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1380:
グルース・リヨン [×]
2024-08-20 22:04:13
>ジョネル(>1377)
(愛しい名を呼んで、一呼吸。此方も花弁が晴れたのを認め、彼の方を向こうと顔を上げた――その刹那。己の身と彼の身が、ぴったりと寄り合う。「……っ、」抱き締められたのだと遅れて理解して、詰めた息と共に瞠られた目は円い微笑みへと緩やかに戻り、「…よく出来ました。」ほんの僅かな背伸び、それから肩に置いたままだった掌で淡く髪を撫でる。「うん、いい子だね。」そこに添える称賛は、親鳥を思わせるふかふかとした柔らかな色が含まれて。「……ジョネル。」ふと、踵と共に下ろした両手を彼の背中へ預け、瞳をそっと閉じる。――いつだって抱き締める側だった己は今、思慕を重ねた彼の腕にすっかりと収まっている。それで彼はこんなにも大きなひとだったのだと、知っていたのに今更になって気が付いた。「……ふふ、」落とした可笑しさの次に知覚したのは、服越しに混ざる互いの温度、そして感触。途端に高鳴り逸る心臓に思わず深い吐息を零して、色付く頬をその身体へと預けた後、「……暖かい。」ぽつり溢れた呟きと、彼にしがみつく指先。一度味わえば手放したくなくなってしまう、その苦しくも甘い、魅惑的な――恋の温もり。「……ねえ。僕、君が好きだよ。」また溢れてきたのは、彼への想い。用意していた口説き文句なんて、全部この鼓動に掻き消されてしまった。だから、特別な飾りも何も無い“少年”の言葉が彼に注がれる。「――大好き。」その最後、初恋を叶えた歓喜が滲む目元を、彼の服にこっそりと隠した。けれど、“それ”は声さえ潤ませていたから、きっと大した意味など無いだろう。「……そうだ、ご褒美を考えないと。」それから間も無く、いつもの調子を取り戻した音色は、一度目の題目挑戦に掲げた褒章の案を引っ張り出す。「物が良いかな、それとも言葉?…ああ、想い出や約束も良いかもしれないね。」ゆったり朗々と話し出すのは普段通り。しかし心音も、耳まで染める熱も未だ取り繕えてはおらず。それでも構わず紡ぐ唇が止まらないのは、どんな感情よりも彼への愛が勝って覆ってしまうから。「ほら、欲しいものを教えておくれ、」するり、冷たい頬を両手で包む。雫の残る瞳を合わせた顔には赤みが残って、貴族の優雅さも泰然も見当たらない。…ただ、その代わりに。「――僕の可愛いシナモンハニー。」何処にでも居る“恋した男の子”の屈託無い笑顔が満面に咲いて、最愛の運命をじっと見詰めていた。)
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