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白む空に燻る紫煙 ---〆/5658


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自分のトピックを作る
5639: ベル・ミラー [×]
2026-04-25 23:03:21





( ___朝、先に署に出勤した相手は矢張り警視正に呼ばれていたのだろう、執務室には居なかった。戻って来たのは30分程が経ってからだろうか。刑事課フロア内は矢張り相手の一挙一動に騒めいたり静まり返ったりと、流れる空気が忙しない。今もまた、フロアの扉が開き相手の姿を確認した途端に声は落ち、様子を伺う様な不躾な視線が飛び交い、相手が執務室に姿を消せば、ヒソヒソとあちこちで憶測が舞う。___給湯室で紅茶を淹れ執務室の扉を開ける。朝見た時同様、否、それよりも少しだけ濃くなった疲労や調子の悪さが滲み出る相手の顔を一瞥し、マグカップを手渡してから「…警視正?、」と徐に問い掛ける。朝一番にもし彼に呼ばれていたとしたら、それは間違いなく訴訟の件で何か進みがあったか、もしくは話し合いだ。全てに踏み込める立場では無い事は百も承知だが、傍観する事は出来なかったのが正直な所で )






5640: アルバート・エバンズ [×]
2026-04-26 00:19:04

 




( 執務室の扉が開くと其方へと視線を持ち上げる。警視正が特段の業務を自分に割り振っていない今、この部屋を訪れるのは警視正かミラーかの2択と言っても良い。現に立っていたのは相手で、問われた言葉に対して「…あぁ、」とだけ答えて。受け取った紅茶を受け取り、中身をゆっくりと啜れば「…裁判の準備が忙しくなる。署に居ない事も増えるかもしれない、」と告げておき。相手は自分を気に掛け度々執務室を訪ねてくるが、執務室にいない、或いは署にいない事も今より増えるだろう。 )





 

5641: ベル・ミラー [×]
2026-04-26 08:50:38





( 相手の返答は冷静なもの。確かに相手自身が調べなければいけない事や、諸々の準備がどうしたって必要になってくるのは間違い無く、矢張り避けては通れない道なのだと深い息を吐き出し。「…何か手伝える事があれば言って、」買って来て欲しい物、急遽必要になった物の手配___直接裁判に関わらない事でも手助けが出来るならと。「公判はいつ?」当たり前に問い掛けたそれは、奇しくも先程相手と警視正が話していた事に触れる内容。警視正に呼ばれたタイミングで裁判の準備を始めると言う事は、日程が決定したと言う事だろうと )






5642: アルバート・エバンズ [×]
2026-04-26 16:06:31

 




( 当然のように相手が問いかけて来た言葉に、警視正の言葉通りやはり傍聴席に座るつもりでいるのだろうと思う。「…さぁな、まだ決まってない。」と答えたものの、こういう事柄には妙に聡い相手の事。公判まで隠し通せる可能性は低いだろうとも理解はしていた。「お前も捜査があるんじゃないのか、…此方にばかり構ってもいられないだろう、」と告げておき。 )




 

5643: ベル・ミラー [×]
2026-04-26 18:21:14





( “決まってない”訳が無い。その言葉で漸く相手が自分を傍聴席に座らせない様に考えていた事がわかり、思わず物言いたげな半眼で見据え。「…私が検察官を殴るとでも思ってるの?」相手は別なれど、前科があるにも関わらず不服だとばかりの声色で緩く首を擡げて。「今は何の捜査も請け負ってない。もし事件が起きれば確りそれに集中するから。」と言葉を返し。「…それで、いつ?」相手の想像通り食い下がる。日程を聞くまでこの部屋から出ない、とでも言わんばかりの強気な態度で )






5644: アルバート・エバンズ [×]
2026-04-27 00:04:14

 




( 相手はやはりこの件に関しては食い下がる。不服を全面に押し出した表情で問われた言葉には「…お前が傍聴席で大人しく出来るとは思えない。検察官も、向こうの弁護士も殴りかねないからな、」と、まるで相手を相手を獰猛な動物か何かのような失礼な物言いで肯定する。「今回の件で、あまり目立つ動きをするな。傍聴席には警視正がいる、お前は署で待っていろ。」と告げて。相手を法廷の場に立ち合わせたくない。記者や大勢の目がある事は勿論、証言台で過去を問い詰められる自分の姿を見られる事にもまた抵抗があったのかもしれない。 )





 

5645: ベル・ミラー [×]
2026-04-27 00:42:11





( 検察官だけでは無く、遺族側の弁護士にまで手を上げる可能性があると言われれば、不服の色も更に強まると言うもの。「…私が何に見えてるの。」と、あからさまな溜め息を吐き出すも「エバンズさんの指示には必ず従う。その日1日喋るなって言うならそうするし、大人しくしろと言うなら絶対に動かない。…だから、傍聴席には居させて。」相手が危惧する事は、指示に背く事はしないと訴える。例えどれだけ感情が昂り、裁判を滅茶苦茶にしたくなったとしても堪えると。「…エバンズさんに、味方が居ないように見えるのは嫌なの。…警視正は勿論味方だけど、立場上、周りは“上司”っていう認識になるでしょ。私はそう言う肩書きの無い“味方”として座りたい。…お願い。」相手の味方をする事で飛び火する事を恐れているのかもしれないが、そこだけはどうしても譲れない。遺族側の傍聴席には大勢の関係者が来るだろう、そしてその人達は皆が相手に冷たく悪意ある視線を向けるだろう。相手が証言台に立つ時、四面楚歌状態の場所で、孤独だと思って欲しくないし、周りからもそう見られて欲しくない。お願いだから許可してくれ、と訴える様な視線を向けて )






5646: アルバート・エバンズ [×]
2026-04-27 01:00:17

 




( 本当は怒らせてでも、相手を法廷の場から遠ざけたかった。あの場に同席することは、それだけ相手にとってリスクだと考えていたのだ。けれど。相手が告げたのは、何処までも自分の事を考え、支えようとする言葉。傍聴席から冷たく蔑む視線が向けられる事は理解していたが、其の場での自分の味方の存在などとっくに諦めていた。1人で闘わなければならないと、当然のように覚悟していた。しかし相手はどうだ。殺伐とした法廷の場でさえも、例え何も行動を起こせなくとも、自分の味方で在り続けようと訴えている。相手を見る目に初めて揺らぎが生まれ、視線を落とす。暫しの沈黙の後、再び相手に視線を向けると既にその揺らぎは消えていた。「_____記者にも、遺族にも、何も言わないと約束出来るか。中立の立場の一傍聴者として、成り行きを見届けるだけ、…其れが出来るなら、」相手の強い思いに絆され、そう答えていて。 )





 

5647: ベル・ミラー [×]
2026-04-27 01:24:37





( 相手の視線が下方に落ち、暫しの沈黙が生まれる。その沈黙がとてつもなく長く感じたのは、こう言う状況では己も相手も譲れない気持ちがある事がわかるから。___相手が頷いてくれるまで何時間でも粘るつもりだった。けれど顔を上げた相手が静かに告げたのは再度の拒否では無く“約束”を守るならと言う許可。思わず瞬き、けれど直ぐに頷く。「約束する。絶対に何も言わない。__ただ、エバンズさんから見える位置に座ってるだけ。」法廷内の殺伐とした空気感、傍聴席からの嫌な視線、相手を苦しめようとする言葉の数々、間違いなく感情は揺れる。それは今の段階でわかっている事。けれどどれだけ心が痛く、もうこれ以上相手に何も言うなと叫びたくなっても、署で待つ事を選ぶなんて出来なかった。相手が証言台で耐えるのならば、同じく自分は傍聴席でその痛みに耐えたいと思うのだ。「…教えて。公判はいつ?」強い光宿る瞳を細め、今度は極めて穏やかな声色で公判の日程を今一度問うて )






5648: アルバート・エバンズ [×]
2026-04-27 13:14:29

 




( 相手の口調には強い決意が宿る。自分を1人にはしない、味方で在り続けると言った相手の言葉には一切の偽りがないのだろう。そこまで言うのなら拒絶する事も出来ないと観念すると「……2週間後の木曜日だ、」と答えて相手に書類を見せ。---そこから、警視正が準備した弁護士とのやり取りや、あの日について詳細に証言するための確認作業が始まった。証言台に立つ以上裁判に向けての準備を進めなければならないのは理解はしているが、やはり当時を思い出すのは負担の掛かる作業。それでも証言台に立つ日まで、自分に出来得る準備を行った。初公判に向けて各社も報道を続けていたが、当時を証言できる唯一の存在として、役割を果たそうと。---そして迎えた裁判の当日。署内の落ち着かない雰囲気と視線を感じながらも、執務室でネクタイを締める。程なく警視正や弁護士、ミラーと共に裁判所に向かう事となるだろう。 )





 

5649: ベル・ミラー [×]
2026-04-27 18:47:36





( ___2週間という日はあっという間に過ぎ去った。初公判の日程が報道を通して世間に知れ渡った事で興味を示す人達が増え、そんな人達が増えると報道も更に加速した。___そうして迎えた当日。普段と変わらぬ紺色のスーツに身を包み執務室で相手の隣に立つ。その表情は証言をする身で無いながらに緊張したもの。やがて少し遅れて警視正が入って来ると、相手と己とを交互に見て少しばかり表情を和らげた。“こうなる事”は予想済みだったと言えよう。直ぐに表情を真剣なものに変えると『弁護士とは裁判所で落ち合う事になっている。お前は控え室で最終確認、私とミラーは傍聴席に向かう。』と、それから数分間大体の流れの確認を行った後、裁判所に向かうべく署を出て。___裁判所の入口では先に着いた担当の弁護士が待っていた。4人が顔を合わせそれぞれ軽く挨拶をした後、別れる。弁護士は相手を連れ控え室へと入るや否や、早々に裁判の進みを1つ1つ追って確認し、想定される質問の最終チェックをし、最後に『あちらの弁護士は必ず貴方の“過失”だと主張して来るでしょう。けれど、感情的な言葉は言わないようにお願いします。曖昧な発言も控えて下さい。覚えていない事は覚えていないと言って構いません。』と、告げて )






5650: アルバート・エバンズ [×]
2026-04-27 21:00:10

 




( 皺の無いワイシャツにスーツ、緩みなく締めたネクタイ。普段よりきちんとした服装さえもが、緊張を運んでくるようだった。裁判所の入り口で弁護士と落ち合うと、小さく息を吐いてから2人の目を見て頷く事で大丈夫だと伝え、相手と警視正と別れて。感情的にならず、あくまでも淡々と、事実のみを語る。弁護士の言葉に頷き、互いに方針を確認すると“その時”を待った。---時間になり法廷に入ると、裁判官が開廷を告げる。傍聴席には記者、遺族、そして警視正とミラーの姿。沈黙と冷たい視線が空気を重くしているように感じた。証言台に立つと、検察側弁護士が立ち上がる。『被告人、アルバート・エバンズ警部補。アナンデール事件当日の行動について、基本的な確認を行います。』そう告げて、モニターには映像が映し出される。アナンデール幼稚園の外観と、捜査官や機動隊員の姿。警察の突入直前の映像だった。時系列を追うようにして、映像や資料の提示と質問が続いていく。映像から目を逸らす事は許されない。あくまで冷静に、心を無にして目の前のモニターを見据え、いくつかの質問に答えて。 )





 

5651: ベル・ミラー [×]
2026-04-27 21:30:29





( ___検察側の弁護士が告げた“被告人”との言葉。それを聞いただけで胸を鷲掴みにされた様な嫌な感覚が湧き上がった。この事件の本当の被告人は相手では無く“自害した犯人”だと誰もが本来わかっている筈なのに。その後も続けられる質問の数々。証言台に立つ相手は映像から決して目を逸らさず真っ直ぐに見据えながら、1つ1つの質問に冷静に答えていく。一度停められた映像。『この後、捜査官達が園の中に突入する映像に切り替わりますが、此処で1つ確認です。アナンデール事件の指揮官は誰でしたか?名前を正確に答えて下さい。そして、その人物の突入の指示は本当に適切だったのか。貴方はどう考えますか?』検察側弁護士が相手を見、質問する。当然遺族も、遺族側の弁護士も答えを待つ状況。傍聴席に座る警視正は、相手と同じく今は停まっている映像を見詰めていて )






5652: アルバート・エバンズ [×]
2026-04-27 22:45:50

 



( 検察側の弁護士から投げ掛けられた質問に、思わず言葉が詰まる。あの事件の指揮官は、未だ若かった自分にとても良くしてくれた先輩刑事だった。彼の顔が浮かぶのと同時に、酒に溺れ壊れて行った姿を思い出す。あの事件以降、彼はずっと自分を責めていた。自分の“判断ミス”の所為で全員が命を落としたのだと。そんな心の痛みを麻痺させようと飲み続けた酒の所為で、彼は命を落とした。「_____ベン・ウィリアムズさんです。…当時の本部指揮官でした、」記憶を振り払い、あくまで冷静にそう答える。最後に会った時に見た虚ろな目、そして眠るようだった姿が脳裏に散らつき心が痛むが、今は其れに意識を取られてはいけない。心を乱すなと自分に言い聞かせながら小さく息を吐き出し「……彼は、あの時…最善を尽くそうとしていました。其れだけは間違いありません。」と答えて。 )






 

5653: ベル・ミラー [×]
2026-04-28 07:38:42





( 【ベン・ウィリアムズ】彼の名前を勿論忘れる事は無かった。あの時、彼の訃報を聞いた相手が一瞬壊れ掛けた___机に大量に置かれたお酒のビン、部屋に充満したアルコールの匂い、感情を失ったかの様に虚ろな目をした相手の顔。全てが一瞬にして思い出され思わず双眸を固く閉じる。___『“最善を尽くそうとしていた”と言うのは貴方の主観ですね。それは“適切だった”とは言えないと言う事ですか?』と、検察側弁護士が。続ける様に遺族側の弁護士が『最善を尽くした結果があの結末だったと、貴方は遺族の方々にそう説明するのですか?』と問い掛け、直ぐに相手の弁護士が『異議あり。今の質問は、証人に“遺族感情”の責任を負わせる意図があり、適切ではありません。』と質問を変える様に告げる。その瞬間は傍聴席に座る遺族の視線が鋭くなり、一瞬の騒めきも起こった。___それから質問は繰り返され、一時停止していた映像が再び流れる。園へと突入した捜査官達。無線記録も一緒に提示され、捜査官と犯人の遣り取り、教諭の声や園児の泣き声、当時の記憶が鮮明に過ぎる数々が公開された。そうして“最悪の結末”が映像の中に訪れた。響き渡る銃声と悲鳴、捜査官の怒号、やがて嵐が過ぎ去った後の様に一瞬にして静まり返る。傍聴席では啜り泣く声が。警視正は表情に険しさを滲ませ、ミラーは思わず息を詰め俯き、膝の上で拳を固く握り締めて )






5654: アルバート・エバンズ [×]
2026-04-28 11:47:12

 




( 自分が判断を誤ったのだと、指揮官だっただけで全ての責任を抱え込んで壊れてしまった彼。明らかな致命的ミスがあった訳でもないのに、この法廷で“彼の判断が誤っていた”と、全ての責任を彼に押し付ける事は、どうしても出来なかった。一方で事件の辿った結末を考えると、遺族を前にしてあの判断が正しかったと押し通す事も出来ない。適切かそうじゃなかったかなど、誰にも分からないのだ。言葉に詰まっている間に弁護士同士のやり取りと、傍聴席の騒めきを聞いた。同時に彼の名前を口にしてから、断片的な記憶が蘇り過去に引き摺られそうになるのを懸命に振り払おうとしていた。虚な瞳で酒を飲んでいた彼の姿、彼の死を知らされた時の絶望が蘇る。今は冷静になれと、証言台を掴む手に力を入れる。---其の後再び再生された映像は、その全てが過去を鮮明に思い出させるものだった。“音“は否応なしに過去の記憶を引き摺ってくる。視線を映像から証言台へと落とす事で、視界の端が揺れ、呼吸が浅くなるのを必死に押し留める。此処は法廷だ、幼稚園じゃない。繰り返し自分にそう言い聞かせる事に集中しなければ、揺らぎを隠しきれないと思った。弱みを見せる訳にはいかない。小さく息を吐き出してから、ゆっくりと視線を持ち上げた。 )





 

5655: ベル・ミラー [×]
2026-04-28 14:08:18





( ___アナンデール事件の事を“知った気”で居た。相手が抱え続ける後悔も、癒えぬ苦しみも、全部。けれど実際は知っていた事なんてほんの僅か…殆ど無いに等しい程僅かだったのだと思い知らされた。それ程までに流れた映像は衝撃的だったのだ。映像には映っていないがこの中に相手の妹も居てその瞬間に命を落としたのだろう。映像なんかでは無くその瞬間を直接目の当たりにした相手はその時、どんな思いだっただろう。何かを考える事も出来ない程の衝撃で、絶望で、気持ちだけが置いていかれた中で様々な事が過ぎ去って行ったのだろうか。余りに残酷過ぎる。握り締めた拳が歪んだ事で慌てて双眸を閉じれば、何度も浅い深呼吸を繰り返して。___『今ご覧頂いた映像の中に、貴方の記憶と異なる点はありますか?』映像が終わり、検察側の弁護士が矛盾を探す為の質問をする。今の相手の心情などお構い無しに進む裁判は余りに冷たかった )






5656: アルバート・エバンズ [×]
2026-04-28 16:30:39

 




( 弁護士からの質問に「……ありません、」とだけ答える。声の微かな震えを悟られないようにと小さく息を吐いたものの、酸素が薄いような感覚は拭いきれず呼吸が僅かに浅くなる。ネクタイで喉を締め付けられているようで息がしづらかった。『_____ベン・ウィリアムズ氏は事件後にアルコール依存に陥り、FBIを去り、その後亡くなっていますね。』再び彼の事に言及した弁護士が告げた事実、それ知らなかった遺族も居たのだろう。傍聴席の騒めきが大きくなる。『其れは、罪悪感が彼を蝕んだ結果ではないのですか?貴方は、ウィリアムズ指揮官が“自分の判断が間違っていた”と自覚し、苦しんでいたとは思わないのですか?それでも尚、彼の判断が適切だったと言えますか?』と問い詰められる。法廷の場で、彼が冒涜されているように思えて、言葉が出なかった。 )





 

5657: ベル・ミラー [×]
2026-04-28 17:08:57





( 弁護士の質問は容赦の無いもの。“自分の判断が間違っていた”と後悔と自責の念に駆られ続けたから、彼はアルコール依存症に陥ったのではないのか。きっと彼の判断は間違っていなかった筈。けれど訪れてしまった最悪の結果に彼も___そして今証言台に立つ相手も自分を責める事しか出来なかったのではないのか。余りにも酷で冒涜的な質問に言い様の無い怒りすら湧き上がるのだが、今この場で本当に声を荒らげたいのは誰でも無く相手自身だろう。直ぐに相手の弁護士が『証人は、ベン・ウィリアムズ氏の心の内を推測する立場にはありません。そして、ウィリアムズ氏のアルコール依存と本件の事件の因果関係を結び付けるには飛躍しすぎています。』と、割って入る。確かにウィリアムズはアルコール依存症に陥ったかもしれないが、その理由がアナンデール事件の結末…まして“判断の誤り”から来るものかどうかは判断出来ないと言う主張。直ぐに遺族側の弁護士が『…しかし、その判断が少なからず影響を与えたのは誰の目にも明らかでしょう。』と、切り捨て。___数回の質疑応答の後。再び遺族側の弁護士が相手を見据える。『機動隊の1人が銃を構え直し、その結果犯人は動揺し人質を殺害…とありますが、犯人の心情や行動を少しも予期する事は出来なかったのですか?記録では、その間に数秒の時間の猶予があります。何らかの形で人質を守る事が出来なかったのでしょうか。人質は全員が亡くなったのに、現場にいた捜査官が全員無傷だと言う事を、どのように説明しますか?』“数秒の猶予”で何が出来ると、ミラーも、警視正もまた思っただろう。それでも弁護士は嫌な言い回しで責任を追求し )






5658: アルバート・エバンズ [×]
2026-04-28 19:51:33

 




( 何故、人質を守れなかったのか。お前たちはのうのうと生き延びたというのに______そんな軽蔑がありありと滲んだ問い掛け。其れはあの事件に関わった捜査官たちが此れまで周囲から向けられてきた空気であり、それこそがウィリアムズを死に追い込んだのではないか。思わず手に力が籠る。感情的になるなと言った弁護士の言葉を反芻する。「……あの時の数秒は、何かを選び直せるような…そんな時間じゃなかった。」被害者側の弁護士が眉をひそめるのも構わず、そう答える。「反射的に行動を起こすよりも前に、…犯人は銃を撃っていました。」痛みと後悔と、どうしようもない自責が浮かぶ瞳を彼へと向ける。もうこれ以上、あの時の捜査官たちを責めないでくれと叫び出したくなる。『…つまり貴方は何も出来なかった。其れは”仕方のない事“だと主張するんですね?』その問い掛けに、息が詰まった。「……っ、」息が浅くなり、言葉が出ない。視界が大きく揺らぎ、思わず台を掴んだ事で静かな法廷内に硬い音が響いていた。 )




 


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