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31:
ナジャ [×]
ID:09beb1e04 2022-03-07 18:19:39
【 イチイの谷 / 墓地 → 谷端への道中 】
>25 ロヴァル
「……うん。そうよね、ありがとう」
幾分か柔らかくなった彼の表情を見ると、こちらの心を締め付けて止まない悲しみの茨が少しだけ緩む気がする。
決して偽善の押し付けなどではない、心地よい塩梅の前向きな言葉をかけてもらえたことを無駄にしないよう、わずかに頷き”大丈夫、”と心の中で言い聞かせ、もう一度笑って。
「ああ!お爺ちゃんのところに行くのね。狩人さんの足にはとてもついて行けないから足手まといになるかもしれないけれど…、それでも良ければぜひご一緒したいわ」
ビリエルの名を聞いた瞬間にパッと表情を輝かせて、唇の前でぱちんと手を打ち鳴らし。
絵に描いたような好々爺であり人生の大先輩でもある彼に会えば、きっと打ち消しようのない深い哀しみとの向き合い方も分かるはず。そうでなくとも元気を分けてもらえること請合だろう。
ただ心配なのは己の体力が谷の往復分保つかどうか。否そこは気合で何とかしようと決心して、先導するように歩き出した彼を小走りで追いかけ肩を並べて
「狩人の皆さんはイチイの谷に欠かせない存在だなあって心から思うの。こういう時もそうだし、獣人や悪鬼からいつも谷を守ってくれて……。感謝してもしきれないわ」
その感謝の中には、忙しいだろうにただの村人Aである自分のことすら気遣ってくれる彼の人柄に対する暖かい気持ちも含んで。
勿論、狩人衆は戦いの最前線に立つ者であり、同時に谷を守るための最終防衛ラインの番人でもある。命を張ってくれる彼等に、そしてまさに隣にいる彼に対して感謝と同時にふと疑問も湧き
「聞いてもいいかしら。……ロヴァルさんはどうして狩人になってくれたの?」
4年前の大雪の日、手負いの状態で迷い込んできた彼を初めて見た時のことを思い出す。
なぜ怪我が治っても谷に残ってくれたのか?純粋に相手のことをもっと知りたいという興味から、ふと横顔を見上げて。
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