け取れば。祭りの熱気に渇く喉をのんびりと潤しつつ、先程通りの入り口で貰った会場案内の紙面を広げて。)

一日じゅう見て回れそうだが、この雰囲気にあてあられて疲れてしまうとことだ。
まずは用のあるやつから見に行こう……寝具の店は、この突き当りか。





847: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2024-12-05 00:40:18




──……! はい!!
いまの……今のままで、置くスペース足りますか!?
床下もあるんですよ実は……、

 ( 向こうが慣れてきたそのように、ビビもまた相手から向けられる熱量にやっと慣れてきた今日この頃。悪い意味では決してなく、寧ろ相手の好意を疑わず、全力で返せることが心底幸せで仕方がない。そんな満面の笑顔で、まったくどれ程の大荷物を想像しているのか、見る方がつられるほど上機嫌に、パタパタと部屋の片付けに向き直ると。
翌日、もとより紳士な年上の相手である。催促される前から忘れていた訳ではなかろうが、ペンテコステフェアに湧く賑やかな通りを、本格的に歩き出すその寸前。周囲を見渡そうとした恋人の数歩に付き合わず、何事かと振り返るだろうギデオンにぷくりと頬を膨らませると、片手を差し出し、いつかは誤魔化されたエスコートを強請れるくらいには、互いに気持ちを通じ合わせていた。 )

わあ……!
とってもいい香り……!!

 ( 逞しい腕に引かれ重厚な木造の扉を潜ると、そこには色とりどりの織物が、広い壁一面に敷き詰められた色鮮やかな空間が広がっていた。出入口の正面、素晴らしい作りのカウンターの脇には、後入れの細工などの客の要望にその場で答えられるようにだろうか。無骨な道具とおが屑の舞う小さな作業スペースが設けられ、爽やかな木の香りが心地よく鼻腔を満たしてくれる。カウンターの脇から向こうを覗けば、外からは分からなかったが、奥は半地下のような作りで非常に広く、成程、見るだけでは分からないマットレスの寝心地を試せる空間になっているらしい。カウンターに広げられた、ベッド自体の装飾や、無数にわたるヘッドボードのカタログを見るに、基本的には顧客や部屋に合わせたオーダーを聞いてくれる店のようだが、一部既に組み立てられた廉価品も取り扱っているらしく。店の端に置かれた"たっぷり収納付き"やら、"脚は取り外し可能"などのポップが貼られたベッド群に目をやれば、思わずくすりと笑ってしまったのは──"魔獣の爪でも傷つかない"だなんて、一般家庭には到底必要ないであろう売り文句が面白かったからで。次第に、二人のドアベルの響き聞きつけたらしい恰幅の良い女将さんは、エプロンの木屑を叩きながら出てくると、「いらっしゃいませ、本日はどんなご用事で?」と、座面にクッションが張られている訳でもないのに座りやすい、これまた素晴らしい椅子に二人を通してくれるだろう。 )




848: ギデオン・ノース [×]
2024-12-08 10:34:58




(ギデオンとヴィヴィアンが半年ぶりに訪れた、キングストン職人街。ここで働く連中は、鑿・槌・鉋はお手の物……しかし人間相手となると、どうにも不器用なやつらが多い。そんな難儀な人種にとって、店と客の間を取り持つ女将がたの存在は、まさにかけがえのないものだろう。そしてそれは、客にとっても同じこと──良い買い物をしたいときは、その店の女主人と話し込むに限るのだ。
故にギデオンとヴィヴィアンも、ふたり並んで席につくと、向かいに座ったマダム・メーラーに、早速事情を打ち明けた。──今月からの交際で同棲生活を始めるにあたり、寝具を買い替えることにした。ギデオンは五、六時間、ヴィヴィアンは八時間以上眠るのが習慣で、仕事はともに冒険者だ。ただ、先々の暮らしを考え、いずれ別業種に変えることを検討している。そうすると今よりは家に居つくようになるから、日々の睡眠以外でも、暖炉のある寝室でゆっくり寛ぐのに使いたい。予算はおよそこのくらい、搬入先はこの地区で、この日までに誂えられれば……。
四十男と若い娘の、しかもやたらと勢いの良いカップル。そう見て取れたはずであるが、しかし流石はマダム・メーラー。眉ひとつ動かさずにヒアリングを取りまとめると、にこりと笑って席を立った。「セミオーダーがよろしいですわね。それでもまずは念のため、おふたりのお体を測りましょう……ええ、ええ、あちらにある計測用のマットレスにも横たわっていただきますよ。必要な数字が揃えば、お好みにぴったりのものをスムーズに探せますでしょ?」)

……面白いな。まさかここまで測られるとは……

(──さて、それから十五分後。女将の寄越した計測データの紙を手にしたギデオンは、カーテンに仕切られた計測室から戻ってくると、思わずそんな声を漏らした。ギデオンの身長、体重、両腕を広げた幅はもちろん、筋肉のつきかたや重心の移し方まで、眼をかっ開いた真剣な様子の女将に、これでもかというほど確かめられまくったのだ。先に出ていたヴィヴィアンも、おそらくは同じように、しかし男のギデオンよりはもう少し手心を加えて計測されていたのだろう。
ふたりの手元の紙には今、各種の身体データのほかに、この店にあるマットレスやヘッドボードの簡易カタログが載っている。女将が赤丸をつけたのは、「この品番の商品が合うだろうから是非試して」という指示らしい。最初はそのガイドのままに、女将による丁寧な案内を受けていたふたりだが。途中でドアベルの音が増え、お針子たちの出迎えでは対応が間に合わなくなると、とうとうマダム・メーラーもそちらに赴かざるを得ず。しばらくの間、ギデオンたち自身で好きに見て回るようにと頼まれた。どの道頃合いだったろう──案内の様子からして、ギデオンたちがふたりきりでもゆっくり探したいことを薄々察していたはずだ。
半階上のあのブースで聞き取りを行っている女将の声を聞きながら、ようやく相手を振り返り、片眉をぐいと上げると。今はまだほかに客のない、魔法灯で如何にも居心地よく照らされた店内を、相手と腕を絡めながらゆったりと歩いて回る。マットレスの寝心地は幾つか軽く試したから、そろそろベッドフレームのほうも見繕いはじめようか。のんびりと喉を鳴らしながら、各商品に据えられた番号札と案内紙を見比べては、顔を軽く傾けて隣の相手に相談し。)

……寝室を広く見せるなら、低いものがいいんだろうが。ある程度の高さがある方が、普段使いにはいいんだろう。
サイズはどのくらいがいいと思う? ゆったり眠るには、クイーンサイズだと少し手狭に思えてな……





849: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2024-12-11 10:58:16




 ( 快適な生活とは、得てして非常に物入りなものである。ましてや新たな生活準備に対し、ビビとてある程度の出費は勿論想定していたのだが。他でもない恋人の口からさらりと述べられた今回の予算に、内心穏やかでいられなかったこともまた確かな事実で。今をときめく勤続数十年のベテラン剣士と、やっと新人扱いが抜けてきたばかりの若手ヒーラー。その収入に大きな隔たりがあるのは至極当然の道理で、質の良い生活を享受する権利がある相手を、自分の低い生活レベルに付き合わせるのはただの自己満足に過ぎないとも強く思う。その上、ギルド運営の中心に深く食いこんでいる有能な上司が、後輩ヒーラーが出せる予算など大体把握した上で提示していることも頭では理解しているつもりだし、特に身体を休めるベッドは冒険者である二人にとって何より大切な資本になる等々……。要はここは意識して物分り良く振舞ったのだったが──帰ったらもう一度話し合わなくちゃ、と。己の甘さに唇を噛んだ娘とって、更に大きな衝撃が待ち受けているのはまだ一旦別のお話。 )

私も、もう少し大きい方が良いと思います。
その方が帰ってくる時間がバラバラでも、お互いを起こさずに住みますし……

 ( 結局、なんだかんだ浮かれているのは此方も同じ。当たり前のように、ひとつのベッドで寝てくれるらしいギデオンに、えへえへと纏わり着くと。「……でも、二人とも元気な日はくっついて寝てもいいですか……?」と耳打ちした薔薇色の頬や、キラキラと輝くエメラルドのいっそ残酷なレベルで無邪気なこと。これから数ヶ月にわたって、相手を酷く苦しめることなど微塵も分かっていない顔をして、強請るようにこてりと首を傾げれば。高さ順に並べられたベッドの群れに駆け寄り、一番高いそれにぴょいと浅く腰掛ける。そうして少し浮いた踵をぷらぷらと、楽しげにギデオンを見上げては、「これくらい高い方が沢山収納できないですか?」と、あの広い住宅に対して妙に所帯染みた思考はご愛嬌。少しでもじっとしていられないのか、すぐさま今度は低いそれに腰掛け、余った脚を億劫そうに折りたためば。ふんふんと丸い頭を小さく揺らして相談を。 )

今はどちらも分厚いマットがあるから低い方が良く見えますけど、薄いマットを敷いたら高い方もそんなに圧迫感なくないですか?
脚が細い……床が見える物ならもっと広く見えるかも……?




850: ギデオン・ノース [×]
2024-12-13 01:01:19




────……、

(“頼れる恋人、ギデオン・ノース”。己よりずっと若い彼女にきっと相応しいそれを、自分はここ数週間、努めて演じ続けたつもりだ。だがしかし、ピュアを煮詰めたような娘のとんでもない発言に、一度びきんとひびが入れば。辺り一面に展示されている素晴らしいベッドフレームを、彼女が熱心に眺める間……ギデオンのほうはと言えば、その場にじっと佇んだまま、大きな片手で険しい顔を覆い隠して。
……ああ、そうだよな。収納のことも、ちゃんと考えておかないと。それで……そうか。ヴィヴィアンのほうも、俺と眠るのが嫌じゃないと。それどころか、むしろたまにはくっついて寝たいと。普段は遠慮してすらいると。そうか。なるほど。抱いてもいいか。
──なんて本音は、しかしまだ言えやしない。なまじ恋仲になったからこそ、下手な冗談に聞こえないせいだ。それに何より聖バジリオの、あの担当医からのお達し……退院してまだ数日の、相手の体が第一だろう。
故に何とも歯痒そうに、一度眉間の深い皴をぎりぎりとより極めたものの。ようやく顔を上げたかと思えば、その面は今度はス──ンと、酷く冷静に凪いでいた。やがてこの先何年かギデオンを眺めるうちに、彼女も気づきはじめるだろうか。……この慎重居士の魔剣使いが、もはや盛大に開き直ると決めたときの面である。)

いや、マットもフレームも、しっかりしたものを選んでおくほうがいい。
二階に運び上げるのに一苦労だろう? だから──最低、五年は保たせてみせないと。

(まったく、何が“保たせる”だ。その意味深な物言いの訳を自分からは明かさずに、相手の手を取り立ち上がらせて、別のコーナーに連れていく。どうやらそこは、彼女が今までそれとなく避けてくれていたであろう、この店の最高級品が並んでいる一角らしく。仮に相手に見上げられても、そこにある男の横顔は、まったく揺るぎやしないままで。
ヘッドボードにさりげない引き出しがついているものをふと見つければ、「これなんかは便利そうだな」と、はたまた何を常備するつもりなのやら。ともかくそのベッドの、どっしりとした脚の太さをいたく気に入ってしまった様子で。先にベッドに深く腰掛け、その据わり心地に(ほう)という顔で見下ろすと。ふと相手に顔を戻し、緩く腕を広げては、当たり前のように誘って。)

これに合わせるマットレスは、やっぱり……ほら。この店独自の、『メーラースプリング』ってのが、いちばんフィットするらしい。
……ほら、お前も、こっちに来てみろ。





851: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2024-12-18 22:25:54




……いえ、その、5年後も一緒にいてくださるんだなって思ったら嬉しくて!

 ( それは生きてきた年月の違いからくる、時間感覚の違いに過ぎなかったのかもしれない。しかし、年若いヴィヴィアンにとっては決して短い時間ではない、これまで相棒として過ごしてきたよりも、ずっと長い歳月を当たり前のように信じてくれる恋人に、思わずきゅんと言葉を詰まらせれば。熱く火照る耳先をくりくりと面映ゆそうに弄び、潤んだエメラルドを震わせて。そうして、嬉しそうに「わあ! 確かに、ふっかふかですね!」と相手の隣に腰掛ければ。上質なスプリングに任せ、上下にぽよぽよ揺れて見せるも、正直、もう内心マットの良し悪しなんてどうでも良かった。ギデオンさんが隣にいてくれるのなら、私ドラゴンの鱗の上で寝たって構わないな──なんて、そんな自己陶酔に浸っているから、“普通に使っていたら”、先程のマットだって十分に5年は使えそうだとか、収納ってそんな小さい引き出しのことじゃなくてだとか、色々と大切なことを見落とすのだ。しまいには、確かに運搬料だってかかるんだし、ギデオンさんが言うならそうなのかもしれないなどと、すっかり上手く乗せられている自覚のないまま、戻ってきたマダムの助言に滑り止めやら、素材やらのオプションを幾つか見繕えば。ベッドの他にもいくつかの家具を含め、あれよあれよという間に、契約書等を纏めた書類を受け取っていたのだった。 )

お……お休みの日は、少しでも長くベッドの上に居なくちゃ……

 ( 結局、支払いの段階でやっと僅かばかりの冷静さを取り戻すも、帰りの馬車の中、本人はいたって真剣な表情で呟く内容がどこまでもずれているのはご愛敬。5年どころか、ベッド本体は一生使えそうな代物に、その視線は何処か遠い宇宙を映しながら、ぐっと両こぶしを握りこむと「ギデオンさん! 帰ったら相談したいことがあるんです!!」と。それは、これから始まる共同生活にあたり、特に経済的な方向性で、一方的に相手のお世話にだけなるつもりはないのだと。改めて伝え直すべく、帰宅後に時間をとってもらった時だった。まずは月々の細かい収支を確認すべく、約束通りに持ってきてもらった賃貸契約書に目を通すと、暫くして「………?」と首を傾げ始め。「あの、ギデオンさん………」と、指し示したのは月々の『家賃』とは別に記載された『共益費』の項目。家を借りる際に名目上の『家賃』とは別に、その他雑費がかかることは、流石の箱入り娘とて、この下宿を借りる際に知っていたが──……否、なまじ中途半端な経験があったからこそ勘違いしていた。ビビの知る『共益費』は家賃の数分にも満たない、あくまで雑費の粋を超えない程度だったが、完全な富裕層を相手にした住宅は訳が違う。警備費、補償費、清掃費……この書類から計算するに名目上家賃同等か、月によってはそれ以上の額に上るそれを正確に認識した途端、あまりの衝撃に目眩を覚え。家賃の半額だってギリギリだというのに──いや、寧ろ引っ越す前に判明して良かった、と。腹を決めたところまでは良かったのだが。その後のあまりに言葉足らずな宣言から生じる誤解に思い至れない程度には、内心かなり動揺しているらしく。入居の数日前になって、あまりの申し訳なさからそれ迄くっついていた上半身を離すと、真っ青な顔を横に振り。 )

──…………ごめんなさい!!
どうしよう、私ギデオンさんと暮らせない……





852: ギデオン・ノース [×]
2024-12-21 01:17:01




────は、

(それはまさに青天の霹靂。一瞬ぴたりと静止した後、愕然とした顔を相手に向けて、狼狽あらわな震え声を。──これが普段のギデオンならば、相手の言わんとすることを冷静に捉えただろう。しかし今はいかんせん、恋人の家に上がって寛いでいた矢先。己に後ろから抱き込まれている部屋着姿のヴィヴィアンがふんふん書類を読むあいだ……顔が見えないのを良いことに、その甘いぬくもりでたっぷりふやけきっていたのだ。
そこにヴィヴィアン本人からの、突然のこの冷や水だ。ギデオンの青い目はあからさまに揺れ動き、その太い両腕は我知らず固く強張った。勝手に狭めることこそしないが──それでも相手を出さぬとばかりに、ぎこちなくもがっちりと、堅牢の構えをとらずにはいられない。ようやく絞り出した声にも、動揺が色濃く乗って。)

……待て、待て待て。
何故、なんだ、何を……いまさら、

(──今更も何も、病み上がりの若い娘に同棲を持ち掛けて、まだほんの二週間。仮に相手が本気で意向を翻したとて、別におかしくはない話なのだが、何せこの男ときたら、春先に死なせかけた娘を今度こそ失うまいと、本気で固く決心している。故にこの二週間、頼れる大人の皮を被って、必死になって口説いてきたのだ。そうしてようやく手に入れた──そう一安心していたというのに。それが水の泡になるのか。彼女を今更諦めることになるのか。嫌だ。それは、絶対に嫌だ。
それを素直に打ち明けるには、しかし何せ臆病すぎた。故に何も言いだせぬまま、長いことただ唇を開いたり閉じたりしていたものの。それでも何かは言わねばと、藁にも縋る思いで青い視線を巡らせて、ふと契約書に目が留まる。先ほど相手に何やら言われ、一応こちらもちらりと見たが、何か取り立てておかしなことが書いてあるわけではなかった。──そう、少なくとも、ギデオン自身の視点では。
ある可能性にふと気がついて、もしや、とそれに手を伸ばす。今一度確かめた家賃と同等の共益費、これはこの文教地区たるサリーチェの家に住むならば、至極当然の数字をしている。そして──わざとではないのだが──ヴィヴィアンと家賃のことを話す時、自分は自ずと、共益費を除いた数字で等分することにしていたはずだ。単純に計算して、ギデオンの支払う額とヴィヴィアンの支払う額は、実に三倍の違いがある。「……まさかとは思うが、」と、すっかりいつもの自分に戻った困惑顔で相手に尋ね。相手がこくりとでも頷けば、契約書を脇に押しやり、かぶりを振りながら反論を。)

金のことなら気にしなくていい。
おまえの考えることはわかるが、手取りが数倍も違うのに、全部をひっくるめた額で折半するわけがないだろ。





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