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 炎の灯に照らされて、 /61


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29: 下級妖怪 [×]
2021-05-06 20:40:29



足に水がかかる寸での所までやってきた哲也は、ぼんやりと水平線を見つめながら考えていた。
消えた神社と大きな鳥居。無くなった帰り道。幻想的な風景。そしてこの海らしきもの。
哲也は幽霊や異世界等のオカルトじみたものは信じていなかったが、流石に今の状況は“自分が異世界にいる”としなければ説明がつかないだろう。むしろそうでないなら自分が気づかぬうちに攫われて、なおかつ遠くまで運ばれてたということになる。そっちの方がよっぽど現実的ではない。
「(さて、どうするか)」
普通の人間であれば戸惑い、大なり小なり時間のロスが生じるだろう。しかし哲也は、幼少の頃に記憶がなくなってから今まで、“普通の人間”とは呼べない人間になっていた。
知らない場所に一人取り残された恐怖や混乱。本来感じる筈のものは一切彼の中には存在しない。だがそのおかげで、人より素早く冷静に判断することができるのだ。
――ひとまず、先ほど通った道を戻ってあの明るい所に行ってみようか。今なら人がいるかもしれない
そう、顎に手を当てながら考えていた時
「! ……誰かいるのか?」
視線を感じた、様な気がしてボソッと独り言ちる。
哲也は別に視線に鋭いわけではない。だからこれは“シャワーを浴びている時、背後に誰かがいる気がする”と同じことで、ただの気のせいかもしれない。さっと周囲に視線を向けても、依然と闇のような海(らしきもの)があるだけ。水の音以外物音もしていないし、そちらの可能性の方が高い。
だが右も左も分からない状況で、手掛かりになるかもしれないものを逃がす訳にはいかないと
「すみません。俺、会社帰りだったんですけど道に迷ってしまって。誰かいませんか?」
威圧的にならないように注意して。本心では何とも思っていない(明日の会社どうなるんだろうとは考えている)くせして、声だけは困り果てた好青年のように。
手燭を周囲にかざしつつ、問いかけて




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