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Petunia 〆/852


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自分のトピックを作る
833: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2024-10-26 00:58:20




( /お世話になっております、ビビの背後です。
本日スマホを! 水没!! させました!!!
一瞬滑らせただけなので無事を祈りたいところなのですが、念のため乾燥中でして、イレギュラーな連絡方法で失礼いたします。
スマホは滑らせるわ、あちらのパスワードは思い出せないわ……あまりに迂闊すぎてお恥ずかしい限りなんですが……
というかパスワードは復活次第すぐに再発行するぞ……、あまりにセキュリティがガバすぎる……。
取り急ぎご報告のみですみません、素敵な本編をありがとうございました。あちらの方もいつも通り楽しく拝読しておりますので、乾燥次第またお返しさせていただきますね。
よろしくお願いいたします! )




834: ギデオン・ノース [×]
2024-10-28 00:06:56




(/遅ればせながら、ご連絡ありがとうございました&こちらの確認が遅れてしまい、申し訳ございませんでした……! こちらでも改めてのお返事まで◎
 背後のほうでも何かイレギュラーがございましたら、どこかしらでしっかりご連絡いたしますね。引き続きのんびり宜しくお願いいたします!)





835: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2024-10-29 01:49:31




…………。

 ( 離れていった温もりに、追い詰められた表情で俯いたのも束の間。隣におろされ直した温もりに顔を上げれば、月光を反射する優しいブルーと目が合って。──この人に相応しくなりたい、必要とされたい。そんな娘の内心を見透かすように、目の前の男はこれ以上なく甘い口実を投げかけてくる。"いい子"なんかでいなくていいと。"いい子"でなくとも、自分は相手に相応しいのだと。これまでずっと重く感じていた鎧を脱がさんとする太陽は、ビビにとってこれ以上なく温かく、容赦なく身を焼くようで。そうして、悪戯っ子のような表情で片眉をあげた相棒の言葉に最後。ふっと小さく破顔した後、その瞳に覚悟を決めるような神妙な光を微かに灯すと。"食事中に席を立たないように。神に感謝して静かにいただきなさい。"と、かつて学院時代に何度も聞いた、そんな些細な言いつけなら、自分にも破れるような気がして。 )

ギデオンさんは、"悪く"……なんか、ない。

 ( そのまま、ただ重力のまま撓垂れ掛かるように、相手の肩に上半身を預けると。「毎日じゃ、なくても良いです……遠征も寂しいけど、大丈夫」そう分厚い肩口にぐりぐりと、丸い額を擦り付けながら漏らした声からは、先程までの強情な色はすっかり消えて失せて。「私、冒険者としての貴方も……好き」と、今更どこか恥ずかし気な告白は、これまで一年間向け続けてきたどの愛の言葉よりも余程小さかったが。大丈夫、ギデオンさんの言いたいことは伝わっている、と相手にもしっかり伝えられるように。それまで相手に肩で塞いでいた視界をゆっくりと上げ、代わりに自ら未だ微かに震える両腕を広い背中へと絡めれば。先程無理に引き出された"ワガママ"とは違う、もっと現実的な、本気で、叶えてもらいたい己の"望み"と真剣に向き合っていたかと思うと、おもむろに。自分でも初めて気づいた結論に、逞しい腕の中、いっそあどけない様子ではにかんで。 )

でも、無理はしないでほしい。身体を大事にして、しっかりお休みもとって……ご飯も、そっちはあまり心配してないけど、ちゃんと食べてね。
それで、その……できれば。できれば、その時、隣にいるのは私がいいなって思うんです……。
……! わたし、あなたの家族に、なりたい……




836: ギデオン・ノース [×]
2024-10-29 23:41:09




(あまりにもいじらしい “ワガママ”の数々に、極めつけがその一言だ。思わず居室の天井を仰ぐようにして仰け反ると、耐えかねたような呻き声を厚い胸板の奥に響かせ。かと思えば、今度はその体躯をぐうと内側に屈め込んで、腕のなかの愛しい娘をきつくきつく抱き締めた。少しばかり苦しいだろうが、こちらとて思い知らせたい。──あまりに大きな幸福感で胸が潰れるということを、こちらは生まれて初めて体感している最中なのだ。)

…………殺し文句にもほどってもんがあるだろう……、

(いっそ白旗を上げるに等しい、情けない恨み言。それをどうにか絞り出すのが、今のギデオンの精一杯で。……実際のところ、もっと他に言うべき台詞、本気の言葉があるのだが、何も用意のない今はただ、腹の底にぐっと押し込めておかねばならない。そのもどかしさの八つ当たりとばかりに、抱き締めた相手ごと大きな体を軽く揺らして、思いの丈を伝えると。しばらくのちにようやく溜飲を下げたらしく、体を離し、見上げさせたその顔は、すっかり満足気に笑んでいて。
「……なあ。すぐにというわけにはいかない、なんて話をしていたが……」と、おもむろに切り出したのは、数日前のあの話だ。無論あのときも腹の内では、のちのちどうにか転がして、ここに持ってくるつもりだったが。きっと今ほどのタイミングは、後にも先にもないはずで。)

明日、王都に帰ったら。一緒に暮らすための準備を、もうすぐにでも始めよう。
もちろん、おまえの体調を見ながら……やれることは、俺がするから。
──お互いこんなに望んでるのに、慎ましく離れておく理由なんて、もうどこにもないだろう?

(そうして、少し乱れた相手の前髪を、愛しそうに顔から避けてやったかと思うと。長いふと房を相手の小さな耳にかけた、その手元を引き戻した時、指にしれっと挟んでいたのは、どこからいつ取り出したのか、どういうわけか折目ひとつも見当たらない、例の書類の幾枚かである。──いったい全体何年前、何のために身につけた手品なんだか。そりゃあ秘密だと言わんばかりの澄まし顔で、これ見よがしに図面をぴらぴら掲げ、自分でも可笑しくなって少し小さく笑ってみせると。
食事をつつきながらもう一度、今度は本気で眺めないか──と、今度は隣り合っての夕餉を、身振りで相手に強請ってみせて。)





837: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2024-11-01 18:27:04




ひゃっ……!!

( 平素、魔獣の脅威から罪のない人々を守る腕に、力強く抱きしめられれば。肺が潰されて呼吸も苦しく、硬い筋肉や関節があちこちにあたって痛むというのに。かえって相手の存在を確かに感じられて、ぴくりとも動けないまま、脳髄が蕩ける様な多幸感に掠れた笑い声がかすかに漏れる。殺し文句だなんて言われてみれば、少し青いことを言ったかも? と、ゆらゆらとした抗議に、今さらじんわりと頬が熱くなる気もするが。ゆっくりと向けられた満足げな笑顔に──ギデオンさんが幸せそうだから良いか、なんて。無自覚故に決めさせてしまった覚悟のことを、よく考えもせずにニコニコと笑っていたその報いか、はたまた単純な旅の疲れか。ようやく慣れた下宿に帰りついたその夜に、体調を崩して高熱を出してしまうと。「……私にも、出来ることはさせてくださいね」とした約束を果たすまでに、随分な日数を要してしまうなど、この時はまだ知る由もなかった。 )


ギデオンさん! おはようございます!

( そうして、件の舘に向かう前から変わらない、愛しの相手を目の前にはしゃぐ元気な挨拶に、しかし普段であれば同時に飛びついてくるだろう娘がそうしなかったのは、自室の扉の前に立ち、裾を揺らしている長いスカートのためで。待望の退院から幾日たっただろうか、一応一昨日の朝には熱も下がっていたというのに、今度は過保護な恋人の説得に時間を費やし、ようやく迎えられた今日である。本当は、どこか東広場あたりで待ち合わせデートと洒落こみたい乙女心もあったのだが、強情なギデオンの首を一日でも早く縦に振らせるため、ドアtoドアの完全送迎を受け入れたという経緯。関係性が変わってからの初デート(が、同棲準備であるという性急さを今は考えないことにして)に早朝からワードローブをひっくりかえせば、そういえば。それなりの例外は複数あれど、普段仕事着で対峙する相手には殆ど私服を見られたことがないことに気が付き。やはり王道に可愛い系か、でも今日は遊びに行くわけじゃないし……と、むき卵の様な眉間に皺を寄せて悩むこと暫く。結局、年相応な、けれど流行のラインが今らしい白地に薄黄緑のストライプが初夏らしい涼やかなワンピースを選択すれば。ギデオンのノックが部屋に響いたのは、以前より少し余裕をもって閉じた釦に、調子の外れた鼻歌を歌いながら髪を結いあげていた時で。普段は揺れる毛先を、綺麗にしまい込んだ後頭部を留めながら、「ごめんなさい、もう少しかかりそうで……」と、相手を部屋に招き入れ、椅子をすすめたのはなにも、「外暑かったですか? どちらにしようか迷ってて」と、テーブルに並べられた白いブリムにレースが付いた可愛らしいボンネットか、赤いリボンが元気に揺れる爽やかなキャノチエかを選ばせるためだけではなく。申し訳なさそうにパタパタと、部屋の奥から冷たい檸檬水のグラスを差し出すと、レースの手袋をつけた手から、小さな金属片もふたつ、はにかみながら座る相手に手渡して。 )

……これ、忘れちゃう前に渡したくて。
此処の鍵と、こっちは私の部屋の合鍵です。ここって大抵誰かしらいるし、もうあとちょっとで必要なくなっちゃいますけど。……ふふ、誰かに渡してみたかったの。




838: ギデオン・ノース [×]
2024-11-02 20:23:19




……ああ、そうか。おまえのほうのは、まだ預かってなかったな。

(すっきりと澄んだ冷水に、乾いた喉をありがたく潤していた矢先。ちゃり、と掌に受け取ったそれを、最初は虚を突かれたように、しかしすぐにもしみじみと嬉しそうに確かめて、やがて懐に仕舞い込む。そうして再び相手を見ながら、気障な格好で椅子にもたれ、如何にも意味ありげな声を。──よくもまあ、“もう”預けてある己のそれは、当時の迂闊な生活事情で相手に頼み込んだのだろうに。
とはいえ。きっとあの頃から既に、自分たちは親密さを少しずつ高めつつあった。そして四カ月経った今、実際関係が変わったからこそ。“相手の部屋の合鍵を、お互い大事に持っている”──そんな密かな状況を、例え刹那のものであろうと、共に心から楽しめるはずだ。
椅子を引いて立ち上がり、ふとそのついでと言わんばかりに、相手の片手を軽く捉える。そうして優雅に吊り上げたのは──どうやら、ターンのおねだりらしい。己もカジュアルなジャケットでめかし込んできたのだが、うら若い恋人の清廉瀟洒な装いに、どうもやはり、男心を随分と擽られていたようだ。
「よく見せてくれ、」なんて、本人は今さら面ばかり取り澄まし、おくびにも出さぬつもりが。その薄青い目ときたら、興味津々に揺れ動き、鍵に向けていたそれより余程、相手を真剣に眺め倒して。はてはふと横を向き、先程相手が示していたふたつの帽子を見比べると。──この頃季節柄見なくなった、いつぞやの贈り物。あれに似たよく似た色のリボンに、無意識に目を吸われれば。気取った顔つきでそれを手に取り、相手の頭にそっと被せ。引いて眺めて、ひとつ頷き、満足そうに唸ってみせて。)

……やっぱりな、よく似合ってる。
今日必要な例の書類は、俺がもう一度見ておくから……あとの準備も、まだゆっくりするといい。





839: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2024-11-06 17:31:25




──……ありがとう、ございます。
そうなの、"赤"は似合うの。

 ( まったく、なんて瞳で人を見つめてくれるのだろう。こちらのことが愛おしくて、大切で堪らない。そんな青い瞳に見つめられると、未だ慣れない心臓が可哀想にのたうち回って。何百回、何千回と練習して身体に染み付いたターンの動きでさえ、沸騰する血液とともにふつふつと蒸発して失せてしまう。それでも、相手の要望通りにもふわふわと、なんとかその場で回ってみせれば。ギデオンのシャツの襟を整えながら、意味深に呟いてみせる癖をして、キャノチエから覗く顔はよっぽど赤く。ぱちりと思わず視線があえば、嬉しそうにはにかんで見せるだろう。
そうして、相手の好意に「だめ、だめ!」と慌ててその腕に縋り付いたかと思うと。「私にも出来ることはさせてって約束したじゃないですか」と膨れながら、相手が手にした書類を覗き込み。立地や部屋数、築年数など出発に前に再度物件のおさらいを。「えっと、この平屋はリビングがサンルームになってるんですね── )

──素敵!!

 ( と、相手の選んだ物件を前に瞳を輝かせたのは何度目か。未だひとつ目の物件だと言うのに、まずは見えてきた瀟洒な外観に声を上げ。前庭の植物に微笑み、重厚な玄関扉に溜息をつくと、今度はそれを開け放った瞬間に飛びこんできた内装に握った拳をぱたぱたと振り──何も、愛しい恋人と住むと思えば、全てが素敵に見えるというだけでは無い。風邪で寝込んでいた数日間、ギデオンにより行われていた厳しい審査の基準など知る由もないが、本当にこの物件が何処を見ても文句の付け所なく素晴らしいのだ。とはいえ脳内は意外と冷静に、確かここは今日見る中でも、一番家賃が高いところだっけ……と、ギルドから貰えるビビの月の給料からは半分でも限界ギリギリ(なんなら更にそこから安くない共益費や、保険料、税金、管理費、その他諸々が追加でかかることをビビはまだ知らない)否、若干オーバーな数字を思い出せば。──此処はあくまで参考に、あとの物件を見る基準にしよう、などと一人勝手に納得しながら、ギデオンの方を振り返って。 )

私ばっかりはしゃいじゃってごめんなさい、ギデオンさんはどこか気になるところありますか?





840: ギデオン・ノース [×]
2024-11-13 02:19:12




そうだな……お互いに、仕事の都合でよく家を空けるだろう?

(「だからやっぱり、妖精除けや敷地回りの防犯陣が、どのくらい管理されてるかどうかだな。俺が朝帰りをする日でも、お前が安心して眠れるような家じゃないと……」。
相手の肩を抱きながら当然のように返した声は、相も変わらず過保護な内容……そうには違いないのだが。しかしギデオンの声も顔も、まるでそれに釣り合わないほど、ゆったりと寛いでいた。実のところ、今この場でいちばんまともに内見に臨んでいるのは、最も若いヴィヴィアンだろう。──遥か歳上のこちらときたら、“相手と家を探して回る”という穏やかなこのひとときに、癒されまくるばかりなのだ。
そんな己の腑抜けぶりを、離れた位置から堪えきれずに笑い続ける者がいた。わざとらしいため息をついてそちらを振り返ってみれば、カウンターキッチンに半ば突っ伏しかけているのは、此度の内見の案内人。不動産屋の営業であり、ギデオンの古馴染みでもある、元冒険者のフェニングである。「──いやあ、っくく、仕事中に申し訳ない。ああ、でもなあ、ギデオンおまえ、本当に随分変わっちまったもんだな……」と。こちらもまた言いぐさに似合わず、酷くしみじみと嬉しそうな声を出すものだから。突然言われたこちらときたら、ヴィヴィアンの顔を見て片眉を軽く上げ、(そうか?)なんてとぼけてみせるが、それがまた随分と、フェニングのツボに入ったらしい。……のちほど、ふとしたタイミングでひとりになったヴィヴィアンに、奴はこっそり囁いていたようだ。──なあ、ビビちゃん、あの堅物を骨抜きにしてやってくれてありがとうな。信じられないかもしれないが、あいつはここ十年ほど、本当ににこりともできなくなっていたんだよ。今のあいつがあんな風になったのは、きっと君のお陰だろうな。──あの馬鹿を、よろしく頼むぜ。
さて、そんな一幕など露知らぬギデオンは、しかしいよいよ真剣に、物件の下調べを考えこむ段に入った。二週間前に同棲を打診し、そこからさらに絞りをかけて、今日見に行くのが全部で三件。そのうちのいったいどれを、はたして彼女が気に入るか、そこのところが問題なのだが。己のヴィヴィアンときたら、どの家にも最大の良さをたちどころに見出して、そのどれにも胸を躍らせてくれるのだ。これではむしろ、こちらが再三迷うくらいだ……と悩んでいた、まさにそのタイミングのこと。
不意に外から戻ってきたフェニングが、「もうひとつ空きが出た。見てみるか?」と言いだした。病み上がりのヴィヴィアンを気遣って駆り出している馬車で、ほんの数分の場所だという。これ以上選択肢を増やすのもどうかと思ったが、見て減るものでもないだろうしと、そこに行ってみることに決めた。ヴィヴィアンを先に馬車へと乗り込ませ、己もあとから座席に座る。フェニングのほうはといえば、外の御者台に座ることにしたらしい──奴なりの気遣いだろう。大人しくこの数分を活用してやろう、とばかりに。「疲れてないか」とまずは相手を労わってから、ごく軽く揺れる馬車のなか、隣の合相手の目元にかかった髪を、優しい手つきで除けてやり。)

──……なあ、どうだった。
どれもいい家ばかりだが……そうだな、決め手が同じくらいの印象だ。
おまえのほうで、もっとこんな家があればいいのに……なんて考えは、湧いてきてるか?





841: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2024-11-17 00:21:45




……! はい……いいえ?

 ( そろそろ次の物件へと移ろうかといった空気の中、一人そっと寄ってきたフェニングのお礼に、思わずふふふと肩をすくめる。怪訝な顔をした相手に──"そのことで" 私、何人の方からお礼をいただいたか分かりませんわ。と囁き返せば。思わず気恥しそうな顔をするくらいには大人で、しかしこうして密かにお礼を伝えずにはいられないほど、ギデオンのことが大切で堪らない、そんな彼らこそが、ギリギリだったギデオンをなんとか踏みとどまらせ、こうしてヴィヴィアンの元へと辿り着かせてくれた様に、この人望溢れる恋人をこれからは自分も大切に支える一人となりたい。先程、どんな家が良いかと問われ、相も変わらず過保護な返答をしてきた相手に、「私だけじゃなくて、ギデオンさんもですよ」と、その時は何気なく答えてしまったが。此方もまた相手の健やかな生活を守りたい、という想いは一途に同じで。 )

もっと、だなんて……どれも、素敵で困っちゃうくらいなのに……!
……そうですね、でも、私もギデオンさんが安心して過ごせるところなら嬉しいです。

 ( 久しぶりの外出に、少しはしゃぎすぎただろうか。優しい指先にそっと首を横に振るも、その眼差しが少し眠そうに凪いでいるのを相手は見逃さないだろう。ギデオンが何かを言う前に、「折角だから、あと一軒だけ」と先回りして甘えながら、こてりと分厚い肩に凭れれば。サスペンションの効いた馬車がラメット通りに着く頃には、いつの間にか少し微睡んでいたようだった。 )

──すご、い、明るい……!

 ( そうして、ギデオンのエスコートで馬車を降りた寝ぼけ眼は、その光景を前にして一瞬にしてキラキラと見開かれた。時刻は午後六時を少し回った夕方の頃。馬車を降りた時点では、豪邸の影になっていて気づかなかったが──「これ、全部一枚のガラスなんですか?」と、思わず駆け寄った窓ガラスから差し込む夕焼けのなんと美しいこと。未だ明かりもつけていないのに、まるで屋外のように明るい室内に「そっか、運河があるから……」と勝手に納得したヴィヴィアンに、「流石だな」と、補足してくれたのはフェニングだ。主にこのトランフォードで、勝手に屋内に入り込み、我が物顔で悪さをする悪性妖精の殆どが、窓の隙間から侵入してくると言われている。故に、トランフォード建築の殆ど全ての窓は非常に小さく、妖精が嫌う金属製の堅牢な窓枠に囲まれるか、鉱物を練り込んで色ガラスがはめられるか。街の中心部にある教会などの、巨大なステンドグラスの輝きもそれはそれで息を飲むほど美しいのだが、この部屋の自然な明るさといったらどうだろう。南側以外の窓はごく必要最低限に絞られているのに対して、水棲の妖精が縄張りを張る運河に面した南側だけは天井まである大きな窓が、外の光を燦々と受けて輝いている。この水棲の妖精の縄張り意識の強さと来たら、アーヴァンク同様ほかの魔物をその水場から蹴散らす上に、アーヴァンクと違って人間の営みには一切興味が無く、多少水源を汚そうが全く気にしないどころか、人間の手が加わった水源の方を好んで生息する──恐らく"水"そのものより、その水が流れるエネルギー、または膨大な水の質量が持つ静止エネルギーを養分としているのでは無いか、というギルバート・パチオの最新論文の内容は、各自気になるものが勝手に読んでくれれば良いのだが──要は運河と非常に相性の良い妖精が、他の悪性妖精からこの家を守ってくれているからこそできる芸当らしい。太陽光はギデオンを脅かす闇の魔素も溜まり辛くしてくれる。これまでの家もどれもこれ以上なく素敵だったのだが、既にポヤポヤと明らかに嬉しそうに目を輝かせながら、ギデオンの元に戻ってくれば。するりと慣れた動きで、再度エスコートの腕に掌をかけて。 )

夕焼けが反射してとっても綺麗よ、ギデオンさんも見て……?
でも、こんなに窓が大きくて冬は寒かったりしないかしら、





842: ギデオン・ノース [×]
2024-11-20 01:52:55




そこのところは大丈夫だろう。
ほら、見てみろ……ペアガラスだ。

(相手の心配そうな声に、しかしこちらが返したのは、その歩み同様にゆったりと落ちついた声。何も遠目で見抜くほど建築に聡いわけじゃない。横にいるフェニングの如何にも誇らしげな顔を見て、軽く見当がついたのだ。そのまま相手を伴って、今一度リビングルームの大窓へ歩み寄る。そしてギデオンの武骨な指が、ふと指し示した窓枠の辺り。なるほどよくよく見てみるに、その分厚さにもかかわらず透明度の高いガラスは、贅沢な複層構造で組み立てられているようだった。しかもその内側、サッシの細い部分には、刻印式の魔法陣が精密に彫り込まれている。魔法の素養のあるヴィヴィアンなら、細い筋を伝う何かが煌めいて視えるだろうか。己はそれが読めずとも、そういった建築様式があるということだけは知識として知っている。「魔素循環式か?」と、背後のフェニングを振り返らぬまま尋ねれば。「はいはい、そうと、ご名答」と、呆れたようなため息が靴音と共に近づいてきた。
──まったく、素晴らしい窓だろう? 夏の遮熱に関してはまあまあといったところだがね、冬の寒さに関しては、やっぱりこいつがピカイチさ。おまえが言ったそのとおり、この内部の空間に溜まった魔素がしっかり防いでくれる仕組みだ。え? こんな素晴らしい匠の業は、いったいだれのものかって? かのサンソヴィーノ大先生さ! そうとも、この一帯の家々の窓は、ラメット通りにゆかりのある御大が手がけていてね。ただあの方は齢九十……いざというときの修繕なんかが気がかり、誰もがそう思うとも。だけどそいつは心配ご無用! 二代目三代目の後継がばっちり技術を継いでいて、サリーチェにある工房からすぐに駆けつけることになってる。更になんとうち経由で、専用保険もしっかり完備。どうだ、これなら安心だろう?
──しかし、はてさて。そんな稀少な物件を、何故こうも一番乗りで案内してくれるのか、そこは是非とも気になるところだ。その辺りに水を向ければ、フェニングは少しばかりばつが悪そうに頬を掻いた。……いやあ、それがねえ。この家に住んでいたのは、地方の名家から上京してきた若いご夫婦だったんだよ。この家を借りてくれていたのは、ほんの数週間だったかな。それがほら、つい先月にさ、王都中央病院の病院ジャック事件、なんてのがあっただろ? ここのすぐ近くにあるのは、あくまでその分院なんだが……地方でずっと暮らしてるじい様ばあ様にゃ、その違いなんざわからんもんでね。やっぱり王都は危険な街だ、可愛い孫娘を住まわせられん、なんて大騒ぎしたらしく。結局そのご夫婦は、実家に無理やり呼び戻されることになったんだ。そんな可哀想な事情じゃ、違約金取るのも忍びなくてさ。幾ら名家出身とはいえ、これから家庭を作るって時に……ねえ……。だからこう、俺がちょっと、いろいろ捏ね繰り回してな、どうにか帰してやったんだ。だけど今度は、大家との兼ね合いがあるだろ。その辺りで会社のお上が、ちょっとまあ、その、だいぶ圧強めでね……。
──なるほど、話が読めた。要はこのフェニング、ギデオンの急な依頼に二つ返事で乗ってきたのは、自分の計上数字が大ピンチだったかららしい。まさに今いるこの家の借り手が急にいなくなったことで、次に宛がうお客探しに血眼になっていたのだ。そんな奴から見たギデオンたちは、ガルムの瓶を背負ったレモラが泳いできたようなものだろう。おそらく、退去後の清掃が終わり、契約関係の整理も一段落ついたのが、つい先ほどのことなのだ。
「ほーお?」とギデオンが眉を上げれば、旧知の男はなんとも情けない顔で、謝罪やら言い訳やらを必死に並べたてはじめたが。それを笑って追い払い、しばらくふたりきりにしてもらうことにした。奴の性格は知っている、幾ら優秀な営業だろうと、強引な押し売りはすまい。それに、ギデオンたちがどの家を選んでもプラスになるのには違いないから、どれも同じ熱心さで紹介してくれていたはずだ。相手と可笑しそうな目を交わし、軽く肩をすくめると。オレンジの光に満ちた明かりをゆっくり歩きまわりながら、一階の広いリビング、その真っ白な漆喰の壁、良く磨かれたクルミの床に、手前の収納たっぷりなカウンターキッチンと、あちこちをよくよく眺め。ふとその視線を相手に戻すと、また静かに歩み寄っては、その肩にそっと手を置いて。)

……まあ、訳あり物件、ってわけだが。家自そのものに問題はないし、奴がああいう事情なんだ、契約の条件は多少融通してくれるだろう。
広さは充分、間取りも良し……問題があるとしたら、寝室が上にあることくらいか。
……階段は、まだ危ないよな。





843: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2024-11-22 21:41:11




 ( 到着時点で既に橙色に燃え上がっていた空は、次第に群青色に傾いて、窓から見える対岸にはポツポツと小さな、しかし暖かな光が輝き始める。ギデオンの言う通り、部屋数や間取りは当初話し合った条件を充分に満たして、素晴らしいリビングだけでなく、そちらを見渡せる開放的なキッチンや水周りも、動線、設備ともに洗練されていてとても使いやすそうだ。物件の"ワケ"にしたって、とうのヴィヴィアンらにとっては全く問題のない事情どころか、先程の話や今日一日の仕事ぶりから察せられるフェニングの懐深さに、すっかり心が傾いてしまった……と言ったら、あまりにも単純だと笑われてしまうだろうか。なんて少し感傷的に下唇を噛んだのは、先程の2人のやり取りに当てられてしまったからか。訳知り顔で片眉をあげるギデオンも、バツが悪そうに肩を竦める古い仲間を、決して責めてたてることはせず、向こうもそれを分かっていて個人的な事情を話したに違いない。それ以前から、先程1軒目でフェニングがヴィヴィアンにだけこっそりと見せてくれた表情を思えば、自分の成績のことだけでなく、彼が本気でギデオンのことを大切に思っていることは明らかで、思わず──いいなぁ……と。不動産屋の方は引退しても尚、信頼しあっているらしい冒険者の男同士に向けた憧憬の視線を、ギデオンはどう捉えたのだろう。一旦古馴染みを遠ざけて、ヴィヴィアンのペースに合わせて部屋を回ってくれた恋人の一瞬の思案顔に何事かと思えば。しかし──まったく、これ以上なく過保護な心配に、ふっと身体の力が抜けてしまって。 )

もう……! 
ずっとこの調子で見張られてたら、私、歩き方も忘れちゃいますよ……!!

 ( そうして、しっかりとした手摺が手頃な高さに、しかも両サイドについた堅牢な階段を2、3軽快に登って見せれば。自分より低くなった相手の額に、思わず唇を寄せようとして。フェニングの存在を既のところで思い出すと、伸ばした掌で愛しい生え際をするりと梳いて流すに留める。「大丈夫、これで転ぶ方が難しいくらいだわ」と、仕方の無い恋人に目を細め、それに──と、「ギデオンさんに甘える口実ができそうで嬉しい」なんて、上半身を屈めて甘く可愛こぶって囁けば。あげた顔に浮かぶ笑顔も悪戯っぽく、そのままぴょいとギデオンの方へと飛び降りて。 )

──……それは流石に冗談ですけど。
ギルドからも近いですし、それにやっぱりこの窓……私、ここが気に入りました!
家賃とかも聞いてみなくちゃだけど、ギデオンさんはいかがですか?





844: ギデオン・ノース [×]
2024-11-23 22:22:21




っくく、随分気が早いな……そう焦らずとも、この家は逃げやしないさ。

(うら若い恋人の愛らしい説得に、さしもの堅物心配性も、その目元をふわりと緩め。相手の腰を抱き寄せながら、無邪気な言葉に喉を鳴らしたかと思えば、愉快そうに苦笑さえする。──とはいえ、そんな風に笑ってみせるギデオンだって、ひと目見た瞬間からこの家を気に入っていることには変わりない。今日一日見て回った他の三軒も良かったが……ここは初めて来たときから、不思議と心が寛ぐのだ。
それは相手と連れ添いながら、広い浴室と立派な設備をよくよく確かめてみたり、勝手口から庭に出てテラスの具合を眺めたりしても、まったく変わりはしなかった。寧ろ己のヴィヴィアンが、家のあちこちを生き生きと歩き回るたび、まだそこにない家具や飾りが目に浮かんでくるようで。……自分の本来の性格上、何度もごく慎重に、現実的に考え直そうとしてみてもいたのだが。しかし冷静になればなるほど、寧ろますますこの家を、ここで思い描ける暮らしを忘れ難くなるようで。
──その奇妙な感覚は、二階にある寝室にふたりで足を踏み入れたとき、いよいよ決定的になった。今はまだ何も置かれていない、がらんどうのベッドルーム……辺りは既に夏の夕闇で薄暗く、部屋がなまじだだっ広い間取りなばかりに、普通ならともすればもの寂しく見えたろう。なのになぜか、その空間を見渡した途端、ギデオンの青い瞳には、この部屋がとても眩く見えた。──ここに大きなベッドを置いて、朝は彼女の横で目覚めて。一日の終わりには、その日あった出来事を相手と喋りあいながら、共に温かな眠りに落ちる。そんなささやかな生活、心の安らぐ人生を、自分はここでヴィヴィアンとずっと紡いでいくのだと。そんな奇妙な確信に、生まれて初めて心を委ね。)

…………。なあ、ヴィヴィアン。
一日で家を決めるなんて、突拍子もない話だろうが……俺ももう、ここ以外が考えられなくなってるところだ。

(床板を軽く軋ませながら、部屋の奥へと歩いていき。今は青みがかって見える真っ白な出窓から、南の空に瞬いている一番星を眺めれば。次に振り向いたそのときには、そばにいる相手の頬にそっと己の掌を添え、そのエメラルドを優しく見つめた。そうして額を触れ合わせ、甘えるように唸るのは……どうやら四十路の男なりの、恋人への相手へのおねだりらしい。今は知人の男の目を盗んでいるのを良いことに、鼻先さえすりつけながら、ぐるぐると喉を鳴らして。)

予備審査は通ってるし、出せる書類はフェニングに渡してるから……後は契約書を取り交わすのと、本審査だけで済む。共益費の交渉は、俺に任せてくれればいい。
それで無事に決まったら……もうすぐにでも、家具を探しに行かないか……





845: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2024-11-25 02:25:00




──……いえ、私たちったら、おかしいですね、ふたりとも。
私も、同じ気持ちです。むしろそれだって待ちきれないくらい……!

 ( これまで訪れた3軒だって、どれもこれ以上なく素晴らしかったにも関わらず。この家に足を踏み入れた途端、一つ一つの部屋を見てまわるたび、ここにはテーブルを、あそこにはドレッサーを置いて……と、まるで未来で見てきたかのように、これから訪れるだろう生活の光景が見えたのが自分だけでは無かったと知り。すり、と触れる鼻先に、溢れる幸せをくすりと零せば。目の前には、気持ちの通じあった最愛の相手がいて、これからはずっと一緒に生きていく。そんな向こうしばらくなんの憂いもない幸福に目が眩み、さらりと聞き流してしまった"共益費"というワードが、一悶着を起こすのはまた少しあとのお話。
 「まあ、俺としては有難いよ」と、何を言う前から全てを察したようなフェニングの苦笑に迎えられ。もう時間も遅いから、手続き自体は翌日以降にしよう、と。それからの話の進みも、とびきりぐんと早かった。ふたりの今後を決める本契約の席には、ビビも同席したかったのだが、どうにも体調が優れなかったり、定期検査なりなんだり。結局 事務的なそれは、当初ギデオンが申し出た通り、すっかり相手に任せきりとなってしまえば。やっとそのお願いを口に出来たのは、ギデオンの久々の休日に、兼ねてより約束していた新居用の家具を見に行く前日のことで。サリーチェと比べればずっとこぢんまりとした下宿のソファで、ギデオンの入れてくれたホットミルクをちまちまと舐めながら。相手が夕食の皿を洗ってくれている(退院以後、何度頼みな込みだめ透かしても頑なにやらせて貰えない)のをいいことに、仕事帰りの上着にブラシをかけて終わると、翌日休みの恋人に近づき、そっと背中に抱きついて。 )

ねーえ、ギデオンさん。
もしお荷物じゃなかったらですけど、明日おうちの契約の書類、持ってきてくださいませんか?
それか用事の後、ギデオンさんのお家に寄るとか。
ふたりのことですもん、ちゃんと私も見たいです。




846: ギデオン・ノース [×]
2024-11-27 02:33:22




(皿の水気を切りながら、「うん?」だなんて肩越しに軽くとぼけるも。近頃すっかり板についたヴィヴィアンの甘えぶり、そのぐっとくる近しさに、つい口元を緩めてしまい。ぴかぴかの陶器類を網棚に仕舞い込み、濡れた両手をタオルで拭えば。背後にある流し台にもたれかった格好で、ようやく相手に向き直る。こちらを見上げる無垢な恋人……そのまろやかな額をそっと撫で上げる男の手つきの、如何にも愛おしそうなこと。)

ああ、もちろんいいとも。そう嵩張るもんじゃないし……だが、そうだな。
他にも多少用があるから、ここに戻ってくる前に、一瞬だけ俺の家に寄り道させてくれ。

(「ああ、別に大したことじゃない。引っ越しまでの数日だけ私物を置かせてほしいから、そいつを回収したいんだ」と。意味ありげな表情をわざとらしく気取ったものの、たまらずふっと破願してから、きちんと注釈も言い添えた。──こまごました移動の手間を省きたいんだ。そうしたら、それだけおまえといる時間が長くなるはずだろう……?
こんな甘い台詞を吐けるようになったくらいだ、時の流れとは実に早いものである。実際、あの一軒家を内見したあと、申し込みやら審査やら契約やら入金やら……入居にあたって必要な諸々の手続きは、ギデオンが全て怒涛の勢いで果たしてしまった。となると次は、いよいよ夢の引っ越しだ。それぞれの古い住居をしっかりと引き払いつつ、同時に新居の環境も整えていかねばならない。どんな豪邸であろうとも、まずは最低限、食事と寝起きをするための家具や道具が必要だろう。だからまず、キングトンの東にあるあの街に出掛けよう──と。懐かしの市街馬車に再び並んで乗り込んだのが、相手の下宿でいちゃついた翌日のことである。)


おお、これはまた……
随分良いタイミングだったな。

(──あくる朝。爽やかな初夏の風が吹き渡る空の下、駅に降り立ったギデオンは、辺りの見違えた様子を前に感嘆の声を上げた。無理もない──このキングストン職人街は、つい五ヵ月前にも来たから未だ記憶に新しい。しかし、ヴィヴィアンと共に装備探しをしたあの頃は、もっと下町風情溢れるセピア色をしていたはずだ。
それが今やどうだろう。『ペンテコステ・フェア!』なる横断幕を派手に掲げた通りの向こうは、眩しい陽光を浴びて煌めく、浮かれたお祭りムードであった。どこを見ても人、人、人、そして家具に道具に発明品。そういえば毎年この時期、ここら一帯の職人たちは、聖霊降臨日が近いことにかこつけて大売り出しにかかるのだ。遡ること数十年前、今日のかれらと変わらぬ商魂逞しい職人が、“神は細部に宿る”という匠の世界の信条と、ロウェバ教の説く“聖霊の働き”をものの見事に結び付け、企画を打ち出してみたところ大ヒットしたんだとか。兎にも角にも、要はこのフェアで買った家具にはご加護がついてるなんていう、聖燭祭商戦や復活祭商戦とそう変わらないアレが掲げられているらしく。とはいえまさにそれらと同じで、客にしろ職人にしろ、何かの折に良い売買がしたい、という点で一致するのに変わりなく。元からお祭り騒ぎが好きなトランフォード人たちだ、ペンテコステ本番までの前夜祭と言わんばかりに盛り上がっているわけである。
──ギデオンとヴィヴィアンが家具探しにやって来たのは、実は全く偶然で、そういえばそんなのがやっていたな、という感じなのだが……しかしこれに乗じないなどという手はないだろう。早速辺りのバザールへ繰り出していくその前に、まずは間近なジューススタンドにその足を向けてみる。……そうやらそれそのものが職人と一体化したひとつの発明品らしく、あちこちの魔導具を忙しなく動かしている八面六臂の老人にセールストークをかまされながら、しかし実に美味しそうな果実水を受け取れば。祭りの熱気に渇く喉をのんびりと潤しつつ、先程通りの入り口で貰った会場案内の紙面を広げて。)

一日じゅう見て回れそうだが、この雰囲気にあてあられて疲れてしまうとことだ。
まずは用のあるやつから見に行こう……寝具の店は、この突き当りか。





847: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2024-12-05 00:40:18




──……! はい!!
いまの……今のままで、置くスペース足りますか!?
床下もあるんですよ実は……、

 ( 向こうが慣れてきたそのように、ビビもまた相手から向けられる熱量にやっと慣れてきた今日この頃。悪い意味では決してなく、寧ろ相手の好意を疑わず、全力で返せることが心底幸せで仕方がない。そんな満面の笑顔で、まったくどれ程の大荷物を想像しているのか、見る方がつられるほど上機嫌に、パタパタと部屋の片付けに向き直ると。
翌日、もとより紳士な年上の相手である。催促される前から忘れていた訳ではなかろうが、ペンテコステフェアに湧く賑やかな通りを、本格的に歩き出すその寸前。周囲を見渡そうとした恋人の数歩に付き合わず、何事かと振り返るだろうギデオンにぷくりと頬を膨らませると、片手を差し出し、いつかは誤魔化されたエスコートを強請れるくらいには、互いに気持ちを通じ合わせていた。 )

わあ……!
とってもいい香り……!!

 ( 逞しい腕に引かれ重厚な木造の扉を潜ると、そこには色とりどりの織物が、広い壁一面に敷き詰められた色鮮やかな空間が広がっていた。出入口の正面、素晴らしい作りのカウンターの脇には、後入れの細工などの客の要望にその場で答えられるようにだろうか。無骨な道具とおが屑の舞う小さな作業スペースが設けられ、爽やかな木の香りが心地よく鼻腔を満たしてくれる。カウンターの脇から向こうを覗けば、外からは分からなかったが、奥は半地下のような作りで非常に広く、成程、見るだけでは分からないマットレスの寝心地を試せる空間になっているらしい。カウンターに広げられた、ベッド自体の装飾や、無数にわたるヘッドボードのカタログを見るに、基本的には顧客や部屋に合わせたオーダーを聞いてくれる店のようだが、一部既に組み立てられた廉価品も取り扱っているらしく。店の端に置かれた"たっぷり収納付き"やら、"脚は取り外し可能"などのポップが貼られたベッド群に目をやれば、思わずくすりと笑ってしまったのは──"魔獣の爪でも傷つかない"だなんて、一般家庭には到底必要ないであろう売り文句が面白かったからで。次第に、二人のドアベルの響き聞きつけたらしい恰幅の良い女将さんは、エプロンの木屑を叩きながら出てくると、「いらっしゃいませ、本日はどんなご用事で?」と、座面にクッションが張られている訳でもないのに座りやすい、これまた素晴らしい椅子に二人を通してくれるだろう。 )




848: ギデオン・ノース [×]
2024-12-08 10:34:58




(ギデオンとヴィヴィアンが半年ぶりに訪れた、キングストン職人街。ここで働く連中は、鑿・槌・鉋はお手の物……しかし人間相手となると、どうにも不器用なやつらが多い。そんな難儀な人種にとって、店と客の間を取り持つ女将がたの存在は、まさにかけがえのないものだろう。そしてそれは、客にとっても同じこと──良い買い物をしたいときは、その店の女主人と話し込むに限るのだ。
故にギデオンとヴィヴィアンも、ふたり並んで席につくと、向かいに座ったマダム・メーラーに、早速事情を打ち明けた。──今月からの交際で同棲生活を始めるにあたり、寝具を買い替えることにした。ギデオンは五、六時間、ヴィヴィアンは八時間以上眠るのが習慣で、仕事はともに冒険者だ。ただ、先々の暮らしを考え、いずれ別業種に変えることを検討している。そうすると今よりは家に居つくようになるから、日々の睡眠以外でも、暖炉のある寝室でゆっくり寛ぐのに使いたい。予算はおよそこのくらい、搬入先はこの地区で、この日までに誂えられれば……。
四十男と若い娘の、しかもやたらと勢いの良いカップル。そう見て取れたはずであるが、しかし流石はマダム・メーラー。眉ひとつ動かさずにヒアリングを取りまとめると、にこりと笑って席を立った。「セミオーダーがよろしいですわね。それでもまずは念のため、おふたりのお体を測りましょう……ええ、ええ、あちらにある計測用のマットレスにも横たわっていただきますよ。必要な数字が揃えば、お好みにぴったりのものをスムーズに探せますでしょ?」)

……面白いな。まさかここまで測られるとは……

(──さて、それから十五分後。女将の寄越した計測データの紙を手にしたギデオンは、カーテンに仕切られた計測室から戻ってくると、思わずそんな声を漏らした。ギデオンの身長、体重、両腕を広げた幅はもちろん、筋肉のつきかたや重心の移し方まで、眼をかっ開いた真剣な様子の女将に、これでもかというほど確かめられまくったのだ。先に出ていたヴィヴィアンも、おそらくは同じように、しかし男のギデオンよりはもう少し手心を加えて計測されていたのだろう。
ふたりの手元の紙には今、各種の身体データのほかに、この店にあるマットレスやヘッドボードの簡易カタログが載っている。女将が赤丸をつけたのは、「この品番の商品が合うだろうから是非試して」という指示らしい。最初はそのガイドのままに、女将による丁寧な案内を受けていたふたりだが。途中でドアベルの音が増え、お針子たちの出迎えでは対応が間に合わなくなると、とうとうマダム・メーラーもそちらに赴かざるを得ず。しばらくの間、ギデオンたち自身で好きに見て回るようにと頼まれた。どの道頃合いだったろう──案内の様子からして、ギデオンたちがふたりきりでもゆっくり探したいことを薄々察していたはずだ。
半階上のあのブースで聞き取りを行っている女将の声を聞きながら、ようやく相手を振り返り、片眉をぐいと上げると。今はまだほかに客のない、魔法灯で如何にも居心地よく照らされた店内を、相手と腕を絡めながらゆったりと歩いて回る。マットレスの寝心地は幾つか軽く試したから、そろそろベッドフレームのほうも見繕いはじめようか。のんびりと喉を鳴らしながら、各商品に据えられた番号札と案内紙を見比べては、顔を軽く傾けて隣の相手に相談し。)

……寝室を広く見せるなら、低いものがいいんだろうが。ある程度の高さがある方が、普段使いにはいいんだろう。
サイズはどのくらいがいいと思う? ゆったり眠るには、クイーンサイズだと少し手狭に思えてな……





849: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2024-12-11 10:58:16




 ( 快適な生活とは、得てして非常に物入りなものである。ましてや新たな生活準備に対し、ビビとてある程度の出費は勿論想定していたのだが。他でもない恋人の口からさらりと述べられた今回の予算に、内心穏やかでいられなかったこともまた確かな事実で。今をときめく勤続数十年のベテラン剣士と、やっと新人扱いが抜けてきたばかりの若手ヒーラー。その収入に大きな隔たりがあるのは至極当然の道理で、質の良い生活を享受する権利がある相手を、自分の低い生活レベルに付き合わせるのはただの自己満足に過ぎないとも強く思う。その上、ギルド運営の中心に深く食いこんでいる有能な上司が、後輩ヒーラーが出せる予算など大体把握した上で提示していることも頭では理解しているつもりだし、特に身体を休めるベッドは冒険者である二人にとって何より大切な資本になる等々……。要はここは意識して物分り良く振舞ったのだったが──帰ったらもう一度話し合わなくちゃ、と。己の甘さに唇を噛んだ娘とって、更に大きな衝撃が待ち受けているのはまだ一旦別のお話。 )

私も、もう少し大きい方が良いと思います。
その方が帰ってくる時間がバラバラでも、お互いを起こさずに住みますし……

 ( 結局、なんだかんだ浮かれているのは此方も同じ。当たり前のように、ひとつのベッドで寝てくれるらしいギデオンに、えへえへと纏わり着くと。「……でも、二人とも元気な日はくっついて寝てもいいですか……?」と耳打ちした薔薇色の頬や、キラキラと輝くエメラルドのいっそ残酷なレベルで無邪気なこと。これから数ヶ月にわたって、相手を酷く苦しめることなど微塵も分かっていない顔をして、強請るようにこてりと首を傾げれば。高さ順に並べられたベッドの群れに駆け寄り、一番高いそれにぴょいと浅く腰掛ける。そうして少し浮いた踵をぷらぷらと、楽しげにギデオンを見上げては、「これくらい高い方が沢山収納できないですか?」と、あの広い住宅に対して妙に所帯染みた思考はご愛嬌。少しでもじっとしていられないのか、すぐさま今度は低いそれに腰掛け、余った脚を億劫そうに折りたためば。ふんふんと丸い頭を小さく揺らして相談を。 )

今はどちらも分厚いマットがあるから低い方が良く見えますけど、薄いマットを敷いたら高い方もそんなに圧迫感なくないですか?
脚が細い……床が見える物ならもっと広く見えるかも……?




850: ギデオン・ノース [×]
2024-12-13 01:01:19




────……、

(“頼れる恋人、ギデオン・ノース”。己よりずっと若い彼女にきっと相応しいそれを、自分はここ数週間、努めて演じ続けたつもりだ。だがしかし、ピュアを煮詰めたような娘のとんでもない発言に、一度びきんとひびが入れば。辺り一面に展示されている素晴らしいベッドフレームを、彼女が熱心に眺める間……ギデオンのほうはと言えば、その場にじっと佇んだまま、大きな片手で険しい顔を覆い隠して。
……ああ、そうだよな。収納のことも、ちゃんと考えておかないと。それで……そうか。ヴィヴィアンのほうも、俺と眠るのが嫌じゃないと。それどころか、むしろたまにはくっついて寝たいと。普段は遠慮してすらいると。そうか。なるほど。抱いてもいいか。
──なんて本音は、しかしまだ言えやしない。なまじ恋仲になったからこそ、下手な冗談に聞こえないせいだ。それに何より聖バジリオの、あの担当医からのお達し……退院してまだ数日の、相手の体が第一だろう。
故に何とも歯痒そうに、一度眉間の深い皴をぎりぎりとより極めたものの。ようやく顔を上げたかと思えば、その面は今度はス──ンと、酷く冷静に凪いでいた。やがてこの先何年かギデオンを眺めるうちに、彼女も気づきはじめるだろうか。……この慎重居士の魔剣使いが、もはや盛大に開き直ると決めたときの面である。)

いや、マットもフレームも、しっかりしたものを選んでおくほうがいい。
二階に運び上げるのに一苦労だろう? だから──最低、五年は保たせてみせないと。

(まったく、何が“保たせる”だ。その意味深な物言いの訳を自分からは明かさずに、相手の手を取り立ち上がらせて、別のコーナーに連れていく。どうやらそこは、彼女が今までそれとなく避けてくれていたであろう、この店の最高級品が並んでいる一角らしく。仮に相手に見上げられても、そこにある男の横顔は、まったく揺るぎやしないままで。
ヘッドボードにさりげない引き出しがついているものをふと見つければ、「これなんかは便利そうだな」と、はたまた何を常備するつもりなのやら。ともかくそのベッドの、どっしりとした脚の太さをいたく気に入ってしまった様子で。先にベッドに深く腰掛け、その据わり心地に(ほう)という顔で見下ろすと。ふと相手に顔を戻し、緩く腕を広げては、当たり前のように誘って。)

これに合わせるマットレスは、やっぱり……ほら。この店独自の、『メーラースプリング』ってのが、いちばんフィットするらしい。
……ほら、お前も、こっちに来てみろ。





851: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2024-12-18 22:25:54




……いえ、その、5年後も一緒にいてくださるんだなって思ったら嬉しくて!

 ( それは生きてきた年月の違いからくる、時間感覚の違いに過ぎなかったのかもしれない。しかし、年若いヴィヴィアンにとっては決して短い時間ではない、これまで相棒として過ごしてきたよりも、ずっと長い歳月を当たり前のように信じてくれる恋人に、思わずきゅんと言葉を詰まらせれば。熱く火照る耳先をくりくりと面映ゆそうに弄び、潤んだエメラルドを震わせて。そうして、嬉しそうに「わあ! 確かに、ふっかふかですね!」と相手の隣に腰掛ければ。上質なスプリングに任せ、上下にぽよぽよ揺れて見せるも、正直、もう内心マットの良し悪しなんてどうでも良かった。ギデオンさんが隣にいてくれるのなら、私ドラゴンの鱗の上で寝たって構わないな──なんて、そんな自己陶酔に浸っているから、“普通に使っていたら”、先程のマットだって十分に5年は使えそうだとか、収納ってそんな小さい引き出しのことじゃなくてだとか、色々と大切なことを見落とすのだ。しまいには、確かに運搬料だってかかるんだし、ギデオンさんが言うならそうなのかもしれないなどと、すっかり上手く乗せられている自覚のないまま、戻ってきたマダムの助言に滑り止めやら、素材やらのオプションを幾つか見繕えば。ベッドの他にもいくつかの家具を含め、あれよあれよという間に、契約書等を纏めた書類を受け取っていたのだった。 )

お……お休みの日は、少しでも長くベッドの上に居なくちゃ……

 ( 結局、支払いの段階でやっと僅かばかりの冷静さを取り戻すも、帰りの馬車の中、本人はいたって真剣な表情で呟く内容がどこまでもずれているのはご愛敬。5年どころか、ベッド本体は一生使えそうな代物に、その視線は何処か遠い宇宙を映しながら、ぐっと両こぶしを握りこむと「ギデオンさん! 帰ったら相談したいことがあるんです!!」と。それは、これから始まる共同生活にあたり、特に経済的な方向性で、一方的に相手のお世話にだけなるつもりはないのだと。改めて伝え直すべく、帰宅後に時間をとってもらった時だった。まずは月々の細かい収支を確認すべく、約束通りに持ってきてもらった賃貸契約書に目を通すと、暫くして「………?」と首を傾げ始め。「あの、ギデオンさん………」と、指し示したのは月々の『家賃』とは別に記載された『共益費』の項目。家を借りる際に名目上の『家賃』とは別に、その他雑費がかかることは、流石の箱入り娘とて、この下宿を借りる際に知っていたが──……否、なまじ中途半端な経験があったからこそ勘違いしていた。ビビの知る『共益費』は家賃の数分にも満たない、あくまで雑費の粋を超えない程度だったが、完全な富裕層を相手にした住宅は訳が違う。警備費、補償費、清掃費……この書類から計算するに名目上家賃同等か、月によってはそれ以上の額に上るそれを正確に認識した途端、あまりの衝撃に目眩を覚え。家賃の半額だってギリギリだというのに──いや、寧ろ引っ越す前に判明して良かった、と。腹を決めたところまでは良かったのだが。その後のあまりに言葉足らずな宣言から生じる誤解に思い至れない程度には、内心かなり動揺しているらしく。入居の数日前になって、あまりの申し訳なさからそれ迄くっついていた上半身を離すと、真っ青な顔を横に振り。 )

──…………ごめんなさい!!
どうしよう、私ギデオンさんと暮らせない……





852: ギデオン・ノース [×]
2024-12-21 01:17:01




────は、

(それはまさに青天の霹靂。一瞬ぴたりと静止した後、愕然とした顔を相手に向けて、狼狽あらわな震え声を。──これが普段のギデオンならば、相手の言わんとすることを冷静に捉えただろう。しかし今はいかんせん、恋人の家に上がって寛いでいた矢先。己に後ろから抱き込まれている部屋着姿のヴィヴィアンがふんふん書類を読むあいだ……顔が見えないのを良いことに、その甘いぬくもりでたっぷりふやけきっていたのだ。
そこにヴィヴィアン本人からの、突然のこの冷や水だ。ギデオンの青い目はあからさまに揺れ動き、その太い両腕は我知らず固く強張った。勝手に狭めることこそしないが──それでも相手を出さぬとばかりに、ぎこちなくもがっちりと、堅牢の構えをとらずにはいられない。ようやく絞り出した声にも、動揺が色濃く乗って。)

……待て、待て待て。
何故、なんだ、何を……いまさら、

(──今更も何も、病み上がりの若い娘に同棲を持ち掛けて、まだほんの二週間。仮に相手が本気で意向を翻したとて、別におかしくはない話なのだが、何せこの男ときたら、春先に死なせかけた娘を今度こそ失うまいと、本気で固く決心している。故にこの二週間、頼れる大人の皮を被って、必死になって口説いてきたのだ。そうしてようやく手に入れた──そう一安心していたというのに。それが水の泡になるのか。彼女を今更諦めることになるのか。嫌だ。それは、絶対に嫌だ。
それを素直に打ち明けるには、しかし何せ臆病すぎた。故に何も言いだせぬまま、長いことただ唇を開いたり閉じたりしていたものの。それでも何かは言わねばと、藁にも縋る思いで青い視線を巡らせて、ふと契約書に目が留まる。先ほど相手に何やら言われ、一応こちらもちらりと見たが、何か取り立てておかしなことが書いてあるわけではなかった。──そう、少なくとも、ギデオン自身の視点では。
ある可能性にふと気がついて、もしや、とそれに手を伸ばす。今一度確かめた家賃と同等の共益費、これはこの文教地区たるサリーチェの家に住むならば、至極当然の数字をしている。そして──わざとではないのだが──ヴィヴィアンと家賃のことを話す時、自分は自ずと、共益費を除いた数字で等分することにしていたはずだ。単純に計算して、ギデオンの支払う額とヴィヴィアンの支払う額は、実に三倍の違いがある。「……まさかとは思うが、」と、すっかりいつもの自分に戻った困惑顔で相手に尋ね。相手がこくりとでも頷けば、契約書を脇に押しやり、かぶりを振りながら反論を。)

金のことなら気にしなくていい。
おまえの考えることはわかるが、手取りが数倍も違うのに、全部をひっくるめた額で折半するわけがないだろ。





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