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117：
源三 [×]
2021-05-20 23:12:24
>111
(布で包んだ六尺程の棒状の物を背負いあばら屋を出た己は、藤吉に付いて山を降り長閑な町の通りを進んでいた。麻布で丁寧に包み紐で縛って斜め掛けに背負ったそれは、一見して長い杖の様にも見えるが僧兵であった頃より馴染んだ武具が収められている。町での用事のみならば本来不要な物であるが、後で滝へ向かう事を考えての備え。明るい内とはいえ溺死した者もいると言う曰く付きの滝へ丸腰で行くのは流石に心許なく、寝床に立て掛けてあったそれを持ち出した次第で。
他の三人に歩幅を合わせ歩いていると出くわした町人の何人かに挨拶をされ、己もまた会釈を返して行く。みすぼらしい身なりから嫌厭される事の方が多い身であるが、誰であれにこやかに声掛けをする町人の様子から、この辺に住む人々の気立ての良さが伺えようか。桜蘭の方はいつものごとく人見知りを発揮し背後に隠れている様子。己もそれを良しとし桜蘭に代わって町人の挨拶に応えるのも慣れたものであり)
おお、ここが権太郎殿の床屋か。
お邪魔致しまする。
(到着した床屋の外観をまじまじと見遣り、権太郎を追って暖簾をくぐろうとした折、唐突に中から飛んできた怒声に目を丸くし。驚きから一瞬暖簾に伸ばした手を止めるものの構わず中へと歩を進めれば、怒りを露わにした若い男が目に入る。直感的に彼が権太郎の息子なのだろうかと思考が過ぎるが、口は挟まずに権太郎と若い男へ交互に視線を送りながら一旦様子を見守って)
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