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白む空に燻る紫煙 ---〆/5330


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自分のトピックを作る
5311: アルバート・エバンズ [×]
2025-12-31 08:04:29

 



アーロン・クラーク


( 彼を犯人と決め付けていた政府機関の役人たちは、流出した極秘資料が外部から送り付けられた形跡を見つけると謝罪もそこそこに彼を解放した。一瞬で終わる事に何日も掛けていたFBIの行動の遅さには呆れるのだが、自分が彼を救い出す貴重な任務を遂行し感謝されたのだから良しとしよう。カフェでミラーと顔を合わせて礼を言われると、機嫌の良さそうな顔で『気にしないでよ、ミラーと警部補の役に立てて良かった。感謝されるって気持ちが良いね。』なんて言って朗らかに笑って見せる。まるで無償の善行をしたかのような言動だが、当然相応の“見返り”は貰うつもりだった。『今回、ミラーと警部補の両方と話をして、お互いを思い合う”絆“って言うのかな。それに感銘を受けたよ。だから…これは、俺からのプレゼント。』そう言って、液体の入った小瓶を2つ相手の前に差し出す。『相手の為なら、自分を犠牲にしても構わない_____それって、すごく美しい感情だよ。もっと見ていたいと思った。…安心して。困難を乗り越えてこそ、信頼関係は強くなるって言うし、』にっこりと微笑むのだが、相手には此の小瓶の中身が何か伝わるだろうか。『ひとつはミラーが自分で、自分に打つ分。もうひとつは、ミラーが警部補に打つ分だよ。』そう言って、とんでもなく事を言っていながら安心させるようににっこり微笑んで。 )






 

5312: ベル・ミラー [×]
2025-12-31 10:18:33





( 表情にも声色にも機嫌の良さが溢れているのだが、それが逆に恐怖を与えて来る事を相手は知っているのだろうか。対照的に険しい表情のまま話を聞き続けるも、軽い音と共に何かの液体が入った小瓶2つが目前に置かれた途端にその表情は一変した。目を見開き、身体が硬直する。この薬の中身を己は知っている___穏やかな波の様に数回揺れた水面も、害などありません的な笑顔も、何もかもが恐怖だ。そして何が一番恐怖かって、それを散々苦しみ続けたエバンズに打たなければならない事だ。「っ、ちょっと待って!」と引き攣る喉から思わず声を上げれば周りのお客さん達数人が此方を見るものだから、結局感情を抑えるしかなく。ぐ、と膝の上で拳を握り締めてから「…これが取り引きだって事はわかってる、でも___エバンズさんは巻き込まないで。薬なら両方とも私が自分に打つ。ね?それだったら良いでしょ?」これ以上の苦しみを彼に与える事は絶対的に避けたいのだと、懇願がありありと浮かぶ瞳で“出来ない”は無しだと言われたにも関わらず取り引き内容の少しの変更を求めて )






5313: アルバート・エバンズ [×]
2025-12-31 11:29:49

 



アーロン・クラーク


( 両方の薬を自分に打つ代わりに、彼は巻き込まないで欲しい______まさに、無機質な部屋でエバンズから頼まれた事と同じではないか。“自分は犠牲になっても良いから、代わりに相手を助けろ”と。『…っあははは、!本当、考える事は何処までも一緒なんだね。警部補も同じ事を言ってたよ、自分との取り引きにしようって。ミラーは巻き込まないで欲しいってさ、』可笑しそうに笑うと、目尻に滲んだ涙を拭いながらそう告げる。けれど、そんな言葉あまりに薄っぺらいじゃないか。『2人とも“自分が肩代わりする”ばっかりで飽き飽きしてたんだよ。だから2人の意見を平等に聞いた。なのに……これでも未だ文句があるの?』自分は振り回されているのだとばかりに肩を竦める。言葉尻は穏やかだが、瞳は笑っていない事に相手は気付くだろうか。『それに、お互い“出来ない”はなしっていう約束だったよね。ミラーがその気なら、俺も約束を反故にしたって問題ない。……“あのログ”を捜査したのが犯罪組織の仕業だって分かるように細工をしようか。警部補は、自分が罪を逃れるために別の署員からデータが送り付けられた痕跡を捏造した______可哀想な情報セキュリティ課の署員こそが、謂れのない罪をなすり付けられた張本人だって事になる。何年刑が加算されるかな、FBIでの信用も失墜するね。』相手を追い詰めるため、そんな事を微笑みながら告げる。『これは悪魔の取り引きだ。契約した以上、選ぶしかない。戻るも進むもイバラの道_____身動きなんて取れなくなる。分かってて俺に助けを求めたんだろう?』と、言い聞かせるように穏やかな口調で言葉を続けて。 )




 

5314: ベル・ミラー [×]
2025-12-31 13:05:15





( 突如心底可笑しいとばかりに目尻に涙まで滲ませながら笑いだしたその声に思わず反射的に双肩が跳ねた。“警部補も”と言う事はこの取り引き内容を彼は知っていると言う事なのか。すっかり混乱してしまった頭で落ち着けと自分自身に言い聞かせるのだが、今置かれている立場はどう考えても相当不味い。まるで蛇に睨まれた蛙の如く逃げ出したいとさえ思うのに身体は動かず視線を逸らす事が出来ないのだ。逃げ道を塞ぐ様に、徐々に追い詰める様に___人質を取られている人の気持ちは正にこれなのではとさえ思う程。___彼が薬を打たれその大き過ぎる苦しみと恐怖の中、涙を流しながら助けを求めた姿がフラッシュバックし、思わず身体が震える。あの恐怖を再び、明確な己の意思で相手に与えろと言うのか。人の心を持たない正しく“悪魔”。僅かでも感謝したのが間違いだったと揺れる瞳で射殺さんばかりに睨み付けるのだが。この“悪魔”と取り引きをした時点で後戻りは出来ないのだ。「………何時、やればいいの、」唇に血が滲むほど噛み締めた後、聞こえるかも怪しい至極小さな声でこの先の進み方を問うて )






5315: アルバート・エバンズ [×]
2025-12-31 18:31:20

 




アーロン・クラーク


( 今からでも彼を有罪に出来ると言った自分の言葉に、相手は観念したようだった。『いつでも良いよ、でも自分に薬を打つ時に、1人閉じ籠るのはなし。警部補の目の前でやる事が条件だ。…そうだ、あのバーにしようか。病院を出たらバーに来るように警部補に伝えてさ、素敵な演出だろう?』と楽しそうに提案する。彼の目の前で自ら薬を打たせる事で、彼の罪悪感を高める。自分を助ける為に、彼女は不要な苦しみを味わっているのだと見せつけるのだ。同時にミラーを自分に縋らせて、自分から離れて行く絶望も味わえば良い。『警部補への連絡は俺に任せてよ。俺の誘いなら絶対に来てくれるから。』笑みを浮かべながらそう言ってスマートフォンを軽く見せて。 )





 

5316: ベル・ミラー [×]
2025-12-31 20:18:49





( 彼が病院に行ってる間に薬を打ち、鍵の掛けた部屋の中で1人耐える事が出来れば___その後何事も無かった様に笑顔でまた彼を出迎える事が出来れば、暖かい部屋の中ホットミルクでも飲んで、眠たくなれば同じベッドで眠る…そうしてまた繰り返される同じ日常の中に身を置けば、それで全てOKだったのに。何が素敵な演出だ。「…地獄に落ちろ、」出した事の無い程低く、冷たい声で告げたのはありったけの殺意と嫌悪を纏った音。今この場で殺してやりたいとすら思うけれど契約はどうしたって執行されるのだ。「___やるなら、早くして。」出されたスマートフォンを叩き割りたい気持ちを抱えたまま、視線を逸らす事無く睨む様な瞳で見据え続け、呼ぶのなら早くしろとばかりに )






5317: アルバート・エバンズ [×]
2026-01-03 05:17:13

 




アーロン・クラーク


( 怒りを滲ませる相手の言葉にも『情熱的だなぁ、ゾクゾクするよ。』なんて笑って見せる始末。相手に急かされてエバンズの電話番号を押すと電話を掛ける。数コール後に彼の声が聞こえると『出所、おめでとうございます。体調は大丈夫ですか?…実は、貴方を解放した見返りに、ミラーにお願いする事が決まったんです。“あの“バーに来てください、懐かしい遊びをしましょう。』と告げて。バーへの呼び出しに悪い予感がしたのか、焦った様子で此方を問い詰めようとする彼に対して『此れは契約なんです。貴方だって、ミラーを犠牲にしてでも冤罪を免れたかったんでしょう?助けたのにとやかく言われるのは心外です、俺の気が変わらない内に直ぐ来てくださいね。』と微笑むと、一方的に電話を切って。そうして此方を睨んでいた相手に視線を向けるとにこりと笑い『______さぁ、此れで役者は揃った。バーに行こう、カクテルは奢るから。』と、相変わらず演技がかった口調で声を掛ける。同時に牽制の意味も込めて『…文句を言うのは無しだよ、危険を犯して助けたのに何も感謝されないなんて事になったら、気分が良くないからね。』と脅しておくことも忘れない。せっかく言われた通りに力を貸して彼を助けたのに責められてはたまったものじゃないと。エスコートするかのように相手に手を差し出すと、共にローズバンク通りのバーへと向かい。 )






 

5318: ベル・ミラー [×]
2026-01-03 10:49:31





( 牽制の言葉にも返事を返す事無く睨み付けるだけ。差し出された手を取る事も無く立ち上がり、自分が頼んだ飲み物のお金だけはきっちりと払うと重たい両足を引き摺る様にしてお店を出て。___BARの中は相変わらず薄暗く独特の雰囲気を醸し出していた。此処には嫌な思い出が多過ぎる。自然と表情は強張り、立ち竦みそうになる足を懸命に動か促されるまま店の奥の方へ進むと、ややして壁に凭れる様にして再び相手に睨む様な視線を向け「…そんなに人が苦しむのを見るのが楽しい?、」と、徐に問い掛ける。あの電話の内容ならばエバンズは間違いなく此処に来る。そうして来たら最後、再び薬により増幅された恐怖を一身に受け苦しむ事になるのだ___もう既に十分過ぎる程苦しんで生きていると言うのに。例え“あの事件”の遺族だったとしても、彼を苦しめる権利は何処にも無いのに )






5319: アルバート・エバンズ [×]
2026-01-03 12:19:01

 



アーロン・クラーク


( 今は店として営業していないバーだが、中にはウイスキーやリキュールなどの瓶が幾つも残っている。カウンターの中に入り、グラスを光に翳して汚れていない事を確認すると、カシスのリキュールを開ける。カクテルを作る準備をしながら、相手の問いには自然な雑談のように微笑を浮かべて頷いて。『_____勿論楽しいよ。人が追い詰められた時の表情が好きなんだ、最も人間的で…最も美しいだろう?』そう答えながら恍惚とした表情を浮かべる。『それに、ミラーが苦しめば警部補は自分を責める。“また守れなかった”って。…あの人のああいう顔が堪らなく好きなんだよ。俺にとってはミラーも警部補も大切だから、壊れていくところまでちゃんと見ていたい。自然な感情だろう?』そんな事を言いながらグラスの中身を混ぜていると、バーの入り口の扉が開く。息を切らせたエバンズが立っているのを見ると『…来てくれたんですね。出所して直ぐに呼びつけちゃってすみません。』と肩を竦めて笑う。政府機関で顔を合わせた時と同じく未だ隈は濃い。彼とミラーが顔を合わせるのは1週間と少しぶりくらいだろうか。『お約束通り、警部補が犯罪者になってしまう前に助けました。代わりにミラーが苦しむ羽目になったんですけどね。…まぁ座ってください、今カクテルを出しますから。』と促して。 )






 

5320: ベル・ミラー [×]
2026-01-03 13:07:14






( まるでバーテンダーが客との会話を楽しむ様な様子だがその内容は酷く歪んでいた。“大切だから壊れていく所まで見たい”と言う気持ちが自然な感情だと笑顔で言ってのける相手を理解する事は到底出来ない。「…私には一生わからないし、わかりたくもない。」と低く吐き捨てた後は視線を静かに下方へと落とすのだが。今はもう営業していないBARの扉が開いた事で弾かれた様に顔が持ち上がる。そこに居たのは今最も顔を合わせたくなかったその人。会いたかったけどこの場所に来て欲しく無かった___相反する2つの気持ちが複雑に絡み合い、この先に起きる全ての事を想像し泣き出しそうな気持ちになる。クラークがカウンターの中で優雅にカクテルを作ってるのを確認し、足早に相手の元に駆け寄ると、1週間ぶりの挨拶諸々も置き去りに相手の片腕を掴み「聞いてエバンズさん…!、確かに私はクラークと取り引きをしたけどそれは全部私の判断。自己犠牲なんかじゃないし、ましてやエバンズさんのせいだなんて事は少しも無い。これが最善だと思ったから選んだの。忘れないで、」まだ取り引き内容が何かを知らない相手に十分な説明も無いまま、伝えなければと思う感情だけを焦燥を纏った早口で告げつつ、それでも瞳の奥にある覚悟の色だけは消えていないだろう )






5321: アルバート・エバンズ [×]
2026-01-03 17:18:12

 



( 病院を出て直ぐにタクシーに飛び乗り、指定されたバーの近くの大通りで車を降りる。裏道に入ると、嫌な記憶の蘇るバーには、“Closed”と書かれた看板が斜めになって掛かっていた。中に入ると、暗い店内には2人の姿。バーテンダーかのようにカウンターでカクテルを作るクラークの姿を認識し直ぐに歩みを進めようとするのだが、それよりも早く相手が自分の片腕を掴んだ事で視線が落ちる。矢継ぎ早に訴えるように相手が紡いだ言葉に首を振ると「_____お前は戻れ、此れは俺とあいつの間で取り交わした契約だ。」とだけ告げて、扉の方へと相手を押しやる。其のやり取りを見ていたクラークは、マドラーで中身をゆったりと掻き混ぜながら『…ミラーが此の店から出た瞬間に、貴方が全ての罪を被る事になりますよ。犯罪組織に情報を売りながら、無関係な情報セキュリティ課の署員に罪を擦り付けた。ログを操作する事なんて造作も無い。何年刑務所に入る事になりますかね、』と告げて。身動きを取れなくなった2人を片目に『今日は、カクテルに“あの薬”を混ぜてみたんです。飲んでから効果が出る迄、注射よりは時間が掛かるでしょうね。…時間が経つごとに恐怖に追い詰められる。』と告げて、相手にグラスを差し出して。 )





 

5322: ベル・ミラー [×]
2026-01-03 19:16:14





( たった一言で身動きが取れなくなる程に、彼の言葉は強く或る意味呪いだ。そして一瞬で終わらせず敢えて苦しみが長引く方法を選ぶ彼は紛れも無い悪魔だろう。最も恐れるのは増幅された苦しみの渦中に身を置く事では無く、そんな己を見た相手が自分自身を責め再び過去の痛みを思い出してしまう事だ。受け取らない選択など出来る筈もな無く、冷たくなった指先に力を入れ彼からグラスを受け取る。赤紫がグラスの中で揺れ、カシスの香りが仄かに鼻腔を擽るそれは“何も混ぜられてなければ”とても美味しいカクテルだっただろう。___これを飲んで、このBARを出て1人になる事も、何処か別の部屋に閉じ篭る事も出来ないのだ。「……、」せめてもの抵抗とばかりにクラークを再度睨み付け、2人から少し離れた壁際にある椅子に腰掛けた後、深い息を吐き出してから中身を煽る。薬自体は無味無臭なのだろう、特別変な味や香りを感じる事無く赤紫はあっという間に胃に落ちた。___それからものの数分、ドクン、と心臓が大きく脈打ち言い表す事の出来ない嫌な感覚が全身に広がるのだが、彼の言う通り注射じゃない為じわじわと恐怖が膨れ上がるのだろう、まだパニック発作を起こす程では無いが時間の問題なのは自分自身が一番良くわかった。荒い息が漏れ、掌に爪が食い込む程握り締めながら僅かに俯く。落ち着け、大丈夫だ、と言い聞かせるのだが、やがて小さな身体の震えから徐々に恐怖に追い詰められて行き )






5323: アルバート・エバンズ [×]
2026-01-03 23:42:12

 



( 飲むなと叫びたかったのに、相手が其の赤紫のカクテルを呷る姿をただ見ている事しか出来なかった。自分の事は良いから彼女を助けてくれと赦しを乞えば良かったのか、けれど謂れの無い罪を背負って一生其のレッテルと共に生きて行く事はそう簡単に選べなかったのだ。自分の保身の為と言われればその通りだ。直ぐ近くに居るのに何も出来ないという無力感は、“あの事件”を思い起こさせた。また、何も出来ずに自分だけが傷付かない道を選ぶのか、と。『…警部補、其処から動かないで下さいね。“貴方が”ミラーに此の決断をさせたんです。貴方を救おうとしなければ、俺と取り引きなんてしなかったでしょうね。…今回も、其処で見ていてください。』ミラーがカクテルを飲み干したのを見届けると、ややしてクラークはそう言って笑みを浮かべた。彼女が苦しむのは全てお前の所為だと刷り込むように紡がれる言葉。少し離れた場所で立ち尽くしたままでいると、彼は相手へとゆっくり近付いた。そうして、まるで見せ付けるかのように相手の座る椅子の傍らに膝を突き、相手を見上げながらそっと手を握る。『_____ミラー、大丈夫だよ。俺は此処に居る。…こんなに震えて、可哀想に。本当はこんな苦しみとは無縁の筈だったのにね、』呼吸を上擦らせている相手に優しく声を掛けながら、寄り添うように背中を摩って。 )





 

5324: ベル・ミラー [×]
2026-01-04 03:22:22





( ___喉を通った薬は体内から静かに、けれど確実に過去の恐怖を増大させ連れて来た。身体がまるで痙攣を起こしているかの様に震え、それを自分の意思で止める事が出来ないのもまた恐ろしい。クラークが傍に来た時には既に残り僅かだった理性は恐ろしい記憶に飲み込まれた後で、手を握られ背中を擦られた事で勢い良く顔を上げると、もうその緑の瞳には彼の姿しか映ってはいなく。あっという間に溜まった涙は頬を伝い大粒の雫となって顎先から落ちる。殆どまともに出来ていない呼吸の合間に「…め、なさ…いっ、ごめ…っ……!、」と、途切れ途切れの謝罪を繰り返すのだが、それが誰に向けたものかは不明。暗い地下室で見た男、助けられなかった沢山の被害者達、そうして幼い少女の姿。数秒の間に様々な人達の幻覚が見えた。目前に居るのがクラークであると認識出来ぬまま、伸ばした指先は彼の服を緩く掴み、離れないで欲しいと訴える。怖くて怖くて、誰かに縋っていないと心を保てなかった。「…1人に、しないで…っ!」身体を無理矢理動かし、彼の首に両腕を回し、懸命に抱き着きながら嗚咽する。___と、見えていた恐怖の種類が変わった。一度大きく双肩が跳ね、声にならない悲鳴が漏れた。“エバンズさん”と唇は動いたのだが、音として出る事は無く、ただ、虹彩には恐怖と別に絶望の色が広がり )






5325: アルバート・エバンズ [×]
2026-01-04 16:41:12

 





( 相手が恐怖に沈む姿を、泣きながらクラークに縋り付く姿を、ただ見ている事しか出来なかった。あの時と同じ、頭では動くべきだと分かっていても身体が硬直してしまって動かないのだ。『…この耐え難い恐怖の中にも、警部補が居るんだね。』ミラーを抱き寄せ背中を摩るクラークは耳元でそう囁きながら慈しむように相手の髪を撫で、やがて此方を見て微笑む。『貴方は罪な人ですよね。貴方の存在がミラーを苦しめる。そして、その苦しみの中にも貴方は現れる。_____彼女を自分に縛り付けているんですよ。ミラーは光の側に居た筈なのに、貴方が闇に引き摺り込んだ。』クラークの言葉は、鋭利な刃物のように心に突き刺さる。彼の言う事は間違いではなく、自分と関わりさえしなければ、相手はこんな闇を知る事もなかったのだ。過去の様々な辛い記憶がフラッシュバックし、泣きながら震えている彼女の苦しみは計りきれず、クラークの服を握りしめる手にも力が籠っている。クラークの狙い通り、相手の側に居るべきではないという想いばかりが膨らんでいた。 )




 

5326: ベル・ミラー [×]
2026-01-04 17:37:16





( 頭の中に流れる恐怖の映像は実際にあった過去の出来事から、何時の間にか“創り出した”映像に変わっていた。___風景は暗く周りに明かりは無いのにエバンズの姿だけは確りと見える。相手の背後に聞こえる音は恐らく波で、だとするならば此処は海だろうか。名前を呼び、伸ばした手は強い力で振り払われ、己を見る褪せた碧眼は酷く冷たい色が滲んでいる。「エバンズさん」ともう一度呼び掛けたのだが返って来た返事は「誰だ、気安く呼ぶな。」と言う冷徹なもの。相手は己を知らない。___再び映像が変わり足元には少女の遺体。その傍には相手が立っていて矢張り冷たい目をしている。そうして「助けられなかったのか、お前には心底失望した。」と吐き捨て背を向けるのだ。___“エバンズが居なくなる事”“失望される事”が何より恐ろしいのだとこの薬は正直な気持ちを押し上げてくれるものなれど、“毒薬”だ。奇しくも相手が離れなければと思う気持ちと、己が恐ろしいと感じる事は同じ。「行かないで…っ、」と、絞り出した声は小さく震え、至近距離に居るクラークにしか聞こえていないだろう。後は何も言葉無く、ただただ絶望と恐怖の中に身を置き、ややして体力や精神力の限界が来たのか徐々に身体の力が抜けていき彼に身を預ける形となり )






5327: アルバート・エバンズ [×]
2026-01-04 19:33:51

 





( 自分が離れて行く事を相手がどれ程恐れているか、知る由も無かった。「____此れは、俺とお前の取引きだった筈だ。…っ頼むから、解毒剤を打ってやってくれ、」相手が苦しむ姿を見ている事に耐えられず、そう言葉を振り絞る。崩れるようにしてクラークに身体を預ける相手と、上下する肩を摩る彼。そして、成す術もなく立ち尽くしている無力な自分。相手が犠牲になる必要など何処にもなかったのに、今苦しみを受けているのは全て自分の為だ。“自分が、闇に引き摺り込んだ”______クラークの言葉は棘のように心を抉る。また“失う“かもしれないという思いは、重くのし掛かるばかりで。 )





 

5328: ベル・ミラー [×]
2026-01-04 20:17:25






( 頭の中に流れる映像は電源が切られた様にぷっつりと途切れ真っ暗になったのだが、漠然とした恐怖心は理由無く心身を蝕み意志とは関係無く流れ続ける涙を止める事も出来ず、ただただ力の入らぬ身体を唯一ある“温もり”に委ねるだけ。___真下にあるミラーの柔らかなグレーの髪を梳く様に撫でながら相手からの懇願に再び顔を向ける。一歩たりとも動く事が出来ずに居る相手に『身勝手に闇の中に引き摺り込んでおいて、自分の力で助け出す事も出来ない。…貴方、“ミラーの人生”を壊すつもりなんですか?』目だけは全く笑っていない微笑みで、まるでミラーに寄り添う様な辛辣な言葉を吐き捨てた後。それでも既に虚ろな目で言葉を発する事も出来ない腕の中のミラーにこれ以上の“愉しさ”は望めないと思えば、器用にその身体を支えながら内ポケットから望み通りの解毒剤を取り出し。『俺が取り引きをしたのはミラーですよ。でも、予想以上に愉しませて貰ったので後は貴方たちの観察をする事にします。』と、告げつつ解毒剤をミラーの首に打ち、そのままぐったりしている身体をソファへと横たわらせて。『はい、ドーゾ。お返しします。』態とらしく両手を軽く上げて一歩後ろへ下がり、そのまま位置的に良く見えるバーカウンターの中へと再び戻って行き )






5329: アルバート・エバンズ [×]
2026-01-06 16:35:38

 





( 自己犠牲でも、自分の所為で起きた事でもないと相手は言ったが、其れは嘘だ。あの拘置所から自分を救い出す為に_____その為だけに、相手はクラークと契約を結び、襲い来る恐怖に苦しんだ。そして、自分の力だけでは彼女を助ける事も出来ず、クラークに縋り付く姿を見ている事しかできない。無力感が心に影を落としたものの、相手に解毒剤が打たれクラークが離れると、ようやく相手の側に近づく事が叶うようになる。「____っ、ミラー、」相手の名前を呼び、ぐったりしている相手の肩を揺する。そうして棚に何本もストックされているミネラルウォーターのペットボトルを手にするとキャップを開け、始めに注射針を刺された首元を濡らし、相手の口元へと近づける。「直ぐ楽になる、…こっちを見てくれ、」視線が合わない事に焦りを感じ、相手に呼びかけながら頬を撫で。 )





 

5330: ベル・ミラー [×]
2026-01-06 19:56:12





( 胃に落ちた薬とは違い、注射器で直接血管を通り流された解毒剤は遥かに短い時間で恐怖を取り去った。けれど身体に残る倦怠感は大きく、過呼吸による酸欠状態になっていた為か指先は冷えてしびれが残ったまま。呼び掛けに応える事も身体を動かす事も出来ず、上手く焦点を合わせる事の出来ない瞳が捉えたのは口元に近付けられたミネラルウォーターのペットボトルで、飲みたいと言う意思で重たい唇を開くが空いた隙間は極僅か。結局少量の水すらも飲み込む事が出来ず、苦しそうに眉を寄せ数回咳き込み、その際口の端から溢れた水は頬とソファを濡らす事となり。頬を撫でる相手の指先の温もりを感じ取れているかは定かでは無い。虚ろな目に真っ直ぐ相手は映っていないものの、たっぷりの時間を掛けて漸く少しばかり呼吸が落ち着いてくると、「……帰りたい…、」とだけ、絞り出した至極小さな声量で告げて )






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