TOP > 1対1のなりきりチャット

朱い契約 / 〆/45


最初 [*]前頁 ▼下へ
自分のトピックを作る
26: Nora _ [×]
2020-11-26 13:58:12



>Royes


さぁ ,此方へいらっしゃい 。


( 数回 ,空気を食らうかの様に口を動かす貴方から紡がれる御礼の言葉に孤児院育ちとは言え最低限の礼儀は習っているという印象が得られた 。 立っている貴方はとても脆く見えて ,血色も良いとは言えない 。 少しの刺激で膝から崩れてしまいそうだ 。 恐らく空腹と ,慣れない馬車 ,初めての場所に理解が追い付いていないのだろう 。 路地裏暮らしなら其の場から動く事は殆どなく ,尚且つ季節は冬 。 寒い中薄着で街中を徘徊する馬鹿が何処に居るのか 。 そういった面でも歩くことに慣れて無く体力も無い事が分かる 。 今に血を抜いてしまえばきっと数日はベッドから起き上がれない筈 。 そうすれば自身に影響が及ぶのだ 。 よって今から行う事は一つ 。 空腹の貴方に鱈腹食事をさせてあげようという事だ 。 何度も言うがこれは貴方を助けるための行動ではない 。 自身の為の行動だ 。 此処で貴方が倒れてしまえば自身が食事を得られないから ,それだけは避けたいと思えば貴方に向いて居た身体の方向を変え玄関入って目の前の階段の横の廊下を歩き出す 。 その先にある大きな開き戸のドアを開ければ開けた大きな空間 。 その天井には暗めの電球色の明かりを灯す豪華なシャンデリアが目を引いて ,シャンデリアの下には1人で食事をするには大きすぎる程の角形テーブルが置いてある 。 赤色のテーブルクロスをひき ,その中心には熱により蝋がゆっくりとだが溶けていく様子の蝋燭が数個あり ,テーブルを照らす 。 如何やらこんなに広い屋敷なのだが今この屋敷に居るのは貴方含めた二人だけらしい 。 ダイニングに入るとそのまま奥に進んで木で出来た扉を開けてまた中へ入ってしまう 。 叔母が生きていた頃 ,叔母は人間に化けて近くの街の人間との交友を持っていたらしく ,叔母が死んで大して時間が経たない現在は叔母がその人間に振舞っていた野菜や肉などの食材はまだ残っているようだった 。 叔母が振舞う為の食事を作る手伝いはしていた為ある程度の手順は分かる 。 しかし一人で作るのはこれが初めてだった為少しの不安が滲んでしまう 。 が ,その心配は無用な様 。 矢張り手伝いをしていた事もあってか ,慣れた手付きで食材を切って鍋に入れて調理を進めていく 。 あっと言う間に出来上がった美味しそうなデミグラスソースの香り漂うビーフストロガノフと ,程よく溶ける赤味の綺麗なローストビーフ ,温かな湯気の漂うミネストローネスープ ,しゃきっとした野菜のイタリアンサラダに満足そうに小さく息を吐いた 。 我ながら上出来だ 。 ふと時計に視線を向けると約30分弱も掛かってしまっていたらしい 。 今頃お腹を空かせて死んでいなければいいけど何て他人事の様に頭の隅で思い乍それらを乗せたワゴンを押してキッチンから出ていく 。 自身は血以外を食べても無機質な ,紙を食べている様な味しかしないからと作ったのは一人分だ 。 その代わり,祖母の葬式の際に街で買った食用の兎の血を抜いてワイングラスへと移した 。 人間の血に比べれば味も香りも美味しさも何もかもが低いのだが今貴方から血を抜けば死にかねないし ,不健康な人間の血は御世辞にも美味しいとは言えないから ,今回は妥協をするのだ 。ワゴンを押してテーブルの近くへと運んでいけば作った料理を一つ 〃 丁寧にテーブルへと置いて貴方へと視線を向ける 。


〝 御食べなさいな 。 口に合うといいのだけれど 。 〟


そう述べて何処か不安げに瞳を揺らめかせるとカタリと椅子を引いてその椅子に腰を下ろした 。 )

27: Royes [×]
2020-11-27 00:20:19

>Nora

(彼女の後に付いて廊下を進んでいく。長い廊下の先には、またまた大きな扉、それを開けたことで広がる新しく広い空間に圧倒され、何の言葉も出てこない。まだ脳が情報を処理しているというなか、彼女は扉の向こうへと行ってしまった。広い部屋に一人残され、一体どうするべきか…数分間その場に立ち尽くしていたが、流石に体力も限界。ふらふら倒れ込むように椅子に座りこんで、心を落ち着かせるよう深呼吸をした。

座ってからどのくらい経っただろうか、久し振りに歩き回って棒のようになった足は、こうして休んだことで随分と使い物になってきた。微量な体力もほんの僅かに回復してきて、部屋全体を見渡す余裕くらいは出てくる。行儀良く椅子に座り、首だけを動かしてあちこちに視線を向け。やはり一番始めに目につくのは巨大なシャンデリア。細かな装飾は勿論、光に照らされてきらきらと輝くそれは幻想的で、いくら長時間じっと眺めていても飽きないだろう。また、今自分が座る椅子も、そこらの椅子とは格が違い如何にも高級感の漂うもの。きっと自分が今まで座った、見た椅子の中で最上級の品質だ、数時間前まで、冷たく硬い、雪を被った煉瓦の上に縮こまっていた自分にとって、まさに夢のような座り心地。そして極めつけに、部屋の中でシャンデリアに負けず劣らず強い存在感を放つテーブル。怪しげに揺らめく蝋燭の炎が、室内特有の雰囲気を上手く演出していた。此処に彼女の他に誰か住んでいるのか__、仮に一人だとするとあまりにも大きすぎる。しかし、屋敷の中をここまで歩く途中、全く人の気配を感じなかった__。

そんなことを考えていると、彼女がカラカラとワゴンを押して戻ってきた。そして、こちらが何か言う余地もなく次々と目の前に並べられていく豪華な料理。もしかしたら夢なんじゃないかと錯覚してしまう程だが、鼻孔をくすぐる香りに目の前の料理が本物だということ、これは夢でなく現実だということが身をもって伝わり。その時、彼女からの“御食べなさい”の言葉、確かに取引の際“衣食住を与える”なんてことを言われた、のだが。本当に自分が食べていいものかと彼女の顔を見た。

しかし、こんなにも美味しそうな料理を目の前にして食欲に敵う筈がない。もう抑えられない衝動に身を任せスプーンを手に取ると、一口分ミネストローネを掬って口へ運び。じわじわと身体の芯から温まっていくこの感覚、美味しい以外の何者でもなかった。一度動き出した手は中々止まらず、感想を述べる暇もなくあっという間にミネストローネは完食。

「……美味しい、っ」

たった一言、それしか言いようがなかった。何故だか涙が溢れてきて、緊張で固かった表情は随分と柔らかく変わり、今日初めての笑顔を見せ。そして涙を拭い、続いてスプーンをナイフへと持ち変え、慣れない手付きでローストビーフを切り取る。テーブルマナー、孤児院時代に基本は教わっていたためある程度は理解し、食器も使いこなせていたのだが。何しろこうした食事は本当に久し振りなのだ、辿々しくナイフを扱ってぱくりと口の中へ。噛めば噛むほどに肉の旨味が出て、一瞬のうちにローストビーフの虜となっていた。夢中になって食べ続け、料理もお腹に溜まってきたところ。ふと彼女の方へ顔を向ければ、彼女の前には自分のような豪勢な食事はなく、置いてあるのはワイングラスたった一つだけ。お腹が減っていないのか、食材が自分の分しか無かったのか__色々と疑問が浮かぶが、なにも食べないのはやはり此方としても心配。空腹のどん底を味わってきたからこその考えで、心配そうに質問を投げ掛ける。

「……君は食べない、の?、」)

28: Nora _ [×]
2020-11-27 21:16:01



>Royes



そう ,なら良いわ 。


( 先程迄は硬かった貴方の表情がまるで氷が溶けていく様に柔く崩れていく 。 初めて見た貴方の笑顔に ,涙に何故か一瞬心臓はどくりと音を立て思わず目を見開いてしまう 。 それから身に起きた初めての何とも形容し難い感覚に小首を傾げながらそっと自身の胸に手を当てその音の正体を探ろうとする中でも貴方は夢中で料理に手を伸ばしていた 。 貴方が述べた " 美味しい " の言葉に思わず頬が緩んでしまうが其れを隠すかの様に口元に手を持っていけば暫く視線を落とした後に馬車に乗っていた時の緩急のない声色で上記を述べた 。
持っているグラスを揺らせばゆら 〃 と揺らめく血の水面を眺めまた一口喉に流し込む 。 そうしながらも食事を食らう貴方を見遣りその食いっぷりに相当お腹が減っていたのだろうと考えていた 。 食事が終わったら次は入浴でもしてもらおうか ,冷えた身体を温めるのには丁度いいしその薄汚れた髪の毛の本当の色も気に成る所だ 。


〝 私はいい 。 血以外を食べたって何の味も感じないのだもの 。 〟


御礼と先程たった一言 ,美味しいとだけ述べた貴方の声が自身を呼んだ 。 その声に貴方の方へ視線を向ければ言葉を放とうと小さく開けた口をきゅっと噤みまた再度息を吸えば淡々と水面をみつめ ,グラスを煽りながら答える 。 口を一度噤んだのは貴方が自身を呼んだ事に驚いたからであろう 。 怖がられている ,警戒されていると思っていたから 。 まぁそれも強ち間違いではないのだろうが 。 小さく息を吐いた後グラスを置けば何気なく蝋燭の灯りに目を遣りつつ ,自身の横髪を指に巻き付け くる 〃 と弄ぶ 。 グラスに入った血は後一口二口で無くなるだろうが貴方ほどではないにしろ少しお腹が減っていた為か何時もよりも食事のスピードも速かったように思える 。 また再度グラスの縁に口を付けてこくりと血を嗜めばお腹が満たされてきた様に感じて一口と最期の食事を喉に通すとグラスをテーブルに置いてふぅ ,と一息 。 )

29: Royes [×]
2020-11-28 01:20:34

>Nora

血……ッ、

(彼女の持つグラスの中で揺れている紅いそれは、ワインでもジュースでもないらしい。思わぬ答えに動揺してしまい、ぴたりと食事の手が止まる…が、また一つ思い出した。“取引”の際に、此方が提供するものはなんだっただろうか…、そう、血である。彼女が自分と同じような人間ではなく、血を主食とする別のもの、例えば__吸血鬼だとしたら。取引の内容も、こんな森の奥深くに住んでいるのも、全て納得がいく。それでもたった一つ疑問が残ることといえば、どうして自分を拾ったかということ。理由は何であれ、彼女は血を欲しているらしい。それも人間のものを。街を探してみれば、人間なんて山のように見つかるだろう、なのに何故、見た目からしてこんなにも不健康な自分が選ばれたのか。只の一般人でさえ、自分より良い暮らしをしているのだ。血の味だって自分の方が劣っているに決まってる。なのに_。
考えても考えても疑問は深まるばかり。ここは考えるだけ無駄だと判断し、食事に戻ろうとする。やはり個人的には彼女には何か食べて欲しいのだが。こうして自分だけ__という妙な罪悪感も感じているが、彼女自身が要らないと言っているのだ。ここは深く追求せずに相手の意見を尊重することとし、少し申し訳なさそうにしながらも食事に戻った。



「__ご馳走さま、でした」

彼女の作った料理、全てを綺麗に食べ終え。ビーフストロガノフも、サラダも。初めて食べるものや、もう何ヵ月も食べていないもの、どれも丁寧に調理されており、もう一年分の食事を摂ってしまったのでは、というほど充実した食事であった。数時間前、空腹と疲れで倒れそうになっていた時と比べると、随分と顔色も良くなって体力も回復し、何か言葉を発するのも苦ではないほど心も落ち着いてきており。徐々に緊張も溶けてきた。こんなに自分に優しくしてもらったのは初めてで…、心が今まで感じたことのない暖かさで一杯になり、簡単に心を開いてしまう。これで意志疎通もより取り易く、口数も増えるだろう)


30: Nora _ [×]
2020-11-30 12:06:24



>Royes



そうよ ,血 。 ..... 怖くなった ?


( 食事の手が止まり ,はっきりと動揺しているのが伝わってきた 。 矢張り怖いだろうか 。 否 ,血と聞いて怖いと思わない人間の方が少ないのだ 。 分っていたけれど其事実をより突きつけられた様な感覚を感じて思わず眉を下げ貴方の顔を覗き込む様に問うた 。 その言葉が若干の哀愁を帯びているのはきっと無意識の内だろうか 。 確かに人間にとって吸血とは無縁の事だし初めて故の恐怖を感じる行為でもある ,でも嫌がっている人間の血を無理矢理吸うほど自身は落ちぶれてなんていないし其処迄冷徹でもない 。 しかし前の人間はまるで自身に血を吸われる事だけが人生の楽しみだとばかり自身が血を飲んでいるときは嬉しそうに頬を綻ばせて居た 。 だから ,皆そんなもんかと思っていた 。 怖がる事なんて無いし ,寧ろとても幸福で嬉しい事 。 でも後にその人間が如何してそこ迄自身に血を吸われる事を喜んでいたのかが分かる 。 彼は惚れていたのだ ,人間でもない只のバケモノの自身に 。 其れが分かったのは彼を拾ってから5,6年経った頃だったから上手く気持ちの整理が付かなかったし ,愛なんてものは端から理解は出来なかった 。 そうしてやっと自身が自身の気持ちに気づいたのは彼が死んでからだったから ,嗚呼何て恋とは馬鹿げた気持ちなのだろう ,そう思った 。 冷たくて ,もう声も発さなくて笑いもしない , そんな彼の亡骸の横で初めて涙を流した事を今では遠い夢の御話とさえ思ってしまっている 。 最終的には死ぬのだからそんないらない感情何処かへ放ってしまえばいいものの 。 そう ,何度思った事か 。 でも目の前の貴方は以前の人間ではないし ,血を吸うとなればきっと可哀そうになる位に怖がるのだろう 。 前記した通り無理矢理にでも飲むような ,そんな鬼ではないのだから貴方が拒否をしたら仕方ないけれど何処かの動物の血で我慢する 。 でも一通り言葉を交わして分かった事だが貴方は結構真面目な方らしい ,だから血を飲ませるという交換条件で此処に来た上ではどんなに怖くても確りと血は差し出すのであろう 。 真面目で ,それ故に身を滅ぼしかねない行為に望む貴方が本当に人間染みていて少し ,何とも形容し難い気持ちに成り ,貴方の金色の瞳をじぃっと見つめる 。


〝 御粗末様 。 それじゃあ付いてきなさい ,寒いでしょうし汚れても居るからお風呂に入ると良いわ 。 お皿はそのままでいいから 。 〟


カタリと小さく音を鳴らせば椅子から腰を上げて飲み終わったグラスはそのままにダイニングの扉に手を掛けた 。 そうして軽く扉を押してダイニングから出れば目の前の廊下をそのまま真っ直ぐに歩いて右に曲がる ,突き当りの扉を開けると貴方を中に入るように促して自身は先程歩いてきた道へ踵を返して仕舞う 。 二階の部屋から洋服等を取りに行く為だ 。 勿論行き成り貴方を拾ったものだから新しい物ではなく前の人間のお古なのだがまた今度街に行ったときに自身で買って来てにらえばいいだろうと考えた 。 階段を上ってその部屋へ ,本当に久しぶりに入った 。 少し埃が待っていてけほ ,と咳き込んでしまう 。 ぼうッと暫くその部屋を眺めて居たら喉がきゅうと締まって何かがこみ上げてくる感覚がした 。 はっとして緩く首を振ってその感情を消す様に誤魔化せばタンスの中から下着 ,クローゼットから白いシャツとクロスタイ ,黒色のロングチョッキを取り出す 。 これもまた前の人間が服を買って来いと述べた所買ってきたものだ 。 自身と同じようなのがいいとこれもゴシック染みた見た目なのだが 。 暫くはこれで我慢してもらおう , また街に行ったときにでも貴方の好みの服を買えばいい 。 目的を達成したのかクローゼットを閉めて部屋の出口へ向かう 。 もう此処にはいないから ,何て自身の中で区切りをつける様心の中で呟けばゆっくりと扉を閉めて階段を下りた 。
そうして貴方の元へ向かえばこれを着る様にと単調に声を掛けて皿を片付けるべくダイニングへと足を向けた 。 )

31: Royes [×]
2020-12-01 11:12:21

>Nora

……怖く、ない。少しびっくりした……だけ、

(たとえ血を飲むからと云って、彼女が凶悪かつ恐ろしい存在だとは限らないのだ。自分達が生きるために牛や鳥等を殺.して食事を得るように、彼女が生きるためには血が必要だということ。命を繋げる為に避けることの出来ない犠牲。だから、只“自分とは違う”だけで簡単に怖がってしまうのは__。そんな結論に辿り着き、彼女の質問には“NO”と首を横に振り。
_しかし、本当に怖くないのか、と問われればその解答は嘘になる。血を採って生きる生物なんて、本の中でしか読んだことない。てっきり、創作の世界にしか居ないものだと思っていたため、今こうして目の前にいる彼女、心の奥底ではまだ恐怖心が残っているのかもしれない。けれど、何故こんなにも簡単に“怖くないか”と訊かれてあっさり否定出来たのか。勿論、前述したように“たったそれだけで悪だと決めつけて怖がるのは良くない”という理由もある。また、本来は出会うことの無い筈の種族と、こうして会話が出来ている。その事に対する好奇心もあり。それに_こんな状態の自分を拾ってくれたのだ。“絶対に悪い人ではない”ハッキリとした根拠はないが、そうやって言い切れる自信はあった。


「、お風呂……」

その言葉を聞くのさえ久し振りだろう。彼女の後を付いて足を進め、中に入っていけば脱衣所らしき場所、その奥には大きなお風呂が。孤児院にも風呂はあったが、そこまで大きくは無く綺麗でも無かった。それに比べて彼女から案内された此の部屋。本当に風呂なのか…、と驚きを隠さないでいると、彼女は何処かへ行ってしまった。
要は風呂に入って、この汚れた体を綺麗にしろということなのだろう。何日間も来ていたみすぼらしい服を脱ぐと、筋肉が少なくうっすら骨の浮かび上がる身体が顕になる。脱衣所から浴槽の方へ移動すると、そこにある巨大な鏡が己の姿を写し出す。鏡を見たことで自分の現状を改めて突き付けられた。こうして全身を見ることなんて…こんなに醜い姿をしていたのか、自分で自分に溜息を溢し、蛇口へと手を掛ける。
その蛇口を捻ると、側にある管_からではなく、上から水が降ってきた。雨とは違う温かなその水は、薄汚れた髪を濡らす。何だろうこれは__。単なる水道とは違うらしい。所謂“シャワー”という未知なるものに戸惑いつつ、必死に思考を巡らせ。お風呂に使うもの、関連するもの_だというところまで察した。もう一度蛇口を捻って水滴を出し、油や埃やで汚れた身体、髪を、傍に置かれていた石鹸で洗っていった。薄汚れて灰色に染まっていた髪は綺麗な白髪へと変わり、異臭のした身体からはソープの良い香りが漂う。
一通り身体全体を洗い終え、浴槽へと入る瞬間に、脱衣所とお風呂を繋げる扉を挟んで、彼女の呼び掛けが耳に届いた。了承の返事を返せば、湯が張られたそれに身体を入れていき。雪で冷えきった身体がじわじわと暖められ、長期間の路上生活によって凝り固まった疲れがどっと出ていく感覚。言葉では表しきれない気持ちよさに、きゅっと目を細めた。

お風呂から上がり、脱衣所へと移動すれば、彼女が用意してくれたであろう服が。こんなにも立派な服…、タオルで濡れた身体、髪を拭いて、シャツの袖に腕を通す。そんな調子で一通り着替えを済ませた頃には、如何にも清潔そうな、つい先程までの自分からは全く想像出来ないような姿になっており。タオルや今まで着ていた服を畳んで片手に持ち、彼女がいるであろう、食事をした大広間まで歩いていって)

_お風呂、済んだ……よ、


32: Nora _ [×]
2020-12-05 19:32:29



>Royes


そう 。 もう遅いわ 。 寝たら如何かしら? 部屋は階段を上がって左手の部屋よ 。 貴方の部屋だから自由に使うと良いわ 。


( 貴方に声を掛けた後ダイニングへ戻ると先程食べ終わったばかりの夕食の皿に視線を向けた 。 貴方の皿は食べ残しが一つも無く本当にお腹が空いていたのが窺えた ,何処か夕食が全部なくなった事に嬉しさを感じて居る自分がいて ,食事をしていた貴方の様子を思い出せばとても美味しそうに食べて居て呉れた事を思いだし ,祖母が人間に手料理を振舞いたがっていた理由が分かった気がする 。 美味しいと残さず食べてくれるとどうも嬉しいのだ 。 一つ 〃 皿をワゴンに乗せてキッチンに持っていけばこれも叔母の手伝いでしていた一環 ,洗剤を出してもこ 〃 と泡立つ香りのいい泡で皿を洗っていく 。 最期の一枚も洗い終わって丁寧に拭いて棚に戻せば小さく息を吐いてダイニングへと戻った 。 貴方は未だ風呂にいる様で ,倒れて居なければいいけれど何て思い乍らダイニングを出て自室へ ,読みかけの童話を持ち出せば再度ダイニングへ向かい椅子に腰を掛けてぺらり 〃 とページを捲り読み始めた 。
そうして少し経った頃 ,風呂に行っていた貴方の声が聞こえて本に落としていた視線を貴方に向けた 。 ぱたん と本を閉じて椅子から腰を上げると貴方の横を通過しながら上記を述べた 。 湯の温度はどうだったか ,気持ちよかったか ,服のサイズは合うか ,何て聞きたい事はかなり合ったけれどそれを途端に述べる程のキャラではないし貴方の顔からして何か悪い事は無かったように思えた 。 矢張り服は少し大きかっただろうか ,少し不格好に見えて明日の朝にでも街へ出向かせようと考える 。 言葉を言い終えればダイニングから出て階段を上がっていく 。 右手の奥の部屋へ向かえばゆっくりとドアを開けた 。 窓を開けたままだったらしい ,ドアを開けた瞬間外からの冷たい風が頬を叩き付けて少し目を細める 。 窓の周辺は雪でびしょ 〃 に濡れていてそれに動じない様子で部屋の中へ足を進めると後ろ手にドアを閉めた 。 電気は付けないまま外から照らす月明りを頼りにゆっくりと窓へと歩み寄る 。 容赦のない雪は頬を濡らして冷たさでひりついてきてしまう 。 そのまま窓に手を掛けきぃ ,と金属の音を鳴らして窓を閉めると冷たい風は止んで残ったのは頬を伝う溶けた雪と足元の濡れた絨毯だけだ 。 小さく息を吐いてその場にしゃがみ込めば自身では意識していなかったが実際かなり疲れていたらしい ,人間と話すのも街に出るもの久しぶりだった 。 糸が切れた人形のような感覚だ 。 緊張の糸が切れた様子で小さく息を吐いて頬の雪を手で拭うと立ち上がり掃除は明日にでもしよう ,そう後回しにしてベッドに腰を掛け身を投げた 。 背中に当たる布団の柔らかさを感じつつ腕を閉じた目の上に置いてまた再度息を吐いた 。 )





( 遅れてしまって本当申し訳無いです .. !!! 考試一週間前でごた 〃 してまして ... (( )

33: Royes [×]
2020-12-07 09:29:58


>Nora

(彼女に言われた通りの廊下、階段を進み、部屋の真ん前へとやって来た。入り口にはこれまた大きな扉がくっついており、幾ら自分の部屋だと言われても軽々しく入っていけないような雰囲気が醸し出されている…ような気がしないでもない。元から此処に住んでいる彼女なら、なんでこんなものに…と扉を前にして怖じ気づいている自分に疑問を抱くのであろうが、此方は路上暮らしの身、突如こんな環境に放り込まれたら誰だって緊張や戸惑いはするだろう。喩えそれが只の一枚扉であっても。数分間扉を前にして悩んでいたがとうとう覚悟を決め、光沢のある取っ手に両手を掛けると恐る恐るそれを開く。思ったよりも力は要らず、わざわざ両手なんか使わなくても片手で空いてしまうほどの軽さ、開きやすさであった。

ドアの先には暗闇が広がっていた。一歩踏み出して部屋の中に入り、手探りで電気のスイッチを探す。数歩壁を伝いながら足を進めると、コツンと何かが指先に触れる感覚。その形状からスイッチだと理解し、パチンと音を立ててそれを押す。すると瞬時に天井から降ってきた光が部屋いっぱいに広がり、その部屋の全貌が明らかになった。眩しさに一度目を閉じた後、きょろきょろと中を見渡す。壁にはシンプルなカーテンが付いた大きめの窓が二つ、作者不明の美しい風景画に、今も尚チクタクと秒針を動かす壁掛け時計。この屋敷の外観と同じ様に、扉の模様や窓の縁に所々に細かな修飾が施されていたり、単調に見えつつかなり凝った部屋になっている。気になる点といえば、やはり全体的に物が少ないこと、だろうか。電気を付けるために暗闇を歩いても、何か家具にぶつかることはなかった。大きなベッドがぽつんと一つに、クローゼットとビューロー兼テーブル。引き出しを開けてみたが中は空っぽであり。この部屋自体が大きいせいもあって、余計に物足りなさが目立つ。しかし、今の自分にはこれだけで十分。元から余り使われていなかった部屋なのか、来客用なのか、よく目を凝らすと埃なんかも見られるが、普通にしていればそんなことに意識が向かないほど綺麗に整備されていた。

ふと時計に視線を配ると、もう夜も深まってきた時間帯。今日は色々なことがあった、久し振りにこんなに身体を動かしたし、今は消化器官だって大忙しな筈だ。どんな状況でも容赦なく襲い掛かってくる眠気に欠伸で応じれば、持っている着ていた服を机上へ置き部屋の電気を消すと、再び手探りでベッドの方へ移動。暖かそうな毛布に足を入れ、ころんと横になるとそのまま瞳を閉じる。今日1日のことを思い返す暇なくとてつもない眠気がやって来て、寝転んでから数分で眠りに落ちてしまった。)



(/そうだったのですか…!それはお疲れ様で御座いました……!!主様のペースで大丈夫ですので、お気になさらず…っ!)

34: Nora _ [×]
2020-12-15 09:56:03



>Royes


.... ,窓とカーテンを閉めてから寝ればよかったわ .. 。 日光が ...


( ふと意識が浮上して ,瞼を開けた 。 如何やら寝転がッたまま寝てしまッたらしい 。 寝起きは悪い方ではない為軽く欠伸を溢して伸びをしてから身を起こした 。 そうして目の前に広がる光景 ,昨日のまま絨毯は濡れていて ,でも明るい日光が一筋の光の道を作ッていた 。 その光景に思わずため息を溢した後に軽く額を抑える 。 日光は苦手だ 。 当たッてしまえば火傷を負ッたように皮膚が爛れて痛いし ,最悪死んで仕舞うのだから 。 うぅむ ,と頭を捻り立ち上がれば日光に当たらない様にカーテンの裾を持ちゆッくりと日光の範囲を狭めていく 。 カーテンが閉まり切ッたのを確認すれば安堵の息を洩らして取り敢えず絨毯を乾かしてから風呂に入ろうという結論に至ッた 。
自室のドアを開け ,後ろ手に戸を閉める 。 冷えた空気が漂う廊下をつか 〃 と歩いて階段を降りれば洗面所へと向かッた 。 アタッシュケースからタオルを一つ取り出せば自室へと再度赴き昨夜の雪により濡れて仕舞ッた窓口と絨毯 ,しゃがみ込ンでタオルに水気を吸わせていく 。 暫くして大体の水気が取れたかと思えばクローゼットの中から今日の洋服 ,また今日もゴシック系統なのだが ,黒統一を持ち合わせ再度部屋から出ると今度は風呂場へと向かう 。 纏ッていた洋服を落として近くの籠へ入れていく ,途端に服を纏ッていた際よりも冷たく感じる風が肌を撫でては早々とシャワーのお湯を出せば ,肌へと当てて 。 温かな御湯が身を温めていくのを感じればほうと息を吐いた 。
そうして泡を流してタオルで水気をふいてまた服を纏う 。濡れた髪の毛にタオルを当てて自室へ向かおうかと風呂場を後にすれば自室への階段を上がッていて 。 )


( また 〃 遅れてしまッて申し訳ない .. !! 用事等全て終わりましたのでこれからは以前通り返信可能かと .. !! ((( )

35: Royes [×]
2020-12-16 11:45:48


>Nora

(窓から差し込む朝日が顔に当たり、その眩しさで目が覚めた。路上で寝ていたときとは大違いで、寝ている最中に誰かに襲われる心配も、寒さで凍え死ぬ心配もない。こんなに快適な眠りは、本当に久し振り__下手をすればこれが初めての事ではないだろうか。昨日までの悪い目覚めではなく、気持ち良く朝を迎えられた感覚。ベッドの上でゆっくりと上半身を起こすと、ぐっと伸びをして身体を目覚めさせる。その時に感じた空腹感、昨日あれほどご飯を食べたのが嘘のようだ。ベッドから降り、毛布や枕を綺麗に整えるとビューローの前へ移動し。そこの鏡で寝起きの自分の姿を見てみる。かなり顔色は良くなっており、暗く汚れて傷んでいた髪は白く、寝癖なんかも付いている。昨日との変わり様、そして間抜けな自分の姿に何故だか笑いが込み上がってきて。微かに表情が綻んでは、寝癖を直そうと手櫛でその部分を何回か撫でてみる。暫く格闘していたが、やはり手だけでは直りそうになかった。

そういや彼女は何をしているんだろうか。もう起きたのか、まだ寝ているのか。昨日の会話から彼女が人間ではないらしいことは判った、自分たち人間と名にが違うのか……。拾われたは良いものの、今自分は彼女の事なんて殆ど全く判っていない。何者なのか、何故一人で住んでいるのか、疑問なんて溢れるばかりあるのに、昨日は自分の体調等の影響で会話なんてほぼ最低限のものでしかなかったと思う。せめて朝の挨拶くらいは自分から動こう。そう決めるとビューロー前から離れると自身が今来ているゴシック系統の服の格好を整え。頭に寝癖を付けたまま廊下へと続く大きな扉の取っ手に手をかけ、それを開く。すると耳に入ってきたのは、コツコツと何者かが階段を上る音。音のする方へそっと歩いて行けばそこには彼女の姿があり)

あ……お、おはよう


(/いえいえ!無事に済んだようで何よりです……!!お疲れ様で御座いました……!!!!)




36: Nora _ [×]
2020-12-18 10:53:17



>Royes


.. 御早う 。 その様子だとよく眠れたみたいで良かったわ 。


( お早う ,と掛けられた声に貴方の方へ視線を移し少しの間の後緩急の無い声色で上記を述べた 。 少し間が空いたのは貴方がこうして話したのが初めてなような気がしたから 。 恐らく昨日は初めての場所に緊張と ,移動の疲れで上手く言葉が紡げなかったように思える 。 貴方の様子を眺めても目に見えて健康体だ 。 未だ平均的に見たら痩せすぎているけれど ,昨日よりは血色も良く霞んでいた髪色も真白に綺麗で清潔で磨けば光るとはこの事かと何処かの本で読んだ言葉を脳内で再生する 。 貴方も起きてきたことだし髪の毛を乾かしたら食事を作ろうか ,後は洋服も 。 貴方が今着ているものだけでは何れ洗濯等で足りなくなるだろうから今日はまた街に出向いて ,今日以降の食事の材料も買い溜めなくてはいけないな 。 でも今日は日が出ていて日中には街に行けそうにない 。 夕方 ,日が傾いてきたころに出発するとしようかと一人思考を巡らせ再度貴方に視線を向ければよく眠れた象徴みたくぴょこんと跳ねる寝癖が目に入った 。 何だか可笑しくて ,思わず口許を緩めて階段を上り貴方の隣に足を下ろす 。


〝 寝癖が付いてる 。 これから食事にするから ,昨日食事をした部屋に居て頂戴 。 私も直ぐに向かうから 。 〟


一歩貴方に近付いて距離を詰めればその跳ねた寝癖に触れてぽつりと言葉を落とした 。 くし 〃 と撫でて ,跳ねた寝癖を比較的落ち着いた形にすると満足したのか寝癖に向けていた視線を貴方に 。 一歩後退しそしてまた淡々とこれからの行動を紡げば貴方の横を通り自室へと入っていった 。
立鏡の前に立って新しく纏った洋服の崩れている所が無いかを確認し胸元の曲がったリボンを直しつつ先日使って自室に置いたままであったドライヤーに手を掛けて電源を入れる 。 出てきた温風に少し目を細めながらも髪の毛を乾かしていく 。 少しして乾いた髪の毛に櫛を入れてきっちりと整えて ,オイルを塗り込んでいけば暫くして立ち上がった。 食事を作りに行こうかと自室を出て ,扉を後ろ手で閉めればゆっくりと会談を降りていき ,貴方が待つであろうダイニングへと向かいその扉を開けた 。 )



( ひぇえ ,有難う御座いますッ .. ! )

37: Royes [×]
2020-12-20 00:16:59


>Nora

……あ、有難う

(数秒の間はあったものの、彼女からの返答を聞けて安心した。こうして反応を貰うことで、自分は一人ではないという安心感、自分は存在して誰かに認識されているんだ、なんて改めて感じることが出来て。その気持ちをしみじみと味わっていたところ、突然彼女が自分の方へ近付いてきて。何をされるんだ、余りにも説明が無かったため、ぎゅっと目を細めて身体を縮めるが、自身の寝癖を直してくれているのかと理解するとそっと目を開いて。動機は何にせよ、こうして撫でられるのも何年ぶりだろうか。孤児院では殆ど一人で本を読んでいたし、そこに勤める人も自分より幼い孤児の子に掛かりっきりで。勿論外に出てからも優しく扱われることなんてなく、“愛情”なんてものは自分とは無縁であった。ぽかぽかと心がほんのり温かくなるのを感じながら小さな声でお礼を伝えた。

部屋にいてくれ、という言葉に了解の意で頷いて。彼女が他の部屋に入っていった後、ぽつんと一人残された廊下で、先程まで寝癖の付いていた髪にそっと触れる。まだ残っている温もりに表情を緩ませながら、言われた通り、昨日のあの部屋へ足を進め。その途中周りを見渡せば、昨日は見えなかった色々なものが目に入ってくる。己を照らす照明も一つ一つ精巧な作りになっており、よく見ればあちこちに道も分かれ、沢山扉もくっついている。意識しないで歩いていたら直ぐに迷子になってしまいそうで。きょろきょろ落ち着きなく周りに視線を配りながら例の部屋の前へと到着すると、その扉に手を掛けて中へと入り。昨日座った席まで移動すると、スムーズな手付きで椅子を引いてそこへ腰掛け。今のこの状況にかなり適応している、慣れているような気もするが、正直まだ夢のようだ。美味しい食事を食べたことも、豪華なお風呂で綺麗になったことも、ふかふかのベッドで眠ったことも。全てが夢で妄想で__、無意識にそんな風に考えてしまい、その考えを払拭しようと慌てて首を横に振る。もしたとえこれが幸せな夢だとしても、もう少しこのままでいさせてほしい。小さく息を吐き、彼女が来るのを大人しく待った。__それから暫くして、ギィ、と扉の開く音が耳に届き。ゆっくり視線を向けると、そこには彼女のシルエットが。)


38: Nora _ [×]
2020-12-21 21:33:07




>Royes



待たせてしまったかしら ,直ぐに朝食を用意するから暫く待っていて 。


( 椅子に腰を掛け静かに自身を待っていたであろう貴方に上記を述べれば横目で貴方を見つつまた昨日の様に置くのキッチンへ向かっていった 。 後ろ手にドアを閉めてパンはあったかと少し小首を傾げる 。 祖母は何処にしまっていただろう ,きょろ 〃 と辺りを見渡してはパンを見つけたけれど自身にとっては少し高い場所 。
でも生憎乗れそうな台は見当たらないし其処まで高いという訳ではないと思いカウンターに手をついて爪先立ち ,ぐぐっと腕を伸ばしてパンの入ったバスケットに触れる 。 ちょい 〃 と指で寄せてバスケットの端を手で掴めばやっとの事でバスケットを手に入れたのだがバスケットを取る際に腕が当たってしまったのかぐらりと揺れて野菜を入れる木箱が落ちて来た 。 それは見事に自身の頭に当たり予期していなかった痛みに思わず 〝 ~~~っ .... !! 〟 何て声に成らない声を上げて頭を押えて蹲る 。 カラン 〃 と耳に届く木箱が地に転がった音にも気を移せない様で頭に響く鈍い痛みが収まった頃 ,木箱が命中した所を摩りながら落ちた木箱を自身の手の届く位置に置いておく 。 もう上から落ちてこない様に ,念には念をだ 。 自身の不注意故なのだが何処かに感じる軽い怒りで置いた木箱を軽くにらむ 。 こんな事をしてもどうにもならないのは知っているが仕方ない ,痛かったんだもの 。 何て一人でぶつくさと呟きつつも目的のパンを手に取る 。 カビは無いかと確認した後に祖母が使っていたトースターなるものにパンを差し込む 。 使い方は良く分からないけれど恐らく使えるだろう ,然う思ってパンが焼き上がるまでにカプチーノを作ろうとカップを一つ取り出した 。
珈琲を抽出して ,ミルクを煮立てる 。 ふわ 〃 とした泡が出来ればカップに珈琲を移しその上にに立てたミルクと泡を注いで完成 。 我ながら上手く出来た気がする何て上機嫌も束の間 ,何かが焦げた様な匂いがしてその匂いの方へ向けばパンの端っこ ,火に近かった所が黒く焦げていて ,慌てて火を止めパンを皿に移す 。 出来ると思っていたけれど意外に難しいのね ,と口元に手を当てながら考えるもパンはこれともう一枚だけしか残っていない様子 。 もう一枚は失敗しない様にしようと新たなパンをトースターに掛けた 。 これは成功 ,綺麗な狐色だ 。 それも皿に移して先程のパンの上に軽く重ねればオレンジのマーマレードジャムを上に乗せる 。
もう1つ皿を用意して一口大のクッキーを数枚置けば ,パンとクッキー ,カプチーノを昨日も使ったトレーに乗せ今度は自身の朝食 。 昨日買った兎にナイフを通して流れ出る血をグラスへと移していく 。 それもトレーに乗せればガラ 〃 とキッチンからダイニングへと向かった 。
椅子に腰を掛ける貴方の目の前にパンにクッキーとカプチーノを置けば貴方の目の前に自身も腰を掛ける 。 血の揺れるグラスを自身の目の前に置くと貴方を見遣る 。 そうして何処か申し訳なさそうな ,眉を下げ気まずそうに合わせていた視線を宙へと向けた 。


〝 えっと ... その ,ね 。 少し失敗してしまったの 。 パンが焦げてしまって .. 〟


他の客人ならば私が作ってやったんだから食えと口に詰め込むだろうが如何も貴方にはそうはいかないらしい 。 しおらしく逸らしていた視線を貴方に向けじっと目の前の貴方を見 。 )

39: Royes [×]
2020-12-23 16:00:31

>Nora

(彼女が扉の向こうに消えていくのを視線で見送り、大人しく座って彼女を待つ。__それから暫くして、キッチンへと続く扉を挟んで、何か大きい音が聞こえてきたが大丈夫だろうか。一人ぴくっと肩を上下させると、彼女のいるであろうキッチンに視線を向け。駆けつけた方がいいのか、待っていた方がいいのか、どうしようかと悩んでいるとガラガラと台車の音。彼女の様子を見るに、目立った怪我など特に変化は見られないが……小さく首を傾げつつ、彼女が自分の食事を並べてくれるのを眺めていた。
目の前に置かれたお皿の上に乗った二枚のパンにクッキー、温かなカプチーノからは、食欲が更にそそられるようないい匂いが。美味しそう、なんてついじーっと見てみれば、パンの端が黒く変わっていることに気付く。それに彼女の落ち着かなさそうな反応にその言葉。あちこちさ迷っていた視線が自分に向いたとき、相手を安心させるよう此方も視線を合わせればそっと口を開き


「ううん、大丈夫__」


いただきます、と焦げたパンに手を伸ばし、サクッといい音を立てながら一口齧る。口の中いっぱいに広がるパンの香ばしさとマーマレードの甘み。想像を遥かに超える美味しさで、一口一口を噛み締めてパンを食べ進めていく。多少焦げたところで味も大きくは変わらないし、食べられれば何の問題もない、というのが元路上暮らしだった故の自分の考えで。その他にも、折角彼女が作ってくれたから。どんな食事が出てきても、何も言わずに食べていただろう。だから心配する必要なんて__、そう考えながら小さく口角を上げて、幸せそうにパンを味わう。焦げていたのを何の気にも留めずに一枚目を完食。綺麗に泡立ったカプチーノに口を付ける際、目の前の彼女に視線を向ける。彼女の目の前には自分と同じような美味しそうな食事__ではなく、お洒落なグラスが一つ。中には赤い液体が揺れており、昨日あれだけ説明されても、本当にそれだけで大丈夫なのかな…なんて意味のない心配をしてしまう。そこにはもう、“血を飲む”ということに対しての恐怖は一切消えており。勿論、人間と吸血鬼__彼女の口から直接“自分が吸血鬼だ”という言葉は聞いていないが、こうして人の形をしていて血を摂取する、そう聞いて連想されるものなんて吸血鬼くらいだろう__この2つ、そもそも種族から違うのだ。人間でさえ、生活様式やら生活環境やら格差が生じるのだから、自分と彼女の間に差があるのも当たり前。此れからこの差を少しでも縮められたら__そんな願いを胸に、カプチーノを流し込んでこくりと飲み込む。ミルクのまろやかさにほんのり感じる苦み。丁度よい温度で飲みやすく、じわじわと身体に染み渡っていくのを感じながら、もう一枚のパンへと手を伸ばした。)


40: Nora _ [×]
2020-12-31 00:08:05


>Royes



今日は日が沈んだ頃に街に出るから ,準備をしておいて頂戴な 。


( 貴方がもう一枚のパンに手を伸ばしたのを見れば少し安心したように視線をグラスの中で揺れる朱い血に移した 。 人間の血ならば一か月に一回飲めば十分なのだが他の動物の血となるとどうしても栄養が損なわれて仕舞うのだ 。 だから兎の血を飲む今は3回程飲むのだが ,所謂寝溜めならぬ飲み溜めだ ,兎の血もこれで家に有るのは最後な事だし ,もし街に出て他の動物の血が無かッたらピンチな訳だ 。 なら今日飲まないで別の日に取ッておけばいいだろうとは思うが鮮度もそうだが日が立つと味が落ちて仕舞うのだから致し方がないのだ 。 すっとグラスを持ち上げて口を付けるとこくりと血を飲んだ 。 甘く言っても美味しいとは言えないがまぁ及第点だろうなんて思いながらグラスを机に置いて貴方が食事をする様子を眺めて居た 。 昨日も思った事だが本当に美味しそうに食べてくれるな ,と 。 そういえば昨夜よりも会話が増えたように感じる 。 警戒をする小動物の様だったが現在は少しだが警戒を解いて呉れた様に思えた 。 否 ,自身と同じように緊張をしていただけかもしれないが ,そうだったのならこの一日でこの変化とはかなりの変化では無いだろうか 。 いやはや ,いきなり襲ってくるような人間では無くて本当に良かったとしみじみ感じて仕舞う 。 吸血鬼の一族だとやはり少しは耳にするのだ ,人間に襲われて殺されたと 。 叔母も一度人間に襲われかけたなんて言っていた気がする 。 そう考えたらこの状況はかなり珍しい物なのだろう ,人間は自身が受け入れられないものを攻撃する節が有るからもし目の前にいるこの男がその気になれば襲うことなど可能なのだ 。 まぁ ,この人間にそんな度胸が有るのかは定かでは無いのだが 。 そうしてふと気が付いた 。 もしかしたら名前を教え合っていないのでは ? と 。 別に今更名前なんて知らなくてもいいのだけれどこの先一緒に過ごすとしたら名前を知らないとかなり不便な気がすると思えば小さく ,口を開いた 。


〝 ねぇ ,貴方 。 名前はなんて言うの ? 知らないと ,この先不便だと思って 。 私はノーラ 。 ノーラ・バレッタよ 。 〟


貴方の目をしっかりと見据えてそう述べればこうして他人に名乗るなんて本当に久しぶりだと感じて仕舞った 。 それは口下手な訳では無くて ,他人と同じ時間を過ごすということをしてこなかった故である 。 自身の名を名乗るのはこう ,どうしてこんなにむず痒い気持ちに成るのだろうか何て心の隅で思いながら自身が述べた名前を心の中で小さく繰り返していた 。 )

41: Royes [×]
2021-01-02 00:50:55

>Nora


…………分かった

(最後の一口位の大きさとなったパンを口に入れ、咀嚼していたのを飲み込んでは彼女の言葉に頷く。まだ日は昇ったばかり、日が沈むまでにはまだ十分な時間がある。雪は降っておらず、昨日の悪天候が嘘のような快晴なのは、起きた際、窓越しに確認していた。やはり吸血鬼、日光は苦手なのだろうか。孤児に居た頃、読書が趣味だったせいもあり、吸血鬼を題材にした物語も幾つか読んでいた。そこに出ていた吸血鬼というのは、姿形や性別、性格なんてものもバラバラであったが、共通して日光が苦手だった気がする。他にも、十字架が苦手だったり大蒜が苦手だったり……、中には炎が弱点なんてものもあった。彼女が出掛ける時間を遅くに送らせるのもやはり日光が原因なのだろう。そう考えれば、昨日雪が降っていなければ、つまり太陽が隠れていなければ、自分が彼女と出会い、今こうして助けて貰うことは無かったかもしれない。こんな天候一つで運命が大きく変わってしまうとは。日常というのは奇跡の連続──、そんな言葉を耳にしたことがある。まさにその通り、改めてそう実感しては妙な納得も生まれる。
残り僅かとなったカプチーノを啜るため、カップを手に取って口まで持ってくると、くいっと顔をあげ残っていた液体を口内へと流し込む。その途中、再び目の前に座る彼女を見れば、小さくだがまた口が開かれた。そこから紡がれる言葉達が耳に届いてから数秒後、持っていた空となったカップを机に置くと、そっと口を開いて。


「“ノーラ”……、いい名前──。僕はロイズ。ロイズ=ヴェルディ。」


まずは彼女の口から発せられたその名前に、率直な感想が零れ。こうして名乗るのもどの位ぶりだろうか、自分の名前でありながら、普段呼ばれることも口にすることもない言葉。何処か懐かしくも感じるその響きをゆっくり声に出す。確かに、お互い名前も知らないのは不便に過ぎないだろう。ついさっき教えて貰ったばかりの名前を何度も脳内で反響させると、何故だか心がほっこり、じんわりと温かくなってきた。前述したように、孤児院ではずっと本ばかり読んでいたため、他の孤児との関わりは一切といっていいほど無く。何処にいても孤立していた自分にとって初めての友達──と言ってもいいのか分からないが、単なる顔見知り、知り合いではない特別な関係。ただ名前を言い合っただけなのに、またひとつ彼女のことを知れた、という嬉しさが確かに胸の奥に存在している。無意識だが小さく口角が上がっており。そのあたたかい気持ちのまま、御馳走様でした、と食事を終わらせ)



42: Nora _ [×]
2021-01-11 00:37:51



>Royes


... ロイズ 、 そう 。 ロイズね 。 それじゃあロイズ ,この後夕方迄は時間があるから出掛ける迄の間は自由にしてくれて構わないわ 。 屋敷の中を散策するでもいいし 、 読書するでも構わない 。 自由に御過ごしなさいな 。


( 貴方が述べた ”いい名前 ” 何て 。 そんな事言われたのは初めてで小さく目を見開いた 。 何だか心がむず痒くて 、 でも悪い気持じゃない 。 でも態々言葉を拾うには少し恥ずかしくて少し間を開けた後に貴方の名前を口にする 。 只名前を口にしただけだと云うのに何処か心がほっこりと温かくて少し目を伏せた 。 そうして 、 貴方が食事を終わらせたのを視界の端で捉えれば再度口を開く 。 これからの行動の事 、 大雑把に言えば好きにすればいい 。 何て内容の言葉を溢し手元のグラスを持ち上げ残りの食事を終えてしまう 。 椅子から腰を上げて空になったグラスと貴方の食事をしていた皿をトレーに乗せて昨日もしていたみたいにキッチンへと運んでいく 。 数分も経たない内に戻って来れば貴方を見遣った後にダイニングから出て行った 。 ここからは本当に自由時間の様で 。 階段を上って行くと自室へと迷いなく向かい朝閉めてからそれっきり 、 光の入る事の無い自室へ足を踏み入れれば後ろ手でドアを閉めた 。 本棚の目の前に立てばすーっと本の背を撫でる様に手を滑らせた後に一冊の本を手に取る 。 それは何かの童話のよう 。 それを手に取ったまま窓辺に佇む椅子に腰を下ろしゆっくりとその本を開いた 。 何の変哲もない只の童話 。 長く続いた飢饉で親が子供を口減らしの為に減らす話 。 御菓子で出来た家に 、 悪い魔女 。 吸血鬼が居る位なのだから魔女も居るのだろうな何て考えながら読んでいたが御菓子で出来た家も魔女も 、 飢餓状態の子供が見た夢なのでは無いか何て 、 フィクションなのだからそこまで深い流れは無いだろうけど 。 結果的に子供達は魔女を殺して家に帰って 、 子供を捨てると言い出した母親も死んでいたから幸せに暮らしました 。と 。 でも一度でいいから御菓子の家は見てみたいものだ 、 味は感じないけれども見た目は気に成る 。 きっと見るからに甘そうな 、 美味しそうな家なのだろう 。 こういう話では魔女とか吸血鬼とか 、 本当に悪役として描かれて居る事が多いなと思う 。 皆人間に害を与えるわけではないのに 、 怖い訳じゃ無いのに 。 でもきっとそれはこの先ずっと変わることが無いのだろう 。 一度怖いと思った物はずっと怖いし 、 ああ 、 でも彼は怖がらなかった 。 目の前で血を飲んでも 、 怖がるそぶり何て見せずに 、 ただ名前を教えあっただけなのに笑顔を浮かばせて 。 本当に 、 貴方は不思議だ 。 何を考えているのか上手く分からないし 、 いつか自身を殺すつもりかもしれない 。 例えば 、 いつかの話 。 でもそのつもりならあの笑顔はなんだろうな 。 上手く人間と接した事がないから感情なんてわからないし 、 いっその事考えが読めたら楽そうだけど 。 でも貴方と話すのは 、 何故か胸が暖かくなって心地が良いのだ 。 何時か感じたあの気持ちに似ている気もしないでもないな何て思い乍らゆっくりと本を閉じて 、 するりと表紙を撫でた 。 )

43: Royes [×]
2021-01-12 16:10:05


>Nora

──、うん。

(そう何度も自身の名前を繰り返されることなんて無いから、少し気恥ずかしいような、慣れないような不思議な感覚に包み込まれる。でもやはり、こうして名前を呼んでもらえることで、自分がここにいるんだ、ということを実感できる。ほっこり、じわじわとしたそんな感情に浸りつつ、彼女の言葉に耳を傾けては頷いた。
自身の目の前の皿が彼女の手に依って運ばれていくのを視線で追いながら、椅子を引いてゆっくりと立ち上がる。ふぅ、と一つ息を吐き、満腹になったお腹をさする頃にはもう彼女はこの部屋から居なくなっており。広い部屋に自分一人。さてこれから何をしよう……と思考を巡らせながら、彼女の言葉を脳内で思い返してみる。
──自由に、か。まだ日が沈むまではかなりの時間があるだろうから、大抵の事は出来てしまいそう。沢山時間があると言えば路上暮らししていた時と同じなのだが、当時していた事と言えば、ただ道の端で震えながら眠るだけ。働く場所もお金も何もないのに無慈悲に空腹だけはやって来るのだ。眠りに落ちれば消費する体力も少ないので、凍えて丸まっているより余程生き残れる──彼女に拾われたあの雪の降る日だけは、あまりの寒さに眠るどころでは無かったのだが──。
しかし流石に、拾われてこんなに豪華な場所にいるというのに此処でも一眠り、なんて勿体無さすぎる。折角の自由時間、そんな無駄なことはせず有意義に過ごしたいもの。ここは彼女の言う通り──一度このお屋敷の中を見て回るのはどうだろう。こんなに広いんだもの、そう簡単には回り終わらないことは安易に想像できる。それに、少しくらいこの屋敷の構造を知っていた方が今後便利だろうから。
そうと決めれば彼女の出ていった扉を抜け、廊下を歩いてゆく。順に部屋を覗いていくが、服が沢山あったり、色々な家具が詰め込まれていたりする中、使われてない部屋も幾つかあったり。その一つ一つを興味あり気に観察しながらまた次の部屋、と手を掛ける──と。
そこには沢山の本棚。何処を見渡しても本、本、本。覗くだけ……のつもりだったのだが、その夢のような空間に思わず足を踏み入れて。試しに一冊手に取ってみる。そのまま表紙を開き、数ページペラペラと捲って読んでみる。これは……吸血鬼の生態について書かれているのだろうか。日光が苦手だとかいう基本的なものから、意外な弱点なんてものも。これが彼女に当てはまるのかは分からないが、内容は十分面白いものだった。これでまた少し彼女の事を知ることが出来るかもしれない。いつの間にか本棚の側に座り込み夢中になって読んでいて。)

44: Nora _ [×]
2021-01-20 22:28:38



>Royes


( あの童話に手を伸ばしてから次へ次へと他の本へ手を伸ばして 、 気が付けば自身が座っている椅子の横のテーブルには本のタワーが出来てしまっていた程だ 。 今何時頃だろう 、 カーテンから差す光もかなり弱まってきている様に思えるからきっともうじき日が落ちる頃だろうか 。
私は読んでいた本を閉じるとそのタワーの横に置いて 、 それからケープを羽織ったら貴方を探しに行こうと椅子から腰を上げた 。 ガラリとクローゼットを開けて昨日 、 貴方と出会った時に来ていたケープを手に取って羽織り胸前でリボン結びをして部屋から出れば階段に降りる前の部屋に立ち寄った 。 理由は貴方が羽織る為のコートを取りに来る為だ 。 幾ら昨日よりは服を着こんでいるとは言えまだ寒い筈だから 、 クローゼットを開ければ少し埃っぽい匂いが鼻に届くが構わずにコートを一着手に取った 。 それを軽く手で叩いて埃を払えば胸前に抱えたまま部屋から出る 。 さて 、 本題だ 。 この部屋が沢山ある屋敷で貴方を探し当てなければならない 。 何分かかる事だろうなんて考えながらも次々に扉を開けていく 。 貴方が入りそうな部屋 .. そう考えて一番最初に思い浮かんだのは本がある部屋だった 。 きっと外に入っていないだろうし本がある部屋を手当たり次第探すしかないかと思えば階段を下りて一階の部屋の扉を開けて行った 。 そうしてやっとの事で貴方を見つけた部屋はもう読まない本をしまってある書庫で 、 床に座り込んでいる様子を見ればかなり夢中になっているのだろう 。


「 ロイズ 、 そろそろ街に行くわよ 。 未だ少し寒いだろうからコートを羽織りなさい 。 」


そんな貴方に近寄れば名前を呼んだ 。 そうして貴方の目の前に持ってきたコートを差し出して 。 )

45: Royes [×]
2021-01-23 20:42:13


>Nora

(始めに手にした、まるで辞典のように分厚い本を読み進めてから数時間。本を開いたばかりは数センチ程あった読んでいないページも、気が付けば残り数ページ、と数えられる程になっていた。薄暗い部屋の雰囲気や、騒音の無い、只ページを捲る音と自身の呼吸の音しか聞こえない環境は、本の中へ入り込んでいくのに最適だとも言え。軽く本の中身に目を通しただけなのに、数分と経たないうちにその中に惹き込まれていた。そのため、どの位時間が経ったか、なんて全く意識になく。ガチャリと扉が開く音でふと現実に引き戻され、そのまま顔を上げる。その先には彼女の姿。そして投げ掛けられたその言葉で、やっとこれから外へ出るということを思い出した。彼女の格好を見るに、既に出掛ける準備は出来ているのだろう。自分も早く準備をしなくては。彼女が外に出られる時間は限られている。夜は長いとは言っても、少しでも時間は無駄にしたくない。「準備が遅かったせいで、用事が全部済ませられなかった」はんて事態は最悪、それだけは絶対に避けたい訳で。急いでぱたんと音を立てて読んでいた本を閉じ、自身が座っている右側の床へと置くと、

「有り難う」

と御礼を言ってコートを受け取り。ふわふわしていて暖かく、手触りも心地いい。きっとこれもかなり上等なものなんだ……そう実感しながら立ち上がると、渡されたそれを羽織り。それにしても、このお屋敷は一体──、彼女だけで此処に住んでいたとは到底思えないし、こんなに沢山の高級品、やはり普通の家とは違うようだ。改めてそう実感しながら、するすると袖を通していく。受け取ったコートは少し大きいようで袖からは指先が少し顔を覗かせている。慣れない手付きで上からコートのボタンを嵌めていくと、足元に付いていた埃をはたいて落とし。出掛ける準備を済ませ、彼女の方へ向き直って)



最初 [*]前頁 ▲上へ

名前: 下げ

トリップ: ※任意 半角英数8-16文字
※画像を共有する場合は、外部の画像アップローダなどをご利用ください

規約 マナー
※トリップに特定文字列を入力することで、自分だけのIDが表示されます

【お勧め】
初心者さん向けトピック



[0]セイチャットTOP
[1]1対1のなりきりチャット
[9]最新の状態に更新
お問い合わせフォーム
(C) Mikle