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悲倉鈍間 [×]
2020-09-03 22:24:07
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( カウンターに向かう悲倉の真後ろ、店外から若い女の声が聞こえてくる。そこでどういうつもりか、この夜明ヶ原という女は、扉を開け、大雨の中で傘も差さない愚鈍な連中らを店内に招き入れている。おそらく、この彼女の奇怪な行動は、彼女の異能力[リサーチャーの情報によると]からくるものだろう。それにしても、彼女の警戒心のなさには不愉快だ、僕の異能を一度免れたからといって見下しているのか、と悲倉の頬の血管がさらに浮き彫りになる )
「 お前、僕をナメているのか? 」
( 若い女どもが店内に入りかけた時、カウンターからゆっくりと立ち上がっては、背後の夜明ヶ原の方へと振り向き、彼女に充血した目で睨みつける。
しかし、意外な存在が視界に入る。悲倉の存在すら知らないであろう痩せ細ったチワワ、堺美波。すでに、フードの中からの鋭い視線が、夜明ヶ原から堺の方に向いていることに悲倉は気づいていない )
「 …リサーチャーが欲していた存在 」
( ーー遡ること数週間前
『 悲倉鈍間くん、我々にはいずれ必要となる存在がいるのだよ。私が考えるに、その存在とはまずは、堺美波。ここ数日、メガロマニア保有者の情報収集をした結果、彼女の存在を見つけた。そうして行動や言動を見て判明したことがある。結論を急げば、彼女は自我が微弱だ。つまり、プライドもなければ善悪感情、自らの持つ信念というヤツがない。実に臆病で、実に防衛本能に忠実で、実に精神的弱者。対して、彼女の保有する能力は非完全でありながら、そのポテンシャリティは凄まじい領域のそれだ。これを見れば分かるだろう 』
リサーチャーは、モニターにうつる映像を見せる。
鉄骨のような複数の百足脚が、彼女から突き出ると同時、一本のソレは何者かを突き刺し、星々の散らばる夜空に向けて長々しい脚を、尋常ならざるスピードと共に伸ばしている瞬間がそこにはあった。
「 化け物級だな 」
『そうだ、化け物。パワー、スピード、強度、範囲を踏まえると規格外のものだ。私も彼女が化け物であることに賛成しよう。そして、さっきも言った通り、精神的には成熟していない。ゆえにだからこそ、我々の元に相応しい存在、最適者となり得るだろう。さて悲倉鈍間くん。君の今度の役目は、言わなくとも分かるだろう 』 )
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