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1対1のなりきりチャット
自分のトピックを作る
958:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2025-12-24 22:36:10
( Dear Vivienne, I haven’t seen you for a long time……
そんな書き出しで始まる手紙をビビが受け取ったのは、建国祭最終日、建国記念日当日の朝のことだった。朝一の門前から、自分の名を呼ぶ聞き知った声に慌てて飛び起き。ネグリジェに薄手のカーディガンを羽織っただけの格好に、目を剥いたギデオンと揉み合いになりながら、馴染みの郵便屋である青年の前に二人揃ってまろび出れば。「おはよう、ビビさん! 速達ですよ、……」と、今日に限っていつも元気な青年の笑顔が、どうも引きつって見えた気がしたのは気の所為だろうか。
閑話休題。封筒の宛名の上に、緊急の速達を表す押印がなされた手紙を開けば、それは学院の中等部卒業を待たずに、キーフェンへと嫁いで行った友人からのもので。──ここ数日、配偶者の商談についてキングストンに来ていること、そして、商談が少しだけ早く終わったので、午後の帰りの船便までにどうか一目でも会えないか、といった誘いの言葉が、とても懐かしい、しかしすっかり大人の夫人に相応しい筆つきで書かれた手紙に目を細め、隣にいた恋人へ二、三学生時代の思い出を楽しげに語って聞かせれば。とはいえ、ギデオンとの先約をして、断るつもりでいたのだが。折角なんだから会ってくればいい、という優しい言葉に、「~~~ッ、ありがとうございます!! ギデオンさん大好き!!」と、熱烈なハグで優しい恋人を送り出したのが今から数時間前のこと。 )
──…………。
( そうして、懐かしい友人とのつかの間の再会を果たせば。その実は政略結婚だったとはいえ、穏やかそうな旦那さんの隣で、幸せそうに微笑む旧友を前にして。もう焦燥の念こそ浮かばなくなれど、色とりどりのテープたなびく出港のムードに、当てられた節はあったかもしれない。──早く、早くギデオンさんに会いたい、と。思えば一年と少し前、初めて仕事を共にしたあの日も、こうして息を弾ませ、約束の場所、憧れのギデオンの下へと駆けていた。あれから変わったことといえば、あくまで上司と部下に過ぎなかったその関係と、全身に纏っているその装い。
旧友とはいえ、既婚の夫人に会うための午後用ドレスは、夢見るようなオーキッドに、深紅の意匠が、あの素晴らしい舞踏会の夜を彷彿とさせ、思わず衝動買いしたおろしたて。頭には普段元気に揺らしている尻尾の代わりに、ドレスと揃いの帽子をつけて、馴染みの赤いスカーフは結い上げた髪に編んでいる。ギデオンに貰ったハンカチーフと揃いの模様を編んだ手袋の手の中には、これまた見事な総レースの日傘を携えているのだが、動きの邪魔を苦にしてすっかり畳んでしまっているのはご愛嬌だ。──駆ける、とはいっても。動きやすい白ローブ姿だったあの日とは違い、足さばきの悪いドレスと華奢な靴で、ボコボコとした石畳を人混みの中を縫うように進めば。馴染みの広場に入った途端、やはり今日も一目でわかるほどにギデオンは輝いていて。本当は渓谷のトロイトのように駆け寄り、全力で飛びつきたいところをぐっと堪えて、ごった返している広場を進む間。──ギデオンさん! と、その内心の叫びが届いたかのように振り返ったギデオンに、ぱあぁっと満面の笑みを浮かべると、パタパタと大きく手を振って。 )
ギデオンさん、お疲れ様です!
怪我とかしてないですか? もうご飯食べました?
959:
ギデオン・ノース [×]
2025-12-29 06:25:57
(晴れ渡る青空の下、まばゆい笑顔を向けながらこちらに手を振る己の恋人。その夏らしく晴れやかな装いに──だがそれでいて、いつかの美しい秋の夕をも思い出させる装いに、見開かれた青い瞳がまっすぐに透き通る。だがあのときと違うのは、「……」と投げかけるその双眸が、やがてふっと、ひどく穏やかな深まりを見せたところで。
相手が周囲とぶつからないよう、一瞬左右に目を配り、次にこちらに向いたそのとき。そこには、いつもより洗練された出で立ちの魔剣使いが迎えに上がっていることだろう。例年以上に客足が賑やかなはずの東広場で、ふたりのいるその空間だけ、人払いされたわけでもなしに不思議と開けているようだ。その状況の許すまま、白い靄から出でるように一歩相手へ歩み寄り。はにかむように小さく笑えば、しかしそのまなざしに、頭上の青空の陽射しに劣らぬ己の熱を絡ませて。)
……二十班の態勢で慎重に回ったからな、かすり傷も負わなかったさ。
(喉を低く鳴らしながら、自然と添えた己の片手。それがスカーフを編み込んだ髪を愛しそうに撫でてから、耳裏を滑るようにして彼女の頬へ触れる流れは、言葉より余程雄弁だろうか。こちらもまた体を屈め──とはいえさすがに人前だ、あくまで軽く触れる程度に、しかし甘さはたっぷり込めて、胸の内に湧き上がる想いの程を伝えれば。「……軽く食べた、と言いたいところだが。午前中は生憎その暇が見つからなくてな……おまえはどうだ?」だのなんだの。片眉をぐいと上げて誘う振りなどに興じながら、己の腕を差し出したのは、はたして照れ隠しなのかどうか。)
──今年のダンスコンクールだが、ドニーの伝手でテラスの良い席を取れたんだ。そこでゆっくりひと休みしながら、最終日のプログラムのどれを回るか、一緒にあれこれ相談しないか。
960:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2026-01-06 03:36:17
私も。実は、食べ損ねまして……
( ──折角、ギデオンさんに可愛いと思っていただきたくて、朝からあれこれと頭を悩ませた装いにも関わらず。触れ合っていた唇がそっと離れて、大好きな薄青と視線が合ったかと思うやいなや。「……、か、格好良い……好きぃ……」と。自分が相手のフォーマルな装いに堪えかねて、両手で口元を押さえながら、うっとりと瞳を輝かせる通常運転。その上、片眉をあげた恋人の提案に、「本当!? 嬉しい!」と、いつもの調子で飛びつこうとしたものだから。不安定な足元にバランスを崩して、慌て顔のギデオンと人混みの中、ぎゅうっと強く抱き締め合えば。どちらともなく吹き出して、爽やかな夏の陽気もなんのその、差し出された腕を抱きしめるように、ぴったりと連れ添い歩き出すだろう。 )
──……ギデオンさん。
もしかして、ギデオンさんが賭け事に強いって、嘘じゃない?
( そんなやり取りから数時間。昨年と今年、場所こそ即席のベンチと有料のテラス席という差はあれど、昨年に習って今年もダンスコンクールの優勝者当てと洒落込んだ結果は、今年もヴィヴィアンの勝利に終わった。昨年とは違い、賭けたのは些細な雑事の一部だったが──どうしても、本気で信じられないといった表情を浮かべている恋人に、思わず笑いながら慰めのキスを進呈すれば。表面上こそ大人な表情を繕ってはいるが、未だに納得のいってなさそうな男の手を引いて、繰り出したのはなんてことはない祭日の賑やかな通りで。年上の恋人はといえば、教会主催のページェントや、手の込んだ手の込んだヌーベルキュイジーヌの店を提案してくれもしたのだが。ともすれば、ギデオンにとっては馴染み深い、一般的で世俗的な賑わいの方が、学院育ちのビビにとっては目新しいもので。「ギデオンさんが、お嫌でなければ」と、大好きなギデオンと二人、祭りの出店を冷やかしたり、大道芸目を輝かせたり、華やかに、しかし素朴に飾り付けられた街並みにきゃあきゃあと、すっかり息をあげながらは心底楽しげにしゃぎ回れば。仮説のベンチで一休みする頃には、ビビの手元は全身のあちこちに花やら、お面やら、玩具やら、瀟洒な装いには似合わぬそれらでいっぱいになっていて。そんな最高の時間の代償に、じんわりと痛くなってきた踵をさりげなく靴から解放しながら、露店のジェラートに目を輝かせると。ギデオンさんも楽しんでくださっているだろうかと、興奮しきった表情で相手を見上げ。 )
ああ楽しかった!
ずっと昔からこの通りへ、お祭りの日に来てみたかったの!
ありがとう、ギデオンさん! 大好きよ!
961:
ギデオン・ノース [×]
2026-01-17 16:46:42
馬鹿言え、ドニーやジュナイドからいくら巻き上げたと思ってる。──本当だ、聞いてみろ……そんなに信じ難いか?
(仲睦まじく賭け合ったのは、明日の食事の料理当番。普段はギデオンが朝食を、ヴィヴィアンが夕食を担当することが多いわけだが、賭けに勝てばその逆を得る──つまりギデオンが勝ったなら、ヴィヴィアンの作る朝食を堪能できるというもので。千載一遇というわけでなくとも逃がしたくないこのチャンス、当然真剣勝負に出たが、結果はご覧の通りの大敗。おまけに、余興程度に付け合わせた二位以降の予想でさえも、そのとんでもない番狂わせをことごとく当てきったのがやはりヴィヴィアンのほうなのだから、信じられないという表情は寧ろギデオンが浮かべる始末で。
しかし不可解げな反論も、そう長くは続きやしない。先行く娘に捕まえられた己の手元を眺めるうちに、つい苦笑するせいだ。──そもそもたった一年で、自分たちは“こう”なっている。指と指とを密に絡めて、ふたり連れ合い通りを歩き、いつもと違う装いのキングストンを眺めてはあれこれ感想を言い交わし、お互いの表情を見つめては笑い合う。つい昨日まで愚かしいほど駆られていた恐れすら、彼女に優しくほどかれて、今やどこかへ行ってしまった。ヴィヴィアンに敵わないことも、白旗を挙げる心地が全く悪くないということも、もうわかっていたではないか。
故にすっかり寛いで、年に一度の建国祭を満喫していたしばらくののち。疲れが深くなる前に、と花壇の傍に落ちついたのは、陽射しがいくらか和らいで、気持ち良い風も吹く頃だろうか。)
……まったく、そんなに言われちゃ敵わないな。
(目尻に皴を寄せながら、唸るような声を出し。「毎年だって一緒に来よう」とその額にキスをしてから、素足を休める娘の真横、こちらもゆったり腰を下ろす。そうして長い足を組み、椅子の背もたれに沿うように相手の背後へ腕を回すと、伸ばした片手で何とはなしに相手の髪を撫でながら。色とりどりの花壇の向こう、ベンチの前に広がる芝生で、街の子たちが弾けるように笑い転げて遊ぶ姿を、ごくのんびりと眺めていたが。
相手に視線を戻したそのとき、ふと思いついたように青い瞳の色を変え。「……なあ、せっかく綺麗なんだが」と、何やらねだりだしたのは……相手の髪を解く許可と、手元にある花束をここで“使いたい”との話。許しを与えて貰えたならば、まずは美しい絹の栗毛をごく優しく解きほぐし。次に横を向いたと思えば、荷物にしている紙袋からしれっと取り出してみせたのは、ハコヤナギ──またの名を聖木レウケーで作られた、古き良き職人の逸品たる高級櫛だ。小一時間前、果実水の露店の列に並んでいる最中に、近くの店のショーウィンドウに品良く飾られていたそれに、相手が視線を吸われていた。彼女を見つめることにおいては他に譲らぬギデオンが、果たしてそれを見逃すだろうか。
注文の品が出る時間差を利用してこっそり買っておいたのを、後々ここぞという時に贈ろうかと思っていたが、ここで使うのも得策だ。「失礼、」なんて気取った声で相手の髪を綺麗に梳かせば、艶が増したそれを束ねて、生来器用な手先を使い恋人の髪を編んでいく。脳裏に浮かべているのは常に、サリーチェの寝室の角……瀟洒な化粧台を前に、愛らしい鼻歌を奏でながら髪を編むヴィヴィアン自身の手つきの記憶で。
──そうして、元々完璧だった前髪のセットはそのままに、すっかり優美に編み直した太い三つ編みに頷けば、その結びに赤いスカーフを結わえつけ、次はこちらも解きほぐした花束の花を挿しこんでいこう。大小さまざまなそれを見比べ、これはここだな、こいつはここに……と。若い娘の綺麗な髪に、四十路の男が一輪一輪花を飾るその光景はなかなか愉快。とはいえ、今日は建国祭。トランフォードの人々が皆浮かれ騒ぐ陽気な午後に、己もほんの少しくらいは羽目を外してよいだろう。いよいよ「完成だ」と告げて、これも土産の手鏡を渡すと、満足気に笑みながら手元の櫛をくるりと回して。)
休みの日に、よくこんなような髪形をしてるだろう?
見よう見まねでしてみたんだが──どうかな。悪くはないといいが。
962:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2026-01-26 00:27:41
…………。
( ──……しゅる、しゅるり、と。賑やかな祭りの管弦楽の中、大好きな手が己の髪を梳く音がする。熱い指が時たま耳元を掠める度、どうにも不思議な気持ちになるのは、相手の意思を読みかねているからだ。──いいか? と。そう最初に聞かれた時は、大して考えずに、その結い終わりへ指をかけることを許したが。本来、人に見せない身嗜みを、公共の場で晒している気恥しさに、浮かれていた思考を冷やされれば。しかし、決して嫌な気持ちではなく。
自分でするよりよほど丁寧に髪を梳かすその手付きから、時折漏れる上機嫌な吐息から。髪に、耳に、肩や首筋に触れる温もりから。ヴィヴィアンのためではない。ギデオンがそうしたくてしているらしい、甘えのようなものを感じ取れば。──……嗚呼。この人は、私のことが好きなんだなぁ、と。他でもないギデオン含め、もし他人に聞かれたならば、何を今更と呆れられたに違いない。しかし、彼が持つ底抜けの優しさでも、寂しさから逃れるための執着でもない感情を。初めて心の底から実感出来てしまえばどうだ。まるで神話の世界から抜けてきた雷神のような容貌をして、器用に編み上げた三つ編みを、花で飾り立て始めた恋人の表情を見ることができないのが、酷くもどかしく感じられてしまって。 )
──……っ、ギデオンさんは?
この髪型、好き?
( そのせいだ。ヴィヴィアンは満足気な恋人の問いかけを、最後まで口にはさせなかった。それまで固定されていた頭が動かせるようになった隙を逃さず、くるりと振り返りながら立ち上がり、こちらを見上げる恋人の顔を覗き込むと。拒否しようとと思えば出来なくもない、しかしそうしないでと強請るような表情で、上からその薄い唇を塞いでしまって。
そうして、少しかさついていた感触が、段々と馴染んでいく質感を心ゆくまで堪能した後、今更可愛こぶるように小首を傾げると。ギデオンの唇に移ってしまった紅を指の腹で拭い、自分の口元にそっと戻す小悪魔は。しかし、もしギデオンの手の中に、件の贈り物を見つけてしまえば、すぐにでもいつもの表情に戻ってしまうだろう。 )
……なら私も好き。
963:
ギデオン・ノース [×]
2026-01-27 02:00:38
!? !?!?
……ッ、ヴィ……、………──………
(俺はも何も、こうしたいと頼み込んだのは俺のほうなわけだから。どこか奇妙な無邪気さに青い目を瞬いたのち、そう仕方なさそうに眉尻を下げて言いかけた、ひどく鈍感な「好きだよ」を。しかしはたと止めさせたのは、娘の切ない表情だ。初めて見る、まるで読めない、だが彩あふれるその面差しに、思わず大きく目を瞠る隙を晒したのが命取り。気づけば甘い唇にたっぷりと猛攻されて──さらに愕然としてしまう。
これまでのキスのほとんどはギデオンがリードしてきたし、のびのび甘えるヴィヴィアンが、ねだるのとはまた別に自ら求めてきたことだって、決して珍しいわけでもなかった。だがこんな……こんな、全て等しく均すような、堂々征服するかのような、こんな口づけは今まで一度も。それを嫌うはずなどないが、だからといって、遥か歳上の男の沽券が少しも騒がぬわけもない。何度か制止を試みるべく、吐息の合間に掠れた小声を上げようとした。彼女の顔に自ずと添える骨ばった掌の、そのささやかな指の動きで、どうにか決して巨説ではなく、宥めてみせようとした。……だが、ああ、無理だ。しなだれかかるような舐りに頭の奥まで蕩かされ、ようや解き放たれた後まで、蠱惑的なその仕草をたっぷりと見せつけられたら。指でふにりと押した唇、その濡れた表面が光の輪を描く様に目を奪われるだけでなく、強烈な殺し文句に脳天まで貫かれたら。
──実際は、きっと微動だにすらできなかった有り様だろう。だがしかし、がくん、と、腰が抜けた錯覚すら覚えたほどの間抜け面で相手をまじまじ見つめ返せば。次いでバッ、と目元から下に手をやり、露骨に顔を逸らしたのは、どうやら往年の見る影も年甲斐もないド赤面を、真っ当に恥じたものらしい。「見るな」だの、視線だけで「うるさい」だの、反論はやけっぱちばかり。第一真横を向いたことで、その手の隠しきれない耳がよっぽど色鮮やかなのを自覚出来ているのかどうか。
何よりも度し難いのは──こんな見苦しい醜態でさえ、相手になら知られてもきっと大丈夫なのだろうと、心のどこかのすっかり甘ったれた己が緩みきって囁くことだ。この二ヵ月、相手をがっつり囲い込んで外堀を埋めていたはずが……牙を抜かれた駄犬へと飼い馴らされていたのはどちらだ。ほとほと参ったような声で思わしく唸ってみせると、がっくりため息を吐きながら、それでも相手の頭を撫でて。)
……いつからだ。いつからそんなに、手強くなった……?
964:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2026-01-29 23:05:58
ギデオンさんしか、知らないって……ご存知でしょう?
( 最初はその文句ともとれる唸り声に、やはり、少しはしたなかっただろうかとドキリとするも。頭を撫でる優しい手、困っているようでどこか甘えた低い声、そして、色素の薄い頬がぱあっと色づく光景に、どうやらそうでは無さそうだと力を抜けば。思わず、口角が勝手に持ち上がるのを感じながら。薄桃色の頬に手を伸ばして、再びその感触を確かめていた。そうして、慣れた動きで相手の片膝に乗り上げ、びくともしない逞しい体躯を──その癖、誰より繊細で愛らしいその反応を、たっぷりと好きに慈しんでいたその時。相手の頬へと添えていた掌を離し、何気なく大好きな手を握ろうとして、その手の中の質量に気がつくと。まさか──と。それまでギデオンの顔中にキスを振り撒いていた顔を離して、白く見飽きた己の手に包まれた、硬く愛おしい恋人の手。に、更に包まれた櫛をまじまじと見つめて。 )
──ギデオンさん。
( そう見つめられた薄蒼は、どんな反応をしたろうか。普段のヴィヴィアンであれば、まずはお礼の気持ちを伝えつつも、相談無しの浪費に、窘めこそすらしたかもしれない。──それが。贈り物だけは怠らなかった、コミュニケーション下手の父を思い出してのこととは、まさか本人も無自覚だっただろうが。しかし、この数日間を乗り越えた娘の表情はといえば、それはそれは、非常に難しいものだった。
これまで、ビビの年上の恋人は、二人の間の十六年を、ともすれば、彼の悪行のように捉えていて。まるで贖罪かのように、ヴィヴィアンに償って振る舞うのを知っていたから。"付き合ってもらっている"彼女としては、その貢ぎ癖をそう易々と受け入れるわけにはいかなかったのだ。──しかし、ギデオンもまたヴィヴィアンと同じなのであれば。相手のためなら、全てを差し出してでも、その喜ぶ姿を見られることが、彼の幸せだと云うのならば。
──嗚呼、間違っている。これは正解なんかじゃないと分かっているにも関わらず。何も決して嘘をついているわけではない。対等な大人として、弁えるべき遠慮をしなければ、大好きなギデオンからの贈り物が、しかも、すっかり目を奪われていた高級な櫛が、決して嬉しくない筈もなく。緩む口元を抑えながら、ゆっくりと下げていた顔をあげると──彼が喜ぶ反応を。素直な感情に任せた、反応を、キスを、熱烈な抱擁を。彼の求めるままに、与えたくなってしまうではないか。 )
…………ありがとうございます!
とっても素敵だと思っていたの、気づいてくださるなんて、とっっっても嬉しい!!
ギデオンさん、大好き!!
965:
ギデオン・ノース [×]
2026-02-06 08:10:27
………
(静かに名前を呼ばれながら翡翠の視線に射抜かれたとき、ギデオンの青い瞳は、彼女を、次に手の櫛を見て、一度下へと流れ落ちた。どこか微かに後ろめたい横顔が思い返すのは、つい二週間前の出来事。サリーチェの我が家にかかる防犯用魔法陣、そのセキュリティレベルをより高く確かなものへ契約し直していた件で、彼女に窘められたのだ。私費から出すから問題ないなんて話は違う、そういうことに黙ってお金を使わないで──ちゃんと、私に相談をして。あのとき交わしたやり取りを、よもやわざと無視したりしたわけじゃない。だが気づけばまたこうやって、似たようなことを繰り返している。……更に、これの非じゃない品も実は隠し持っているのだが──やはり、咎められるだろうか。彼女は望まないだろうか。そう、案じていたものだから。
遠慮の一切を取り払ってまっすぐに寄せられる、その声、口づけ、抱擁に。最初は目を瞬かせて完全に虚を突かれるも、次第にその目元を緩めさせ、鮮やかな安堵をわかりやすく浮かべてしまって。「敵わないな、」ともう一度、こちらからも彼女を抱き寄せ、懐くように鼻梁を寄せる。花壇の向こう、街の子らの声がいよいよ祭へ遠ざかるのを良いことに、もう一度その唇をねだれば、満足そうな吐息とともに掠れた声で囁くだろう。)
──……俺も、好きだよ。
(──さてはて。この数日でこんなにも素直なたちにされてしまった腹いせに、年甲斐もない有り様を取り繕う建前代わりに、相手のことを連れ出して、さらなる気軽な買い物を楽しませてもらおうか。「その靴だと街歩きには向かないだろう?」と、行商の集まっている通りの一角に連れて行き、今度は相手の好みに任せて、見事なドレスにもよく似合うサンダルを好きに選ばせる。そうして紙袋に纏めた荷物を提げていないもうひとつの手、そちらで相手と指同士を絡め合わせて戯れながら、浮かれた王都をぶらつこう。陽射しは夕に近づくとはいえまだまだ茹だる暑い夏、涼を探していた先に氷菓の露店を見つければ、はたと顔を見合わせたのは果たしてどちらが先だったか。──王女と記者の恋を描いた、有名な戯曲があるんですよ。ひと月ほど前、まだ退院明けの療養中で家にいることの多かったヴィヴィアンが、そんな風に目を輝かせて語っていた物語。その中に登場する実在の店だと気づけば、立ち寄らぬ道理などなく。共に広場の階段に座り、その時間の催し物を眺めながら冷たい甘味を堪能すれば、あっという間に真っ赤な夕陽が暮れていき、いよいよ間もなく建国祭のフィナーレだ。再び手を繋ぎながら、昨年のような人混みを避けて水路沿いを歩くうちに、ふと隣を振り返るのは、穏やかに問いかけるため。──相手の選ぶ場所でこそ、この夜を過ごしたかったからで。)
……今年は、どこから花火を観ようか。
城下町のゴンドラは長めの良さで有名だし、そこのホテルの屋上にあるレストランも、個人的に伝手を頼れる。去年の時計塔が良ければ、もちろんそこに連れてくし……もしかしたら家からでも、ベランダから眺められるだろうな。
966:
ギデオン・ノース [×]
2026-02-06 08:16:53
………
(静かに名前を呼ばれながら翡翠の視線に射抜かれたとき、ギデオンの青い瞳は、彼女を、次に手の櫛を見て、一度下へと流れ落ちた。どこか微かに後ろめたい横顔が思い返すのは、つい二週間前の出来事。サリーチェの我が家にかかる防犯用魔法陣、そのセキュリティレベルをより高く確かなものへ契約し直していた件で、彼女に窘められたのだ。私費から出すから問題ないなんて話は違う、そういうことに黙ってお金を使わないで──ちゃんと、私に相談をして。あのとき交わしたやり取りを、よもやわざと無視したりしたわけじゃない。だが気づけばまたこうやって、似たようなことを繰り返している。……更に、これの非じゃない品も実は隠し持っているのだが──やはり、咎められるだろうか。彼女は望まないだろうか。そう、案じていたものだから。
遠慮の一切を取り払ってまっすぐに寄せられる、その声、口づけ、抱擁に。最初は目を瞬かせて完全に虚を突かれるも、次第にその目元を緩めさせ、鮮やかな安堵をわかりやすく浮かべてしまって。「敵わないな、」ともう一度、こちらからも彼女を抱き寄せ、懐くように鼻梁を寄せる。花壇の向こう、街の子らの声がいよいよ祭へ遠ざかるのを良いことに、もう一度その唇をねだれば、満足そうな吐息とともに掠れた声で囁くだろう。)
──……俺も、おまえが大好きだよ。
(──さてはて。この数日でこんなにも素直なたちにされてしまった腹いせに、年甲斐もない有り様を取り繕う建前代わりに、相手のことを連れ出して、さらなる気軽な買い物を楽しませてもらおうか。「その靴だと街歩きには向かないだろう?」と、行商の集まっている通りの一角に連れて行き、今度は相手の好みに任せて、見事なドレスにもよく似合うサンダルを好きに選ばせる。そうして紙袋に纏めた荷物を提げていないもうひとつの手、そちらで相手と指同士を絡め合わせて戯れながら、浮かれた王都をぶらつこう。陽射しは夕に近づくとはいえまだまだ茹だる暑い夏、涼を探していた先に氷菓の露店を見つければ、はたと顔を見合わせたのは果たしてどちらが先だったか。──王女と記者の恋を描いた、有名な戯曲があるんですよ。ひと月ほど前、まだ退院明けの療養中で家にいることの多かったヴィヴィアンが、そんな風に目を輝かせて語っていた物語。その中に登場する実在の店だと気づけば、立ち寄らぬ道理などなく。共に広場の階段に座り、その時間の催し物を眺めながら冷たい甘味を堪能すれば、あっという間に真っ赤な夕陽が暮れていき、いよいよ間もなく建国祭のフィナーレだ。再び手を繋ぎながら、昨年のような人混みを避けて水路沿いを歩くうちに、ふと隣を振り返るのは、穏やかに問いかけるため。──相手の選ぶ場所でこそ、この夜を過ごしたかったからで。)
……今年は、どこから花火を観ようか。
城下町のゴンドラは眺めの良さで有名だし、そこのホテルの屋上にあるレストランも、個人的に伝手を頼れる。去年の時計塔が良ければ、もちろんそこに連れてくし……もしかしたら家からでも、ベランダから眺められるだろうな。
967:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2026-02-09 09:36:58
( 5029年、建国祭フィナーレのこの日を、ヴィヴィアンは生涯忘れることはないだろう。堅苦しい日常を自分の足で飛び出して、まるで物語に出てくるような素晴らしい男性と、先生から禁止されていた全てのことを楽しむの──学生の頃、何度夢見たことか。教育に悪いと見に行くことすら許されず、誰かが拾ってきた脚本の粗筋を、先生に隠れて何度も何度も回し読みした、かつての流行りの演目を、まるで再現するかのような夢のような一日を。当のヴィヴィアンはといえば、王女でもなければ、最早制限にまみれた学生の身でもない訳だが。もはや取り戻せないと信じ込んでいた青春時代の夢を叶えて微笑む女の顔色は、咲き誇る薔薇の色に染まっていて。この後のギデオンの目論見などつゆ知らず、その提案に暫しぽやりと考え込むと。一年前のあの時、繋ぐことの出来なかった手をぎゅむぎゅむと満足気に握りながらはにかんで。 )
でしたら。
ギデオンさんさえ良ければ、また時計塔へ……連れて行ってくださる?
968:
ギデオン・ノース [×]
2026-02-11 00:54:08
(柔らかな手のひらがこちらに可愛らしく伝える、無垢な慕情と信頼に。片眉をぐいと上げ、「喜んで」と喉を鳴らすも、やはり気取ったそれは続かず、すぐに笑み零れてしまう。隣から見上げる相手がこんなににこにこ嬉しそうに笑顔でいてくれるのだ、釣られないほうが無理だろう。──だからそのまま、ふたり並んで、ごくゆっくりと歩みを進める。相手と一緒であるのなら、なんてことのない石畳の路地、ありふれた古い家々、聖鳥たちが影絵になって横切っていくいつもの王都の空でさえ、何か特別な景色へと魔法をかけられていくようで。とりとめのない話をあれこれと咲かせながら、途中何度立ち止まり、何度重なり合ったことか。ちっとも急がぬその道のりは、しかし思えば、昨日までのここ数日、無意味に置いてしまった空虚を埋めるためでもあったのだろう。
つまらないことに囚われて、大事なことを見落としていた。相手と一緒に在るだけのこと、それをこうして慈しめるなら、他に横たう一切はまったく小さな問題だ。……だから、これを手放したくない。ずっと確かに得ていたい。それを本気で伝えるとき──彼女は、どう答えるだろうか。)
……懐かしいな……一年ぶりだ。
(──そうして。軽い夕食と少しの酒を買い込んで再び訪ねたその場所は、賑やかな中央広場をごく厳かに見下ろしている、キングストン時計台。裏手にある扉の守衛はいつもの古株の老人だったが、ギデオンが去年と同じ、だがより親密になった娘をまた連れてきたことに、(おや)と灰の目を輝かせる様子があった。とはいえ野暮を言うでもなしに、ただ恭しく通すだけのありがたい気遣いに、こちらもしっかり目礼しながら。美しいドレスを纏う夢の女性の手を引いて、鉄の螺旋階段を上へ上へと昇ったその先。扉を押し開けたその瞬間から、懐かしの展望台と──花火を打ち上げる前から見事な、満天の星が飛び込んできて。
全てが美しいこの夜に、手摺りの方へと進みながら、相手は辺りの景色にこそ陶然と見惚れるだろうか。だがギデオンのほうはといえば、今年も同じくここに来た周囲のまばらな人影も目に入らないまま……花咲く髪に瀟洒なドレス、何より無邪気に感動する恋人のその姿にこそ、もはや隠しようもなく熱いまなざしを向けていた。こちらを振り向く彼女に向けて、その静けさを誤魔化すように無難な言葉をかけてみせたが、果たしてどれほど自然なのやら。それでも今度は、はにかみでも照れ隠しでもなく、満ち足りた微笑みを相手に向けてみせると、手に提げた酒や肴を掲げて。)
なあ……花火まで、まだ少し間がある。
今年は先にこいつらを楽しみながら、のんびり時間まで待たないか? ──なに、腹ぺこなわけじゃない、本当だとも。
969:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2026-02-17 00:39:37
──……ええ、そうですね……。
( 確かに、年若い娘であるヴィヴィアンにとって、様々な変化のあったこの年は、長い長い一年だった。しかし、ギデオンの様な大人でも、たった一年前を懐かしく思ったりもするのかと、少し目を見開いて相手を見やれば。いつの間にやら向けられていた、熱く輝く眼差しに──あの時、私を受け入れて良かったでしょう? "待て"ができたご褒美は無いんですか? なんて。用意していた冗談などは、跡形もなく霧散してしまい。ずっと自分ばかりが、相手を好きで仕方ないようなつもりでいたが、もうそうではないのだ。自分が相手を愛しているように──この人も、私のことが好き。たったそれだけのことを自覚するだけで、胸の奥がいっぱいになって、短くなってしまった返事の代わりに。元々繋いでいた手元を絡め直して、その分厚い肩に形良い頭を寄せることで応えて。 )
ギデオンさんったら、……!
仰らなければ分からないのに。
( そうして、食いしん坊な恋人にくすくすと、溢れる愛おしさで相手の鼓膜を、触れ合っている半身を、小さく震わせれば。適当に見繕った席で取り出したのは、色とりどりの夏花が刺繍されたランチョンマット──に包まれた、サリーチェの家で愛用しているカトラリー数点。食べるのが大好きな恋人が、この国中の店が屋台を連ねる建国祭を、如何に活き活きと楽しむことか。そして、その普段見慣れぬ料理を深く味わう傍ら、薄く簡素な使い捨ての食器類に、毎度少なくない集中力を削がれていることも知っていたから。出発前に滑り込ませたシルバー類は、片手で楽しめる軽食となった昼には出番がなかったが、新鮮な魚を使ったカルパッチョや、豪華なサラダ、そして温かなスープなどに、役に立ちそうで良かったとギデオンの分を差し出せば。宝石箱のような王都の空に、小気味よい乾杯の音を響かせて。 )
また連れてきてくださって、ありがとうございます! ずっとまた来たかったの!
ギデオンさんが、好きでいていいって、言ってくださった場所だから……
970:
ギデオン・ノース [×]
2026-02-22 12:38:36
(いつぞやの合宿のデート土産で買い込んでいた、グランポートの飾り鯨燭。その時の伝手で取り寄せた、ステムの紅が美しい渡来品のルビリアグラス。そういった小道具で、昨年よりも良い雰囲気を──なんて考えを抱いていたのは、何もギデオンだけでなく、彼女もお揃いだったらしい。いつもと違う星空の下、それでも見事に召喚された、いつもの愛しい我が家の食卓。その温かな心地の良さに、つくづく相手に敵いやしないと幸せそうに苦笑する。──本来ならば男として、果たすべきものがあるだろう。だが、ああ、このほうがずっといい。互いに相手を想いながら一緒に築いていくほうが、何もかもが何倍にも素晴らしくなるようだ。)
──……好きで……ああ、そうか、そんなことも言ってたな?
今じゃ信じられない気分だ……
(そうして、黄金色のシャンパンをくっと流し込んだと思えば。思いがけず蘇る過去の己の発言に、額に手を当てながら、耐えかねたような唸り声。相手のしおらしいコメントが、また覿面に居た堪れない──かつてはどれほど愚かしく胡坐をかいていたのやら。だが、今なら言っても赦されようか。あの頃はまだ、相手とここまで深い関係に進むだなんて、思ってもいなかったのだ。……実際、どうだ。お前のほうは、もうあの頃から、今の俺たちが見えてたか?
そんな問いを食事の合間に穏やかに投げかけたのは、既に互いの関係が揺るがぬものとなったことを確信しているからであり──自分はそう捉えていると、わかりきっているだろうことを今一度改めて、相手に伝えるためであり。シダの花弁が浮かんだスープを軽くひと口飲み干してから、いつになく優しげなアイスブルーの目を向ける。蝋燭の温かな灯りが照らす横顔は、この静かで満ち足りた特別なひとときに、改めて互いとのことを話そうとしているのだと、ありありと物語るだろう。)
──俺にとって、昔のおまえは……シェリーの娘であるのはもちろん、ギルドの後輩のひとりだったよ。急に入ってきたかと思えば、あらゆる指導を吸収してどんどん成長していって……そういう意味では、そうだな、可愛い後輩だった。
だが、ほら。シルクタウンのときから、様子が変わってきただろう。……訊いたことがなかったが、きっかけは何だったんだ?
971:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2026-02-25 17:31:26
( まさか二人揃って相手に黙り、愛用の食器を持ち込んでいるだなんて。計らずも揃ったテーブルウェアに、無邪気に顔を綻ばせるギデオンの傍ら。ビビはといえば──プロポーズを控えている相手と違い、当然と言えば当然なのだが──案外冷静に、その幸せそうな横顔を微笑ましく見つめていた。
信じられない……か、と。確かに、相手からの好意を憎からず思いながら、それを固辞していた相手とはまた違った形だろうが。ビビもまた、こんなに愛せる人が。愛しても“許される”、“受け止めてくれる”人が出来るだなんて。そして、自分もまたその人から愛されている奇跡なんて、一年前のあの時は思ってもみなかった。──こんな日々が、ずっと一生続いてほしい。それだけが娘の幸せで、それ以上のものなどいらないのだから。なんて、ピンクペッパーの散った白い切り身を口へ運びながら、スープを味わうギデオンに目を細めれば。思い出すのは、『私とじゃなくてもいいから』なんて言っていた一年前のやり取り。当時は心の底から口にしたつもりの本音だったが。どうか、目の前の愛おしい恋人が、当時のビビの殊勝ぶった世迷いごとを、すっかり忘れてくれていますように。 )
──……いえ、いいえ。
まだどこか……幸せな、夢を見ているんじゃないかって思うくらいです。
( そうして、愛用の食器類で食事を堪能し、上機嫌にビビのことを思い浮かべてくれているらしい横顔に、うっとりと蕩けていたエメラルドを「ありがとうございま……はい?」と、心底驚いたように揺らしたのは、ギデオンの問うた意味が一瞬、よく理解できなかったからだ。聞いたことがなかったも何も、シルクタウンでロマンチックに助けられて、好きになっちゃったと、責任を取って欲しいと迫って始まった関係だろうに。まさか忘れてしまったのか。それとも、もっと深いことを聞かれているのだろうか? そう改めて、ビビよりもずっと年上で、聡明な恋人からの問いに、真剣な顔で口の中身を胃の奥に飲み下し、思考を無意識の果てに巡らせれば。「……ワーウルフから助けていただいて嬉しかったのは本当ですよ」と。それでも、決して否定されたくはない思い出については、しっかりと念を押しておこう。 )
でも、きっかけは、そうですね、……。
私が初めて告白した時、ギデオンさん、本気にしていらっしゃらなかったでしょう?
( それから、改めてギデオンの質問に向き合い直せば。思わず問い詰めるようになってしまった物言いに、「いいんです、当時は確かに本気じゃ……ううん、正気じゃなかったもの」と、恥ずかしそうに視線を逸らし。気付薬でもそうするように、ルビリアグラスを大きく煽ると。覚悟を決めたように、酒のせいだけでもなく、潤んだ瞳と上気した頬をまっすぐにギデオンの方へと向け。
──最初はね、それにとっても安心したの。私が“女だから”じゃない、“本物の冒険者“として仲間に入れてくださったんだって……。
そこまで口にして初めて、自身でも気づいていなかった内心に驚いたように目を丸くし。しかし、すぐさま表情を曇らせると、「……多分、きっかけは、きっとグランポートの時です」と、未だ完治しきってはいない相手の右肩──の先の右手にそっと触れ。当時、小娘であるヴィヴィアンのことが、趣味ではなかったというよりも。まるで、自分が本気で誰かから愛されるわけがないと思い込んでいたような。そしてその本人が一番自身のことを憎んで、喜んで危ない場所へと行きたがっていたような。どうしようもない危うさを思い出せば。
その一方で今、目の前で嬉しそうに食事を頬張り、昨日はボロボロになってまでビビを探しに来てくれた可愛い恋人に、自然と小さな笑みが漏れる。そうして、続けた言葉は九割本音で一割が嘘。本当は別に隣にいるのは、“ビビでなくても”きっとよかった。しかし、それに気付いて欲しくない、ずっとこの人の隣にいることを許されたい。そんな願いからくる小さな嘘くらいは、きっと許してもらえる筈だ。 )
……だってあの時のギデオンさんったら、ご自身のこと全然大切にしてくださらなくって。
”私がいなかったら”、生きていけなさそうだったんですもの……。
972:
ギデオン・ノース [×]
2026-03-04 00:27:34
(実はこれまで、相手の気持ちの深いところをきちんと尋ねたことがない。それはそうするまでもなく、ヴィヴィアンが常日頃より伝え続けてくれるからだし、今は──少なくとも昨夜からまた──互いの愛情関係を確信しているからでもある。なのにこうして問い直すのは、初めての色恋に浮かれる若者でもあるまいし、野暮で気恥ずかしく感じたが。『ちゃんと"わかってる"し、本当に! 私はギデオンさんと居られればそれでいいって、そう言いたかっただけで……』。あのいじらしい声を思い返すに、既に通じているつもりのことも、案外ちがう気もするのだ。
そんな思いから切り出した話題であったが、現に今。目の前のヴィヴィアンが迷いながら紡ぐのは、聞けば驚く言葉ばかりだ。『ワーウルフから助けていただいて嬉しかったのは本当ですよ』……それはつまり、後の出来事がより重要な本題だろうと、あの一件が彼女にとって大きかったという意味で。──ギデオンにしてみれば、あの当時の出来事は、ある意味些細なひとコマだった。二十五年も冒険者をしていれば、獰猛な魔獣から仲間を必死に救うのは、無論そうではいけないのだが、よくあるといえばよくある話。何より当時の自分にとって、直後の彼女の告白のほうが余程青天の霹靂で、まさか本気で受け取るまいと、何なら忘れ去るように努めていた気さえする。しかし思えば、うら若い女性にとっては、確かに劇的だったのだろうし。だがそれでいて、「本気で受け取られなかったことで安心した」とは、これ如何に……?
そうやって首を傾げながら、自分でも驚く娘と丸い目を見合わせながら。真夏の青い星空の下、相手の一言一言にゆっくり耳を傾けて。目に見えない小さな何か、これから必要だろう何かを、胸の内に積み上げていく。──どこかしおらしいような声音を絞り出す恋人に、ふむ、と口許に手を当てて、今度はこちらが考える番。ある意味女として見られずに安心しきっていたヴィヴィアンが、当時の己のありようを見て、放っておけなくなったのだと……それが自分に構いはじめた始まりであるのだと。しかしその言葉には、少し言わせてもらおうか。)
──……俺にしてみれば、そうだな。きちんと食べて、よく休みもして……そうやって、前よりずっと健康になった今のほうがもうよっぽど、おまえなしじゃ生きていかれない体になっているんだが。
それはともかく……目を離すと危うかったのは、お前だって同じだろう?
(いとも甘い言葉を囁き、たらし込もうとしたかに見えて。──するり、と。こちらの右肩を案じるように触れていた彼女の片手を、今度はこちらが絡め取り、その小さな指先をどこか冷静に包み込む。親指の腹で確かめるよう手の甲をに撫でる仕草は、果たしてあの当時の記憶を彼女に思い出させるだろうか。「シャバネの時だ、」とすぐに明かししてやりながら、こちらも少し中空に視線を留め、緩みの失せた表情を。──やがてまっすぐ、叱るではなく案じるように、穏やかなアイスブルーで見つめて。)
俺だけじゃない。お前だって、自分のことが二の次だった。すぐに具合が酷くなって、自分でもそれを言えるのに……誰かのことを治すためなら、自分が後でどうなるか、あの頃はまるで構わなった。……シスターレインの教え、ってわけでもないんだろう?
973:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2026-03-16 11:41:34
…………。
( さて、一体どうしたものか。ギデオンの蕩けるような言葉には、嬉しさ9割、恥ずかしさ1割といった表情で肩を竦め、くすくすとはにかんでいたヴィヴィアンだったが。その後に続いた指摘の言葉に目を丸くすると、すっと鼻から息を漏らしながら、思案顔でじっと男の表情を見つめて。
ビビからすれば──いつから好きになったの、なんて。恋人らしい甘い会話を楽しんでいただけのつもりだったのだが。一体どうして、いつからお小言のパートに入ったのだろう。何やら年上男のプライドを損ねることでも言ってしまったろうか、とそこまで考えて──……いえ、違うわね、と。絡められた手を熱く握り返し、女が相好を崩すまでの数秒間。遠く離れた祭りの喧騒だけが、向き合うふたりを取り巻いていた。 )
──ご心配なく!
……だって、ギデオンさん。
約束守ってくださるでしょう?
( 見下ろせば宝石箱をひっくり返したようなキングストンの街並み、頭上にも落ちてこんばかりの満点の星空。こんなにも素晴らしいムードだと云うのに、どうしようもなく怖がりで愛らしいひと。決してギデオンの心配を軽く見る訳ではない。ただこんな時でさえ、ヴィヴィアンを案じてくれる、案じてしまう恋人が愛おしくて、治療室での約束を持ち出して、相手を安心させるように微笑めば。にわかにそっと立ち上がり、その可愛らしい目元に、そして口元にも短い愛情表現を。そうすることで、人に尽くさねばいられない、そんな己の本質に踏み込まなかったのは、本人もそのあり方に気づいていないからこその無意識のことらしく。故に決して暗さを感じさせない楽しげな様子で、繋いだ手元をゆらゆらと揺すれば。ふっと静かになった周囲の空気に、大きなエメラルドをキラキラと輝かせ、夜空へと身を乗り出すように上を見上げて。)
わあ、そろそろ花火始まるみたいですよ!
974:
ギデオン・ノース [×]
2026-03-24 11:24:19
(そのひまわりのような笑顔には、どこにも翳りや濁りがない。しかしそれでも拭えない彼女の言葉の違和感に、ほんの一瞬間を置くも──すぐにふっと目元を緩めて、「そうだな」と喉を鳴らす。寄せられる甘い祝福に嬉しそうに微笑んだも、生き生きはしゃぐ恋人に仕方なさそうに苦笑したのも、その手を強く温かく握り返してみせるのも。全ては己の胸の内にて、静かに覚悟が固まったから。
元々、既に二ヵ月前から考えていたことではあった。が、いくらなんでも時期尚早だと、そう省みる程度の理性も少しは働きつづけていたのだ。それがどれほど無謀なことか、どんな影響を及し得るか、散々に案じ続けて、故にほんの些細なことで狼狽する無様も晒した。──だがもう、決してぶれるまい。己にとってかけがえのないヴィヴィアンの人となりを、たしかに掴んだ今ならば。ギデオンが選ぶ道のりに、二度と迷いは生じるまい。
夜風を頬に受けながら、両の瞼を軽く閉ざす。深く息を吸って、吐く。目を開け、相手の小さな手を優しく握り直しながら、共に軽く空を見上げる。
キングストンを遥かに包む、紺青色の無限の天蓋。そこに今、ひとすじの──白い炎が躍り上がった。)
…………
(──まだ若かった自分に齧った、考古学の本曰く。人類が誕生したのは数十万年ほど前で、その文明が始まったのは、炎魔法を扱う個体が初めて現れた時なのだという。そこからかれらの生活は瞬く間に進化した。暖を取れるようになり、煮炊きができるようになり、土器を作れるようになり、また防衛の術も得た。小さな魔獣を倒すことで素材を得た人類は、やがて金属加工の技術も開拓するようになっていく。革命的な技と知識は連綿と編まれ、広がり、美しく磨き上げられ──そうして現代、5029年の生活へと続いている。
今でこそ、炎魔法は四大元素のひとつに過ぎず、さほど特別なものではない。が、それでも有史以前は、後の全てを照らしだす始まりの灯だったのだ。だから建国祭の花火は、最初は必ず、ごく小さなひとつの花火で始まることになっている。そこからやがて色とりどりの、様々な技法を凝らした魔法花火が打ち上がり、やがて見事壮観な大輪の花畑へ。小気味好い破裂音が幾千幾万と夜空に轟き、しかしそれより心地好いヴィヴィアンの歓声が、ギデオンの耳朶をくすぐる。隣を振り返ってみれば、眩く照り映える恋人は、その横顔にひまわりのように大きな笑顔を咲かせていた。生き生きと輝くそれを見つめているだけで飽きない──実際どれほどそうしていたか──しかし煌めくエメラルドにこちらの表情を覗きこまれ、にっこり微笑みかけられれば、ああ、限界だと苦笑しよう。
「おいで、」と甘く囁きながら、その手をリードするそれに差し替え、座り心地の良い長椅子から立ち上がるように促して。美しいドレスを纏う恋人を導き、展望台の欄干へ。去年花火を見上げていたのは、ちょうどこの辺りのはずだ。ここからのほうがよく見える、とそれらしい事を言いながら、早鐘を打ち始めた心臓に思わず密かな深呼吸──くそ、決意が固まっていようと、やはり緊張するものらしい。そんな些細な様子の変化を、果たして彼女に気取られたかどうか。構いやしない、今がもうその時だ。
ぱああん、と、一際大きな冠花火が咲きこぼれきった後。いよいよグランフィナーレが打ち上がるその直前、興奮に満ちた静けさが嘔吐を浸すそのひとときに。「ヴィヴィアン、」と、少し落とした、低い声で囁きかけ、熱い眼差しで見つめれば。真剣な話を打ち明けようとしていることが、相手にも伝わるだろうか。)
……俺はもう、お前のことを、“師匠の娘”と思ってない。
もちろん、シェリーの娘なんだが……それはもう、小さなことで。お前自身を見続けるのに、もう何年あっても足りない。
だから、ひとつ、頼みがあるんだ。──聞いてくれるか。
975:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2026-03-31 21:48:27
──ええ、もちろん。
( この花火が象徴する太古の歴史の重みなど、若い娘には到底思いもよらない。けれども、当時の人々もきっと変わらず求め、感じていたことだろう。安心できる場所で、愛しい人と、こうしてただ隣にいられる幸せ。それだけで、長い人類史が生み出してきた巨万の富も、素晴らしい栄誉の数々でさえも、全てが霞む幸福に、少し高い位置にある筈の美しい横顔を仰ぎ見やれば。それこそ、四六時中と言っても構わないほど。常にギデオンを見つめているヴィヴィアンでさえ、初めて目にした珍しい表情に、常日頃、好奇心旺盛に元気良く動いて止まないエメラルドが、みるみるうちに丸くなる。十六も年の離れた大の男が、何やら緊張しているらしい迫力に、思わず一瞬身を固くするも。一身に此方を見つめる眼差しと、続けられた言葉の数々に、どうして、力強い笑みを浮かべずにいられるだろうか。
あの日、今日と全く同じ場所で。『"師匠の娘"じゃなくて、私を見てください』そう願ったのは、まだたった一年前のことだというのに。あれから本当に、本当に沢山のことがあった。しかし、約束を忘れずに果たしてくれ、その上、こうしてはっきりと誓ってくれる恋人に──好き。大好き。この人のことを好きなって良かった、と。心の底から湧き上がる感慨に、ただ静かに目元を細めれば。
この時、ヴィヴィアンは決してプロポーズに気づいていた訳ではなかった。しかし、勇気を振り絞る男の顔に、少しでも安心できるようにと、おもむろにたっぷりと向き治れば。きっと、じっと。もしまだギデオンが躊躇うようならいつまでも、男の言葉を永遠に待ちながら。レースの両手で、欄干にかかっていた分厚い手元を包み込んで。 )
ひとつだなんて、仰らないで。
……ギデオンさんには、私の、全部差し上げたってかまわないの。
976:
ギデオン・ノース [×]
2026-04-01 05:29:32
(愛情深い掌がそっと伝える体温や、しっとりした声に反してあまりに激しい殺し文句。何よりまっすぐな眩い笑みをこうも惜しみなく与えられ、どうして男がそれ以上たじろいでいられるだろう。そう苦笑するように温かな吐息を零すと、ヴィヴィアンのほうに身を傾げ、金の頭を寄せて擦りつく。頼みとやらを切り出す前に、心地良さそうに両目を閉ざしてさえいるのは、もはや何を確認せずとも、彼女は己を受け入れて慈しんでくれるはずだと、そう心底信じているから。
そんな有様である以上、ギデオン自身は無自覚だったが。たった今、時計塔の展望台でふたりが身を寄せ合うその構図は、奇しくもちょうど一年前とほとんど同じものだった。魔剣使いのギデオン・ノースと新米ヒーラーのヴィヴィアン・パチオが、まだ恋仲ではなかったあの頃──だが確実に向き合いはじめ、胸の内にも触れだした頃。あの当時のギデオンがヴィヴィアンに顔を寄せたのは、過去の苦悩に満ちた懺悔を打ち明けるためだった。……だが、今夜はまるで違う。あれからのたった一年で、恩師の娘であるからこそ後輩として見ていた相手は、今やかけがえのない存在になり。もう諦めたつもりでいた未来のことに思いを馳せるようになり、ついには遥か過去の罪さえようやく償うことができた。己の人生は目まぐるしいほど激変し──それを叶えてくれた彼女に捧げたい告白もまた、別のものへと変わっている。
そのことを思い出し、ようやく静かに瞼を開けて。何を言わずとも自然と目が合い、少し照れ臭そうに笑えば、まずは恋人のまろい額に感謝を込めて口づけを。それからようやく、「俺もだよ」と囁いて、一歩だけ距離を取る。キングストンの華々しい夜景を背に、今一度相手に向き合い、翡翠の瞳をひた向きに見つめ直して。一言、一言、互いに刻み込むように、はっきり言葉にしてみせよう。)
ヴィヴィアン、俺も同じなんだ。俺の持っているものも、これから手に入れられるものも。俺の全部を、おまえにやりたい。
──だから、この先の一生涯。誰よりも近くから、お前を守る……権利が欲しい。
(そうだ。“責任”でも、義務でもなく。それは己の、何にも代えて求めてやまない、ただひとつの望みなのだと、そう告げてみせたなら。──何度も気障かと考え直し、しかし本気だと伝えるためにはこれしかないと結論付けて身につけた、ガリニア貴族の血を引く相手に決して見劣りしないであろう優雅さで、ゆっくりと膝をつき。どこからともなく取り出したベルベット張りの小箱を、愛しい娘の目前に恭しく捧げてみせる。……その蓋を、そっと開けたなら。そこにはきっと、ちょうど打ち上げられた花火の千の輝きを受けて煌めく、美しい螺旋の指輪が飾り置かれていることだろう。
──『オ・フィール・デ・セゾン』王都本店が並ぶ通りの角にある、国内有数の宝飾店。そこで世界にただひとつのジュエリーをオーダーするなら、どんなに早くとも二カ月はかかるものだとギデオンは知っていた。だから先の五月のはじめに、ヴィヴィアンより一足早く退院したその足でこの指輪を作りに向かい、数日かけて注文を完成させたその後は、今か今かと待ち侘び続け。そうして二週間ほど前……ドラゴン狩りの直前頃、ギルドの私書箱宛にようやく『来週末にはお渡しします』と記した手紙が届けられれば、建国祭が始まって寄る暇のなくなる前に、クエストの合間を縫ってひとり密かに受け取りに行った。──それから随分長いこと、この小さな箱の中身を温め続けたように思う。なりふり構わず今すぐ渡せと、毎夜毎夜指輪自体が叫ぶように思われたのを、どれほどの辛抱で聞き流し続けたことか。またこのところの一週間、愚かな迷走に駆られたギデオンに指輪がどれほど叱咤を飛ばし、睨み続けてきたことか。
──だが、その嵐はもう過ぎ去った。この晴れ渡った夜空の下で、指輪は今、その本来の静謐さを取り戻し、こちらを見下ろす女性のことをただじっと待ち受けている。ギデオンもまた、その唇を再び開き。恋人の表情を真剣に見上げながらも、熱を込めた声色で、その“頼み”を囁くだろう。)
……ヴィヴィアン。
俺と、結婚してくれ。
977:
ヴィヴィアン・パチオ [×]
2026-04-05 14:03:10
──……ッ、
( それは、まるで王道な戯曲の一幕を目にしたような。しかし、今までの人生で触れた、それら全てが敵う筈もない。頭から爪先までの細胞全てが歓喜に震え、この光景を、言葉を、ギデオン瞬きや呼吸の一片をも、決して逃すまいと活性化した五感のせいで、男の顔に反射する色とりどりの光と、花火の音に、脳髄をくらくらと揺さぶられるような素晴らしい心地だった。
約500年前の建国を祝い、誰もが夜空に浮かぶ大輪の花火を見上げるこの夜。その色鮮やかな光に照らされ、ヴィヴィアンの前に膝を折るギデオンと、手の内の輝石。そして、そのストレートな求婚の言葉に、一瞬、思わず言葉を失うも──パァン、と。建国祭に湧く王都を彩る数千発の花火もフィナーレを告げる一発と共に。見開いた目の瞳孔を急激に絞った猛獣は、最早目の前の幸せへと飛び込むことを恐れなかった。 )
~~~ッ、はいっ!!
勿論、ええ、うん……喜んで!!
( ギデオンが用意してくれた最高の場所と、誰もが憧れるようなプロポーズ。その正しい答え方が、静かに左手を差し出す方法だということも。そうでなくとも、手元を誤りそうな高い場所で、小さな貴金属を握る相手に、じゃれついてはいけないことも本当は知っている。それでも、ギデオンさんなら受け止めてくれるだろうと、相手に立ち上がる隙も与えず、いつかの魔猪よりよほど激しく飛びつけば。──先に好きになったのは、ヴィヴィアンの方だったのに。ここ数日のすれ違いを乗り越えて、相手の気持ちは分かっていたつもりだったのに。まさかギデオンに先を越されて、あまりのことに一瞬呆けてしまった。そんな清々しくも悔しい想いを、大好きな思い知らせるように──その逞しい上半身は難なくこちらを受け止めたろうか、それとも流石にバランスを崩したろうか。いずれにせよ、がっちりとしがみつきながら、結い上げた髪が崩れるのも厭わず、ぐりぐりと頭頂部を擦り付ければ。一体、どれほどしていただろう。満足気な笑みを全面に浮かべて、乱れた巻き髪がほよほよと揺れる頭をぴこりとあげると。もう一度じっと大好きな碧を確認してから、静かにそっと目を伏せて。 )
──あげる………全部、ぜーんぶ、あげる!!
だから、ギデオンさんも全部私のもの!!
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