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 炎の灯に照らされて、 /61


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36: 下級妖怪 [×]
2021-05-06 20:46:33



「……誰もそんなの聞いてないんだけど」

目の前の男の口から滑るように謝罪の言葉が吐き出される。これでこの男から“ごめん”を聞くのはもう三回目だ。理由を長々と述べて謝るくらいなら、とっととこの場を去ってほしいんだけど。そんな思いを代弁するように大きな溜息を一つ吐けば、相手から目を逸らしたまま半ば投げ遣りに吐き捨てる。決して相手の誠実そうな態度に心が揺れた訳では無いけど、真剣味を帯びた声で謝られるのは何となく嫌に感じた。まるで自分が悪いことをしているみたいだ。こっちだって帰り道なんて分からないのに。少し沸き上がりつつあるそんな焦燥感、ましてやそれが相手由来のものであることに気付けば、苛立ち気味に小さく舌打ちをして。
というよりそもそも、彼に、突然ここに迷いこんだことや、それにより不安になったことを話された所で、自分には何も関係が無い。話を続けていたって無駄だろうに。

(……は、この人……もしかしてさっき、“突然”って言った?)

もうこれ以上話すことは無いだろう。そう結論付け、彼に背を向けようかという所で、ようやくとある可能性に気付く。もしかするとこの男は、自分と同じ部類の者なのかもしれない。そんな考えが頭に浮かんだ途端、先程とは打って変わりあからさまに動揺した目で相手の方を見ては、そのまま彼の手にある燭手へと視線を向け




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