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793:
レオ [×]
2024-04-29 15:22:38
>ラザロ(>792)
(己を呼ぶ彼の声が聞こえる。苦し気でも、確かに、強かに。願いを籠めたまじない擬きの直後――何か、割れるような音がして。梔子よりも濃い薔薇の香と、何とも形容し難い多くの悲鳴が響き、その余韻を己に残していった。しかしそれに構う余裕など無かった。何故なら、「ラザロ…っ!」“彼”が、目の前に居たからだ。全身が逆立つ被食の脅威など消え失せた、豪放磊落で、短気さはあれども優しい、己の知るあのドラゴンが――彼の笑う顔、月の輝きに似た黄色の瞳と目が交わったその瞬間に、覚悟を張り詰めた糸はプツリ切れて、綻び咲いた満面の笑顔の後には、「良かった……良かった、良かった…っ!!」彼が身体を支えようが倒れ込もうが構わずに、その肩へ伸ばした両手を回して、しがみついて、首元に額を寄せ当てる。「……君が、君に戻ってくれて、本当に…」籠る力の強さは歓喜の大きさだけ、先程以上に溢れる雫は安堵の数だけ。整えた髪の乱れも、浴衣の着崩れも全て意識の外に追いやって、只、今在る彼の無事を噛み締めた――その後。「……あ。」感情の揺らぎが凪いだ今頃、自らの無遠慮な抱擁に気が付いたらしい。「…すまない。」若干の気まずさにもごついた詫びの次、そろりと巻き付けていた腕を解いて、彼の顔を窺う。「……ラザロ。」再度の脅威が訪れていない事、何より彼が苦しむ何かから解放された事を、また改めて確かめ、頬を弛めた息を吐いた後に。「……先程のは、一体何事であったのだろうな…」今し方己と彼を襲ったものについて、疑問の声を落としながら、薔薇の紋様が浮かんでいた彼の額を眺め、視界に残るあの光の明滅をなぞるように指先を其処に伸ばした。)
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