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白む空に燻る紫煙 ---〆/4959


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自分のトピックを作る
4889: ベル・ミラー [×]
2025-03-26 11:14:35





( 長い時間を要して漸く相手の呼吸や意識が少しばかり落ち着きを取り戻したのを確認すると、脈拍へと誘っていた手を離す。一度は“セシリア”と落とした名前、それが“今”では無い事に気が付いた相手の振り払う様な動作を苦しげな瞳で見詰めつつ、その後に言い直された、後半こそ続かなかった“被害者”への問いに「…被害者の名前はアンナ。以前私達が行った事のある、あのカフェの店員で間違い無いと思います。」と静かに答えた後「検視官が先に検視を行ってるけど、まだ終わってません。…私は中に戻るけど、エバンズさんは絶対に車から降りないで。…約束して下さい。」ドリンクホルダーに置いていたミネラルウォーターのペットボトルの蓋を外し相手に手渡しながら、酷く真剣な瞳で相手はこの場に留まるべきだと言う事を告げる。それは相手の思いとは真逆であろうとも。拒否の返事を聞く前に運転席の扉を開けると車外へ出。窓ガラスを挟み今一度念を押す様に首を左右に振ってから、コテージへと戻り。___別の警官から被害者の名前は【アンナ・ハミルトン】でカフェの店員である事聞き、矢張りあの時の女性で間違い無いのだと胸には重たい鉛の様な気持ちが落ちた。驚きこそすれど、嫌な顔一つする事無く“セシリア”を演じてくれた彼女の屈託の無い笑顔はもう見られないのだ。__部屋に争った跡は無く、衣服の乱れも無い。腹部を撃たれた事による出血死と思われるが、薬莢が見付からない事から犯人が拾い持ち帰ったのだろう。人を殺しておきながらそれだけの冷静さがあったのだとしたら気味が悪い。犯人に繋がる証拠品も現段階では出て来る事無く、死亡推定時刻も不明。後の詳しい事は検視官から纏めて送られて来るとの事で一度署に戻る事となり。___コテージを出、車に戻ると重たい息を吐き出す。「……署に戻るね。」被害者の事に触れぬまま、それだけを告げてエンジンを掛ける。相手がこの捜査に関わるべきでは無いと言う思いは僅かも薄れてはいなく、寧ろ強まるばかりで )






4890: アルバート・エバンズ [×]
2025-03-27 08:15:16

 






( やはりあのカフェの店員だったのかと表情は暗くなる。“セシリア”として自分の前に立ってくれた心優しい彼女が、何故事件に巻き込まれたのか。車から降りないようにと念を押され、更に釘を刺すように外からも視線を送られると、分かっていると大人しく背凭れに身体を預け直して。中に戻り検視官と話をしたかったのだが、未だ微かに足が震えて居て、今立ち上がってもふらつく可能性があった。少し落ち着いたからと言って、今再び同じ光景を目にしてフラッシュバックを起こさないという確証も無い。脳裏に焼き付いてしまった光景を思い出さないように意識を別の所へ向けつつ、鞄から薬を取り出し安定剤を多めに服用する。痛み止めも1錠。やがて相手が戻ってくると、多くを語らず車のエンジンを掛けた相手に「______分かった事はあるか、」といつも通り報告を求めて。 )







 

4891: ベル・ミラー [×]
2025-03-27 09:36:17





( 此方が意図的に事件の話をしないようにしても、案の定捜査の指揮を執る立場にある相手は検視の報告を求めて来る。無視をする事も出来る筈無く、静かに車を発進しつつたっぷりの間を空けた後「___争った形跡や衣服の乱れも無く、抵抗出来ぬ間に襲われたか、もしくは顔見知りの犯行の可能性もあります。…詳しい事は署に戻り次第、報告書が送られて来るかと、」前を見据えたまま現段階の…アンナの死因の部分だけを省いた説明をして。___署に着き、警部補執務室に入るや否や、後ろ手に扉を閉め開口一番の言葉は「…エバンズさん、この捜査には関わらないで下さい。」だった。扉を背に、デスクに座った相手を真っ直ぐ見据える緑の瞳は真剣そのもので、この事件に関わったら最後、もう“戻って来られない”何かを予感として感じてしまっているからで )






4892: アルバート・エバンズ [×]
2025-03-30 20:26:42

 




( 車内で聞いた相手の報告には違和感があった。検視が始まっているなら、想定される死因について現場レベルで話があるはずだ。しかし相手が報告したのは、抽象的な現場の状況と、想像の範囲を出ない事だけ。外傷の有無だけでも捜査を進める足がかりになるというのに、其れを口にしない相手に違和感を感じつつも、車内で其れを問い詰めなかったのは少なからず自分の中に“聞きたくない”という思いがあり、其れを直ぐに拭い切れる程割り切れて居なかったからだろう。---署に戻り執務室に入るな否や相手から告げられた言葉に視線を向けると「_____此の捜査の指揮官は俺だ。お前に指示される立場じゃない、」とだけ答え、相手の言葉を受け取る素振りも一切なくデスクに腰を下ろして。 )






 

4893: ベル・ミラー [×]
2025-03-30 22:44:38





それはわかってる!__…わかってます。この事件の捜査指揮官がエバンズさんだって事も、部下である私が指示を出すのが間違っている事も、わかってるけど、何も言わない訳にはいかないの。
( 案の定聞く耳持たずの相手に思わず声を荒らげもう一度視線を合わせるべくデスクを挟み目前に移動するも、此処で感情的になっても駄目だと思えば1つの深呼吸で気持ちを調えた後。それでも今回ばかりはと首を横に振り。「…今回の事件、エバンズさんの精神が安定した状態で捜査出来るとは思えません。…事件に長く身を置けば置く程きっと取り返しのつかない事になる。エバンズさん自身が一番わかってるでしょ?」諭す様な、それでいて懇願する様な響きを纏う語調で断言的な言葉を真っ直ぐに告げ。___丁度その時、相手のパソコンに検視官からの検視結果を記したメールが送られて来て。そこにはアンナの身体の外傷の有無や死因などが記されていて )






4894: アルバート・エバンズ [×]
2025-03-31 10:03:15

 





( 今回の事件捜査に長く関わる程、取り返しが付かない事になる_______相手の懸念が間違っているとは思わない、自分でさえ其の危険性は感じているのだから。それでも、今捜査から手を引く決断をした場合、また自分は何も出来なかったという後悔と罪悪感を抱え続けるだろう。「……あの時何も出来なかった事をずっと悔いている。あれ以降、無念な思いを抱える家族や被害者を1人でも減らし、犯人に相応の罰を受けさせる______其れだけが使命だと思ってやって来た。…今我が身可愛さに責務を放棄して逃げたら、俺はまた後悔する。せめて彼女が最期に残した悔いを晴らしてやりたい、」感情的にではなく、自分の思考を整理しながら言葉を紡ぐ。アンナとセシリアを重ね合わせて情が移っている事は否定できないが、彼女と彼女を取り巻く近しい人間の無念を晴らしたいという思いが強かった。---受信したメールは現場を担当した検視官からのもので、アンナの死因や致命傷となった箇所、死亡推定時刻などが纏められていた。腹部を撃たれた事による失血死。貫通した薬莢は見つかっていない。_____目に入る言葉のひとつひとつが過去の記憶と繋がり、再びフラッシュバックが起きそうになるのを一度目元を覆い情報を遮断する事で拒む。自分を落ち着かせるように大きく深呼吸をした後に再び相手と視線を重ねると「…捜査を降りるつもりは無い、」と断言して。 )







 

4895: ベル・ミラー [×]
2025-03-31 13:30:04





( “あの時”__犯人の強行に何故もっと早く気が付く事が出来なかったのか、何故逮捕出来なかったのか、何故大勢の人の命を、妹の命を助ける事が出来なかったのか。__相手が数十年経った今も尚その後悔や罪悪感を抱え続けて居るのは勿論知っていた。悪夢に魘され安定剤を飲み、心身共にボロボロの状態であっても立ち続ける理由もまた。___感情的になる事も無く、気持ちを吐露する事を苦手とする相手が真剣に1つ1つ言葉を紡ぐその顔を真っ直ぐに見詰め、思わず奥歯を噛み締める。“その時出来なかった最善”を、“その時してやりたかった事”を、相手は今回成そうとしているのか。胸の奥が締め付けられる様な苦しさに思わず目を伏せ、それでも今回は降りて欲しいと伝え続けたいのに出来なかった。そうこうしている内に相手は送られて来た事件の詳細を目にしたのだろう、再び重ねられた断言する言葉に「……だったら、」と音を振り絞った後「…無理だけはしないって約束して。調子が悪い時はちゃんと休んで、私に仕事を振って。…エバンズさんの事を大切だって思う人が居る事を、どうか忘れないで。」再び相手を真っ直ぐに見詰め、真剣な色を瞳にも言葉にも乗せながら1つ1つ挙げていき。後半の言葉に僅かの震えが出たのはそれだけ心が揺れたから。「無理だと思ったら、引き摺ってでも病院に連れて行きます。」そうやって最後、少しばかり強い口調で以て締め括って )






4896: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-03 14:23:32

 





( 心優しい彼女が無念の内に其の生涯を閉じたのなら、刑事として最善を尽くし彼女や遺族が望む物を義務がある。かつて自分と過去とに寄り添ってくれたアンナが今回の被害者である以上、尚の事捜査を離れるという選択は出来なかった。助ける事が出来なかった、無念を晴らしてやる事さえ出来なかったあの日の後悔を、二度と繰り返したくは無いのだ。「______分かった、」と相手の言葉に視線を落としたまま小さく頷く。拒否すれば捜査に関わる事までもを反対されると当然理解していて、ある意味自分が捜査を続ける為の返事でもあったのだが。それでも続いた相手の言葉には少しばかり驚いたような色を乗せた瞳で相手を見つめた。自分の事を“大切”だなどと表現する者が居るとは、自分でも思ってもみなかった為意表を突かれたというのが正直なところ。「……分かった、」と、全く同じ言葉を繰り返したものの、相手の気持ちを受け取り、先ほどの上辺だけのものより少しばかり自分の中に落とし込んだ、素直な返事だっただろうか。 )







 

4897: ベル・ミラー [×]
2025-04-03 19:51:17





( 一度目の“分かった”が、今この場を乗り切り捜査を続ける為の上辺だけの返事だと言う事に気が付けない程浅い付き合いでは無い。気持ちの無いその頷きと了承に思わず吐き出しそうになった溜め息が喉の奥で止まったのは、その後直ぐの相手の表情が驚きを纏ったから。一度は飲み込んだ筈の溜め息が漏れた後、顔には仕方の無さそうなほんの僅かの呆れと、それよりも遥かに大きな慈しみの色が滲み「__ちゃんと言葉にして良かった。」と、独り言にも似た声量に続けて「驚いてるようだけど、エバンズさんの事が大切なのはずっと前からだからね。…大切だから、苦しむ姿を見たくないって思うのは普通の事でしょ。」至極穏やかな笑みと共に言葉を重ね。二度目の“分かった”に今度は少なからず空っぽさを感じなかった事に満足そうに頷いて。___執務室の扉がノックされたのは部屋を出て行こうとしたその時だった。入室許可の返事の後に入って来たのは顔馴染みの鑑識官で、茶封筒を相手に手渡すや否や『現場で撮影した写真と、死亡推定時刻の報告です。』と簡単に中身の説明をし再び部屋を出て行き。良いか悪いかこのタイミング、死亡推定時刻はまだしも殺害現場の写真を見なければならないと言う事は、どうしたって遺体の写真も見ると言う事。部屋を出る事は選ばず険しい表情のまま相手の目前から横に移動して )






4898: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-04 02:44:00

 





( 相手が自分の事をいつも気に掛けて居る事は理解していたものの、”大切“だと其れを言葉にされるのは慣れず、曖昧な表情を浮かべつつ小さく頷くに留まり。---ドアがノックされ、入ってきた鑑識官が手にしている茶封筒を見ると表情は硬いものに変わる。中に何が入っているかは聞くまでもない。彼が再び部屋を出ていくと、受け取った茶封筒を手にデスクに腰を下ろし封を開ける。リビングの暖炉の前に倒れている位置関係が分かるよう遠目から撮った写真、そして彼女の顔や身体の傷が分かる写真。倒れたセシリアの姿が、クラークからいつか見せられた写真が、重なるようにフラッシュバックするのを感じて目を閉じた。ゆっくりと息を吐き出し、意識的に呼吸を整えた後に写真を捲ると腹部と胸部に受けた銃痕が目に入り。銃弾を受け、赤黒い血が流れ出すその色が鮮明に思い出され呼吸が上擦る。冷静に捜査に向き合うと決めたのに、たったこれだけ______写真を目にしただけで、心は嫌だと悲鳴を上げる。未だ見なければならない資料は残っている、捜査は降りないと断言した以上支障なく捜査に関われる事を証明しなければならないのに現場の写真は心を深く抉った。 )






 

4899: ベル・ミラー [×]
2025-04-04 13:25:29





( 茶封筒の中から出て来た写真の鮮明度は高く遺体の様々な角度から何枚も何枚も撮られていた。直ぐ隣の相手から吐き出される息は細く震え、“2人の遺体”が重なり記憶の中の過去が蘇った事で心が悲鳴を上げているのが手に取る様にわかるものだから、「…エバンズさん、」たった一言名前を呼んだ後、相手の手の中にある写真を横から静かに取ると角度的に見えない様再び目前に移動しソファへと腰を下ろしつつ「手分けしよう。私は写真を見るから別の資料はお願いします。」捜査を降りるのでは無い相手の望む形で、それでも相手の心に大きく負荷が掛かるものはなるべく此方にと。それが現段階で出来る最もベストな事だと思うからこそで。___【アンナ】の姿は矢張り写真で見たセシリアに余りに似過ぎて居た。瞳の色も髪の色も、何もかも。朗らかに笑ったその女性が今は瞳に光を宿す事無く血に濡れ、その命の炎を消してしまっているのだ。彼女や遺族の無念を晴らす為、そうして相手の心身の状態を考え早急に事件を解決しなければならない。険しい表情で写真を見詰めながら、それと同時に今夜家に戻り眠る相手の悪夢の不安がどうしても首を擡げていて )






4900: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-07 03:31:25

 





( 手分けをする、という提案は相手なりの配慮だろう。自分に負担が掛かり過ぎないようにと、過去の記憶に直結する写真を見なくて済むようにと。相手の言葉には大人しく頷いて、資料に目を通し始める。実際に視覚情報としてアンナの遺体の写真を見るよりも、活字で書かれた報告書を読む方が未だ楽だった。---アンナの死因は、拳銃で撃たれた事による失血死。現時点で犯人に繋がる直接的な証拠は現場には残されておらず、今後コテージの持ち主や周辺の靴跡、タイヤ痕などの解析を進めると。防犯カメラがあるような場所でも無いため、捜査の初動は多少なりとも難航するだろう。「…彼女の勤務先での聞き込みと、コテージの持ち主の聴取から進めていくしかなさそうだな、」資料を読み終えると眼鏡を外し、眉間を解しつつ明日以降の捜査の動きについて思いを巡らせつつ言葉を紡ぎ。明日から捜査に追われる事となる為、帰れるのであれば今日は早めに休んだ方が良いと相手に促すも、自分も相手の部屋に戻る事には些かの抵抗があった。夜眠るのが怖い。相手にも迷惑を掛けるだろう。しかし同時に、ホテルに泊まると言い出せば相手が許さないであろうことも理解していた。「…捜査の間、ホテルを借りる事も出来る。」とだけ伝えて、相手の反応を伺い。 )






 

4901: ベル・ミラー [×]
2025-04-07 13:28:03





( “誰でも良かった”と言う理由なのだとしたら、態々町外れにあるコテージに来て施錠された鍵を壊してまで犯行に及ぶのは考え難い。だとすれば最初からアンナ1人を殺害する事を目的としていたのか。もしくはコテージの持ち主が何らかの理由で犯行に及んだか。__「アンナさんがコテージを訪れた理由を、従業員の誰かでも知ってれば良いけど、」と答えつつ、枚数のある写真を捲るも唐突に捜査中の相手自身の住処の話をされれば視線だけを持ち上げる。己同様に相手も夜中の不安が少なからずあるのだろう。けれどその不安は悪夢を見る、と言うそれに関してだけでは無く、その結果近くで眠る己を起こす迷惑を思ってのものも含まれている事は直ぐにわかった。だからこそ再び視線を手元の写真に落とし「…コテージまで1時間も掛からないし、ホテルをとる程の距離じゃないよ。」相手の言いたい事を確りとわかっていながら、何食わぬ顔で敢えて距離の話を返し。そうやって今度は此方が相手の反応を伺う様にその視線を上げ直し、「もう少ししたら一緒に帰ろう。」最終的にホテルの話は却下だと言う様に“一緒に”を少しばかり強調しつつ。資料諸々を見、明日以降の捜査の話をした後は共に家に帰るべく車を走らせる事として )






4902: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-07 23:10:35

 





( 普段であれば資料を読み込み捜査の進め方を頭の中で組み立てるのだが、その作業がこれ程困難だと感じたのは初めてだっただろうか。直接写真を見ないにせよ、ふとした瞬間に現場で目にした記憶と過去の事件の記憶とが絡まってフラッシュバックしそうになる。目の前の現場を、事件を見なければいけないのに、事あるごとに過去が首を擡げるのだ。其れでも決して降りないと断言した捜査、手を抜く訳にはいかず集中して資料と向き合い気付いた頃には夜も遅い時間になっていて。---確実に心身を擦り減らす事に繋がるであろう今回の捜査。相手の家へと戻る車内で、多く服用していた薬の効果が既に切れるのを感じていた。身体の痛みが強く出て、首筋や背中に汗が滲む。痛みを逃す為に浅くなる呼吸と、ほんの些細なきっかけでフラッシュバックに襲われそうな不安定さを自分でも感じていて意識を今に繋ぎ止めておくことに必死だった。相手の部屋に着くと、ジャケットを脱ぐよりも先に鞄から取り出した鎮痛剤を手にシンクで水を汲む。「_____…っ、」強い痛みに軽く唇を噛む事で耐えつつ、痛みの波が引くのを待ち。 )








 

4903: ベル・ミラー [×]
2025-04-07 23:45:38





( ___執務室では細い糸の上を綱渡り状態、ギリギリの所を保っていた相手だったが道中でその全てが崩れ去った様だった。安定剤も鎮痛剤も既に効果は無くなってしまっているのだろう、繰り返される浅い呼吸の合間に苦しげに漏れる小さな声が聞こえる度、胸が締め付けられた。署から部屋までは然程の距離では無い筈なのに、とんでもなく長く険しい道に思えてしまうのは気持ちばかりが急ぐから。やがて体感にして1時間以上に感じられた運転が終わり、相手と共に漸く部屋に入るのだが着替えるよりも、何をするよりも先に相手がとった行動は痛みから逃れる為、追加の鎮痛剤を胃へと流し込む事だった。その行動と、唇を噛み懸命に痛みに耐える表情に思わず“もういい”と捜査の終了を叫びたくなる気持ちを懸命に押し込める。グッと奥歯を噛み締め静かに相手の横に立ち、背中を擦る表情は苦しげに歪んだ。この手に鎮痛剤と同じだけの力があれば良いのにと何時だって思うのに、何時だって何も取り去る事など出来ないのだ。ただ、隣で背を擦り痛みが、苦しみが、過ぎ去るその時を共に待つしか出来ない事の無力さが、何故だか何時にも増して大きく重く伸し掛る。「……」背を擦る合間、なるべく負荷が掛からぬ様に注意を払いつつ、ゆっくりと相手のジャケットを脱がせるとそれを片手にまた暫し落ち着く時間を取り。どれ程の時間そうしていたか。シンクの前に立ったままでは楽な体勢もとれぬだろうと思えば「…横になれる?」と、ソファかベッドまで行けそうかを決して焦らせる事は無い穏やかな声色を努め問い掛けて )






4904: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-08 01:22:07

 





( 今回の捜査に刑事として関わる事が得策でない事は、当然自分でも理解していた。到底万全とは言えない状態で心身の不調を騙し騙し捜査に当たれば周囲にも無用な迷惑を掛ける事も。此の事件に固執するのは謂わば自分の“エゴ”だ。十数年前に果たせなかった事を、かつて自分を引き戻してくれた_____妹に瓜二つのアンナには、せめて。じっとりと汗ばんだ背中を摩られるも、相手の問いには小さく頷いて。ワイシャツの首元を緩めベッドに横になる。眠るのが怖いという思いはありながら、身体は疲れていて程なくして浅い眠りに落ちていた。---夢は、酷く鮮明だった。あのコテージで真っ赤な血溜まりに立つ自分の前にはアンナの遺体。現実の昼間と同じように現場の状況を確認するために部屋を1つずつ開けていく。奥に進みある部屋の扉を開けると、折り重なるようにして被害者が倒れる幼稚園の一室が広がっていた。声にならない悲鳴と共に飛び起きた身体には痛みが襲う。「……っ、あ゛…はぁ…ッ…!_____違う、っ…」自分に言い聞かせるように紡いだのは、記憶の混同を感じる防ぐための言葉。酷い発作に引き摺り込まれる事を避けたいという思いから、なんとか意識を繋ぎ止めようとするのだが、ベッドの上に身体を起こしたまま徐々に呼吸は浅くなっていき、瞳には暗い翳りが落ち。 )







 

4905: ベル・ミラー [×]
2025-04-08 11:08:44





( 普段より遥かに覚束無い足取りで寝室に向かいベッドに横になった相手の後を追い、尚も背中を擦り続ける事暫く。鎮痛剤の効果が僅かに効き始めて来たのかやがて酷い痛みに耐えていた相手がまるで気を失うかの様にして眠りに落ちたのを見ると、汗で額に張り付く前髪を一度だけ払ってやった後静かに寝室を出て。相手のジャケットを丁寧にハンガーに掛けながら視界が滲んだのは心が揺れているから。唇を噛み締め溢れだしそうな感情を抑え込む様に一つ深呼吸をし、続いて水道水をグラス半分飲み干してからソファに腰掛け鞄の中から事件の資料を取り出し真剣な表情で目を通す。出来る事はたった一つ。今回の事件を一分でも、一秒でも早く解決する事だ。___細かい文字を何度も何度も読み、遺体の写真を隅々まで凝視し、この静まり返った部屋の中で壁に掛かる時計の秒針の音も認識出来ない程没頭していた脳に唯一届くもの。良いか悪いかそれは相手の声にならない悲鳴だった。弾かれた様に資料から顔を上げ寝室の扉を開けると暗い部屋の中、ベッドの上で座り込み狂った呼吸を懸命に押さえ付け様としている相手の姿があり。「っ、!」直ぐ様傍に駆け寄り枕元の間接照明を点ければ、その勢いのままベッドに上がり相手の頬に両手を添え顔を持ち上げて。真正面から見る褪せた碧眼は暗く翳り、彷徨いを見せている。「…エバンズさん、」と呼び掛け強引に視線を合わせようとしながら、親指の腹を頬に滑らせ「…此方見て、私がわかる…?」意識が今何処にあるのかを確かめるべくその顔を覗き込んで )






4906: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-08 21:38:09

 





( 苦しさを抱えながら懸命に呼吸を繰り返す中で相手と視線が重なると、妹の瞳が記憶の奥で揺れた気がした。目の前に見えているのは確かにベル・ミラーなのだが、セシリアとアンナの瞳がちらつくように重なり“今”を記憶に阻害されている感覚があった。分かると、相手の言葉に頷いたのだが其れも長くは続かず意識が過去に引き摺り込まれる。過去の事件が、新たに思い出してしまった事実がフラッシュバックした事で取り乱した様子を見せると、呼吸は一層浅く喘ぐようなものに変わる。「____っ、セシリア、…っ悪かった…許して、くれ…ッ…は、ぁ゛…セシリア、」血の色が頭から離れない。浅い呼吸を繰り返していた身体は徐々に痙攣を始め、譫言のように妹の名前を呼びながら身体は震えが止まらなくなっていた。意識を今に引き上げようと、抵抗のように強く握り締め爪を立てた腕には鬱血した痕が残る。---酷い発作が落ち着く兆しを見せたのは、40分以上が経ってからの事。ふと目の前の相手が“見える”ようになり、それと同時に褪せた碧眼からは涙が溢れた。あまりに苦しい状況に対する絶望と、相手を認識出来た事に対する安堵とが入り混じる。「……手を、…っ握って、やれなかった…あんなに苦しんだのに、…1人で逝かせてしまった、…!」涙ながらに言葉にしたのは、今回の一件で思い出した記憶と、その後悔で。 )






 

4907: ベル・ミラー [×]
2025-04-08 22:41:13





( 此方の問い掛けに頷きが返って来た事で安堵が胸に落ちるも、それは長く続かなかった。己を認識出来たのは僅かの間だけで、再び狂いを見せた呼吸と共に一瞬“今”にあった意識は過去へと落ちた様子。直ぐ近くで喘ぐ様な呼吸が繰り返され、その合間合間に何度も紡がれる妹の名前と謝罪に一度きつく双眸を閉じると、恐らく相手自身の意思とは関係無く止まらなくなっているのだろう震えを押さえ込む様に、先ずは近くの掛け布団を手繰り寄せ相手の背中に掛け、その後痙攣を繰り返す身体を確りと抱き竦め「…許してるよ、ちゃんと許してる。…大丈夫だから、」此方の声が今の相手に聞こえていなくとも何度も“大丈夫”を伝え続けて。___酷い発作が漸く少し落ち着き、身体の震えが治まりを見せて来た頃、次は先程まで翳りを見せていた相手の碧眼からとめどない涙が溢れた。同時に紡がれたのは“あの日”の後悔。“あんなに苦しんだのに”の一言を拾い思わず驚愕に見開かれた目で相手を見る。セシリアは…即死では無かったのか。至近距離の相手の表情は余りに悲痛な色に染まり、涙に邪魔され引き攣る喉から絞り出される後悔は重い。薄く開いた唇から何か言葉を発するよりも先に頬に冷たさが滑り、己もまた泣いている事に気が付いた。相手の涙を見たからか、その言葉で2人のその時を想像してしまったからか、物理的には有り得ないのにまるで抱き締めた相手の身体から絶望や痛みや後悔が…あの時の記憶が、流れ込んで来るかの様なそんな感覚を感じてしまったからか。思わず俯き、そこで相手の腕にある鬱血痕に気が付き涙の量は増す。以前駄目だと制した所謂自傷は、今回は列記とした抵抗だったのだろう。__セシリアは死の直前、相手に手を伸ばしたのだろうか。兄の姿は見えていたのだろうか。幼い園児を庇いながらもその心はきっと恐怖でいっぱいだった筈だ。流れ出る血の感覚を、撃たれた箇所の熱や痛みを、感じてしまっただろうか。相手は…伸ばされた手を握る事すらも出来ない程の絶望に一瞬にして染まってしまったのか。「…っ、ふ…ぅ、」痛い、なんて言葉が生温く感じられる程の余りに大きく重たい何かが胸の奥に根を張り体内から締め上げる様な感覚に俯いたまま嗚咽する。何に対しての涙なのかはわからなかった。泣き続けるべきなのは己では無く相手なのに、ただ、心が痛いのだ。相手の腕を緩く掴んだまま、何か言葉を発する事も出来ずにいて )






4908: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-08 23:49:49

 





( 相手が泣いている事に気付いたものの、思い出した過去の出来事について語るだけの体力は残っていなかった。ただ相手が己の腕を握る仄かな体温を感じ小さな嗚咽を聞きながら、気を失うようにして意識を手放していた。---発作が長く続いた事による疲労の所為だろう。皮肉にも齎された眠りは深いもので、明け方まで目を覚ます事はなかった。明け方、空が青みを帯びて白み始めた頃になって目を覚ますと、身体の重さを感じて深く息を吐き出す。たった1日で、かなり無理をして捜査を進めた時と同じような______自分自身で身体の不調を自覚する程に、影響を受けている事を思い知らされて。自分の直ぐ隣で布団も掛けずに寄り添うように眠っていた相手の頬に涙の跡が残っている事に気付くと、指の腹でその跡を拭うように頬を撫でる。布団を相手に掛けた後、静かに起き上がるとシャワーを浴びてじっとりと身体にかいていた汗を流して。リビングに戻ると、煙草を取り出してベランダに出る。アンナの事件捜査には関わらないと言ってしまえば楽なのだろうが、どうしてもそれは出来なかった。深い溜息と共に煙を吐き出すと、風に攫われた其れは静かに紺碧の空に溶けて。 )







 

4909: ベル・ミラー [×]
2025-04-09 11:08:13





( ___何時眠りに堕ちたのかはわからなかった。頬撫でられた事も、布団を掛けられた事も、相手が寝室を出て行った事にも気が付かず眠っていたのだがその眠りは決して穏やかなものでは無く。右も左も、上も下も真っ暗な闇の中でたった1人相手がその場に蹲って居るのだ。顔は見えずとも震える背中と漏れる嗚咽で泣いている事はわかる。傍に寄り背中を擦りたいのにその足は僅かも動かず「エバンズさん」と唇は動くのにその名前が音になり相手に届く事は無い。相手はたった1人で泣き続けて居る。__ふ、と意識が浮上した時既に部屋の中は夜中の様な暗がりに染まってはいなかった。隣に相手は居らず、目の奥が重たい様な感覚に一度眉間を軽く解してから静かにベッドを降りて寝室を出。相手はあの日の満月の夜の時と同じく部屋に背を向ける形でベランダに居た。漂う紫煙は直ぐに風に乗り形を崩す。__朝が、来なければ良いのにと一瞬思ってしまった。悪夢に魘される夜が続けと言う事では無い、ただ、朝が来てしまえば相手は再び心身に鞭を打ち苦しみを背負いながら捜査を続けるのだから。今度はあの日の様に勢い良く開け放つ事無く静かにベランダに続く窓を開ける。朝の冷たい風が吹き抜け身体に纏わりつく感覚の中、伸ばした手は相手の腕へ。隣に立ち、煙草の煙の香りに混じりボディーソープの香りが鼻腔を擽れば「__風邪ひくよ。」と、小さく声を掛け身長差のある相手を見上げ。その表情は柔らかく穏やかな笑みなれど、何処か切なさも滲んでいて )






4910: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-10 10:51:05

 





( 窓が開く音がして相手の声が聞こえると、隣に立った相手に流し目で視線を向ける。シャワーを浴びて少しばかり熱を持った身体に冷たい風が纏わりつく感覚は涼しくて心地が良いのだが、風邪を引くと言われれば其れもその通りで。「…お前も、何も掛けずに寝てただろう。」と、風邪を引くのは相手も同じだとばかりに返事をして。深い溜息に煙を乗せて、青みがかった空に視線を向ける。「……鮮明な夢を見るのは、きついな。」現実と錯覚する程にリアルな夢。血の色も、血溜まりを踏んだ時の感覚も、目の前に倒れる人たちも、全てが鮮明なのだ。それが心を深く抉ると口にして。けれど捜査を続けると決めたのは自分。「夜中に付き合わせて悪かった、…捜査に集中しないとな、」昨晩酷い発作を起こした自分の側に相手がずっと寄り添ってくれていた事はわかっていて、感謝と謝罪を。立ち止まっている場合ではない、きちんと捜査に集中しなければと、自分に言い聞かせるように言うと煙草を灰皿に入れて。落ち着いている今のうちに多めに薬を飲んでおこうと考えつつ、相手と共にリビングへと戻り。 )






 

4911: ベル・ミラー [×]
2025-04-10 13:25:51





__そうだっけ?全然覚えてない。
( 何かに引き摺り込まれる様にして眠りに落ちた事は理解していたが、目が覚めた時身体は確りの掛け布団の中にあったものだから、それはつまり先に目が覚めた相手が態々掛けてくれたと言う事。少しばかりおどけた様に笑い肩を竦めて見せた後は吐き出された紫煙を追う様にして同じく空を見上げ。「…そうだね。…今回は特に、」今請け負っている事件捜査がどうしたって”あの事件“を思い起こさせる事は確か。小さく頷き言葉尻を切る事で、次は謝罪に対して首を横に振り気にしていない事を伝えるのだが。その謝罪の後の言葉には頷く事が出来なかった。捜査に集中するべきなのは絶対で、それが刑事である事の努めで、被害者や遺族に対して真摯的な向き合い方だ。わかっている。わかっているのに、これ以上相手の苦しむ姿を、涙を流す姿を、見たくないと思ってしまうのだ。結局何も返事をする事が出来ないまま相手と共にリビングに戻ると「…コーヒー淹れるね。何時もより少しだけ甘いやつ、」と、顔を向け__「待って、」ケトルにお湯を沸かすよりも先に相手が取り出した薬の量に反射的に制止の言葉が口をついて出た。一度に飲んでも良い数は知っている。捜査の”障害“となる全てを抑え付ける為に規定以上の数の薬を飲もうとしている相手の考えも。それで全てを押さえ込む事が仮に出来たとしても、後に襲うのは大きな副作用と薬を飲む前以上に何倍にも膨れ上がる苦しみだ。心の底から苦しんで欲しく無いと思うが、それでも、見過ごす事は出来ない。「……」相手を見上げる真剣な瞳は暗に“駄目だ”と物語っていて )






4912: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-10 23:58:42

 





( 甘い珈琲を淹れると言う相手の言葉に頷いてソファの方へと向かうと、昨晩置きっぱなしにしていた鞄から処方薬を取り出す。シートを手に水を汲んだコップを手にした所で制止されると、相手と視線を重ねる。規定を超えた量を飲んだ時の副作用を案じているのだろう。決められた量以上の薬を独断で飲むのは当然良い事ではないと分かっては居るが、普段の薬だけで制御し切れるとも思わなかった。「______いつもの薬だけで乗り切る自信が無い、」感じている率直な不安を口にしたものの、だからと言って勝手に多量の薬を服用して良いという事にはならないだろう。結局規定の2錠を水で流し込み残りを鞄へと戻すと、代わりに資料を取り出してソファに腰を下ろし。 )







 

4913: ベル・ミラー [×]
2025-04-11 00:23:44





( 相手のその不安は正直な所己も感じている事だった。事件が事件である為身体にも心にも掛かる負担は相当なもので、普段の薬で湧き上がる様々な症状を綺麗に取り除けるとはとても思わないのだが。「__エバンズさん、此処はレイクウッドだよ。エバンズさんの事を確りとわかってる医者の居る所。…点滴とかの処置も出来るかもしれないし相談してみよう。」それでも駄目なものは駄目だ。結局規定の量だけを飲んだ姿を見て表情をまた僅か笑みに戻すと、相手が病院嫌いだと言う事は重々承知の上でアダムス医師の話を出し。__普段より少しだけ砂糖とミルクの量を多めに入れたコーヒーを資料を避ける様に相手の目前に置いては、隣に腰掛けつつ己もまた別の資料に目を通し出勤時間までの間、少しでも犯人逮捕に繋がる何かを得ようとして )






4914: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-11 01:36:53

 





( _____事件の発覚から1週間ほどが経っても、捜査線上に有力な容疑者が上がる事はなかった。カフェの同僚、学生時代からの友人、常連と、アンナを取り巻いていた人間関係を洗い出しているものの捜査に“進展は無い“というのが現時点の評価だろう。進展がないにも関わらず、この事件の捜査に長く身を投じていれば心身は徐々に蝕まれる。少し眠っても夜中に酷い発作を起こし、明け方近くまで其れが続く事もあった。不調は少しずつ日中にも影響を及ぼすようになっていて、薬の効きが悪いと感じるようにもなっていた。---現場検証の写真は必要が無い限りなるべく見返さないようにしていたものの、鑑識の説明を受ける時などはそうもいかない。現場に残された痕跡について追加で分かった事を説明に来た鑑識官と、写真を見ながら其の内容を聞く。光を失った緑色の瞳が自分を真っ直ぐ見据えているように思えて、血の気を失った白い肌に真っ赤な血が流れる様が思い出された気がして、平静を装う事に必死だった。説明を終えた鑑識官が部屋を出て行った後、思い出すなと自分に言い聞かせながら写真を封筒に戻す。けれど既に呼吸は浅くなり始めていて、椅子に腰を下ろすとなんとか其れを押さえつけようと目元を覆いつつ深く息を吐き出して。この時間は報告書を持って来る署員も多い。此処で発作を起こす訳にはいかないと、パソコンに目を向けて報告内容を追記しようとするのだが、視界は不安定に揺れていた。 )







 

4915: ベル・ミラー [×]
2025-04-11 08:52:41





( ___殺害現場が限られた人しか来ない付近に監視カメラも無い辺鄙な場所、と言う事もまた捜査難航を助長させているのかもしれない。有力な証言を得る事が出来ない日が続き、それでもほんの僅かの切っ掛けで捜査が軌道に乗る事もあると今日もまた朝から聞き込みに出ていた。___署に戻って来たのはお昼過ぎ。成果は0だがもう一度アンナを取り巻く周辺の人達の証言を纏め直そうと思っての事。自身のデスクに立ち寄り上着を脱いでからその足で警部補執務室へ。何時もならノックの後直ぐに入室を許可する返事があるのだが今回はその声が返って来る事は無く、数秒待ってから中を覗き見る様に静かに扉を開け。デスクに座りパソコンの画面を見詰める相手の眉間には皺が深く刻まれ心做しか呼吸が安定していない。調子を崩したのは明らかで部屋に入り扉を閉めるや否や、軽くその背に掌を宛てがい。「…最後に薬飲んだの何時?」パッと見、デスク付近に薬も無いし足元のゴミ箱に空のシートが捨てられている気配も無い。相手の事だから周りに怪しまれない様にと細心の注意を払いゴミを別の場所に捨てた可能性もあるが。背にあてた手を軽く上下に動かす事で少しでも落ち着く事が出来るならと )






4916: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-11 12:25:17

 





( 扉が開いた事で僅かに身構えたものの入って来たのは捜査に出ていた相手だった。目元を覆い、押さえ付けるようにゆっくりと呼吸を繰り返す。「…朝、2錠飲んだきりだ、」決められた量を決められた時間に飲んだ以外は服用していないと答えて。---不意に、外で救急車のサイレンの音が響いた。署の近くの道を通過しただけ、それだけの事だったが不安定な今はその音が記憶に直結してしまった。自分がどうする事も出来ずに血の海に立ち尽くす中、要請を受けて現場に急行したのであろうパトカーや救急車のサイレンの音が、遠くで幾つも響いていたのだ。その光景が鮮明にフラッシュバックし、喉の奥が詰まるような閉塞感を覚えた。その時に感じた恐怖が、絶望が、血の色と共に押し寄せる。「_____っ、は…ッあ、……っ、」目元を覆ったまま、途端に不規則になった呼吸は肺に酸素を届けない。鳩尾の痛みが強まり、ワイシャツを握りしめたまま意味を為さなくなった呼吸を喘ぐように繰り返すこととなり。 )







 

4917: ベル・ミラー [×]
2025-04-11 18:18:32





( 相手の返事に腕時計に視線を落とす。前回の服用から既に十分な時間は経っていて今飲んでも問題無いと判断すれば相手の背から手を離し鞄の中にあるだろう処方箋の袋を取ろうとしたのだが。__遠くに救急車のサイレンの音が聞こえ署の近くの道を通過したのだろう、音が大きくなり再び遠く消えていったのを鼓膜が当たり前に拾った時、相手の呼吸音が変わった。ハッとして顔を向けると先程までの狂いそうなのを辛うじて抑え込めていた呼吸とは違い、肺まで確りと酸素が届いていない、喉の奥で引っ掛かる様な息遣いの相手がその苦しさと鳩尾の痛みに耐える様にシャツを握り締めていて。浅い呼吸に混じり喘ぐ様な声が漏れるこの状態ではとても錠剤を飲み込む事など出来ないだろう。先ずは少しでも呼吸のペースを取り戻し、薬を飲む事が出来る所まで回復しなければならない。この時間帯、署員が何時この部屋の扉をノックしても可笑しくは無い状況もまた焦燥が募るもので。過去の思い出したくない記憶が強制的に呼び起こされているのならば、塗り替える切っ掛けが必要だ。徐にポケットからスマートフォンを取り出し開いたのはアルバムのフォルダー。何時かの日、相手と共に訪れた陽の光が反射しキラキラと輝く青い海を撮影した動画を流すと、それを相手の前に置き。「…ほら、見て。海綺麗だったよね?少し肌寒かったけど、ちゃんと潮の匂いもした。…覚えてるでしょ?」波が寄せては返す一定の音が静かに部屋に流れる中、相手の背を擦りながら、血に濡れた記憶では無い別を思い出せる様にゆっくりと話し掛けて )






4918: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-13 22:41:28

 




( あの日鳴り響いていたサイレンの音と、目の前に広がる絶望的な光景。身体の奥から恐怖が湧き上がってくるような感覚を覚える中、“違う音”が記憶の波の中に挟み込まれる。寄せては返す波の音は、辺りが血の海と化した教室では聞き得ないもの。手繰り寄せられる記憶は、赤ではなく穏やかな青に近い色の筈だ。目元を覆っていた事もあり、相手のスマートフォンの画面に流れる映像は目にしていなかったものの、波の音はフラッシュバックした記憶を徐々に追いやり、別の記憶を齎した。浅くなった呼吸はそれ以上苦しげなものになる事はなく、落ち着けるように浅く繰り返されるばかり。ややして上げた顔には汗こそ滲んでいるものの、其の瞳に過去に支配された暗い影は落ちておらず「______大丈夫だ、…覚えてる、」と小さく答えて。鳩尾の痛みは完全には引いていなかったものの、鞄から薬を取り出すと僅かに震える指先で錠剤を取り出し水で流し込んで。 )







 

4919: ベル・ミラー [×]
2025-04-14 00:18:50





( 相手の背中を擦りながらどうにか意識を別の所へ、と語り掛ける事数分か。顔を上げたその表情に倦怠感の様な色こそ滲んでいるものの先程までの酷い発作は治まっているのが確認出来れば安堵を胸に落とし薬を飲む姿を一瞥し。けれど100%の安堵に支配された訳では無いのが正直な所。本来調子が悪い時でも救急車のサイレンで意識が持っていかれる事など無かった筈だ。それ程までに今の相手は心身共にギリギリの…もしかしたら既にそのギリギリすらも通り越した所に居るのかもしれない。発作に加えて痛むのだろう、鳩尾付近を押さえる仕草も此処数日間で何度も目撃した。動画を終わらせスマートフォンをポケットに戻した後、再度腕時計に視線を落としてから「…エバンズさん、もう一度周辺の聞き込みに行こう。」と提示したのは、この時間、此処に居れば多くの署員が報告書の確認やら何やらで出入りして来る、そうなれば不調を勘づかれる可能性があると思っての事で。___署を出て、相手の座る助手席側の窓を少し開け風の通りを良くしてから車を走らせる。真新しいミネラルウォーターのペットボトルは相手が何時飲む事があっても良い様にドリンクホルダーに欠かさない。アンナの職場であるカフェに続く一本道、事故か何かでもあったのか、今日は何故か車通りが多く普段以上に進みが遅かった。やがて赤信号でも無いのに前方車が完全に停車し、己の車も後続車も次々と停車し完全なる渋滞が出来上がる中、運転席側の窓も少し開けたタイミングで何処かの車が大きく、長く響くクラクションを鳴らした。そんな事をしたって渋滞なのだから車は動かないのだと内心溜め息を吐きながら反応する様に小さく肩を竦めて )






4920: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-14 00:38:26

 





( 調子が良くない中、執務室に居て署員たちと幾度と顔を合わせる事は避けたいという思いもあった為、相手が聞き込みの提案をして来た事には素直に同意を示して。重たい倦怠感を抱えつつ、少し背凭れを倒して窓の外へと視線を向ける。車の進みが徐々に遅くなり、殆ど進まなくなった事で正面へと視線を向けると、赤いランプがかなり先まで続いているのが分かった。「…この道で渋滞は厄介だな、」抜ける道が無いため、渋滞の解消を待つしかないと思えば溜息と共にそう告げて。再び視線を窓に戻した時、長いクラクションの音が響き思わず肩が跳ねた。それと同時に、ほぼ強制的に事件の記憶が引き摺り出されるような感覚。先ほど執務室での発作からそう時間が経っていない上、安定剤も服用したというのに。何度も過呼吸の症状が起きれば当然身体にも大きな負担が掛かる。先ほどよりも浅くなった呼吸は戻るための糸口を見つけられず、更には身体の痛みも先ほどより強い。背凭れから身体を起こし前のめりになるも、酸欠の所為で目の前は真っ白だった。「……っ、…く、ぁ゛…っは、」自分の意思も関係なく脳裏に鮮明に蘇る記憶。銃声が耳にこびり着き、フラッシュバックが直ぐに止む事はなく。 )







 

4921: ベル・ミラー [×]
2025-04-14 01:19:51





( 何処の誰が鳴らしたクラクションかは知らないが渋滞が困るのは捜査に出ている此方とて同じ事なのだと肩を竦めたその直後、隣に座る相手の肩が小さく跳ねたのと同時に先程執務室で起きた状態と同じ…否、それよりも酷く感じられる浅く狂った呼吸を繰り返す姿があれば思わず目を見開く。このフラッシュバックの発作が何によって誘発されたものか、それが数秒前のクラクションであると直ぐに察したものの、今の相手の状態では何が引き金となるかは未だ読めない。響くその音が過去の銃声やもしかしたら現場に駆け付ける警察車両が鳴らした音に繋がってしまったのかもしれない。「っ、落ち着いて、大丈夫だから…!」前屈みになり身体を丸める様に鳩尾の痛みに耐え、発作に苦しむ相手に片手を伸ばし肩を擦るのが精一杯なのは今運転中と言う最悪の状況だから。おまけに抜ける道の無い中での渋滞。アクセルから足を離し相手を抱き締める事も、こんな道の真ん中に車を完全に停車させる事も出来ない。前を見、進みを確認しなければ事故に繋がる可能性もあるし下手すれば後続車に次なるクラクションを鳴らされる可能性もある。為す術の無い四面楚歌な状況に焦りばかりが募り、思わずハンドルを握る片手が小さく震えた。早くこの渋滞を抜けて何処かに車を停めたいのに、1人苦しむ相手を抱き締め呼吸を戻す手助けをしたいのに。「何も起きてない、さっきのは事件とは全く関係の無い音で、急に鳴ったからエバンズさんは少しビックリしちゃっただけ。…だからねっ、大丈夫なんだよ、」時折前方を確認しながら何時の間にか震えていた手で相手の肩を擦り続け、記憶にある悪い音じゃないのだと、大丈夫なのだと、声を掛け続けるのだがそんな簡単に落ち着く事が無いのも知っている。手の震えに釣られる様に徐々に言葉にも震えが混じり、焦りとは別に恐怖も生まれる中、それでも一向に解消されない渋滞はまるでそれすらも意思を持ち、嘲笑いながら相手を苦しめる為に送り込まれた何かの様にすら感じてしまい )






4922: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-14 01:59:36

 




( 呼吸を元のペースに戻す為のきっかけも無く、浅い呼吸がただ苦しい。身体が震えるのを抑える事が出来ず、動かない車の中でどれ程苦しんだか。“今”を映さない瞳にも、フロントガラスの向こうの赤いランプの光は届き、それが血濡れた記憶をより鮮明にさせた。「______っ、セシ、リア…ッ、あ゛、はぁ…っ、」身動きの取れない車内で譫言のように何度も妹の名前を呼び、襲い来る記憶の波に耐える時間が数十分は続き、漸く此処が車内だと認識出来るまでに戻ったものの意識はまだぼんやりとしていた。酷く汗を掻いた身体は鉛のように重たく感じられ、目の前で起きているかのような過去の記憶を鮮明に繰り返した所為で心は不安定になっていた。些細な音が記憶を呼び覚まし、耐え難い苦痛を齎す今の状況はあまりにも負担が大きい。此の苦痛を繰り返したくない一心で、処方薬へと手が伸びる。先ほど飲んだばかりの発作止めと、2回分の鎮痛剤。明らかに過剰摂取なのだが、この苦痛をこれ以上繰り返したくなかった。今この瞬間、苦痛が抑えられるなら後で苦しむ事になっても構わないとさえ思ったのだ。相手が運転中で此方に気付かない、或いは気付いても直ぐには止められない状況下で薬を水で流し込むと、襟元を緩めて背凭れへと身体を預けて。 )







 

4923: ベル・ミラー [×]
2025-04-14 13:05:37





( 狭い車内に相手の苦しみに喘ぐ呼吸と、繰り返される“セシリア”を呼ぶ声が広がる。助けられなかった事を懺悔する様に何度も何度も譫言の様に繰り返される彼女の名前は、余りに悲痛な想いを纏っていて耳を塞ぎたくなる程に心を乱される。視界が滲んだのを唇を噛み締め、ハンドルを強く握る事で抑え込むと、そこで漸く前方車両が緩やかに動き始め「…もう抜けられるからね。」と、一声掛けて車を発進させ。前方を見詰めある程度の車間距離を保ち運転をしていた為、相手の手が水のペットボトルに伸びた時にはもう既に何もかもが遅かった。取り出された薬の量も過剰で、それを飲んでも良いだけの時間は未だ経っていない。けれど……制止の言葉は音にならなかった。仮に車が停まっていたとして、それでも薬を飲むなと言えただろうか。署内でも、車内でも、あれだけ苦しみ、それからどうしても逃れたいと言う相手の気持ちがまるで流れ込む様に伝わってしまった。後に来る副作用の怖さなど、考えられない程に苦しかった筈だ。奥歯を噛み締め、“見なかった事”を決めた心は重く揺れる。___やがて一本道を抜けた先にあるカフェが見えて来たのだがスピードを緩める事はしなかった。犯人の足取りが掴めず捜査が難航している事は百も承知なのだが、私情だなんだと言われても今優先すべき事はカフェに聞き込みに行く事では無い。「__エバンズさん、降りて。」車を停めた場所は病院の駐車場。未だ過呼吸や身体に纏わりつく痛みが尾を引く倦怠感が続いているだろう相手に真剣な表情でそう告げると、自身が先に降りた後に助手席側に回り扉を開ける事で促して )






4924: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-14 15:23:26

 





( 眠っていた訳では無かったが、一瞬意識が飛んでいたのだろうか。普段であれば相手が目的地を外れ病院へと向かっている事には道を見て目敏く気付く筈だったが、今日ばかりは相手が目的地であるカフェを素通りした事に気付けなかった。気付いた時には既に車は停まっていて、助手席の扉が開く。其処でようやく、見慣れたレイクウッド総合病院の駐車場に居る事を理解するのだ。見慣れて居るとは言え、レイクウッドに戻ってから病院に来るのは初めてで、2年以上訪れて居ない事になるのだが。車を降りる事を拒絶しなかったのは、今は医者の助けが必要だと自分でも感じたからだろう。重たい身体を起こして外に出ると「______お前は捜査に戻れ、」とだけ伝える。相手まで巻き込んでこれ以上捜査に支障を来たす訳にはいかない、後は自分でなんとかすると。 )







 

4925: ベル・ミラー [×]
2025-04-14 16:20:47





( 病院嫌いの相手の事、扉を開けたまま行く行かないの押し問答も覚悟していただけに拒否の言葉一つ飛んで来ず素直に車を降りた相手に一瞬だけ瞬くのだが。直ぐに、相手自身が病院を拒絶出来る程身体も心も安定していない自覚があるのだと思えば再び心は小さく痛み。助手席の扉を軽く閉め病院へと踏み出した右足が止まったのは、ある意味予想していた通りの事を言われたから。病院に用事があるのは相手で、己はあくまでも捜査実行するのがこの場合の最善だと言う事はわかっているが__「私も行きます。」間髪入れず口を着いたのは相手の意に背く同行を望むもの。「一緒に話を聞かせて下さい。もし検査や長く掛かる話し合いになるなら、確り捜査に戻るから、」今の相手の状態を見て医師はこの先どんな判断を下すのか、今回の事件解決までの間出来る処置はあるのか、聞きたい事は山ほどあるのだ。相手に何を言われた所で最初の話だけは聞くと貫けば、後に何を言われた所で聞かない振りをし、半ば強引に院内へと入る事として )






4926: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-14 23:57:16

 





( 付き添いは不要だと言っても相手が其れを受け入れる事はなく、結局半ば強引な形で相手と共に待合室へと向かう事となり。短い期間に二度も発作を起こした事で身体には重たい倦怠感が纏わりついて居た。身体の痛みも強く出ていたものの、流石に2倍量の鎮痛剤はよく効いたようで診察を待つ間にだいぶ楽になっていて。早く捜査に戻りきちんと事件と向き合わなければならないのに、余計な事に足を引っ張られている。自分が指揮を取っている事で事件解決の遅れに繋がる、という事だけは避けなければならないという焦燥感を抱えながら、名前が呼ばれると診察室へと向かい。主治医であるアダムス医師と直接顔を合わせるのは、彼が学会の為ワシントンに来ていた時以来だろう。 )







 

4927: ベル・ミラー [×]
2025-04-15 00:16:30





アダムス医師



( 診察室の扉が開かれ相手と__付き添いで来たのだろうミラーの2人が入って来れば両方に視線を合わせ緩く微笑む。その笑みはもしかしたら患者に向ける医師としては何処か微妙な点において違和感のあるものだったかもしれないが、2人がまた一緒に居る姿を見る事は理由はどうであれ喜びと安堵に繋がるのだ。相手が戻って来た理由、その他諸々を根掘り葉掘り聞く事はせず『お久し振りですね。元気では無いから此処に来たのだと思いますが、調子はどうですか?』と、先ずはあくまでも医師として今日相手が受診した理由を問い。2年前の相手のカルテをパソコンの画面に出し、新たに症状として表に出る様になった“鳩尾付近の痛み”の事、“時折現れる脈の乱れ”が尚も続いているのか、ならばその頻度や強さの具合が果たしてどの様に変化しているのかを確かめなければならなかった )






4928: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-15 00:35:09

 





( 2年という月日の経過を感じさせない程に彼は変わっていない、というのが率直な印象だった。数ヶ月前にも罹ったような気さえする程に普段通りの彼に対して、多くを語る事はしなかった。「______フラッシュバックを起こす事が増えた。捜査に支障が出ないように、2週間で良い、強い薬を処方してくれ。」“何故”フラッシュバックを起こす事が増えたのか、自分が今どういう状況に身を置いているのか、本来伝えるべき詳細は口にする事なく、薬を強い物に変えて欲しいと。今起きている症状がかなり重く、容態が悪化していることも深くは言及しないまま、いつものように診察はするのだろうとネクタイを解き襟元を緩めて。「鎮痛剤も貰いたい、」と付け加えた事で、今は痛がる素振りを見せていないものの、痛みは未だに症状として顕著に出ている事が相手に伝わっただろう。 )







 

4929: ベル・ミラー [×]
2025-04-15 01:08:59





アダムス医師



( “捜査に支障が出ない様に”と言う事は、相手は今此処レイクウッドで再び刑事としての日々を送って居るのだろう。生きる活力がそこにあるのなら相手は刑事で居続けるべきだと思う反面、沢山の事件に向き合い、数え切れない遺体を目にする日々がまた続く中での体調面の不安もあった。そんな中で相手が語ったのは詳細を省いた短い不調と、相変わらずの要望。そんな所ばかり以前から変わっていないと吐き出したくなる溜め息を飲み込み、診察をする事がわかっている手馴れた動作に『今処方している薬は、副作用が極力出ないギリギリの強さのものです。はいどうぞ、と直ぐに変えられるものではありません。__“何故”フラッシュバックが起きる頻度が増えたのか、心当たりはありますか?』今一度薬の説明をしつつ、その根源となる所の認識を確かめながら緩められた襟元から聴診器を入れ心音を静かに聞き。___今現在酷い心雑音は聞こえないが、少しばかり鼓動が早い。少し前に発作を起こし過呼吸の状態が暫く続いた可能性も示していて、聴診器を抜いた後は相手の腕を取り脈拍を図る。親指の腹に伝わる脈の動きは一定で、不整脈は無いと判断できるが相手の場合それが何時起きても可笑しくは無いストレスの掛かる中に居る事は確かで、今が大丈夫だからこの先も、と安心出来る訳では無い。加えて付け足された鎮痛剤の所望は痛みが消えていない事の証明だ。相手の腕から手を離し、状態を記録する為キーボードを叩いてから再び向き直ると『懸念している不整脈は今の段階では確認出来ません。けれど、ストレスの強く掛かる中に身を置き続ければ何時かそうなる危険性もある。…不整脈は心臓の病気に繋がる可能性が高い症状です。そうなる前に、働き方を見直すべきです。』真剣な眼差しで一つ一つ言葉にし、そうして最終的には矢張り仕事のストレスが大きく占めてくるものだから刑事を辞めろとまでは言わずとも、変えられる何かはある筈だと。『鎮痛剤は、今と同じものを二週間分出します。…痛みを自覚した最初の頃に比べて、強さや治まるまでの時間に変化はありましたか?』視界の端に映るミラーは少し俯き加減で話を聞いている為、確りとした表情を伺う事は出来ないが、大きな不安を心に秘めているのは確かだろう。相手に痛みの具合を確認しながらもまた違う一抹の不安を感じていて )






4930: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-15 02:01:47

 






( 当然と言えば当然だが、自身の“主治医”であるアダムスはワシントンの医者のように自分の答えた事に相槌を打ちものの数分で薬を処方する、という事はしなかった。此れが本来の診察なのだが、医者を相手に問答が続く事に妙な違和感を感じる程には、自分自身ワシントンでの生活に慣れていたのだろう。「…今追っている事件が、少し……“あの事件”と似ている点がある。」心当たり“しか”ないものの、其れを律儀に相手に説明していては、言われる事はただひとつ______その捜査に関わるな、だ。その確信があるからこそ、今を乗り切れるだけの情報を口にするという姑息な手段に出ざるを得なかった。「……働き方を見直した結果、レイクウッドに戻って来た。この事件が一段落したら、もう少し暇になる。」と、この捜査が終わるまでは休めない事を告げて。強い痛みに襲われると、息をする事さえ痛みに繋がりそうで呼吸が浅くなる。動けない程の痛みに苦しめられる事もある為、今と同じ鎮痛剤を2週間分では直ぐに市販のものに頼らなければならなくなるという不安があった。「……少し痛みが強い。薬を強められないか、」痛みの程度が増大している事にはあまり触れず、もう少し効果が強い物をと食い下がり。______相手がふとした瞬間に不安げな表情を浮かべる事が増えた事には気付いていた。自分が居ない間に起きた事件が未だ尾を引いているのだろうと思ったものの、今回は人質が関係するような事件ではない。原因は定かではないが、今回の事件や自分が不安定な事も関係している可能性は十分に考えられた。「……ミラー、先に現場に行ってろ。もう少し掛かりそうだ、」と、未だ診察が長引く為現場に向かっておいて欲しいと告げ。 )







 

4931: ベル・ミラー [×]
2025-04-15 13:27:49





アダムス医師



( 相手が口にした“心当たり”の事件内容までは当然知らないし、刑事である相手が事件の詳細を事細かく一般人に話せ無い事もまた理解はしていた。だからこそ深く追求する事はしないものの“少し”であれ相手を最も苦しめる全ての原因となった“あの事件”と似ているのならば掛かる負荷は相当なものの筈だ。思わず表情が険しくなり何かを考える様な間が僅か空いた。『…捜査を降りる事は?』と、静かな声で問い掛けたものの、返って来る返事は100%確信を持って“無い”である事はわかっている。だからこそ『今回発作や痛みが増えた原因は、貴方自身も“心当たり”として感じている通りでしょう。…原因がわかっているのならば、それから遠い所に身を置き少しでも負荷が掛からない様にする事が一番です。__とは言え貴方が刑事であり続ける理由を、捜査を第一に考える事を辞めない事も知っています。』と、言葉を続けるも今度は溜め息を飲み込む事はせず。此処に戻って来た事は大変喜ばしい事、けれど問題は“今”請け負ってる事件だ。終われば暇になるとか言う問題では無い筈なのに。今一度隠す事もしない深い溜め息で再び考え込むと、ややして『……これ以上強い薬は服用した後が怖い。けれど痛みで日常生活をスムーズにおくる事が出来ないのは本末転倒です。…朝、病院に寄る時間を30分程作れますか?』1つの案を進ませる為の確認を。__相手から現場に戻れと言われたミラーは一瞬躊躇う様な素振りを見せたものの、従う様に頷くと「…わかりました。何かあれば連絡下さい。」と答え席を立ち。アダムス医師に深く頭を下げてから診察室を出、言われた通りカフェでの聞き込みと事件現場となった場所に行く為車を走らせて )






4932: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-15 14:08:29

 






( 捜査はそう簡単に放り出せるものではない、ましてや自分の為の勝手な都合で降りる事など。相手の問いには首を振る事でその意思が無い事を伝えて。セシリアと瓜二つの女性が被害者となった今回の事件、写真を見てあの日見た光景が鮮明に思い出されるのは当然だ。けれどそれだけに留まらず、些細なきっかけで当時の記憶が首を擡げる事が増えたのはそれだけ強いストレスが掛かっていると言う事か。「……善処はするが、朝早くから捜査に出ている事もある。毎朝は厳しい、」相手が譲歩してくれた以上なるべく従おうという気はあるのだが、毎朝時間を作るのが現実的に可能かどうかは怪しい所だった。時間が取れる日は通院する事を了承しつつ、ミラーが指示通り診察室を出て行った事を確認すると再び相手に向き合う。「______あいつにも負担を掛けている事は間違いない。ミラーの前で体調を崩す事がかなり増えている。…共感性が高いあいつの事だ、あまり側に置き過ぎない方が良いとは思っているんだが、」と、今感じている懸念を相手に告げて。---この時は未だ、ミラーの事を考えられるだけの余裕があったと言えるだろう。更に追い込まれ体調も悪化して行く中で、ミラーさえもが“きっかけ”になり苦しむ事になるとは、今は知る由も無い。 )







 

4933: ベル・ミラー [×]
2025-04-15 20:38:27





アダムス医師



( 相手の返事に再び考え込む事数十秒。『__痛みが出た時に飲む錠剤をこれ以上強める事は出来ませんが、点滴と言う手段があります。フラッシュバックや発作を起きなくさせる効果は勿論無いですし、そこから引き起こされる痛みを全て抑えてくれる訳でも無い。ただ、慢性的な痛みはかなり軽減出来て、錠剤よりも持続時間が長いのは間違い無い。』と、相手の望む今より強い鎮静剤を出す代わりの提案をしつつも、『ですが、その時の体調や免疫力の低下具合などで、点滴後に副作用が出る事もあります。30分程は万が一に備えて処置室に居てもらうのが絶対条件になりますが、』点滴を終えたからと言って直ぐに帰す事は出来ず、全ての時間を合わせれば結果的に1時間近くは自由を拘束する事に繋がると。『朝が難しい時は、夜の診察が終わった後でも構いません。勿論これは特例なので、口外されるのは困りますが__こうでも言わなければ病院に来る事は疎か、鎮痛剤の過剰摂取をされる可能性も0では無さそうですからね。』相手の仕事上、病院の診察時間に合わせられない事があるのは理解出来る。ただの医師と患者と言う関係で、相手だけを特別に扱う事は本来出来ないしやってはいけないのだが、相手の性格を思えば致し方ないと、結果的に甘い選択肢を、珍しく態とらしい表情と皮肉で投げて。___話が居なくなったミラーの調子に移れば再び表情は医師のそれに戻る。彼女の共感性の高さは何度か顔を合わせ話をする中で感じていて、相手が懸念する理由もわかるのだが。『確かに貴方が苦しむ姿を見る事で、同じ様に心を痛めるのは間違い無いでしょう。近くに居る貴方が一番わかっている通り、彼女は優しい女性ですからね。…けれど、見えない所で貴方が苦しんでいるのではないかと常に不安に思う事もまた、ミラーさんにとっては心を大きく磨り減らす事に繋がるのではないでしょうか。一概に何方が良いかを選ぶ事は出来ないですが、あくまでいち医者が客観的に見た意見を言うのならば…距離を置き過ぎるべきでは無いと思います。』相手がワシントンに居た約2年程、相手を想い電話を掛けて来たあの時のミラーの不安そうに揺れる声は未だに覚えている。お互いの心の為に、取り返しが付かない程に離れる決断をするのは避けるべきだと。けれど相手同様にこの先起きる事を知る由もないからこそのアドバイスだった。まさか当たり前に相手の近くに居たミラーが__緑の瞳が、恐怖の、拒絶の、過去を甦らせる切っ掛けになるなんて。相手が拘束時間を許可し、時間外の診察と処置を望むのならば、その日からどうにか点滴や安定剤でやり過ごす日々を送る事になるのだが、やがてその点滴や処方する薬の全てが効かなくなる程に強く重たいストレスが相手の身体にも心にも伸し掛る事となるのもそう遠くない話で )






4934: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-16 10:40:25

 





( 痛みを軽減し効果が長く続く点滴で処置をして貰えると言うのは有り難い話だった。慢性的に起きる痛みが落ち着くだけでも負担は減る。朝に時間が取れなければ夜の診療時間外でも“特例として”処置をして貰えるのであれば、なるべく時間を取ろうと頷いて。「…助かる。行く前には連絡を入れるようにする、」と口外しない事を約束した上で此方の“我儘”を受け入れこの捜査の期間中はサポートしてくれる事に対して礼を述べて。---自分が見えない所で1人苦しむ事に不安を抱え心を擦り減らす事に繋がる。相手の言う其の懸念は正にその通りだと思った。相手を巻き込まない為、無用な心配を掛けない為、距離を置く事は出来る。けれどその結果これまで以上に相手が不安に苛まれバランスを崩す可能性がある事も心配だった。「…もしもミラーが貴方に不安を吐露する事があれば、あまり不安にならないようにしてやってくれ。」ミラーの不安を増長しないように計らって欲しいと伝えて。---その後、時間を見ては点滴の処置をして貰い、治療を同時進行しながら捜査を続けたものの状況は悪い方へと堕ちていくばかりだった。眠る事が出来ず夜をソファーで、ワイングラスと共に過ごす事も増えた。聞き込みに行ったカフェで、彼女の姿を思い出して体調を崩し席で休ませて貰う事もあった。夜に打ってもらった薬の効果が切れる夕方頃に署で過ごす時間が最も気を張った。その日も薬が切れ掛けている事を感じながら、温かい飲み物で気を紛らわそうとマグカップを手に給湯室へと向かい。 )







 

4935: ベル・ミラー [×]
2025-04-16 13:30:29





( ___相手が短期間の内にみるみる調子を崩し、回復の兆しが見えていない事は診察をするのに顔を合わせるアダムス医師も、捜査を共にし、今は同じ部屋で暮らしているミラーも当然気が付いていた。けれど長く効果を発揮してくれると思っていた薬が効かない以上出来る事は限られてしまうのだ。___その日は小雨が降り少し肌寒い天気だった。聞き込みを終えて署に戻って来たのは日が落ちた夕方近く。重たく纏わりつく疲労を少しでも回復する為休憩しようと給湯室で紅茶を淹れようとした正にその時。マグカップを片手に相手が入って来れば自然と顔はそちらに向き、此処に来た目的に気が付くと何時もと変わらず微笑み「…淹れるよ。」と、マグカップを受け取るべく片手を伸ばして )






4936: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-17 02:29:38

 






( 給湯室には明かりが点いていた。後ろ姿で中に居るのが相手だと分かり聞き込みの成果について尋ねようと思ったのだが、振り向いた相手に飲み物を淹れると言われれば「…悪いな、」とだけ答えつつマグカップを手渡して。相手と視線が重なり手が触れ合う_______謂わばよくある日常のひとコマ。それなのに、一瞬ぐらりと視界が揺らぎ、何かは分からない急な不安感が顔を覗かせた気がした。一瞬脳裏に過った“何か”を深追いするべきではないと、僅かな心の騒めきには気付かない振りをする。しかし確かな不安、恐れ、そんな類の感情が湧き起こった気がしたのだ。「…っ、……」一瞬の違和感は同時に痛みを引き連れて来て、ぎゅっと締め上げられるような痛みが走るとシンクに手を突きつつ深く息を吐き出す。少ししてやや痛みの波が治まると「…このまま捜査に進展がないと、来週ごろから人繰りが厳しくなる。…未解決にはしたくない、」と、捜査が長引く事による影響が出て来そうだと告げて。 )







 

4937: ベル・ミラー [×]
2025-04-17 13:32:07





( 指先が触れ合うと同時に相手の持つマグカップが此方の手に移動する。それはこれまで何十回と数え切れない程にあった特別ではない当たり前の遣り取り。それなのに__此方を見る相手の碧眼の奥に“揺れ”が見えた気がして思わず動きが止まった。「…エバンズさん…?」思わず名を呼ぶも、その“揺れ”が何に対してのものか、どんな感情なのか具体的な事はわからずそれを確かめる前に相手は不調を訴えたものだから、シンクに手を付き痛みに耐えるその背中を軽く擦り。ややして険しい表情と共に告げられたのは今請け負っている捜査進展について。紅茶で良いかを確認し、己と相手の2つのマグカップにアールグレイのティーバッグを入れそこに沸かしたお湯を注ぎながら「それだけは絶対に駄目。」と、未解決だけは避けたいと同意を示し。「アンナさんの彼氏にも話を聞いたけど確りとしたアリバイがあるし、他の捜査線上にあがってる人達も同じ。…何か見落としがあるのか、それとも無差別な犯行だったのか__明日からはもう少し範囲を広げて聞き込みします。常連じゃなくてもカフェを訪れた事のある人は出来る限り探し出して。」ティーバッグから染み出る紅を真剣な表情で見詰めながら考えを巡らせる中でゆっくりとした口調の返答を。砂糖とミルクは相手に委ねる事とし、出来上がった紅茶を渡す為マグカップを差し出しつつ、「…少し落ち着いた?」と、痛みの具合を問い掛けて )






4938: アルバート・エバンズ [×]
2025-04-19 00:52:06

 





( 一瞬感じた騒めきは長引く事はなく、引いていく波のように静かに消えた。相手の問いには問題ないと頷き、淹れてもらった紅茶を手に執務室へと戻ると再び捜査の記録を見返して。---夜に病院に行く時間を取る事が出来ないまま家へと戻り、ベッドへと入ったものの相変わらず眠る事は出来なかった。眠っている相手を起こさぬように布団を出てリビングに向かうと、ワインをグラスに注ぎソファに腰を下ろして。アルコールを摂取すれば、泥のように眠れるかもしれない。そんな淡い期待と共に、空が白み始める頃までリビングにいる事もあった。捜査を進展させなければならないという焦りと、これ以上この事件に関わりたくないと拒む心の狭間で必死に立っている。間接照明を灯すと、何か少しでも手がかりになる事を見つけられないかと、鞄から資料を取り出してそれを読み始めて。 )







 

4939: ベル・ミラー [×]
2025-04-19 01:49:13





( ___相手がベッドを出た事に気が付かぬまま暫くは落ち着いた寝息を立て眠っていたのだが。時間にして凡そ1時間程が経ってからか、深く落ちていた意識が何かの拍子に浮かび上がり浅い眠りを引き連れたそこから更に数十分後。ふ、と目が覚め瞼を持ち上げると寝室はまだ暗く布団から出ていた片足が冷たい。今何時だろうか、ほんやりとした頭でそんな事を思い片足を布団の中にしまい込んだ所でベッドの広さを感じた。それは隣に相手が眠っていない事を表していて、此処数週間は気が付けば同じベッドに相手の姿が無い事が多々あった。ベランダで煙草を吸っている事もあれば、リビングでお酒を飲んでいる事もある。何もせずただ暗い部屋の中ソファに腰を下ろしたままじっと動かないでいる姿を見た事もあった。その度に胸が張り裂けそうな痛みを覚えるのだ。静かに手を伸ばし横のシーツに触れる。ひんやりとしたその生地は相手が寝室を出ていってからある程度の時間が経った事を示していて、ゆっくりと上半身を起こし薄い掛け布団を手にすると寝室を出。__リビングには間接照明が灯されていて、ソファに座る相手を照らしている。テーブルに置かれたワインが注がれたグラスを一瞥してから「……晩酌にしては随分遅い時間だね。」と、驚かせないように静かに声を掛けつつ隣に腰掛け、手にしていた掛け布団を相手の足に掛けて。その際距離の近い位置で相手に微笑みかける。緑の瞳は相手の目にどう映ったか )






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