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 炎の灯に照らされて、 /61


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18: 下級妖怪 [×]
2021-05-06 20:07:16



 「それではまるで、私が女じゃないみたいな口ぶりじゃないですか」
考えて居れば心底傷付いたような言葉を言いながらシクシクと泣く環に周はぎょっと目を剥いてしまう。傍から見ればわざとらしい泣き真似だと分かるものの周からは本当に泣いているように見えたのだろう。
 「え!!? そッ、そんなつもりで言ったんじゃ……ご、ごごめんな、さい……ッ」
こういう時どうすればいいのだろうとあわやあわやと手を動かす周は泣き止んでと子供のように環の顔を覗き込んで「環さんは、立派な女の人ですよ……」とたどたどしく言って見せ。

 
 「あら。先程は確か怖くないと仰っていたような……まあ、女の子みたいに怖がってばかりの周くんですものね、ふふっ」
対応に困っていればケロッと表情を変えくすくすと愉快愉快と笑みを溢して周へと顔を向けてくる環を意味が分からないとばかり瞬きを繰り返して。
 先程の自分の発言を武器にし楽しんでいる環を前に周は泣き真似だったのかとようやく気付き騙された自分が恥ずかしいと言っているかのように頬を完熟林檎の如く真っ赤に染めらせて。

 「……ッ」
けれども怒りをあらわに出来ないのは。歌うような軽い言葉と恐怖で震え上がる自分の手を優しく包み込むような温かい手に安堵しているからなのだろう。
どれだけ馬鹿にされても恥ずかしいと思うばかりで口が言いたいことを吐かせてくれないのだ。


 「って言ってももう折り返し地点過ぎてますし、あともう少し頑張れば家ですよ」
励ますような言葉に強く深く頷いて、環を見つめる。
楽しんでいる態度であるはずなのに寄り添うような優しい声音、合わせてくれるペースに周は泣きそうになり、とくんと鼓動する胸に手を添えて「ありがと……ござい、ましゅ……」噛んだことにも気が付かないまま言って。




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