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白む空に燻る紫煙 ---〆/4231


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自分のトピックを作る
4153: ベル・ミラー [×]
2024-03-05 23:47:22





( 仕事人間の相手が休みの申請をするとなれば、よっぽどの事があると判断され却下される事は間違い無く無いだろうとアダムス医者は頷き、入院の諸々の手続きをする為に一度病室から出て行き。__刑事課フロアでは何とも言い難い空気が朝から漂っていた。此処数日で一番数の多い記者達の姿を見た署員も多く、アナンデール事件から12年目を迎えた今日、悪い意味で話題となっているエバンズ本人は出勤していない。遺族に謝罪をしに行ってるだとか、この記者の数じゃ署に来れる筈が無いだとか、勝手な憶測が飛び交う中で、今日から応援に来ていたダンフォードは事情を知っているだけに表情も険しさが増して。__その日の夕方。朝からエバンズに送っているメールにも電話にも返事が無い事に不安を覚えたミラーは、相手の様子を確認すべくサラに電話を掛け。彼女の第一声の後「エバンズさんってまだ居るかわかる?」と、尋ねて )






4154: アルバート・エバンズ [×]
2024-03-06 01:31:07

 






( 入院に同意したものの、全てが変わってしまったあの瞬間______具体的には、突入のタイミングを窺う為に時計を見ていた当時の捜査官がけたたましい銃声を聞いた午後3時過ぎ、その時間が近付くに連れて体調は悪化していた。嫌でも当時の情景が鮮明に蘇り、妹が命を落とすその瞬間に向けて時をなぞるように記憶が繰り返される。幾ら嫌だと、見たくないと拒絶しても記憶の波は其れを許さないのだ。呼吸が可笑しくなり、苦しさからシーツを握り締める。自分が現場に入った時、不安そうな表情で園児を膝に乗せ抱き抱えながらも視線が重なったあの一瞬、確かにセシリアは自分に向けて大丈夫だと、信じていると頷いたのに。フラッシュバックに襲われ、昨晩と同じような酷い発作を起こしてしまうと思わずナースコールを押していて。---スマートフォンが着信を知らせ画面を見ると、そこには主張に行っている同僚の名前。電話に出て『どう?捜査は順調?』と尋ねたものの、相手が電話を掛けてきた理由は分かっていた。『警部補、今日は出勤してないの。署の前を張り込んでる記者もすごい数で…これは来なくて正解だと思う。』と告げて。 )






 

4155: ベル・ミラー [×]
2024-03-06 08:49:51





( ナースステーション内、相手が入院している病室の番号のランプが光ったと同時にナースコールによって2つの部屋が繋がる。『どうしました?』と言う看護師の問い掛けに返事と言う返事は無く明らかに様子の可笑しい呼吸音だけが聞こえる状況に、これは不味いと判断した看護師は点滴の準備をするや否や『直ぐ行きますからね!』と部屋を飛び出して。病室の扉を開けた時、相手は酸素マスクをしている状態ながら酷い発作に襲われていた。それは意識を失っても可笑しくは無いと思えるもので駆け寄った看護師は『エバンズさん、わかりますか?大丈夫ですからね、大きく息を吸って下さい。』と、励ますような声を掛けその腕に点滴の針を刺し。点滴パックからは軽めの安定剤が滴り、管を通り、相手の身体の中へと入る事だろう。__てっきり相手は出勤しているものとばかり思っていた。だからこそサラの言葉に思わず息が詰まった。例えどれ程の記者が署の周りを取り囲んでいたとて、相手は休む事を選ばない。けれどそれをした…せざるを得ない何かがあったと言う事ではないのか。「……今日までには全部解決して、戻るつもりだった。」ぽつり、不甲斐無さの中に自分自身にあてる恨み言のような声色で答えたのは、暗に順調では無いという返事。それを彼女に言った所で急に犯人が自首する訳ではないと百も承知なのだが。「…悪いのはエバンズさんじゃないのに…あの記事だって、絶対デタラメなのに、」1人出張に行ってる事が気持ちを不安定にさせているのか、相手の様子を知る事が出来ないのが怖いのか、一度口をついて言葉が落ちればそれは後から止まる事は無く、友人である同僚に結局気持ちをぶつける事となって )





4156: アルバート・エバンズ [×]
2024-03-07 23:19:28

 






( 酸素マスクの補助によって、酸欠になったり呼吸ができなくなったりする事はない筈だった。それでもパニック的に呼吸が乱れてしまえば正常なペースを保つ事は難しい。安定剤が打たれた事で少しずつ、鮮明だった記憶が遠くなり数十分もすれば呼吸は落ち着き眠りに落ちるだろう。---相手の言葉を聞いたサラは『…捜査が思い通りに進まないのはどうしようもないよ、誰も悪くない。』と答える。どれだけ経験豊富なベテラン刑事であっても、捜査が思い通りに進まないというのは往々にしてある事なのだ。今回の件で焦っているのは分かるが、戻って来られなかったのは相手のせいではないと。『分かってる。…けど、署内でもここ数日警部補への風当たりが強かったのは確か。今日で収まれば良いけど…』相手の言葉に同意を示しつつ、署内の空気は良いものでは無かったという事だけは事実として伝えておき。節目の今日を過ぎて、明日から記者も世間の話題も、全て別の所に移れば良いと。 )








 

4157: ベル・ミラー [×]
2024-03-08 13:26:22





( 此方の思い通りに事件が起きる訳でも、此方の思い通りのタイミングで犯人が逮捕出来る訳でも無い。加えて捜査中は何があるかわからないのだから彼女の言う通り“どうしようもない”のだと理解はしているが時期が時期なだけにどうしても自戒の気持ちは消えず。「捕まえたら、出来るだけ長い時間刑務所に入れてやる。」と、権限など無いに関わらず公私混同を投げ遣りに吐き捨てて。相手の言う通り矢張りあの記事も、報道も、署員達の中では大きな塊として燻り続けて居たようだ。全員がそれらを全く信じる事無くエバンズの味方__なんて上手くはいかない事は百も承知だが、その空気に晒され続けた彼がどれ程の苦しさを抱えたかは想像出来る。思わず深く重い溜め息を吐き出し視線は下方へと落ち「…例え事実と違ったとしても、世間が警察じゃなくて遺族側の言葉を信じるのは仕方無いと思う。、思うけど……それじゃあエバンズさんは何時まで耐え続ければいいの…っ、」世間への恨み言が漏れたのは、今日で報道も何もかもがピッタリと無くなり話題が他に移るとは考え難いから。__安定剤が効きエバンズが眠りに落ちた頃、早めに仕事を終わらせたダンフォードは相手が眠る病室の前に居た。アダムス医者から数日入院をする事が決まり、相手もそれを承諾した事を聞いて正直胸を撫で下ろす。家に1人で居てまた倒れる事になったら、と思ったからだ。小さなノックの後、静かに病室の扉を開ければ真っ白のベッドの上には相変わらず酸素マスクを付けられ点滴を打たれている相手が眠っており、点滴パックの中身が安定剤だとわかれば少なからずパニックを起こした事が伺えて。__時刻は午後3時を過ぎ、正しくあの事件が起きたその時間。沢山の人の命が一瞬にして散り、セシリアもまた、命を落とした時刻。眠る相手はどんな夢を見ているのか…その正確な時間を知るものはあの時あの場所に居た相手だけで、その寝顔を見ながらダンフォードもまた、やるせない思いを抱えて )






4158: アルバート・エバンズ [×]
2024-03-09 15:33:17

 






( 彼に対する相手の想いを知っているからこそ、気持ちはよく分かる。きっと相手の言う通り全てが真実ではないのだろうが、険悪な空気の中に居ても、白い目で見られていると分かっていても、彼は其れを否定したり感情を露わにする事をしなかった。矢面に立ったまま、自分を庇う事もせずに矢を受け続けているような______相手の言う通りたった一人で耐え続けているかのようだった。『警部補を見ていて…自分を庇う事をしない人なんだと思った。分かりやすく嫌な空気を出してる人なんて一蹴しちゃえば良いのにって私は思うけど、警部補は見ないふりをするだけ。ベルが代わりに怒ってた理由がちょっと分かったかも。』相手が居ない間、遠目に彼の事を見ていて思った率直な感想を言葉にする。同時にいつも彼の事で、自分ごとのように怒っている相手を思い出して少しだけ困ったように笑うと『ベルも1人で大変でしょ。あんまり焦り過ぎないで、でも早く帰って来るのを待ってるから。』と、敢えて悪戯に少し矛盾した言葉を掛けて。『そうそう、こっちは応援でダンフォードさんが来てるよ。署内の雰囲気が良くなると良いんだけど、』と付け足して。---ふと意識が浮上した時、目に入った時計はあの瞬間と同じ時を指していた。当時の捜査官が銃声を聞いたと後に証言したのは、午後3時26分。何も変わらないまま時だけが過ぎて12年が経ってしまった。耳の奥で連続する銃声が聞こえるかのような感覚を覚えたものの、意識はぼんやりしていた。安定剤の効果に加えて、度重なるストレスや不眠によって免疫が下がったのか熱があるようで身体は酷く重たく感じて。視線を動かせばベッドの隣にはダンフォードの姿があり「……ダンフォードさん、」と小さく相手の名前を紡いで。 )








 

4159: ベル・ミラー [×]
2024-03-10 00:50:54





( __そう、サラの言う通り相手は“見ない振り”をするのだ。それは決して自らの心を守る為の行為では無く何方かと言えば“諦め”。そしてきっと諦めと同じくらい強い“自己犠牲”と“贖罪”。あの事件で悪いのは間違い無く自殺した犯人ただ1人なのに、相手はあの時人質となった人達を助ける事が出来なかった、と言う罪を背負い続け、悪いのは自分だと降り掛かる全てをその身に受け続ける。「…もっと、自分を許して欲しい。」どれだけ願っても今の彼には届く事の無い思いを溢した後は、これ以上暗い気持ちにさせまいと此方を気遣い敢えて悪戯な言葉を選んだ相手の優しさに小さく笑い、「帰りを待たれてるって最高。居場所があるっていいね。」と、同じく悪戯に言葉を返しつつ「__そっか…うん、それ聞いて少し安心した。ダンフォードさんが居るならきっと直ぐに良くなるよ。」思いもしなかった応援相手に僅かに胸を撫で下ろしてはまるで自分にも言い聞かせる様に頷き。それから少しの時間互いに他愛の無い話をし、エバンズの事で何かあれば連絡をして欲しい旨を伝え電話を切って。__ふいに弱々しい声で名前を呼ばれ、視線を向ければ目を覚ました相手が此方を見ていた。安定剤の影響か、褪せた碧眼にはぼんやりとした色が纏っていて意識が確りしているのかも怪しい所。『…嗚呼、』呼ばれた名前に軽く頷き応えては、『まだ寝てて構わない。』と、緩い笑みを口角に携えて )






4160: アルバート・エバンズ [×]
2024-03-10 22:11:46

 







( 昨晩相手と会った時には言及しなかったものの、相手がレイクウッドに来る予定だという事は聞かされていなかった。だとすると自分が今日の休みを取った事で急遽応援を要請したのだろうか。「_____迷惑を掛けてすみません、…」署での応援業務以上に負担を掛けていると謝罪の言葉を口にしたものの、意識は朧げで苦しそうに息を吐き。本来一番しっかりしていなければならない今日という日に、自分自身が治療を受けているというのはなんと情けない事か。「……妹の目が、忘れられないんです…恐怖の中に、ほんの少しの安堵と信頼が確かにあった______俺たちが来たから、きっと大丈夫だと思ってくれていたに違いない、…其れを、裏切った。」酸素マスクに阻まれて僅かにくぐもった声で、朧げな意識の中不意に言葉を紡ぐ。胸が押し潰されそうに痛い、今はフラッシュバックを起こすほどに鮮明な記憶ではないものの忘れられない瞬間だった。安定剤が効いている為か時折ふと意識が遠のくように眠りに引き込まれそうな瞬間がある。深く息を吐くと目を伏せて。 )







 

4161: ベル・ミラー [×]
2024-03-11 00:09:58





ルイス・ダンフォード


( 相手は朧げな意識の中で謝罪をし、続けてあの瞬間の少しの出来事を話始めた。それは相手の中に未だ絡み付く決して解ける事の無い鎖で、許されない__許されたいけれど、そうであってはならないと思い続けている“罪”。相手の言う通りきっとそうであっただろう。妹だけでは無くあの場で人質になっていた人達全員が警察の姿を見て確かに安堵した筈だ。これで大丈夫、これで犯人は逮捕されて自分達は助かる、と。そう言う人達の目を己も数え切れない程見て来た。『__たった1人、恐怖だけを感じて絶望の中死ぬ被害者は山の様に居る。そんな中で一瞬でも希望があったなら、…お前の姿を見る事が出来たのなら、少なくとも“孤独”では無かった筈だ。』途切れ途切れに紡がれる後悔の言葉、それに返したのはもしかしたら優しいだけの寄り添いじゃないかもしれない。けれどどんなに後悔して自分を罰した所で亡くなった人は__妹は戻らないのだ。薄らと光を集めていた碧眼が瞼で覆い隠されたのを見て、一瞬目の奥が熱くなる感覚を覚えた。どんな時でも相手は楽になる事が無いその事実が無性に苦しくて悔しく感じる。『…代わってやりたいよ、』ぽつり、溢れた言葉は良いか悪いか。勿論己の大事な人が亡くなれば良いとは僅かも思わないが、相手の抱えるその気持ちだけを肩代わり出来たら、とそう思う。可愛い部下の残りの人生、その苦しみを肩代わり出来るのなら喜んで、と )






4162: アルバート・エバンズ [×]
2024-03-12 03:11:26

 






( 結果的には死の直前、妹と視線を重ねる事が出来たのは良い事だったのだろうか。言い知れぬ恐怖と孤独を感じさせるよりも_____例え一瞬でも安堵できた事は救いになったのだろうか。再び意識を手放す間際、相手の声が聞こえた気がした。いつまでも絡み付いて離れない、解放される事を自分自身許せずに居る苦しみを誰かに背負わせる事なんて出来ない。しかし一緒に背負いたいのだと言ってくれる言葉は、時に自分を絶望の淵から救ってくれるのだ。---免疫が落ちている事による熱は直ぐには下がらず、日が暮れる頃にはその症状はより重いものになっていた。浅い眠りの中で12年前の夢を何度も繰り返しながら、熱に加えて肺が炎症を起こしているのか過呼吸を起こしていない状態でも息をするのが苦しい。ミラーからのメールや電話には相変わらず反応しないまま時間ばかりが過ぎていて。恐らく世間では様々な報道がされ、妹の名前や写真が流れ、刑事Aは冷酷な極悪人として注目を集めているのだろうが自分は何もしないまま12年目を終えようとしている。必死に見ないふりをして過ごしていたものの、一度心身のバランスが崩れてしまえばまるでストッパーが外れたかのように状況は悪い方へと転じるばかりで。 )








 

4163: ベル・ミラー [×]
2024-03-12 11:16:12





( 眠る相手の様子が可笑しい事に気が付いたのはダンフォードだった。過呼吸を起こしている訳では無いのに酸素マスクの下の呼吸は酷く荒れていて木枯らしが吹く時の様な掠れた危うさまである。呼吸が苦しいからか、はたまた夢の中であの時間を彷徨っているのか、時折僅かに眉が顰められそれを見てナースコールを押せば駆け付けた看護師と医師によって肺雑音を確認され、免疫が落ちている事で恐らく肺炎を引き起こし、それによって高い熱が出ている事を告られ心だけでは無く身体までも相手を苦しめるのかとやるせない気持ちが膨らみ。安定剤の影響は勿論あるだろうが、眠れる時に寝るべきだと、そういう医師の言葉で相手が目を覚ましてから胸部のレントゲンを撮り最終的な肺炎の判断を下すと決定した後は病室には2人きりとなり。『……』細く吐き出される息で時折白く濁る酸素マスク、苦しげに寄せられた眉、窶れて見える頬、何もかもが痛々しく、何も言葉を発する事はしないものの徐に伸ばした指先は静かに相手の目元を滑って。__報道を極力見ないようにしているミラーだが、出張先の署でも街中でも少なからずアナンデールの話題は出るもので、その度に一向に返事が無い相手が心配でたまらなくなった。一方レイクウッド署では相手の知らぬ所でもう一つ悪い出来事が起こっていた。記者にしつこく付き纏われ“相手はどの様な刑事か”を幾度となく問い掛けられた若手の署員が“冷たい感じの人です。”という旨を答えたのだ。勿論その言葉に悪意は無く、署員からすれば普段見ているエバンズの性格を簡単に伝えただけの返答だったのだが、記者がそのままの意味で捉える事は勿論の事無く、これはチャンスとばかりに歪んだ捉え方をされた結果、これ見よがしに更に相手を悪く言う記事を書き始め。それは恐らく来週の週刊誌に掲載される事だろう )






4164: アルバート・エバンズ [×]
2024-03-12 23:31:03

 






( ふと意識が浮上するも、初めに視界に入った白い無機質な天井は嫌な歪み方をしていた。ゆっくりと形を変えながら揺らいでいるように思えて、思わず一度目を伏せる。息は出来ている筈なのに酸素を上手く吸えていないような、呼吸をする度に胸に鈍い痛みを伴うような感覚。其れでいて、つい先程まで見ていた夢にほんの些細なきっかけで足元を掬われ何処までも深く堕ちて行ってしまうような恐怖があった。そして目を覚ます度に、今日はあの事件が起きた日なのだと言うことを嫌でも思い出す。言いようのない不安感に襲われ、一瞬呼吸が上擦る。自分はたった一人だ、皆自分の元から去り一人取り残されてしまったのだという恐怖感で身が竦む。そして自分だけが、あの事件に関わった唯一の人間として憎悪を向けられ続けるのだと______高熱の所為だろう、側に相手がいる事に気が付かないままそんな思考に囚われて、元々浅かった呼吸はさらにペースを乱しマスクを曇らせて。 )








 

4165: ベル・ミラー [×]
2024-03-13 08:51:33





ルイス・ダンフォード



( 隈が色濃く残る目元を親指の腹で撫で続けながら、ふと相手の呼吸の上擦りを感じて瞳を合わせる。薄く開いた目は再び静かに閉じられた後だったが目を覚ました事はわかり、加えて肺炎によって引き起こされている胸の痛みや熱による苦しさに苛まれている事、何より目を覚ました後の“繰り返す今日”に絶望している事も手に取るようにわかった。明らかに狂ってしまった呼吸を繰り返す相手の頬を軽く叩く事で意識を留まらせる事は出来るだろうか。『エバンズ、わかるか?』見下ろす様な形で相手の顔を見遣りつつ、此処に居る自分の事を認識させる。頬から額へと移動した掌に伝わるのはどれだけの高熱かを思い知らせる熱さで、安定剤に加えて解熱剤も必要となる状況に些かの不安も覚える事となり )






4166: アルバート・エバンズ [×]
2024-03-18 11:58:39

 







( 頬を叩かれる刺激に再び瞼を持ち上げれば、揺らぐ視界の中に居たのはかつての上司。相手は確か自分の代わりに応援に来たと言っていた筈で、少し前にも言葉を交わした記憶があった。「_____ダンフォードさん、…」小さく言葉を紡ぐと、不意に腕を持ち上げ相手の手を掴む。点滴の管が揺れたが其れを気にする事はなく、ただこの言いようのない不安感の中で彼が側に居てくれる事が救いだった。「…あんな事、俺は言っていません……あの事件と、遺族に、誠実に向き合ってきたつもりです…っ…事件を踏み台になんてしてない、」相手を見据えたまま徐に紡いだのは週刊誌の記事に対する否定。意識が朧げなまま、せめて相手にはあの記事が事実ではないと知っていて欲しいと思ったのだろう。浅い呼吸の中で懸命に言葉を紡ぎ、訴える。木枯らしのような掠れた音が細く唇から吐き出され、その痛みに眉根を寄せつつ「……妹の、墓参りに行きたいんです…今日行ってやらないと、…」と譫言のように紡いで。 )







 

4167: ベル・ミラー [×]
2024-03-18 18:23:20





ルイス・ダンフォード



( 焦点の合わない碧眼が彷徨う様に朧気に此方を見、紡がれた名前に続けて弱い力で以て手を掴まれる。何かを訴える様に、傍を離れていくなと言う様に、薄く開かれた唇からは懸命な音が漏れ、それを確りと聞き届けるや否や、ちゃんとわかっているとばかりに頷き。『ああ、わかってるよ。お前が週刊誌に書かれている様な奴じゃない事は俺がちゃんとわかってる。…ジョーンズも、警視正も、ミラーの嬢ちゃんもお前の味方だ。』何も心配する事は無い、相手が悪だと思う人は少なくとも近い距離の人達の中には決して居ないと、安心させるようにそう言葉にしつつ窶れ冷えている頬を指の腹で軽く撫で。そのまま再び意識を落とすかと思われた相手は、朦朧とした中でも今日が何の日かを確りと認識しているようで、頻りに“お墓参り”に行きたいと所望する。狂った呼吸に阻まれながら、それだけはやり遂げねばならぬ使命感の様に。けれど相手の願いを今は聞く事が出来ないのだ。断らねばならぬ事にやるせなさを覚えながら、朦朧としている意識の相手に声が届く様にと僅かに顔を近付け『__叶えてやりたいが、今は絶対安静なんだ。免疫力が低下してるせいで肺炎になってる。…身体辛いだろ?』聞こえていようがいまいが、返事があろうがなかろうが、子供に言い聞かせるような何処と無く柔らかい声色で今の状態の説明を )






4168: アルバート・エバンズ [×]
2024-03-20 03:42:39

 






( 夢現な状態だったかもしれないが、それでも相手の言葉は確かに届き”味方だ“という言葉は少しばかり心を落ち着かせた。週刊誌に書かれた記事、其れを目にした殆どの人が自分を遺族に辛く当たり人の心が無い冷酷な男だと思っても、真実ではないと理解してくれている人が身近に居る。幾ら目を背けても、記者に付け回され周囲から白い目を向けられた時間は酷く長く感じて、心を抉られる苦しい時間だったのだ。---妹の墓参りに行く事は出来ない、と相手は自分に語り掛けたのだろう。しかし其れに反応を示すよりも前に再び意識を手放し眠りに沈む事となり。安定剤の効果により発作を起こしてしまうような状態ではないもの、肺の炎症の所為で呼吸は相変わらず浅く掠れたもの。高熱も続いており、今の状態では職務に復帰できる見通しは立たないと言わざるを得ないだろう。 )








 

4169: ベル・ミラー [×]
2024-03-20 10:20:41





( __相手が再び意識を手放してから数時間の間、意識の波の揺れはあり薄らと目が覚めた時にアダムス医師により手早いレントゲン検査と血液検査が行われ、酸素マスクは暫く外せない肺炎である事が明らかとなった。点滴の管からは解熱剤が流され、意識が混濁し発作に苦しめられる様になると出来るだけ軽い安定剤に変える__それが繰り返され面会時間が終わりになる事にはダンフォードは一度帰宅し。更に時間は過ぎて二度目の看護師の巡回が終わった夜11時30分過ぎ。何時ぞやと同じく盗んだ白衣に袖を通したクラークがニコニコと楽しそうな笑みを携えて相手の眠る病室の扉を開けた。そのまま眠る相手に近付き、枕元の間接照明を点けてモニターと点滴を確認してから上から顔を覗き込む。ぼんやりとしたオレンジの明かりに照らされた相手の顔は、数日前に署で見た時よりも遥かに窶れていて相当苦しんでいる事が伺えるものだから、思わず笑みも深くなると言うもので )






4170: アルバート・エバンズ [×]
2024-03-20 13:44:58

 






( 精神的な苦しさに加えての身体の不調と言うのは堪え難い苦痛だった。一度発作を起こして仕舞えば弱った身体が付いて来ず、まともに呼吸が出来なくなる。意識は僅かに沈み込んだまま、身体も鉛のように重い。そんな中で、幾度と事件の、あの日の夢を見るのだ。______僅かに意識が浮かび上がり、睫毛が震えると閉じていた瞼が薄く開く。ぼんやりとした灯りの中、此方を見下ろす人物は白衣を着ていて、医師の巡回だろうと思えば再び意識を手放しそうになり。変わらず酸素を供給されているにも関わらず、胸は重たく息はし辛いままだった。ふと、今は何時だろうかと思うのだがスマートフォンに手を伸ばす事さえ億劫で、暗い部屋の中では時計を確認する事も出来ずに。 )








 

4171: ベル・ミラー [×]
2024-03-20 14:12:00





アーロン・クラーク



( 暫しの間微笑みだけを浮かべ何も言葉を発する事無く眠る相手を見下ろし続けて居たのだが。ふいに長い睫毛が震え静かに瞼が持ち上がると、相手の持つ褪せた碧眼がオレンジの間接照明の光を僅かに浴びる。相手の意識はぼんやりとしていて白衣を着ている己を巡回中の医師と勘違いしているのだろうか。__医師は、こんな事しないですよね。そう言いたげに口角をより持ち上げると徐に片手を相手の胸に添え。__皮膚の、筋肉の、その下にある肺を押し潰す様に力を加える。酸素マスクをつけているとは言え、その加減を知らぬ行為は相手を肉体的に苦しめるには十分だろうか。相変わらず何も言葉を発する事無く、けれども相手の胸を押さえ付ける片手に込めた力だけは決して緩める事無く、己の見下ろす相手が苦しむ様を眺め続けて )






4172: アルバート・エバンズ [×]
2024-03-20 14:33:43

 






( 幾度となく短い覚醒と眠りを繰り返しているように、再び意識が静かに閉じる直前だった。不意に胸元に手が添えられた感覚を感じたのも束の間、其れは摩るような優しいものではなく明らか押し潰そうとするかのような強い力が込められて、呼吸を阻害する。「_____っ、かは…ッ、…」ただでさえ苦しかった呼吸はより浅く、酸素を取り込めなくなり胸に強い痛みが走る。その行為に、当然相手が医者などではない事は直ぐに理解して力の入らない手で相手の手を退けようとその手首を掴むのだが、びくともしない。外から圧が加えられた事で渇いた咳が唇を震わせ、喘ぐような呼吸に変わると苦しさから表情が歪み。 )








 

4173: ベル・ミラー [×]
2024-03-20 15:02:59





アーロン・クラーク



( 胸を押さえ付けた途端に襲い来る苦しさを逃がす術が無くなったのだろう、相手の薄く開かれた唇から喘ぐ様な呼吸が漏れたのを聞き、それが更なる加虐心を煽るものだから胸を押す手の力はどんどん強くなる一方で。もっと、もっと、と膨れ上がるその気持ちは最早正常な思考では無い。苦痛から逃れる為にと伸ばされた相手の指先が手首へと掛かるが、今の状態ではそんなものは幼子の力と然程変わらぬものであり何の役にも立ちはしないのだ。『__こんばんは、警部補。夜中なので静かにして下さいね。』漸く発した言葉はこの場、この状況を作り上げている当人とは思えない程の柔らかな挨拶とある意味周りへの配慮。その言葉の柔らかさとは裏腹にもう片方の手を伸ばした先は相手の口元で、あろう事か酸素マスクさえも外してしまうと『苦しいですか?』と、答えられない事も、状態も、わかりきっている問いを投げ掛けて )






4174: アルバート・エバンズ [×]
2024-03-20 22:44:49

 







( ただでさえ肺炎の所為で呼吸が苦しい状態の中、胸を押さえ付けられた上に酸素マスクまでもを口元から外されてしまえば酸素の薄い場所に放り出されたかの如く上手く呼吸が出来なくなる。言葉は声にならず、掠れた音ばかりが唇から吐き出され喘ぐように浅く上下する胸も徐々に早くなって行き。今日はあの事件から12年の日。自分に恨みを抱き続ける彼が大人しくしている筈などないと分かっていたのに。相手の囁くような声は、最早深い罪悪感と共に過去の記憶を蘇らせるトリガーにさえなっていた。穏やかな口調の裏で相手の考えている事が、一人逃げるのかと責め罵られる事が分かってしまうからこそ、身体は正直に恐怖を感じる。安定剤で辛うじて繋ぎ止められていたものが、今にも断たれて苦痛の波に押し流されてしまいそうな恐怖感。辞めてくれと訴えるように小さく首を振ったものの、暗紫の瞳に記憶を引き出されるような感覚に呼吸の乱れは徐々に大きくなっていき。 )








 

4175: ベル・ミラー [×]
2024-03-21 00:00:19





アーロン・クラーク



( 案の定相手は何も答えない。否、答える事が出来ないと言った方が正しい状況でゼェゼェと繰り返される呼吸音だけが静かな病室に響き。酸素マスクを外したとて息が出来なくなり死んでしまう事は無いだろうが、相手は今それ程の恐怖を感じている筈だと思うと、その感情を与えたのが自分自身である事に表情は無意識に満足気なものへと変わり。苦しげに顰められた眉、薄く開く唇、懇願するように首を振る仕草、それらを全て余す事無く見届けてから、そこで漸く外した酸素マスクを再び相手の口元に近付けるとそのタイミングで胸を圧迫していた片手も離し。『__解熱剤も、安定剤も、今日の貴方には必要無いものでしょう?』数秒前の狂気じみた行為が何も無かったかのように自然な動作で傍らの椅子に腰掛けては、先程迄の笑みの消え失せた真顔で同意を求めるような言葉を送る。そうして視線を一度相手から枕元にある時計に移すと時間を確認し、__『もうすぐ今日が終わります。事件から12年が過ぎ、セシリアさんの命日も終わる。…でもルーカスの命日はまだこれからだ。』確かにあの事件に弟は巻き込まれたが、即死では無かった為に命を落としたのは翌日の事だ。視線をゆっくりと相手に戻し、人差し指と親指で挟む様にして点滴の管を上から下へとなぞる。辿り着いた先は針の刺される相手の腕。針を固定する白いガーゼの部分を静かに撫でながら『…これ、必要ですか?』と、選択肢は相手にある問い掛けだと言うのに、何処か答えは一択しかないとばかりの圧の感じられる口調で緩く首を擡げて見せて )






4176: アルバート・エバンズ [×]
2024-03-23 00:30:59

 






( 妹の命日は、事件の日は間も無く終わる。しかし“ルーカスの命日はこれから“という言葉は心に深く突き刺さった。以前彼の口から聞いた通り、彼の弟のルーカスは銃弾を胸に受けながらも直ぐに命を落とす事はなく、苦しみながら事件の翌日に亡くなったのだ。全員がせめて即死であったならという願いは幻想に過ぎず、痛みに苛まれ苦しんだ被害者が居る事を知った絶望は大きかった。そんな彼の命日を前に、自分一人楽になろうだなんて_______心身共に弱った状態ではそう洗脳されるのに時間は掛からず、相手の問いに喘ぐような呼吸の中で小さく首を振る。結局いつも突き落とされる先は“彼らを見殺しにした自分が楽になって良いはずがない”という罪悪感。一度その思考に足を取られて仕舞えば、正常な思考は働かない。自分が苦しむのは当然で、楽になる処置を受ける事など許される筈がない、と。 )








 

4177: ベル・ミラー [×]
2024-03-23 12:54:25





アーロン・クラーク



( 身体の苦しみも心の苦しみも余す事無く受け止めねばならぬ状況の中で、それでも相手は此方の問い掛けに首を横に振った。“必要無い”と__その答えを受けてそれで良いとばかりに満足そうに一度頷けば『貴方の望み通りにしてあげますね。』と。それは決して“相手自ら”望んだ事では無く言うならば誘導の果の洗脳なのだが。__再び時計を見れば時刻は夜の11時55分。素晴らしい時間だ、と今一度ガーゼの上を緩く撫でてから、皮膚が引っ張られる痛みを少しでも軽減させる様に静かにテープを外し、これまた痛みを極力感じさせぬ様にと優しい手付きで以て腕から注射針を引き抜く。その行動は相手を苦しめようとする者とはとても思えぬ程に思い遣りに溢れて居るのだが、実際そうでは無い事は相手自身が一番良くわかっている事だろう。注射針をそのままベッドの脇に放った後は『…ちゃあんと苦しんで下さいね。』と微笑み掛け、小さな止血、とばかりにガーゼを再び相手の腕に貼り直しその姿を呑気に椅子に座りながら眺め。時刻は夜11時57分。セシリアや他の犠牲者が亡くなった今日も、後3分後に訪れるルーカスの亡くなった日も、何方も相手は苦しまねばならぬのだとばかりに )






4178: アルバート・エバンズ [×]
2024-04-02 22:04:33

 






( 点滴が外されても、此れまでに投与された薬は身体に残っている。直ぐに安定剤の効果が切れる事などあるはずがないのに、この男に点滴を外された上で“苦しめ”と言われればまるで操られているかのように身体は反応するのだ。正常な呼吸が困難な状況下で補助となる酸素マスクを外され、胸を圧迫され、既に浅くなっていた呼吸は相手に促されるかの如く徐々にそのペースを乱して酷い苦痛の中で過去の記憶が首を擡げ始める。セシリアの姿、倒れた園児たちの背中、血塗られた教室の床______遠くに押し留められていたそれらの光景が、少しずつ輪郭をはっきりとさせ鮮やかに蘇り始める。恐怖から呼吸は上擦り、浅い呼吸に耐えられない胸からは掠れた木枯らしのような音が響き。 )









 

4179: ベル・ミラー [×]
2024-04-02 22:56:38





アーロン・クラーク



( 枕元に備え付けられている時計の数字が00:00を示した事で“アナンデール事件から12年目”が終わりを迎えた。代わりに“ルーカスの命日”が訪れ結果的に相手はその何方も苦しむ事となり、クラークの負に塗れた気持ちを昂らせるには十分な結果となった訳で。__目前で苦しむ人を前にして何とも優雅に足を組み替える。手を差し伸べる事も、欲しい言葉を掛けてやる事もしない。ただ、まるで心など無いかの様に無機質な紫暗を向けるだけ。やがて“観察”に終止符を打つべく立ち上がると、枕元の間接照明の電気をOFFにし病室に再び暗闇をもたらし。『…さて、満足したので帰りますね。また会いに来ます。』静かに紡いだのは、相手が望んでいない事など関係無いとばかりの欲に忠実な言葉。苦しむ相手をそのままにさっさと病室から姿を消して。相手の様子が可笑しい事、点滴や酸素マスクが外れている事に看護師が気が付くのは、後数時間後の次なる巡回の時で )






4180: アルバート・エバンズ [×]
2024-04-10 03:40:05

 






( ただでさえ肺炎の所為で呼吸が苦しい中で発作を起こし、補助的な役割を果たすはずの酸素マスクも外れている事で意識を保つのに必要な酸素を取り入れる事だけで精一杯だった。管が繋がったままの針は床に落ち、先端からは少しずつ薬液が滲み出るものの其れが身体に入る事はない。巡回で看護師が状況に気付いた時には既に意識の混濁があり、夜中にも関わらず病室は慌ただしくなり。---血中酸素濃度がかなり低下していた事、肺炎の症状が重い事、発作が頻繁に起こる事、そして常に目の届く所で経過を観察する必要があると判断された事で、高度治療室へと移されたのは明け方の事。ダンフォードにその事を伝える術はなく、面会が出来ないと知るのはいつものように彼が病院を訪れてからになるだろう。 )








 

4181: ベル・ミラー [×]
2024-04-10 13:47:37





ルイス・ダンフォード



( __その日、午後からの仕事が比較的スムーズに進み何時もより数時間早く相手の面会に行く事が出来た、のだが。病室の扉を開けるよりも先に声を掛けて来た看護師から、夜中に酷い発作を起こした相手は高度治療室へと移動になり、医者や看護師の目の届くそこで面会は一切禁止だと告げられ絶句する。クラークの存在を知らないからこそ一夜にしてそこまで症状が悪化したのかと思うと同時に、ふ、と浮かんだのはクレアの姿。相手の過去を知る人で、相手もまたクレアにならば変な気を遣わず自然と弱みを見せられるのではと考えれば後の行動は早いもので。看護師に礼を言ってからスマートフォンを取り出し【クレア・ジョーンズ】の名前を押す。数コールの後に彼女の声が聞こえれば『…ダンフォードだ、元気にしてたか?』と先ずは名乗り『久し振りの連絡が楽しい話じゃなくて悪いんだが__エバンズが入院した。心身共にかなり状態が悪くてな、今日から高度治療室に移されたらしい。』続けて簡単に相手の状態を説明するもその声色が重たい空気を纏っている事、“高度治療室”の単語から大変な事になっている事は容易に想像が出来るだろう )






4182: アルバート・エバンズ [×]
2024-04-17 03:50:50

 




クレア・ジョーンズ




( ワシントンの本部で普段通り仕事をしていたクレアは、スマートフォンが着信を知らせている事に気付き其れを手に取り、画面に表示された人物の名前に思わず目を丸くした。電話先の彼はまだ新人の頃の直属の上司で、自分とエバンズにとってはいわば指導教官のような存在。彼がレイクウッドに出張に来たと言う話は聞いていたものの、直接話をする機会はなかなか無かったのだ。『はい、ジョーンズです。』と電話に出ると、“本当にご無沙汰しています、ダンフォードさん。”と言葉を続けて。しかしその電話は懐かしい再会を喜ぶには程遠い理由で自分に掛かって来たものだった。同期であるエバンズは心身に不調を来たし入院______更には高度治療室での治療が必要なほどに状態が悪いらしい。ここ数週間の週刊誌での報道は当然把握していて、誰よりも優しく繊細で、誰よりも不器用な彼の身をずっと案じていたのだ。彼の心を、二度と立ち上がれない程に打ち砕いてしまうだけの威力がある悪意を持った言葉、文章の数々。彼だけがあの事件で責められる事など、彼だけが罪悪感に苛まれる事など、決してあってはならないと言うのに。『……私も直ぐに向かいます。何か必要な物や…お手伝い出来る事があれば教えてください。』と告げつつも、エバンズの不調に際してミラーから連絡がなかった事を思う。いつもなら彼女は、こういう場合に自分を頼ってくれるのだ。『ミラー刑事は其処にいますか?』と、相手に尋ねて。 )









 

4183: ベル・ミラー [×]
2024-04-17 13:22:27





ルイス・ダンフォード



( 自分にとっては勿論の事、エバンズにとってもクレアの存在は大きいものだろうからこそ“直ぐに来る”と言う彼女からの申し出は心強いものだった。『助かる。…取り敢えずは来てくれるだけで有難いよ。治療室に居る以上面会は一切禁止らしくてな、何かしてやりたくても出来やしねェ。』と重たい溜め息混じりにやや荒っぽくそう答えては、元々エバンズが入院していた病室の扉の横の壁に背を凭れるように立ち直し。彼女の口から【ミラー】の名前が出ればそれにも思わず表情が険しくなる。『…それがな、数日前から出張で居ねェんだ。それに、アイツ自身今の状態を嬢ちゃんには隠したがってる。』遠くで1人捜査をしているミラーに余計な心配を掛けたくない気持ちはわからなくもないが、戻って来てそこでエバンズの今の状況を間近で見た時の心配や絶望感の方が何倍も大きいとも思うのだ。どうしたものか、と言いたげに再度溜め息を吐き出して )





4184: アルバート・エバンズ [×]
2024-04-19 02:10:07

 



クレア・ジョーンズ


( ミラーが側に居ないとは思っていなかっただけに、ダンフォードの答えに対する驚きは大きかった。最近は彼女の存在が彼の支えになっていると思える程に2人は近しい間柄。12年目という節目の時こそ不安定な彼の側に居たいとミラー自身も願った事だろう。しかしやむを得ず出張に行く事になった______そして彼もまた、遠くの地で頑張っている筈の彼女に心配を掛けまいと自分の状況をひた隠しにしているのだろう。やるせなさにため息を吐きつつも『……分かりました。夜にはそっちに着くようにします。』とだけ伝えて電話を切り。---その夜、レイクウッドに着いたのは21時前の事。駅前で待っていたダンフォードは数年前と全く変わらず、久しぶりの再会を喜んだ。エバンズを心配する時の口ぶりも表情も、あの頃と何も変わらないと思いつつ、彼の車で病院まで向かい。治療室の中で酸素マスクや点滴を付けて横たわるその姿は、彼が銃弾に倒れ意識を回復しなかったあの時を彷彿とさせた。痩せたように見える身体と、眠っていても分かる目の下のクマ、胸が上下する感覚は心なしか早く浅い呼吸が聞こえて来るようだった。彼に関する週刊誌の記事は未だ下火になる事なく世間の関心を集めていて、それが彼を追い詰めている事は一目瞭然。ミラーが居ないという事もまた、此処まで状況が悪化した要因のひとつと言えるだろう。ガラス越しに見る彼の姿に少しばかり表情を曇らせるも、相手に視線を向けて。『______彼はきっと怒るでしょうけど、ミラー刑事に連絡するべきだと思います。ここまで状態が悪いなんてきっと彼女も思っていないだろうし…状況が分からない方が不安なはず。それにあの子の存在は、今のアルバートにとっては大きな支えです。ちょっとしたきっかけで、彼が絶望の淵から引き上げられるのを前にも見たんです。』と真っ直ぐに告げて。 )









 

4185: ベル・ミラー [×]
2024-04-19 13:37:54





ルイス・ダンフォード



( __数年振りに顔を合わせた相手は様々な経験をして来たのだろうか、当時よりも何処か凛として見えた。本来ならばこうして時間を合わせる事が出来たのなら3人で食事の一つでも行きたい所なのに、高度集中治療室で沢山の管に繋がれ横たわる彼の姿がそんな状況では無い事を示しているものだから、胸が締め付けられる思いになるのだ。『…コイツのこういう姿は見たくない、』と、隣の相手に聞こえているかどうかの声量で溢れ落ちる様にして呟いたのは紛れもない本音。目を覚まさないかもしれない、という恐怖が纏わりついて離れないのはそれだけの危うさや儚さを彼から感じてしまうからか。__話がミラーの事に移れば隣の相手へと視線を向け。真剣な表情で紡がれる言葉を聞き、少しばかり思案するように再びガラス越しに眠る相手を一瞥しては『……担当してる事件が解決してもいないのに、とんで来るなんて事になったら大変だぞ。』と、言葉を返す。勿論ミラーが彼の支えになる人物の1人である事は間違い無いだろうし、彼の心を少しでも楽に出来るのがミラーだと言うのならば近くに居るべきだと思う。思うのだが。“適当な人”だと思われていても“警察”だ、矢張り捜査を優先的に考える所はあるし、何より何時かの日の飲み会で彼から聞いたミラーは衝動的な所があると。加えてミラーの事を深く知らない。再び相手の意見を聞くべき体勢の間を空けて )





4186: アルバート・エバンズ [×]
2024-04-19 16:24:21

 





クレア・ジョーンズ




( 確かに相手の言う事はもっともだ。彼の状態を知り、側に居たいという思いに突き動かされて今請け負っている捜査を打ち捨ててまでレイクウッドに戻って来てしまったら。そうなれば、状況がどうであれ彼女に対して仕事に対する責任感がないという評価が下されるのは間違いない。しかし、ミラーはそこまで衝動的には動かないという確信があった。『_____その心配は無いと思います。新人の彼女を此処まで育てたのはアルバートです。自分の私的な都合や感情で捜査に悪影響を及ぼす事は決してあってはならないと常に伝えている筈だし…彼自身が其の信条のもと動いているのを、一番近くで見ている筈ですから。』と微笑んで。自分たちの都合は遺族には一切関係のない事、だからこそ無理を押してでも第一に事件解決に注力する。その教えをミラーはしっかりと受けている筈だと。『彼の状態を打ち明けて、今はダンフォードさんと私が側に居るから心配いらないと伝えます。その上で、捜査が終わったら直ぐにアルバートの所に来て欲しいと、…そう言うのはどうでしょう?』と提案して。 )








 

4187: ベル・ミラー [×]
2024-04-19 23:33:50





ルイス・ダンフォード



( “心配は無い”と言い切った相手が続けた言葉は何の疑問も無く胸に落ちる納得の出来るものだった。確かにミラーの事は深く知らないがエバンズの事はよく知っている。彼が例え自分の身を犠牲にしたとしても遺族に寄り添い、最後の最後まで事件解決に全力を尽す事を。そうしてそんな彼の傍で、彼の背中を見て此処まで来たミラーならば__。大丈夫だと自信があるのだろうその微笑みを見て漸く僅かに微笑み返しては『…嬢ちゃんの事を知ってるのは俺よりもお前の方だ。そんなお前が心配ないと言うなら、そうなんだろうよ。…電話は頼む。』エバンズの事は勿論の事、目の前に居る相手の事も信じているからこその返事と共に提案に首を縦に振り。それから態とらしく肩を竦めると『…それにしても、昔からお前の言葉には説得力がある。』と、少しばかりの過去への懐かしさを滲ませて )





4188: アルバート・エバンズ [×]
2024-04-20 10:57:10

 





クレア・ジョーンズ



( 相手が微笑みを浮かべ同意を示してくれた事に安堵すると表情を緩め、未だガラスの向こうで眠りの中にいる彼に視線を向けて。相手の口から紡がれた言葉に再び相手へと視線を戻すと少しばかり困ったように肩を竦め『そんな事ありません、私からすれば2人の方がずっと。』と答えて。言葉の説得力で言えば、飄々としていながらどんな言葉にも圧倒的な信頼とのあるダンフォードと、頭の回転が早く口を開けば鋭いまでの正論を淀みなく紡ぐエバンズの方がずっと上回ると思うのだ。新人時代の本部での仕事は間違いなく大変だったのだが、あの頃に戻りたいとも思ってしまう。ダンフォードの元でエバンズとがむしゃらに捜査に明け暮れた日、喧嘩をした日、酒に付き合わされ3人で笑い合った日。冷たさのない彼の瞳を見たいと、相手も同じように思う事があるだろう。---相手に断りを入れて病院の中庭に出ると、スマートフォンを取り出しミラーの番号を表示させる。少しの間を空けたものの番号をタップすると電話を耳に当て。そうして相手が電話に出たなら『______もしもし、ベルちゃん?急にごめんなさい、…ちょっと話したい事があるの。今少し時間を貰えるかしら、』と切り出して。 )






 

4189: ベル・ミラー [×]
2024-04-20 12:14:48





( __事件の捜査は考えていたより何倍も難航したものの、後一歩の所まで迫れる状態にあった。それは勿論の事喜ばしい状況であるのだがどうしても引っ掛かるのはレイクウッド署で連絡の取れなくなっているエバンズの事。昨晩サラから連絡があり“警部補が戻って来ない”と言われたばかりなのだ。一日の有給では職場に復帰出来ない程に調子が悪いのか、最悪何処かで倒れている可能性もあるのではないか。考えれば考える程ネガティブな事しか浮かばない状況に本日何度目かの溜め息が重たく吐き出されたその時。ふいにスマートフォンが着信を知らせ、手に取れば画面にはクレアの名前が表示されていて。こんな時間に急に話したい事とは__何だか無性に胸の奥がザワザワと揺れる。「…勿論、今ホテルだから問題ありません。」と言葉を返しつつ、ベッドの縁へと腰を下ろし話を聞く体勢を )





4190: アルバート・エバンズ [×]
2024-04-20 17:00:58

 




クレア・ジョーンズ




( 出張先での捜査に対する焦燥感や彼の状況が分からない不安もあるのか相手の口調は普段のように明るいものではなく、自分の言葉を待つ様子からも少しの不安が伝わった。『今レイクウッドに来てるの。ダンフォードさんにも久しぶりに会ったわ。』と、明るい声色を心掛けつつ状況を語ったものの、早く本題に入るべきだろう。『______実は、アルバートの容態が良くないの。事件の前の日、夜に署内で倒れたのをダンフォードさんが見つけて、搬送されてそのまま入院になったんですって。ベルちゃんには言わないよう、アルバートから固く口止めされていたみたい。…でも、肺炎を併発して高度治療室に移る事になったって今日ダンフォードさんから電話を貰って。私たちも面会が出来ないんだけど…状況だけでも貴女に伝えた方が良いと思ったの。今は私たちが見てるから心配はいらない。捜査が終わったら、病院に来て欲しいの。』と、此処に至るまでの状況を説明して。エバンズの許可を得て連絡している訳ではなく、あくまで自分の判断で連絡したのだと告げつつあまり不安を煽らないように言葉を選びながら。 )







 

4191: ベル・ミラー [×]
2024-04-20 20:06:49





( 話し始めた相手の声は明るさを滲ませ、元上司との久し振りになるのだろう再会を喜んでいるものだったのだが。その前の切り出しの言葉の端に滲んでいた少しの重たさを見逃した訳では無いのだ。だからこそ相手の口から“アルバート”の名前が出た事に息を飲み、続いた“容態が良くない”に絶句する事となった。“どれくらい?”そう問い掛けるよりも先に、署内で倒れた、入院、肺炎、高度集中治療室、面会が出来ない…と。畳み掛ける様な“最悪”に思考が全く追い付かないとはこの事だ。そりゃあ連絡も取れないしサラが署に来ないと言う訳だ。加えて自分には連絡しないようにと口止めされていたなんて。「ッ、」きっと派遣先で事件捜査をしている己に余計な心配を掛けない様にと、ちゃんと集中出来るようにと、そう考えた配慮なのだろうが。例え命令だったとしても“こんな時”に何故彼の元を離れてしまったのかと思わず視界が歪む。スマートフォンを持つ手にも、シーツを握る手にも力が篭もりやるせなさに暫く言葉を紡ぐ事が出来なかった。一度深く深呼吸をして、“心配はいらない”の言葉だけを頭にも心にも残す努力をする。2人が側に居るのなら、きっと、きっと、大丈夫。「___事件解決次第…直ぐに行きます。だから……私が言うのも違うけど、エバンズさんの事をよろしくお願いします…っ、」一度ぎゅ、と瞳を閉じて“行きたい”を閉じ込める。けれども人の気持ちとはそんな簡単に割り切れないもの。堪えた言葉の代わりに涙が頬を伝い、雫が床へと落ちる前に拭っては「…クレアさん、本当はエバンズさんの傍に居たい…。」と、相手にだからこそ言えた本当の気持ちを震える息と共に溢して )





4192: アルバート・エバンズ [×]
2024-04-20 23:56:01

 




クレア・ジョーンズ




( 電話の向こうで相手が息を飲むのが分かった。僅かに吐き出された息で涙を我慢しているのであろう事も。そして全ての気持ちを押し殺して、相手は“捜査が終わったら”直ぐに病院に向かうと答えた。『…大丈夫、きちんと私たちが着いてるから。何も心配しないで。』と、安心させるように告げて。しかし暫しの沈黙の後に涙ながらに紡がれた言葉こそ、相手が心から願う事だろう。大切な人が苦しんでいる時、何を差し置いてでも側に居たいと願うのは可笑しな事ではない。『______そうよね、気持ちは分かるわ。…だけど貴女が悩みながらも出張に行ったのも、事件の日に帰って来る事を選ばなかったのも、アルバートの側に居たいと感じるのと同じくらい、あの人に近付きたい、失望させたくないって言う気持ちがあるからだと思うの。其れは正しい事。焦らなくて良いの、アルバートは貴女が全力で捜査に取り組む事を望んで、自分なりに努力した過程を評価する筈よ。その上で、戻って来たらたくさん支えてあげて。』---未だ病院に来てから目を覚ましている彼の様子を見る事は出来ていない。其れでも苦しんでいる彼が、相手が側にいる事で救われると分かっているからこそ焦りを生まないよう相手に語りかけて。 )







 

4193: ベル・ミラー [×]
2024-04-21 00:28:34





( 涙ながらに溢した本音を相手は否定しなかった。“気持ちは分かる”と今にも張り裂けてしまいそうな心に寄り添い、それでいて焦燥に駆られる不安定さを優しく包み込み大切な事を思い出させてくれる。__誰よりも尊敬出来て信頼の出来る上司に少しでも近付きたくて、彼の様な警察官になりたくて、此処まで来た。何時だって真っ直ぐに目の前の事件と向き合い遺族に寄り添う、そんな彼に指導された自分が“今出来るベスト”を放棄してどんな顔で彼の前に立てると言うのか。“良くやった”_ふ、と時折彼が掛けてくれる労いの言葉が鮮明に思い出され、涙が止まらなくなった。電話の向こうの相手には見えていないとわかりつつも、何度も何度も頭を縦に振る。「…きちんと事件を解決して、胸を張って、っ…戻って来ます、」彼にも、彼を支えてくれる相手やダンフォードにも、恥ずかしい姿は見せないと涙に邪魔されながらも強い意志の元でそう返事をしては、一度だけ小さく鼻を啜った後「クレアさん、ありがとうございます。」とお礼を紡ぎ )





4194: アルバート・エバンズ [×]
2024-04-21 01:03:46

 







( 相手の決意が籠った言葉に、クレアは微笑みつつ頷くと同時に『何かあったらいつでも電話して、』と元気付けるように告げつつ、彼女なら大丈夫だと確信していた。---エバンズは精神的なものも重なっているのか、肺の炎症が落ち着くのに通常の患者よりも時間を要し高度集中治療室を出る事ができたのは今朝の事だった。その間に彼自身の人格を否定するような______無理矢理事件とこじ付けたような内容の新たな記事が週刊誌に掲載されたものの、世間の関心を引き付け続ける程の掴みはなく、レイクウッド署の前からは少しずつ記者が減り始めて。一般の入院病棟に戻りはしたものの、酸素マスクは未だ外れず微熱も残っている状態。安定剤によって酷い発作は抑えられているものの、ダンフォードにもクレアにも多くを語らず、事件の幻影に苦しんでいる事は手に取るように分かった。 )







 

4195: ベル・ミラー [×]
2024-04-21 01:33:21





ルイス・ダンフォード



( __高度集中治療室から一般病棟に戻ったのは喜ばしい事だったが、だからと言ってエバンズの肺炎が治った訳でも退院が出来るまでに回復した訳でも無い。それでもガラス越しなどでは無く手の届く距離で相手の側に居られる状況は酷く安心出来るもので。事件から12年目は相手の心を傷付けるだけ傷付けて静かに過ぎ去り、けれどもまだその余韻を確りと残している。例え事件の報道がされなくなり世間が再び日常に戻ろうとも、相手の時間はあの時から止まったままだ。酸素マスクを付けて静かに呼吸を繰り返し、まるで遠くの過去を見ているような瞳を覗き込み『コーヒー買いに行って来るが、お前は何がいい?』と問い掛ける。その際目にかかる前髪の束を軽く払ってやり )





4196: アルバート・エバンズ [×]
2024-04-21 12:05:20

 






( 此方を覗き込むダンフォードと視線が重なると、自分は要らないと小さく首を振り。定期的に病室を訪れる2人に余計な苦労を掛けていることもやるせない、休みが長引き仕事に復帰出来ずにいる不甲斐なさや、重たく沈んだままの気持ちを抱えたままでいて。相手がコーヒーを買いに部屋を出た後、廊下を歩く革靴の音が聞こえた。其れは入院患者の見舞客か、回診の医師のものだったのだろうが思い出されるのはひとつ。ルーカスの分も苦しめと言った彼の顔が思い出されて、思わず喉元に息が引っかかる。僅かに身体を横向きに、ベッドの手すりを握り締めると上擦り始める呼吸に耐えながら苦しげに表情を歪めて。 )







 

4197: ベル・ミラー [×]
2024-04-21 12:37:20





ルイス・ダンフォード



( 何も要らない、と首を振った相手に『わかった。』とだけ答えて部屋を出る。同じ階の奥にある休憩室の自販機で温かいカップコーヒーを買いその場で立ったまま一口啜れば、喉を通り胃に落ちた苦味が僅かに曇る心を晴らした__ような気がした。それからもう一口飲み、まだ半分以上中身の残るそれと共に廊下を進み再び相手の居る病室に戻ったのだが。数分前までベッドに静かに横たわって居た筈の相手は、手すりを握り締めゼェゼェと荒い呼吸を繰り返しているではないか。不味い、と小走りに駆け寄りベッド脇の台にカップを置けば『エバンズ、大丈夫だ。』と、声を掛け背中を擦り。その際外れてしまわないようにと相手の口元にある酸素マスクを軽く押えて )





4198: アルバート・エバンズ [×]
2024-04-21 13:36:25

 






( 事件の日の光景が脳裏に焼き付きて離れない。いつか見せられた血の気のない妹の写真と、床に倒れた子どもたちの姿が鮮明に思い出され、思わず縋るように相手の手を掴んでいた。未だに肺に引っ掛かるような重たい痛みは幾らか残っていて、背中を摩られる感覚を感じながら懸命に呼吸を繰り返す。酸素マスクを抑えられるさりげない動作によって思い出されたのは、苦痛を与えようと胸を押さえつけた“彼”の動作。そして楽になる資格などないと酸素マスクを外された事。「_____ッ、」僅かに表情に恐怖心が滲み、掴んでいた相手の片手を離すとマスクを抑える方の相手の手を退かそうと、喘ぐような呼吸ながら力を込めて。 )






 

4199: ベル・ミラー [×]
2024-04-21 14:13:46





ルイス・ダンフォード



( 小刻みに上下する背中を何度も擦る中で一瞬褪せた碧眼と視線が交わった。しかしその瞳には何故か恐怖の色が浮かんでいて、続け様に酸素マスクを押える此方の手を外そうと力を込められるものだから、思わず背を摩る手が止まる。少しの驚きを含んだ声色で『エバンズ?』と、呼び掛けた所で“誰か”と勘違いしている可能性が浮かぶと、一先ず何に対してなのかわからぬ恐怖心を取り払う事が先だろうと抗う事をせずに静かに酸素マスクから手を離し。『大丈夫だ。…俺が誰かちゃんとわかるな?』背中に添えた手は相手の身体を支える為に、もう片方の手で次は酸素マスクでは無くコメカミ付近を緩く撫で、その瞳に自身の姿を映す為に少しだけ顔を近付けつつ落ち着かせるように、宥めるように、話し掛けて )





4200: アルバート・エバンズ [×]
2024-04-22 04:03:11

 






( 相手の手が離れた事で張り詰めていた恐怖は僅かばかり緩み、同時に促されるようにして視線が重なった相手の顔を認識すると問い掛けに小さく頷いて。上擦った呼吸は直ぐに落ち着く事はなかったものの、宥めるようにこめかみ辺りを緩く撫でる相手の優しい手に自分の手を重ねると、緩く握りしめて。週刊誌の記事のこと、事件のこと、クラークのこと______思い出すだけでどうしようもなく苦しくなる。相手の手を握り締めたまま、浅い呼吸を懸命に繰り返し苦しさを逃そうとして。 )







 

4201: ベル・ミラー [×]
2024-04-22 08:50:05





ルイス・ダンフォード



( 再び瞳が重なった相手が静かに頷くのを見て、それで良いとばかり軽く微笑む。髪を梳く様な動きでコメカミ付近を撫で続けながら、恐怖心が僅か薄まったのを感じて反対側の手で軽く酸素マスクの端に触れると『__これは、お前が付けてていい…必要なものだ。』と告げる。あの一瞬見せた恐怖の色が何処から来たものか、何に対してのものなのかはわからないが、背に触れた事に関してでは無いと直感的に感じたのだ。だからこその言葉を選び、後は未だ呼吸の安定しない相手が一秒でも早く楽になるのを待つ為に、頭から手を離し再び背を緩く擦ってやり )





4202: アルバート・エバンズ [×]
2024-04-25 09:52:31

 






( 言い聞かせるように紡がれた言葉に少しばかり怯えたような色が薄れると、背中を摩る手に意識を向ける。苦痛を取り除くために手を貸してくれている相手に促されるようにして、少しずつ気持ちが落ち着くと、今は楽になっても良いのかもしれないと思えた。やがて上擦っていた呼吸は酷い発作を引き起こすまでに悪化することはなく、少し掠れた正常なものへと戻り。 )






 

4203: ベル・ミラー [×]
2024-04-25 16:11:03





ルイス・ダンフォード



( 一度呼吸が正常に戻れば、後はよっぽどの事が無い限り今直ぐ再び狂う事は無いだろうと安堵する。安定剤や解熱剤がその効果を発揮し、相手の苦しみを一時でも落ち着かせてくれるのも近いだろうか。背中を擦る手は止めぬままに『少し休め。』と一言声を掛け。_それにしてもあの瞳に浮かんだ恐怖の色は何だったのかと思案する。過去の記憶に苦しむ姿を見るのは決して初めての事では無いが、あそこまで目に見えてわかる“恐怖”を宿した瞳は初めて見たように思うのだ。考えている内に背を擦る手が止まり、ただ黙したままに相手を見詰めて )





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