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白む空に燻る紫煙 ---〆/5683


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5664: アルバート・エバンズ [×]
2026-04-29 01:13:58

 




( 2時間という休憩時間中に倍量摂取した薬が効いた事で、再び法廷に出られる迄に”回復“した。無理やり心を麻痺させるような、その場凌ぎの遣り方に過ぎないが、今は其れでもこの場所に立つ事が目的だった。過去の事件から逃げたと言わせない為に。再び証言台に向かうと、騒めきと共に特異なものを見るかのような視線が背後から向けられるのを感じた。記者がペンを走らせる音を聞きながら、真っ直ぐ前を見据える。身体にふらつきは無い。体調を案じる裁判官の言葉に「…問題ありません、」とだけ答えた。---再び審理が始まり、過去について問う検察側の質問にも冷静に、感情を荒立てる事なく淡々と答えて行く。其処に先ほどまでの揺らぎはなく、弁護士に言われた通り事実だけを淡々と述べて。 )






 

5665: ベル・ミラー [×]
2026-04-29 07:22:18





( 再び証言台に立った相手に向けられる視線は様々。記者達はまるで“揺らぎ”を探す様な絡み付く視線を向け、遺族は冷静を装いながらも隠しきれない怒りの色滲む視線を向ける。___『先ほど証言中に体調を崩されましたが、今も精神的に不安定な状態ではありませんか?そんな状態で、当時を“正確”に語る事は可能なのでしょうか?』遺族側弁護士が最初に追求したのは、矢張り相手の体調面。記者達の瞳が鋭くなり、一語一句逃すまいとばかりに相手に視線が集中する。弁護士が異議を唱えたものの、此処は大切な質問だと判断したのか裁判長はその異議を却下して )






5666: アルバート・エバンズ [×]
2026-04-29 12:47:54

 




( 精神的な不安定さを、体調面の揺らぎを、此の場で指摘されるのは屈辱的な事だった。弁護士からの問いに下へと向けていた視線を持ち上げると「……可能です。」とだけ答える。冷淡とも捉えられる程に落ち着き、感情の乗らない声。「…先程の質問で過去を思い出し…少し気分が悪くなっただけです。当時を正確に記憶し語れるかどうかとは無関係です、」あくまで精神的な不調への言及は避け、あの一瞬少し具合が悪くなったのだと答える。それと証言の正確性に因果関係はないと。「私は、…あの日に起きたことを、見た通りに話しています。」弁護士を真っ直ぐに見据えたまま語る口調にも揺らぎは見られない。薬の効果が感情の揺らぎを抑え付け、今は痛みも感じなかった。 )






 

5667: ベル・ミラー [×]
2026-04-29 13:52:13





( 相手の言葉も、表情も、休廷前とは別人の様に落ち着きを払ったもの。相手が醸し出す空気のせいか妙な静けさと緊張が法廷内を包む。その様子に傍聴席に座っている遺族や記者は息を飲み、遺族側弁護士は一瞬言葉を詰まらせた。___“こういった”相手の姿を見る事が嫌だった。落ち着き、冷静だと捉えられるかもしれないが明らかに規定以上の薬で感情を押さえ付けた姿だ。___『…では今一度、貴方の口から当時の状況を教えて下さい。犯人が人質に向けて銃を撃ったその時、本当に誰1人助ける事が出来なかったのですか?貴方の一番近くに居た教諭、或いは園児にも手が届かなかったのですか?』遺族側弁護士は尚も相手を揺さぶろうと質問を重ねる。異議は認められず、再び沈黙が流れ )






5668: アルバート・エバンズ [×]
2026-04-29 15:20:59

 




( 冷酷な迄に揺らぎのない表情。その裏で弱さを見せまいとする必死さが、瞳の奥に沈んでいる。「……出来ませんでした、」と、感情を押し殺して静かに答える。「犯人を刺激しないよう、私たちは距離を取っていた。人質が居たのは教室の奥です。距離も、角度も_____瞬時に介入できる状況にはありませんでした、」たったの数秒では、何も出来なかった。咄嗟の事で足が動かなかった事を今でも後悔しているが、仮に動いていても、誰か1人にでも手を伸ばす事は不可能だっただろう。妹にさえ、手が届かなかったのだ。自分の証言を聞いて、傍聴席に座る遺族の方から小さな嗚咽が漏れる。しかし、例え今、誰か1人にでも手が届いたかもしれないと言った所で何になると言うのか。過去は変えられない、誰も助けられなかった事は変えようのない事実だと言うのに。此の場で言葉にこそしないが、虚な色が瞳の奥に滲んだ。 )





 

5669: ベル・ミラー [×]
2026-04-29 17:42:53





( 相手は曖昧な表現では無く“出来なかった”と言い切った。自分達が居た場所、人質が集められて居た場所、犯人との距離、たった数秒の時間___どの場面を切り取っても無理だったからこそ、今相手は…当時の捜査官達は苦しんだのだ。静かな法廷内に遺族の啜り泣く声が聞こえ重たい空気が充満する。その後も質疑応答は続き、再開廷から数時間が経った頃、裁判長がそれぞれの弁護士に順番に視線を向け『…他に質問はありますか?』と尋ねた。公判はこれが最後では無くまだ始まったばかり。2回目、3回目、と続く事から、相手は大丈夫だと言ったが、これ以上の長い拘束は体調面も考慮するべきだろうという判断。遺族の表現は矢張り全てに置いて納得出来ないと言わんばかりのもので )






5670: アルバート・エバンズ [×]
2026-04-29 19:55:20

 




( 裁判長の問いに両弁護士は首を振り、その日は閉廷となった。_____長い1日だった。控え室に戻ると、どっと疲労が襲うのを感じる。控え室で弁護士と今後の事について軽く話をした後、今日はゆっくり休むようにと声を掛けられて別れる。裁判所の入り口で待っていた、傍聴席に座っていた警視正とミラーと落ち合うと軽く頭を下げ「…長時間ありがとうございました、」と礼を述べて。外ではカメラを担いだ報道陣が、裁判所の入り口へとカメラを向けて待ち構えている。駐車場まで向かわなければならず、もう一度気持ちを持ち直して裁判所の外へと踏み出して。 )





 

5671: ベル・ミラー [×]
2026-04-29 20:54:09





( 裁判長の閉廷の言葉で長い1日が終わり、次回の公判日は数日の内に再び書類で届くとの事。___入口で漸く相手と真っ直ぐに顔を合わせ言葉を交わす事が出来た。警視正は相手の肩を軽く叩き『終わったな。今日は署に戻らず、真っ直ぐ帰宅しろ。』相手を労う様な声色で最後には体調を気遣った指示を出し。___外に集まる報道陣は凄い数だった。相手が裁判所から出て来るや否や、我先にと駆け寄り録音機を向ける。『遺族の方は貴方の説明に納得していないようですが、その辺はどのように捉えていますか?』『証言中に体調を崩し、休廷になったと聞きましたが、理由は何ですか?』『今でも本当に、あの結末は“仕方が無かった”と思っていますか?』と言った質問が飛び交い、中には相手が直接言った訳では無い事までもを聞く記者も。何も言わない、けれど思わず半歩前に出たミラーよりも前に出たのは警視正。背に部下2人を庇う様に立つと『…彼が証言台で口にした内容が全てです。お帰り下さい。これ以上は業務の妨げになりますよ。』鋭い視線を見渡す様に向け、そう言い放ち )






5672: アルバート・エバンズ [×]
2026-04-29 22:09:46

 




( 大勢の記者に囲まれ、カメラや録音機を向けられ、フラッシュの光と共に幾つもの質問が飛び交う。けれど、何故か膜を一枚隔てているような、五月蝿い筈なのに何処か遠くで声が聞こえているような、そんな感覚があって記者たちの質問は届かなかった。騒々しさは分かるものの、脳が処理出来ていないのか悪意のある言葉は”音“として通り過ぎるだけ。言葉を発する事はなく、人波をただ進んでいく。警視正のお陰で報道陣の勢いが少し弱まった隙に車に乗り込むと、警視正はタクシーで署に戻ると言って相手に『エバンズを家まで送り届けてやってくれ。お前も今日は帰宅して構わない。』と告げて。 ) 






 

5673: ベル・ミラー [×]
2026-04-29 22:42:51





( 警視正の計らいに深々と頭を下げる。正直な所このまま署に戻った所で仕事に集中出来るか自信が無かった。「___帰りましょう、エバンズさん。」とだけ静かに告げてから車に乗り込むも、窓ガラスを隔てた向こう側では迷惑な程に報道陣が騒ぎ立てる。その騒音全てを無視して車を走らせる事数十分。後を付けられていない事を確認しアパートの駐車スペースに車を停車させれば、勿論自分の部屋の階で別れる事は選ばない。至極自然な事の様に相手の部屋に入り、壁際に上着と鞄を置けば“何時も通り”キッチンに立ちマグカップ2つを用意して。痛かっただろう、苦しかっただろう、たった1人全てを背負い証言台に立った相手に浴びせた弁護士の言葉の数々は最早凶器だった。それが“仕事”だと言う事も、遺族側の“勝訴”の為だと言う事も理解はしているが、余りに残酷だった。警察は、苦しみ心を痛める事が無いとでも思っているのか。「…ミルクまだ残ってたんだね。ホットミルクにする?、」冷蔵庫を開け、まだ半分程のミルクが残っているのを確認すると、あくまでも普段通りの振る舞いでそう問い掛ける。掛ける言葉が無かった訳じゃない。ただ、漸く終わった長い1日を、再び掘り返す様な事を此方から言うべきではないと思ったのだ )






5674: アルバート・エバンズ [×]
2026-04-30 03:36:02

 




( 扉が閉まるとようやく騒音が遠退き、やがて車は裁判所の敷地を出た。長い時間拘束され、過去を掘り返され心を抉られた苦しい場所を離れただけでも、僅かに息がし易くなるような感覚を覚える。互いに車内での会話は殆どなく、相手と共に部屋に戻り玄関の扉を閉めて、其処でようやく安心する事が出来た。訴訟の一件が騒がれ始めてからというもの、気付かない内に外ではかなり気を張るようになっていたのだろう。スーツのジャケットを脱ぎネクタイを解くと、疲労を感じるままにソファに身体を預ける。薬が効いているお陰で精神的な揺らぎや身体の痛みは感じなかったが、此の身体の重さだけは拭い去る事が出来ない。「……あぁ、」とだけ相手の言葉に頷く。周囲の声が少し遠く感じるのは、薬の作用だろうか。自分からも何かを話し始める事は無く、ただソファに背中を預けたままでいて。 )





 

5675: ベル・ミラー [×]
2026-04-30 09:01:01





( 休廷後から、相手の感情は何処か重く沈んでいる様だった。“何か”が本来の感情を押さえ付けている様な___それが“規定量以上の薬”である事は想像するが勿論飲んだ所を見た訳では無い。小さめの鍋にミルクを沸かし、弱火でじっくりと温める。やがて表面に出来た乳脂肪の膜を丁寧に取り除きマグカップへと注げば出来上がりだ。途端に広がったまろやかな香りが、胃に落ちる優しい甘さが、相手の心を包み込み、そうして解く事を願わずにはいられない。少しの蜂蜜を溶かしてから片方のマグカップを差し出し隣に腰掛けると、お互いが無言のままの流れる沈黙を置いた後。「……エバンズさん、」徐に名前を呼び片手を静かに伸ばす。相手が此方を見たならば、その手を軽く頬に添え親指の腹で隈の目立つ目元を撫でてから「お疲れ様です。」と、柔らかな言葉を掛けて )






5676: アルバート・エバンズ [×]
2026-04-30 20:23:02

 




( 柔らかい香りが部屋に漂い始める。ホットミルクが入ったマグカップを差し出されると其れを受け取り、ゆっくりと口を付ける。熱が喉を通って胃に落ちると、冷えた身体に温もりが宿るのを感じてようやく身体の強張りも緩んで。名前を呼ばれて相手の方に視線を流せば、目元を撫ぜる指。「……惨めな時間だった、…あの場所に立っているだけで、まるで加害者だ。」ぽつりと落ちた言葉。どれだけ傷付けても足りないと言わんばかりに心を抉る言葉の数々。何度、もう辞めてくれと怒鳴りたくなった事か。「過去を掘り返して幾ら責め立てても、時間は戻らない。起きてしまった事実は変わらないと、言ってやりたかった。…そんな事を言えばまた、騒がれるだろうけどな、」声は落ち着いたものだが、その奥に隠しきれない怒りと絶望が滲む。それでも、心が弾力を失って感情を感じにくくなる今の感覚が、楽だとさえ感じているのは、それだけの苦しみを味わったからか。 )





 

5677: ベル・ミラー [×]
2026-04-30 21:01:41





( 言葉が落とされた事で頬に添えた手を静かに離す。あの場に居た遺族も、遺族側の弁護士も、相手を見る目は“殺人犯”を見るそれと酷似していた。教諭や園児を殺したのはまるで相手だと言葉にせずとも醸し出す空気を、他でも無い証言台に立った相手が一番感じた事だろう。静かに紡がれる言葉の端々に宿る怒りや絶望こそが、相手が薬に邪魔されず感じている“本当”だと思うからこそ、否定する事無く頷く事で肯定を。「…捜査官は誰も、最後の最後まで諦めたりはしない。__全員を無傷で帰す為に最善を尽くしたんだって、それでも、どうしても駄目だったって、どんな風に説明すれば届くんだろうね。」遺族が“結末”だけを見るのは仕方の無い事だろう。大切な人を亡くした痛みはそれ程までに大きく重たいのだから。けれど、あの場に居た捜査官達は決して何もしなかった訳では無い筈なのだ。「……“約束”しなければ良かったって、正直思った。」至極小さな声でぽつりと落としたのは紛れもない本音。あの瞬間、相手の事を、捜査官達の事を、まるで侮辱する様な言葉の数々に心底怒りを覚えたのだから )






5678: アルバート・エバンズ [×]
2026-05-02 10:24:55

 



( あの時、あの場所に居た自分達が人質を救出しなければならなかった。そんな事は誰よりも分かっている。けれどあの一瞬で、ほんの一瞬の間に、全ての未来がひっくり返ってしまったのだ。そしてその一瞬は、今となってはどれだけ長い年月が過ぎようとも決してひっくり返る事はない。諦めたのでも、手を抜いたのでもないからこそ、捜査官たちは苦しんだのだ。「……お前が彼処で怒鳴っていたら、明日には週刊誌から追い回されてる。」呆れたように言いながら、ホットミルクに口を付ける。けれど、相手の言う通り証言台の上で感情を押し殺したのが自分だけではないという事実は、確かに心の支えになっている気がした。あの日の事を責められたら、自分に反論する権利はない。そう諦めにも近い感情を抱きつつも、同時に傍聴席に座っていた事で、感受性の高い相手は自分と同じように傷付いたかもしれない、とも。 )




 

5679: ベル・ミラー [×]
2026-05-02 10:44:58





( ___そう、もし己が約束を守る事が出来なかったら相手の言う通りの明日が100%確実に訪れるだろう。けれど…それで相手に向く記者の視線を引き受ける事が出来るなら、と思ったのもまた素直な気持ちだ。ただ、それは自己犠牲で相手が何よりも怖がり嫌がる事だとわかるからこそ内に秘める。相手の痛みを全て引き受けるのでは無く、“半分”持たせて欲しいと。「…大人しく座っていられる事、ちゃんと証明出来たでしょ?だから、次も置いてったりしないでね。」眉を軽く上げ少しだけおどけた様な口調でそう告げた後。「…他に、言葉にしたい気持ちはある?此処には遺族も弁護士も居ない。私だけだから、何を言っても許されるよ。」相手を真っ直ぐに見詰め、表情を緩めつつそう促す。過剰に飲んだであろう薬の効果がどのように発揮されているのか、何時切れるのかは未知数だがあの瞬間、心は確かに荒れていた筈なのだ )






5680: アルバート・エバンズ [×]
2026-05-09 14:25:27

 




( 約束を守ったから、次の裁判への同行も許可するようにという相手の言葉。確かに相手は感情を荒げる事もせずにじっと座っていたのだから、断る事は出来なかった。他に言いたい事はあるかという問いには小さく首を振り「……いや、思い出したくない。」とだけ答えて。心を抉った今日の出来事は、思い出してその感情を吐き出す事さえ躊躇われた。「…今日は早く休む、」と告げて、残っていたホットミルクを呷って。 )





 

5681: ベル・ミラー [×]
2026-05-09 15:24:05





( 相手は今日の出来事を言葉にする事を拒んだ。言葉にすれば痛みも苦しみも思い出すし、過去が再び鮮明に思い起こされるのだろう。今の相手に必要なのはただ、何も考えず休む事なのだろうと思えば「わかった。」と穏やかな表情のまま直ぐに頷き、自身もまたマグカップの中の白を飲み干して。「__それじゃあ、私は戻るね。…何かあれば遠慮なく呼んで。」ソファから立ち上がる際に一度だけ軽く相手の肩を擦り、マグカップを洗ってから自分の部屋へと戻り。___その頃記者たちは、こぞって今回の法廷での事を記事に纏めるべく奮闘していた。我が記事が何処よりも早く出るように、そんな事ばかりが渦巻き、相手にも、もしかしたら遺族への気持ちも無かったかもしれない。内容の多くは証言台に立った相手の心身の不調の事で、揺らぎの後の休廷と、その後のやけに冷静な対応。薬を摂取している可能性も大いにあると言うもので )






5682: アルバート・エバンズ [×]
2026-05-09 16:37:46

 




( 相手が部屋に戻り1人になると、寝室へと向かいベッドに横になる。身体が何処までも沈み込んで行くような重さを感じながら、気付けば眠りに抗う事もなく意識を手放していた。初めは夢も見ないような深い眠りだったが、薬の効果が切れ始める時間に合わせて酷い悪夢を見るようになる。過去の記憶、資料を見せられたことで鮮明になったそれは、まるでその場に居るかのように夢と現実の境を曖昧にさせた。それに加えて、証言台に立っている瞬間の記憶が蘇る。自分で制御出来ない程の苦しさを感じて蹲る自分の背中に、フラッシュが何度も焚かれ嘲笑する人々の視線が注がれる_____現実には起きていない事、にも関わらず、あの瞬間感じた屈辱は棘として刺さったまま悪夢として現れた。早朝に目を覚ますと、乱れた呼吸の所為で胸が軋むように痛む。身体には酷く汗を掻いていて、身体を支えるようにして起き上がるとキッチンへ向かい、躊躇する事なく倍量の薬を飲み込んだ。心身の揺らぎを、決して悟られてはならない。例え身体に悪影響だったとしても、今揺らぎを抑える事が出来るならそれで構わないとさえ思った。---出勤する時間には、薬がしっかりと効果を示し身体の痛みも苦しさも、心の痛みも何もかもを感じなくなっていて、それに“安堵”した。本当は立っているのもやっとの状態だったかもしれないが、普段通りに署へと出勤して。 )




 

5683: ベル・ミラー [×]
2026-05-09 17:04:05





( ___翌朝、相手が出勤して来た時のフロアの空気は重たく、署員達が向ける視線は何処か腫れ物に触れる様なそれだった。それもその筈、刑事課フロアの奥の壁に備え付けられているテレビ画面には、既に昨日の法廷内での出来事を語る記者が映っているのだから。内容は矢張り証言台で揺らいだ相手の身体の事。薬を多様している可能性があり、誰の目にも不調は明らか、アナンデール事件が起きた当日もそんな心身の状態で犯人と対峙していたのなら、真っ当な判断が出来なかったのも、人質を助ける事が出来なかったのも頷ける。と言った主張をする記者の言葉に、コメンテーターの様な男が深刻振った顔で『それは問題ですね…。』なんて言うのだ。そしてもっと最悪なのは、“報道内”でおさまらなかった事。SNSで拡散した情報は、尾鰭を付けて本来ある筈の無い出来事までもを引き連れて広がった。過激な正義を振りかざす市民が、ああでもないこうでもないと画面の中で言い合い、勝手に盛り上がる。遺族側への同情、相手への罵倒、個人を特定しようとするプライバシー侵害。中には何時撮ったのか、事件の捜査中の写真までもが何枚もネット上にあげられ、こんな刑事が事件の捜査に関わって良い筈が無いとまで書き込まれていた。そうしてその写真の中に相手の隣に立つミラーの姿も勿論写っている事で、“どんな立場”なのだ、と言った憶測も広がり。人質を見捨てた相手を盲信している刑事派と、こんな上司の部下である事が可哀想派に別れ出す始末で )






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